説明

レンジフード用フィルタ

【課題】安価な使い捨てタイプのフィルタであって、燃焼エネルギーが小さく、廃棄時に燃え易く燃焼炉を傷める恐れがなく、射出成形などの成形法により一体的に成形可能な、換気扇、レンジフードの吸気口に取り付けて使用可能なレンジフード用フィルタの提供。
【解決手段】吸油性および非溶融性を有する有機材料微粉末および/または無機材料微粉末が均一に分散された熱可塑性樹脂を含む成形用組成物から形成された織布、不織布あるいは射出成形などの成形法により一体的に形成された多孔板などの形態のレンジフード用フィルタ6により課題を解決できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はレンジフード用フィルタに関するものであり、更に詳述すると、射出成形などの成形法により一体的に成形される、換気扇、レンジフードの吸気口に取り付けて用いることができるレンジフード用フィルタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、レンジフード用フィルタとして、ガラス繊維製フィルタに難燃剤を付着したフィルタ(特許文献1参照)、合成繊維を用いたフィルタ(特許文献2〜5参照)、メタルラスを用いたフィルタ(特許文献6参照)、2枚の多孔板をそれぞれの開孔が重なり合わないようにして用いたフィルタ(特許文献7参照)、金属薄板に複数のスリットからなる通気口を規則的に設けたフィルタ(特許文献8参照)などが提案されている。
【特許文献1】特開平5−168830号公報
【特許文献2】特開平6−170140号公報
【特許文献3】特開平9−72588号公報
【特許文献4】特開2001−246212号公報
【特許文献5】特開2003−236320号公報
【特許文献6】特開平7−171324公報
【特許文献7】特開平6−337142号公報
【特許文献8】特開平9−323012号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、従来のフィルタは周囲からほこり、水蒸気、油煙などを吸い込み、吸い込んだ水蒸気などは外部に排気し、ほこりや油分を除去する機能を有するが、特に厨房に取り付けられた換気扇やレンジフードは油分を多く含んだ油煙が発生するため、汚れが激しく、目づまりしたりするので掃除に手間がかかり、取り替え頻度が高く、廃棄時に燃え難いものもあり、また燃焼エネルギーが大きく燃焼炉を傷める恐れがあるなどという問題があった。
【0004】
本発明の目的は、ほこりやごみなどを除き、かつ、油分を多く含んだ油煙が発生しても、油煙中の油分をその表面に付着させて除去できるともに、表面に付着した油分をその内部に浸透させることができ、油分を内部に浸透させた後の表面に新たな油分を再び付着させて除去できる機能を有する安価な使い捨てタイプのフィルタであって、燃焼エネルギーが小さく、廃棄時に燃え易く燃焼炉を傷める恐れがなく、射出成形などの成形法により一体的に成形可能な、換気扇、レンジフードの吸気口に取り付けて用いることができるレンジフード用フィルタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解消するための本発明の請求項1に記載のレンジフード用フィルタは、吸油性および非溶融性を有する有機材料微粉末および/または無機材料微粉末が均一に分散された熱可塑性樹脂を含む成形用組成物から形成されたことを特徴とする。
【0006】
本発明の請求項2記載のレンジフード用フィルタは、請求項1記載のレンジフード用フィルタにおいて、前記有機材料微粉末が紙を微粉砕して得られる50〜200μmの粒径を有する紙微粉末であり、前記無機材料微粉末の粒径が0.01〜100μmであり、前記紙微粉末および/または無機材料微粉末の含有量が成形用組成物全体中に50〜70質量%であることを特徴とする。
【0007】
本発明の請求項3記載のレンジフード用フィルタは、請求項1あるいは請求項2記載のレンジフード用フィルタにおいて、前記熱可塑性樹脂がポリオレフィン系熱可塑性樹脂であり、その含有量が成形用組成物全体中に50〜30質量%であることを特徴とする。
【0008】
本発明の請求項4記載のレンジフード用フィルタは、請求項3記載のレンジフード用フィルタにおいて、前記ポリオレフィン系樹脂としてポリプロピレン系樹脂を使用することを特徴とする。
【0009】
