説明

レンズの製造方法、レンズの製造装置、及び光学装置の製造方法

【課題】 温度管理が難しい環境で製造する場合等でも、所望の屈折率分布を有するレンズを得ることのできる、屈折率分布を有するレンズの製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】 ポリマーからなる構造体に、重合前及び重合後の屈折率が前記ポリマーの屈折率と異なるモノマーを接触させる第1の工程と、接触させた前記モノマーを前記構造体内に拡散させる第2の工程と、前記モノマーを重合させる第3の工程と、を有する屈折率分布を有するレンズの製造方法において、前記第2の工程で、前記構造体の有する面のうち、前記モノマーを拡散させる方向に対して平行な面の50%以上に光を照射し、前記構造体を透過した前記光の強度を所定の領域で測定する工程を有し、測定された前記光の強度が所定の値に達したときに、前記第3の工程を開始することを特徴とする屈折率分布を有するレンズの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はレンズの製造方法、レンズの製造装置、及び光学装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カメラのズームレンズにおいて、色収差を補正するため、複数のレンズが用いられていた。一方、光軸から半径方向に屈折率分布を有するラジアル型の屈折率分布レンズを用いると、レンズの枚数が少なくても、色収差を補正することができる。したがって、ラジアル型の屈折率分布レンズを用いると、ズームレンズの小型化を実現することができる。
【0003】
ラジアル型の屈折率分布レンズは、例えば、屈折率の異なる2種以上のモノマーの組成分布を形成することによって製造することができる。具体的には、成型鋳型に注入したモノマーを加熱することでゲル状とし、そのゲルのまわりから別のモノマーを接触させた状態を一定時間保持することで拡散させ、その後に全体を加熱して硬化させることで凹型や凸型のプラスチックレンズを得る(特許文献1)。屈折率の分布は拡散させる時間を変えることで調整することになる。
【0004】
また、高屈折率材料からなる円柱状のプレポリマに、低屈折率の重合可能な低分子量有機物流動体液を拡散させることで屈折率分布型レンズ材料を製造する方法が開示されている(特許文献2)。さらに、特許文献2では円柱状のプレポリマの一方の平面に対してある角度でレーザービームを入射させ、低分子量有機物流動体液の濃度勾配が所定の屈折率分布になるときの出射光の位置、角度にあわせてレーザービーム受光装置を設けておき、受光装置で出射光が検出されたときに、低分子量有機物流動体液の拡散を止める方法が開示されている。このようにすることで、再現性良く屈折率分布型レンズ材料を製造できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−40357号公報
【特許文献2】特開昭58−98316号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に記載の製造方法では、拡散工程中に突発的に上記ゲルまたは上記別のモノマーに温度変化などが生じることによって、上記別のモノマーの拡散の進行速度が変わった場合、あるいは温度管理が難しい環境で製造する場合には、所望の屈折率分布を有するレンズを得ることができないおそれがある。
【0007】
また、特許文献2では、レーザービームのような細い光線を用いるため、たとえば一部に屈折率分布が形成されているが他の部位で屈折率分布が形成されていないなど、レンズ全体に所望の屈折率分布が形成されていない状態を検出できない可能性がある。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、拡散工程中にゲルやモノマーに突発的な温度変化などがあった場合や、温度管理が難しい環境で製造する場合でも、所望の屈折率分布を有するレンズを得ることのできる、屈折率分布を有するレンズの製造方法、レンズの製造装置、及び光学装置の製造方法を提供することを目的とする。また、レンズ全体に所望の屈折率分布を形成する、レンズの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の本発明に係る屈折率分布を有するレンズの製造方法は、ポリマーからなる構造体に、重合前及び重合後の屈折率が前記ポリマーの屈折率と異なるモノマーを接触させる第1の工程と、接触させた前記モノマーを前記構造体内に拡散させる第2の工程と、前記モノマーを重合させる第3の工程と、を有する屈折率分布を有するレンズの製造方法において、前記第2の工程で、前記構造体の有する面のうち、前記モノマーを拡散させる方向に対して平行な面の50%以上に光を照射し、前記構造体を透過した前記光の強度を所定の領域で測定する工程を有し、測定された前記光の強度が所定の値に達したときに、前記第3の工程を開始することを特徴とする。
【0010】
第2の本発明に係る屈折率分布を有するレンズの製造装置は、ポリマーからなる構造体に、重合前及び重合後の屈折率が前記ポリマーの屈折率と異なるモノマーを接触させ、接触させた前記モノマーを所定時間放置することによって、前記モノマーの濃度分布が形成されるように前記モノマーを拡散させた後に、前記モノマーを重合させることで屈折率分布を有するレンズを製造する、レンズの製造装置において、前記モノマーを拡散させているときに、前記構造体の有する面のうち、前記モノマーを拡散させる方向に対して平行な面の50%以上に光を照射する光照射手段と、前記構造体を透過した前記光の強度を所定の領域で測定する光強度測定手段と、測定された前記光の強度が所定の値に達したときに、前記モノマーの重合を開始させる重合開始手段と、を有することを特徴とする。
【0011】
第3の本発明に係る光学装置の製造方法は、レンズを設ける工程と、前記レンズを透過した光を撮像する撮像手段を設ける工程と、を有する光学装置の製造方法において、前記レンズは、上記第一の本発明の方法によって製造することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ポリマーからなる構造体内にモノマーを拡散させているときに、構造体に光を照射し、構造体を透過した光を観測することによって、モノマーの重合を開始するタイミングなどを決めることができる。それによって、拡散工程中にゲルやモノマーの突発的な温度変化などがあった場合や、温度管理が難しい環境で製造する場合でも、所望の屈折率分布を有するレンズを得ることのできる、屈折率分布を有するレンズの製造方法、レンズの製造装置、及び光学装置の製造方法を提供することができる。また、構造体の有する面のうち、前記モノマーを拡散させる方向に対して平行な面の50%以上に光を照射することで、レンズ全体に所望の屈折率分布が形成されている、レンズの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】第1の実施形態に係るレンズの製造方法を示す図である。
【図2】屈折率分布から照度を導き出す方法を説明する図である。
【図3】第2の実施形態に係るレンズの製造方法を示す図である。
【図4】本発明の実施例において得られた屈折率分布の経時変化を示す図である。
【図5】本発明の実施例において計算することにより得られた照度測定点での照度の時間変化を示す図である。
【図6】第3の実施形態に係るレンズの製造装置を示す図である。
【図7】第3の実施形態に係るレンズの製造装置における処理の流れを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0015】
本実施形態に係るレンズの製造方法は、以下の工程を有する。
(A)ポリマーからなる構造体に、重合前及び重合後の屈折率が前記ポリマーの屈折率と異なるモノマーを接触させる第1の工程
(B)接触させた前記モノマーを前記構造体内に拡散させる第2の工程
(C)前記モノマーを重合させる第3の工程
また、本実施形態に係るレンズの製造方法は、前記第2の工程で前記構造体に光を照射し、前記構造体を透過した前記光の強度を所定の領域で測定する工程を有することを特徴としている。
【0016】
まず、第1の工程および第2の工程によって、ポリマーからなる構造体の表面部分から中心部分にかけて、重合前及び重合後の屈折率が前記ポリマーの屈折率と異なるモノマー(以下、単に、モノマーということがある)が拡散していく。モノマーが拡散しているときに、ポリマーからなる構造体の有する面のうち、前記モノマーを拡散させる方向に対して平行な面の50%以上に光を照射する。ポリマーからなる構造体を透過し、所定の領域で測定される光の強度は、モノマーの拡散が進行するにつれて変化する。なぜなら、ポリマーとモノマーの屈折率が異なるため、モノマーの拡散の進行によってポリマーからなる構造体の屈折率分布が変化し、これによってポリマーからなる構造体のレンズの屈折力が変化するからである。よって構造体を透過した光の強度を所定の領域で測定し、前記光の強度が所定の値に達した時にモノマーの重合を開始することで、所望の屈折率分布を有するレンズを得ることができる。ここで、所定の値とは所望の屈折率分布を有するレンズに同じ条件で光を照射した時、所定の領域で測定される光の強度であって、あらかじめ同じ条件下で測定する、あるいは屈折率分布を与えることにより光線追跡法等の手法を用いて計算で求めることができる。
【0017】
また、ポリマーからなる構造体の有する面のうち、前記モノマーを拡散させる方向に対して平行な面の50%以上に光を照射することで、レンズの全体にわたって、所望の屈折率分布が形成されていることがわかる。一方、レーザービームのような細い光線を照射すると、たとえば、一部に屈折率分布が形成されているが、他の部位で屈折率分布が形成されていないなど、レンズ全体に所望の屈折率分布が形成されていない状態を検出できない可能性がある。
なお、上記において、「モノマーを拡散させる方向に対して平行な面」の平行とは、略平行な面であればよく、本発明の効果を奏する範囲で数学的な厳密な意味での平行からずれていてもよい。また、光を照射するときに、ポリマーからなる構造体の有する面のうち、前記モノマーを拡散させる方向に対して平行な面の90%以上に光を照射することが好ましく、99%以上に光を照射することがさらに好ましい。
【0018】
また、上記所定の領域は、屈折率分布を有するレンズの光軸上であることが好ましい。
【0019】
