説明

リードスイッチの製造方法、及び溶接治具

【課題】 リードスイッチを信号端子用のターミナルにシリーズ溶接する際に、リードスイッチの接点部の溶着を防ぐことが可能な並列接続したリードスイッチの製造方法、及び溶接治具を提供する。
【解決手段】 封止したガラス管の両端にリード端子6a,7a,6b,7bを備えたリードスイッチ1a,1bを信号端子用のターミナル21,22上に垂直に配置し、シリーズ溶接により冗長接合する際、被溶接体であるリード端子6a,6b及びターミナル21の二点、または被溶接体であるリード端子7a,7b及びターミナル22の二点の被溶接点に正負一対の上部電極4a,4bを当接させるとともに、下部電極51、または下部電極52を当接させて溶接電流を供給する。このとき、リードスイッチ1a,1bの接点部2a,2b近傍に外部磁石3,3a,3bを配置して接点部2a,2bに磁気反発力を発生させることにより、接点部2a,2bを開状態に保ち、接点部2a,2bの溶着を防ぐ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リードスイッチのリード端子を信号端子用のターミナルにシリーズ溶接するためのリードスイッチの製造方法、及び溶接治具に関する。
【背景技術】
【0002】
リードスイッチは、一対の磁性体リード端子(以下、リード端子という)を所定の間隙を持たせ、不活性ガスとともにガラス管に封入したものであり、このリードスイッチにマグネット等を近づけることで磁界を加えて二本のリード端子を磁化し、接点部にN極・S極の磁極を発生させることにより接点部を開閉させ、ON、OFF動作を行うものである。
【0003】
ここで、リードスイッチの中には、仮に一本のリードスイッチが動作不良を起こしても製品として不具合が起こらないようにするために、二本のリードスイッチを信号端子用のターミナルに並列に接合し、冗長性を持たせているものがある(例えば、特許文献1参照)。このように二本のリードスイッチの各リード端子を信号端子用のターミナルに冗長接合する方法には、一般的に、一点のスポット溶接が用いられるが、その理由は、シリーズ溶接のような二点の被溶接点に正負一対の上部電極を当接させ、二点間に溶接電流を流して接合する方法では、溶接電流によって磁界が発生し、この磁界によりリードスイッチの接点部が閉じてしまい、その結果、リードスイッチの接点部が溶着されてしまう恐れがあるためである。
【0004】
図4は、従来の方法でリードスイッチをシリーズ溶接する場合の接点部の開閉動作について説明する図である。なお、図4(a)は上方から見た平面図であり、図4(b)はC方向から見た図であり、図4(c)はD方向から見た図である。図4(a)に示すように、まず、リードスイッチ1a,1bをターミナル21,22上に垂直に配置する。次に、ターミナル21,22にリード端子6a,6b,および7a,7bを溶接する。
【0005】
このとき、図4(b)に示すように、ターミナル21の下部から下部電極51を当接させ、またリード端子6a,6bの上部から正負一対の上部電極4a,4bを当接させ、所定の圧力を加えて上部電極4aから溶接電流を供給する。すると、溶接電流は被溶接体であるリード端子6a及びターミナル21を介して下部電極51へ、更にはターミナル21を介して被溶接体であるリード端子6bへ流れていくため、リード端子6a,6b及びターミナル21にも溶接電流が十分に流れ、接合されることとなる(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
【特許文献1】特開2003−31094号公報
【特許文献2】特開2003−205372号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述のようなシリーズ溶接を行う場合には、図4(c)に示すように、リード端子6b,7bの近傍に溶接電流による磁界m1が発生してしまう。その結果、リード端子6b,7bはそれぞれN極、S極に磁化され、接点部2bが閉じ、溶接電流が流れて接点部2bが溶着してしまう怖れがあった。
【0008】
一方、接点部2a,2bが溶着する怖れのない一点のスポット溶接を行う場合には、被溶接点を一点ずつ溶接するため、リードスイッチ1a,1bをターミナル21,22に冗長接合するには、合計四点の溶接が必要となり、加工に時間がかかってしまうという問題があった。
