説明

レンジフード

【課題】捕集性能を向上させるエアカーテンを形成することができるレンジフードを提供する。
【解決手段】加熱調理器の上方に配置されるレンジフードであって、加熱調理器に対向して配置され且つ空気を吸引するための吸引口と、前記吸引口の少なくとも一部分の周りを周方向に延び、加熱調理器側に向かうエアカーテンを形成する空気が吐出される吐出口と、を有し、加熱調理器近傍までエアカーテンを遮断するように到達させ、吸引口から吸引する風量に応じて吸引気流から影響を受けないような状態に前記エアカーテンを形成する空気を制御する吐出状態制御手段を有することを特徴とするレンジフードが提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンジフードに係わり、更に詳細には、エアカーテン発生させるレンジフードに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、加熱調理器の上方にレンジフードを配置し、加熱調理器による調理の際に発生した臭気や油煙等を吸引して捕集することが行われている。更に、臭気や油煙等の捕集性能を向上させることも試みられている(例えば、特許文献1〜3)。
【0003】
特許文献1に開示されたレンジフードは、レンジフードの中心部から空気を吸引する吸引気流を形成すると共に、吸引気流の周りにレンジフードから加熱調理器に向かってエアカーテンを形成する。エアカーテンは、臭気や油煙等を包み込むと共に、吸引気流の流れに沿って吸引ファン側へ還流することにより、捕集性能を向上させている。
【0004】
また、特許文献2に開示されたレンジフードは、特許文献1同様、吸引気流の周りにレンジフードから加熱調理器に向かってエアカーテンを形成する。このエアカーテンは、調理時に発生した臭気や油煙等を吸引する吸引領域とその周りの外部領域を遮断することにより、調理時に発生した臭気や油煙等の拡散を防止することができ、捕集性能を向上させている。
【0005】
さらに、特許文献3に開示されたレンジフードは、レンジフードの中心部から空気を吸引する吸引気流を形成すると共に、エアカーテンを形成する空気が加熱調理器の周辺部からレンジフードに向かって吐出される。このエアカーテンは、吸引領域とその周りの外部領域との間を遮断することにより、調理時に発生した臭気や油煙等の拡散を防止することができ、捕集性能を向上させている。
【0006】
【特許文献1】特開2002-228222号公報(図2)
【特許文献2】特開2003-343855号公報(図2)
【特許文献3】特開平11-337072号公報(図3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に開示されたレンジフードは、エアカーテンが加熱調理器付近まで到達していないので、レンジフードと加熱調理器との間における下部領域、すなわち加熱調理器に近い領域において外乱風が存在する場合、その影響を受けて、臭気や油煙等が外部領域に漏れてしまうため、レンジフードの捕集性能の向上を図ることが困難である。ここで外乱風とは、エアコンによる空気流、人の動きによる空気流等を想定している。
【0008】
これに対して、特許文献2に開示されたレンジフードでは、臭気や油煙等がエアカーテンの流れに乗って、臭気や油煙等が外部領域に漏れてしまうので、レンジフードの捕集性能の向上を図ることが困難である。
【0009】
さらに、特許文献3に開示されたレンジフードでは、加熱調理器の周辺部からレンジフードに向かって吐出されるため、作業性及び清掃性が悪いという問題がある。これは、加熱調理器の周辺部にエアカーテンの吐出口を設けると、吐出口に調理ごみが落ちたり、調理スペースが低減されたりすることがあるためである。また、フロアキャビネットにエアカーテン関連部品を搭載するので、フロアキャビネットの収納スペースが減少するという不具合もある。そして、レンジフードが上方及び加熱調理器付近の2つの部品に分かれて、製造及び管理が困難となる。
【0010】
そこで、本発明は、捕集性能を向上させるエアカーテンを形成することができるレンジフードを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様によれば、
加熱調理器の上方に配置されるレンジフードであって、
