説明

レインウェアのフードの構造、及びレインウェアのフードの保形部材

【課題】レインウェアのフードのツバ部分を容易且つ適切に保形できるようにする。
【解決手段】フード主体1の前面開放部11を囲うようにして前方に突き出すと共に庇部20と左右の側部21、21とを一体に備えたツバ部分2と、可撓性を有する板状材から構成されると共に板一面をツバ部分2の内面又は外面に添着させてこのツバ部分2と一体をなす保形部材3とを備えている。保形部材3は、ツバ部分2の庇部20を保形する上部31と、ツバ部分2の右側の側部21を保形する右側の下部32と、ツバ部分2の左側の側部21を保形する左側の下部32とを一体に備えると共に、上部31と右側の下部32とをつなぐ部分33及び上部31と左側の下部32とをつなぐ部分33において弾性変形し易くなっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、レインウェアの本体と一体となったフード、又は、レインウェアの本体に着脱自在に取り付けられてこの本体と一体となるフードの構造、及び、このフードのツバ部分に取り付けられて、このツバ部分を保形する保形部材に関する。
【背景技術】
【0002】
レインウェアのフードには、その前面開放部からさらに前方に突き出すツバの備えられたものがある。かかるツバは典型的には、庇部と左右の側部とを一体に備えており、透明な合成樹脂製の生地から構成される場合が多い。フードにこのようなツバを設けると、レインウェアを着てフードを被った者の顔が風雨にさらされ難くなる。
【0003】
しかるに、かかるツバは前記フードの前面開放部からさらに前方に突き出すものであるため、風圧により変形し易い。特に、前記のようなレインウェアを着て自転車や二輪自動車を運転するときには、前記ツバの変形は煩わしく、また、運転者の視界の妨げともなる。
【0004】
また、かかるツバは、ドーム状をなすフードの前面開放部の湾曲に倣って湾曲されるため、その庇部は上方に浮き上がりやすく、風雨を適切に防ぎがたい場合も少なくない。
【0005】
従来より、フードを備えた衣服のこのフードの縁部を、必要に応じた形状に繰り返し塑性変形可能な金属製のワイヤーによって保形するようにしたものがあり、このようなワイヤーによって前記ツバの縁部を保形することも可能であるが、こうしたワイヤーはその形が明確には定まらないためレインウェアを着るたびにその形の調整を余儀なくされることが多く、また、衣料の検針の障害となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この発明が解決しようとする主たる問題点は、レインウェアのフードのツバ部分を容易且つ適切に保形できるようにする点にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を達成するために、この発明にあっては、第一の観点から、レインウェアのフードの構造を、
レインウェアの本体と一体となった、又は、レインウェアの本体に着脱自在に取り付けられてこの本体と一体となるフードの構造であって、
フード主体の前面開放部を囲うようにして前方に突き出すと共に、庇部と左右の側部とを一体に備えたツバ部分と、
可撓性を有する板状材から構成されると共に、板一面を前記ツバ部分の内面又は外面に添着させてこのツバ部分と一体をなす保形部材とを備えており、
この保形部材は、前記ツバ部分の庇部を保形する上部と、前記ツバ部分の右側の側部を保形する右側の下部と、前記ツバ部分の左側の側部を保形する左側の下部とを一体に備えると共に、前記上部と右側の下部とをつなぐ部分及び前記上部と左側の下部とをつなぐ部分において弾性変形し易くなっているものとした。
【0008】
また、前記課題を達成するために、この発明にあっては、第二の観点から、レインウェアのフードの保形部材を、レインウェアの本体と一体となった、又は、レインウェアの本体に着脱自在に取り付けられてこの本体と一体となるフードにおける、フード主体の前面開放部を囲うようにして前方に突き出すと共に、庇部と左右の側部とを一体に備えたツバ部分に、板一面を前記ツバ部分の内面又は外面に添着させてこのツバ部分と一体をなす可撓性を有する板状材から構成される保形部材であって、
