説明

レベル測定装置用測長器接続具

【課題】測長器をレベル測定装置に簡便に一体化し、しかも高い精度で測定ポイントまでの距離を正確に測定することのできるレベル測定装置用測長器接続具を提供する。
【解決手段】レベル測定装置1にレベル測定装置用測長器接続具3を用いて測長器2を組み付けする。レベル測定装置用測長器接続具3に、レベル測定装置1の測定部ボディ1bを包持する測定部ボディ包持部3cと、測長器2を収容するための測長器収容部3eとを設ける。測長器収容部3eに、測長器2の測長基準面2aをレベル測定装置1の旋回中心軸O1に合致させる測定基準受け部14を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高低差の測定や水準測量に用いられる自動レベルやチルチングレベル等のレベル測定装置に、既成品の測長器を組み付けるためのレベル測定装置用測長器接続具に関する。
【背景技術】
【0002】
高低差の測定や角度,水準測量に用いるレベル測定装置として、自動レベルやチルチィングレベル,デジタルレベル,電子レベル,レーザレベル等がある(例えば、特許文献1参照)。また、建設,建築現場や住宅地,道路等の測地では、レベル測定装置から測定ポイントまでの距離を求めることが多く、別途にレーザ距離計や巻尺といった測長器が用いられている(例えば、特許文献2参照)。
【0003】
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】 特開平5−272970号公報
【特許文献2】 特表2008−523371号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
レベル測定装置から測定ポイントまでの距離を精度よく測定するためには、測長器の測長基準面をレベル測定装置の旋回中心軸上に設定された測定基準位置と正確に合致させる必要があるが、上記特許文献1のレベル測定装置と特許文献2の測長器との併用では、両者を目測で近づける程度が限度であり、また測長器の測距軸がレベル測定装置の視準線から傾いてしまう等、精度の高い測長を行うことは困難であった。
【0006】
本発明は、かかる実情を背景にしてなされたもので、その目的とするところは、測長器をレベル測定装置に簡便に一体化することができ、しかも高い精度で測定ポイントまでの距離を正確に測定することのできるレベル測定装置用測長器接続具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の目的を達成するため、本発明のレベル測定装置用測長器接続具は、レベル測定装置に、測長器を組み付けるためのレベル測定装置用測長器接続具であって、前記接続具は、前記レベル測定装置の測定部ボディを包持して該レベル測定装置に固定される測定部ボディ包持部と、前記測長器を収容する測長器収容部とを備え、該測長器収容部は、前記測長器の測長基準部を前記レベル測定装置の旋回中心軸に合致させる測定基準受け部を備えていることを特徴としている。
【0008】
本発明の他の特徴として、前記測長器の測距軸を前記レベル測定装置の視準線と平行に位置させるための上下方向調整機構と左右方向調整機構とを備えている。
また、本発明のさらなる特徴として、前記測定部ボディ包持部が前記視準線方向に長さの異なる複数の測定部ボディを選択的に包持するための測定部ボディ包持部位置調整機構を備えている。
【0009】
本発明のレベル測定装置用測長器接続具が対象とするレベル測定装置は、装置本体を鉛直方向の旋回中心軸回りに回転させてレベル測定を行う自動レベルやチルチングレベル,電子レベル,レーザレベル等である。また測長器は、レベル測定装置の形状や大きさにに合わせて専用品を作製してもよいが、市販品であってもかまわない。
測長器を用いて測定ポイントまでの測長を計測する場合に、レベル測定装置用測長器接続具は、測定部ボディ包持部をレベル測定装置の測定部ボディに包持させてレベル測定装置に固定され、このレベル測定装置用測長器接続具の測長器収容部に測長器を収容する。
【0010】
測長器は、測長基準部である測長基準部を、レベル測定装置用測長器接続具の測定基準受け部によって、レベル測定装置の旋回中心軸に合致させてレベル測定装置用測長器接続具の測長器収容部に収容され、そのまま測長器の電源をON(測距ON)することにより、レベル測定装置の測定基準位置から測定ポイントまでの距離が測定される。
【0011】