前記加熱調理器に対向して配置され且つ空気を吸引するための吸引口と、
前記吸引口の少なくとも一部分の周りを周方向に延び、前記加熱調理器側に向かうエアカーテンを形成する空気が吐出される吐出口と、を有し、
前記加熱調理器近傍まで前記エアカーテンを到達させ、前記吸引口から吸引する風量に応じて吸引気流から影響を受けないような状態に前記エアカーテンを形成する空気を制御する吐出状態制御手段を有することを特徴とするレンジフードが提供される。
【発明の効果】
【0012】
以上説明した通り、本発明によるレンジフードは、捕集性能を向上させるエアカーテンを形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0014】
最初、図1及び図2を参照して、本発明の第1の実施形態であるレンジフードを説明する。図1は、本発明の第1の実施形態であるレンジフードと加熱調理器を示す正面図であり、図2は、図1のレンジフードの底面図である。
【0015】
図1に示すように、レンジフード1は、加熱調理器70の上方に配置されており、フード本体2と、フード本体2の内部に配置された吸引ファン4とを有している。
【0016】
フード本体2は、下部2aと、下部2aの上に配置された上部2cを有し、上部2cに吸引ファン4が収納されている。下部2aの内部空間2dは、吸引風路を構成し、その中の空気が吸引ファン4によって吸引されるように構成されている。吸引ファン4は、図示しない回転調整手段により、例えば、交流モータの場合は周波数を、直流モータの場合は電圧などを調整して、モータの回転数を可変させ、吸引の風速または風量を調整することができるようになっている。フード本体2は、壁に接して配置されていてもよいし、アイランド型キッチンのように部屋の壁から離れたところに配置されていてもよい。
【0017】
図2に示すように、フード本体2の下部2aは、矩形の下面部材6を有し、下面部材6は、中央孔6aを有する下面6bを有している。中央孔6aの内側に、整流板8が配置され、下面部材6と整流板8との間には、加熱調理器70に対向し且つ空気を吸引するための吸引口10が形成されている。吸引口10は、矩形状の環状をなし、下面部材6の周縁に沿って設けられ、調理者側12aがその他の側、即ち、奥側12b、左側12c及び右側12dに比較して幅広に形成されている。
【0018】
下面部材6の下面6bは、加熱調理器70側に向かうエアカーテンを形成する空気が吐出される吐出口14b、14c、14dを、下面部材6の周縁6cと吸引口10との間に有している。吐出口14b、14c、14dは、吸引口10の一部分の周りを周方向に延びている。吸引口10は、直線的に延びていてもよいし、曲線的に延びていてもよいし、それらを組合せたものであってもよい。本実施形態では、吐出口14b、14c、14dは、奥側に設けられた奥側吐出口14bと、左側に設けられた左側吐出口14cと、右側に設けられた右側吐出口14dとからなっている。
【0019】
なお、本発明における加熱調理器70側に向かうとは、図1に示すθが0〜30°の角度を持って、吐出される流れを意味する。すなわち、鉛直下向きを含む、ややレンジフードの外側に向く流れである。ここで、第1の実施形態における外側及び内側とは、図2(底面図)において、中心に近い側を内側、下面部材6の周縁6cに近い側を外側と呼ぶことにする。
【0020】
奥側吐出口14b、左側吐出口14c、右側吐出口14dは、それぞれ、幅が変化する幅変化輪郭を有する幅変化部分28を有している。
【0021】
図1及び図2に示すように、吐出口14b、14c、14dにはそれぞれ、風路32を介して吐出ファン34に接続されている。吐出ファン34は、例えば、クロスフローファンであり、レンジフード本体2の下部2aに収容されている。吐出ファン34は、吐出状態制御手段60により、例えば、交流モータの場合は周波数を、直流モータの場合は電圧などを調整して、モータの回転数を可変させ、風速または風量を調整することができるようになっている。そして、吐出ファン34は、レンジフード本体2において、吐出口14b、14c、14dよりも内側に配置されている。
【0022】
図2に示すように、吐出口14b、14c、14dの外側は、下面部材6の周縁6cと平行に一直線状となっている。そして、吐出口14b、14c、14dは、部分的に、内側すなわち吸引口10側へ突出した幅広領域が形成されている。
