説明

レンズメータ

【課題】広域測定と狭域測定とをそれぞれ最適化したレンズメータを提供する。
【解決手段】第1の波長の測定光を発する第1の光源10と、第2の波長の測定光を発する第2の光源11と、第1の波長の測定光と第2の波長の測定光とを略同軸になるように導光して被検レンズ4に投光可能な導光手段12とを有するレンズメータ1において、第1の波長の測定光を部分的に通過させ、第2の波長の測定光を全体的に通過させる第1の測定用マスク14を被検レンズ4の下流に配置し、第2の測定光を部分的に通過させる第2の測定用マスク16を第2の光源11と導光手段12との間に配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、眼鏡レンズの特性を測定するレンズメータに関する。
【背景技術】
【0002】
レンズ特性の測定には、レンズ光路中心部を測定する狭域測定と、レンズの広い範囲を測定する広域測定とがある。広域測定は、アライメントが不要であるが、光学中心の印点を行うことができない。よって、広域測定が可能なレンズメータにおいても、狭域測定を行う必要があり、そのために、狭域測定のためのマスクパターンと、広域測定のためのマスクパターンとを交換する必要がある。
【0003】
特許文献1には、狭域測定と広域測定のために波長の異なる2つの光源と、波長によって透過パターンが狭域測定用と広域測定用とに異なるマスクパターンとを設け、センサの出力を波長成分毎に処理して、狭域測定と広域測定とを同時に行うことができるレンズメータが記載されている。
【0004】
しかしながら、特定範囲の波長のみを遮光するような材料は存在しないため、マスクパターンは、特定の波長以上または特定の波長以下の光を遮光するような材料で形成される。特許文献1では、一定の波長以上の光を透過させるマスクを複層に形成しているが、短波長の光を通過させるマスクパターンは、長波長の光をも通過させてしまう。このため、狭域測定用のマスクパターンと広域測定用のマスクパターンを独立して設計することができず、マスクパターンを最適化できないという問題があった。
【特許文献1】特許第3685886号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明は、広域測定と狭域測定とをそれぞれ最適化したレンズメータを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明によるレンズメータは、第1の波長の測定光を発する第1の光源と、第2の波長の測定光を発する第2の光源と、前記第1の波長の測定光と前記第2の波長の測定光とを略同軸になるように導光して被検レンズに投光可能な導光手段と、被検レンズの下流に配置され、前記第1の波長の測定光を部分的に通過(所定位置以外の測定光を遮光)させ、前記第2の波長の測定光を全体的に通過させる第1の測定用マスクと、前記第2の光源と前記導光手段との間に配置され、前記第2の測定光を部分的に通過させる第2の測定用マスクとを有するものとする。
【0007】
この構成によれば、第2の波長の測定光は第1の測定用マスクに遮光されずに通過するので、第1の測定用マスクを第2の波長の測定光が形成すべき画像パターンを考慮せずにデザインすることができる。また、第1の波長の測定光は第2の測定用マスクに入射しないので、第2の測定用マスクを第1の波長の測定光が形成すべき画像パターンを考慮せずにデザインすることができる。
【0008】
また、本発明のレンズメータにおいて、前記第1の測定用マスクは、前記被検レンズの広い範囲を測定するための広域測定用マスクであり、前記第2の測定用マスクは、前記被検レンズの狭い範囲を測定するための狭域測定用マスクであってもよい。
【0009】
通常、被検レンズの広い範囲を測定する場合は、被検レンズの狭い範囲を測定する場合に比べて、外部から受光部に入射する外光ノイズの影響が大きくなる。よって、広域測定用マスクが被検レンズの下流側に配置することで、広域測定における外光ノイズを低減して、測定精度を高めることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、第2の測定用マスクを光源側に配置したことで、第1の測定用マスクと、第2の測定用マスクとを独立してデザインすることができ、2つの測定をそれぞれ最適化できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