本発明のレベル測定装置用測長器接続具には、測長器の測距軸方向を調整する上下方向調整機構と左右方向調整機構とを備えることが好ましく、この調整機構を用いて測距軸をレベル測定装置の視準線と平行に位置させることにより、レベル測定装置の測定基準位置から測定ポイントまでの距離がより精度よく測られる。
【0012】
さらに、本発明のレベル測定装置用測長器接続具は、視準線方向に長さの異なる複数の測定部ボディに測定部ボディ包持部を選択的に包持させるための測定部ボディ包持部位置調整機構を設けることができる。この測定部ボディ包持部位置調整機構は、一種類のレベル測定装置用測長器接続具を測定部ボディが視準線方向に長さの異なる複数のレベル測定装置にも使用できるようにしたもので、具体的には、測長器収容部の測定基準受け部と測長器の測長基準部との位置合わせを保持しながら、測定部ボディ包持部をレベル測定装置の測定部ボディ長に合わせて視準線方向へ移動できる構造とするものである。測定部ボディ包持部は多段階で固定してもよく、あるいは任意の位置に固定できるようにしてもよい。
【0013】
上述の測定部ボディ包持部位置調整機構により、本発明のレベル測定装置用測長器接続具を、測定部ボディ長さの異なる他のレベル測定装置にも使用することが可能で、レベル測定装置用測長器接続具の測長器収容部に、測長器の測長基準部をレベル測定装置の旋回中心軸に合致させながら、測長器を収容したレベル測定装置用測長器接続具がレベル測定装置に取付けられる。
【発明の効果】
【0014】
本発明のレベル測定装置用測長器接続具によれば、測長器の測長基準部を測定基準受け部によってレベル測定装置の旋回中心軸に合致させながら測長器を簡便に装着しつつ、レベル測定装置の測定基準位置から測定ポイントまでの距離を高い精度で測定することができるようになる。さらに、測長器に市販の既製品をそのまま用いることができるので、運用コストが安く済むという利点がある。
【0015】
また、本発明のレベル測定装置用測長器接続具に、測長器の測距軸をレベル測定装置の視準線と平行に位置させるための上下方向調整機構と左右方向調整機構とを備えることにより、測長精度を向上することができる。
さらに、測定部ボディ包持部位置調整機構を備えることにより、測定部ボディ長さの異なる他のレベル測定装置にも測長器を組み合わせることができるので、高い汎用性と経済性が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】 本発明の一形態例を示すレベル測定装置用測長器接続具を用いて測長器をレベル測定装置に固定した状態の正面図である。
【図2】 本発明の一形態例を示すレベル測定装置用測長器接続具を用いて測長器をレベル測定装置に固定した状態の平面図である。
【図3】 本発明の一形態例を示すレベル測定装置用測長器接続具を用いて測長器をレベル測定装置に固定した状態の左側面図である。
【図4】 本発明の一形態例を示すレベル測定装置用測長器接続具を用いて測長器をレベル測定装置に固定した状態の右側面図である。
【図5】 本発明の一形態例を示す上下方向調整機構及び左右方向調整機構の拡大正面図である。
【図6】 本発明の一形態例を示す上下方向調整機構及び左右方向調整機構の拡大平面図である。
【図7】 本発明の一形態例を示すレベル測定装置用測長器接続具を用いて測長器を他のレベル測定装置に固定した状態の正面図である。
【図8】 本発明の一形態例を示すレベル測定装置用測長器接続具を用いて測長器を他のレベル測定装置に固定した状態の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の各形態例を図面に基づいて説明する。
図1〜図6に示すように、レベル測定装置1には、測長器2がレベル測定装置用測長器接続具3(以下、測長器接続具3と略記する)を用いて着脱自在に取付けられる。
【0018】
レベル測定装置1は、上部旋回体1aの上部に円筒状の測定部ボディ1bを横置きし、該測定部ボディ1bの内部に望遠鏡(図示しない)を収容したレーザレベルで、レベル測定時には、上部旋回体1aと測定部ボディ1bとが旋回中心軸O1回りに一体に旋回できるようになっている。
測長器2は、後端面を本発明の測長基準部である測長基準面2aとなしており、レベル測定装置1で計測された測定ポイントまでの距離を求める際には、略横長方体のボディ2b全体が後述する測長器接続具3の測長器収容部3eに着脱自在に収容される。
【0019】