この保形部材は、前記ツバ部分の庇部を保形する上部と、前記ツバ部分の右側の側部を保形する右側の下部と、前記ツバ部分の左側の側部を保形する左側の下部とを一体に備えると共に、前記上部と右側の下部とをつなぐ部分及び前記上部と左側の下部とをつなぐ部分において弾性変形し易くなっているものとした。
【0009】
レインウェアを着た者がフードを被ると、保形部材は前記つなぐ部分で大きく弾性変形する一方で、上部と下部はそれほどには弾性変形をしないようにすることができる。したがって、保形部材の上部によりツバ部分の庇部は湾曲が大きくならないように保形される。すなわち、保形部材によって庇部の中央は浮き上がり難く、これにより、フード内への風雨の侵入が効果的に防止される。また、保形部材の下部は前記上部を支えてツバ部分の庇部が過度に下がることを防ぐと共に、前記上部と協働してツバ部分の庇部の突き出し縁と側部の突き出し縁とがなす角度が風雨を受けても略一定の角度をなすようにこのツバ部分を保形する。これにより、風雨によりツバ部分が変形してレインウェアを着た者の視界を妨げる事態を効果的に防止することができる。
【0010】
前記保形部材の板前縁がツバ部分の突き出し縁に位置するようにしておけば、ツバ部分の突き出し縁側を保形部材により弛みなく広げさせることができる。また、前記保形部材の板前縁と板後縁との間の幅をつなぐ部分において狭くしてこのつなぐ部分において保形部材を弾性変形し易くしておくこともある。あるいはまた、前記保形部材の板厚をつなぐ部分において小さくしてこのつなぐ部分において保形部材を弾性変形し易くしておくこともある。このようにしておけば、
前記上部及び下部では保形部材を弾性変形し難くする一方で、前記つなぐ部分において保形部材を弾性変形し易くすることができる。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、レインウェアのフードのツバ部分を容易且つ適切に保形することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は実施の形態にかかる保形部材を備えたフードを被った状態の斜視構成図である。
【図2】図2は実施の形態にかかる保形部材を備えたフードを被った状態の正面構成図である。
【図3】図3は実施の形態にかかる保形部材を備えたフードを被った状態の側面構成図である。
【図4】図4は実施の形態にかかる保形部材を備えたフードを被った状態の平面構成図である。
【図5】図5は実施の形態にかかる保形部材の平面図(a図)並びにA−A断面図(b図)及びA’−A’断面図(c図)である。
【図6】図6は実施の形態にかかる保形部材の平面図(a図)並びにB−B断面図(b図)及びB’−B’断面図(c図)である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図1〜図6に基づいて、この発明の典型的な実施の形態について、説明する。この実施の形態にかかるフードFの構造は、レインウェアWの本体J(上衣)と一体となったフードF、又は、レインウェアWの本体Jに着脱自在に取り付けられてこの本体Jと一体となるフードFに適用されるものである。また、この実施の形態にかかる保形部材3は、レインウェアWのフードFのツバ部分2に取り付けられて、このツバ部分2を保形するものである。かかるレインウェアWとしては、典型的には、レインスーツ、レインコート、ヤッケ、ポンチョなどが予定される。かかるレインウェアWの本体Jに対して前記フードFを着脱自在に備えさせる場合には、レインウェアWの本体JとフードFとは、典型的にはホックやボタンやファスナーなどの公知の係止部材によって、留め合わされる。図示の例では、レインウェアWの本体JとフードFとは、図中符号10で示されるホックにより留め合わされるようになっている。
【0014】
フードFは、フード主体1と、ツバ部分2と、保形部材3とを備えている。
【0015】
フード主体1は、レインウェアWを着た者の頭部における顔を除いた箇所を覆うように成形された生地から構成されている。すなわち、フード主体1は、顔を外部に臨ませるための前面開放部11と、レインウェアWの本体Jの襟部に前記ホック10によって接続される下部開放部12とを備えている。図示の例では、フード主体1は、その下部の左右にそれぞれ、前方に延び出す合わせ部13を備えており、レインウェアWを着た者の口の前で面状ファスナー14により左右の合わせ部13を留め合わすことで前記前面開放部11を絞れるようになっている。
