説明

リール

【課題】輸送や保管に要するスペースを低減でき、容易かつ低コストでの製造が可能であり、リサイクルも容易なリールを提供する。
【解決手段】リールは、樹脂シートの真空成形品よりなる第1の分割体2aと第2の分割体2bとを備える。第1の分割体2aの第1の平面部3aには、切り込みと、爪と、凸部6とが設けられる。一方、第2の分割体2bの第2の平面部3bには、切り込み7bと、爪8bと、凹部9とが設けられる。第1の分割体2a及び第2の分割体2bは、切り込みと爪とから成る係合構造と、凸部6及び凹部9からなる嵌合構造とによって、着脱自在に一体化される。また、第1の分割体2a及び第2の分割体2bは、分離されている状態で互いに重ね合わせ可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テープ状の部材を巻回するために用いられるリールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、微小な電子部品の輸送や保管、実装装置への供給を容易にするために、電子部品を固定または収納するキャリアテープが広く利用されている。キャリアテープは、長尺状であり、リールに巻回した状態で輸送や保管がされることが一般的である。
【0003】
特許文献1には、プラスチックシートの真空成型により形成された一対の半割体からなるリールが記載されている。特許文献1では、一対の半割体からリールを組み立てる際に、半割体の突成面同士を互いに対抗させた状態とし、突成面間を接着剤、超音波、加熱によって固定的に接着している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭60−85557号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のように半割体同士を完全に固着してしまうと、リールが嵩張るために輸送や保管に要するスペースが大きくなり、輸送コストや保管コストの増加に繋がる。これは、リールの輸送時全てにおいて生じる問題であり、例えば、キャリアテープに収納された部品の実装後に、使用済みリールを再利用のために部品メーカーに返却する場合にも生じる。
【0006】
また、接着剤で半割体を接着した場合には、接着剤の分だけ、リールの製造コストが高くなってしまう。接着剤を用いた場合には、リールの樹脂材料をリサイクルする際の分別が困難となるという問題もある。
【0007】
更に、熱溶着や超音波溶着で半割体同士を接合する場合、半割体の大きさ毎に専用の溶着装置が必要となるため、製造の容易さや製造コストの面で問題がある。
【0008】
それ故に、本発明は、輸送や保管に要するスペースを低減でき、容易かつ低コストでの製造が可能であり、リサイクルも容易なリールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、テープ状の部材を巻回するために用いるリールに関する。本発明に係るリールは、樹脂シートの真空成形品よりなり、円形の第1の平面部と、第1の平面部の外周縁から立ち上がる逆テーパー形状の第1のテーパー部と、第1テーパー部の外周縁に接続され、第1の平面部を含む平面とほぼ平行な方向に拡がるように延びる円環状の第1のフランジ部とを有する第1の分割体と、樹脂シートの真空成形品よりなり、第1の平面部と、第1のテーパー部と、第1のフランジ部とのそれぞれに対応する第2の平面部と、第2のテーパー部と、第2のフランジ部とを有する第2の分割体とを備える。第1の平面部及び第2の平面部には、着脱自在に嵌合可能な第1の嵌合部及び第2の嵌合部が設けられる。更に、第1の分割体及び第2の分割体は、第1の平面部及び第2の平面部の外面同士を接触させた状態で第1の嵌合部と第2の嵌合部とが嵌合することによって一体化され、一体化されていない状態では重ね合わせ可能である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、第1の分割体及び第2の分割体を分離させて重ね合わせることができるため、リールの輸送や保管に要するスペースを低減できる。また、第1の分割体と第2の分割体とは嵌合によって組み合わされるため、接着剤や専用の溶着装置が不要となり、容易かつ低コストでリールの製造が可能となると共に、リールの廃棄時のリサイクルが容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施形態に係るリールの斜視図
【図2】実施形態に係るリールの分解斜視図
【図3】図1に示されるリールの平面図
【図4】図3に示されるIV−IVラインから見た図
【図5】図3に示されるV−Vラインに沿った断面図
【図6】図3に示されるVI−VIラインに沿った断面図
【図7】第1の分割体及び第2の分割体の重ね合わせ方法を示す図
【図8】変形例に係るリールの平面図
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、実施形態に係るリールの斜視図であり、図2は、実施形態に係るリールの分解斜視図であり、図3は、図1に示されるリールの平面図であり、図4は、図3に示されるIV−IVラインから見た図であり、図5は、図3に示されるV−Vラインに沿った断面図であり、図6は、図3に示されるVI−VIラインに沿った断面図である。
【0013】