本発明の請求項5記載のレンジフード用フィルタは、請求項1から請求項4のいずれかに記載のレンジフード用フィルタにおいて、所定のピッチで複数の通気口を形成した通気ブロックが縦横方向に複数形成してあり、前記各通気ブロックの周囲に設けた平面連結部は、前記通気ブロックが隣接する部分を、前記通気ブロックが隣接しない部分の幅と同じかあるいは小さくしてあるとともに、全体が面一としてあるレンジフード用フィルタであって、前記成形用組成物を用いて一体的に形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の請求項1に記載のレンジフード用フィルタは、吸油性および非溶融性を有する有機材料微粉末および/または無機材料微粉末が均一に分散された熱可塑性樹脂を含む成形用組成物から形成されたことを特徴とするものであり、
油分を多く含んだ油煙が発生しても、油煙中の油分をその表面に付着させて除去できるともに、吸油性および非溶融性を有する有機材料微粉末および/または無機材料微粉末の作用により表面に付着した油分をその内部に浸透させることができ、油分を内部に浸透させた後の表面には新たな油分を再び付着させて除去できる機能を有し、油分が付着した表面にはほこりやごみなどが付着し易くなり、油分やほこりやごみなどの除去効率が向上し、そして安価で使い捨てできる上、燃焼エネルギーが小さく、廃棄時に燃え易く、有毒ガスや有害な残渣を発生せず、燃焼炉を傷める恐れがなく、人にも地球環境にも優しく、そして射出成形などの成形法により一体的に成形可能であり、換気扇やレンジフードの吸気口に取り付けて用いることができるという顕著な効果を奏する。
【0011】
本発明の請求項2記載のレンジフード用フィルタは、請求項1記載のレンジフード用フィルタにおいて、前記有機材料微粉末が紙を微粉砕して得られる50〜200μmの粒径を有する紙微粉末であり、前記無機材料微粉末の粒径が0.01〜100μmであり、前記紙微粉末および/または無機材料微粉末の含有量が成形用組成物全体中に50〜70質量%であることを特徴とするものであり、
前記紙微粉末および/または無機材料微粉末を熱可塑性樹脂中に容易により均一に分散でき、熱可塑性樹脂の流動性が損なわれず成形性に優れるというさらなる顕著な効果を奏する。
【0012】
本発明の請求項3記載のレンジフード用フィルタは、請求項1あるいは請求項2記載のレンジフード用フィルタにおいて、前記熱可塑性樹脂がポリオレフィン系熱可塑性樹脂であり、その含有量が成形用組成物全体中に50〜30質量%であることを特徴とするものであり、
ポリオレフィン系樹脂は安価で入手し易く、加工性や流動性がよく精度よくレンジフード用フィルタを容易に一体的に作成することもできる上、油煙中の油分が付着し易く、密度が低く、耐酸性、耐アルカリ性、耐油性などが高く耐化学薬品性に優れ、機械的強度および耐久性にも優れ、軽量で適宜の剛性を有するため寸法精度が保持され、燃焼しても炭酸ガスと水しか発生せず、有害な残渣を発生しないなどのさらなる顕著な効果を奏する。
【0013】
本発明の請求項4記載のレンジフード用フィルタは、請求項3記載のレンジフード用フィルタにおいて、前記ポリオレフィン系樹脂としてポリプロピレン系樹脂を使用することを特徴とするものであり、
ポリプロピレン系樹脂は安価で入手し易く、加工性や流動性がよく、精度よくレンジフード用フィルタを容易に一体的に作成することもできる上、油煙中の油分が付着し易く、密度が低く、耐酸性、耐アルカリ性、耐油性などが高く耐化学薬品性に優れ、機械的強度および耐久性にも優れ、軽量で適宜の剛性を有するため寸法精度が保持され、廃棄時に有毒ガスや有害な残渣を発生せず、ポリエチレン系樹脂より機械的強度および耐久性にも優れ、人と地球環境に優しいというさらなる顕著な効果を奏する。
【0014】
本発明の請求項5記載のレンジフード用フィルタは、請求項1から請求項4のいずれかに記載のレンジフード用フィルタにおいて、所定のピッチで複数の通気口を形成した通気ブロックが縦横方向に複数形成してあり、前記各通気ブロックの周囲に設けた平面連結部は、前記通気ブロックが隣接する部分を、前記通気ブロックが隣接しない部分の幅と同じかあるいは小さくしてあるとともに、全体が面一としてあるレンジフード用フィルタであって、前記成形用組成物を用いて一体的に形成されていることを特徴とするものであり、