これより、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1に、本発明の一実施形態のレンズメータ1を示す。レンズメータ1は、装置本体2の上部に測定光を投光する光学系を収容した投光部3が設けられ、投光部3の下方に被検レンズ4(図では眼鏡フレームに装着されている)を載置して保持する保持部5を備え、被検レンズ4を通過した測定光を受光する光学系を収容した受光部6が設けられている。また、レンズメータ1は、被検レンズ4の保持部5上での位置決めを助ける当接板7および押さえ部材8を有し、さらに、保持部5上に位置決めした被検レンズ4に光学中心を印点する印点装置9を有している。
【0012】
図2に、レンズメータ1の光学系の概略を示す。レンズメータ1は、可視波長の第1の測定光を発する第1の光源10と、赤外波長(870nm)の第2の測定光を発する第2の光源11とを有している。第1の光源10および第2の光源11は、それぞれ点光源であって、拡散光を発する。
【0013】
第1の測定光は、ハーフミラー(導光手段)12を通過して投光レンズ13により平行光線にして被検レンズ4に投光される。被検レンズ4を通過した第1の測定光は、第1の測定用マスク14を介してスクリーン15に結像する。第1の測定用マスク14は、可視光線、つまり、第1の測定光を遮光するが、赤外光線、つまり、第2の測定光を透過させる材質からなり、図3に示すように、第1の測定光を部分的に通過させるための複数の投光孔14aが縦横に規則正しく設けられている。つまり、第1の測定用マスク14は、投光穴14aの部分だけ第1の測定光を通過させ、投光穴14a以外の部分では第1の測定光を遮光する一方、第2の測定光は全体的に通過させる。
【0014】
このような測定用マスク14は、板材に貫通孔を形成する他、透明な板状の基材の上に、第1の測定光を遮光し、且つ、第2の測定光を透過させる樹脂材料を印刷したパターン被膜としても形成することができる。
【0015】
第2の測定光は、第2の測定用マスク16および調整レンズ17を介してハーフミラー12に入射し、ハーフミラー12によって第1の測定光と略同軸になるように反射され、投光レンズ13を介して、被検レンズ4に投光される。第2の測定光は、調整レンズ17を通過しているため、投光レンズ13によって集光され、被検レンズ4の直前で焦点を結んだ後に僅かに拡大して被検レンズ4の狭い範囲に投光される。被検レンズ4を通過した第2の測定光も、第1の測定用マスク14を介してスクリーン15に、第1の測定光が投影される範囲とほぼ同じ範囲に拡大して投影されるようにスクリーン15の位置が定められている。第2の測定用マスク16は、全ての波長の光線を、つまり、赤外光線をも遮光する材質からなり、図4に示すように、第2の測定光を部分的に通過させるための環状の投光孔16aが設けられている。第2の測定光は、第1の測定用マスク14に遮光されることなく通過してスクリーン15に結像する。
【0016】
スクリーン15に結像した第1の測定光または第2の測定光の画像は、さらに、撮像レンズ18によって例えばCCDからなる撮像素子19に結像し、電気信号に変換される。
【0017】
第1の測定光は、被検レンズ4の広い範囲を通過し、第1の測定用マスク14に設けられた複数の投光孔14aに入射した部分だけが、スクリーン15に縦横に並んだ光点として結像する。投光孔14aに対応する光点は、被検レンズ4の形状によって、その配列に歪みを生じており、光点の位置関係をレンズメータ1に内蔵するマイコンにより解析することで、被検レンズ4の広い範囲に亘る球面度や円柱度などの分布を算出する広域測定を行うことができる。
【0018】
第2の測定光は、第2の測定用マスク16を通過した環状の光が、被検レンズ4の狭い範囲を通過し、スクリーン15に拡大されて投影される。被検レンズ4の光学中心が、第2の測定光の光軸からずれていると、スクリーン15に投影される環状の画像が位置ずれする。レンズメータ1は、撮像素子19が出力する電気信号をマイコンにより解析することで、被検レンズ4の光学中心の位置ずれを検出する狭域測定を行い、正確な光学中心を見つけ出して印点装置9により、被検レンズ4に光学中心をマーキングすることができる。
【0019】
本実施形態において、第1の測定用マスク14は、第2の測定光を透過させるので、第2の測定光を用いた狭域測定に影響を及ぼさない、よって、第1の測定用マスク14は、広域測定に最適な通過パターンとすることができる。