このように、本実施形態に係るレンズの製造方法は、所望の屈折率分布を有するレンズを得るために必要なだけモノマーの拡散が進んだら、モノマーの重合を開始する。それによって、拡散工程中に突発的にモノマーの温度変化などが生じることによってモノマーの拡散の進行速度が変わってしまったような場合や、温度管理が難しい環境で製造する場合でも、所望の屈折率分布を有するレンズを得ることができる。
【0020】
ここで、ポリマーからなる構造体としては、円柱形状、立方体、直方体形状が挙げられるが、これらに限らない。
なお、上記で用いるポリマー、モノマーとして用いることのできる材料は以下の第1の実施形態で述べる。
【0021】
(第1の実施形態)
第1の実施形態に係る屈折率分布を有するレンズの製造方法は、以下の各工程を有する。
(1)ポリマーからなる円柱形状の構造体の外周部に、重合前及び重合後の屈折率が前記ポリマーの屈折率と異なるモノマーを接触させる第1の工程
(2)接触させた前記モノマーを所定時間放置することによって、前記モノマーを円柱形状の構造体の外周部から中心部へ向かって屈折率分布が形成されるように拡散させる第2の工程
(3)前記モノマーを重合させる第3の工程
そして、以下の(4)(5)の工程をさらに有し、(5)の工程で測定された光の強度が所定の値に達したときに、前記第3の工程を開始することを特徴とする。
(4)前記第2の工程で前記モノマーを拡散させているときに、前記構造体の一方の平面の50%以上に光を照射する工程と、
(5)前記構造体を透過した前記光の強度を所定の領域で測定する工程
ここで、(4)の工程において、光を照射するときに、前記構造体の一方の平面の90%以上に光を照射することが好ましく、99%以上に光を照射することがさらに好ましい。
また、上記所定の領域は、屈折率分布を有するレンズの光軸上であることが好ましい。
以下、上記各工程について図1を用いて詳細に説明する。
【0022】
((1)の工程について)
まず、ポリマーからなる円柱形状の構造体を用意する。この構造体はどのような方法で作製してもよい。例えば、図1(a)のような注型セル103を成型鋳型として作製することができる。本実施形態において、注型セルとは、2枚の透明な基材101の間に円形のガスケット102を挟むことで、円柱形状の鋳型を形成したものである。この注型セル103の内部に第1のモノマー104を注入する。
【0023】
次に、注型セルの一方の主面に、中央部に円形状の透明部位を有するフォトマスク105を設けて、放射線110を照射する。その結果、放射線110によって露光された部分では、ポリマーからなる円柱形状の構造体106が形成され、露光されていない部分には、未重合の第1のモノマーが残る(図1(b))。そして、未重合の第1のモノマーを除去することでポリマーからなる円柱形状の構造体106を作製することができる(図1(c))。なお、第1のモノマーは熱重合によって重合させてもよい。
【0024】
ここで、ポリマーからなる円柱形状の構造体106はゲル状であることが好ましい。ゲル状である場合、円柱形状のポリマー内で重合前及び重合後の屈折率が前記ポリマーの屈折率と異なる第2のモノマーが拡散しやすいからである。
【0025】
なお、ポリマーからなる円柱形状の構造体106はゲル状であっても注型セルから未重合の第1のモノマーを分離する際、あるいは後述する第2のモノマーを接触させる際に形状が崩壊しない程度の最低限の硬化度を有することが好ましい。
【0026】
かかる硬化度を実現するために、ポリマーの複素粘度は10Pa・s以上10000Pa・s未満であることが望ましい。複素粘度が10Pa・s未満だと、未重合の第1のモノマーを分離する際にポリマーからなる円柱形状の構造体106が崩壊するおそれがある。一方、複素粘度が10000Pa・s以上だと、後述する放置工程において、第2のモノマーの拡散の進行が遅くなるおそれがある。
【0027】
次に、未重合の第1のモノマーを除去することでできた空隙107に第2のモノマー108を注入して、ポリマーからなる円柱形状の構造体106の外周部に接触させる(図1(d))。ただし、第2のモノマーとしては、重合前及び重合後の屈折率が前記ポリマーの屈折率と異なるモノマーを用いる。
【0028】
ここで、注型セル103に第1のモノマー104を注入するときに、放射線重合開始剤、粒子、光増感剤、熱重合開始剤なども同時に注入することができる。さらに、注型セル103に第2のモノマー108を注入するときも同様に、放射線重合開始剤、微粒子、光増感剤、熱重合開始剤などを同時に注入することができる。
ここで粒子は第1のモノマー及び第2のモノマーに分散することで、それぞれの重合前及び重合後の屈折率を調整するために用いる。通常屈折率を大きくするために粒子を用いるが、第1のモノマー及び第2のモノマーが重合前あるいは重合後に示す屈折率で十分な場合には用いる必要はない。
【0029】
第1の工程において、作製するレンズの厚みを一定とするため、基材101の間に、前記ガスケットと共にガスケットの厚みとほぼ同じ厚さのスペーサーを挿入することが好ましい。また、注型セルは必要に応じてバネつきクリップなどで固定し、その空隙内にシリンジ針などを用いて、第1のモノマーを注入することができる。透明な基材としては、例えば、石英、ガラス、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリイミド等の透明樹脂、サファイヤ、ダイヤモンド等など公知の素材があげられる。未重合の第1のモノマーの除去及び第2のモノマーの注入を容易にするため、第1のモノマーを注入後もシリンジ針を刺したままにしておくことが好ましい。また、未重合の第1のモノマーの除去及び、第2のモノマーの注入は、必要に応じて加熱したり、加圧したりしながら行ってもよい。
【0030】
さらに、注型セルから最終的に得られるレンズを容易に離型するために、注型セルの表面を予め離型剤で処理しておくことが好ましい。離型剤処理は、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、脂肪酸エステル等の離型剤をスプレー、ディッピング、スピンコート法等により塗布し、必要に応じて加熱することで行う。また、溶剤洗浄や拭き取りで余剰の離型剤を除去しても良い。
【0031】
照射する放射線は、使用する第1のモノマーの感度波長に応じて選択されるが、例えば、200から400nm程度の波長の紫外光や、X線、電子線などを適宜選択して使用することができる。第1のモノマーとして紫外光に感度を有する多種多様な感光性化合物が容易に入手可能であることから、照射する放射線は、紫外光であることが好ましい。また、紫外光を発する放射線照射手段としては、例えば、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、低圧水銀灯、Deep−UVランプ、炭素アーク灯、ケミカルランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプなどが挙げられ、超高圧水銀灯が特に好ましい。これら放射線は1つまたは複数で使用できる。
【0032】
また、第1のモノマーの一部分を重合させる方法として、上記では、中央部に円形状の透明部位を有するフォトマスク105を用いたが、放射線が円形状に照射されるようになっていれば、どのような遮蔽物を用いてもよいし、円形状に放射させる放射線を照射しても良い。また、レンズの形状として円柱形状以外のもの、例えば直方体形状のものを作製する場合は、正方形、長方形の透明部位を有するフォトマスクを用いてもよい。
【0033】
((2)の工程について)
次に、接触させた第2のモノマー108を所定時間放置することによって、第2のモノマー108をポリマーからなる円柱形状の構造体106の外周部から中心部へ向かって屈折率分布が形成されるように拡散させる。ここで、所定時間とは、所望の屈折率分布を有するレンズを得るために要する第2のモノマーの拡散時間である。
【0034】
((4)の工程について)
(2)の工程で、第2のモノマー108を拡散させているときに、注型セルの主面に、屈折率分布をモニタするための光(以下、参照光ということがある)111を照射する。照射された参照光は注型セル内の試料が有する屈折率分布に従って、屈折される。このとき、試料の屈折率分布が変化するにつれて、参照光の屈折のされ方が変化するため、所定の領域に置かれた光強度測定手段112によって測定される光の強度が変化する(図1(e))。例えば、ポリマーの屈折率が、第2のモノマー108を重合した後の屈折率よりも大きい場合、第2のモノマー108の拡散が進むにつれて、焦点距離が無限遠からレンズへと近くなっていく。その結果、所定の領域に置かれた光強度測定手段112で測定される光の強度は大きくなる。
【0035】
一方、ポリマーの屈折率が、第2のモノマー108を重合した後の屈折率よりも小さい場合、第2のモノマー108の拡散が進むにつれて、光の強度は小さくなる。
このようにして、注型セル内の試料の屈折率分布が、所定の領域に置かれた光強度測定手段112によって測定される光の強度によってわかる。
ここで光の強度とは、例えば光の照度(lx)、光の輝度(cd/m)、光の放射照度(W/m)、光の放射輝度(W・sr−1・m−2・Hz−1、W・sr−1・m−3)のいずれかを指す。
【0036】
光の照度と輝度は明るさを、光の放射照度と放射輝度はエネルギー(仕事量)を測定する。
ただし、この参照光は、第1のモノマー104及び第2のモノマー108が光重合性のモノマーである場合、これらのいずれも重合させない光である必要がある。光重合性のモノマーとは、そのモノマーに光を照射すると重合が進行するモノマーを意味する。ここで、重合させない光とは、第1及び第2のモノマーに照射しても、実質的に重合させないような光のことである。実質的に重合させないとは、光の照射が24時間連続して行われても、第1及び第2のモノマーの重合度が10%以下であることを意味する。
【0037】
((5)の工程について)
この工程では、注型セルを透過した参照光の所定の領域での強度を測定する。屈折率分布が変化するにしたがって、測定される光の強度が変化するので、光の強度を通して屈折率分布の変化がリアルタイムでモニタできる。所定の領域での光の強度の測定値が、あらかじめ計算により求めておいた所望の屈折率分布に対応する光の強度に達したときに、次に説明する(3)の工程へ移行する。ここで、所定の領域とは、所望の屈折率分布を有するレンズができる前後で光の強度の変化を検出することのできる位置である。また、所定の領域とは、屈折率分布の変化を検出することのできる領域であればよく、所定の点でもよく、所定の線でもよく、所定の面でもよい。なお、光の強度の測定を容易にし、レンズ全体にわたる屈折率分布形成の様子を容易に検出するために、所定の領域がポリマーからなる円柱形状の構造体106に形成される屈折率分布の対称軸、すなわち形成されるレンズの光軸を含む領域であることが好ましい。