【0023】
また、吐出口14b、14c、14dの出口付近には角度調整手段であるルーバー40が設けられ、吐出角度が調整できるようになっている。そして、ルーバー40は、吐出状態制御手段60により、吐出角度を調整できるようになっている。
【0024】
次に、本発明の第1の実施形態であるレンジフードの作用を説明する。
【0025】
吸引ファン4によって加熱調理器70からの吸引領域50の空気を吸引口10から吸引して吸引風路205を通して外へ排気すると同時に、吐出ファン34から風路32を通して、吐出口14b、14c、14dから下方に向かって空気が送出される。送出された空気、すなわち、エアカーテンを形成する空気は、吸引領域50と外部領域51とを遮断するように、加熱調理器70付近まで到達する。加熱調理器70付近まで到達することにより、加熱調理器70とレンジフード1との間において、外乱風(横風)Wの影響をエアカーテンにより遮断することができる。エアカーテンは、加熱調理器70付近に到達後、吸引口10に向かって上昇する。その際、調理排気を吸引口10へ誘導するような流れとなる。このように、外乱風(横風)Wの影響を遮断し、かつ、調理排気を誘導するような流れとすることで、調理排気が吸引口10へ捕集される量が高くなる。言い換えれば、捕集性能が向上することになる。
【0026】
しかし、吸引ファン4の風量が変化すると、同様のエアカーテンを吐出させた場合、エアカーテンの流れが変化してしまう。この流れの変化については、後ほど詳細に説明するが、エアカーテンの流れが変化してしまうと、捕集性能の向上が得られなくなってしまう。よって、吸引ファン4の風量が変化しても、常に捕集性能を向上するためには、吸引ファン4の風量の変化に応じて、エアカーテンの吐出状態を制御することが有効となる。
【0027】
本実施形態において、エアカーテンの吐出状態を制御する具体的な例としては、2つ備えられている。1つは、エアカーテンの吐出風速または風量を調整する手段であり、もう1つは、エアカーテンの吐出角度を調整する手段である。前者のために、本実施形態において、吐出ファン34は、吐出状態制御手段60により、吸引ファン4の風量に応じて、モータの回転数を可変させ、風速または風量を調整することができるようになっている。また、後者のために、本実施形態において、ルーバー40は、吐出状態制御手段60により、吸引ファン4の風量に応じて、吐出角度を調整できるようになっている。
【0028】
このように、吐出状態制御手段60により、吸引ファン4の風量に応じて、エアカーテンの吐出状態を制御することができる。本実施形態においては、吐出状態を制御として、吐出風量及び吐出角度を調整することができる。より詳しくは、吐出状態制御手段60により、吸引ファン4の風量が多くなるほど、吐出ファン34の風量を多くなるように制御することができ、また、吸引ファン4の風量が多くなるほど、吐出口から吐出される角度をレンジフードの外側へ向くように制御することができる。そして、エアカーテンの吐出状態を制御することにより、外乱風(横風)Wの影響を遮断し、かつ、調理排気を誘導するような流れとすることができ、調理排気が吸引口10へ捕集される量が高くなるので、捕集性能が向上することになる。
【0029】
次に、本実施形態のレンジフード1の吐出状態制御装置60による制御内容の一例を具体的に説明する。
【0030】
図3は、本実施形態のレンジフード1の吐出状態制御装置60による制御内容の流れを具体的に示すフローチャートである。ここで、図3における「S」は、各ステップを示している。なお、図1及び図2は、図3におけるS8の状態を示したものである。そのS8となる過程も含めて、以下詳細に説明する。
【0031】
まず、図3に示すように、S1において、使用者が図示しないスイッチで吸引ファン4の風量レベルを弱、中、強のいずれか選択すると、吸引ファン4が作動し、加熱調理器70からの吸引領域50の空気を吸引口10から吸引する。
【0032】
次に、S2において、S1で選択した吸引ファン4の風量レベルが「弱」かどうかを判断する。吸引ファン4の風量レベルが「弱」のときは、S3に進み、吸引ファン4の回転数Nを検知する。そして、S4において、その回転数Nが所定回転数Lよりも高いかどうか判断する。回転数Nが所定回転数Lよりも高い場合、S5に進み、吐出ファン34の風量レベルを「最弱」とする。一方、回転数Nが所定回転数Lよりも高くない場合、S6に進み、吐出ファン34の風量レベルを「弱」とする。