前記測長器接続具3は、横方向に配設される第1スライド板3aと、該第1スライド板3aの下面先端側に配設される第2スライド板3bと、該第2スライド板3bの先端に垂設される環状の測定部ボディ包持部3cと、前記第1スライド板3aの後端から上方に突設される支持板3dと、該支持板3dから前記第2スライド板3bの上方へ所定の間隔を置いて突設される横長の測長器収容部3eと、該測長器収容部3eの後部壁3f及び前記支持板3dとの間に設けられる上下方向調整機構4並びに左右方向調整機構5と、スライド板3dを通して第1スライド板3aと測長器収容部3eとに設けられる測定部ボディ包持部位置調整機構6とを備えている。
【0020】
測定部ボディ包持部3cは、複数の取付けネジ7を用いて第2スライド板3bの先端下面に垂設され、外周面下側に固定用ダイヤル8が設けられるとともに、先端側内周面にレベル測定装置1へ装着する際の位置決めとなる環状リブ3jが設けられている。
【0021】
上下方向調整機構4と左右方向調整機構5のそれぞれは、測長器収容部3eの後部壁3fに螺刻されるめねじ孔10と、該めねじ孔10に支持板3dを通してねじ込まれる調整ボルト11とを備えており、さらに測長器接続具3の支持板3dと測長器収容部3eの後部壁3fとの間に介装される球面座ナット12と、該球面座ナット12に支持板3dを通してねじ込まれる基軸ボルト13とを、両調整機構4,5の共通の部材として用いている。
球面座ナット12と基軸ボルト13とは、測長器収容部3eに収容される測長器2の測距軸O2上に位置するよう配置されており、それぞれの調整機構4,5の調整ボルト11をねじ込みまたはねじ戻し操作することにより、測長器収容部3eの後部壁3fを球面座ナット12に滑らせながら、基軸ボルト13を支点に測長器収容部3eを上下方向もしくは左右方向へ揺動して、測長器収容部3eに収容した測長器2の測距軸O2をレベル測定装置1の測定部ボディ1bの中心軸であるレベル視準線O3と平行となるように調整される。
【0022】
測長器収容部3eは、後部壁3fの内側面を旋回中心軸O1上に位置させていて、この内側面を本形態例の測定基準受け面14となしている。測長器収容部3eの前部壁3gは、内部に横長円形の測長窓15が開口して設けられ、その一端を支軸16にて測長器収容部3eに回動可能に軸支し、他端側にロックボルト17を取付けた開閉カバーとなっている。
測長器2は、前部壁3gを開いた開口より測長器収容部3eに収容され、先端を前部壁3gにて抜け止めされるとともに、上方への抜けを前部壁3gと一体のガイドリブガイドリブ3hと後部壁3f近傍に配置したガイドリブ3iとで防止される。
【0023】
測長器収容部3eに収容された測長器2は、測長基準部である後端の測長基準面2aが測長器収容部3eの測定基準受け面14と当接し、レベル測定の基準部である上部旋回体1a及び測定部ボディ1bの旋回中心軸O1と位置合わせされる。測長器2はこのようにして、測長基準面2aが旋回中心軸O1と正確に位置合わせされるので、レベル測定装置1の測定基準位置からレベル測定ポイントまでの距離を高い精度で測定することができる。
【0024】
図1,2,7,8に示すように、前記測定部ボディ包持部位置調整機構6は、前記第1スライド板3aに長手方向へ開設されたガイド孔20a,20b,20bと、前記第2スライド板3bの上面に突出してガイド孔20aにスライド可能に収容される一対のガイドネジ21,21と、測長器収容部3eの内部からガイド孔20b,20bを通して第2スライド板3bにねじ込まれる取付けネジ22,22とを備えている。
ガイドネジ21,21とガイド孔20aとは、第1,第2スライド板3a,3bの相対的な横移動を許容し、また取付けネジ22,22とガイド孔20b,20bも、第1,第2スライド板3a,3bの相対的な横移動を許容しつつ、取付けネジ22,22の増し締めによって両スライド板3a,3bを所望の位置に固定することによって、上述の測長器2を測定部ボディ1bの長さが異なる他のレベル測定装置1にも使用できるようにしたもので、測長器2を測定部ボディ1bの長さが異なる他のレベル測定装置1に使用する際には、取付けネジ22,22を一旦緩めて、ガイド孔20にガイドネジ21,21をスライドさせることにより、第1スライド板3aと第2スライド板3bとの相対位置を長くまたは短く変更し、両第1,第2スライド板3a,3bが所望の位置関係になった状態で取付けネジ22,22をねじ込むことにより、第1,第2スライド板3a,3bを固定する。