油分を多く含んだ油煙が発生しても、油煙中の油分を油煙が衝突した表面に付着させて除去できるともに、各通気ブロックの複数の通気口を油煙が通過する際に速度が低下して通気口の表面および通気口の近傍の表面に油煙中の油分を付着させて除去でき、そしてこれらの表面に付着した油分は吸油性および非溶融性を有する有機材料微粉末および/または無機材料微粉末の作用により内部に浸透させることができ、油分を内部に浸透させた後の表面には新たな油分を再び付着させて除去でき、油分が付着した表面にはほこりやごみなどが付着し易くなり、油分やほこりやごみなどの除去効率が向上するという、さらなる顕著な効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
次に本発明を図を用いて実施の形態に基づいて詳細に説明する。
[第1の実施態様]
図1は本発明のレンジフード用フィルタの1例を説明する説明図である。
図1に示したように厨房内の調理台1の上部に設けられるレンジフード2は、油煙などの汚れを含む空気を吸い込むための通風口3を下部に備えたレンジフード本体4と、レンジフード本体4の下部の受け部5に挿入して装着された本発明のレンジフード用フィルタ6と、レンジフード本体4内を排気するためのファン7とからなっている。
【0016】
レンジフード2の稼働時は、ファン7を回転させて厨房内の水蒸気、油煙、ごみなどを含む空気をレンジフード2の通風口3から吸い込んで、フィルタ6を通過させ、油煙、ごみなどの汚れをフィルタ6に付着、吸着、濾過してから外気中に排出させるようになっている。
【0017】
本発明のレンジフード用フィルタ6は、吸油性および非溶融性を有する有機材料微粉末および/または無機材料微粉末が均一に分散された熱可塑性樹脂を含む成形用組成物から形成されている通気性に優れ、レンジフードに装着可能な機械的特性を有し、油煙、ごみなどの汚れを付着、吸着、濾過して除去できるフィルタあればよく、その形態は後述するように前記成形用組成物を用いて押出成形、延伸成形などの公知の成形法により形成された織布、不織布あるいは射出成形などの成形法により一体的に形成された多孔板などいずれでもよい。
【0018】
本発明のフィルタ6は、吸油性および非溶融性を有する有機材料微粉末および/または無機材料微粉末の作用により表面に付着した油分をその内部に浸透させることができ、油分を内部に浸透させた後の表面には新たな油分を再び付着させて除去できる。油分が付着した表面にはほこりやごみなどが付着し易くなり、油分やほこりやごみなどの除去効率が向上する。
【0019】
本発明のレンジフード用フィルタ6は安価であるので長時間使用した後、受け部5から取り外し、新たなフィルタ6と交換すれば続けて、厨房内の水蒸気、油煙、ごみなどを含む空気をレンジフード2の通風口3から吸い込んで、フィルタ6を通過させ、油煙中の油分やごみなどの汚れをその表面に付着、吸着、濾過して除去できる。
取り外したフィルタ6は、廃棄処理してもよいが、燃焼エネルギーの小さい紙微粉末などの有機材料および/または無機材料微粉末を多量に含有するため燃焼エネルギーが小さく、燃え易く、有毒ガスや有害な残渣を発生せず、燃焼炉を傷める恐れがないので焼却処理できる。
【0020】
本発明で用いる熱可塑性樹脂は、具体的には、例えば、低密度ポリエチレン、直線状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ホモポリプロピレン、ブロック共重合ポリプロピレン、ランダム共重合ポリプロピレン、オレフィン系エラストマー、エチレンビニルアセテート共重合体、エチレンエチルアクリレート共重合体、ポリスチレン、スチレンアクリロニトリル共重合体、ABS樹脂、ポリアミド樹脂などの熱可塑性樹脂を挙げることができ、これらは1種でも使用できるが、2種以上組み合わせて使用することができる。
【0021】
これらの中でも、エチレン、プロピレン、ブタジエン、1−ブテン、イソブテン、イソプレン、酢酸ビニル、アクリル酸、アクリル酸エチルなどのオレフィンあるいはジオレフィンあるいはビニル単量体などの単独重合体または共重合体からなるポリオレフィン系熱可塑樹脂は安価で入手し易く、加工性や流動性がよく精度よくレンジフード用フィルタを容易に一体的に作成することもできる上、油煙中の油分が付着し易く、密度が低く、耐酸性、耐アルカリ性、耐油性などが高く耐化学薬品性に優れ、機械的強度および耐久性にも優れ、軽量で適宜の剛性を有するため寸法精度が保持され、燃焼しても炭酸ガスと水しか発生せず、有害な残渣を発生しないので本発明において好ましく使用できる。
