説明

リーダライタシステム

【課題】 IDタグやICカード等の移動体からの読み取り結果に基づいて移動体の存在を精度良く判定することができるリーダライタシステムを提供する。
【解決手段】 制御機器1は、過去におけるタグ6からの情報の読み取り結果に基づいて、当該タグ6との間における通信状態が予め定められた正常状態であるか異常状態であるかを設定する異常タグ検出処理と、正常状態に設定されたタグ6については、当該タグ6からの情報を第1の回数連続して読み取れないときに当該タグ6は存在しないと判定し、異常状態に設定されたタグ6については、当該タグ6からの情報を前記第1の回数より多い第2の回数連続して読み取れないときに当該タグ6は存在しないと判定するふらつき防止処理を、制御プログラム2の実行により実現する、

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非接触通信により移動体から情報を読み取るリーダライタシステムに関し、特に、移動体からの読み取り結果に基づいて移動体の有無を精度良く判定するリーダライタシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、RFIDタグの単価が低減されてきたこともあり、RFIDを利用したさまざまなシステムが注目され始めている。その中でも、図書館における書架管理やファイル管理、宝石店などにおける商品陳列棚の管理など、一度に取り扱うタグの数(すなわち、タグが付された管理対象の物品の数)は多いが、タグの状態変化の少ないシステムが多く見受けられるようになった。
このようなシステムでは、定期的にタグをスキャンして物品の所在を監視する機能が重要になっている。しかしながら、RFIDの性質上、低い確率ではあるが読みこぼしが発生してしまう。また、タグを置く位置や、タグ周辺の環境(近傍に金属がある場合、電気的ノイズが多い場合など)により読みこぼしが多発することもある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
既存のシステムでは、読みこぼしを全て「物品が無くなった」と判断し、誤動作となっていた。すなわち、実際にはタグ(物品)が有るにも関わらず、タグを置く位置やタグ周辺の環境などの要因によって読みこぼしが発生した場合に「物品が無くなった」と判断されていた。
本発明は、このような従来の事情に鑑み為されたもので、IDタグやICカード等の移動体からの読み取り結果に基づいて移動体の存在を精度良く判定することができるリーダライタシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記目的を達成するため、本発明では、非接触通信により移動体から情報を読み取るリーダライタシステムにおいて、次のようにして移動体の存在を判定する。
すなわち、状態設定手段が、過去における前記移動体からの情報の読み取り結果に基づいて、当該移動体との間における通信状態が予め定められた正常状態であるか異常状態であるかを設定し、存在判定手段が、前記状態設定手段により正常状態に設定された移動体については、当該移動体からの情報を第1の回数連続して読み取れないときに当該移動体は存在しないと判定し、前記状態設定手段により異常状態に設定された移動体については、当該移動体からの情報を前記第1の回数より多い第2の回数連続して読み取れないときに当該移動体は存在しないと判定する。
【0005】
このように、移動体からの情報読み取りが失敗した場合に無条件に移動体は存在しないと判定するのではなく、読み取り失敗が連続した回数が判定回数より多い場合に移動体は存在しないと判定することで、ノイズ等の影響によって発生する読みこぼしに基づく判定誤りを防いでいる。また、移動体との間における通信状態を正常状態又は異常状態に分類し、異常状態における判定回数(第2の回数)を正常状態における判定回数(第1の回数)より多くすることで、正常状態の移動体については素早く判定し、異常状態の移動体については或る程度の時間をかけても正確に判定するようにしている。
【0006】
ここで、状態設定手段及び存在判定手段は、移動体と非接触通信するためのアンテナを一体又は別体に備えたリーダライタ装置に設けてもよく、このようなリーダライタ装置を制御する上位の装置或いは他の装置に設けてもよく、これらの装置に分散して設けてもよく、種々の態様とすることができる。
【0007】
また、非接触通信としては、例えば、移動体及びリーダライタ装置における互いのループアンテナ同士の電磁誘導による通信が用いられる。
