説明

レンズメータ

【課題】レンズの球面度と円柱度とを一度に確認できるレンズメータを提供する。
【解決手段】被検レンズおよびマスクを通過した測定光の受光像を解析して座標毎に光学特性を示す複数の特性データを算出し、前記特性データの1つをカラーマッピングした上に前記特性データの異なる1つを等高線で示した画像を表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズの光学特性を測定するレンズメータに関する。
【背景技術】
【0002】
レンズメータで測定する光学特性として、共にレンズ上の位置によって変化する球面度と円柱度とがある。
【0003】
特許文献1のレンズメータでは、球面度と円柱度とを、それぞれ、値の大小を色の変化に置き換えて2次元表示するカラーマッピングを行い、両者を並べて表示している。また、特許文献2のレンズメータでは、球面度と円柱度とをそれぞれ等高線によって表示している。レンズの光学中心をレンズメータの測定光軸上に位置決め(アライメント)するためには円柱度および球面度の両方を確認する必要がある。従来のレンズメータでは、レンズの円柱度および球面度の2つの表示を見比べながらレンズを位置決めする必要があり、作業が容易ではなかった。
【0004】
また、特許文献3のレンズメータでは、レンズの遠用点、近用点およびそれらの間の累進部からなる内部領域と、それら以外の周辺領域との境界を示す円柱度の等高線である境界線と、内部領域の球面度の等高線とを1つの画像として表している。このレンズメータでは、遠用点および近用点の位置がはっきりと分からないので正確なアライメントができない。
【0005】
【特許文献1】特許第3435019号公報
【特許文献2】特許第3185940号公報
【特許文献3】特許第3647991号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は、レンズの球面度と円柱度とを一度に確認できるレンズメータを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明によるレンズメータは、被検レンズおよびマスクを通過した測定光の受光像を解析して座標毎に光学特性を示す複数の特性データを算出し、前記特性データの1つをカラーマッピングした上に前記特性データの異なる1つを等高線で示した画像を表示するものとする。
【0008】
この構成によれば、ひとつの画面に異なる光学特性が重畳して表示されているので、異なる光学特性を一度に確認でき、両者の関係を正確に把握することもできる。
【0009】
また、本発明のレンズメータにおいて、前記カラーマッピングおよび前記等高線で表示される前記特性データは、座標毎の球面度および円柱度であってもよい。
【0010】
この構成によれば、ひとつの画面に球面度の分布と円柱度の分布とが重畳して表示されているので、レンズの球面度と円柱度とを一度に確認でき、両者の関係を正確に把握することもできる。
【0011】
また、本発明のレンズメータは、逐次、前記受光像を分析して球面度および円柱度の算出を繰り返し行い、前記球面度および前記円柱度の数値変化が小さい場合には、前記球面度および前記円柱度の座標間のデータを高密度に補完する演算を行い、前記カラーマッピングおよび等高線を補完したデータ密度で表示し、前記球面度および前記円柱度の数値変化が大きい場合には、前記球面度および前記円柱度の座標間のデータの補完を行わず、または、低密度に補完する演算を行い、前記カラーマッピングおよび等高線を得られたデータ密度で表示してもよい。
【0012】
この構成によれば、被検レンズが移動しているときには、データの補完を停止、または、データの補完量を低減するので、表示のための演算量が少なく、迅速な表示が可能である。また、被検レンズの位置が定められたときには、高解像度の表示を行うので、被検レンズの光学特性を詳細に把握することができる。
【0013】
また、本発明のレンズメータは、逐次、前記受光像を解析して座標毎の球面度、円柱度およびプリズム値を繰り返し算出して、前記カラーマッピングおよび等高線の表示を更新し、前記球面度および前記円柱度の少なくともいずれかから前記被検レンズの遠点および近点の座標を算出し、前記カラーマッピングした画像上にマーカを表示するとともに、前記遠点および前記近点の座標のプリズム値を記憶し、前記球面度および前記円柱度が更新される度に、前記記憶したプリズム値に最も近いプリズム値を有するデータ位置に前記マーカを表示してもよい。
【0014】
この構成によれば、詳細な計算を行うことなく、プリズム値によって簡易に遠点と近点とを予測するので、応答性を低下させることなく、遠点と近点の目安を示すことができ、被検レンズの測定を容易にすることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ひとつの画面に球面度の分布と円柱度の分布とをカラーマッピングと等高線とによって重ねて表示するので、球面度と円柱度とを一度に確認でき、両者の関係を正確に把握することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