図1に示されるリール1は、電子部品を収容したキャリアテープ等のテープ状の部材を巻回するために用いられるものであり、樹脂シートの真空成形品よりなる第1の分割体2a及び第2の分割体2bから構成される。
【0014】
第1の分割体2aは、図2〜5に示されるように、円形の第1の平面部3aと、第1の平面部3aの外周縁から立ち上がる逆テーパー形状の第1のテーパー部4aと、第1のテーパー部4aに接続され、第1の平面部3aを含む平面と平行に外方に広がるように延びる第1のフランジ部5aとを含む。第1の平面部3aの中心部には、リール1を装置の回転機構に取り付けるために用いられる開口部10aが形成されている。開口部10aの周縁部には、図5に示すように、第1のフランジ部5aを含む平面とは反対方向(図5における下方向)に突出する凸部6が形成されている。更に、第1の平面部3aにおける開口部10aの外方側の領域には、図2に示すように、第1の平面部3aにU字型の切り込み7aを入れることによって形成される複数の爪8aが周方向に間欠的に配置されている。尚、爪8aと凸部6とによって、第1の嵌合部が構成されている。
【0015】
第2の分割体2bは、第1の分割体2aとほぼ同一形状を有しており、図2〜5に示されるように、円形の第2の平面部3bと、第2の平面部3bの外周縁から立ち上がる逆テーパー形状の第2のテーパー部4bと、第2のテーパー部4bに接続され、第2の平面部3bを含む平面と平行に外方に広がるように延びる第2のフランジ部5bとを含む。尚、第2の平面部3b、第2のテーパー部4b及び第2のフランジ部5bのそれぞれは、第1の平面部3a、第1のテーパー部4a及び第1のフランジ部5aのそれぞれと同じ形状及び同じ寸法を有する。第2の平面部3bの中心部には、リール1を装置の回転機構に取り付けるために用いられる開口部10bが形成されている。開口部10bの周縁部には、図5に示すように、第2のフランジ部5bを含む平面に向かう方向(図5における下方向)側に窪む凹部9が形成されている。更に、第2の平面部3bにおける開口部10bの外方側の領域には、図2に示すように、第2の平面部3bにU字型の切り込み7bを入れることによって形成される複数の爪8bが周方向に間欠的に配置されている。尚、爪8bと凹部9とによって、第1の嵌合部が構成されている。
【0016】
ここで、リール1の組み立て方法及び分解方法を説明する。
【0017】
リール1を組み立てるには、図2において二点鎖線で示すように、第1の平面部3aの外面と第2の平面部3bの外面とを互いに接触させ、かつ、第1の分割体2aの中心軸と第2の分割体2bの中心軸とをほぼ一致させた状態とし、ほぼ一致させた中心軸周りに、第1の分割体2a及び第2の分割体2bを互いに逆方向に回転させる。第1の分割体2a及び第2の分割体2bを相対回転させる過程において、第1の分割体2aの爪8aを第2の平面部3bに形成された切り込み7aに差し込み、更に、第2の分割体2bの爪8bを第1の平面部3aに形成された切り込み7bに差し込む。この結果、図6に示すように、爪8a及び8bが噛み合って、第1の分割体2aと第2の分割体2bとが係合する。また、爪8a及び8bが噛み合うと、第1の分割体2aの凸部6が、第2の分割体2bの凹部9に嵌まり込む。凸部6及び凹部9が嵌合することによって、第1の分割体2aと第2の分割体2bとの相対回転が規制されるため、第1の分割体2aと第2の分割体2bとの嵌合状態が保持される。
【0018】
一方、リール1を分解する際には、第1の分割体2a及び第2の分割体2bを組み立て時とは逆方向(図2の矢印と反対の方向)に相対回転させることによって、凸部6と凹部9との嵌合と、爪8a及び8bの係合とが解除される。
【0019】
図7は、第1の分割体及び第2の分割体の重ね合わせ方法を示す図である。
【0020】
上述したように、第1の分割体2a及び第2の分割体2bは、凸部6と凹部9を除いて、同じ形状及び大きさを有するように形成されている。したがって、第1の分割体2a及び第2の分割体2bが分離されている状態では、図7に示すように、第1のテーパー部3aと第2のテーパー部3bとの向きを揃えて重ね合わせることが可能である。図7のように、第1の分割体2aと第2の分割体2bとを重ね合わせることに代えて、複数の第1の分割体2a同士を重ね合わせ、複数の第2の分割体2b同士を重ね合わせることももちろん可能である。このように、リール1を分解した際には、第1の分割体2a及び第2の分割体2bを積み重ねることができるため、リール1を分解せずに積み重ねる場合と比べて、第1の分割体2a及び第2の分割体2bの輸送や保管に要するスペースを低減することができる。
【0021】
図8は、変形例に係るリールの平面図である。
【0022】
図8に示したリール1は、上述した第1の分割体2a及び第2の分割体2bに更に、複数のリブ11と、複数の窓部12とを設けたものである。第1の分割体2aにおいて、複数のリブ11は、第1のフランジ部5aの内周側から外周側へと放射状に延びるように形成されている。また、第1のフランジ部5aに設けられた窓部12は、リール1に巻回されたテープ状部材の残量を外部から把握できるようにするためのものである。尚、図8においては、リール1のうち、第1の分割体2a側部分のみを図示しているが、第1の分割体2aの裏側にある第2の分割体2bにも、同様のリブ11及び窓部12が形成されている。このように複数のリブ11を設けることによって、第1のフランジ部5a及び第2のフランジ部5bの剛性を向上させることができる。
【0023】
