説明

ループ紡績またはループ加撚のための機械

【課題】当該機械の経済的に有利な構成および運転を保証する比較的簡単な手段を提供する。
【解決手段】それぞれ隣り合った2つの作業箇所S1,S2;S2,S3の制限機構5が、その出口端部11で、それぞれ異なる、特に水平なレベルR1,R2に配置されているようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ループ紡績またはループ加撚のための機械であって、少なくとも1つの長手方向側が、一列に相並んで配置された作業箇所によって形成されるようになっており、該作業箇所が、それぞれ巻取り巻管のためのスピンドルと、該スピンドルに対応配置された、回転する糸バルーンのための制限機構とを有しており、該制限機構によって、運転の間、制限機構から進出した糸が、回転する開いた糸ループとして、回転するスピンドルに設けられた巻管に向かって引き続き延びており、その後、糸ループが、半径方向の制限なしにスピンドルの軸線を中心として延びていて、遠心力と巻付け張力とによって自動的に所要の糸応力を調整するようになっている形式のものに関する。
【背景技術】
【0002】
上述した形式の機械は、たとえばヨーロッパ特許第0883703号明細書に基づき公知である。回転する糸バルーンのための制限機構が、ここでは、回転可能に取り付けられた、スピンドルと同じ方向に回転可能に駆動される、下側の出口端部に向かって拡幅された管状のボディとして形成される。このボディはスピンドルを部分的に取り囲んでいる。この場合、運転時に、出口端部と、回転するスピンドルに設けられた巻管との間に形成される回転する糸ループに対して、半径方向の制限は存在していない。本発明の技術的な出願No.2003−588には、回転する糸バルーンのための制限機構が、回転する上側の部分と、この部分に接触なしに続く、スピンドルの軸線に沿った糸の経過の方向で見て、定置の下側の部分とによって形成される解決手段が含まれている。上側の部分は、上述した管状のボディに類似して形成され、そのように配置されてもいる。この場合、下側の部分は上側の部分よりもかなり短く形成されている。実際に延長部だけでなく、下側の部分の、上側の部分の内側の作業表面の端部も形成する内側の表面は、糸ループの回転の速度の意図的な低下のための制動面として働く。糸ループに対して、ここでも、半径方向の制限は存在していない。
【0003】
この場合、少なくとも1つの長手方向側が、一列に相並んで配置された同様の作業箇所によって形成される一般的に知られている繊維機械によれば、ループ紡績またはループ加撚のための機械も、回転する糸バルーンのための制限機構がスピンドルに類似してそれぞれ同じ高さに配置されているように簡単にかつ経済的に設計することができると共に製作することができる。しかし、長手方向側を形成しかつ、この場合、半径方向の制限なしに等しい水平なレベルで延びる個々の作業箇所に形成される回転する糸ループは、この場合、作業箇所の比較的大きな間隔ひいては機械の、予め付与された比較的小さな量の長さが考慮されなければならないような半径方向のサイズを達成し得る。この場合、実際にこのことは必然的に、付与された単位面積あたりの比較的低い生産能を意味していて、しばしば機械の所望の高い運転速度においても許容することができない。
【0004】
一種の例外は、機械の作業箇所を提供するスピンドルと相応のフライヤとが、確かに常に同じ高さに配置されているものの、平行な2つの列に配置されていることによって、前記欠点がある程度すでに排除されるフライヤタイプの紡績機械または加撚機械である(たとえばドイツ連邦共和国特許出願公開第19608199号明細書)。しかし、他方では、操作時の困難が生ぜしめられる。なぜならば、第2の列に設けられたスピンドルとフライヤとにオペレータが容易に接近可能であるからである。
【特許文献1】ヨーロッパ特許第0883703号明細書
【特許文献2】ドイツ連邦共和国特許出願公開第19608199号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、冒頭で述べた機械において、当該機械の経済的に有利な構成および運転を保証する比較的簡単な手段を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題を解決するために本発明の構成では、それぞれ隣り合った2つの作業箇所の制限機構が、その出口端部で、それぞれ異なる、特に水平なレベルに配置されているようにした。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、それぞれ互いに隣り合った2つの作業箇所の制限機構がその出口端部で、等しくない水平なレベルに設けられており、作業箇所の間隔が、回転する任意の各糸ループの最大の回転半径の2倍よりも少なく寸法設定されている。これによって、隣り合った回転する開いたループが運転時に、同じく等しくないレベルで運動させられるので、ループの軌道が、スピンドルの軸線に沿った糸の経過の方向で見て、互いに重なり得るものの、交差し得ない。これによって、当該機械が、予め規定された長さで、より多くの数の作業箇所を装備し、この場合、運転時に、見込まれた高い生産が達成されることが可能となる。
