説明

リール搬送装置およびリール搬送方法

【課題】故障の発生が少なく、設備停止によるロスが少なく、また、周囲環境への悪影響の少ないリール搬送装置およびリール搬送方法を提供する。
【解決手段】複数のローラの各々を水平に配置すると共に、略鉛直またはリール搬出側に向けて傾斜して列設させたローラ板と、前記ローラ板に対向して立設され、前記ローラ板に向けて傾斜可能な支柱と、前記支柱に、前記ローラ板に向けて伸縮自在に取り付けられ、前記支柱に沿って上下方向に移動可能であると共に傾斜角度が変更可能なリール支持体と、前記ローラ板の上端から前記支柱と反対側に向けて下方に傾斜する傾斜面を有する搬出部とを有するリール搬送装置、および前記リール搬送装置を用いたリール搬送方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ構成材料等の長尺材料が巻き取られたリールを高所に搬送するリール搬送装置およびリール搬送方法に関する。
【背景技術】
【0002】
押出成形によって形成される未加硫ゴムから成る長尺のタイヤ構成材料(サイドウォール等であって、以下、「軟質帯状材」と言う)等の長尺材料は、一旦、巻取装置によりリールに巻き取り、巻取終了後は長尺材料を切断する。(特許文献1)。そして、このリールを次工程へ搬送するため、あるいは暫時的にストックするために、例えば立体形のリールラックに収納する。
【0003】
そして、前記立体形のリールラックにリールを収納する場合のようにリールを高所に向けて搬送するために、リールを上昇させることができるリール搬送装置が用いられる。従来のこの種のリール搬送装置には、油圧リフターが多く用いられている。図6はこのようなリール搬送装置の一例の概要を示す正面図である。図6に示すようにリール載置台61を支持するX形の連結されたアーム62からなるパンタグラフ機構部を油圧シリンダー63により作動させて、リール載置台61上に載せたリールRを昇降させる構造を採っている。
【0004】
しかしながら、昇降頻度が多いため、従来のリール搬送装置においては油圧漏れトラブル等の故障が多く発生し、このため製造設備が停止する等のロスが多く発生するという問題があった。また、油漏れにより周囲環境に悪影響を及ぼすという問題があった。
【特許文献1】特開平9−226017号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで本発明は、従来の油圧リフターに代わり、故障の発生が少なく、設備停止のロスが少なく、また、周囲環境への悪影響の少ないリール搬送装置およびリール搬送方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係るリール搬送装置は、
複数のローラの各々を水平に配置すると共に、略鉛直またはリール搬出側に向けて傾斜して列設させたローラ板と、
前記ローラ板に対向して立設され、前記ローラ板に向けて傾斜可能な支柱と、
前記支柱に、前記ローラ板に向けて伸縮自在に取り付けられ、前記支柱に沿って上下方向に移動可能であると共に傾斜角度が変更可能なリール支持体と、
前記ローラ板の上端から前記支柱と反対側に向けて下方に傾斜する傾斜面を有する搬出部と
を有することを特徴とする。
【0007】
本発明のリール搬送方法は、
前記リール搬送装置を用いるリール搬送方法であって、
前記リール支持体を降下させた状態で前記支柱と前記ローラ板との間に前記リールを搬入するリール搬入工程と、
前記リール支持体の先端を伸長させて前記リールの下側に挿入するリール支持体挿入工程と、
前記リール支持体により前記リールを下から支持した状態で前記リール支持体を上昇させることにより前記リールを前記ローラ板に沿って上昇させるリール上昇工程と、
前記リール上昇工程により前記リールの下端を前記ローラ板の上端近傍まで上昇させた後、前記リールを、前記ローラ板を越えて前記搬出部に移行させるリール移行工程と
を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係るリール搬送装置のリール支持体を支柱に沿って上下方向に移動させる機構は、モータによる電動駆動に適した機構であり、従来のように油圧による駆動に換えて容易に電動駆動を適用することができる。このため油圧漏れ等の故障の発生や油漏れ等の周囲環境への悪影響を容易に防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明をその最良の実施の形態に基づいて説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではない。本発明と同一および均等の範囲内において、以下の実施の形態に対して種々の変更を加えることが可能である。
【0010】
以下、図面により説明する。図1と図5は本発明の一実施の形態に係るリール搬送装置の概略を示す斜視図であり、図2は本発明の一実施の形態に係るリール搬送装置のリール支持体を示す斜視図であり、図3は本発明の一実施の形態に係るリール搬送装置を示す平面図であり、図4は本発明の一実施の形態に係るリール搬送装置の概略を示す側面図である。また、これらの図面には適宜リール搬送方法を示す線画も描かれている。
【0011】
1.リール搬送装置全体の構成の説明
