説明

レバー付きピンセット

【課題】 対象物を把持する力が大きい、又は対象物を切断することができるレバー付きピンセットを提供する。
【解決手段】 相対向するように配置され基端側が結合し、先端側が離反した一対の挟持片11、12と、該一対の挟持片の一方に回動自在に立設され相手側挟持片に向かって延びる支軸13と、他方の挟持片に穿設され、前記支軸が貫通する孔と、該孔を貫通した支軸の先端近傍に、支軸と交差して設けられた小軸15と、該小軸に一端が回動自在に取り付けられたレバー16と、該レバーに設けられた支点16aとを有し、前記挟持片の前記支軸より先端側部分を把持部11a、12aとし、該把持部に、前記支軸を取り付けた位置における挟持片の幅より狭くなる部分を設けた。把持部の先端に切刃を設けると対象物を切断することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はピンセットに関し、特に、把持力を大きくすることができ、必要に応じて挟んだものを切断することもできるレバー付きピンセットに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的なピンセットは、一対の挟持片の一端(基端)を結合し、中間から先端に向けて徐々に細くし、先端に滑止の細溝を多数形成した把持部を形成した構成をしている。結合した基端部に弾性が付与されているので、先端の把持部は、自然な状態では離反していて、ものを掴み易くなっている。このようなピンセットは、一般に、人の手指でつかみ難いような小さな物や、手で直接触れることに問題があるような物体をつかむために用いられる。
【0003】
ピンセットは、人の手指で一対の挟持片の両側を押圧し、その押圧力で対象物を挟んで掴むのであるが、ピンセット自身の弾性の問題や、手指の力の限界もあり、掴む力はあまり大きくすることができない。一方、たとえば、網の目のように多くの配線がされている中から、目的の一本の電線を取り出すような場合、対象となる電線を掴むだけでなく、他の多くの電線が絡んでいるところから、掴んでいる電線を引き出す必要がある。その場合、電線を掴む力が大きくないと、引き出すことができないが、従来のピンセットでは力が不足してしまう。
【0004】
また、掴むだけでなく、掴んだものを切断する必要がある場合、従来のピンセットでは切断できないので、別の鋏やニッパーなどを用意して切断することになり、作業が複雑になり、時間も掛かる。
【0005】
また、前述した網の目のように多くの配線がされている中の1本を切断する場合には、従来はピンセットで掴んでから、ニッパーで切断しているが、周囲に十分な空間が確保できないと、ニッパーを使用することができない。
【0006】
これらの問題に対し、特許文献1ではピンセットの基端部に刃部材を交換可能に取り付け、切断作業が必要な場合は、ピンセットを反転させて刃部材で切断できるようにしたピンセットを提案している。これは、主として外科の縫合手術において、縫合が完了したとき、余分な縫合糸を切断するために使用するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−75583
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、掴んだものを切断するためにピンセットを反転させる場合、反転させるとき、掴んだものを離さなければならない。前記の縫合糸であれば、ピンセットによる作業が完了した後になるので、離しても問題ないが、前記の網の目のように多くの配線がされている中から、目的の一本の電線を取り出すような場合、折角掴んだ電線を離すと、電線に加わっている張力等により、電線が元の位置に戻ってしまい、切断できなくなるということになる。
【0009】
本発明は、上記の事実に鑑みてなされたもので、対象物を把持する力が大きいレバー付きピンセットを提供することを第1の目的としている。
【0010】
また、選び出した対象物を把持するだけでなく、切断することもできるレバー付きピンセットを提供することを第2の目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の第1の目的を達成するために本発明のレバー付きピンセットは、相対向するように配置され基端側が結合し、先端側が離反した一対の挟持片と、該一対の挟持片の一方に回動自在に立設され相手側挟持片に向かって延びる支軸と、他方の挟持片に穿設され、前記支軸が貫通する孔と、該孔を貫通した支軸の先端近傍に、支軸と交差して設けられた小軸と、該小軸に一端が回動自在に取り付けられたレバーと、該レバーに設けられた支点とを有し、前記挟持片の前記支軸より先端側部分を把持部とし、該把持部に、前記支軸を取り付けた位置における挟持片の幅より狭くなる部分を設けたことを特徴としている。
【0012】