また、移動体としては、例えば、IDタグ、ICカードが用いられる。
また、移動体から読み取る情報としては、例えば、移動体を識別するID、移動体が付された物品を識別するIDなどが用いられる。つまり、複数の移動体(或いは移動体が付された複数の物品)について、各移動体(物品)毎に存在判定することができる。
【0008】
また、過去における移動体からの情報の読み取り結果としては、例えば、読み取り成功が連続した回数(連続読み取り回数)の履歴が用いられる。すなわち、連続読み取り回数の履歴を移動体毎に記憶しておき、直近の連続読み取り回数の平均値と所定の基準値との比較結果に基づいて、移動体の通信状態として正常状態又は異常状態を設定する。移動体に設定する通信状態(正常状態又は異常状態)は種々の方法により決定することができ、例えば、直近の連続読み取り回数の平均値が所定の基準値より大きい場合に正常状態とし、直近の連続読み取り回数の平均値が所定の基準値より小さい場合に異常状態とする。このように、移動体に設定する通信状態(正常状態又は異常状態)は、過去における移動体からの情報の読み取り結果に基づいて決定されるため、通信状態の設定値は時間経過とともに変化し得る。
【0009】
また、第1の回数及び第2の回数はそれぞれ任意であり、例えば、固定値であってもよく、変数値(他の値から所定の関数を用いて計算した値)であってもよい。
また、移動体から情報を読み取るタイミングは任意であり、例えば、定期的なタイミングで通信可能な移動体から情報を読み取ることを試みる。
また、リーダライタシステムとしては、例えば、複数のアンテナを備え、移動体からの情報の読み取りに使用するアンテナを交互に切り替えるようにしてもよい。
また、移動体の存在有無の判定は、例えば、移動体からの情報を最初に読み取ったときから開始する。
また、移動体に設定する通信状態としては、例えば、所定の初期状態などの、正常状態及び異常状態以外の状態を設けてもよい。
【0010】
本発明に係るリーダライタシステムでは、一構成例として、次のような構成とした。
すなわち、移動体からの情報を連続して読み取った回数を履歴として当該移動体に対応付けて記憶する履歴記憶手段を備え、状態設定手段は、前記履歴記憶手段の記憶内容に基づいて、前記移動体からの情報を連続して読み取った回数の履歴のうちで直近から所定数の履歴の平均値を算出し、当該平均値が所定の基準値を上回ったときに当該移動体に正常状態を設定し、前記平均値が前記基準値を下回ったときに当該移動体に異常状態を設定する。
【0011】
ここで、履歴記憶手段は、移動体と非接触通信するためのアンテナを一体又は別体に備えたリーダライタ装置に設けてもよく、このようなリーダライタ装置を制御する上位の装置或いは他の装置に設けてもよい。
また、平均値の算出対象とする履歴の数(所定数)は任意であり、例えば4が用いられる。また、基準値は任意であり、例えば30が用いられる。
【0012】
なお、本発明は、方法や、プログラムや、記録媒体などとして提供することも可能である。
本発明に係る方法では、装置において各手段が各種の処理を実行する。
本発明に係るプログラムでは、装置を構成するコンピュータに実行させるものであって、各種の機能を当該コンピュータにより実現する。
本発明に係る記録媒体では、装置を構成するコンピュータに実行させるプログラムを当該コンピュータの入力手段により読み取り可能に記録したものであって、当該プログラムは各種の処理を当該コンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0013】
以上説明したように、本発明に係るリーダライタシステムなどによると、ノイズ等の影響によって発生する読みこぼしに基づく判定誤りを防ぐとともに、正常状態の移動体については素早く判定し、異常状態の移動体については或る程度の時間をかけても正確に判定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の一実施形態を図面を参照して説明する。
図1には、本発明の一実施形態に係るリーダライタシステムの構成を例示してある。
本例のリーダライタシステムは、RFIDリーダライタ4が、各物品にそれぞれ付された複数(図示の例では4つ)のRFIDタグ(以下、タグという)6からアンテナ5を使用した非接触通信により各々の情報を読み取って、その読み取り結果をネットワーク3を介して制御機器1へ送信し、制御機器1が、RFIDリーダライタ4から受信した情報(タグ6からの読み取り結果)に基づいて、物品(タグ6)の所在を管理する物品管理システムとして構成されている。また、制御機器1は、物品の所在を管理するにあたり、制御プログラム2を実行することで、後述の異常タグ検出処理やふらつき防止処理を行っている。