【0022】
ポリプロピレン系樹脂は、プロピレン単独重合体でも、プロピレンとエチレン、1−ブテンなどの他のオレフィンとのランダム共重合体やブロック共重合体でもよいが、機械的強度に優れる結晶性の高い立体規則性ポリプロピレン系樹脂が好ましく使用できる。
【0023】
本発明で用いるポリオレフィン系熱可塑性樹脂などの熱可塑性樹脂は、その含有量が成形用組成物全体中に50〜30質量%であることが好ましい。
30質量%未満では、流動性のない有機材料微粉末および/または無機材料微粉末の含有量が多く成形用組成物の流動性が著しく低下する恐れがあり、50質量%を超えると焼エネルギーの小さい紙微粉末などの有機材料および/または無機材料微粉末が少なく、燃焼エネルギーを適切に低減できず、燃焼炉を傷める恐れがある。
【0024】
本発明で用いる有機材料微粉末は優れた吸油性を有し、非溶融性の有機材料の微粉末であればよく、具体的には、例えば、木微粉末、紙微粉末、澱粉微粉末、広葉樹パルプと針葉樹パルプの少なくとも1つを原料とし粉砕して微粉末としたセルロース主体のものと、古紙を粉砕して微粉末としたもの、親油性のある低密度ポリエチレン、直線状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ホモポリプロピレン、ブロック共重合ポリプロピレン、ランダム共重合ポリプロピレン、オレフィン系エラストマー、エチレンビニルアセテート共重合体、エチレンエチルアクリレート共重合体、ポリスチレンなどのポリオレフィン系樹脂を架橋処理した親油性ポリマーペレットあるいはそのようなポリオレフィン系樹脂繊維を架橋処理した親油性繊維を粉砕して微粉末としたものなどを挙げることができる。これらは1種でも使用できるが、2種以上組み合わせて使用することができる。
紙微粉末や古紙微粉末には塩素や蛍光増白剤が含まれていないものが好ましく使用できる。紙微粉末が塩素や蛍光増白剤が含まれていると、製品のレンジフード用フィルタにも塩素や蛍光増白剤が含まれてしまい、人体や環境に悪影響を及ぼす恐れがあるからである。
本発明で用いる紙微粉末や古紙微粉末の原料としては、具体的には、例えば、ティシュペーパ、ちり紙、トイレットペーパ、生理用紙などの衛生用紙、紙コップ、紙皿、牛乳紙容器、液体食料紙容器、炭酸飲料紙容器などの食品容器原紙、通信ケーブル用絶縁紙、電力ケーブル用絶縁紙、コイル絶縁紙、電解コンデンサ紙、コンデンサ薄紙、高圧コンデンサ紙などの電気絶縁紙などを挙げることができる。
【0025】
本発明で用いる無機材料微粉末は優れた吸油性を有し、非溶融性の無機材料微粉末であればよく、粉粒体、平板状、針状、球状または中空および繊維状の形状を有し、具体的には、例えば、活性炭素、カーボンブラック、タルク、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、珪酸カルシウム、クレー、珪藻土、珪砂、シリカ、酸化チタン、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、カオリン、黒鉛、シラスバルーン、軽石、炭素繊維などを挙げることができ、これらは1種でも使用できるが、2種以上組み合わせて使用することができる。
【0026】
なお本発明でいう吸油性とは常温、常圧下で油分をよく吸収、吸着できる性能をいい、常温で24時間浸漬すると全質量に対して約2〜3質量%あるいはそれ以上の油分を吸収、吸着できる性能を持つものが好ましく使用できる。一方、非溶融性とは使用する熱可塑性樹脂の融点以上分解温度未満で、例え半溶融状態になったとしても、溶融しない性能をいう。
【0027】
広葉樹パルプと針葉樹パルプを原料とした微粉末はリグニン成分が1質量%以下のものが好ましく使用できる。古紙を粉砕して微粉末としたものはセルロース成分が90質量%以上含まれるものが好ましく使用できる。
【0028】
古紙や紙を微粉砕して得られる紙微粉末などの有機材料微粉末の粒径は、50〜200μmが好ましく、さらに好ましくは70〜150μmが望ましい。
50μm未満では粉砕加工に複雑な工程を要し、そのためコストアップになる恐れがあり、200μmを超えると熱可塑性樹脂への分散不良となり、均一に分散できない恐れがある上、均一に分散できないと成形用組成物の流動性が著しく低下する恐れがある。
【0029】