【0033】
ここで、この制御内容の意味を詳細に説明する。吸引ファン4のモータは、回転調整手段により概略調整されてはいるが、同周波数や同電圧としても、吸引風路205の状況により、多少回転数が変化するものである。吸引ファン4の風量レベル「弱」において、所定回転数Lよりも高いということは、吸引風路205における圧力損失が高めとなっており、吸引ファン4の風量が「弱」にしては、少なめとなっているということになる。よって、その吸引ファン4の風量に応じて、吐出ファン34の風量レベルは「最弱」、すなわち、最も少ない風量することにより、最適なエアカーテン流れとすることができる。逆に、吸引ファン4の風量レベル「弱」において、所定回転数L以下ということは、吸引風路205における圧力損失が低めとなっており、吸引ファン4の風量が「弱」にしては、多めとなっているということになる。よって、その吸引ファン4の風量に応じて、吐出ファン34の風量レベルは、「最弱」よりは風量の多い「弱」とすることにより、最適なエアカーテン流れとすることができる。
【0034】
次に、S2において、吸引ファン4の風量レベルが「弱」でないときは、S7に進み、S1で選択した吸引ファン4の風量レベルが「中」かどうかを判断する。吸引ファン4の風量レベルが「中」のときは、S8に進み、吐出ファン34の風量レベルを「中」とする。
【0035】
また、S7において、吸引ファン4の風量レベルが「中」でないときは、S9に進み、吸引ファン4の回転数Nを検知する。そして、S10において、その回転数Nが所定回転数Hよりも高いかどうか判断する。回転数Nが所定回転数Hよりも高い場合、S11に進み、吐出ファン34の風量レベルを「強」とする。一方、回転数Nが所定回転数Hよりも高くない場合、S12に進み、吐出ファン34の風量レベルを「最強」とする。そして、S5、S6、S8、S11、S12となった後は、S2へ進み、使用者が図示しないスイッチで停止を選択するまで、S2以降を繰り返す。
ここで、運転途中で、吸引ファン4の風量が変化した場合の例について、説明する。例えば、最初に、使用者が図示しないスイッチで吸引ファン4の風量レベル「弱」を選択した場合、吸引風路205の圧力損失の状態に応じて、S5またはS6へ進み、吐出ファン34の風量が「最弱」または「弱」となる。このあと、使用者が図示しないスイッチで吸引ファン4の風量レベル「中」を選択した場合、S8へ進み、吐出ファン34の風量が「中」となる。このように、吸引ファン4の風量が多いほど、吐出ファン34の風量が多くなるように制御されている。
【0036】
なお、吐出ファン34の「最強、強、中、弱、最弱」における風速または風量の設定値は、吸引気流の挙動などを考慮して、予め実験などにより求められた所定の値となっている。また、所定回転数Lよりも、所定回転数Hの方が、高い値となっている。
【0037】
このように、吸引ファン4の風量が少ないほど、吐出ファン34の風量を少なくなるように調整、逆に、吸引ファン4の風量が多いほど、吐出ファン34の風量を多くなるように調整というような制御を行うことにより、最適なエアカーテン流れとすることができる。後で詳細説明するが、吸引口10から吸引する風量に対して、吐出口から吐出される風量の比率を0.6〜1.2倍とすると好ましい。最適なエアカーテン流れとは、上述したように、加熱調理器70付近まで吸引領域50と外部領域51を遮断し、かつ加熱調理器70付近から吸引口10まで調理排気を誘導するような流れのことである。そして、外乱風(横風)W、すなわち、外部領域51からの乱れの影響を受けることなく、調理排気を誘導することにより、捕集性能の向上を図ることができる。
【0038】
また、上記フローチャートでは、吸引ファン4の風量に応じて、吐出ファン34の風量を調整する例を示したが、吐出ファン34の風量ではなく、エアカーテンの吐出角度を調整するために、ルーバー40の角度を調整する場合について、説明する。この場合、図3において説明したような吐出風量の調整同様に、S5、S6、S8、S11、S12の括弧内に示したような調整を行うことにより、吸引ファン4の風量に応じて、最適なエアカーテン流れとすることができる。より詳しくは、吸引ファン4の風量が少ないほど、エアカーテンの吐出角度が鉛直下向きに近くなるように内側向きへ調整、逆に、吸引ファン4の風量が多いほど、エアカーテンの吐出角度をレンジフード1の外側へ向くように調整というような制御を行うことにより、最適なエアカーテン流れとすることができる。
