説明

レゾネーター

【課題】レゾネーターを二つの箱構成体の溶着によって適切に構成する。
【解決手段】エンジンの吸気経路中に備えられる合成樹脂製のレゾネーターである。これを構成する空気室を、底面部とこの底面部を巡る周回壁部4bとを備えた第一の箱構成体4のこの周回壁部4bと、底面部5aとこの底面部を巡る周回壁部とを備えた第二の箱構成体5のこの周回壁部5bとを突き合わせ溶着させて構成させている。第一の箱構成体4の周回壁部4bの上端部40には周回溝41が形成され、第二の箱構成体5の周回壁部5bの上端部50には前記突き合わせ時に周回溝41に納められて周回溝41の溝底41eに溶着される周回突部51が形成されている。第一の箱構成体4の周回壁部4bにおけるその外壁面43と周回溝41との間にある上端面45bが、その内壁面44と前記周回溝41との間にある上端面45aよりも上方に位置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、エンジンの吸気経路中に備えられてこの吸気経路の一部を構成するレゾネーターの改良に関する。
【背景技術】
【0002】
一対の容器部材の開放端に形成されたフランジ同士を溶着してなるレゾネーターがある。(特許文献1参照)かかるレゾネーターにあっては、一対の容器部材の一方のフランジに形成させた溝に、一対の容器部材の他方のフランジに形成させた突部を納め、この突部を溶融させて前記溶着をなしているものと理解される。しかしながら、単に溝に突部を納めての溶着では、溶融樹脂の溶着箇所外への漏れだし、特にレゾネーターの外側への漏れだしを抑止できる保証はなく、また、このような漏れ出しは溶着強度の低下の要因ともなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3276517号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この発明が解決しようとする主たる問題点は、合成樹脂製のレゾネーターを、二つの箱構成体の溶着によって、適切に構成できるようにする点にある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を達成するために、この発明にあっては、レゾネーターを、エンジンの吸気経路中に備えられる合成樹脂製のレゾネーターであって、
これを構成する空気室を、底面部とこの底面部を巡る周回壁部とを備えた第一の箱構成体のこの周回壁部と、底面部とこの底面部を巡る周回壁部とを備えた第二の箱構成体のこの周回壁部とを突き合わせ溶着させて構成させており、
第一の箱構成体の周回壁部の上端部には周回溝が形成され、第二の箱構成体の周回壁部の上端部には前記突き合わせ時に前記周回溝に納められて周回溝の溝底に溶着される周回突部が形成されていると共に、
第一の箱構成体の周回壁部におけるその外壁面と前記周回溝との間にある上端面が、その内壁面と前記周回溝との間にある上端面よりも上方に位置されるようになっているものとした。
【0006】
かかる構成によれば、前記溶着時において、第一の箱構成体の周回壁部と第二の箱構成体の周回壁部とを、両者の外壁面間に隙間を生じさせないように突き合わせることができ、かかる溶着により生じる溶融樹脂がレゾネーターの外側に漏れだしバリを形成するような事態を効果的に防止することができる。
【0007】
前記第一の箱構成体の周回溝を、この第一の箱構成体の内側に位置される一方溝壁側に最深部を有し、この最深部と他方溝壁間にこの他方溝壁に近づくに連れて周回溝を浅くする傾斜底面を有するものとしておけば、かかる傾斜底面により、前記溶着により生じる溶融樹脂を第一の箱構成体の内側、つまり、生成されるレゾネーターの空気室の内側に誘導してこの溶着をなすことができ、かかるレゾネーターの外側への前記溶融樹脂に漏れだしを一層効果的に防止することができる。
【0008】
また、前記第一の箱構成体の周回壁部と第二の箱構成体の周回壁部との突き合わせ時に、周回突部と周回溝部における第一の箱構成体の内側に位置される一方溝壁との間に空隙が形成されるようにしておくこともある。このようにしておけば、前記溶着により生じる溶融樹脂をかかる空隙に留めてこの溶着をなすことができ、レゾネーターの外側への前記溶融樹脂に漏れだしを防止しつつ第一の箱構成体と第二の箱構成体とを周回壁部の上端部において強固に溶着することができる。
【0009】
また、前記第一の箱構成体の周回壁部におけるその内壁面と周回溝との間の距離を、その外壁面と周回溝との間の距離よりも小さくさせておくこともある。このようにした場合、第一の箱構成体の周回壁部の上端部におけるレゾネーターの外側に位置される箇所の強度を高く確保しながら、この上端部の内外寸法を必要最小限のものとすることができる。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、合成樹脂製のレゾネーターを、二つの箱構成体の溶着によって、適切に構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は実施の形態にかかるレゾネーターの斜視図である。
