説明

レトルトパウチ

【課題】熱い容器や熱湯に手指を直接近づけることなく、簡易な構成によって、容易且つスムーズにレトルトパウチ食品を熱湯から取り出すことを可能にするレトルトパウチを提供する。
【解決手段】可撓性を有する合成樹脂フィルム15を貼り合せて形成した袋本体16に内容物を密封収納し、熱湯13の中で温めて使用するレトルトパウチ食品11に用いるレトルトパウチ10であって、少なくとも袋本体16の2辺部17a,17bに形成されたシール領域18a,18bが交差する角部領域19に、箸14が挿入係止される貫通穴23が形成されており、この貫通穴23には、基端部24を開口周縁23aと連続させてリングに切り込まれた周方向スリット25が形成されており、この周方向スリット25は、箸14を貫通穴23に挿入することで、貫通穴23の周縁部分を突出させて、箸14を保持可能とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レトルトパウチに関し、特に可撓性を有する合成樹脂フィルムを貼り合せて形成した袋本体に内容物を密封収納し、熱湯の中で温めて使用するレトルトパウチ食品に用いるレトルトパウチに関する。
【背景技術】
【0002】
レトルトパウチ食品は、予め調理がなされた食品として、例えばカレーやおかゆ等を、光も空気も通さない袋であるレトルトパウチに密封収納すると共に、レトルトと呼ばれる蒸気がまで圧力をかけることにより、高温で殺菌した状態で販売される。このようなレトルトパウチ食品は、防腐剤や保存料などを使わずに、室温で長期保存が可能である。
【0003】
一方、このようなレトルトパウチ食品は、室温のままの温度で食されるのは稀で、通常は熱湯の中にレトルトパウチ食品を袋ごと入れて加熱した後に、熱湯から取り出して開封することにより、収納されたカレーやおかゆ等の食品が食されることになる。
【0004】
また、熱湯の中からレトルトパウチ食品を袋ごと手指で取り出す作業が容易でないことから、熱湯からの取り出しを容易にするための工夫が種々なされている(例えば、特許文献1,2参照)。ここで、特許文献1のレトルトパウチ容器は、食品用レトルトパウチ袋に、取り出し具としての形状を記憶させたシート状樹脂を取り付けたものである。また特許文献2の包装体は、包装袋体(レトルトパウチ)の周縁の熱接着部に吊り下げ孔を形成すると共に、両端に鉤部が形成され、一方の鉤部の近傍に摘み部が形成された吊り下げ部材を用いて、他方の鉤部を吊り下げ孔に引っ掛け、一方の鉤部を鍋等の熱湯の入った容器の縁に引っ掛けて熱湯の中に入れられた状態から、摘み部を摘んで包装体を取り出せるようにしたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平7−878号公報
【特許文献2】特開2004−83124号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来のレトルトパウチ食品では、鍋等の容器中の熱湯から上方に飛び出した状態の形状を記憶させたシート状樹脂や、一方の鉤部の近傍の摘み部を、熱い容器や熱湯に近接する部分から直接手指で摘んでレトルトパウチ食品を熱湯から取り出す必要があるため、その作業が容易ではない。またこれらのレトルトパウチ食品に用いるレトルトパウチでは、形状を記憶させたシート状樹脂や吊り下げ部材等の別部材を設ける必要があることから、本来食品を収納するのに必要な部材以外に無駄な部材を用いることになり、その製造工程も複雑になる。
【0007】
本発明は、熱い容器や熱湯に手指を直接近づけることなく、簡易な構成によって、容易且つスムーズにレトルトパウチ食品を熱湯から取り出すことを可能にするレトルトパウチを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、可撓性を有する合成樹脂フィルムを貼り合せて形成した袋本体に内容物を密封収納し、熱湯の中で温めて使用するレトルトパウチ食品に用いるレトルトパウチであって、少なくとも袋本体の2辺部に形成されたシール領域が交差する角部領域に、貫通穴が形成されており、該貫通穴には、開口周縁から外側に向けて延設するスリットが切り込まれており、箸を該貫通穴に挿入することで前記箸が保持可能とされるレトルトパウチを提供することにより、上記目的を達成したものである。
【0009】