【0015】
RFIDリーダライタ4が備えるアンテナ5の数としては、1つであってもよく、複数であってもよい。なお、本例のRFIDリーダライタ4は複数のアンテナ5を備えており、使用するアンテナ5を交互に切り替えてスキャンし、そのアンテナ5の通信範囲にあるタグ6からの読み取りを行っている。
また、制御機器1は、タグ6からの読み取り結果を1つのRFIDリーダライタ4から収集して物品の所在管理に用いてもよく、複数のRFIDリーダライタ4から収集して物品の所在管理に用いてもよい。
【0016】
ここで、タグ6からの情報の読み取りにあたり、タグ6を置く位置やタグ6の周辺の環境により読みこぼしが発生して情報を正しく読み取れない場合がある。この読みこぼしの出現パターンは、タグ6の状況により幾つかに分類することができる。
図2は、読みこぼし出現パターンの分類例を示している。
パターン1は、読みこぼしの出現頻度が低頻度、すなわち、1日に数回単発で読めないときがある場合である。単発の外来ノイズなどの影響により読めなかった時などが該当する。
パターン2は、読みこぼしの出現頻度が中頻度、すなわち、1日に数十回単発で読めないときがある場合である。特定のタグ6について読みこぼしが発生している場合は、タグの置き場所が悪く、アンテナ5全体的に発生している場合は、ノイズが多発していると考えられる。
パターン3は、読みこぼしの出現頻度が高頻度、すなわち、読めたり読めなかったりが不規則に変わる場合である。タグ6の置き場所が悪く、読み取り限界のぎりぎりのところに配置されている場合などが該当する。
パターン4は、読みこぼしの出現頻度が超高頻度、すなわち、通常読めないが偶に読めるときがある場合である。タグ6の置き場所が悪く、殆ど読めない状態になっている場合などが該当する。
【0017】
また、タグ6から情報を読み取れない原因としては、上記の読みこぼしの他に、物品(タグ6)が移動した場合が挙げられる。正常な物品の移動には、以下の二つのパターンがある。
パターン1は、物品(タグ6)を持ち去られた場合であり、以降はそのタグ6から情報を読み取れなくなる。
パターン2は、物品(タグ6)を手に取ってまた戻された場合であり、手に取られている間(例えば10秒程度)は情報を読み取れないが、戻されると、以降はそのタグ6から正常に情報を読み取れるようになる。
ただし、人が物品の購入を迷っている場合などには、何度も手に取って戻す動作を繰り返す場合がある。
【0018】
本例のリーダライタシステムは、読みこぼしを全て「物品が無くなった」と判断するのではなく、複数回連続(判定回数n≧2)で読めないと判定された場合に「物品が無くなった」と判断することで、読みこぼしによる判断誤りが少なくなるようにしている。すなわち、読みこぼしが発生した直後に正常に読み取れたような場合には、その読みこぼしを偶発的なものとして排除(フィルタリング)することで、判定結果(物品の有無)が頻繁に切り替わる“ふらつき”を防止しており、以下、このような処理をふらつき防止処理という。
【0019】
ここで、例えば、判定回数n=2の場合には、上記の読みこぼし出現パターンにおけるパターン1やパターン2のような読みこぼしに対応することができる。また、判定回数nを増やすことでパターン3にもある程度対応できるようになるが、その分判定するまでにn倍の時間がかかってしまい、リアルタイム性が損なわれてしまう。
そこで、本例では、読みこぼし出現パターンにおけるパターン1やパターン2の状態を“正常状態”、パターン3の状態を“異常状態”として検出する異常タグ検出処理を行い、“正常状態”と“異常状態”とで異なる判定回数を用いてふらつき防止処理を行うようにしている。すなわち、“異常状態”における判定回数を“正常状態”における判定回数より多くすることで、“正常状態”のタグについては素早く判定し、“異常状態”のタグについては反応が遅くなるが判定の正確性を高めている。
【0020】
図3は、異常タグ検出処理やふらつき防止処理に用いられる、タグ統計情報テーブルを例示している。
「UID」は、タグ6(物品)の識別情報である。
「現在の値」は、タグ6からUIDを読み取れたか否かを表す。UIDを読み取れた場合には“ON(タグ検出)”、読み取れなかった場合には“OFF(タグ未検出)”が格納される。