本発明で用いる無機材料微粉末の粒径は、0.01〜100μmが好ましく、さらに好ましくは0.05〜50μmが望ましい。
0.01μm未満では粉砕加工に手間がかかり、そのためコストアップになる恐れがあり、100μmを超えると熱可塑性樹脂への分散不良となり、吸油性が不均一になる恐れがある。
【0030】
古紙や紙を微粉砕して得られる紙微粉末などの有機材料微粉末および/または無機材料微粉末の含有量は、成形用組成物全体中に50〜70質量%であることが好ましい。
50質量%未満では、燃焼エネルギーの小さい紙微粉末などの有機材料および/または無機材料微粉末が少なく、燃焼エネルギーを適切に低減できず、燃焼炉を傷める恐れがある。流動性のない有機材料微粉末および/または無機材料微粉末の含有量が200質量%を超えると成形用組成物の流動性が著しく低下する恐れがある。
【0031】
本発明で用いる成形用組成物は、必要に応じて、流動性および/または強度を改善するための改質材をさらに含むことが好ましい。改質材をさらに含むと流動性が改善されるので、より改善された強度を有するレンジフード用フィルタをさらに容易に成形できる。
改質材は熱可塑性樹脂と親和性を有するとともに有機材料微粉末および/または無機材料微粉末とも親和性を有し、熱可塑性樹脂中に有機材料微粉末および/または無機材料微粉末を均一に分散させ、流動性を向上させたり、強度を改善したりできるものであり、成形用組成物全体中に2〜20質量%配合することにより効果が得られる。2質量%未満では流動性および/または強度の改善効果が得られない恐れがあり、20質量%を超えると成形用組成物が必要以上に軟化してしまうので剛性、強度などが不足する恐れがある。
【0032】
改質材としては、具体的には、例えば、熱可塑性エマストマー、エチレン−プロピレンエラストマー、スチレン−ブタジエンラバー、ブタジエンラバー、水素添加スチレン−ブタジエンラバー、スチレン−エチレンブチレン・ブロックコポリマーなどを挙げることができる。これらは1種でも使用できるが、2種以上組み合わせて使用することができる。
【0033】
本発明で用いる成形用組成物には、必要に応じて酸化防止剤などの安定剤、加工助剤、着色剤などから選ばれる添加剤を所定量添加することができる。
【0034】
本発明で用いる成形用組成物を調製するには、所定量の吸油性および非溶融性を有する有機材料微粉末および/または無機材料微粉末、および他の添加剤などを、所定量の熱可塑性樹脂中に均一に分散することができる公知の混合・混練手段を用いることができる。
【0035】
このような混合・混練手段としては、具体的には、例えば、1軸押出機、2軸押出機などの多軸押出機、ベント式1軸押出機、ベント式2軸押出機などの多軸押出機、射出成形機、予備溶融装置付き射出成形機、2本あるいは2本以上のミキングロール、バンバリーミキサ、リボンミキサ、スーパーミキサ、タンブルミキサなど、あるいはこれらの2つ以上を組み合わせた混合・混練手段を挙げることができる。
【0036】
本発明で用いる成形用組成物を用いて本発明のレンジフード用フィルタを製造する方法は、特に限定されるものではない。本発明のレンジフード用フィルタの製造方法としては、具体的には、例えば、本発明で用いる成形用組成物を予備的に乾燥して含有される水分、揮発分を予め低レベルまで除去するか、あるいは乾燥せずにそのまま、水分、揮発分をベントしながら、あるいはベントせずにそのまま押出成形、延伸成形、圧縮成形、射出成形などの公知の成形法により織布、不織布あるいは多孔板などを成形する方法や、ブロー成形、インフレーション成形、シート成形、圧縮成形したシートや繊維などの1次加工品を真空成形、熱成形など2次加工する方法などの例を挙げることができる。
【0037】
本発明のレンジフード用フィルタの製造時の温度、圧力、滞留時間などの成形条件は、熱可塑性樹脂の種類や配合量、有機材料微粉末および/または無機材料微粉末の種類や配合量、成形方法や製品の形態などによっても異なるので、特定できないが、温度や圧力は成形加工可能な範囲内でなるべく低くし、滞留時間は成形加工可能な範囲内でなるべく短くして、原料の有機材料微粉末、他の添加剤、熱可塑性樹脂などが劣化したり、変質したりせずに、熱可塑性樹脂中に有機材料微粉末および/または無機材料微粉末や他の添加剤を均一に分散できるような成形条件を選定して製造することが必要である。
【0038】
[第2の実施態様]
図2は本発明のレンジフード用フィルタの他の例を説明する説明図である。