以上説明したように、本実施形態では、切り込み7a及び7bと、爪8a及び8bとからなる係合構造と、凸部6及び凹部9からなる嵌合構造とによって、第1の分割体2a及び第2の分割体2bが着脱自在に嵌合される。これにより、接着剤による接着や熱溶着を行うことなく、容易かつ低コストに製造が可能なリール1を実現できる。また、接着や溶着を行わないため、リール1を第1の分割体2a及び第2の分割体2bに容易に分解することができ、分解した第1の分割体2a及び第2の分割体2bを積み重ねることによって、輸送や保管時のスペースを低減することができる。更に、リール1の組み立てに接着剤を用いないことから、リール1の廃棄時の分別作業が不要となり、リサイクルも容易となる。
【0024】
尚、上記の実施形態においては、開口部の周縁部分に沿って凸部及び凹部を設けているが、凸部及び凹部の形成位置及び形状は任意である。例えば、凸部及び凹部が半球状であっても良い。
【0025】
また、上記の実施形態では、第1の平面部に凸部を設け、第2の平面部に凹部を設けているが、第1の平面部及び第2の平面部の両方に凸部と凹部とを設け、第1の平面部の凸部と第2の平面部の凹部とが嵌合し、かつ、第1の平面部の凹部と第2の平面部の凸部とが嵌合するようにしても良い。
【0026】
更に、上記の実施形態では、爪を形成するための切り込みをU字型としているが、V字型でも良い。
【0027】
更に、上記の実施形態では、凸部または凹部と爪とによって嵌合部が構成されているが、第1の分割体と第2の分割体とを着脱自在に嵌合できるものであれば、嵌合部の構成は任意である。例えば、逆テーパー状の凸部と、逆テーパー状の凹部とによって、第1の分割体と第2の分割体とを嵌合させても良い。
【0028】
更に、上記の実施形態では、第1の平面部及び第2の平面部の両方に爪を形成しているが、第1の平面部及び第2の平面部のいずれか一方にのみ爪を設け、他方に爪が挿入されるスリットを設けても良い。また、第1の平面部及び第2の平面部の両方に爪とスリットとを設け、第1の平面部の爪と第2の平面部のスリットとが係合し、かつ、第1の平面部のスリットと第2の平面部の爪とが係合するようにしても良い。
【0029】
更に、上記の実施形態の変形例では、リブの形状が特定されているが、リブの形状は任意である。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明は、電子部品を収納したキャリアテープを初めとする、種々のテープ状部材を巻回するためのリールに利用できる。
【符号の説明】
【0031】
1 リール
2a 第1の分割体
2b 第2の分割体
3a 第1の平面部
3b 第2の平面部
4a 第1のテーパー部
4b 第2のテーパー部
5a 第1のフランジ部
5b 第2のフランジ部
6 凸部
7a、7b 切り込み
8a、8b 爪
9 凹部
10 開口部
11 リブ
12 窓部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
テープ状の部材を巻回するために用いるリールであって、
樹脂シートの真空成形品よりなり、円形の第1の平面部と、前記第1の平面部の外周縁から立ち上がる逆テーパー形状の第1のテーパー部と、前記第1テーパー部の外周縁に接続され、前記第1の平面部を含む平面とほぼ平行な方向に拡がるように延びる円環状の第1のフランジ部とを有する第1の分割体と、
樹脂シートの真空成形品よりなり、前記第1の平面部と、前記第1のテーパー部と、前記第1のフランジ部とのそれぞれに対応する第2の平面部と、第2のテーパー部と、第2のフランジ部とを有する第2の分割体とを備え、
前記第1の平面部及び前記第2の平面部には、着脱自在に嵌合可能な第1の嵌合部及び第2の嵌合部が設けられており、
前記第1の分割体及び前記第2の分割体は、前記第1の平面部及び前記第2の平面部の外面同士を接触させた状態で前記第1の嵌合部と前記第2の嵌合部とが嵌合することによって一体化され、一体化されていない状態では重ね合わせ可能である、リール。
【請求項2】
前記第1の嵌合部は、前記第1の平面部に切り込みを入れることによって形成される複数の第1の爪と、前記第1の平面部から外方に突出する凸部とを含み、
前記第2の嵌合部は、前記第1の平面部に切り込みを入れることによって形成される複数の第2の爪と、前記第1の平面部から内方に窪む凹部とを含み、
前記第1の平面部及び前記第2の平面部の外面同士を互いに接触させ、かつ、前記第1の分割体及び前記第2の分割体の中心軸同士をほぼ一致させた状態で、前記中心軸周りに前記第1の分割体及び前記第2の分割体を互いに逆方向に回転させることによって、前記第1の爪及び前記第2の爪が互いに噛み合うと共に、前記凹部に前記凸部が嵌合して、前記第1の分割体及び前記第2の分割体の相対回転を規制する、請求項1に記載のリール。
【請求項3】
前記第1のフランジ部及び前記第2のフランジ部には、内周側から外周側へと放射状に延びる複数のリブが設けられる、請求項1または2に記載のリール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−35646(P2013−35646A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−172306(P2011−172306)
【出願日】平成23年8月5日(2011.8.5)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】