説明

レンズメータ

【課題】眼鏡に追従して前後するように付勢された当接板を、任意の位置に容易に固定できるレンズメータを提供する。
【解決手段】当接板を支持し、対向する2つの側壁17,18を有する溝型をなし、装置本体の内部に延伸する移動部材11と、摩擦抵抗体25を保持し、弾性支持体27によって支持される第1のアーム23と、第1のアーム23に対して回動軸21を中心に回動可能に接続され、摩擦抵抗体26を保持する第2のアーム24と、受光部に配置した当接板係止スイッチによって動作し、第2のアーム24を回動させて摩擦抵抗体25,26を移動部材11の側壁17,18に圧接するアクチュエータ29とを有する係止機構12を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズの光学特性を測定するレンズメータに関する。
【背景技術】
【0002】
眼鏡フレームに入ったレンズの光学特性を測定できるレンズメータは、眼鏡フレームに当接して装置の前後方向に位置決めする当接板を備える。
【0003】
特許文献1には、レンズメータに対してレンズを容易に位置決めできるように、当接板を付勢し、当接板が眼鏡に追従して前後に移動するようにしたレンズメータが記載されている。
【0004】
眼鏡は左右一対のレンズを有しているので、左右のレンズを入れ換えて測定する場合には、当接板を固定することで奥行き方向の位置決めを省略することができる。
【0005】
当接板を保持して前後に移動する移動部材が当接板の後方の装置本体の内部に延伸していることから、従来のレンズメータでは、装置本体の当接板の後方の側部に、移動部材を押圧して当接板の前後移動を係止する機構の操作部材を設ける必要があった。
【0006】
しかしながら、当接板を係止するためには、眼鏡から手を離して装置本体の側部に手を伸ばす必要があり、当接板を係止するまでの間に、当接板が付勢力によって移動してしまうという問題があった。
【特許文献1】特開2005−214952号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、前記問題点に鑑みて、本発明は、眼鏡に追従して前後するように付勢された当接板を、任意の位置に容易に固定できるレンズメータを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、本発明によるレンズメータは、装置本体と、前記装置本体に設けられ、測定光を投光する投光部と、前記装置本体に設けられ、前記測定光を受光する受光部と、前記投光部と前記受光部との間で眼鏡を位置決めする当接板を支持し、一端が前記装置本体の内部に延伸し、前記装置本体内への延伸方向前後に移動可能な移動部材と、前記装置本体内部に支持されたアクチュエータによって、前記移動部材に摩擦抵抗体を圧接し、前記移動体の移動を摩擦力により係止できる係止機構とを有し、前記投光部または前記受光部に、前記アクチュエータを動作させる当接板係止スイッチを設けたものとする。
【0009】
この構成によれば、オペレータは、眼鏡を当接板に押し当てながらレンズの光学中心を装置に対して位置決めした状態で、眼鏡から手を離して装置の後方に手を回すことなく当接板を固定することができ、眼鏡の左右を入れ替えたときに前後方向には再度位置決めをしなくてもよい。
【0010】
また、本発明のレンズメータにおいて、前記移動部材は、対向する2つの側壁を有する溝型をなし、前記係止機構は、前記側壁の内側に2つの前記摩擦抵抗体を保持し、前記2つの摩擦抵抗体を前記2つの側壁にそれぞれ押圧するものとしてもよい。
【0011】
この構成によれば、当接板を固定したときに、移動部材を案内する機構に負荷がかからない。
【0012】
また、本発明のレンズメータにおいて、前記2つの摩擦抵抗体は、1つの回動軸を中心に互いに回動可能な第1および第2のアーム上にそれぞれ保持され、前記第1のアームは、保持している前記摩擦抵抗体が前記側壁から離間するように、弾性変形可能な弾性支持体によって支持され、前記アクチュエータは、前記第2のアームを駆動し、前記第2のアーム上の前記摩擦抵抗体を前記回動軸に対して回動させて前記側壁に圧接すると共に、前記回動軸を前記第2のアーム上の前記摩擦抵抗体に対して回動させて前記第1のアームを移動させることで前記弾性支持体を弾性変形させて前記第1のアーム上の前記摩擦抵抗体を前記側壁に圧接するものとしてもよい。
【0013】
この構成によれば、アクチュエータを移動体の外側に配置できるので、移動部材や係止機構を小さくできる。また、弾性支持体によって、非係止時には移動部材に摩擦力を作用させないようにしながら、係止時には移動体の側壁に均等な摩擦力を作用させられる。
【0014】
また、本発明のレンズメータは、前記第1および第2のアームを、前記2つの摩擦抵抗体の間隔を狭めるように付勢する付勢部材を有してもよい。
【0015】
この構成によれば、単動式の原点復帰機能のないアクチュエータを用いることができる。
【0016】
また、本発明のレンズメータにおいて、前記アクチュエータは、ソレノイドアクチュエータであってもよい。
