説明

リール台装置

リール台装置は、回転駆動される駆動部材20と、駆動部材20に対して相対的に回転可能に設けられたリール台50と、駆動部材20とリール台50との間にヒステリシストルクを発生させるヒステリシス板30およびマグネット60と、駆動部材20とリール台50との間に摩擦トルクを発生させる摩擦摺動部材70とを備える。駆動部材20は、リール軸10を取り囲む軸受部分20aと、半径方向外方に延びるフランジ部20bとを含む。リール台50は、リール軸10を取り囲む軸受部分50aと、半径方向外方に延びるフランジ部50bとを含む。ヒステリシストルクを発生する部材は両フランジ部20b、50bの間に設けられ、摩擦トルクを発生させる部材70は両軸受部分20a、50aの間に設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
この発明はリール台装置に関し、特に、デジタルビデオカメラ(DVC)、ビデオテープレコーダ、8ミリビデオテープレコーダ(8ミリVTR)、デジタルオーディオテープレコーダ(DAT)、カセットテープレコーダなどのテープ駆動部に用いられるリール台装置に関する。
【背景技術】
磁気クラッチを用いたリール台装置の一例が、特開昭61−63949号公報に開示されている。この公報に開示されたリール台装置は、マグネット板を取付けたリール台と、上記のマグネット板に対向するヒステリシス板を取付けた駆動ギヤとを備えている。駆動ギヤの回転は、マグネット板とヒステリシス板との間に発生するヒステリシストルクによってリール台に伝達される。マグネット板の一方の面はヒステリシス板に対向するが、その反対側に位置する他方の面にヨーク板を取付けてヒステリシストルクを大きくしている。
図4は、従来のリール台装置の他の例を示している。図示するリール台装置は、バネとフェルトとを用いて摩擦トルクを発生するものである。図4において、リール軸1は図示しないシャーシに取付けられており、このリール軸1に対して円盤状の下リール台2が回転可能に支持されている。下リール台2はリール軸1を取り囲む円筒形軸受部分21と、円筒形軸受部分21の下部から半径方向に延びるフランジ部22とを有している。
上リール台5は、下リール台2の円筒形軸受部分21上に圧力嵌めされる円筒形軸受部分51と、円筒形軸受部分51の下部から半径方向に延びるフランジ部52とを有している。上リール台5は下リール台2と一体となってリール軸1の周りを回転する。上リール台5の上部には軸方向へ摺動するリールフック7が設けられており、このリールフック7を介して図示を省略したリールが上リール台5に固定される。上リール台5の円筒形軸受部分51の内面形状に注目すると、その下方部分の内径が下リール台2の円筒形軸受部分21の外面から離れるように大きくされている。この拡大された内径部分にコイルばね6が収納されている。
上リール台5のフランジ部52と下リール台2のフランジ部22との間に位置する円盤状の押え板4はその外周部にギヤ41を有しており、図示していない駆動機構によって回転駆動される。押え板4と下リール台2のフランジ部22との間には、厚みのあるリング状のフェルト3が配置されている。押え板4とフェルト3と下リール台2のフランジ部22との接触状態は、コイルばね6によって維持されるので、それらの間に摩擦トルクが発生する。すなわち、回転駆動される押え板4の回転は、フェルト3を介した摩擦トルクによって下リール台2のフランジ部22に伝達される。これにより、下リール台2と上リール台5とは、一体になって回転する。
上述の従来技術には、次のような問題点がある。
特開昭61−63949号公報に開示されたリール台装置では、駆動ギヤの回転を、ヒステリシス板とマグネット板との間に発生するヒステリシストルクのみによってリール台に伝達するものであるので、高トルクの発生を期待できない。
図4に示したリール台装置では、駆動機構によって駆動される押え板4の回転を摩擦トルクのみによってリール台2,5に伝達するものであるので、高トルクの発生を期待できない。摩擦トルクを高めるためにコイルばね6の弾発力を大きくすることが考えられるが、弾発力が大きすぎると上リール台5が上方に抜け出てしまうおそれがある。また、摩擦トルクは温度や湿度の影響を受けやすいので、摩擦トルクの大きさを最適に調節するのは困難である。さらに、図4に示したリール台装置では、回転駆動される押え板4を上リール台5と下リール台2との間に配置し、さらに押え板4と下リール台2のフランジ部22との間にフェルトを配置するものであるので、部品点数が多くなり、しかも構造が複雑となる。そのため、リール台装置の小型化が困難となる。
【発明の開示】
この発明の目的は、高いトルクを発生することのできるリール台装置を提供することである。
この発明の他の目的は、小型でありながら高トルクを発生することのできるリール台装置を提供することである。