これにより、測長器2の測長基準面2aと測長器収容部3eの測定基準受け面14とを旋回中心軸O1上に保持しつつ、測長基準面2a及び測定基準受け面14から測定部ボディ包持部3cまでの長さが変更される。
【0025】
図7,図8は、測定部ボディ包持部位置調整機構6を用いて、上記図1〜図6に示した測長器2と測長器接続具3とを、上述のレベル測定装置1とは異なる測定部ボディ長のレベル測定装置30に適用した事例を示している。
図7,図8に示すように、レベル測定装置30の測定部ボディ1cは、上記レベル測定装置1の測定部ボディ長よりも長く設定されている。このため、測長器接続具3をレベル測定装置30に取付けるには、取付けネジ22,22を一旦緩めて、ガイドネジ21,21及び取付けネジ22,22とガイド孔20a,20b,20bとの案内により、第1スライド板3aと第2スライド板3bと互いに離反方向へスライドさせ、測定基準受け面14から測長器収容部3eの前部壁3gの内側面までの長さL1が、測定部ボディ1bの旋回中心軸O1から測定部ボディ1bの前端面までの長さL2と同一長となった時点で、取付けネジ22,22を再びねじ込むことにより、第1,第2スライド板3a,3bが固定される。
【0026】
そして、上述のように測長器2を組み付けした測長器接続具3をレベル測定装置1に固定した際には、測長器2の測長基準面2aと測長器収容部3eの測定基準受け面14とが、レベル測定の基準部である上部旋回体1a及び測定部ボディ1bの旋回中心軸O1に位置合わせされる。
このように、本形態例の測長器接続具3は、測長器2を測定部ボディ長が異なる他のレベル測定装置30に組み合わせした場合にも、測長器2の測長基準面2aが旋回中心軸O1と正確に位置合わせされるので、レベル測定装置30の測定基準位置からレベル測定ポイントまでの距離を高い精度で簡便に測定することができる。
【0027】
本発明の測長器接続具によれば、測定部ボディ長の異なる複数種類のレベル測定装置に適用することが可能であり、高い汎用性と経済性とが得られる。
【符号の説明】
【0028】
1,30…レベル測定装置
1a…上部旋回体
1b,1c…測定部ボディ
2…測長器
2a…測長基準面
2b…ボディ
3…測長器接続具(レベル測定装置用測長器接続具)
3a…第1スライド板
3b…第2スライド板
3c…測定部ボディ包持部
3e…測長器収容部
3f…測長器収容部3eの後部壁
3g…前部壁
4…上下方向調整機構
5…左右方向調整機構
6…測定部ボディ包持部位置調整機構
10…めねじ孔
11…調整ボルト
12…球面座ナット
13…基軸ボルト
14…測定基準受け面
20a,20b…ガイド孔
21…ガイドネジ
22…取付けネジ
O1…旋回中心軸
O2…測距軸
O3…レベル視準線
L1…測定基準受け面14から測長器収容部3eの前部壁3gの内側面までの長さ
L2…測定部ボディ1bの旋回中心軸O1から測定部ボディ1bの前端面までの長さL2

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レベル測定装置に、測長器を組み付けるためのレベル測定装置用測長器接続具であって、
前記接続具は、前記レベル測定装置の測定部ボディを包持して該レベル測定装置に固定される測定部ボディ包持部と、
前記測長器を収容する測長器収容部とを備え、
該測長器収容部は、前記測長器の測長基準部を前記レベル測定装置の旋回中心軸に合致させる測定基準受け部を備えている
ことを特徴とするレベル測定装置用測長器接続具。
【請求項2】
前記測長器の測距軸を前記レベル測定装置の視準線と平行に位置させるための上下方向調整機構と左右方向調整機構とを備えている
ことを特徴とする請求項1に記載のレベル測定装置用測長器接続具。
【請求項3】
前記測定部ボディ包持部が前記視準線方向に長さの異なる複数の測定部ボディを選択的に包持するための測定部ボディ包持部位置調整機構を備えている
ことを特徴とする請求項1または2に記載のレベル測定装置用測長器接続具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−108966(P2013−108966A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−268351(P2011−268351)
【出願日】平成23年11月18日(2011.11.18)
【出願人】(511298691)TIアサヒ株式会社 (1)