【図2】図2は図1におけるA−A線断面図である。
【図3】図3はレゾネーターを構成する第一の箱構成体と第二の箱構成体とを分離した状態で示した斜視図である。
【図4】図4はレゾネーターとこれをこれを生成するために使用する治具のスライダとを一緒に表した平面構成図である。
【図5】図5は図4におけるB−B線断面図である。
【図6】図6はレゾネーターを構成する第一の箱構成体と第二の箱構成体とを溶着する直前の状態を示した要部断面構成図である。
【図7】図7はレゾネーターを構成する第一の箱構成体と第二の箱構成体とを溶着した直後の状態を示した要部断面構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図1〜図7に基づいて、この発明の典型的な実施の形態について、説明する。この実施の形態にかかるレゾネーターRは、エンジンの吸気経路中に備えられてこの吸気経路の一部を構成するものである。図示の例では、レゾネーターRは、前記吸気経路において、キャニスターとインテークマニホールドとの間に配される構造のものとなっている。
【0013】
かかるレゾネーターRは、空気室1と、これに連通する管部2とを有している。空気室1は扁平の箱状体3によって構成されている。管部2は箱状体3の幅広の面3aの一方に管一端を一体に連接させて前記空気室1に連通した主管2aと、この主管2aの管一端と管他端との間においてこの主管2aに管一端を一体に連接させてこの主管2aに連通した分岐管2bとから構成されている。かかる主管2aの管他端を前記吸気経路の構成管の一つ(図示は省略する。)に接続させ、かつ、前記分岐管2bの管他端を前記吸気経路の構成管の他の一つ(図示は省略する。)に接続させることで、レゾネーターRはかかる吸気経路の一部を構成するようになっている。
【0014】
内部を前記空気室1とする前記箱状体3は、第一の箱構成体4と第二の箱構成体5とを組み合わせてなる。具体的には、かかる箱状体3は、底面部4aとこの底面部4aを巡る周回壁部4bとを備えた第一の箱構成体4のこの周回壁部4bと、底面部5aとこの底面部5aを巡る周回壁部5bとを備えた第二の箱構成体5のこの周回壁部5bとを突き合わせ溶着させることで構成されている。
【0015】
図示の例では、箱状体3は、二つの幅広の面3a、3aと、この二つの幅広の面3a、3a間に亙る幅狭の側面3bとを有している。第一の箱構成体4及び第二の箱構成体5の底面部4a、5aにより箱状体3の幅広の面3aが形成され、第一の箱構成体4及び第二の箱構成体5の周回壁部4b、5bにより箱状体3の前記幅狭の側面3bが形成されるようになっている。
【0016】
かかる第一の箱構成体4の周回壁部4bの上端部40には周回溝41が形成され、第二の箱構成体5の周回壁部5bの上端部50には前記突き合わせ時に前記周回溝41に納められて周回溝41の溝底41eに溶着される周回突部51が形成されている。
【0017】
図示の例では、第一の箱構成体4及び第二の箱構成体5はいずれも、周回壁部4b、5bの上端部40、50に外側に突き出す鍔状部42、52を有している。そして、第一の箱構成体4にあっては、この鍔状部42によって構成された周回壁部4bの外壁面43と、周回壁部4bの内壁面44との間にある上端面45に、前記周回溝41が刻設状に形成されている。また、第二の箱構成体5にあっては、前記鍔状部52によって構成された周回壁部5bの外壁面53と、周回壁部5bの内壁面54との間にある上端面55に、前記周回突部51が凸設されている。
【0018】
そして、この実施の形態にあっては、前記第一の箱構成体4の周回壁部4bにおけるその外壁面43と前記周回溝41との間にある上端面45bが、その内壁面と前記周回溝41との間にある上端面45aよりも上方に位置されるようになっている。(図7)
【0019】
これにより、この実施の形態にあっては、前記溶着時において、第一の箱構成体4の周回壁部4bと第二の箱構成体5の周回壁部5bとを、両者の外壁面43、53間に隙間を生じさせないように突き合わせることができ、かかる溶着により生じる溶融樹脂がレゾネーターRの外側に漏れだしバリを形成するような事態を効果的に防止可能となっている。
【0020】
この実施の形態にあっては、前記管部2は第一の箱構成体4に備えられている。そして、前記溶着は、かかる第一の箱構成体4を管部2を下にして治具上に支持した上で、この第一の箱構成体4上に第二の箱構成体5を降下させてなすようにしている。治具は、第一の箱構成体4の周回壁部4bの外壁面43に対する圧接部Saを備えた受け部材Sを備えており、第一の箱構成体4は四つの受け部材S…Sによって押さえつけられて支持される。(図4、図5)前記溶着終了後は受け部材Sはスライド移動して第一の箱構成体4の押さえつけは解かれる。前記溶着は、超音波溶着などの公知の溶着手法によって、前記周回突部51の突きだし端側を溶融させることでなされる。
