説明

レンズモジュールの製造方法及び撮像装置

【課題】エア抜き孔を完全に塞ぐ。
【解決手段】第1ウェハレベルレンズ(以下、WLL)アレイ21の第1対向面21a上に、各第1レンズ部15aをそれぞれ囲み、かつスリット状のエア抜き孔25を有する略矩形状の第1接着層24を形成する。第2WLLアレイ22の第2対向面22a上に、各第2レンズ部16aをそれぞれ囲み、かつエア抜き孔25に向けて突出した凸部26aを有する略枠状の第2接着層26を形成する。各エア抜き孔25と各凸部26aとが重なり合うように第1WLLアレイ21と第2WLLアレイ22とを接着する。各凸部26aがそれぞれ各エア抜き孔25に入り込むことで、接着後にエア抜き孔25が接着剤で完全に塞がれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着層を介して複数のレンズを積層してなるレンズモジュールの製造方法、及びこのレンズモジュールを備える撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話機などの携帯電子機器には、小型かつ薄型の撮像装置が搭載されている。この撮像装置は、固体固体撮像素子チップと、この固体固体撮像素子チップ上に設けられ、複数のウェハレベルレンズを積層してなるレンズモジュールとからなり、ウェハレベルで製造される(特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1では、複数のレンズ部を有するウェハレベルレンズアレイを、各レンズ部を囲むように形成された接着層を介し複数積層して積層体を形成する。この積層体には、ウェハレベルレンズアレイの両対向面と接着層で囲まれる閉じられた空間(以下、キャビティという)が複数形成される。次いで、このウェハレベルレンズアレイの積層体をダイシングにより個片化することでレンズモジュールが生成される。以下、ウェハレベルレンズアレイを個片化したものをウェハレベルレンズと呼ぶ。
【0004】
ところで、ウェハレベルレンズアレイ同士を、各レンズ部を囲む形状の接着層を介して接着する際には、各接着層間の厚みのばらつきによりキャビティの形成タイミングに差異が生じる。このため、接着時に先にキャビティが形成された部分は、さらに押圧されることにより、キャビティ内の空気が接着層を膨張または破裂させてしまう。
【0005】
特許文献2〜4には、ウェハレベルレンズアレイ同士を接着する前に接着層に、スリット状のエア抜き孔を形成しておき、このエア抜き孔からキャビティ内の空気を逃がすことにより、接着層の破裂や膨張を防止する製造方法が記載されている。このエア抜き孔は、接着剤の復元力(例えば表面張力のような作用)によって塞がれて消滅する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−086092号公報
【特許文献2】特開2005−252183号公報
【特許文献3】特開2003−204053号公報
【特許文献4】特開昭63−84051号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献2〜4に記載のように、接着層に予めエア抜き孔を形成しておくことで、接着層の破裂や膨張は防止することができるが、エア抜き孔の大きさによっては接着剤の復元力だけでは完全に塞ぐことができず、接着層に孔があいてしまうおそれがある。その結果、レンズモジュールの歩留まりが低下するという問題が生じる。
【0008】
本発明は上記問題を解決するためになされたものであり、エア抜き孔を完全に塞ぐことができるレンズモジュールの製造方法、及びこのレンズモジュールを備える撮像装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明のレンズモジュールの製造方法は、複数のレンズ部を有するウェハレベルレンズアレイを、個々の前記レンズ部を囲む略枠状の接着層を介して複数積層し、前記ウェハレベルレンズアレイの積層体を各前記接着層の間で切断してレンズモジュールを生成するレンズモジュールの製造方法において、互いに接着されるウェハレベルレンズアレイの両対向面の一方に、各前記レンズ部をそれぞれ囲みかつその一部に略スリット状のエア抜き孔を有する略枠状の第1接着層を形成する第1接着層形成工程と、前記両対向面の他方に、前記エア抜き孔と対向する位置に当該エア抜き孔に向けて突出した凸部を有する第2接着層を形成する第2接着層形成工程と、前記エア抜き孔と前記凸部とを重ね合わせるようにして前記ウェハレベルレンズアレイ同士を接着する接着工程と、を有することを特徴とする。
【0010】
前記第2接着層形成工程は、前記第2接着層を、各前記レンズ部を囲む略枠形状に形成することが好ましい。
【0011】
前記第2接着層形成工程では、前記第2接着層の前記エア抜き孔に対向する部分の厚みを他の部分よりも厚くすることで前記凸部を形成することが好ましい。また、前記第2接着層形成工程では、前記第2接着層の前記エア抜き孔に対向する部分の幅を他の部分よりも広げることが好ましい。