【0038】
((3)の工程について)
この工程では、測定された前記光の強度が所定の値に達したときに、第2のモノマーの拡散を停止させるために放射線の照射と加熱の少なくともいずれか一方を行い、第2のモノマーを重合させ、硬化させる(図1(f))。
【0039】
放射線の照射は、第1のモノマーを重合させるときに用いた放射線を用いることができる。加熱は、オーブン、ホットプレートなどの公知の装置を用いて行うことができる。放射線の照射と加熱のいずれにしても、最終的に得られるレンズの機械的物性や環境安定性が得られるよう、十分に行うことが好ましい。
【0040】
最後に注型セル内から目的物である屈折率分布を有するレンズを得る(図1(g))。
【0041】
なお、本実施形態に係る屈折率分布を有するレンズの製造方法は、上記の工程以外の工程を含んでいてもよい。
【0042】
(屈折率分布から照度を導き出す方法)
ここで、図2を用いて屈折率分布から強度を求める方法を説明する。図2に示すように屈折率分布を有する試料121の中心から半径方向122にx軸をとり、x軸と垂直な方向123にz軸をとる。また、ある位置xにおける屈折率をn(x)、試料の厚みをtとする。なお、入射波面を125、出射波面を126、光線の軌跡を127で示す。
【0043】
いま、位置xに垂直に参照光照射手段から光線124が入射したとする。光線は位置xの屈折率n(x)と、位置xから微小な距離dxだけ離れた位置x+dxの屈折率n(x+dx)によって生じる光路長差dzによって角θ(x)だけ曲がる。このとき次の関係が成り立つ。
【0044】
【数1】

【0045】
【数2】

【0046】
この角θ(x)によって試料を通過した光線はz軸とある位置f(x)で交わる。このとき、次の関係が成り立つ。
【0047】
【数3】

【0048】
ここで、試料を挟んで参照光照射手段と反対側の任意の位置に所定の領域を設け、ここに光強度測定手段112を設置する。入射光を均一な平行光とし、単位面積当たりに一定の光線数を任意に与えて、屈折率分布が形成される領域内に入射した参照光(すべての光線)について光線追跡を行い、所定の領域に置かれた光強度測定手段を通過した光線の数をその位置での光の強度とみなす。拡散の進行に伴う屈折率分布の変化毎に光の強度の導出を行うことで、屈折率分布の変化と光の強度の変化が関係付けられる。
【0049】
例えば、拡散を開始してから経時的に屈折率分布が変化している場合、上記計算により、屈折率分布形成開始からの経過時間と光の強度の関係が得られるため、屈折率分布と光の強度の関係がわかる。そこで、所望の屈折率分布と光の強度の対応関係をあらかじめ上記の方法で計算しておく。実際には測定される光の強度は入射光の強度に依存するので、たとえば入射光の強度との比を計算しておき、実際の測定も所定の領域での光の強度と入射光の強度の比を測定する。また必要に応じて、実際に形成される屈折率分布やレンズを用い、所定の領域での光の強度あるいは所定の領域での光の強度と入射光の強度との比をあらかじめ測定し、較正を行う。
【0050】
入射光の強度がX倍に変化すると、所定の領域で測定される光の強度もX倍に変化するため、入射光の強度が変化しても、所定の領域で測定される光の強度と入射光の強度との比は変化しない。したがって、所定の領域で測定される光の強度の代わりに、所定の領域で測定される光の強度と入射光の強度との比と、レンズの屈折率分布を対応づけることで、入射光の強度が変化した場合でも、所望の屈折率分布を有するレンズができるタイミングを正確に知ることができる。
【0051】
上記のようにして、所望の屈折率分布を有するレンズを、特別な温度管理を必要とすることなく製造することができる。
【0052】
以下、本実施形態に係る屈折率分布を有するレンズの製造方法で使用する材料について説明する。
【0053】
(ポリマー)
本実施形態において、ポリマーからなる円柱形状の構造体のポリマーとしては、以下に挙げる第1のモノマーの重合体を用いることができ、重合体を2種類以上含んだブレンドポリマーでもよい。また、以下に挙げる第1のモノマーの共重合体でもよい。さらに、重合体と共重合体のブレンドポリマーであってもよい。
【0054】
(第1のモノマー)
また、第1のモノマーとしては、ラジカル重合性モノマーまたはカチオン重合性モノマーが例として挙げられる。ラジカル重合性モノマーとしてはアクリロイル基またはメタクリロイル基を1つ以上有する化合物が好ましい。カチオン重合性モノマーとしてはビニルエーテル基、エポキシ基またはオキセタニル基を1つ以上有する化合物が好ましい。
【0055】
アクリロイル基またはメタクリロイル基を1つ有する単官能(メタ)アクリル化合物としては、例えば、
フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシ−2−メチルエチル(メタ)アクリレート、フェノキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、3−フェノキシ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2ーフェニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、4−フェニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、3−(2−フェニルフェニル)−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、エチレンオキシドを反応させたp−クミルフェノールの(メタ)アクリレート、2−ブロモフェノキシエチル(メタ)アクリレート、2,4−ジブロモフェノキシエチル(メタ)アクリレート、2,4,6−トリブロモフェノキシエチル(メタ)アクリレート、エチレンオキサイドやプロピレンオキサイドを複数モル変性させたフェノキシ(メタ)アクリレート、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ボルニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、4−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、アクリロイルモルホリン、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、アミル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、へキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、イソブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、t−オクチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、7−アミノ−3,7−ジメチルオクチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0056】
単官能(メタ)アクリル化合物の市販品としては、例えば、
アロニックスM101、M102、M110、M111、M113、M117、M5700、TO−1317、M120、M150、M156(以上、東亞合成製)、LA、IBXA、2−MTA、HPA、ビスコート#150、#155、#158、#190、#192、#193、#220、#2000、#2100、#2150(以上、大阪有機化学工業製)、ライトアクリレートBO−A、EC−A、DMP−A、THF−A、HOP−A、HOA−MPE、HOA−MPL、PO−A、P−200A、NP−4EA、NP−8EA、エポキシエステルM−600A(以上、共栄社化学製)、KAYARAD TC110S、R−564、R−128H (以上、日本化薬製)、NKエステルAMP−10G、AMP−20G(以上、新中村化学工業製)、FA−511A、512A、513A(以上、日立化成製)、PHE、CEA、PHE−2、PHE−4、BR−31、BR−31M、BR−32(以上、第一工業製薬製)、VP(BASF製)、ACMO、DMAA、DMAPAA(以上、興人製)などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0057】
アクリロイル基またはメタクリロイル基を2つ以上有する多官能(メタ)アクリル化合物としては、例えば、
トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO,PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−へキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロイルオキシ)イソシアヌレート、ビス(ヒドロキシメチル)トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、EO変性2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシ)フェニル)プロパン、PO変性2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシ)フェニル)プロパン、EO,PO変性2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシ)フェニル)プロパン、などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0058】
上記で挙げた第1のモノマーは、単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。なお、上記において、(メタ)アクリレートとはアクリレート及びそれに対応するメタクリレートを意味し、(メタ)アクリロイル基とはアクリロイル基及びそれに対応するメタクリロイル基を意味し、EOはエチレンオキサイドを意味し、EO変性された化合物はエチレンオキサイド基のブロック構造を有するものを意味する。また、POはプロピレンオキサイドを意味し、PO変性された化合物はプロピレンオキサイド基のブロック構造を有するものを意味する。
【0059】
多官能(メタ)アクリル化合物の市販品としては、例えば、