これより、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1および図2に、本発明の一実施形態のレンズメータ1を示す。レンズメータ1は、装置本体2の上部に測定光を投光する光学系を収容し、表面に表示装置3を備える投光部4が設けられ、投光部4の下方に被検レンズ5(図2では眼鏡フレームに装着されている)を載置して保持する保持部6および測定データを記憶させるためのメモリースイッチ7を備え、被検レンズ5を通過した測定光を受光する光学系を収容した受光部8が設けられている。また、レンズメータ1は、被検レンズ5の保持部6上での位置決めを助ける当接板9および押さえ部材10を有し、さらに、保持部6上に位置決めした被検レンズ5に光学中心を印点する印点装置11を有している。
【0017】
図3に、レンズメータ1の光学構成を示す。レンズメータ1は、投光部4の内部に測定用の点光源である発光素子12と、発光素子12が発した拡散光を平行な測定光にして被検レンズ5に投光する投光レンズ13とを有し、受光部8の内部に、測定光を通過させるマスク14と、測定光が投影されるスクリーン15と、スクリーン15に投影された画像を撮影レンズ16によって受光して電気信号に変換して画像データを生成するための撮像素子17とを有している。
【0018】
図4に、マスク14を示す。マスク14は、測定光を遮光する材質で板状に形成されており、測定光を通過させる小孔18が11行×11列の縦横等ピッチに配列して形成されている。
【0019】
図5に、レンズメータ1における被検レンズ5の光学特性の測定の流れを示す。レンズメータ1では、被検レンズ5の測定を開始すると、図5の測定処理を実行する。先ず、ステップS1で、撮像素子17により、被検レンズ5およびマスク14を通過してスクリーン15に投影された測定光による画像のデータを取得する。
【0020】
マスク14を通過した光束は、スクリーン15に縦横に並んだ光点として投影されるが、被検レンズ5の光学特性に応じて、各光点が位置ずれし、その配列に乱れが生じる。レンズメータ1は、ステップS2において、取得した画像を解析して光点の座標を抽出する。
【0021】
ステップS3では、各光点の相対関係を解析し、各光点の座標(11×11点)における光学特性を示す特性データである球面度、円柱度およびプリズム値を公知の演算方法によって算出する。
【0022】
ステップS4では、画像のデータが安定しているか否かを判定する。図示するように、図5の処理は繰り返し行われるので、例えば、過去5回の球面度および円柱度の偏差が全ての点(11×11点)において0.25D以内であれば画像が安定していると判断する
【0023】
ステップS4で画像データが安定していれば、ステップS5に進んで、光点の間の各座標(表示装置3の画素に相当)における球面度、円柱度およびプリズム値を補完して表示装置3に表示する高密度補完表示を行う。レンズメータ1は、図6に例示するように、球面度をカラーマッピング表示(例えば、値が低いほど青く、値が高いほど赤く表示)し、円柱度を等高線で表示する。
【0024】
ステップS4で画像データが安定していなければ、ステップS6に進んで、画像を所定の大きさの表示セルに区分し、表示セル毎に球面度、円柱度およびプリズム値を補完して表示装置3に表示する低密度補完表示を行う。低密度補完表示では、図7に例示するように、低解像度でマッピング表示および等高線表示を行うことになる。
【0025】
球面度および円柱度を表示したなら、ステップS7で、遠点および近点を記憶するためのメモリースイッチ7が操作されたか否かを確認する。メモリースイッチ7が操作されていなければ、ステップS8に進んで、球面度および円柱度の分布を基に、公知の演算方法によって、遠点および近点の座標を算出する。遠点および近点の座標が特定されたなら、ステップS9で遠点および近点の座標、および、遠点および近点のプリズム値を記憶し、ステップS10で、遠点および近点の座標にマーカを表示する。
【0026】
ステップS7でメモリースイッチ7が操作されていれば、ステップS11に進んで、それ以前に記憶している遠点と近点の座標にマーカを表示する。
【0027】
図8に、高密度補完表示の処理を詳細に示す。この処理では、略矩形に隣接し合う4つの光点の座標を頂点とする方形範囲を測定セルとし、各測定セル毎に球面度および円柱度の補完を行う。そのために、先ず、ステップS21において、10行×10列の測定セルを順番に処理するためのループパラメータを設定し、ステップS22において、各測定セル内の全ての画素について順番に処理するためのループパラメータを設定する。
【0028】
ステップS23では、球面度、円柱度およびプリズム値の補完を行う。この補完は線形補完によって行うことができ、例えば、当該画素の座標(x,y)のデータをd(x、y)とし、測定セルの頂点である光点の座標を(x,y)、(x,y)、(x,y)、(x,y)とすれば、座標(x,y)のデータd(x、y)は以下の数式で求めることができる。
【数1】