「ON回数(ONn)」は、現在の値=“ON”が連続している回数である。すなわち、“ON”が連続する度にカウントアップされる。なお、現在の値=“OFF”となった場合には、ONn=0に初期化される。
「OFF回数(OFFn)」は、現在の値=“OFF”が連続している回数である。すなわち、“OFF”が連続する度にカウントアップされる。なお、現在の値=“ON”となった場合に、OFFn=0に初期化される。
【0021】
「直近の連続ON回数」は、直近のON回数(ONn)の履歴であり、ListN回分のON回数の履歴として、ON[N](ただし、N=1〜ListN)を保持する。本例では、ListN=4であり、直近4回分の履歴(新しい方から、ON[1]、ON[2]、ON[3]、ON[4])を保持している。
「平均連続ON回数(ONave)」は、直近の連続ON回数の平均である。なお、ON[N]=0のデータは、まだ値が入っていないので平均の母数には入れない。
「直近の連続OFF回数」は、直近のOFF回数(OFFn)の履歴であり、ListN回分のOFF回数の履歴として、OFF[N](ただし、N=1〜ListN)を保持する。本例では、ListN=4であり、直近4回分の履歴(新しい方から、OFF[1]、OFF[2]、OFF[3]、OFF[4])を保持している。
「平均連続OFF回数(OFFave)」は、直近の連続OFF回数の平均である。なお、OFF[N]=0のデータは、まだ値が入っていないので平均の母数には入れない。
【0022】
「ON判定回数(Param_ONn)」は、タグ6が存在することの判定に用いられる。ONn≧Param_ONnという条件を満たす場合に、タグ6が通信範囲内に存在している(以下、“存在検出”という)と判断される。
「OFF判定回数(Param_OFFn)」は、タグ6が存在しないことの判定に用いられる。OFFn≧Param_OFFnという条件を満たす場合に、タグ6が通信範囲内に存在していない(以下、“存在未検出”という)と判断される。
「状態」は、タグ6の状態を表す。本例では、S0=初期状態、S1=正常状態、S2=異常状態、としている。
【0023】
例えば、UID=0004のタグ6のデータ(以下、タグデータという)によると、過去から順に、2回連続OFF(OFF[4]=2)、24回連続ON(ON[4]=24)、1回OFF(OFF[3]=1)、20連続ON(ON[3]=20)、1回OFF(OFF[2]=1)、30回連続ON(ON[2]=30)、3回連続OFF(OFF[1]=3)、15回連続ON(ON[1]=15)となっており、現在は4回連続OFF(OFFn=4)であることがわかる。
【0024】
ここで、本例における“初期状態”とは、タグ6からの読み取りが未だに無く(或いは読み取り回数が不足し)、タグ6の状態が“正常状態”か“異常状態”かの判別をできない状態である。すなわち、例えば、制御機器1やRFIDリーダライタ4が起動された直後、管理対象として新たに追加するタグ6がタグ統計情報テーブルに登録された直後などが該当する。また、本例では、タグ6からの読み取りが一定時間ない場合も“初期状態”としている。そして、本例では、“初期状態”にある場合において、ONn>1となったこと(つまり、2回連続して読み取れたこと)を条件に、“正常状態”へ遷移(該当するタグデータの「状態」の項目値を更新)するようにしている。
なお、他の態様により“初期状態”を定義してもよく、例えば、タグ統計情報テーブルにタグデータがエントリー(登録)されているか否かにより“初期状態”を表現できる。すなわち、該当するタグデータが未だテーブル登録されていないタグ6は“初期状態”であり、そのタグ6からの最初の読み取り時にタグデータをテーブルに追加登録して“正常状態”とし、読み取りの無い期間が一定時間継続した場合にそのタグデータをテーブルから削除して“初期状態”とする。
【0025】
図4は、異常タグ検出処理に用いられる、ふらつき異常判定設定パラメータを例示している。
「測定回数(ListN)」は、平均連続ON回数及び平均連続OFF回数を計算するために保持する直近の連続ON回数及び連続OFF回数の履歴数(バッファサイズ)である。
「平均連続ON(Thresh_ONave)」は、“正常状態”と“異常状態”との間における状態遷移を判定するための閾値であり、この値より平均連続ON回数が少なくなると“異常状態”へ遷移し、この値より平均連続ON回数が多くなると“正常状態”へ遷移する。