ユピマーUV SA1002、SA2007(以上、三菱化学製)、ビスコート #195、#230、#215、#260、#335HP、#295、#300、#360、#700、GPT、3PA(以上、大阪有機化学工業製)、ライトアクリレート 4EG−A、9EG−A、NP−A、DCP−A、BP−4EA、BP−4PA、TMP−A、PE−3A、PE−4A、DPE−6A(以上、共栄社化学製)、KAYARAD PET−30、TMPTA、R−604、DPHA、DPCA−20、−30、−60、−120、HX−620、D−310、D−330(以上、日本化薬製)、アロニックス M208、M210、M215、M220、M240、M305、M309、M310、M315、M325、M400(以上、東亞合成製)、リポキシVR−77、VR−60、VR−90(以上、昭和高分子製)、などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0060】
ビニルエーテル基を1つ有する化合物としては、例えば、
メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、n−ノニルビニルエーテル、ラウリルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、シクロヘキシルメチルビニルエーテル、4−メチルシクロヘキシルメチルビニルエーテル、ベンジルビニルエーテル、ジシクロペンテニルビニルエーテル、2−ジシクロペンテノキシエチルビニルエーテル、メトキシエチルビニルエーテル、エトキシエチルビニルエーテル、ブトキシエチルビニルエーテル、メトキシエトキシエチルビニルエーテル、エトキシエトキシエチルビニルエーテル、メトキシポリエチレングリコールビニルエーテル、テトラヒドロフリフリルビニルエーテル、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、2−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、4−ヒドロキシメチルシクロヘキシルメチルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、ポリエチレングリコールビニルエーテル、クロルエチルビニルエーテル、クロルブチルビニルエーテル、クロルエトキシエチルビニルエーテル、フェニルエチルビニルエーテル、フェノキシポリエチレングリコールビニルエーテルなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0061】
ビニルエーテル基を2つ以上有する化合物としては、例えば、
エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、ポリエチレングリコールジビニルエーテル、プロピレングリコールジビニルエーテル、ブチレングリコールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、ビスフェノールAアルキレンオキサイドジビニルエーテル、ビスフェノールFアルキレンオキサイドジビニルエーテルなどのジビニルエーテル類;トリメチロールエタントリビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、ジトリメチロールプロパンテトラビニルエーテル、グリセリントリビニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、ジペンタエリスリトールペンタビニルエーテル、ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテル、エチレンオキサイド付加トリメチロールプロパントリビニルエーテル、プロピレンオキサイド付加トリメチロールプロパントリビニルエーテル、エチレンオキサイド付加ジトリメチロールプロパンテトラビニルエーテル、プロピレンオキサイド付加ジトリメチロールプロパンテトラビニルエーテル、エチレンオキサイド付加ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、プロピレンオキサイド付加ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、エチレンオキサイド付加ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテル、プロピレンオキサイド付加ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテルなどの多官能ビニルエーテル類などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0062】
エポキシ基を1つ有する化合物としては、例えば、
フェニルグリシジルエーテル、p−tert−ブチルフェニルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、1,2−ブチレンオキサイド、1,3−ブタジエンモノオキサイド、1,2−エポキシドデカン、エピクロロヒドリン、1,2−エポキシデカン、スチレンオキサイド、シクロヘキセンオキサイド、3−メタクリロイルオキシメチルシクロヘキセンオキサイド、3−アクリロイルオキシメチルシクロヘキセンオキサイド、3−ビニルシクロヘキセンオキサイドなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0063】
エポキシ基を2つ以上有する化合物としては、例えば、
ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビスフェノールSジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールAジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールFジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールSジグリシジルエーテル、エポキシノボラック樹脂、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールFジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールSジグリシジルエーテル、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル−5,5−スピロ−3,4−エポキシ)シクロヘキサン−メタ−ジオキサン、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビニルシクロヘキセンオキサイド、4−ビニルエポキシシクロヘキサン、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシル−3’,4’−エポキシ−6’−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、メチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサン)、ジシクロペンタジエンジエポキサイド、エチレングリコールのジ(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)エーテル、エチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジオクチル、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジ−2−エチルヘキシル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、1,1,3−テトラデカジエンジオキサイド、リモネンジオキサイド、1,2,7,8−ジエポキシオクタン、1,2,5,6−ジエポキシシクロオクタンなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0064】
オキセタニル基を1つ有する化合物としては、例えば、
3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、3−(メタ)アリルオキシメチル−3−エチルオキセタン、(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチルベンゼン、4−フルオロ−〔1−(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル〕ベンゼン、4−メトキシ−〔1−(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル〕ベンゼン、〔1−(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)エチル〕フェニルエーテル、イソブトキシメチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、イソボルニルオキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、イソボルニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、2−エチルヘキシル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、エチルジエチレングリコール(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジシクロペンタジエン(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジシクロペンテニルオキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジシクロペンテニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、テトラヒドロフルフリル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、テトラブロモフェニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、2−テトラブロモフェノキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、トリブロモフェニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、2−トリブロモフェノキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、2−ヒドロキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、2−ヒドロキシプロピル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ブトキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ペンタクロロフェニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ペンタブロモフェニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ボルニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテルなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0065】