【0021】
また、この実施の形態にあっては、前記第一の箱構成体4の周回溝41は、この第一の箱構成体4の内側に位置される一方溝壁41a側に最深部41cを有し、この最深部41cと他方溝壁41b間にこの他方溝壁41bに近づくに連れて周回溝41を浅くする傾斜底面41dを有している。すなわち、周回溝41の溝底41eは最深部41cと傾斜底面41dとから構成されている。
【0022】
具体的には、図示の例では、周回溝41は、最深部41cにおいて溝底41eを内壁面44に直交する向きの水平面とすると共に、この最深部41cと他方溝壁41bとの間にある溝底41eを前記傾斜底面41dとしている。そして、前記周回突部51はこの傾斜底面41dに押しつけられて溶着されるようになっている。(図6、図7/図7にこの溶着箇所を符号41fで示す。)
【0023】
これにより、この実施の形態にあっては、かかる傾斜底面41dにより、前記溶着により生じる溶融樹脂を第一の箱構成体4の内側、つまり、生成されるレゾネーターRの空気室1の内側に誘導してこの溶着をなすことができ、かかるレゾネーターRの外側への前記溶融樹脂に漏れだしを一層効果的に防止可能となっている。
【0024】
また、この実施の形態にあっては、第一の箱構成体4の周回壁部4bと第二の箱構成体5の周回壁部5bとの突き合わせ時に、周回突部51と周回溝41における第一の箱構成体4の内側に位置される一方溝壁41aとの間に空隙xが形成されるようになっている。(図7)
【0025】
これにより、この実施の形態にあっては、前記溶着により生じる溶融樹脂をかかる空隙xに留めてこの溶着をなすことができ、レゾネーターRの外側への前記溶融樹脂に漏れだしを防止しつつ第一の箱構成体4と第二の箱構成体5とを周回壁部4b、5bの上端部40、50において強固に溶着できるようになっている。
【0026】
また、この実施の形態にあっては、第一の箱構成体4の周回壁部4bにおけるその内壁面44と周回溝41との間の距離yが、その外壁面43と周回溝41との間の距離y’よりも小さくなっている。(図6)
【0027】
これにより、この実施の形態にあっては、第一の箱構成体4の周回壁部4bの上端部40におけるレゾネーターRの外側に位置される箇所の強度を高く確保しながら、この上端部40の内外寸法を必要最小限のものとしている。
【符号の説明】
【0028】
R レゾネーター
1 空気室
4 第一の箱構成体
4a 底面部
4b 周回壁部
40 上端部
41 周回溝
41e 溝底
43 外壁面
44 内壁面
45a、45b 上端面
2 第二の箱構成体
5a 底面部
5b 周回壁部
50 上端部
51 周回突部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの吸気経路中に備えられる合成樹脂製のレゾネーターであって、
これを構成する空気室を、底面部とこの底面部を巡る周回壁部とを備えた第一の箱構成体のこの周回壁部と、底面部とこの底面部を巡る周回壁部とを備えた第二の箱構成体のこの周回壁部とを突き合わせ溶着させて構成させており、
第一の箱構成体の周回壁部の上端部には周回溝が形成され、第二の箱構成体の周回壁部の上端部には前記突き合わせ時に前記周回溝に納められて周回溝の溝底に溶着される周回突部が形成されていると共に、
第一の箱構成体の周回壁部におけるその外壁面と前記周回溝との間にある上端面が、その内壁面と前記周回溝との間にある上端面よりも上方に位置されるようになっていることを特徴とするレゾネーター。
【請求項2】
第一の箱構成体の周回溝は、この第一の箱構成体の内側に位置される一方溝壁側に最深部を有し、この最深部と他方溝壁間にこの他方溝壁に近づくに連れて周回溝を浅くする傾斜底面を有していることを特徴とする請求項1に記載のレゾネーター。
【請求項3】
第一の箱構成体の周回壁部と第二の箱構成体の周回壁部との突き合わせ時に、周回突部と周回溝における第一の箱構成体の内側に位置される一方溝壁との間に空隙が形成されるようになっていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のレゾネーター。
【請求項4】
第一の箱構成体の周回壁部におけるその内壁面と周回溝との間の距離が、その外壁面と周回溝との間の距離よりも小さくなっていることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のレゾネーター。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−241561(P2012−241561A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−110449(P2011−110449)
【出願日】平成23年5月17日(2011.5.17)
【出願人】(000135209)株式会社ニフコ (972)