「連続OFF回数(Thresh_OFF)」は、“正常状態”又は“異常状態”から“初期状態”への遷移を判定するための閾値であり、この値よりOFF回数が多くなると“初期状態”へ遷移する。
同図では、ListN=4、Thresh_ONave=30、Thresh_OFF=1800、としているが、この設定内容は例示に過ぎず、システムの運用等に応じた任意の設定内容とすることができる。
【0026】
本例では、上記のような、タグ統計情報テーブル及びふらつき異常判定設定パラメータの設定内容に基づいて異常タグ検出処理を行い、タグ毎の状態を監視している。
すなわち、タグ6を定期的にサーチし、UIDを読み取れた場合をON(タグ検出)、読み取れなかった場合をOFF(タグ未検出)として、サーチする度にONのままであれば、ONが続いた回数をカウント(ONn=ONn+1)し、OFFになったところでON回数を履歴として記録する。次にOFFも同様に、OFFが続いた回数をカウント(OFFn=OFFn+1)し、ONになったところでOFF回数を履歴として記録する。このように、ONとOFFの連続した回数をそれぞれ履歴として記録しておく。そして、直近数回分(ListN)の履歴の平均を算出し、ONが連続した回数の平均値(ONave)が、判定基準(Thresh_ONave)よりも小さい場合にふらついていると判断して“異常状態(ふらつき異常)”とし、判定基準(Thresh_ONave)よりも大きい場合に“正常状態”とする。
【0027】
このような異常タグ検出処理を行った結果、“異常状態”として検出されたタグ6については、“正常状態”のタグ6より多いOFF判定回数を用いてふらつき防止処理を行うことで、誤動作(例えば、実際に物品が存在するにも関わらず「物品が無くなった」(“存在未検出”)と判断すること)を排除する。
このように、“正常状態”と“異常状態”とで異なるOFF判定回数とすることで、“正常状態”にあるタグ6に対しては素早く反応し、“異常状態”にあるタグ6に対しては、反応が遅くなるが誤動作を排除することができる。
なお、本例では、アンテナ5上の複数のタグ6のうち“異常状態”にあるタグ6の割合がf%(所定値)を上回った場合に、アンテナ5の環境に問題があると判断して警告を出すようにしている。警告としては、例えば、表示装置により表示出力され、或いはスピーカにより音声出力される。なお、表示装置・スピーカ等の機器は、例えば、制御機器1に設けられてもよく、システム管理者等の操作端末に設けられてもよい。
【0028】
図5は、タグ6の状態に応じたON判定回数及びOFF判定回数を設定した、状態別判定パラメータを例示している。
同図では、“初期状態”について、ON判定回数=2、OFF判定回数=2、が設定され、“正常状態”について、ON判定回数=1、OFF判定回数=2、が設定され、“ふらつき異常(異常状態)”について、ON判定回数=Fon(ONave)、OFF判定回数=Foff(OFFave)、が設定されている。
ここで、Fon(ONave)は、ONaveの関数であり、例えば、Fon(ONave)=0.1×ONave、である。また、Foff(OFFave)は、OFFaveの関数であり、例えば、Foff(OFFave)=1.5×OFFave、である。本例では、これら関数による算出結果に対し、小数点以下を四捨五入して整数値に丸めているが、切り上げや切り下げを行ってもよい。なお、本例では、“正常状態”のOFF判定回数に下限を設け、“正常状態”のOFF判定回数が1以上となるようにしており、また、“異常状態”のOFF判定回数に下限を設け、“異常状態”のOFF判定回数が“正常状態”のOFF判定回数以下とならないようしている。
なお、この設定内容は例示に過ぎず、システムの運用等に応じた任意の設定内容とすることができる。例えば、“異常状態”のOFF判定回数をOFFaveの関数とせずに、“正常状態”のOFF判定回数(本例では2)よりも大きい定数値としてもよく、要は、“異常状態”のOFF判定回数が、“正常状態”のOFF判定回数より大きい値であることが必要である。
【0029】
図6は、本例のリーダライタシステムによるタグ読取処理フローを例示している。
すなわち、定期的にタグ読取処理が起動され(ステップS1)、以下の処理(ステップS2〜S7)が行われる。