【0009】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、リードスイッチを信号端子用のターミナルにシリーズ溶接により接合する際に、リードスイッチの接点部の溶着を防ぐことが可能な並列接続したリードスイッチの製造方法、及び溶接治具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前述した目的を達成するために第1の発明は、封止したガラス管の両端に一対のリード端子を備えたリードスイッチを信号端子用のターミナルにシリーズ溶接により接合する並列接続したリードスイッチの製造方法であって、前記リードスイッチの接点部の近傍に磁石を配置して該接点部に磁気反発力を発生させ、該接点部を開状態に保持し、前記リード端子を前記ターミナルにシリーズ溶接することを特徴とする並列接続したリードスイッチの製造方法である。
【0011】
また、第1の発明において、二本の前記リードスイッチをシリーズ溶接により前記ターミナルに接合する際に、前記磁石を二本の前記リードスイッチの各接点部の近傍にそれぞれ個別に配置することにより、前記リードスイッチの長手方向を軸とした各接点部の回転角度を統一することを特徴とする並列接続したリードスイッチの製造方法である。
【0012】
また、前述した目的を達成するために第2の発明は、封止したガラス管の両端に一対のリード端子を備えたリードスイッチを信号端子用のターミナルにシリーズ溶接により接合するためのリードスイッチの溶接治具であって、前記リードスイッチの接点部に磁気反発力を与えて、該接点部を開状態に保持するための磁石を備えたことを特徴とするリードスイッチの溶接治具である。
【0013】
また、第2の発明において、二本の前記リードスイッチをシリーズ溶接により前記ターミナルに接合する際に、前記磁石は、二本の前記リードスイッチの各接点部の近傍にそれぞれ個別に配置されることを特徴とするリードスイッチの溶接治具である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、リードスイッチを信号端子用のターミナルにシリーズ溶接により接合する際に、リードスイッチの接点部の溶着を防ぐことが可能な並列接続したリードスイッチの製造方法、及び溶接治具を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下図面に基づいて、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0016】
(第1の実施の形態)
まず、本発明の第1の実施の形態に係る並列接続したリードスイッチの製造方法、及び溶接治具について説明する。
【0017】
図1は、第1の実施の形態に係る並列接続したリードスイッチの製造方法、及び溶接治具を説明する図である。なお、図1(a)は上方から見た平面図であり、図1(b)はA方向から見た図であり、図1(c)はB方向から見た図である。
【0018】
本第1の実施の形態において、図1に示すように、リードスイッチ1a,1bは封止したガラス管に各々一対のリード端子6a,7a、または一対のリード端子6b,7bを備えており、信号端子用のターミナル21,22上に垂直に配置し、このターミナル21,22に各リードスイッチ1a,1bの各リード端子6a,7a,6b,7bをシリーズに抵抗溶接によって接合する。シリーズ溶接には、上部電極4a,4b、及び下部電極51,52と、外部磁石3とを備えた溶接治具10を用いる。
【0019】
この溶接治具10を用いてリード端子6a,6bをターミナル21にシリーズ溶接する際は、図1(b)に示すように、ターミナル21の下部から下部電極51を当接させ、またこのターミナル21に置かれたリード端子6a,6bの上部から正負一対の上部電極4a,4bを当接させ、溶接電流を供給する。
【0020】
ここで、リードスイッチ1a,1bの下部に外部磁石3を配置させる。この外部磁石3は、リードスイッチ1a,1bの接点部2a,2bに磁気反発力を発生させて、接点部2a,2bを開状態に保持するためのものである。また、外部磁石3の磁化方向がリードスイッチ1a,1bに対して垂直になるように配置する。
【0021】
図1の例では、図1(c)に示すように、リードスイッチ1bの接点部2b側に外部磁石3のN極面を向けて配置させる。このため、接点部2bにおいて、リード端子6b,7bはS極に磁化され、その磁気反発力により接点部2bは開状態となる。また、外部磁石3は永久磁石を用い、その磁力の大きさは、溶接電流により発生した磁界によって接点部2bを閉じる力を妨げるに足る大きさである。
【0022】
