説明

レトラクタ

手術中に傷口(7)を開いておくために傷口(7)に配置するための、X線透過性プラスチック材料のシャックルを有する、レトラクタ(1)。シャックルは、傷口(7)への挿入のために開始位置からバネのように互いに向けて押し合せることができ、その後、開始位置に向けて弾力で戻ることによって傷口(7)の縁端に接触させられ、よって傷口(7)の縁端を離しておき、自立態様で傷口(7)にレトラクタ(1)を留まらせる、弾力性のある脚(2a,2b)を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手術中に傷口を開いておくために傷口に配置するためのレトラクタに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の既知のレトラクタは、傷口に差し込み、傷口の縁端を横方向に引っ張って傷口を開いておき、そのようにして手術を容易にする、金属の湾曲フックを有する。傷口を可能な限り開いておくために対向する方向に引っ張られる、2つのレトラクタを用いることが有利である。そのようなレトラクタにともなう欠点は、手術の間ずっとレトラクタを支える人間が必要なことである。別の欠点は、X線検査においてレトラクタが、例えばX線で検査されるべき折れた骨を隠し得ることであり、これは検査中のレトラクタの取外しを意味する。さらなる欠点は、使用後のレトラクタを、洗浄、殺菌及び再包装して次の手術に使用できるようにするときに、長時間の洗浄にかけなければならないことである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の課題は、上記の問題が排除されるように構成されたレトラクタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題は、本発明にしたがう、上述したタイプの、バネのように開始位置から閉じ合わされて傷口または切開口に挿入され、その後、開始位置まで弾力で戻ることによって傷口の縁端に接触させられ、よって傷口の縁端を離しておき、自立態様でレトラクタを傷口に留める、弾力性のある2本の脚を有する、X線を透過させるプラスチック材料のシャックルで構成されることを特徴とする、レトラクタによって達成される。
【0005】
本レトラクタはX線透過性プラスチック材料でつくられるから、例えば、X線で検査されるべき骨折を隠さずにX線検査中に傷口に留めておくことができる。
【0006】
本レトラクタはプラスチック材料でつくられており、レトラクタを衛生的にして、時間と費用がかかる洗浄作業の実施が必要ではないことを意味する、1回使いきり品として用いるように考えられている。
【0007】
本レトラクタの弾力性がある2本の脚は、レトラクタが傷口に配置されるときに傷口の縁端に押し当てられて、レトラクタを自立させ、よって、傷口に配置されてしまえば手術中にレトラクタを人が保持している必要がなくなる。
【0008】
それぞれの脚は自由端に傷口の縁端をつかむための、外向きのフック様突起を有するから、レトラクタは傷口によりうまく配置される。
【0009】
本レトラクタの脚はそれぞれが膝のような湾曲部を有することが好ましく、この湾曲部は互いに対向して配される。これは傷口上方に、手術を容易にする、より大きな空間が得られることを意味する。
【0010】
本レトラクタのシャックルは、作成プロセスを簡単にする、一体品につくられることが好ましい。本発明にしたがうX線透過性材料は広い意味で、すなわち、手術時に身体の組織または部分を離しておくために用いられるという意味で、レトラクタに用いることができる点で有利である。例えば、特に下側で、手術されるべき骨から筋肉及び腱組織を離しておくために用いられるタイプのレトラクタでは、レトラクタを所定の位置においてX線で透視することが可能になるから、骨の手術において筋肉が傷つけられるリスクが冒されることのないような、その骨への直接見えない側での自由なアクセスを、以前より良くかつ容易に確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下で添付図面を参照して本発明をより詳細に説明する。
【0012】
図面に本発明にしたがうレトラクタ1が示される。レトラクタ1は、細長く、弾力性がある2本の脚2a,2b及び基本的に部分円弧形状のスプリングヘッド3を有し、スプリングヘッド3から脚2a,2bが延びる。レトラクタ1は、一体でつくられ、X線透過性のプラスチック材料、好ましくは環境にやさしい分解可能な硬質プラスチックでつくられる。
【0013】
2本の脚2a,2bは、バネのように、脚2a,2bの下部が開いている開始位置(図1)から、脚2a,2bが下部で互いに接している完全に圧閉された位置(図2)に閉じ合わせることができる。
【0014】
脚2a,2bのそれぞれは膝のような湾曲部4a,4bを有する。湾曲部4a,4bは互いに対向して配される。湾曲部4a,4bのそれぞれの近くに、グリップ5a,5bが配される。グリップ5a,5bは粗面構造を有する。
【0015】
脚2a,2bはさらにそれぞれの自由端に、脚2a,2bのそれぞれの短い延長部である、外向きのフック様突起6a,6bを有する。
【0016】
使用時にレトラクタ1は傷口7に挿入されて、手術中に傷口7を開いておく。
【0017】
レトラクタ1が傷口7に挿入されることになる場合、脚2a,2bは、脚2a,2bの下部が互いに接するように、ユーザがグリップ5a,5bを互いに向けて押すことによって、押し付けられる(図2)。その後、レトラクタ1は傷口7に挿入される。ユーザがグリップ5a,5bにかけた圧力を緩めると、再び脚2a,2bが開き、傷口7の縁端に接触する。脚2a,2bが弾力で開始位置に向けて戻ることによって、傷口7の縁端が離れたままになる。レトラクタ1の固有の弾力が、レトラクタ1を自立態様で傷口7の所定の位置に留まらせる。
【0018】
グリップ5a,5bは、ユーザがレトラクタ1を安定につかむに役立つから、脚2a,2bの押合せを容易にする。グリップ5a,5bはユーザが手を滑らせて傷口7の縁端を傷つけるリスクも低める。