図2に示したように、厨房内の図示しない調理台の上部の壁面に設けられるレンジフード2Aは、油煙などの汚れを含む空気を吸い込むための通風口3を側部に備えたレンジフード本体4Aと、レンジフード本体4Aの端部の受け部5Aに挿入して装着された本発明のレンジフード用フィルタ6Aと、レンジフード本体4A内を排気するためのファン7とからなっている。
【0039】
レンジフード2Aの稼働時は、ファン7を回転させて厨房内の水蒸気、油煙、ごみなどを含む空気をレンジフード2Aの通風口3から吸い込んで、フィルタ6Aを通過させ、油煙、ごみなどの汚れをフィルタ6Aに付着、吸着、濾過してから外気中に排出させるようになっている以外は図1に示した本発明のレンジフード用フィルタ6と同様になっている。
【0040】
[第3の実施態様]
図3は本発明のレンジフード用フィルタの他の例を説明する説明図である。
図4は、図3に示した本発明のレンジフード用フィルタのX−X断面説明図である。
図3、4に示したように、本発明のレンジフード用フィルタ6Bは、複数のフィン11を形成して所定のピッチPで複数の通気口8を形成した通気ブロック9が縦横方向に6個形成してある。
そして、各通気ブロック9の周囲には平面連結部10−1、10−2が設けられている。通気ブロック9が隣接する部分の平面連結部10−2の幅W2は、通気ブロック9が隣接しない部分の平面連結部10−1の幅W1より小さくしてあるとともに、前記成形用組成物を用いて射出成形法を用いて一体的に成形されて全体が面一として形成されている。
【0041】
本発明のレンジフード用フィルタ6Bは、全体が面一として形成されており十分な剛性、強度などの機械的特性を有するので、図1に示したレンジフード本体4の下部の受け部5に容易に挿入して装着することができ、レンジフード2の稼働時は、ファン7を回転させて厨房内の水蒸気、油煙、ごみなどを含む空気をレンジフード2の通風口3から吸い込んで、フィルタ6Bを通過させ、油煙、ごみなどの汚れをフィルタ6Bに付着、吸着、濾過してから外気中に排出させるようになっている。
【0042】
すなわち、本発明のレンジフード用フィルタ6Bは、厨房内で油分を多く含んだ油煙が発生しても、レンジフード2の通風口3から吸い込んで、フィルタ6Bの各通気ブロック9の各通気口8を通過させる際、油煙が各通気口8の表面および通気口8近傍の表面に衝突し、油煙が衝突した表面に油分を付着させて除去できるともに、各通気ブロック9の複数の通気口8を油煙が通過する際に速度が低下して通気口8の表面および通気口8の近傍の表面に油分を付着させて除去できる。
これらの表面に付着した油分は吸油性および非溶融性を有する有機材料微粉末の作用により本発明のレンジフード用フィルタ6Bの内部に浸透する。油分を内部に浸透させた後の表面には新たな油分を再び付着させて除去できる。
油分が付着した表面にはほこりやごみなどが付着し易くなり、油分やほこりやごみなどの除去効率が向上する。
【0043】
本発明のレンジフード用フィルタ6Bの肉厚dは、1.5mm以上3.0mm以下が好ましく、さらに1.5mm以上2.0mm以下がより好ましい。肉厚dが1.5mm未満であると前記成形用組成物を用いて射出成形法を用いて本発明のレンジフード用フィルタ6Bを一体的に成形する際に、金型内での流動性が悪く寸法精度や外観や強度などに優れた製品を成形できない恐れがある。肉厚dが3.0mmを超えると寸法精度や外観や強度などはよいが、前記成形用組成物の必要量が増え、製品の重さが増え、経済的でなくなる問題がでる恐れがある。
【0044】
本発明のレンジフード用フィルタ6Bのフィン11の隙間hは、0.8mm以上2.0mm以下が好ましく、さらに0.9mm以上1.5mm以下がより好ましく、1.0mm近傍が特に好ましい。フィン11の隙間hが0.8mm未満であると狭過ぎであり、油分、ほこりやごみなどが詰まってすぐに交換する必要がでる恐れがある。隙間hが2.8mmを超えると逆に広過ぎ、油分、ほこりやごみなどの除去効率が低下する恐れがある。
【0045】
本発明のレンジフード用フィルタ6Bのフィン11のなすフィン角度θは、30°以上50°以下が好ましく、さらに45°前後がより好ましい。フィン角度θが30°未満であると、通気口8を密に形成するのが困難となり、油分、ほこりやごみなどの除去効率が低下する恐れがある。フィン角度θが50°を超えると、通気口8を密に形成できるが、通気口8の側のフィン11の面上に油分が衝突し難くなり、油分、ほこりやごみなどの除去効率が低下する恐れがある。