この発明に従ったリール台装置は、回転駆動される駆動要素と、駆動要素に対して相対的に回転可能に設けられたリール台と、駆動要素とリール台との間にヒステリシストルクを発生させるヒステリシストルク発生手段と、駆動要素とリール台との間に摩擦トルクを発生させる摩擦トルク発生手段とを備える
上記構成の本発明によれば、ヒステリシストルクおよび摩擦トルクの両者によってリール台装置のトルクを決定するものであるので、高トルク化を達成できる。
駆動要素は、好ましくは、リール軸を取り囲む軸受部分と、この軸受部分の外面から半径方向外方に延びるフランジ部とを含む。リール台は、好ましくは、リール軸を取り囲む軸受部分と、この軸受部分の外面から半径方向外方に延びるフランジ部とを含む。ヒステリシストルク発生手段は、駆動要素のフランジ部とリール台のフランジ部との間に設けられ、摩擦トルク発生手段は、駆動要素の軸受部分と前記リール台の軸受部分との間に設けられる。このような構成にすれば、小型でありながら高トルクを発生することのできるリール台装置を実現できる。
摩擦トルク発生手段は、好ましくは、駆動要素とリール台との間に挟まれてそれらと摩擦接触する摩擦摺動部材を含む。摩擦摺動部材は、例えば、フェルトまたは不織布より成る。好ましくは、駆動要素およびリール台は、それぞれ、摩擦摺動部材に対向する面にそれらの回転軸心を中心とする円形の溝を有している。
この円形の溝は、同心円状に複数設けてもよい。摩擦接触する摩擦摺動部材と駆動要素との間、および摩擦摺動部材とリール台との間に微粉が発生することがあるが、そのような微粉を円形溝内に逃がすことができる。
ヒステリシストルク発生手段は、典型的には、駆動要素およびリール台のうちのいずれか一方に取付けられたマグネットと、他方に取付けられた磁性板とを含む。一つの実施形態では、ヒステリシストルク発生手段は、駆動要素およびリール台のうちのいずれか一方に固定された磁性体からなるバックヨークを含む。この場合、上記のマグネットはバックヨークに吸着される。このようにすれば、接着剤を使用することなくマグネットを取付けることができるので、組立てが容易となり製造コストを低減できる。
摩擦トルク発生手段は、マグネットと磁性板との間に挟まれてそれらと摩擦接触する摩擦摺動部材を含むものであってもよい。回転駆動要素は、例えば、歯車である。
【図面の簡単な説明】
図1は、この発明の一実施形態に係るリール台の断面図である。
図2は、図1に示した摩擦摺動部を拡大して示す図である。
図3は、この発明の一実施形態に係るリール台の分解斜視図である。
図4は、従来のリール台装置の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
図1ないし図3において、リール軸10は図示しないシャーシなどに取付けられており、このリール軸10上に駆動部材20とリール台50とが回転可能に取付けられている。下方に位置する駆動部材20と上方に位置するリール台50とは、相対的に回転可能である。
駆動部材20は、リール軸10を取り囲む円筒状の軸受部分20aと、この軸受部分20aの外面から半径方向外方に延びるフランジ部20bと、このフランジ部20bの外周部に形成されるギア20cとを含む。フランジ部20b上には、磁性板としてのリング状のヒステリシス板30が設けられている。
リール台50は、リール軸10を取り囲む円筒状の軸受部分50aと、この軸受部分50aの外面から半径方向外方に延びるフランジ部50bとを含む。フランジ部50bの下面には磁性体からなるリング状のバックヨーク40が固着されており、このバックヨーク40にはリング状のマグネット60が吸着されている。この場合、接着剤を使用しなくて済むので安価になる。マグネット60には図3に示すようにN極とS極とがたとえば3極ずつ交互に形成されている。
駆動部材20と、リール台50とのそれぞれの軸受部分20a,50aの対向面には、摩擦摺動部材70が挟まれる。摩擦摺動部材70は、駆動部材20およびリール台50に対して摩擦接触する。摩擦摺動部材70の材料としては、フェルトや、綿、麻、合成繊維等の不織布を用いることができる。このような摩擦摺動部材70と駆動部材20の軸受部分20aとの間、および摩擦摺動部材70とリール台50の軸受部分50aとの間で摩擦トルクが発生する。
また、図2に示すように、駆動部材20の軸受部分20aの摺動面、およびリール台50の軸受部分50aの摺動面には、それらの回転軸心を中心とする円形の溝20d,50dが形成されている。これらの円形溝20d,50dは、同心円状に複数設けるのが好ましい。摩擦接触する摩擦摺動部材70と駆動部材20との間、および摩擦摺動部材70とリール台50との間に微粉が発生することがあるが、そのような微粉を円形溝20d,50d内に逃がすことができる。
リール台50の上部には、コイルバネ80により上方に押し上げられ、軸方向へ摺動するリールフック90が設けられている。このリールフック90により図示しないリールがリール台50上に固定される。なお、図示しないが、駆動部材20の下方にはマグネット60からの漏れ磁束を検知して回転数を検出する磁気センサが設けられている。