本実施の形態に係るリール搬送装置は、略鉛直に立設されるローラ板1、前記ローラ板1に対抗して立設された昇降装置2、昇降装置2の制御手段(図示省略)、搬出部3を備えている。
【0012】
(1)ローラ板
図1に示すように、ローラ板1は、枠体1a内に複数のローラ1bの各々水平に配置して列設し、各ローラ1bの両端を枠体1aに回転自在に取り付けて構成されている。また、ローラ板1はその上端側がリールRの搬出方向に傾くように少し傾斜させて設けられている。
【0013】
(2)昇降装置
イ.全体構成
昇降装置2は、左右一対の支柱2aと、スプロケット2b、2cと、スプロケット2b、2c間に巻装されるチェーン2dと、スプロケット2b、2cを駆動させるモータMと、チェーン2dにスライダー2eを介して取り付けられるリール支持体の一例としてのシリンダー2fとを備えている。また、昇降装置2は、支持フレーム21を備え、支持フレーム21は一対のサイドフレーム21a、ヘッドフレーム21bおよびベースフレーム21cを備えている。
【0014】
ロ.支柱
左右一対の支柱2aは、前記ベースフレーム21cから上端側をローラ板1側に傾ける(ローラ板側に傾斜する)ことができるように立設され、サイドフレーム21aに係止されている。図1、図4、図5には、支柱2aをローラ板側に傾斜させたときの状態が示されている。ヘッドフレーム21bおよびベースフレーム21cには左右一対の軸受部2gが取り付けられ(図3参照)、ヘッドフレーム21b側の左右一対の軸受部2g間には駆動軸2hが架設され、ベースフレーム21c側の左右一対の軸受部2g間には従動軸2iが架設されている。駆動軸2hには左右一対のスプロケット2b、2bが取り付けられ、従動軸2iには左右一対のスプロケット2c、2cが取り付けられ、上下のスプロケット2b、2c間には図4に示すように左右一対のチェーン2dが巻装されている。
【0015】
ハ.ロール支持体
図4に示すように左右一対の各支柱2aには左右一対のレール2jが取り付けられ、各レール2jにはスライダー2eが抜け落ちないように嵌め込まれ、スライダー2eはチェーン2dに連結されている。これによりスライダー2eは支柱2aに沿ってスライド自在に配置されている。
【0016】
図2に示すように、スライダー2eには昇降台2kが取り付けられ、昇降台2kには左右一対のシリンダー2fが取り付けられている。シリンダー2fは長さや上下方向の向き(角度)を自在に変更することができる。また、シリンダー2fの先端にはリールとの間に摩擦が生じないようにローラ2mが取り付けられている。
【0017】
ニ.駆動機構部
図4に示すように、ヘッドフレーム21b側の駆動軸2hの一端には別のスプロケット2nが取り付けられ、ヘッドフレーム21bにはモータMが取り付けられ、モータMの出力軸にはスプロケット2pが取り付けられ、このスプロケット2pと駆動軸2hのスプロケット2nの間にはチェーン2qが巻装されている。なお図1に示した符号2rはカバーである。
【0018】
そして、モータMを正転させることにより、モータの駆動力がスプロケット2p、チェーン2q、スプロケット2nを介して駆動軸2hに伝達され、さらにスプロケット2b、チェーン2dを介してスライダー2eに伝達され、昇降台2kを介してスライダー2eに取り付けられたシリンダー2fが支柱2aに沿って上昇する。また、モータMを逆転させることにより、シリンダー2fが支柱2aに沿って降下する。
【0019】
ホ.搬出部
また、搬出部3には、ローラ板1の上端の近傍を始端とし、かつ、この始端から終端に向けて下方に傾斜した傾斜面(スロープ)3aが設けられている。傾斜面(スロープ)3aの終端側は立体型のリールラック(図示省略)の搬入口と連なっている。
【0020】
2.本実施の形態のリール搬送装置を用いたリール搬送方法の各工程の説明
次に図1、図4および図5を用いて各工程を説明する。
【0021】
(1)前工程
リールRは特許文献1の巻取装置(図示省略)により軟質帯状材が巻き取られた後、図1のようにリール載置台4に載せられて地上に敷設されたレール5上を移動してリール搬送装置の昇降装置2とローラ板1との間に搬入される。
【0022】
図5に示すようにリール載置台4は、台本体4aおよび支承ローラ4bによって構成されており、リールRに対してその巻胴の両側に設けられたフランジ部R1を支承するようになっている。すなわち、リールRの巻胴はリール載置台4とは接触せず、宙に浮いた状態に保持される。また、レール5はリール搬送装置の昇降装置2とローラ板1との間にまで延設されている。
【0023】
(2)リールの搬送工程
イ.リール搬入工程
図1に示すように昇降装置2のシリンダー2fを降下させた状態において、リールRを昇降装置2とローラ板1との間に搬入する。このとき、リール載置台4の僅かに上方にシリンダー2fが位置するように設定されている。
【0024】
なお、リールを搬入する際には、搬入し易くするために、支柱2aを直立させ、支柱2aとローラ板1の間隔を大きくしてもよい。
【0025】
ロ.リール保持工程