【0017】
この構成によれば、アクチュエータが安価であり、当接板係止スイッチと電気的に連動させることが容易である。
【発明の効果】
【0018】
本発明のレンズメータは、装置の後方に手を回すことなく、受光部に設けた当接板係止スイッチによって係止機構を駆動して、当接板をその場に固定できるので、眼鏡の左右を入れ替える際に、前後方向に位置決めをやり直す必要がない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
これより、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の一つの実施形態であるレンズメータ1を示す。レンズメータ1は、装置本体2の上部から前方に突出し、内部に測定光を投光する光学系を備える投光部3と、投光部3の下方で測定光を受光する光学系を備える受光部4とを有する。
【0020】
図2に示すように、レンズメータ1は、受光部4の上に、測定対象である被検レンズ5を支持する支持部材6が配置され、投光部3と受光部4との間に、被検レンズ5を支持部材6の上に押さえつける押さえ部材7と、被検レンズ5に印点を行う印点装置8とが設けられている。
【0021】
また、図3に示すように、レンズメータ1は、眼鏡9に入れられた被検レンズ5を測定する際に、眼鏡9のフレームに当接して被検レンズ5の位置決めを補助する当接板10が前後移動可能に設けられている。当接板10は、当接板10の後方の装置本体2の内部に延伸し、装置本体2内で前後に摺動するように支持された移動部材11の端部に支持されている。
【0022】
移動部材11は、オペレータが眼鏡9を前後に移動したときに、眼鏡9に追従して前後移動するように、不図示の付勢部材で装置本体2から突出するように付勢されている。また、不図示のプッシュロック機構により、図2に示すように、当接板10を受光部4の後方に退避させた状態に固定できるようにもなっている。さらに、レンズメータ1は、装置本体2の内部に、当接板10を任意の前後位置に固定する係止機構12を有している。
【0023】
投光部3は、測定結果等を表示するモニタ13とモード設定等を行う設定ボタン14とを有する。また、受光部4は、測定値をメモリーするメモリースイッチ15と、係止機構12に移動部材11を係止または係止解除させる当接板係止スイッチ16とを有している。
【0024】
図4および図5に、移動部材11および係止機構12の詳細を示す。移動部材11は、板材を「コ」の型に折り曲げた溝型をなしており、対向する2つの側壁17,18を有している。また、移動部材11は、溝型に形成され、装置本体2内に固定される固定部材19の内側にスライドレール20を介して保持され、スライドレール20に沿って前後方向に移動可能である。
【0025】
係止機構12は、回動軸21を有する蝶番22を介して互いに接続され、相対的に回動可能な第1アーム23および第2アーム24を有する。第1アーム23および第2アーム24は、それぞれ、例えばゴム製の摩擦抵抗体25,26を、側壁17,18の間にそれぞれ対向して保持するように、移動部材11の内側に支持されている。第1アーム23は、固定部材19に固定した弾性変形可能な弾性支持体27によって支持され、保持する摩擦抵抗体25を側壁17から離間させるように保持する。第1アーム23および第2アーム24の先端は、付勢部材28により互いに接近し合うように付勢されている。これにより、第2アーム24に保持された摩擦抵抗体26も、側壁18から離間している。また、第2アーム24は、他端が、回動軸21の反対側の移動部材11の上方にまで延伸し、固定部材19に固定されたソレノイドアクチュエータ29の駆動軸30に接続されている。
【0026】
レンズメータ1では、当接板係止スイッチ16を押すと、ソレノイドアクチュエータ29に通電し、再度当接板係止スイッチ16を押すと、ソレノイドアクチュエータ29の電流を遮断するようになっている。ソレノイドアクチュエータ29は、通電時に駆動軸30を引き込むトルクを発生するが、電流を遮断したときには駆動軸30に力が作用しない(スプリングバックなどの原点復帰のための機構を備えていない)単動式のアクチュエータである。図5では、ソレノイドアクチュエータ29は通電されておらず、付勢部材28の付勢力によって第2アームが回動して駆動軸30を突出させている。このように、ソレノイドアクチュエータ29に通電されない状態では、摩擦抵抗体25,26が移動部材11に当接せず、移動部材11がスライドレール20に沿って自由に水平移動でき、不図示の付勢部材によって装置本体2から突出して当接板10を前方に移動させる。
【0027】
図6に、ソレノイドアクチュエータ29に通電し、係止機構12によって移動部材11を係止している状態を示す。図示するように、ソレノイドアクチュエータ29が駆動軸30を引き込むと、第2アーム24が回動軸21を中心に回動し、摩擦抵抗体26を移動部材11の側壁18に当接させる。すると、第2アーム24は、摩擦抵抗体26を中心に回動し、回動軸21を移動させることにより、弾性支持体27を弾性変形させながら第1アーム23を側壁17に向かって移動させ、摩擦抵抗体25を側壁17に当接させる。