【数2】

【数3】

【0029】
こうして各画素毎の球面度、円柱度およびプリズム値が算出されたなら、ステップS24で、当該画素の、球面度を基に表示色を算出し、ステップS25で表示色を表示メモリに書き込むことで表示装置3の表示を更新する。
【0030】
さらに、レンズメータ1は、ステップS26で、当該画素プリズム値と記憶している遠点および近点とのプリズム値との差をそれぞれ算出する。レンズメータ1は遠点および近点のそれぞれについて、プリズム値の差の最小値を記憶しており、ステップS27で当該画素のプリズム値の差が最小であれば、ステップS28で、記憶内容をその値に書き換えるとともに、当該画素の座標を、書き換えた遠点または近点の座標として記憶内容を書き換える。
【0031】
ステップS29では、測定セル内の全画素の処理が終了したかをループパラメータによって確認し、ステップS30では、全ての測定セルについての処理が終了したかをループパラメータによって確認する。
【0032】
また、図9に、図5のステップS6の低密度補完表示の流れを示す。低密度補完表示では、画像を所定数の画素毎に分割した表示セル毎に、球面度および円柱度を表示するようになっている。なお、この処理において、高密度補完表示と同じ処理をするステップSには同じステップS番号を付して説明を省略する。
【0033】
この低密度補完表示では、ステップS21およびステップS22でループパラメータを設定したなら、先ず、ステップS31において、当該画素が属する表示セル内の表示色が既に算出されているか否かを確認する。ステップS31において表示セル内の表示色が算出されていなければ、ステップS23でデータを補完して、ステップS24で表示色を算出し、ステップS25でその表示色を表示メモリに書き込む。しかし、ステップS31において、表示セル内の表示色が既に算出されていれば、ステップS25に進んで、既に算出されている表示色を当該画素の表示メモリに書き込む。
【0034】
図5のステップS11においてマーカを表示する座標は、高密度補完表示または低密度補完表示のステップS28において、書き換えられた遠点および近点の最新の座標である。
【0035】
レンズメータ1では、図6に示すように、測定者が球面度と円柱度とを同じ画面上で確認することができ、両者の位置関係を容易に確認できる。
【0036】
また、レンズメータ1は、画像データが安定しないとき、つまり、被検レンズ5が移動しているときは、低密度補完表示を行う。高密度補完表示を行うと、補完表示処理に時間がかかり、測定光による画像を取得してから表示装置3の画像を更新するまでに遅れが発生するが、低密度補完表示では、表示セル内で1つの表示色を算出するだけであるので、即座に表示を更新できる。つまり、低密度補完処理では、単位時間当たりに、画像を取得して表示を更新する回数が多く、被検レンズ5の光学特性がリアルタイムに表示されるので、測定者が表示装置3を見ながら、被検レンズ5の位置決めを行う作業が容易である。
【0037】
また、レンズメータ1は、演算負荷の高い遠点および近点の正確な算出を行わず、プリズム値によって応答性を損なうことなく遠点および近点のおよその位置をマーキングすることができるので、被検レンズ5に印点しなくても、リアルタイムに遠点および近点の位置を確認しながら、被検レンズ5の光学中心をレンズメータ1の光軸中心に位置決め(アライメント)することができる。
【0038】
このように、レンズメータ1は、被検レンズ5の光学特性をリアルタイムに測定して表示することができるので、測定範囲を小さくすることができ、装置の小型化やコストダウンが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の1つの実施形態のレンズメータの斜視図。
【図2】図1のレンズメータの側面図。
【図3】図1のレンズメータの光学構成を示す概略図。
【図4】図1のレンズメータのマスクの平面図。
【図5】図1のレンズメータの測定の流れ図。
【図6】図5の高密度補完表示を例示する表示画像。
【図7】図5の低密度補完表示を例示する表示画像。
【図8】図5の高密度補完表示の流れ図。
【図9】図5の低密度補完表示の流れ図。
【符号の説明】
【0040】
1 レンズメータ
3 表示装置
5 被検レンズ
14 マスク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検レンズおよびマスクを通過した測定光の受光像を解析して座標毎に光学特性を示す複数の特性データを算出し、前記特性データの1つをカラーマッピングした上に前記特性データの異なる1つを等高線で示した画像を表示することを特徴とするレンズメータ。
【請求項2】
前記カラーマッピングおよび前記等高線で表示される前記特性データは、座標毎の球面度および円柱度であることを特徴とする請求項1に記載のレンズメータ。
【請求項3】
逐次、前記受光像を分析して球面度および円柱度の算出を繰り返し行い、
前記球面度および前記円柱度の数値変化が小さい場合には、前記球面度および前記円柱度の座標間のデータを高密度に補完する演算を行い、前記カラーマッピングおよび等高線を補完したデータ密度で表示し、
前記球面度および前記円柱度の数値変化が大きい場合には、前記球面度および前記円柱度の座標間のデータの補完を行わず、または、低密度に補完する演算を行い、前記カラーマッピングおよび等高線を得られたデータ密度で表示することを特徴とする請求項2に記載のレンズメータ。
【請求項4】
逐次、前記受光像を解析して座標毎の球面度、円柱度およびプリズム値を繰り返し算出して、前記カラーマッピングおよび等高線の表示を更新し、
前記球面度および前記円柱度の少なくともいずれかから前記被検レンズの遠点および近点の座標を算出し、前記カラーマッピングした画像上にマーカを表示するとともに、前記遠点および前記近点の座標のプリズム値を記憶し、
前記球面度および前記円柱度が更新される度に、前記記憶したプリズム値に最も近いプリズム値を有するデータ位置に前記マーカを表示することを特徴とする請求項2または3に記載のレンズメータ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2008−256393(P2008−256393A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−96306(P2007−96306)
【出願日】平成19年4月2日(2007.4.2)
【出願人】(390000594)隆祥産業株式会社 (64)
【Fターム(参考)】