オキセタニル基を2つ以上有する化合物としては、例えば、
3,7−ビス(3−オキセタニル)−5−オキサ−ノナン、3,3’−(1,3−(2−メチレニル)プロパンジイルビス(オキシメチレン))ビス−(3−エチルオキセタン)、1,4−ビス〔(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル〕ベンゼン、1,2−ビス[(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]エタン、1,3−ビス[(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]プロパン、エチレングリコールビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジシクロペンテニルビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、トリエチレングリコールビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、テトラエチレングリコールビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、トリシクロデカンジイルジメチレン(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、トリメチロールプロパントリス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、1,4−ビス(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)ブタン、1,6−ビス(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)ヘキサン、ペンタエリスリトールトリス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ペンタエリスリトールテトラキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ポリエチレングリコールビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジペンタエリスリトールペンタキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジペンタエリスリトールテトラキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールペンタキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジトリメチロールプロパンテトラキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、EO変性ビスフェノールAビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、PO変性ビスフェノールAビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、EO変性水添ビスフェノールAビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、PO変性水添ビスフェノールAビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、EO変性ビスフェノールF(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル等の多官能オキセタンなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0066】
なお、完全硬化後の機械的強度の面などから、第1のモノマー成分は、単官能モノマーと多官能モノマーとを併用して用いることが好ましい。
【0067】
なお、シリンジによる注入、吸出し等、取り扱いが容易であるため、第1のモノマーは液状であることが好ましい。
【0068】
(放射線重合開始剤)
前記放射線重合開始剤は、第1のモノマーがラジカル重合性モノマーの場合は感放射線ラジカル発生剤であり、第1のモノマーがカチオン重合性モノマーの場合は感放射線酸発生剤であることが好ましい。なお、感放射線ラジカル発生剤とは、赤外線、可視光線、紫外線、遠紫外線、X線、電子線等の荷電粒子線など、放射線の照射により化学反応を生じ、ラジカルを生成し、ラジカル重合を開始できる化合物である。このような化合物としては、例えば、
2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジ(メトキシフェニル)イミダゾール二量体、2−(o−フルオロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(o−又はp−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体等のような置換されていてもよい2,4,5−トリアリールイミダゾール二量体;
ベンゾフェノン、N,N′−テトラメチル−4,4′−ジアミノベンゾフェノン(ミヒラーケトン)、N,N′−テトラエチル−4,4′−ジアミノベンゾフェノン、4−メトキシ−4′−ジメチルアミノベンゾフェノン、4−クロロベンゾフェノン、4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノンのようなベンゾフェノン誘導体;
2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1−オン、及び2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルホリノ−プロパン−1−オンなどの芳香族ケトン誘導体;
2−エチルアントラキノン、フェナントレンキノン、2−t−ブチルアントラキノン、オクタメチルアントラキノン、1,2−ベンズアントラキノン、2,3−ベンズアントラキノン、2−フェニルアントラキノン、2,3−ジフェニルアントラキノン、1−クロロアントラキノン、2−メチルアントラキノン、1,4−ナフトキノン、9,10−フェナンタラキノン、2−メチル−1,4−ナフトキノン、2,3−ジメチルアントラキノン等のキノン類;
ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインフェニルエーテル等のベンゾインエーテル誘導体;
ベンゾイン、メチルベンゾイン、エチルベンゾイン、プロピルベンゾインなどのベンゾイン誘導体;
ベンジルジメチルケタール等のベンジル誘導体;
9−フェニルアクリジン、1,7−ビス(9,9′−アクリジニル)ヘプタンなどのアクリジン誘導体;
N−フェニルグリシンなどのN−フェニルグリシン誘導体;
アセトフェノン、3−メチルアセトフェノン、アセトフェノンベンジルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノンなどのアセトフェノン誘導体;
チオキサントン、ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントンなどのチオキサントン誘導体:
キサントン、フルオレノン、べンズアルデヒド、フルオレン、アントラキノン、トリフェニルアミン、カルバゾール、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、
2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキシド
などが挙げられるが、これらに限定されない。これらは、単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0069】
感放射線ラジカル発生剤の市販品としては、例えば、Irgacure184、369、651、500、819、907、784、2959、CGI−1700、−1750、−1850、CG24−61、Darocur l116、1173(以上、チバ・ジャパン製)、Lucirin TPO、LR8893、LR8970(以上、BASF製)、ユベクリルP36(UCB製)などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0070】
感放射線酸発生剤とは、赤外線、可視光線、紫外線、遠紫外線、X線、電子線等の荷電粒子線など、放射線の照射により化学反応を生じ、酸を生成し、カチオン重合を開始できる化合物である。このような化合物としては、例えば、オニウム塩化合物、スルホン化合物、スルホン酸エステル化合物、スルホンイミド化合物、ジアゾメタン化合物などが挙げられるが、これらに限定されない。本発明ではオニウム塩化合物を用いることが好ましい。
【0071】
オニウム塩化合物としては、例えば、