【0046】
フィン角度θを45°とし、本発明のレンジフード用フィルタ6Bの真上から本発明のレンジフード用フィルタ6Bを見た時、通気口8およびフィン11の隙間が見えないように設計することが特に好ましい。フィン角度θを決めると、ピッチPが大体決めることができる。
【0047】
[第4の実施態様]
図5は本発明のレンジフード用フィルタの他の例の断面説明図である。
図5に示した本発明のレンジフード用フィルタ6Cは、通気口8の形状や寸法などが異なっている以外は図3、4に示した本発明のレンジフード用フィルタ6Bと同様になっている。
【0048】
[第5の実施態様]
図6は本発明のレンジフード用フィルタの他の例の断面説明図である。
図6に示した本発明のレンジフード用フィルタ6Dは、通気口8の形状や寸法などが異なっている以外は図3、4に示した本発明のレンジフード用フィルタ6Bと同様になっている。
【0049】
[第6の実施態様]
図7は本発明のレンジフード用フィルタの他の例の断面説明図である。
図7に示した本発明のレンジフード用フィルタ6Eは、通気口8の形状や寸法などが異なっている以外は図3、4に示した本発明のレンジフード用フィルタ6Bと同様になっている。
【0050】
上記実施の形態の説明は、本発明を説明するためのものであって、特許請求の範囲に記載の発明を限定し、或は範囲を減縮するものではない。又、本発明の各部構成は上記実施の形態に限らず、特許請求の範囲に記載の技術的範囲内で種々の変形が可能である。
【実施例】
【0051】
以下本発明を実施例および比較例により、具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0052】
(実施例1)
ポリプロピレン50質量%と電気絶縁紙を微粉砕して調製した平均粒径60μmの紙微粉末50質量%とをバンバリーミキサを用いて混和・混練して成形用組成物を製造した後、圧縮成形により厚さ1.0mm、幅10.0mmの板を成形した。
成形用組成物の燃焼カロリー、比重、加工性、流動性、曲げ弾性率、加熱変形温度を測定し、また成形した板を用いて吸油性を測定した。
【0053】
(燃焼カロリーの評価)
○:燃焼カロリー 7500Kcal/kg以下
△:燃焼カロリー 7500Kcal/kgを超える
(比重の評価)
○:1.5以下
×:1.5を超える
(加工性の評価)
○:加熱・溶融して射出成形可能である。
×:加熱・溶融して射出成形できず、打ち抜きなどの機械加工によるもの。
(流動性の評価)
流動性(L/T)は、厚さ1.0mm、幅10.0mmの流動フローテスト用の金型を使用し、成形用組成物の温度180℃、射出圧力(1000kg/cm2 )の条件で測定した。
○:(L/T)80以上
×:(L/T)80未満
(曲げ弾性率の評価)
○:ASTM D790に準じて測定し、3000MPa以上。
△:ASTM D790に準じて測定し、3000MPa未満。
(加熱変形温度の評価)
○:ASTM D648に準じて測定し、110℃以上。
△:ASTM D648に準じて測定し、110℃未満。
(吸油性の評価)
○:常温で食用油に24時間浸漬すると2質量%以上の油を収着する。
△:常温で食用油に24時間浸漬すると2質量%未満の油を収着する。
×:ほとんど収着しない。
測定結果、燃焼カロリー○、比重○、加工性○、流動性○、曲げ弾性率○、加熱変形温度○、吸油性○であった。
実施例1の成形用組成物は廃棄時に可燃ゴミに分類されるものであり、吸油性が高く、油分やほこりやごみなどの除去効率が向上する上、燃焼エネルギーが小さく、廃棄時に燃え易く、有毒ガスや有害な残渣を発生せず、燃焼炉を傷める恐れがなく、人にも地球環境にも優しい成形用組成物である。
【0054】
(比較例1)
比較のために、実施例1で用いたポリプロピレンのみを用いて実施例1と同様にして燃焼カロリー、比重、加工性、流動性、曲げ弾性率、加熱変形温度を測定し、また成形した板を用いて吸油性を測定した。
測定結果、燃焼カロリー△、比重○、加工性○、流動性○、曲げ弾性率△、加熱変形温度△、吸油性×であった。
【0055】
(比較例2)
比較のために、アルミニウムを用いた。測定可能な項目は実施例1と同様にして測定した。