次に、このような溶接治具10を用いてリードスイッチ1a,1bをターミナル21,22にシリーズ溶接する際の、リードスイッチ1a,1bの接点部2a,2bの開閉動作を説明する。
【0023】
まず、リードスイッチ1a,1bの接点部2a,2bは、外部磁石3によってS極に磁化されているため、接点部2a,2bに磁気反発力が発生し開状態となっている。このように外部磁石3の磁力により接点部2a,2bが開いた状態で、図1(b)に示すように被溶接点であるリード端子6a,6b及びターミナル21の下部に下部電極51を配置させ、上部から上部電極4a,4bを当接させて溶接電流を供給すると、溶接電流は上部電極4a、上部電極4b間を下部電極51を介して流れるため、図1(c)の矢印m1に示す方向に溶接電流による磁界が発生する。
【0024】
この磁界によって、リードスイッチ1a,1bのリード端子6a,7a,6b,7bはそれぞれS極・N極の異極に磁化されて接点部2a,2bに磁気吸引力が発生し、接点部2a,2bを閉じようとする。しかしながら、接点部2a,2bには外部磁石3による磁気反発力が生じており、この磁気反発力によって接点部2a,2bの閉動作が妨げられ、リードスイッチ1a,1bは開状態を保つことになる。
【0025】
その結果、リードスイッチ1a,1bの接点部2a,2bに溶接電流が流れることがなく、接点部2a,2bの溶着を防ぐことができる。
【0026】
以上説明したように、第1の実施の形態のリードスイッチの溶接方法によれば、リードスイッチ1a,1bの近傍に配置した外部磁石3によって一対のリード端子6a,7a、または一対のリード端子6b,7bを同極に磁化し、接点部2a,2bを開状態に保った状態で、シリーズ溶接を行うため、溶接電流により発生する磁界によって接点部2a,2bに磁気吸引力が生じる場合にも、その磁気吸引力を外部磁石3による磁気反発力にて妨げることが可能となる。従って、接点部2a,2bを開状態に保持でき、接点部2a,2bの溶着を防ぐことが可能となる。その結果、リードスイッチ1a,1bとターミナル21,22とをシリーズ溶接により接合することが可能となり、1点毎にスポット溶接する場合に比較して加工時間を短縮できるようになる。
【0027】
(第2の実施の形態)
次に、本発明の第2の実施の形態に係るリードスイッチの溶接方法、及び溶接治具について説明する。
【0028】
図2は、本発明の第2の実施の形態に係る並列接続したリードスイッチの製造方法を説明する図である。図2に示すように、第2の実施の形態の並列接続したリードスイッチの製造方法では、第1の実施の形態と同様に、リードスイッチ1a,1bを信号端子用のターミナル21,22上に乗せ、シリーズ溶接により冗長接合する。このとき、リードスイッチ1a,1bの各接点部2a,2bの直下にそれぞれ外部磁石3a,3bを個々に配置させる。
【0029】
外部磁石3a,3bは、第1の実施の形態の外部磁石3と同様に、シリーズ溶接の溶接電流により発生する磁界によって生じる接点部2a,2bの磁気吸引力を妨げる磁気反発力を発生させるためのものであり、永久磁石によって構成する。その磁力の大きさは、溶接電流により発生した磁界によって接点部2a,2bを閉じる力を妨げるに足る大きさである。
【0030】
また、外部磁石3a,3bの磁化方向は、リードスイッチ1a,1bに対して垂直とし、統一する。例えば、外部磁石3aのN極面を接点部2a側に向けた場合は、外部磁石3bのN極面を接点部2b側に向けて配置する。
【0031】
図3は、リードスイッチの接点部の回転角度について説明する図である。なお、図3(a)はリードスイッチ1aの平面図であり、図3(b)は外部磁石3a,3bを配置しない場合のD−D線断面図であり、図3(c)は外部磁石3a,3bを配置した場合の接点部2a,2bの向きを示す図である。
【0032】
ここで、図3を参照して、リードスイッチ1a,1bの長手方向を軸とした接点部2a,2bの回転角度について説明する。
【0033】
図3(b)に示すように、リードスイッチ1a,1bを、外部磁石3a,3bを配置しないでターミナル21,22上に乗せた状態では、リードスイッチ1a,1bの長手方向を軸とした回転角度は360度ランダムとなり、接点部2a,2bはそれぞれ様々な方向を向いている。ここで、図3(c)に示すように、外部磁石3a,3bを各接点部2a,2bの近傍にそれぞれ個別に配置することにより、各接点部2a,2bの向きは統一され、揃えることが可能となる。
【0034】