また、本発明は、可撓性を有する合成樹脂フィルムを貼り合せて形成した袋本体に内容物を密封収納し、熱湯の中で温めて使用するレトルトパウチ食品に用いるレトルトパウチであって、少なくとも袋本体の2辺部に形成されたシール領域が交差する角部領域に、貫通穴が形成されており、該貫通穴には、基端部を開口周縁と連続させてリング状又は螺旋状に切り込まれた周方向スリットが形成されており、該周方向スリットは、箸を該貫通穴に挿入することで、該貫通穴の周縁部分を突出させ、前記箸が保持可能とされるレトルトパウチを提供することにより、上記目的を達成したものである。
【0010】
さらに、本発明は、可撓性を有する合成樹脂フィルムを貼り合せて形成した袋本体に内容物を密封収納し、熱湯の中で温めて使用するレトルトパウチ食品に用いるレトルトパウチであって、少なくとも袋本体の2辺部に形成されたシール領域が交差する角部領域に、箸が挿入係止される貫通穴が形成されており、該貫通穴は、前記袋本体の対角方向外側に向けて幅が狭くなった部分を有しており、箸を該貫通穴に挿入することで前記箸が前記対角方向外側の幅が狭くなった部分に移動して保持可能とされるレトルトパウチを提供することにより、上記目的を達成したものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明のレトルトパウチによれば、熱い容器や熱湯に手指を直接近づけることなく、簡易な構成によって、容易且つスムーズにレトルトパウチ食品を熱湯から取り出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の好ましい第1実施形態に係るレトルトパウチを用いたレトルトパウチ食品を、熱湯から取り出す状況を説明する斜視図である。
【図2】本発明の好ましい第1実施形態に係るレトルトパウチの正面図及び貫通穴の説明図である。
【図3】本発明の好ましい第1実施形態に係るレトルトパウチの貫通穴に箸を挿通した状態を説明する要部斜視図である。
【図4】本発明の好ましい第1実施形態に係るレトルトパウチにおける貫通穴の他の形態を例示する部分正面図である。
【図5】(a)は、本発明の好ましい第2実施形態に係るレトルトパウチの貫通穴の形態を例示する部分正面図、(b)は貫通穴に箸を挿通した状態を説明する要部斜視図である。
【図6】本発明の好ましい第2実施形態に係るレトルトパウチにおける貫通穴の他の形態を例示する部分正面図である。
【図7】(a)は、本発明の好ましい第3実施形態に係るレトルトパウチの貫通穴の形態を例示する部分正面図、(b)は貫通穴に箸を挿通した状態を説明する要部斜視図である。
【図8】本発明の好ましい第3実施形態に係るレトルトパウチにおける貫通穴の他の形態を例示する部分正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1に示す本発明の好ましい第1実施形態に係るレトルトパウチ10は、食品として例えば予め調理されたカレーを密封収納して、レトルトパウチ食品11を形成するものであり、レトルトパウチ食品11は、室温で販売された状態から、例えば鍋12の中の熱湯13に入れて数分〜数十分程度加熱した後に、熱湯13から取り出して開封し、収納された食品を皿等に盛り付けて食すものである。本第1実施形態のレトルトパウチ10は、加熱されたレトルトパウチ食品11を、箸14を用いて、熱い容器(鍋)12や熱湯13に手指を直接近づけることなく、容易且つスムーズに熱湯13から取り出すことができるようにするために採用されたものである。
【0014】
そして、本第1実施形態に係るレトルトパウチ10は、可撓性を有する合成樹脂フィルム15を貼り合せて形成した袋本体16に内容物を密封収納し、熱湯13の中で温めて使用する袋容器であって、図2に示すように、少なくとも袋本体16の2辺17a,17bに形成されたシール領域18a,18bが交差する角部領域19に、箸14が挿入係止される貫通穴20が形成されており、この貫通穴20には、開口周縁20aから外側に向けて延設するスリット21が切り込まれており、箸14を挿入してレトルトパウチ食品11を持ち上げる際に、図3に示すように、スリット21の両側部分が撓んだり、場合によっては折れ曲がり、箸14と面接触したり、箸14と倣うように変形し、接触する範囲を増やしたり、箸14の抜け方向に対抗して貫通穴20の端面が箸14に当たるフラップを形成することにより、滑止め効果を発揮して係止状態を保持し易くなっている。
【0015】