最適なエアカーテン流れとすることにより、外乱風(横風)Wの影響を遮断し、かつ、調理排気を誘導するような流れとすることができ、調理排気が吸引口10へ捕集される量が高くなるので、捕集性能が向上することになる。
【0039】
なお、本実施形態においては、吐出風量及び吐出角度を調整する例で説明したが、吐出風量または吐出角度のうち、一方の調整のみでもよい。
【0040】
さらに、吸引ファン4の風量を推測するために、吸引ファン4の回転数Nを検知する例を示したが、吸引ファン4の電流値を検知してもよい。
【0041】
また、吸引ファン4の風量を推測するために、吸引ファン4の回転数や電流値ではなく、吸引風路205における風速や圧力を検知するようにしてもよい。
【0042】
次に、吐出状態制御について行った実験について説明する。
【0043】
〔実験例〕
図4に示す装置は、加熱調理器70とレンジフード1に、本発明の第1の実施形態に用いるエアカーテン吐出部を搭載した装置である。また、横風発生装置204を設け、加熱調理器70の上の鍋203に外乱風(横風)Wを供給した。また、予めCO2をCO2ガスボンベ201から流量計202を介して直接、吸引風路205に12.5リットル/分で流入させ、そのときの吸引風路205内のCO2濃度を直接供給CO2濃度とした。
【0044】
直接供給したときと同じ吸引風量(例えば、200m3/時)において、加熱調理器70に鍋203を置き、CO2ガスボンベ201から流量計202を介して12.5リットル/分で供給したCO2を、鍋203の縁をリング状に囲んだチューブに設けた10箇所の孔から吐出させた。そして、そのときの吸引風路205内のCO2濃度を捕集CO2濃度とした。また、エアカーテンを形成すると共に、エアカーテンが無いときに鍋203の近傍で0.3m/秒となる外乱風(横風)Wを供給した。次の式により、捕集率C(%)を計算した。
C=ρ3/ρ4×100 ・・・(式1)
ここで、ρ3は捕集CO2濃度、ρ4は直接供給CO2濃度である。CO2濃度ρ3、ρ4は、測定濃度から雰囲気濃度を引き算した値を採用した。CO2濃度は、ヴァイサラ(Vaisala)社製CO2変換器GMT222で測定した。雰囲気濃度は、加熱調理器70の縁から1m程度離れ、床から1m程度の高さの地点で測定をした。加熱調理器70の上面からレンジフード1の下面までの距離は、940mm程度、鍋203の中心から横風発生装置204端面までの距離は900mm程度である。横風発生装置204の吐出口サイズは、高さが加熱調理器70天面同等高さから300mm程度、奥行が600mm程度である。
【0045】
図5〜図7は、図4に示した装置による実験の模式的概略図である。これは、エアカーテンの流れを説明したもので、主流を示したものである。すなわち、全ての流れを示しているわけではなく、主な流れを示したものである。
【0046】
図5〜図7は、全て吸引風量200m3/時の場合を示しており、図8における条件Aに相当する。図5は吐出風量132m3/時(捕集率34%)、図6は吐出風量207m3/時(捕集率69%)、図7は吐出風量244m3/時(捕集率58%)を示したものである。
【0047】
図6では、エアカーテンは、吸引領域50と外部領域51とを遮断するように、加熱調理器70付近まで到達する。加熱調理器70付近まで到達することにより、加熱調理器70とレンジフード1との間において、外乱風(横風)Wの影響をエアカーテンにより遮断することができる。エアカーテンは、加熱調理器70付近に到達後、吸引口10に向かって上昇する。その際、調理排気を吸引口10へ誘導するような流れとなる。このように、外乱風(横風)Wの影響を遮断し、かつ、調理排気を誘導するような流れとすることで、調理排気が吸引口10へ捕集される量が高くなる。言い換えれば、捕集性能が向上することになる。
【0048】