ヨードニウム塩、スルホニウム塩、ホスホニウム塩、ジアゾニウム塩、アンモニウム塩、ピリジニウム塩等を挙げることができる。オニウム塩化合物の具体例としては、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムパーフルオロ−n−ブタンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウム2−トリフルオロメチルベンゼンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムピレンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムn−ドデシルベンゼンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムp−トルエンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムベンゼンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウム10−カンファースルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムn−オクタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムパーフルオロ−n−ブタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、ジフェニルヨードニウム2−トリフルオロメチルベンゼンスルホネート、ジフェニルヨードニウムピレンスルホネート、ジフェニルヨードニウムn−ドデシルベンゼンスルホネート、ジフェニルヨードニウムp−トルエンスルホネート、ジフェニルヨードニウムベンゼンスルホネート、ジフェニルヨードニウム10−カンファースルホネート、ジフェニルヨードニウムn−オクタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムパーフルオロ−n−ブタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、トリフェニルスルホニウム2−トリフルオロメチルベンゼンスルホネート、トリフェニルスルホニウムピレンスルホネート、トリフェニルスルホニウムn−ドデシルベンゼンスルホネート、トリフェニルスルホニウムp−トルエンスルホネート、トリフェニルスルホニウムベンゼンスルホネート、トリフェニルスルホニウム10−カンファースルホネート、トリフェニルスルホニウムn−オクタンスルホネート、ジフェニル(4−t−ブチルフェニル)スルホニウムパーフルオロ−n−ブタンスルホネート、ジフェニル(4−t−ブチルフェニル)スルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、ジフェニル(4−t−ブチルフェニル)スルホニウム2−トリフルオロメチルベンゼンスルホネート、ジフェニル(4−t−ブチルフェニル)スルホニウムピレンスルホネート、ジフェニル(4−t−ブチルフェニル)スルホニウムn−ドデシルベンゼンスルホネート、ジフェニル(4−t−ブチルフェニル)スルホニウムp−トルエンスルホネート、ジフェニル(4−t−ブチルフェニル)スルホニウムベンゼンスルホネート、ジフェニル(4−t−ブチルフェニル)スルホニウム10−カンファースルホネート、ジフェニル(4−t−ブチルフェニル)スルホニウムn−オクタンスルホネート、トリス(4−メトキシフェニル)スルホニウムパーフルオロ−n−ブタンスルホネート、トリス(4−メトキシフェニル)スルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、トリス(4−メトキシフェニル)スルホニウム2−トリフルオロメチルベンゼンスルホネート、トリス(4−メトキシフェニル)スルホニウムピレンスルホネート、トリス(4−メトキシフェニル)スルホニウムn−ドデシルベンゼンスルホネート、トリス(4−メトキシフェニル)スルホニウムp−トルエンスルホネート、トリス(4−メトキシフェニル)スルホニウムベンゼンスルホネート、トリス(4−メトキシフェニル)スルホニウム10−カンファースルホネート、トリス(4−メトキシフェニル)スルホニウムn−オクタンスルホネートなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0072】
スルホン化合物としては、例えば、β−ケトスルホン、β−スルホニルスルホンや、これらのα−ジアゾ化合物等を挙げることができる。スルホン化合物の具体例としては、フェナシルフェニルスルホン、メシチルフェナシルスルホン、ビス(フェニルスルホニル)メタン、4−トリスフェナシルスルホンなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0073】
スルホン酸エステル化合物としては、例えば、アルキルスルホン酸エステル、ハロアルキルスルホン酸エステル、アリールスルホン酸エステル、イミノスルホネート等を挙げることができる。スルホン酸エステル化合物の具体例としては、α−メチロールベンゾインパーフルオロ−n−ブタンスルホネート、α−メチロールベンゾイントリフルオロメタンスルホネート、α−メチロールベンゾイン2−トリフルオロメチルベンゼンスルホネートなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0074】
スルホンイミド化合物の具体例としては、N−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)スクシンイミド、N−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)フタルイミド、N−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)ジフェニルマレイミド、N−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)−7−オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−5,6−オキシ−2,3−ジカルボキシイミド、N−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)ナフチルイミド、N−(10−カンファースルホニルオキシ)スクシンイミド、N−(10−カンファースルホニルオキシ)フタルイミド、N−(10−カンファースルホニルオキシ)ジフェニルマレイミド、N−(10−カンファースルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(10−カンファースルホニルオキシ)−7−オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(10−カンファースルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−5,6−オキシ−2,3−ジカルボキシイミド、N−(10−カンファースルホニルオキシ)ナフチルイミド、N−(4−メチルフェニルスルホニルオキシ)スクシンイミド、N−(4−メチルフェニルスルホニルオキシ)フタルイミド、N−(4−メチルフェニルスルホニルオキシ)ジフェニルマレイミド、N−(4−メチルフェニルスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(4−メチルフェニルスルホニルオキシ)−7−オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(4−メチルフェニルスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−5,6−オキシ−2,3−ジカルボキシイミド、N−(4−メチルフェニルスルホニルオキシ)ナフチルイミド、N−(2−トリフルオロメチルフェニルスルホニルオキシ)スクシンイミド、N−(2−トリフルオロメチルフェニルスルホニルオキシ)フタルイミド、N−(2−トリフルオロメチルフェニルスルホニルオキシ)ジフェニルマレイミド、N−(2−トリフルオロメチルフェニルスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(2−トリフルオロメチルフェニルスルホニルオキシ)−7−オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(2−トリフルオロメチルフェニルスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−5,6−オキシ−2,3−ジカルボキシイミド、N−(2−トリフルオロメチルフェニルスルホニルオキシ)ナフチルイミド、N−(4−フルオロフェニルスルホニルオキシ)スクシンイミド、N−(4−フルオロフェニル)フタルイミド、N−(4−フルオロフェニルスルホニルオキシ)ジフェニルマレイミド、N−(4−フルオロフェニルスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(4−フルオロフェニルスルホニルオキシ)−7−オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(4−フルオロフェニルスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−5,6−オキシ−2,3−ジカルボキシイミド、N−(4−フルオロフェニルスルホニルオキシ)ナフチルイミドなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0075】
ジアゾメタン化合物の具体例としては、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(シクロヘキシルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(フェニルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(p−トルエンスルホニル)ジアゾメタン、メチルスルホニルp−トルエンスルホニルジアゾメタン、(シクロヘキシルスルホニル)(1,1−ジメチルエチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(1,1−ジメチルエチルスルホニル)ジアゾメタンなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0076】
これらの感放射線酸発生剤のうち、オニウム塩化合物が好ましい。本実施形態において、感放射線酸発生剤は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
【0077】
感放射線重合開始剤を注入する量としては、第1のモノマーの全量に対して、0.01質量%以上10質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以上3質量%以下であることがされに好ましい。これは、0.01質量%未満であると、第1のモノマーの重合速度が低下して反応効率が低くなるおそれがあるからである。一方、10質量%を超えると、第1のモノマーの重合特性及び取り扱い性や、得られるポリマーの力学特性及び光学特性の点で劣るおそれがある。