本第1実施形態では、レトルトパウチ10は、可撓性を有する合成樹脂フィルム15として、一般に使用される例えばポリエチレンテレフタレート/アルミニウム/ポリプロピレンからなる積層フィルムを用いて形成され、例えば、図2に示すように、平面矩形形状に折り畳んだ折り曲げ部を一辺とし、他の片(上辺17a及び両側の側辺17b)を、例えば熱融着によりシール領域18a,18bとしてシール接合して、食品を密封収納する袋として形成される。また、両側の側辺17bのシール領域18bには、これの上端部分に、開封用の切欠き22が各々形成されており、この切欠き22を開始点として、レトルトパウチ10を容易に開封できるようになっている。さらに、本第1実施形態では、上辺17aのシール領域18aと、一方の側辺17bのシール領域18bとが交差する角部領域19は、幅広にシールされており、この幅広にシールされた角部領域19に、箸14が挿入係止される貫通穴20が開口形成されている。
【0016】
そして、本第1実施形態では、この貫通穴20には、これの開口周縁20aから放射方向外側に向けて延設する8本のスリット21が線状に切り込まれている。開口周縁20aから外側に向けて延設する8本のスリット21が切り込まれていることにより、図1に示すように、貫通穴20に箸14を挿入してレトルトパウチ食品11を持ち上げる際に、図3に示すように、角部領域19の外側に向けて形成されたスリット21を挟んだ両側部分(特に重力方向となる、レトルトパウチ10の対角方向Xの外側に向けて形成されたスリット21を挟んだ両側部分)が折れ曲がったり撓んだりして変形して箸14の外周面と倣い、面接触可能となり、又はスリット21に挟まれた領域がフラップとなって撓み変形し、この撓み変形をした部分には撓み変形の反力として箸14の外周面に押し付ける付勢力を生じたり、撓み変形により貫通穴20の端面が箸14の抜け方向に対抗する方向に向けられる。これらによって、滑止め効果を効率良く発揮して係止状態を保持し易くなり、箸14を用いながら、容易且つスムーズに加熱したレトルトパウチ食品11を熱湯13から取り出すことが可能になる。すなわち、貫通穴20の開口周縁20aにスリット21を設けるだけの簡易な構成によって、箸14を用いながら、熱い容器12や熱湯13に手指を直接近づけることなく、容易且つスムーズに加熱したレトルトパウチ食品11を熱湯13から取り出すことが可能になる。
【0017】
図4は、本第1実施形態における、貫通穴20の開口周縁20aから外側に向けて延設して切り込まれた、スリット21’の他の形態を例示するものである。図4のスリット21’は、角部領域19の貫通穴20の開口周縁20aからレトルトパウチ10の対角方向X(図2参照)の外側に向けて、その幅を徐々に狭くした鋭利な楔状に形成されている。このようなスリット21’によっても、図2のスリット21と同様の作用効果が奏される。
【0018】
図5(a),(b)は、本発明の好ましい第2実施形態に係るレトルトパウチ10’における、上辺17aのシール領域18aと、一方の側辺17bのシール領域18bとが交差する角部領域19に形成された貫通穴23を示すものである。なお、本第2実施形態のレトルトパウチ10’では、貫通穴23以外の構成は、上記第1実施形態と同様なので、その説明を省略する。
【0019】
そして、本第2実施形態では、貫通穴23には、基端部24を開口周縁23aと連続させて2重のリング状に周方向スリット25が貫通穴23の周縁部分23bに切り込まれており、周方向スリット25は当該周縁部分23bを突出させることを可能としている。例えば、箸14を挿入してレトルトパウチ食品11を持ち上げる際に、周縁部分23bを挿入方向Yにリング状に突出させ、箸14の外周面に倣うように立体的に接触させることにより、貫通穴20とスリット25の端面、及び/又はスリット25によって形成されたリング状の面が箸14に接触可能となり、滑止め効果を発揮して係止状態を保持し易くする。これによって、箸14を用いながら、容易且つスムーズに加熱したレトルトパウチ食品11を熱湯13から取り出すことが可能になる。したがって、本第2実施形態によっても、貫通穴23の周縁部分23bに周方向スリット25を設けるだけの簡易な構成によって、箸14を用いながら、熱い容器12や熱湯13に手指を直接近づけることなく、容易且つスムーズに加熱したレトルトパウチ食品11を熱湯13から取り出すことが可能になる。
【0020】
図6は、本第2実施形態における、基端部24’を開口周縁23aと接続させて周縁部分23bを突出させる周方向スリット25’の他の形態を例示するものである。図6の周方向スリット25’は、螺旋状に切り込まれており、箸14を挿入してレトルトパウチ食品11を持ち上げる際に、周縁部分23bを挿入方向Yに螺旋状に突出させ、箸14の外周面と立体的に接触させることにより、滑止め効果を発揮して係止状態を保持し易くする。このような周方向スリット25’によっても、図5(a)の周方向スリット25と同様の作用効果が奏される。