【0016】
ツバ部分2は、フード主体1の前面開放部11を囲うようにして前方に突き出すと共に、庇部20と左右の側部21、21とを一体に備えてなる。すなわち、ツバ部分2は、レインウェアWを着た者の顔よりも前方に突き出して、かかる顔が上方からの風雨、左側からの風雨、及び右側からの風雨にさらされないようにしている。図示の例では、かかるツバ部分2は、透明な合成樹脂製の帯状をなすシート状の生地22から構成されている。かかる生地22の長さ方向に沿った一縁部22aをフード主体1の前記合わせ部13以外の箇所における開放縁11aに縫着すると共に、かかる生地22の左側の端部22bを左側の合わせ部13の上縁13aに縫着し、かつ、かかる生地22の右側の端部22bを右側の合わせ部13の上縁13aに縫着することで、フード主体1にツバ部分2が一体に備えられている。
【0017】
保形部材3は、可撓性を有する板状材30から構成されると共に、板一面を前記ツバ部分2の内面又は外面に添着させてこのツバ部分2と一体をなしている。図示の例では、かかる保形部材3は長さと幅とを備えた一定の弾性を備えた合成樹脂製の板状材30から構成されている。このようにしておけば、かかる保形部材3が衣料品の検針の障害となることがない。ツバ部分2が透明な場合はかかる保形部材3も同様に透明に構成することが好ましい。図示の例では、保形部材3の板一面をツバ部分2の内面に隙間無く貼り付けるようにしている。かかる貼り付けは、接着剤による接着や、両面粘着テープによる接着、あるいは溶着など、公知の手段により行う。
【0018】
かかる保形部材3は、前記ツバ部分2の庇部20を保形する上部31と、前記ツバ部分2の右側の側部21を保形する右側の下部32と、前記ツバ部分2の左側の側部21を保形する左側の下部32とを一体に備える。それと共に、かかる保形部材3は、前記上部31と右側の下部32とをつなぐ部分33及び前記上部31と左側の下部32とをつなぐ部分33において弾性変形し易くなっている。
【0019】
図示の例では、保形部材3は、ツバ部分2を構成する前記生地22より最大幅が小さく、また、保形部材3の右側の下部32の端と右側の合わせ部13との間に間隔xが形成され、かつ、保形部材3の左側の下部32の端と左側の合わせ部13との間に間隔xが形成されるようにツバ部分2に貼り付けられる長さに構成されている。
【0020】
図示の例では、保形部材3の板前縁34は、この保形部材3の長さ方向に亘るいずれの位置においてもツバ部分2の突き出し縁23に位置するようになっている。これにより、図示の例では、ツバ部分2の突き出し縁23側は保形部材3により弛みなく広げられるようになっている。
【0021】
一方、図示の例では、保形部材3の板前縁34と板後縁35との間の幅は、上部31において広く、下部32においては上部31の最大幅の約二分の一の幅を持ち、この上部31と下部32とをつなぐ部分33では下部32よりもさらに狭くなっている。これにより、図1〜図5に示される例では、前記上部31及び下部32では保形部材3は弾性変形し難い一方で、前記つなぐ部分33において保形部材3を弾性変形し易くしている。保形部材3の上部31は、保形部材3の長さ方向略中程の位置で幅を最大とし、この位置から左側のつなぐ部分33に近づくに連れて幅狭となり、かつ、この位置から右側のつなぐ部分33に近づくに連れて幅狭となるように構成されている。
【0022】
レインウェアWを着た者がフードFを被ると、保形部材3は前記つなぐ部分33で大きく弾性変形する一方で、上部31と下部32はそれほどには弾性変形をしないようにすることができる。したがって、保形部材3の上部31によりツバ部分2の庇部20は湾曲が大きくならないように保形される。保形部材3は板状材によって構成されていることから、ツバ部分2の庇部20の浮き上がりは保形部材3の上部31が添着されている広い範囲で抑止される。すなわち、保形部材3によって庇部20の中央は浮き上がり難く、これにより、フードF内への風雨の侵入が効果的に防止される。また、保形部材3の下部32は前記上部31を支えてツバ部分2の庇部20が過度に下がることを防ぐと共に、前記上部31と協働してツバ部分2の庇部20の突き出し縁23と側部21の突き出し縁23とがなす角度が風雨を受けても略一定の角度をなすようにこのツバ部分2を保形する。これにより、風雨によりツバ部分2が変形してレインウェアWを着た者の視界を妨げる事態を効果的に防止することができる。