以上説明したように、第2の実施の形態のリードスイッチの溶接方法によれば、リードスイッチ1a,1bの各接点部2a,2bの直下に個々に外部磁石3a,3bを配置するため、第1の実施の形態のリードスイッチの溶接方法と同様に、シリーズ溶接する際にリードスイッチ1a,1bの接点部2a,2bを開状態に保って接点部2a,2bの溶着を防ぐことが可能であるばかりでなく、リードスイッチ1a,1bの長手方向を軸とした各接点部2a,2bの回転角度を揃えることが可能となる。
【0035】
なお、上述の第1及び第2の実施の形態において、被溶接点間に供給する溶接電流の向きは、その溶接電流により発生する磁界によって接点部2a,2bに生じる磁力と、外部磁石3,3a,3bによって接点部2a,2bに生じる磁力とが、反発するように設定している。
【0036】
また、外部磁石3,3a,3bは、リードスイッチ1a,1bの下部に配置される例を示したが、これに限るものではなく、外部磁石3,3a,3bの着磁方向が接点部2a,2bに対して垂直になるように配置され、外部磁石3,3a,3bによって接点部2a,2bに発生する磁力が、接点部2a,2bを開状態に保持するように配置されていればよい。
【0037】
以上図面を参照しながら本発明に係るリードスイッチの溶接方法、及び溶接治具の好適な実施形態について説明したが、前述した実施の形態に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る並列接続したリードスイッチの製造方法、及び溶接治具を説明する図。図1(a)は上方から見た平面図、図1(b)はA方向から見た図、図1(c)はB方向から見た図。
【図2】本発明の第2の実施の形態に係る並列接続したリードスイッチの製造方法を説明する図。図2(a)は上から見た図、図2(b)はA方向から見た図、図2(c)はB方向から見た図。
【図3】リードスイッチの接点部の回転角度について説明する図。図3(a)はリードスイッチの平面図、図3(b)は外部磁石を配置しない場合のD−D線断面図、図3(c)は外部磁石を配置した場合の接点部の向きを表す図。
【図4】従来の方法でリードスイッチをシリーズ溶接する場合の接点部の開閉動作について説明する図。図4(a)は上方から見た平面図、図4(b)はC方向から見た図、図4(c)はD方向から見た図。
【符号の説明】
【0039】
1a,1b リードスイッチ
6a,6b,7a,7b リード端子
2a,2b 接点部
8a,8b ガラス管
21,22 ターミナル
3,3a,3b 外部磁石
4a,4b 上部電極
51,52 下部電極
10 溶接治具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
封止したガラス管の両端に一対のリード端子を備えたリードスイッチを信号端子用のターミナルにシリーズ溶接により接合する並列接続したリードスイッチの製造方法であって、前記リードスイッチの接点部の近傍に磁石を配置して該接点部に磁気反発力を発生させ、該接点部を開状態に保持し、前記リード端子を前記ターミナルにシリーズ溶接することを特徴とする並列接続したリードスイッチの製造方法。
【請求項2】
二本の前記リードスイッチをシリーズ溶接により前記ターミナルに接合する際に、前記磁石を二本の前記リードスイッチの各接点部の近傍にそれぞれ個別に配置することにより、前記リードスイッチの長手方向を軸とした各接点部の回転角度を統一することを特徴とする請求項1記載の並列接続したリードスイッチの製造方法。
【請求項3】
封止したガラス管の両端に一対のリード端子を備えたリードスイッチを信号端子用のターミナルにシリーズ溶接により接合するためのリードスイッチの溶接治具であって、前記リードスイッチの接点部に磁気反発力を与えて、該接点部を開状態に保持するための磁石を備えたことを特徴とするリードスイッチの溶接治具。
【請求項4】
二本の前記リードスイッチをシリーズ溶接により前記ターミナルに接合する際に、前記磁石は、二本の前記リードスイッチの各接点部の近傍にそれぞれ個別に配置されることを特徴とする請求項3記載のリードスイッチの溶接治具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−192412(P2008−192412A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−24225(P2007−24225)
【出願日】平成19年2月2日(2007.2.2)
【出願人】(000134257)NECトーキン株式会社 (1,832)
【Fターム(参考)】