【0021】
図7(a),(b)は、本発明の好ましい第3実施形態に係るレトルトパウチ10”における、上辺17aのシール領域18aと、一方の側辺17bのシール領域18bとが交差する角部領域19に形成された貫通穴26を示すものである。なお、本第3実施形態のレトルトパウチ10”では、貫通穴26以外の構成は、上記第1実施形態と同様なので、その説明を省略する。
【0022】
そして、本第3実施形態では、貫通穴26は、角部領域19におけるレトルトパウチ10”の対角方向Xの外側に向けて幅が狭くなった小円部分26aを有しており、箸14を挿入してレトルトパウチ食品11を持ち上げる際に、この箸14を幅の狭くなった小円部分26aに移動して係止させることにより、滑止め効果を発揮して係止状態を保持し易くする。即ち、箸14を貫通穴26に挿入してレトルトパウチ食品11を持ち上げると、レトルトパウチ食品の自重によって、箸14は貫通穴25に連続する小円部分26aに移動され、小円部分26aの端面と箸14との接触部分は大きな貫通穴26より増える。これによって、箸14を用いながら、容易且つスムーズに加熱したレトルトパウチ食品11を熱湯13から取り出すことが可能になる。したがって、本第3実施形態によっても、角部領域19におけるレトルトパウチ10”の対角方向Xの外側に向けて幅が狭くなった貫通穴26を設けるだけの簡易な構成によって、箸14を用いながら、熱い容器12や熱湯13に手指を直接近づけることなく、容易且つスムーズに加熱したレトルトパウチ食品11を熱湯13から取り出すことが可能になる。
【0023】
図8は、本第3実施形態における、角部領域19におけるレトルトパウチ10”の対角方向Xの外側に向けて幅が狭くなった部分27aを有する貫通穴27の他の形態を例示するものである。図8の貫通穴27は、貫通穴27の対角方向Xのレトルトパウチ10”の袋本体側から角隅部に向けて(基端部分から外側に向けて)、滑らかに幅を狭くしたものである。このような貫通穴27によっても、図7(a)の貫通穴26と同様の作用効果が奏される。
【0024】
なお、本発明は上記各実施形態に限定されることなく種々の変更が可能である。例えば、角部領域に設けられる貫通穴、スリット、周方向スリットとして、上記実施形態の形状以外の、同様の機能を有するその他の種々の形状のものを採用することができる。また、貫通穴の周囲である角部領域19のシール部(融着部)にエンボス加工、シールパターン等、又は印刷等により滑り止めとなる凹凸やシボ面を形成することが好ましい。さらに、貫通穴の端面をギザギザにする等により滑り止め効果を出すことも可能である。
【符号の説明】
【0025】
10,10’,10” レトルトパウチ
11 レトルトパウチ食品
12 鍋(容器)
13 熱湯
14 箸
15 合成樹脂フィルム
16 袋本体
17a 上辺
17b 側辺
18a 上辺のシール領域
18b 側辺のシール領域
19 角部領域
20,23,26,27 貫通穴
20a,23a 貫通穴の開口周縁
21,21’ スリット
23b 周縁部分
24,24’ 基端部
25,25’ 周方向スリット
X レトルトパウチの対角方向
Y 箸の挿入方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性を有する合成樹脂フィルムを貼り合せて形成した袋本体に内容物を密封収納し、熱湯の中で温めて使用するレトルトパウチ食品に用いるレトルトパウチであって、
少なくとも袋本体の2辺部に形成されたシール領域が交差する角部領域に、貫通穴が形成されており、
該貫通穴には、基端部を開口周縁と連続させてリング状又は螺旋状に切り込まれた周方向スリットが形成されており、該周方向スリットは、箸を該貫通穴に挿入することで、該貫通穴の周縁部分を突出させ、前記箸が保持可能とされるレトルトパウチ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−166855(P2012−166855A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−135135(P2012−135135)
【出願日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【分割の表示】特願2007−100052(P2007−100052)の分割
【原出願日】平成19年4月6日(2007.4.6)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】