または、相対向するように配置され一端側が結合した一対の挟持片と、該一対の挟持片の一方に回動自在に立設され相手側挟持片に向かって延びる支軸と、他方の挟持片に穿設され、前記支軸が貫通する孔と、該孔を貫通した支軸の先端近傍に、支軸と交差して設けられた小軸と、該小軸に一端が回動自在に取り付けられたレバーと、該レバーに設けられた支点とを有し、前記挟持片の前記支軸より先端側部分を把持部とし、該把持部の長さが、把持部の長さを含む挟持片の全体の長さの1/5以上で1/2以下であることを特徴としている。前記把持部に前記支軸を取り付けた位置における挟持片の幅より狭くなる部分を設けた構成としたり、前記把持部の先端が、前記支軸を取り付けた位置における挟持片の幅より狭い構成としたりすることができる。
【0013】
上記第2の目的を達成する本発明のレバー付きピンセットは、前記いずれかの構成において、把持部の先端に切刃を設けた構成としている。
【発明の効果】
【0014】
本発明のピンセットによれば、レバーを有しているので、強い把持力を得ることができるという優れた効果を奏する。また、切刃を設けた構成にすれば、対象物を切断することができ、ピンセットから離すと動いてしまうような対象物の所望の位置をカットすることができるという格別の効果を奏する。また、ピンセットの他に鋏などの刃物を用意する必要がない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明のピンセットの使用時の状態を示す図で、(a)は正面図、(b)は上面図である。
【図2】本発明のピンセットの格納時の状態を示す正面図である。
【図3】本発明のピンセットの動作状態を示す図で、(a)は側面図、(b)はレバーの部分の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。
【0017】
図1は、本発明のレバー付きピンセットの使用時の状態を示すで、(a)は正面図、(b)は上面図である。これらの図に示すように、本発明のレバー付きピンセット10は、一対の挟持片11、12と、一方の挟持片11の中間部に穿設された孔14aに挿通された支軸13と、他方の挟持片12に穿設され支軸13が貫通する孔14bと、支軸13の先端近くに支軸13と交差するように設けられた小軸15と、この小軸15に回動自在に取り付けられたレバー16とから構成されている。
【0018】
挟持片11、12は、鏡面対称形状で、基端側が一体的に結合され、挟持片11、12自身の弾性により先端側が相互に離反する方向に付勢されている。挟持片11の支軸13から先端側の部分は、把持部11a、12aとなっている。把持部11a、12aの先端部は相手側の挟持片11、12に向かって折曲し、先端には切刃11b、12bが形成されている。切刃11b、12bを設けることで、本発明のレバー付きピンセット10は、ニッパーのように、挟んだものを切断することができる。ただし、先端を切刃11b、12bとしないで把持する目的に合わせた形態にすることができる。
【0019】
支軸13は、一方の挟持片11に穿設された孔14aに挿入され、他方の挟持片12に穿設された孔14bを貫通して先端が挟持片12から突出するようにしている。支軸13の一端には径の大きい頭部13aがあり、これで孔14aを通過できないようになっている。孔14a、14bと支軸13とは遊嵌しているので、支軸13は挟持片11、12に回動自在に取り付けられていることになる。
【0020】
挟持片12を貫通した支軸13の先端近くには、切欠13bがあり、支軸13の切欠13bの上側に孔を明け、この孔に小軸15を嵌合できるようしている。この小軸15は、レバー16が係合するためのもので、支軸13に交差(この実施例では直交)している。
【0021】
レバー16は先端近傍が折曲した形状で、この曲がり角がレバー16の支点16aである。また、レバー16の先端には支軸13が遊嵌できる幅の切欠16bがあり、この切欠16bの先端には、小軸15が嵌合する孔がある。
【0022】
組み立てる場合、手指などで挟持片11、12を挟んで接近させ、支軸13の先端が挟持片12から突出するようにする。この状態で、レバー16の先端の切欠16bの中に支軸13を入れ、レバー16の先端の孔と支軸13の孔とを重ねて小軸15を挿通する。小軸15はレバー16か支軸13のいずれかに固定する。以上によって、支軸13が挟持片11、12から抜け落ちるのを防止できる。このとき、レバー16の先端から支点16aまでが挟持片12に圧接した状態となる。以上で組み立ては完了である。
【0023】
組み立てが完了した状態で、レバー16を、小軸15を軸として回動したときレバー16の先端の切欠16bによって、支軸13の頂上を越えて支軸13の反対側まで回転することが可能になっている。さらにレバー16は、支軸13を中心とした回転も可能である。
【0024】
図2はピンセット10を格納した状態の図である。レバー16を図1に示す使用時の状態から支軸13を中心にほぼ180゜回転し、その状態から今度は小軸15を中心に180゜回転したものである。レバー16は挟持片12に沿って折り畳まれた状態になる。
【0025】
図3は、レバー付きピンセット10の動作状態を示す図である。図1の状態のレバー16の先端を矢印a方向に押し下げると、レバー16の支点16aが挟持片12を押し下げるように作用する。そして、レバー16の先端が支軸13を持ち上げるように作用し、挟持片11を持ち上げるように作用する。