【0012】
前記第2接着層形成工程の前に、前記他方の対向面の前記エア抜き孔に対向する部分に下地層を形成する下地層形成工程を有しており、前記下地層により前記第2接着層に前記凸部が形成されることが好ましい。
【0013】
前記第1接着層形成工程及び第2接着層形成工程では、それぞれ前記エア抜き孔、前記凸部を複数形成することが好ましい。
【0014】
前記第1接着層及び前記第2接着層は略矩形状に形成されており、前記エア抜き孔及び前記凸部は、それぞれ前記第1接着層、前記第2接着層の角部分に形成されることが好ましい。
【0015】
前記第1接着層形成工程及び第2接着層形成工程では、それぞれスクリーン印刷により接着剤を前記対向面に塗布して、前記第1接着層、前記第2接着層を形成することが好ましい。
【0016】
また、本発明の撮像装置は、請求項1ないし8いずれか1項記載のレンズモジュールの製造方法で製造されたレンズモジュールと、前記レンズモジュールを透過した被写体光を撮像する撮像素子と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明のレンズモジュールの製造方法、及びこのレンズモジュールを備える撮像装置は、第1接着層のエア抜き孔に第2接着層の凸部を重ね合わせるようにしてウェハレベルレンズアレイ同士の接着を行うようにしたので、接着層のエア抜き孔を完全に塞ぐことができる。その結果、接着層に孔があくことによるレンズモジュールの歩留まりの低下が防止される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】撮像装置の断面図である。
【図2】図1中のII−II線に沿う断面図である。
【図3】第1接着層形成工程を説明するための説明図である。
【図4】図中のIV−IV線に沿う断面図である。
【図5】第2接着層形成工程を説明するための説明図である。
【図6】図中のVI−VI線に沿う断面図である。
【図7】スクリーン印刷を説明するための説明図である。
【図8】スクリーン印刷により形成された接着層の断面図である。
【図9】接着層の四隅部が厚くなる理由を説明するための説明図である。
【図10】WLLアレイ接着工程を説明するための説明図である。
【図11】第1接着層のエア抜き孔が第2接着層の凸部により塞がれることを説明するための説明図である。
【図12】WLLアレイ接着工程の完了後の断面図である。
【図13】第2接着層に凸部を形成しない比較例を説明するための説明図である。
【図14】接着層に欠陥孔があいた状態を説明するための説明図である。
【図15】ダイシング工程を説明するための説明図である。
【図16】レンズモジュール取付工程を説明するための説明図である。
【図17】第2実施形態における、撮像素子基板、第1WLLアレイ、第2WLLアレイの積層工程を説明するための説明図である。
【図18】第2実施形態のダイシング工程を説明するための説明図である。
【図19】第3実施形態の第2接着層形成工程を説明するための説明図である。
【図20】図19とは異なる第2接着層形成工程を説明するための説明図である。
【図21】第4実施形態の第2接着層の正面図である。
【図22】第4実施形態の第1接着層の正面図である。
【図23】図22の凸部の形成方法を具体的に説明するための説明図である。
【図24】第5実施形態の第1接着層の正面図である。
【図25】第5実施形態の第2接着層の正面図である。
【図26】第6実施形態の第2接着層の正面図である。
【図27】実施例1の第1〜第2接着層の厚みを説明するための説明図である。
【図28】実施例2の第1〜第2接着層の厚みを説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[第1実施形態]
図1に示すように、撮像装置10は、ウェハレベルで製造されたものであり、携帯電話機などの各種小型電子機器(図示せず)に搭載される。この撮像装置10は、固体撮像素子チップ11と、スペーサ12を介して固体撮像素子チップ11上に設けられたレンズモジュール13とからなる。なお、各図では、撮像装置10の各部を明確にするため、相互の厚みや幅の比率は無視して一部誇張して表示している。
【0020】
固体撮像素子チップ11は、CCD素子やCMOS素子などの撮像素子11a、及び図示しない電極や論理回路などを有している。撮像素子11aは、レンズモジュール13から入射する被写体光を電気的な撮像信号に変換する。撮像素子11aから出力された撮像信号は、小型電子機器に設けられた各種信号処理回路(図示せず)にて信号処理が施されることによりデジタル画像データに変換される。スペーサ12は、固体撮像素子チップ11の表面上で撮像素子11aを囲むように略枠形状を有している。
【0021】