まず、対象のタグ6からUIDを読み取り(ステップS2)、その読み取り結果に応じて統計情報(タグ統計情報テーブル)を更新する(ステップS3)。その後、異常タグ検出処理を行って(ステップS4)、その処理結果に応じてフィルタのパラメーター値(ON判定回数及びOFF判定回数)を決定し(ステップS5)、当該パラメーター値を用いてふらつき防止処理(フィルタ)を行う(ステップS6)。そして、このふらつき防止処理の結果データ(“存在検出”又は“存在未検出”を表すデータ)を出力する(ステップS7)。
なお、結果データの出力としては、例えば、表示装置に対して出力されて画面表示され、或いは印刷装置に対して出力されて紙媒体等へ印刷され、或いは記憶装置に対して出力されて記憶保持される。なお、表示装置・印刷装置・記憶装置等の機器は、例えば、制御機器1に設けられてもよく、システム管理者等の操作端末に設けられてもよい。
【0030】
図7は、本例の異常タグ検出処理における状態遷移を例示している。
“初期状態(S0)”の場合において、ON回数(ONn)>1となった場合に“正常状態(S1)”へ遷移する。
“正常状態(S1)”の場合において、平均連続ON回数(ONave)<平均連続ON(Thresh_ONave)となった場合に“異常状態(S2)”へ遷移し、OFF回数(OFFn)>連続OFF回数(Thresh_OFF)となった場合に“初期状態(S0)”へ遷移する。
“異常状態(S2)”の場合において、平均連続ON回数(ONave)>平均連続ON(Thresh_ONave)となった場合に“正常状態(S1)”へ遷移し、OFF回数(OFFn)>連続OFF回数(Thresh_OFF)となった場合に“初期状態(S0)”へ遷移する。
つまり、“初期状態”においてタグ6からの読み取りが成功(本例では、2回以上連続して成功)すると“正常状態”へ遷移し、その後は読み取りが安定的に成功しているか否かに応じて“正常状態”又は“異常状態”が決定され、一定期間に亘って読み取りがない場合に“初期状態”へ戻る。
【0031】
図8は、本例のふらつき防止処理における“存在検出”の状態又は“存在未検出”の状態の遷移を例示している。
“存在未検出”の状態の場合において、タグ6からの読み取りが成功する度(タグ検出(ON)となる度)にON回数(ONn)をカウントアップ(1加算)し、ON回数(ONn)≧ON判定回数(Param_ONn)となった場合に、ON回数(ONn)を履歴として記録して、“存在検出”の状態へ遷移する。なお、タグ6からの読み取りが失敗した場合(タグ未検出(OFF)の場合)には、ON回数が初期化(ONn=0)される。
つまり、1回でもONになったからといって無条件に“存在未検出”から“存在検出”へ遷移するのではなく、ON回数(ONn)<ON判定回数(Param_ONn)の間は“存在未検出”に留まり、ON回数(ONn)≧ON判定回数(Param_ONn)となったことを以って“存在検出”へ遷移して、「現在の値」をONにする。
【0032】
“存在検出”の状態の場合において、タグ6からの読み取りが失敗する度(タグ未検出(OFF)となる度)にOFF回数(OFFn)をカウントアップ(1加算)し、OFF回数(OFFn)≧OFF判定回数(Param_OFFn)となった場合に、OFF回数(OFFn)を履歴として記録して、“存在未検出”の状態へ遷移する。なお、タグ6からの読み取りが成功した場合(タグ検出(ON)の場合)には、OFF回数が初期化(OFFn=0)される。
つまり、1回でもOFFになったからといって無条件に“存在検出”から“存在未検出”へ遷移するのではなく、OFF回数(OFFn)<OFF判定回数(Param_OFFn)の間は“存在検出”に留まり、OFF回数(OFFn)≧OFF判定回数(Param_OFFn)となったことを以って“存在未検出”へ遷移する。
【0033】
ここで、本例では、タグ状態(“初期状態”、“正常状態”、“異常状態”)と検出結果(“存在検出”、“存在未検出”)の組み合わせとして、“初期状態”&“存在未検出”、“正常状態”&“存在未検出”、“正常状態”&“存在検出”、“異常状態”&“存在未検出”、“異常状態”&“存在検出”、を想定している。
【0034】
図3のタグ統計情報テーブルを参照して、タグ状態及び検出結果について具体的に説明する。
例えば、UID=0001のタグデータによると、平均連続ON回数(ONave)=500で平均連続ON(Thresh_ONave)=30より大きいため、状態=“正常状態(S1)”が設定され、“正常状態”におけるON判定回数(Param_ONn)=1、OFF判定回数(Param_OFFn)=2が設定されている。そして、現在の値=ONであり、ON回数(ONn)=500はON判定回数(Param_ONn)=1以上であるため、“存在検出”と判断される。