【0028】
こうして、係止機構12は、摩擦抵抗体25および26を、それぞれ、移動部材11の側壁17,18に略均等な力で圧接するので、スライドレール20に負荷を与えることなく、摩擦力によって移動部材11の移動を係止することができる。
【0029】
以上のように、本実施形態のレンズメータ1では、オペレータは、当接板10に眼鏡9押し当てながら左右いずれかの被検レンズ5を位置決めした状態で、手を大きく移動させることなく、当接板係止スイッチ16を押すことにより、係止機構12を動作させて当接板10を固定することができる。このため、オペレータが眼鏡9から手を離して係止機構12を動作させるまでの間に当接板10の付勢力に負けて眼鏡9が前方にずれてしまうことがなく、同じ眼鏡9の左右反対側の被検レンズ5を位置決めする際に、再度前後方向に位置合わせを行う必要を生じさせない。
【0030】
以上の説明において、係止機構12は、ソレノイドアクチュエータ29を駆動源としているが、電気的に動作させられるものであればよく、例えばモータを利用したアクチュエータや、電磁弁で制御する流体シリンダなどを駆動源としてもよい。
【0031】
また、係止機構12を動作させるための当接板係止スイッチ16は、移動部材11を係止させるスイッチと、移動部材11の係止を解除させるスイッチとを別に設けてもよい。
【0032】
また、受光部4を投光部3の上方に設けて測定光を上向きに投光するようにした場合、被検レンズ5を支持する支持部材6、メモリースイッチ15および当接板係止スイッチ16を投光部3に設け、押さえ部材7および印点装置8を受光部4に設けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の一実施形態のレンズメータの斜視図。
【図2】図1のレンズメータの単体レンズ測定時の側面図。
【図3】図1のレンズメータの眼鏡入りレンズ測定時の側面図。
【図4】図1のレンズメータの係止機構の分解斜視図。
【図5】図1のレンズメータの係止機構の移動部材非係止時の正面図。
【図6】図1のレンズメータの係止機構の移動部材係止時の正面図。
【符号の説明】
【0034】
1 レンズメータ
2 装置本体
3 投光部
4 受光部
5 被検レンズ
9 眼鏡
10 当接板
11 移動部材
12 係止機構
16 当接板係止スイッチ
17 側壁
18 側壁
19 固定部材
21 回動軸
22 蝶番
23 第1アーム
24 第2アーム
25 摩擦抵抗体
26 摩擦抵抗体
27 弾性支持体
28 付勢部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置本体と、
前記装置本体に設けられ、測定光を投光する投光部と、
前記装置本体に設けられ、前記測定光を受光する受光部と、
前記投光部と前記受光部との間で眼鏡の位置決めを補助する当接板を支持し、一端が前記装置本体の内部に延伸し、前記装置本体内への延伸方向前後に移動可能な移動部材と、
前記装置本体内部に支持されたアクチュエータによって、前記移動部材に摩擦抵抗体を圧接して、前記移動体の移動を摩擦力により係止できる係止機構とを有し、
前記投光部または前記受光部に、前記アクチュエータを動作させる当接板係止スイッチを設けたことを特徴とするレンズメータ。
【請求項2】
前記移動部材は、対向する2つの側壁を有する溝型をなし、
前記係止機構は、前記側壁の内側に2つの前記摩擦抵抗体を保持し、前記2つの摩擦抵抗体を前記2つの側壁にそれぞれ押圧することを特徴とする請求項1に記載のレンズメータ。
【請求項3】
前記2つの摩擦抵抗体は、1つの回動軸を中心に互いに回動可能な第1および第2のアーム上にそれぞれ保持され、
前記第1のアームは、保持している前記摩擦抵抗体が前記側壁から離間するように、弾性変形可能な弾性支持体によって支持され、
前記アクチュエータは、前記第2のアームを駆動し、前記第2のアーム上の前記摩擦抵抗体を前記回動軸に対して回動させて前記側壁に圧接すると共に、前記回動軸を前記第2のアーム上の前記摩擦抵抗体に対して回動させて前記第1のアームを移動させることで前記弾性支持体を弾性変形させて前記第1のアーム上の前記摩擦抵抗体を前記側壁に圧接することを特徴とする請求項2に記載のレンズメータ。
【請求項4】
前記アクチュエータは、ソレノイドアクチュエータであることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のレンズメータ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2008−116290(P2008−116290A)
【公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−298996(P2006−298996)
【出願日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【出願人】(390000594)隆祥産業株式会社 (64)
【Fターム(参考)】