このように構成されたリール台装置において、図示しない駆動機構によって駆動部材20が回転駆動されると、駆動部材20のフランジ部20bに取付けられたヒステリシス板30と、リール台50のフランジ部50bに取付けられたマグネット60との間でヒステリシストルクが発生するとともに、駆動部材20の軸受部分20aと摩擦摺動部材70との間、およびリール台50の軸受部分50aと摩擦摺動部材70との間に摩擦トルクが発生する。このように上記構成のリール台装置によれば、駆動部材20の回転をリール台50に伝達するのに際し、ヒステリシストルクおよび摩擦トルクを同時に発生させるものであるので、高トルク化を実現できる。
さらに、図示した実施形態では、ヒステリシストルク発生手段が、駆動部材20のフランジ部20bとリール台50のフランジ部50bとの間に設けられ、摩擦トルク発生手段が、駆動部材20の軸受部分20aとリール台50の軸受部分50aとの間に設けられているので、小型でありながら高トルクを発生することのできるリール台装置を実現できる。
図示していないが、他の実施形態として、摩擦摺動部材70を駆動部材20の軸受部分20aとリール台50の軸受部分50aとの間に挟むのではなく、ヒステリシス板30とマグネット60との間に挟むようにしても良い。
さらに他の実施形態として、ヒステリシス板30をリール台50のフランジ部50bに取付け、バックヨーク40とマグネット60とを駆動部材20のフランジ部20bに取付けるようにしてもよい。
図面を参照してこの発明の実施形態を説明したが、本発明は、図示した実施形態に限定されるものではない。本発明と同一の範囲内において、または均等の範囲内において、図示した実施形態に対して種々の変更を加えることが可能である。
【産業上の利用可能性】
この発明は、小型でかつ高トルクが必要とされるリール台装置に有利に適用され得る。特に、デジタルビデオカメラ、ビデオテープレコーダ、8ミリビデオテープレコーダ、デジタルオーディオテープレコーダ、カセットテープレコーダなどのテープ駆動部に用いることができる。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転駆動される駆動要素と、
前記駆動要素に対して相対的に回転可能に設けられたリール台と、
前記駆動要素と前記リール台との間にヒステリシストルクを発生させるヒステリシストルク発生手段と、
前記駆動要素と前記リール台との間に摩擦トルクを発生させる摩擦トルク発生手段とを備える、リール台装置。
【請求項2】
前記駆動要素は、リール軸を取り囲む軸受部分と、この軸受部分の外面から半径方向外方に延びるフランジ部とを含み、
前記リール台は、リール軸を取り囲む軸受部分と、この軸受部分の外面から半径方向外方に延びるフランジ部とを含み、
前記ヒステリシストルク発生手段は、前記駆動要素のフランジ部と前記リール台のフランジ部との間に設けられ、
前記摩擦トルク発生手段は、前記駆動要素の軸受部分と前記リール台の軸受部分との間に設けられる、請求項1に記載のリール台装置。
【請求項3】
前記摩擦トルク発生手段は、前記駆動要素と前記リール台との間に挟まれてそれらと摩擦接触する摩擦摺動部材を含む、請求項1に記載のリール台装置。
【請求項4】
前記摩擦摺動部材は、フェルトまたは不織布より成る、請求項3に記載のリール台装置。
【請求項5】
前記駆動要素および前記リール台は、それぞれ、前記摩擦摺動部材に対向する面にそれらの回転軸心を中心とする円形の溝を有している、請求項3に記載のリール台装置。
【請求項6】
前記駆動要素および前記リール台は、それぞれ、前記摩擦摺動部材に対向する面にそれらの回転軸心を中心とする同心円状の複数の円形溝を有している、請求項3に記載のリール台装置。
【請求項7】
前記ヒステリシストルク発生手段は、前記駆動要素および前記リール台のうちのいずれか一方に取付けられたマグネットと、他方に取付けられた磁性板とを含む、請求項1に記載のリール台装置。
【請求項8】
前記ヒステリシストルク発生手段は、前記駆動要素および前記リール台のうちのいずれか一方に固定された磁性体からなるバックヨークを含み、
前記マグネットは前記バックヨークに吸着されている、請求項7に記載のリール台装置。
【請求項9】
前記摩擦トルク発生手段は、前記マグネットと前記磁性板との間に挟まれてそれらと摩擦接触する摩擦摺動部材を含む、請求項7に記載のリール台装置。
【請求項10】
前記駆動要素は、歯車である、請求項1に記載のリール台装置。

【国際公開番号】WO2004/051641
【国際公開日】平成16年6月17日(2004.6.17)
【発行日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−556827(P2004−556827)
【国際出願番号】PCT/JP2003/014282
【国際出願日】平成15年11月10日(2003.11.10)
【出願人】(000114710)ヤマウチ株式会社 (82)