次いでシリンダー2fをリールRの下側に挿入するため、図2、図4に示すようにシリンダー2fが斜め下方を向くように角度を調整する。次いで図4の矢印イのようにシリンダー2fを伸長させてシリンダー2fの先端をリールRの下に潜り込ませることにより、リールRはリール載置台4から浮き上がってローラ板1に押し付けられる。この状態では、リールRは、斜め下方を向くシリンダー2fとローラ板1とに接触して位置決めされるため、次のリール上昇工程において不用意に位置ずれを起こすことを防止することができ、リール上昇工程中はリールRを確実に保持することができ、リールRをより安全に搬送することができる。
【0026】
ハ.リール上昇工程
次いで、図4に示すように、支柱2aをローラ板側に傾斜させた状態でシリンダー2fを支柱2aに沿って上昇させる。シリンダー2fに支持されたリールRは、ローラ板1に沿って上昇する。
【0027】
なお、支柱2aの傾斜の角度を変更して支柱2aとローラ板1の間隔を調整したり、シリンダー2fを長さを調整すること等により、搬入されるリールRの直径が変更された場合にも適宜対応してリールを上昇させることができる。
【0028】
ニ.リール移行工程
図4および図5に示すように、支柱aをローラ板側に傾斜させ、シリンダー2fを斜め下方に向くように傾斜させているため、リール上昇工程によりリールRの下端をローラ板1の上端近傍まで上昇させた後、シリンダー2fを更に上昇させることにより、ローラ板1を越えて傾斜面(スロープ)3aにリールRをスムースに移行させることができる。
【0029】
また、リールRを上昇させてローラ板1の上端に差し掛かった段階で、リールRを更に上昇させながら、またはリールRの上昇を停止させて、シリンダー2fを、図4の矢印ロのように伸長させたり、シリンダー2fが斜め上方を向くようにシリンダー2fの傾斜角度を変えてリールRを後押しすることによっても、リールRを傾斜面(スロープ)3にスムースに移行させることができる。
【0030】
なお、図1、図4に示すように、ローラ板1を搬出部3側に向けて傾斜させることにより、リール移行工程をよりスムースに行うことができる。
【0031】
以上詳述したように、本実施の形態においてはリールを上昇させるための駆動力として油圧を用いていないため、従来のリール搬送装置で問題となっていた油圧漏れによる故障や油漏れによる周囲環境への悪影響を顕著に低減することができる。なお、前記シリンダー2fの長さおよび角度の調整の駆動力として油圧を用いることもできるが、この場合油圧シリンダー2fに加えられる油圧は、リール支持体挿入工程においてリールRをリール載置台4から浮かせ、またリール移行工程においてリールRを後押しするのに使用されるだけである。従って油圧シリンダー2fの負担は小さく、油圧漏れや油漏れ等による大きな問題が発生することはほとんどない。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の一実施の形態に係るリール搬送装置の概略を示す斜視図である。
【図2】本発明の一実施の形態に係るリール搬送装置のリール支持体を示す斜視図である。
【図3】本発明の一実施の形態に係るリール搬送装置の概略を示す平面図である。
【図4】本発明の一実施の形態に係るリール搬送装置の概略を示す側面図である。
【図5】本発明の一実施の形態に係るリール搬送装置の概略を示す斜視図である。
【図6】従来のリール搬送装置の概略を示す正面図である。
【符号の説明】
【0033】
R リール
R1 フランジ部
1 ローラ板
1a 枠体
1b ローラ
2 昇降装置
2a 支柱
2b、2c、2n、2p スプロケット
2d, 2q チェーン
M モータ
2e スライダー
2f シリンダー
2g 軸受部
2h 駆動軸
2i 従動軸
2j レール
2k 昇降台
2m ローラ
2r カバー
21 支持フレーム
21a サイドフレーム
21b ヘッドフレーム
21c ベースフレーム
3 搬出部
3a 傾斜面(スロープ)
4 リール載置台
4a 台本体
4b 支承ローラ
5 レール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のローラの各々を水平に配置すると共に、略鉛直またはリール搬出側に向けて傾斜して列設させたローラ板と、
前記ローラ板に対向して立設され、前記ローラ板に向けて傾斜可能な支柱と、
前記支柱に、前記ローラ板に向けて伸縮自在に取り付けられ、前記支柱に沿って上下方向に移動可能であると共に傾斜角度が変更可能なリール支持体と、
前記ローラ板の上端から前記支柱と反対側に向けて下方に傾斜する傾斜面を有する搬出部と
を有することを特徴とするリール搬送装置。
【請求項2】
請求項1に記載のリール搬送装置を用いるリール搬送方法であって、
前記リール支持体を降下させた状態で前記支柱と前記ローラ板との間に前記リールを搬入するリール搬入工程と、
前記リール支持体の先端を伸長させて前記リールの下側に挿入するリール支持体挿入工程と、
前記リール支持体により前記リールを下から支持した状態で前記リール支持体を上昇させることにより前記リールを前記ローラ板に沿って上昇させるリール上昇工程と、
前記リール上昇工程により前記リールの下端を前記ローラ板の上端近傍まで上昇させた後、前記リールを、前記ローラ板を越えて前記搬出部に移行させるリール移行工程と
を有することを特徴とするリール搬送方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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