【0008】
本発明の別の有利な構成では、水平なレベルの間の距離が3〜6mm、たとえば5mmであるように、この構成が具体的に形成されている。
【0009】
本発明の別の特徴および利点は、図面に概略的に示した以下の発明を実施するための最良の形態から明らかである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下に、本発明を実施するための最良の形態を図面につき詳しく説明する。
【0011】
図1には、ループ紡績またはループ加撚のための慣用の機械の一連の作業箇所のうちの1つの構成の例が示してある。この作業箇所は、ループ紡績のための機械が考慮されるかまたはループ加撚のための機械が考慮されるかに応じて、繊維源もしくは粗糸のための通過機構または多重の糸システムのための供給機構を有している。本発明に関して、それぞれ供給材料のための供給機構が考慮される。この供給機構は2つの供給ローラ1によってしか示していない。
【0012】
両供給ローラ1の下方には、糸巻取り部4を備えた巻管3を支持するスピンドル2と、このスピンドル2に対応配置された、回転する糸バルーン6のための制限機構5とが設けられている。スピンドル2は、公知の形式で回転可能にスピンドルレール7に取り付けられている。このスピンドルレール7は機械の全ての作業箇所にわたって延びていて、二重矢印8の方向へのスピンドルレール7の鉛直な運動のためのプログラム制御式の慣用の駆動装置(図示せず)を備えている。スピンドル2の回転駆動は、慣用の接線ベルトまたは個別モータ(図示せず)によって行われる。
【0013】
制限機構5は、管状のガイドボディ9によって形成される。このガイドボディ9は、糸Pとの接触のための内側の表面10を有している。この表面10は、ガイドボディ9の下側の端部11に向かって円錐形に拡幅されている。ガイドボディ9の上側の端部12には軸13が接続されている。この軸13は軸受け14によって駆動モータ16のハウジング15内に回転可能に設けられていて、モータ16のロータとして形成されている。駆動モータ16のハウジング15は支持レール17に固定されている。この支持レール17は、スピンドルレール7に類似して、機械の全ての作業箇所にわたって延びているものの、スピンドルレール7と異なり不動である。軸13は、一貫して延びる軸方向開口18を有している。この軸方向開口18を通して、糸Pがガイドボディ9内にガイドされる。
【0014】
供給ローラ1と制限機構5との間には、慣用の糸ガイド19が配置されている。
【0015】
図2に示した作業箇所の構成の例は、原理的に、本発明の技術的な出願No.2003−588に含まれた解決手段に相当していて、実際の構成において、図1に示した例に相当している。制限機構5aは、回転する上側のガイド部分20と、このガイド部分20に接触なしに続く定置の下側のガイド部分21とから成っている。この場合、上側のガイド部分20は、形状、回転可能な取付けおよび駆動に関して、図1に示したガイドボディ9に完全に合致している。環状の下側のガイド部分21はモータハウジング15aの管載着部22によって支持される。この管載着部22は制限機構5aの上側のガイド部分20を同軸的に取り囲んでいる。その他の点で構成から図1に示した駆動モータ16のハウジング15に合致するモータハウジング15aは支持レール17に固定されている。
【0016】
図1に示した例では、運転の間に供給ローラ1から到来しかつ糸ガイド19によってガイドされる糸Pが、軸13の軸方向開口18を介してガイドボディ9の中空室内に進入する。このガイド部分9の回転速度はスピンドル2の回転速度よりも大きく設定されている。ガイドボディ9の中空室内では、糸Pが糸バルーン6を形成し、これによって、糸Pがガイドボディ9の内側の表面10に到達する。その後、この表面10で糸Pがその傾斜の作用によってガイドボディ9の下側の端部11に向かって運動させられる。ガイドボディ9のこの下側の端部11では、糸Pが遠心力の作用によってスピンドル2の軸線Aの方向に逸らされ、回転する開いた糸ループ23に移行する。その後、この糸ループ23から糸Pが、回転する巻管3に設けられた糸巻取り部4に巻き取られる。
【0017】
図2に示した例では、供給ローラ(図示せず)から、回転する巻管3への糸Pの経過が、図1に示した例と同じであるものの、制限機構5aの、回転する上側のガイド部分20の下側の端部11aで糸Pがまず定置の下側のガイド部分21の内側のガイド面24に移行し、その後、このガイド面24の端部25で、回転する糸ループ23に移行する違いがある。この場合、定置の下側のガイド部分21のガイド面24は、回転する糸ループ23にブレーキとしても作用するので、このブレーキによって、回転する糸ループ23がスピンドル2の軸線Aを中心とした回転中に制動され、しかも、糸ループ23の回転の速度が、有利にはスピンドル2の回転の速度よりも常に低くなるように制動される。
【0018】