【0026】
このとき、レバー16の先端に加わる力をfとし、支点16aから小軸15中心までの距離をL1とし、支点16aからレバー16の先端までの距離をL2とすると、小軸15に加わる力Fは、F=f×L2/L1となる。L2はL1の数倍あるので、小軸15には通常のピンセットの挟む力の数倍の力が加わることになり、当然ながら、切刃11bと12bの間には従来のピンセットで挟む力の数倍の力が加わり、電線などを切断することができる。
【0027】
切刃11b、12bが無い場合は、両者間にある対象物を把持するだけであるが、レバー16で力を加えるので把持力が強力になり、たとえば、網の目のように多くの配線がされている中から、目的の一本の電線を取り出すような場合でも、対象となる電線を掴むだけでなく、他の多くの電線が絡んでいる場所から、強い抵抗力に打ち勝って掴んでいる電線を引き出すことが可能となる。
【0028】
また、本発明のレバー付きピンセット10は、把持部11a、12aの構成に特徴がある。把持部11a、12aの形状は、目的に合わせて任意の形状にすることができる。しかし、本発明のレバー付きピンセット10では把持部11a、12aに、図1(b)に示すように、支軸13が挿通される位置における挟持片11、12の幅Wよりも狭い幅wとなる部分を有するようにしている。幅の狭い部分は、把持部11a、12aの先端でもよいし、中間でもよいが、先端は幅Wよりも狭い方が望ましい。幅の狭い部分を設けることによって、把持部11a、12aで小さなものを正確に把持したり、切断したりすることが容易になる。
【0029】
また、本発明のレバー付きピンセット10は、把持部11a、12aの長さにも特徴がある。挟持片11、12の全体の長さをS1とし、把持部11a、12aの長さをS2としたとき、S2/S1は、1/5以上で、1/2以下となっている。S2の長さが1/5より短いと、切断力や把持力を大きくすることができるが、狭いところで細かなものを把持する作業はやりにくくなるからである。S2の長さが1/2を越えると、狭いところで把持する作業は容易になるが、把持力や切断能力が低下するからである。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明のレバー付きピンセットは、上述した電線の引き出しや切断の他にも多様な用途、たとえば、植木の剪定などにも利用することができる。
【符号の説明】
【0031】
10 レバー付きピンセット
11 挟持片
11a 把持部
11b 切刃
12 挟持片
12a 把持部
13 支軸
13a 頭部
13b 切欠
14a 孔
14b 孔
15 小軸
16 レバー
16a 支点
16b 切欠

【特許請求の範囲】
【請求項1】
相対向するように配置され基端側が結合し、先端側が離反した一対の挟持片と、該一対の挟持片の一方に回動自在に立設され相手側挟持片に向かって延びる支軸と、他方の挟持片に穿設され、前記支軸が貫通する孔と、該孔を貫通した支軸の先端近傍に、支軸と交差して設けられた小軸と、該小軸に一端が回動自在に取り付けられたレバーと、該レバーに設けられた支点とを有し、前記挟持片の前記支軸より先端側部分を把持部とし、該把持部に、前記支軸を取り付けた位置における挟持片の幅より狭くなる部分を設けたことを特徴とするレバー付きピンセット。
【請求項2】
相対向するように配置され一端側が結合した一対の挟持片と、該一対の挟持片の一方に回動自在に立設され相手側挟持片に向かって延びる支軸と、他方の挟持片に穿設され、前記支軸が貫通する孔と、該孔を貫通した支軸の先端近傍に、支軸と交差して設けられた小軸と、該小軸に一端が回動自在に取り付けられたレバーと、該レバーに設けられた支点とを有し、前記挟持片の前記支軸より先端側部分を把持部とし、該把持部の長さが、把持部の長さを含む挟持片の全体の長さの1/5以上で1/2以下であることを特徴とするレバー付きピンセット。
【請求項3】
前記把持部に前記支軸を取り付けた位置における挟持片の幅より狭くなる部分を設けたことを特徴とする請求項2に記載のレバー付きピンセット。
【請求項4】
前記把持部の先端が、前記支軸を取り付けた位置における挟持片の幅より狭いことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のレバー付きピンセット。
【請求項5】
前記把持部の先端に切刃を設けたことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のレバー付きピンセット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−173177(P2011−173177A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−36840(P2010−36840)
【出願日】平成22年2月23日(2010.2.23)
【特許番号】特許第4733771号(P4733771)
【特許公報発行日】平成23年7月27日(2011.7.27)
【出願人】(390025955)株式会社小林工具製作所 (10)
【Fターム(参考)】