図6に示した状態において、吐出ファン34の運転を開始して3分以上経過した後、調理加熱器70から200mm(図6におけるT)上での鉛直下向きの風速成分を測定してみたところ、30秒間の時間平均で0.15m/秒〜0.39m/秒であった。0.39m/秒を超えると、図7に示したように、外側に追い出される成分が多くなることが確認できた。このとき、図6における左右方向や奥行方向の測定場所は、主流と考えられる所を選んだ。なお、熱式風速計で測定した。熱式風速計のプローブ210は、指向性のあるタイプのものを使用して、図6に示すように加熱調理器70と平行となるように配置し、鉛直下向き成分のみを測定した。よって、加熱調理器70から200mm上での鉛直下向きの風速成分を0.15m/秒〜0.39m/秒とすることにより、加熱調理器70近傍までエアカーテンを到達させることで、外乱風(横風)Wの影響を遮断し、かつ、調理排気を誘導するような流れとすることができる。よって、捕集性能の向上を図ることができる。
【0049】
次に、図5では、エアカーテンの風速または風量が少なすぎるため、吸引口10側へ引っ張られて、加熱調理器70付近まで到達しない流れとなっている。この場合、加熱調理器70とレンジフード1との間において、外乱風(横風)Wの影響を遮断することが困難となるので、外乱風(横風)Wの影響を受け、調理排気が外部領域51へ漏れてしまう。そのため、捕集性能が低下してしまうことになる。
【0050】
また、図7では、エアカーテンの風速または風量が多すぎるため、吸引口10側へあまり引っ張られず、加熱調理器70付近まで到達しすぎて、一部は外部領域51へ流れることになっている。この場合、加熱調理器70とレンジフード1との間において、外乱風(横風)Wの影響を遮断することは、ある程度できるが、外部領域51への流れが形成されているため、吸引領域50で乱れが生じ、調理排気を外部領域51へ追い出してしまう。そのため、捕集性能が低下してしまうことになる。
【0051】
そして、吸引風量を変化させると、吸引口10側へ引っ張られる力が変化するため、吸引風量に応じて、最適なエアカーテン流れ(図6の状態)は変化することになる。
【0052】
図8は、吐出風量を変化させた場合の実験結果である。条件Aは吸引風量200m3/時、条件Bは吸引風量300m3/時、条件Cは吸引風量350m3/時である。
【0053】
各条件において、吐出風量を変化させると、捕集率が変化しているが、捕集率のピーク値における吐出風量を抽出すると、吸引風量200m3/時では吐出風量207m3/時(捕集率69%)、吸引風量300m3/時では吐出風量282m3/時(捕集率76%)、吸引風量350m3/時では吐出風量320m3/時(捕集率77%)となった。すなわち、吸引風量が変化すると、最適な吐出風量も変化することが確認できた。
【0054】
また、各条件において、捕集率60%以上となる場合の吐出風量と吸引風量との比率(吐出風量/吸引風量)を算出すると、0.6〜1.2となった。また、さらに、捕集率65%以上となる場合の吐出風量と吸引風量との比率を算出すると、0.7〜1.1倍となった。よって、吐出風量と吸引風量との比率を0.6〜1.2倍とすると捕集率が高く、0.7〜1.1倍とすると、より好ましいと言える。
【0055】
よって、吸引ファン4の風量に応じて、エアカーテンの吐出風量(または風速)を調整することにより、外乱風(横風)Wの影響を遮断し、かつ、調理排気を誘導するような流れとすることができ、調理排気が吸引口10へ捕集される量が高くなるので、捕集性能が向上することになる。
【0056】
次に、図9は、吐出角度を変化させた場合の実験結果である。条件Dは吸引風量300m3/時、条件Eは吸引風量420m3/時である。図9に示すように、吸引風量が多くなると、最適なエアカーテン吐出角度が外向きに変化していることが確認できた。吐出角度としては、吸引風量がさらに多くなる場合や外乱風(横風)Wの強さが大きくなる場合まで想定すると、図1におけるθで表現すると、0°〜30°が好ましい。なお、θは、鉛直下向きと、吐出口直後の風速が最高となる方向との間の角度を表す。測定方法としては、上述した熱式風速計を用いて、風速が最高値を示した地点を測定する。そして、吐出口直後の風速が最高となる方向は、熱式風速計のプローブ210と直角をなす方向となる。
【0057】
よって、吸引ファン4の風量に応じて、エアカーテンの吐出角度を調整することにより、外乱風(横風)Wの影響を遮断し、かつ、調理排気を誘導するような流れとすることができ、調理排気が吸引口10へ捕集される量が高くなるので、捕集性能が向上することになる。