【0035】
例えば、UID=0003のタグデータによると、平均連続ON回数(ONave)=300で平均連続ON(Thresh_ONave)=30より大きいため、状態=“正常状態(S1)”が設定され、“正常状態”におけるON判定回数(Param_ONn)=1、OFF判定回数(Param_OFFn)=2が設定されている。そして、現在の値=OFFであり、OFF回数(OFFn)=50はOFF判定回数(Param_OFFn)=2以上であるため、“存在未検出”と判断される。
【0036】
例えば、UID=0004のタグデータによると、平均連続ON回数(ONave)=22.3で平均連続ON(Thresh_ONave)=30より小さいため、状態=“異常状態(S2)”が設定され、“異常状態”におけるON判定回数(Param_ONn)=Fon(ONave)=2、OFF判定回数(Param_OFFn)=Foff(OFFave)=3が設定されている。そして、現在の値=OFFで、OFF回数(OFFn)=4はOFF判定回数(Param_OFFn)=Foff(OFFave)=3以上であるため、“存在未検出”と判断される。
【0037】
例えば、UID=0005のタグデータによると、最初(1回目)のONであるため、状態=“初期状態(S0)”が設定され、“初期状態”におけるON判定回数(Param_ONn)=2、OFF判定回数(Param_OFFn)=2が設定されている。そして、現在の値=ONで、ON回数(ONn)=1はON判定回数(Param_ONn)=2未満であるため、前回の判断結果(すなわち“存在未検出”)が維持される。
【0038】
例えば、UID=0006のタグデータによると、平均連続ON回数(ONave)=3で平均連続ON(Thresh_ONave)=30より小さいため、状態=“異常状態(S2)”が設定され、“異常状態”におけるON判定回数(Param_ONn)=Fon(ONave)=1、OFF判定回数(Param_OFFn)=Foff(OFFave)=158が設定されている。そして、現在の値=OFFで、OFF回数(OFFn)=100はOFF判定回数(Param_OFFn)=Foff(OFFave)=158未満であるため、前回の判断結果が維持される。すなわち、前回の判断結果が“存在検出”の場合には“存在検出”となり、前回の判断結果が“存在未検出”の場合には“存在未検出”となる。
【0039】
ここで、UID=0006のタグデータでは、“異常状態”におけるON判定回数(Param_ONn)=Fon(ONave)=1となっているため、1回でもONになると“存在検出”と判断される。このため、実際は通信範囲内にタグ6が存在しないにも関わらず“存在検出”と判断する誤動作の発生が考えられるが、本例ではタグ6から読み取ったUIDについてCRCチェックを行っており、通信範囲内にタグ6が存在しない場合にONとなることは殆どありえないことから、このような誤動作が防止される。なお、CRCチェックを行わない場合には、ON判定回数(Param_ONn)を2以上の値とすることで、実際には存在しないタグ6について“存在検出”と判断する誤動作の発生を防止してもよい。
【0040】
なお、たまに読み取れない状態は許容されるが、たまにしか読めない(数十回に1回程度読める)状態の場合には有効なデータとしては使い物にならないことが多い。そこで、このようなデータを捨ててしまいたい場合は、ON判定回数を大きめにしておくことで、殆どのデータを排除することができる。逆に、たまにしか読めないが、その間もタグ6があったと“みなしたい”場合は、ON判定回数を小さくするとともにOFF判定回数を大きくすればよく、こうすることで、例えば1回のONで長時間“存在検出”の状態に留まることになる。
ON判定回数の設定例としては、例えば、“初期状態”の場合は、どのような状況のタグ6か分からないのでON判定回数=2とし、“正常状態”の場合は、検出速度優先でON判定回数=1とし、“異常状態”の場合は、たまにしか読めないタグ6のデータは捨てるために或る程度大きい値とする。
【0041】