【0019】
外向きのフック様突起6a,6bは、レトラクタ1が傷口7に配されるときに傷口7の縁端と接触させられ、傷口7にレトラクタ1を安全に留まらせる。
【0020】
レトラクタ1のスプリングヘッド7の下方の、湾曲部湾4a,4bの間に空間が形成されて、ユーザの手及び手術中に用いられる可能性のある器具のための、手術の実行を容易にする空間を提供する。
【0021】
本発明の概念の枠組みの範囲内で、レトラクタの、上述した実施形態とは別の実施形態を考えることもできる。例えば、レトラクタの脚を端部において外側に湾曲させる代りに真っ直ぐにすることができる。さらに、使用目的に依存して、フックまたはチップからある距離で下方に多少湾曲している脚を考えることができる。脚が真っ直ぐである場合にも、図1におけるように若干外側に湾曲している場合にも、チップをかなり長くすることができる。
【0022】
傷口縁端のより穏やかでおそらくはより細長い引離しを達成するため、本発明にしたがうレトラクタは、2つのフックの代りに、櫛またはフェンスに似ているが、それぞれの歯が下端において1つまたはいくつかの外に向けられたポイントで終端している、多くの下方に平行に延びるフックを備えることができる。この場合、力はいくつかのポイントに分散され、傷口縁端をより長い範囲で離しておくことができるから、中間部における引離しは、図示されるタイプのレトラクタを用いる同じ手術に対するほど大きくする必要はない。さらに、このタイプのレトラクタを用いればレトラクタの数を少なくすることができ、これによって手術領域へのアクセス容易性を向上させることができる。そうすることが望ましければ、均等な力分散を確保するために櫛の歯またはフックのそれぞれに若干弾力性をもたせることができる。レトラクタの末端のポイントは適用分野に依存して異なる長さを有することもできる。
【0023】
さらに、本発明にしたがうレトラクタは、押し合せ時につかむための位置に、レトラクタの面の上方に延びる、つかむときに手を滑らせるかまたは確実につかむために不必要に長い時間がかかるというリスクを低めるために溝付及び/または凹面とすることができる、グリップ部を備えることができる。
【0024】
本発明にしたがうレトラクタに適する材料は、燃やすことで容易に破壊することができる、ポリアミドまたはポリオキシメチレンである。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】開始位置にある本発明にしたがうレトラクタを示す前面図である
【図2】圧閉位置にある図1のレトラクタを示す前面図である
【符号の説明】
【0026】
1 レトラクタ
2a,2b 脚
3 スプリングヘッド
4a,4b 湾曲部
5a,5b グリップ
6a,6b 突起
7 傷口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
手術中に傷口(7)を開いておくために前記傷口(7)に配置するためのレトラクタ(1)において、前記傷口(7)への挿入を可能にするために開始位置からバネのように押し合せることができ、その後、前記開始位置に向けて弾力で戻ることによって前記傷口(7)の縁端に接触させられ、よって前記傷口(7)の前記縁端を離しておき、自立態様で前記傷口(7)に前記レトラクタ(1)を留まらせる、弾力性のある2本の脚(2a,2b)を有する、X線透過性プラスチック材料のシャックルで構成されることを特徴とするレトラクタ。
【請求項2】
前記2本の脚(2a,2b)のそれぞれが、それぞれの自由端において、前記傷口縁端をつかむために外側に向けられた、外向きのフック様突起(6a,6b)を有することを特徴とする請求項1に記載のレトラクタ。
【請求項3】
前記2本の脚(2a,2b)のそれぞれが、膝に似た湾曲部(4a,4b)を有し、前記湾曲部(4a,4b)が互いに対向して配されていることを特徴とする請求項1または2に記載のレトラクタ。
【請求項4】
前記シャックルが一体でつくられていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のレトラクタ。
【請求項5】
先端からある距離で前記脚が下方に曲げられていることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のレトラクタ。
【請求項6】
前記レトラクタの前記脚が先端において、下端に1つまたはいくつかの外向きのポイントを有する、下方に延びる細いピンの列を備えることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のレトラクタ。
【請求項7】
前記脚が上方に突き出すグリップ部を備えることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載のレトラクタ。
【請求項8】
1回使いきりレトラクタとして用いられるように分解可能な硬質プラスチックでつくられることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載のレトラクタ。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2008−525150(P2008−525150A)
【公表日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−549321(P2007−549321)
【出願日】平成17年12月27日(2005.12.27)
【国際出願番号】PCT/SE2005/002043
【国際公開番号】WO2006/071188
【国際公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【出願人】(507220969)
【氏名又は名称原語表記】RISTO, Olof
【出願人】(507220958)
【氏名又は名称原語表記】LIND, Stefan
【Fターム(参考)】