【0078】
(光増感剤)
第1のモノマーと同時に光増感剤を添加することにより、第1のモノマーが放射線によって重合する物質であった場合、より少ない露光量で第1のモノマーの重合することが可能となる。ここで、光増感剤は、特定の波長の光を吸収することにより励起され、放射線重合開始剤と相互作用をする性質のある化合物である。例えば、クマリン誘導体、ベンゾフェノン誘導体、チオキサントン誘導体、アントラセン誘導体、カルバゾール誘導体、ペリレン誘導体などが挙げられるが、これらに限定されない。ここでいう相互作用には、励起状態の光増感剤からのエネルギー移動や電子移動などがある。光増感剤成分の露光波長に対するモル吸光係数は感放射線重合開始剤成分のモル吸光係数よりも大きいことが好ましい。
【0079】
(粒子)
本実施形態で使用される粒子を構成する材料は、上記放射線及び上記参照光に対して透明で、第1のモノマー中に均一に分散可能であれば特に限定されず、有機材料、無機材料、あるいは有機−無機複合材料を用いることができる。また、粒子はその表面が修飾されていてもよい。
【0080】
このような粒子を構成する材料としては、例えば、
酸化チタン(TiO)、水酸化チタン、酸化ジルコニウム(ZrO)、酸化タンタル(Ta)、酸化アルミニウム(Al)、酸化ニオブ(Nb)、酸化スズ(SnO)、酸化アンチモン(Sb)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化珪素(SiO)、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化インジウム(In)、酸化ランタン(La)、酸化ガドリニウム(Gd)、酸化ハフニウム(HfO)、酸化エルビウム(Er)、酸化ネオジウム(Nd)、酸化セリウム(CeO)、酸化ジスプロシウム(Dy)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化鉄(Fe)、水酸化鉄(Fe(OH))、酸化ガリウム(Ga)、水酸化ガリウム(Ga(OH))、とこれらの混合酸化物、混合水酸化物などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。安定性の観点から、好ましくは酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化ニオブ、酸化スズ、酸化亜鉛、酸化ケイ素、酸化インジウム、酸化ジルコニウム、酸化タンタル、酸化ランタン、酸化ガドニウム、酸化ハフニウム、酸化エルビウム、酸化ネオジウム、酸化セリウム、酸化ジスプロシウムと、これらの混合酸化物、水酸化物を使用する。
【0081】
なお、粒子の粒径が大きい場合、放射線及び参照光が散乱されるので、放射線及び参照光の波長よりも十分に小さい粒子を使用することが好ましい。また、得られるレンズを光学レンズのように透明性を必要とするような用途とする場合も、粒径が大きいと光散乱の影響で透過率が低下するおそれがある。したがって、本実施形態で使用される粒子の平均粒径は、50nm以下であることが好ましく、20nm以下であることがさらに好ましい。また、本実施形態で使用される粒子の平均粒径は、1nm以上であることが好ましい。
【0082】
粒子を第1のモノマーに均一に分散させるために、粒子を作製する時に表面を化学修飾、または粒子を作成した後に分散剤を添加する等の処理を行うことが好ましい。また、粒子は単独でも、混合体でも、複合体でも使用できる。また、酸化チタンのように光触媒活性のあるものは、その反応により樹脂が分解されるのを防止するために、必要に応じケイ素化合物等で表面をコーティングするなどの処理を施すこともある。
【0083】
注入する粒子の量は、最終的に得られるレンズの目標とする光学性能や機械的特性によって異なる。また、使用する粒子や第1のモノマーの種類によっても異なるが、第1のモノマー成分に対して1質量%以上50質量%以下程度が好ましい。また、分散される粒子は単一種には限定されず、複数種の粒子であってもよい。
【0084】
(第2のモノマー)
本実施形態において、第2のモノマーは、第2のモノマーを重合前及び重合後の屈折率が前記ポリマーの屈折率と異なるモノマーを用いる限り、上記、(第1のモノマー)の項で挙げたモノマーの中から選ぶことができる。すなわち、第1のモノマーを重合して得られるポリマーと第2のモノマー、第1のモノマーを重合して得られるポリマーと第2のモノマーを重合して得られるポリマーとは屈折率が異なる必要がある。また、第2のモノマーを注型セルに注入するときに放射線重合開始剤、微粒子、光増感剤、熱重合開始剤などを同時に注入してもよく、これらは上記の放射線重合開始剤、微粒子、光増感剤、熱重合開始剤を選択することができる。
【0085】
なお、シリンジによる注入、吸出し等取り扱いが容易であるため第2のモノマーは液状であることが好ましい。
【0086】
(第2の実施形態)
第2の実施形態に係る屈折率分布を有するレンズの製造方法は、以下の各工程を有する。
(i)ポリマーからなる、立方体または直方体形状の構造体の、第1の面と前記第1の面の裏の第2の面に、重合前及び重合後の屈折率が前記ポリマーの屈折率と異なるモノマーを接触させる第1の工程
(ii)接触させた前記モノマーを所定時間放置することによって、前記モノマーを前記第1の面及び前記第2の面から中央部へ向かって濃度分布が形成されるように拡散させる第2の工程
(iii)前記モノマーを重合させる第3の工程と、
そして、以下の(iv)(v)の工程をさらに有し、(v)の工程で測定された光の強度が所定の値に達したときに、前記第3の工程を開始することを特徴とする。
(iv)前記第2の工程で前記モノマーを拡散させているときに、前記構造体の前記第1の面及び前記第2の面以外のいずれかの面に、前記モノマーを重合させない光を照射する工程
(v)前記構造体を透過した前記光の強度を所定の領域で測定する工程
以下、第2の実施形態と第1の実施形態との違いについて説明し、共通のことに関しては説明を省略する。図3(a)(b)はいずれも注型セル141(ガスケット142を2枚の光学ガラス143で挟んで構成される)を光学ガラス143の主面方向から見た図である。図3では、注型セル141の内部の構成がわかるように、光学ガラス143の一部のみを表示している。
【0087】
本実施形態ではまず、注型セル141の中に、ポリマー(第1のモノマーの重合体)144からなる、立方体または直方体形状の構造体を配置する。そして、図3(a)に示すように、この構造体の有する任意の面(第1の面145)とその裏の面(第2の面146)から、重合前及び重合後の屈折率が前記ポリマーの屈折率と異なる第2のモノマー147を接触させる。すると、モノマーが第1の面及び第2の面から中央部にかけて、屈折率分布が形成されるように拡散させる(図3(b))。拡散しているときに、第1の面及び第2の面以外のいずれかの面に対して、モノマーを重合させない光を照射する。照射された光は、構造体を透過し、光の強度測定手段を用いて、所定の領域での光の強度が検出される。光の強度が所定の値に達したときに第2のモノマーの重合を開始して第2のモノマーの拡散を停止させる。このような工程を経ることによって、いわゆる平板状のシリンドリカルレンズを得ることができる。
【0088】
(第3の実施形態)
本発明の第3の実施形態では屈折率分布を有するレンズの製造装置について説明するが、本発明はこれに限定されない。レンズの製造装置の装置構成の一例を図6に示し、処理の流れの一例を図7のフローチャートに示す。
【0089】
本実施形態では図6に示すように、注型セル103を挟んで参照光照射手段131と光強度測定手段112を配置する。さらに、光強度測定手段112と鏡135とを制御手段134を介して接続する。制御手段134は鏡135と接続している。また、133は重合開始手段であり、ここでは図6のように放射線を照射する放射線照射手段として表している。
【0090】
光強度測定手段112の位置は光照射手段131とレンズを挟んで反対側であり、注型セル103を透過した光の強度の変化を検出できる位置であればどこでも良い。なお、光の強度の測定を容易にするために、光強度測定手段112の位置は、レンズの光軸上に位置することが好ましい。
【0091】
必要に応じて、光照射手段131と注型セル103または/及び注型セルと光強度測定手段112の間に光線軌道が既知である光学素子や絞り、フィルターなどを挿入しても良い。
【0092】
光強度測定手段112の光の強度の測定値が所定の値となった時、制御手段134によって鏡を制御し、注型セルに放射線110を照射する。図6では例として、鏡135の回転を制御する事で放射線の光路を変更し、参照光111と放射線110を切り替える方法での装置構成を示した。
【0093】
次に本実施形態に係るレンズの製造装置の各部位について説明する。
【0094】
(注型セル)
上記した注型セルと同じものを使用できる。
【0095】
(光照射手段)
光照射手段から照射される光(以下、参照光ということもある)は注型セルを透過し、第1および第2のモノマーが感度を有さない波長の光を用いる。光の波長により屈折角が異なることから、特に単色光を用いることが好ましい。なお、用いる光のコヒーレンスは問わない。注型セルを透過した後の参照光の強度の測定を容易にするため、光照射手段から発せられる光の強度が、少なくともレンズ内において、均一であることが好ましい。また前記の理由で、光照射手段から発せられる光線は、少なくともレンズ内において、レンズの光軸に対して平行であることが好ましい。光照射手段としては太陽光のような自然光の他、白熱電球、蛍光灯、発光ダイオード、レーザー光源など公知な方法で得られる光を使用することができる。この際、フィルターなどを用いて光の強度の測定に必要な波長の光を取り出すことが好ましい。
【0096】
(光強度測定手段)
光強度測定手段としては、光の明るさを測定する照度計や輝度計、光のエネルギーを測定する放射照度計や分光放射照度計などが挙げられる。また、CCDイメージセンサやCMOSイメージセンサ等に代表される撮像手段、太陽電池等の光電変換素子を使用することもできる。また、測定精度向上のため、光測定部位(光強度測定手段の受光部)にアパーチャを適用することが好ましい。
【0097】
(重合開始手段)
重合開始手段としては、第2のモノマーを重合させることができればどのような手段でもよく、放射線照射手段でもよいし、加熱する手段でもよい。放射線照射手段としては、上記したものを用いることができる。