【0058】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は、以上の実施の形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。例えば、吐出状態制御手段60として、モータの回転数を可変する例を示したけれども、風速または風量の調整としては、これに限られるものではなく、吐出口14b、14c、14dから吐出する空気の風速または風量が可変できればよい。風速または風量を可変する別例として、図示しない絞り手段により風路32の断面積を可変させるようにすることもできるし、風路32に内部空間2dへ連通する図示しない孔を設け、この孔の断面積を調整して漏れ量を可変させるようにすることもできる。
【0059】
また、説明の便宜上、複数の吐出ファン34を設けて個別に風速または風量を調整する場合を説明したが、吐出ファンの数を減らして(例えば、一台の吐出ファンとして)風路を分岐させ、分岐部分で空気流の分配量を可変させたりするなどして、吐出ファン34の数を減らしつつ複数の風路について風速または風量の調整をするようにすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の第1の実施形態であるレンジフードと加熱調理器を示す正面図である。
【図2】図1に示すレンジフードの底面図である。
【図3】図1に示すレンジフードにおける吐出状態制御装置の制御内容の流れを具体的に示すフローチャートである。
【図4】実験に用いた装置の概略図である。
【図5】実験の模式的概略図である。
【図6】実験の模式的概略図である。
【図7】実験の模式的概略図である。
【図8】実験結果を示すグラフである。
【図9】実験結果を示すグラフである。
【符号の説明】
【0061】
1 レンジフード
2 レンジフード本体
4 吸引ファン
6 下面部材
8 整流板
10 吸引口
14b、14c、14d 吐出口
28、30 幅変化部分
32 風路
34 吐出ファン
40 ルーバー
50 吸引領域
51 外部領域
60 吐出状態制御手段
70 加熱調理器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱調理器の上方に配置されるレンジフードであって、
前記加熱調理器に対向して配置され且つ空気を吸引するための吸引口と、
前記吸引口の少なくとも一部分の周りを周方向に延び、前記加熱調理器側に向かうエアカーテンを形成する空気が吐出される吐出口と、を有し、
前記加熱調理器近傍まで前記エアカーテンを到達させ、前記吸引口から吸引する風量に応じて吸引気流から影響を受けないような状態に前記エアカーテンを形成する空気を制御する吐出状態制御手段を有することを特徴とするレンジフード。
【請求項2】
前記吐出状態制御手段は、前記吸引口から吸引する風量が多くなるほど、前記吐出口から吐出される風量を多くなるように制御することを特徴とする請求項1に記載のレンジフード。
【請求項3】
前記吐出状態制御手段は、前記吸引口から吸引する風量が多くなるほど、前記吐出口から吐出される角度をレンジフードの外側へ向くように制御することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のレンジフード。
【請求項4】
前記吸引口から空気を吸引するための吸引ファンと、前記吐出口から空気を吐出するための吐出ファンと、を有し、
前記吐出状態制御手段は、前記吸引ファンを駆動するモータの状態変化を検知して、前記吐出ファンを駆動するモータを制御することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のレンジフード。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−70049(P2008−70049A)
【公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−249179(P2006−249179)
【出願日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】