燃焼カロリー(−)、比重×、加工性×、流動性(−)、曲げ弾性率○、加熱変形温度(−)、吸油性×であった。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明のレンジフード用フィルタは、吸油性および非溶融性を有する有機材料微粉末および/または無機材料微粉末が均一に分散された熱可塑性樹脂を含む成形用組成物から形成されたことを特徴とするものであり、
油分を多く含んだ油煙が発生しても、油煙中の油分をその表面に付着させて除去できるともに、吸油性および非溶融性を有する有機材料微粉末および/または無機材料微粉末の作用により表面に付着した油分をその内部に浸透させることができ、油分を内部に浸透させた後の表面には新たな油分を再び付着させて除去できる機能を有し、油分が付着した表面にはほこりやごみなどが付着し易くなり、油分やほこりやごみなどの除去効率が向上し、そして安価で使い捨てできる上、燃焼エネルギーが小さく、廃棄時に燃え易く、有毒ガスや有害な残渣を発生せず、燃焼炉を傷める恐れがなく、人にも地球環境にも優しく、そして射出成形などの成形法により一体的に成形可能であり、換気扇やレンジフードの吸気口に取り付けて用いることができるという顕著な効果を奏するので、産業上の利用価値が高い。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明のレンジフード用フィルタの1例を説明する説明図である。
【図2】本発明のレンジフード用フィルタの他の例を説明する説明図である。
【図3】本発明のレンジフード用フィルタの他の例を説明する説明図である。
【図4】図3に示した本発明のレンジフード用フィルタのX−X断面説明図である。
【図5】本発明のレンジフード用フィルタの他の例の断面説明図である。
【図6】本発明のレンジフード用フィルタの他の例の断面説明図である。
【図7】本発明のレンジフード用フィルタの他の例の断面説明図である。
【符号の説明】
【0058】
P ピッチ
W1 通気ブロックが隣接しない部分の平面連結部の幅
W2 通気ブロックが隣接する部分の平面連結部の幅
d 肉厚
h 隙間
θ フィン角度
1 調理台
2、2A レンジフード
3 通風口
4、4A レンジフード本体
5、5A 受け部
6、6A、6B、6C、6D、6E レンジフード用フィルタ
7 ファン
8 通気口
9 通気ブロック
10−1、10−2 平面連結部
11 フィン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸油性および非溶融性を有する有機材料微粉末および/または無機材料微粉末が均一に分散された熱可塑性樹脂を含む成形用組成物から形成されたことを特徴とするレンジフード用フィルタ。
【請求項2】
前記有機材料微粉末が紙を微粉砕して得られる50〜200μmの粒径を有する紙微粉末であり、前記無機材料微粉末の粒径が0.01〜100μmであり、前記紙微粉末および/または無機材料微粉末の含有量が成形用組成物全体中に50〜70質量%であることを特徴とする請求項1記載のレンジフード用フィルタ。
【請求項3】
前記熱可塑性樹脂がポリオレフィン系熱可塑性樹脂であり、その含有量が成形用組成物全体中に50〜30質量%であることを特徴とする請求項1あるいは請求項2記載のレンジフード用フィルタ。
【請求項4】
前記ポリオレフィン系樹脂としてポリプロピレン系樹脂を使用することを特徴とする請求項3記載のレンジフード用フィルタ。
【請求項5】
所定のピッチで複数の通気口を形成した通気ブロックが縦横方向に複数形成してあり、前記各通気ブロックの周囲に設けた平面連結部は、前記通気ブロックが隣接する部分を、前記通気ブロックが隣接しない部分の幅と同じかあるいは小さくしてあるとともに、全体が面一としてあるレンジフード用フィルタであって、前記成形用組成物を用いて一体的に形成されていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載のレンジフード用フィルタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−136350(P2007−136350A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−334313(P2005−334313)
【出願日】平成17年11月18日(2005.11.18)
【出願人】(505243951)有限会社よろしく (2)
【Fターム(参考)】