【0020】
また、第2の測定用マスク16は、ハーフミラー12で反射されて第1の測定光と同じ光路に導光される前に配設されている。このため、第2の測定用マスク16は、第1の測定光を遮光する材質で形成しても、第1の測定光による広域測定に影響を及ぼさず、狭域測定に最適な通過パターンとすることができる。
【0021】
また、本実施形態において、被検レンズ4の下流にある第1の測定用マスク14を第2の測定光だけを遮光する材料で形成して環状の透光孔を形成した狭域測定用のマスクとし、第2の測定用マスクを縦横に並んだ透光孔を形成した広域測定用のマスクとして第1の光源10とハーフミラー12との間に設けてもよい。しかしながら、被検レンズ4の光学中心を探し出す単純な狭域測定に比べて、被検レンズの広い範囲の光学特性のマップを作成する広域測定は、レンズメータ1の外部の光源からスクリーンに入射する外光ノイズによる測定精度の低下が大きい。広域測定における外光ノイズの侵入を少なくするためには、被検レンズ4の下流に配置した第1の測定用マスク15を狭域測定用のマスクとすることが好ましい。
【0022】
また、従来のレンズメータでは、狭域測定でセンサの中央部だけを用いることになり、有効画素が少なく、解像度が低く、測定の精度を上げることができないという問題があった。しかしながら、本実施形態では、狭域測定用の第2の測定光が被検レンズ4の前で焦点を結んで、広域測定用の第1の測定光が投影される範囲と略同じ撮像素子19の広い範囲に拡大して投影されるようになっているので、狭域測定においても高解像度のデータを用いて精度の高い測定ができるようになっている。
【0023】
本実施形態の第2の測定光は、被検レンズ4の前で焦点を結んでいるが、被検レンズ4を通過した後に焦点を結ぶようにしてもよい。ただし、第2の測定光が被検レンズ4の内部や被検レンズ4に極端に近い位置で焦点を結ぶと、第2の測定光が通過する測定範囲が非常に狭くなり、むしろ正しい測定ができない。よって、第2の測定光が被検レンズ4を通過する範囲が、狭域測定に好ましい大きさになり、且つ、撮像素子19の広い範囲に結像するように考慮しなければならない。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施形態のレンズメータの構成を示す概略図。
【図2】図1のレンズメータの光学系を示す概略図。
【図3】図1のレンズメータの広域測定用のマスクパターンを示す図。
【図4】図1のレンズメータの狭域測定用のマスクパターンを示す図。
【符号の説明】
【0025】
1 レンズメータ
4 被検レンズ
10 第1の光源
11 第2の光源
12 ハーフミラー(導光手段)
13 透光レンズ
14 第1の測定用マスク(広域測定用マスク)
15 スクリーン
16 第2の測定用マスク(狭域測定用マスク)
17 調整レンズ
19 撮像素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の波長の測定光を発する第1の光源と、
第2の波長の測定光を発する第2の光源と、
前記第1の波長の測定光と前記第2の波長の測定光とを略同軸になるように導光して被検レンズに投光可能な導光手段と、
被検レンズの下流に配置され、前記第1の波長の測定光を部分的に通過させ、前記第2の波長の測定光を全体的に通過させる第1の測定用マスクと、
前記第2の光源と前記導光手段との間に配置され、前記第2の測定光を部分的に通過させる第2の測定用マスクとを有することを特徴とするレンズメータ。
【請求項2】
前記第1の測定用マスクは、前記被検レンズの広い範囲を測定するための広域測定用マスクであり、
前記第2の測定用マスクは、前記被検レンズの狭い範囲を測定するための狭域測定用マスクであることを特徴とする請求項1に記載のレンズメータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−128937(P2008−128937A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−316845(P2006−316845)
【出願日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【出願人】(390000594)隆祥産業株式会社 (64)
【Fターム(参考)】