以上のように、RFIDタグを利用した物品管理システムにおいて、定期的にタグをスキャンして物品の所在を管理する機能を実現させる際に、RFIDの性質上読みこぼしが発生してしまうため、タグから読み取りできない原因が読みこぼしによるものか物品の移動によるものかを区別する必要があるところ、本例では、読みこぼしの出現パターンを複数(パターン1〜4)に分類してタグ毎に出現パターン(正常状態:パターン1又はパターン2、異常状態:パターン3)を認識し、読みこぼしを効率よく区別している。このため、ハードウェア的に多少不安定な読み取り性能であっても、誤動作の少ない読み取りデータを取得することができる。
【0042】
なお、本例では、統計情報テーブル等の各データを制御機器1のメモリに保持しており、制御機器1が統計情報テーブル等の各データを参照して制御プログラム2を実行することで異常タグ検出処理やふらつき防止処理を行っているが、RFIDリーダライタ4等にて制御プログラム2を実行して異常タグ検出処理やふらつき防止処理を行うようにしてもよく、その場合には、必要なデータ及び制御プログラム2をRFIDリーダライタ4等のメモリに保持するようにすればよい。
【0043】
ここで、本発明に係るシステムや装置などの構成としては、必ずしも以上に示したものに限られず、種々な構成が用いられてもよい。また、本発明は、例えば、本発明に係る処理を実行する方法或いは方式や、このような方法や方式を実現するためのプログラムや当該プログラムを記録する記録媒体などとして提供することも可能であり、また、種々なシステムや装置として提供することも可能である。
また、本発明の適用分野としては、必ずしも以上に示したものに限られず、本発明は、種々な分野に適用することが可能なものである。
また、本発明に係るシステムや装置などにおいて行われる各種の処理としては、上記のようなソフトウェア構成に限られず、例えば各機能手段が独立したハードウエア回路として構成されてもよい。
また、本発明は上記プログラムを格納したフロッピー(登録商標)ディスクやCD(Compact Disc)−ROM等のコンピュータにより読み取り可能な記録媒体や当該プログラム(自体)として把握することもでき、当該プログラムを当該記録媒体からコンピュータに入力して実行させることにより、本発明に係る処理を遂行させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の一実施形態に係るリーダライタシステムの構成を例示する図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る読みこぼし出現パターンの分類を例示する図である。
【図3】本発明の一実施形態に係るタグ統計情報テーブルを例示する図である。
【図4】本発明の一実施形態に係るふらつき異常判定設定パラメータを例示する図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る状態別判定パラメータを例示する図である。
【図6】本発明の一実施形態に係るタグ読取処理フローを例示する図である。
【図7】本発明の一実施形態に係る異常タグ検出処理における状態遷移を例示する図である。
【図8】本発明の一実施形態に係るふらつき防止処理における状態遷移を例示する図である。
【符号の説明】
【0045】
1・・制御機器、 2・・制御プログラム、 3・・ネットワーク、 4・・RFIDリーダライタ、 5・・アンテナ、 6・・RFIDタグ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非接触通信により移動体から情報を読み取るリーダライタシステムにおいて、
過去における前記移動体からの情報の読み取り結果に基づいて、当該移動体との間における通信状態が予め定められた正常状態であるか異常状態であるかを設定する状態設定手段と、
前記状態設定手段により正常状態に設定された移動体については、当該移動体からの情報を第1の回数連続して読み取れないときに当該移動体は存在しないと判定し、前記状態設定手段により異常状態に設定された移動体については、当該移動体からの情報を前記第1の回数より多い第2の回数連続して読み取れないときに当該移動体は存在しないと判定する存在判定手段と、
を備えたことを特徴としたリーダライタシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−113378(P2010−113378A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−282677(P2008−282677)
【出願日】平成20年11月4日(2008.11.4)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】