この限りにおいては、当該機械が公知先行技術により設計されてよく、製作されてよい。図3には、部分的に示した本発明による機械の正面図が示してある。この場合、鉛直な破線の境界線の間に位置する作業箇所S1,S2,S3は、図1に示した作業箇所に相当している。しかし、当然ながら、別の事例では、図2に示した作業箇所または原理的に合致する異なる作業箇所(図示せず)に相当する作業箇所が使用されてよい。
【0019】
図3によれば、形状および寸法に関して合致する個々の制限機構5が、ハウジング15によって支持レール17に取り付けられていて、しかも、それぞれ隣り合った2つの作業箇所S1,S2/S2,S3の制限機構5がその出口端部(ここでは、ガイドボディ9の下側の端部11によって提供されている)で、等しくない水平なレベルR1,R2に配置されているように互い違いに取り付けられている。この場合、この両レベルR1,R2の間の距離aは3〜6mm、有利には5mmであってよい。この場合、作業箇所S1,S2,S3の間隔Tは、回転する任意の各糸ループ23の最大の回転半径rの2倍よりも常に少なく寸法設定されている。
【0020】
この場合、図3に見ることができるように、等しくない水平なレベルR1,R2に制限機構5の出口端部を互い違いに取り付けると同時に、形状および寸法に関して等しい全てのスピンドル2をスピンドルレール7に、等しい鉛直な位置で配置する場合には、糸巻取り部4も巻管3に、この巻管3の基部から等しくない適宜な距離L1,L2を置いて巻き取られる。しかし、これに基づき生ぜしめられる、最終的に得られるパッケージの間の違いは重要でなく、難なく無視されてよい。逆の事例では、スピンドル2がスピンドルレール7に、等しくない相応の高さ位置で配置されることによって、この違いを未然に防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】スピンドルの領域における回転する糸バルーンのための制限機構の慣用の構成の1つを備えた、ループ紡績またはループ加撚のための機械の部分的に断面して示した作業箇所の側面図である。
【図2】図1と同様の側面図であるものの、スピンドルの領域における回転する糸バルーンのための制限機構の慣用の別の構成の1つを示す図である。
【図3】図1に示した作業箇所を備えた、部分的に示した本発明による機械の正面図である。
【符号の説明】
【0022】
1 供給ローラ、 2 スピンドル、 3 巻管、 4 糸巻取り部、 5,5a 制限機構、 6 糸バルーン、 7 スピンドルレール、 8 二重矢印、 9 ガイドボディ、 10 表面、 11,11a 端部、 12 端部、 13 軸、 14 軸受け、 15 ハウジング、 15a モータハウジング、 16 駆動モータ、 17 支持レール、 18 軸方向開口、 19 糸ガイド、 20 ガイド部分、 21 ガイド部分、 22 管載着部、 23 糸ループ、 24 ガイド面、 25 端部、 A 軸線、 a 距離、 L1,L2 距離、 P 糸、 R1,R2 レベル、 r 回転半径、 S1,S2,S3 作業箇所、 T 間隔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ループ紡績またはループ加撚に用いられる機械であって、少なくとも1つの長手方向側が、一列に相並んで配置された作業箇所(S1,S2,S3)によって形成されるようになっており、該作業箇所(S1,S2,S3)が、それぞれ巻取り巻管(3)のためのスピンドル(2)と、該スピンドル(2)に対応配置された、回転する糸バルーン(6)のための制限機構(5;5a)とを有しており、該制限機構(5;5a)によって、運転の間、制限機構(5;5a)から到来した糸(P)が、回転するスピンドル(2)に設けられた巻管(3)に向かって、回転する開いた糸ループ(23)として延びており、該糸ループ(23)が、半径方向の制限なしにスピンドル(2)の軸線(A)を中心として延びていて、遠心力と巻付け張力とによって自動的に糸(P)の所要の応力を調整するようになっている形式のものにおいて、
それぞれ隣り合った2つの作業箇所(S1,S2;S2,S3)の制限機構(5;5a)が、その出口端部(11)で、それぞれ異なる、特に水平なレベル(R1,R2)に配置されていることを特徴とする、ループ紡績またはループ加撚に用いられる機械。
【請求項2】
水平なレベル(R1,R2)の間の距離(a)が3〜6mmである、請求項1記載の機械。
【請求項3】
作業箇所(S1,S2,S3)の間隔(T)が、回転する任意の糸ループ(23)の最大の回転半径(r)の2倍よりも少なく寸法設定されている、請求項1または2記載の機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−161264(P2006−161264A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−348135(P2005−348135)
【出願日】平成17年12月1日(2005.12.1)
【出願人】(590005597)マシーネンファブリク リーター アクチェンゲゼルシャフト (93)
【氏名又は名称原語表記】Maschinenfabrik Rieter AG
【住所又は居所原語表記】Klosterstrasse 20,CH−8406 Winterthur,Switzerland
【Fターム(参考)】