【0098】
(制御手段)
光強度測定手段の測定値を受け取り、前記所望の屈折率分布による強度と比較を行う。測定値が前記強度に達した時に前記重合開始手段(ここでは放射線照射手段とする)を制御して重合開始工程へ移行する。前記所望の屈折率分布による光の強度の導出は、制御手段に組み込んでも良いし、別個に導出した後、情報処理を行う手段に入力しても良い。情報処理を行う手段としてはコンピュータ、アナログまたは/及びデジタル回路で構成された制御回路などが挙げられる。放射線照射手段の制御は図6に示したような鏡135やシャッターなどを用いて光路の変更をする方法や、スイッチによる光照射手段の切り替え、光照射手段と放射線照射手段の位置を入れ替える方法が挙げられる。
【0099】
(第4の実施形態)
本発明の第4の実施形態では光学装置の製造方法について説明するが、本発明はこれに限定されない。
【0100】
本実施形態に係る光学装置の製造方法は、以下の各工程を有する。
(a)レンズを設ける工程
(b)(a)で設けたレンズを透過した光を撮像する撮像手段を設ける工程
そして、前記レンズは、本発明に係るレンズの製造方法によって製造することを特徴とする。
【0101】
ここで、レンズの製造方法については、上記の実施形態と同様のことがいえるので記載を省略する。また、撮像手段としては、CCD(Charge Coupled Device)イメージセンサ、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサなどが挙げられる。
なお、本実施形態に係る光学装置の製造方法は上記以外の工程を有していてもよい。
【0102】
本発明に係るレンズの製造方法によって得られたレンズは、光学装置としての原稿読取装置の結像素子に用いることができる。また、本実施形態に係る光学装置としては他にカメラなどが挙げられる。
【実施例】
【0103】
本実施例では、本発明に係る屈折率分布を有するレンズの製造方法の一例を示すが、本発明はこれに限らない。
【0104】
まず、ベンジルメタクリレート(共栄社化学製)75重量部、平均粒径7nmの酸化ジルコニウム(住友大阪セメント製)25重量部、光ラジカル発生剤(イルガキュア184、チバ・ジャパン製)0.1重量部、からなる重合性組成物(A1)を調製した。
【0105】
次に、テトラフルオロプロピルメタクリレート(大阪有機化学製)72重量部、メチルメタクリレート(シグマ・アルドリッチ・ジャパン製)18重量部及びトリメチロールプロパントリアクリレート(シグマ・アルドリッチ・ジャパン製)10重量部、光ラジカル発生剤(イルガキュア184、チバ・ジャパン製)0.1重量部、からなる重合性組成物(B2)を調製した。
【0106】
そして、直径70mm、厚さ5mmの2枚の円盤状の光学ガラスに、離型剤としてダイフリーエアゾールタイプGA−6010(ダイキン工業製)をスプレーコートし、光学機器用クリーニングクロスで余剰の離型剤を拭き取った。さらに、直径35mm、太さ1.5mmのフッ素系ゴムの円型のOリングを、前記の2枚の光学ガラス間の中央部に挟み、バネつきクリップで2箇所向かい合わせの位置で固定して、注型セルとした。ディスポシリンジを用いて、重合性組成物(A1)を注型セル内に、気泡が残留しないよう注意しながら注入した。
【0107】
モノマーを重合させるために前記注型セルに放射線を照射した。重合させるための放射線照射手段として、250W超高圧水銀ランプを備えたUV光源EX250(HOYA CANDEO OPTRONICS CORPORATION社製)を用いた。遮蔽物として、中心部に20mm径の円状の透明部位を有する直径50mmのフォトマスクを準備した。前記フォトマスクの遮光材はクロムであり、母材は石英であり、波長365nmにおいて遮光部位の透過率は0.01%以下であり、透明部位の透過率は98%である。光源と遮光物(フォトマスク)との間に、紫外透過可視吸収フィルター(UTVAF−50S−36U)及びフロスト型拡散板(DFSQ1−50C02−800)(いずれもシグマ光機製)を介した。注型セルの照射側の光学ガラス表面における照度は、波長365nmにおいて30mW/cmであった。この照度で50秒間照射を行った。
【0108】
次に、シリンジ針に空のディスポシリンジを取り付け、未硬化の重合性組成物(A1)を吸い出した。次に、シリンジ針に、重合性組成物(B2)が充填されたディスポシリンジを取り付け、重合性組成物(B2)を注型セル内にすみやかに注入した。
【0109】
重合性組成物(B2)を注入した注型セルを、すみやかに光線追跡型屈折率分布測定装置(Index Profile Analyzer:IPA5−C、株式会社アドヴァンストテクノロジ社製)に設置した。
【0110】
重合性組成物(B2)を注入してから5分後、30分後の波長524.3nmにおける屈折率分布を測定した。以後60分、90分・・・、と注入してから480分が経過するまで30分間隔で測定を行った。その結果を図4に示す(見易さのため、5分、120分、240分、360分、480分が経過した時の屈折率分布プロファイルを抜粋して示した)。
【0111】
480分が経過した時点の測定を終えたあと、速やかに全面に放射線を照射し、重合を開始した。このとき、光学ガラス表面における照度は、波長365nmにおいて30mW/cmであった。この照度で2時間照射を行った。
【0112】
(拡散時間と照度の関係の導出)
上述したレンズの製造方法において、以下のようにすれば、所望の屈折率分布を有するレンズを得ることができる。
【0113】
まず、図4に示した各レンズの屈折率分布プロファイルと、光強度測定手段の光検出面を通過する光線の数との対応関係について、計算を行った。この計算により得られた、重合性組成物(B2)の注入を開始してからの経過時間、すなわち拡散の時間と光検出面を通過する光線の数の関係を図5に示す。なお、計算の際、レンズを有限要素に分割した。分割幅は(式1)におけるdxに相当し、dx=0.033[mm]とした。また、レンズの厚みをt=1.5[mm]とした。光はレンズに対して垂直に入射したものとした。光強度測定手段はレンズの光軸上でレンズから340mm離れた位置に置いたものと仮定した。光強度測定手段に適用したアパーチャの半径、すなわち光検出面の半径を0.5mmとした。
【0114】
図5から、例えば、図4の360分経過の屈折率分布プロファイルを有するレンズを得ようとする場合、次のような手順をふめばよい。すなわち、拡散を開始してから360分経過時の、光検出面を通過する光線の数は図5より310である事が分かる。したがって、上記のようにレンズ厚と光強度測定手段の位置を定めれば、光線の数が310に達したときに重合を開始、すなわち放射線照射手段を用いて注型セル全面に紫外線を照射し重合性組成物(B2)を重合することで、図4の360分経過時の屈折率分布を有するレンズが得られる。
【0115】
なお、光線の数を測定する手段として具体的には照度計、放射照度計などがあり、光検出面を通過する光線の数は、照度として測定される。光検出面を通過する光線の数と照度の対応関係は、たとえば注型セルに入射する参照光の照度(光検出面を通過する光線の数)と所定の領域における照度(光検出面を通過する光線の数)との比をもとめることで得られる。
【符号の説明】
【0116】
101 透明な基材
102 ガスケット
103 注型セル
104 第1のモノマー
105 フォトマスク
106 ポリマーからなる円柱形状の構造体
107 空隙
108 第2のモノマー
109 屈折率分布を有するレンズ
110 放射線
111 参照光
112 照度測定手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマーからなる構造体に、重合前及び重合後の屈折率が前記ポリマーの屈折率と異なるモノマーを接触させる第1の工程と、
接触させた前記モノマーを前記構造体内に拡散させる第2の工程と、
前記モノマーを重合させる第3の工程と、を有する屈折率分布を有するレンズの製造方法において、
前記第2の工程で、前記構造体の有する面のうち、前記モノマーを拡散させる方向に対して平行な面の50%以上に光を照射し、前記構造体を透過した前記光の強度を所定の領域で測定する工程を有し、
測定された前記光の強度が所定の値に達したときに、前記第3の工程を開始することを特徴とする屈折率分布を有するレンズの製造方法。
【請求項2】
前記ポリマーからなる構造体が、円柱形状であり、
前記第1の工程が、前記円柱形状の構造体の外周部に、重合前及び重合後の屈折率が前記ポリマーの屈折率と異なるモノマーを接触させる工程であり、
前記第2の工程が、前記モノマーを前記円柱形状の構造体の外周部から中心部へ向かって屈折率分布が形成されるように拡散させる工程であり、
前記光を照射する工程が、前記円柱形状の構造体の一方の平面の50%以上に、光を照射する工程であることを特徴とする請求項1に記載の屈折率分布を有するレンズの製造方法。
【請求項3】
前記所定の領域が、前記屈折率分布を有するレンズの光軸上であることを特徴とする請求項1に記載の屈折率分布を有するレンズの製造方法。
【請求項4】
レンズを設ける工程と、
前記レンズを透過した光を撮像する撮像手段を設ける工程と、
を有する光学装置の製造方法において、
前記レンズは、請求項1に記載の方法によって製造することを特徴とする光学装置の製造方法。
【請求項5】
ポリマーからなる構造体に、重合前及び重合後の屈折率が前記ポリマーの屈折率と異なるモノマーを接触させ、接触させた前記モノマーを所定時間放置することによって、前記モノマーの濃度分布が形成されるように前記モノマーを拡散させた後に、前記モノマーを重合させることで屈折率分布を有するレンズを製造する、レンズの製造装置において、
前記モノマーを拡散させているときに、前記構造体の有する面のうち、前記モノマーを拡散させる方向に対して平行な面の50%以上に光を照射する光照射手段と、
前記構造体を透過した前記光の強度を所定の領域で測定する光強度測定手段と、
測定された前記光の強度が所定の値に達したときに、前記モノマーの重合を開始させる重合開始手段と、を有することを特徴とする屈折率分布を有するレンズの製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−78818(P2012−78818A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−195063(P2011−195063)
【出願日】平成23年9月7日(2011.9.7)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】