【0023】
図6は、保形部材3の板厚をつなぐ部分33において小さくしてこのつなぐ部分33において保形部材3を弾性変形し易くした例を示している。この図6の例では、保形部材3の板前縁34と板後縁35との間の幅は、上部31において広く、下部32及び前記つなぐ部分33においては上部31の最大幅の約二分の一の幅を持つようになっている。それと共に、保形部材3の板厚は、上部31が最も厚く(例えば3mm厚)、次いで、下部32が厚く(例えば2mm厚)、両者をつなぐ部分33が最も薄くなっている(例えば1mm厚)。これにより、この図6に示される例では、前記上部31及び下部32では保形部材3は弾性変形し難い一方で、前記つなぐ部分33において保形部材3を弾性変形し易くしている。
【符号の説明】
【0024】
1 フード主体
11 前面開放部
2 ツバ部分
20 庇部
21 側部
3 保形部材
31 上部
32 下部
33 つなぐ部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レインウェアの本体と一体となった、又は、レインウェアの本体に着脱自在に取り付けられてこの本体と一体となるフードの構造であって、
フード主体の前面開放部を囲うようにして前方に突き出すと共に、庇部と左右の側部とを一体に備えたツバ部分と、
可撓性を有する板状材から構成されると共に、板一面を前記ツバ部分の内面又は外面に添着させてこのツバ部分と一体をなす保形部材とを備えており、
この保形部材は、前記ツバ部分の庇部を保形する上部と、前記ツバ部分の右側の側部を保形する右側の下部と、前記ツバ部分の左側の側部を保形する左側の下部とを一体に備えると共に、前記上部と右側の下部とをつなぐ部分及び前記上部と左側の下部とをつなぐ部分において弾性変形し易くなっていることを特徴とするレインウェアのフードの構造。
【請求項2】
保形部材の板前縁がツバ部分の突き出し縁に位置するようになっていることを特徴とする請求項1に記載のレインウェアのフードの構造。
【請求項3】
保形部材の板前縁と板後縁との間の幅をつなぐ部分において狭くしてこのつなぐ部分において保形部材を弾性変形し易くしていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のレインウェアのフードの構造。
【請求項4】
保形部材の板厚をつなぐ部分において小さくしてこのつなぐ部分において保形部材を弾性変形し易くしていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のレインウェアのフードの構造。
【請求項5】
レインウェアの本体と一体となった、又は、レインウェアの本体に着脱自在に取り付けられてこの本体と一体となるフードにおける、フード主体の前面開放部を囲うようにして前方に突き出すと共に庇部と左右の側部とを一体に備えたツバ部分に、板一面を前記ツバ部分の内面又は外面に添着させてこのツバ部分と一体をなす可撓性を有する板状材から構成される保形部材であって、
この保形部材は、前記ツバ部分の庇部を保形する上部と、前記ツバ部分の右側の側部を保形する右側の下部と、前記ツバ部分の左側の側部を保形する左側の下部とを一体に備えると共に、前記上部と右側の下部とをつなぐ部分及び前記上部と左側の下部とをつなぐ部分において弾性変形し易くなっていることを特徴とするレインウェアのフードの保形部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−19060(P2013−19060A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−151066(P2011−151066)
【出願日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【出願人】(594021382)
【Fターム(参考)】