レンズモジュール13は、第1ウェハレベルレンズ(以下、単にWLLという)15と第2WLL16と接着層17とからなる。第1WLL15は略凹状の第1レンズ部15aを有している。第2WLL16は、接着層17を介して第1WLL15上に設けられており、略凸状の第2レンズ部16aを有している。第1〜第2WLL15,16は、ウェハレベルレンズアレイ(図4参照)をダイシングして生成したものであり、撮像素子11aの受光面の中心を通る光軸を有している。第1〜第2WLL15,16は、被写体光を撮像素子11aの受光面上に結像させる。
【0022】
図2に示すように、接着層17は、各レンズ部15a,16aを囲むように略矩形状に形成されている。接着層17と第1〜第2WLL15,16の両対向面との間に、密閉されたキャビティ19が形成される。接着層17は、第1WLL15上に第2WLL16を所定の間隔をあけて保持する。
【0023】
次に、上記構成の撮像装置10の製造工程について説明を行う。撮像装置10の製造工程は、大別して、レンズモジュール13を製造するレンズモジュール製造工程と、固体撮像素子チップ11上にレンズモジュール13を取り付けるレンズモジュール取付工程とからなる。
【0024】
レンズモジュール製造工程は、第1レンズ部15aが2次元配列されている第1ウェハレベルレンズアレイ(以下、単にWLLアレイという)上に、第2レンズ部16aが2次元配列されている第2WLLアレイを積層した積層体を形成し、この積層体を個片化することによりレンズモジュール13を生成する。このレンズモジュール製造工程は、第1接着層形成工程と、第2接着層形成工程と、WLLアレイ接着工程と、ダイシング工程との4つの工程からなる。なお、第1〜第2WLLアレイの大きさ、及び各レンズ部15a,16aの配列数、配列パターン、及び配列ピッチは全て同じに形成される。
【0025】
図3及び図4に示すように、第1接着層形成工程では、第1WLLアレイ21の第2WLLアレイ22と対向する第1対向面21a上に、スクリーン印刷法を用いて接着剤を塗布して、各第1レンズ部15aをそれぞれ囲むように略矩形状の第1接着層24を形成する。この際に第1接着層24には、その四隅の角部分(以下、単に四隅部という)にスリット状のエア抜き孔25を同時に形成する。
【0026】
第1接着層24の厚みは、例えば20μm〜40μmに調整される。第1接着層24の幅は、例えば200〜300μmに調整される。エア抜き孔25の幅は、例えば100〜300μmに調整される。
【0027】
図5及び図6に示すように、第2接着層形成工程では、第2WLLアレイ22の第1WLLアレイ21と対向する第2対向面22a上に、スクリーン印刷法を用いて接着剤を塗布して、各第2レンズ部16aをそれぞれ囲むように略矩形状でかつ第1接着層24と略同形状(厚み、幅を含む)の第2接着層26を形成する。この際に第2接着層26には、その四隅部に第1対向面21aに向けて突出した凸部26aが形成される。具体的には、第2接着層26を第1接着層24上に位置決めした際に、各凸部26aはそれぞれエア抜き孔に向けて突出するような位置に形成される。
【0028】
凸部26aを形成する方法は特に限定されない。例えば、一般にスクリーン印刷法により矩形状の層を形成する場合にはその四隅部の厚みが他の部分よりも厚くなる傾向がある。例えば図7に示すように、第2接着層26に対応する開口パターンPを有する印刷版Bを第2WLLアレイ22上にセットする工程と、この印刷版B上に接着剤を塗布する工程と、スキージSで印刷版B上の余分な接着剤を除去する工程とを実行することで、開口パターンPのみに接着剤が埋め込まれる。なお、図中の符号Mは、印刷版B内に設けられたメッシュである。
【0029】
次いで、第2WLLアレイ22上から印刷版Bを除去することで、第2WLLアレイ22上に第2接着層26が形成される。この際に、印刷版Bの開口パターンPの側壁(以下、パターン側壁という)には接着剤が残ってしまう。このため、図8に示すように第2接着層26の四隅部以外の部分は、断面が略かまぼこ形状に形成される。
【0030】
これに対して図9に示すように、第2接着層26の四隅部は、その図中の2点鎖線で示す部分がパターン側壁に接しないので、四隅部以外の部分と比較してパターン側壁に触れる部分は少なくなる。このため、四隅部は接着剤の塗布量が他の部分と比較して多くなるので厚みが厚くなる。従って、本実施形態ではスクリーン印刷法を用いて第2接着層26を矩形状に形成することで、その四隅部に凸部26aが自然に形成される。なお、この凸部26aは、他の部分と比較して10〜20μm程度高くなる。
【0031】
図10及び図11に示すように、WLLアレイ接着工程は、最初に、第1対向面21a上の各エア抜き孔25と、第2対向面22a上の各凸部26aとを位置決めする。次いで、各第1接着層24と各第2接着層26とを重ね合わせるようにして、第1WLLアレイ21と第2WLLアレイ22とを接着する。これにより、図12に示すように、各第1接着層24と各第2接着層26とが一体化してなる接着層17が形成されるとともに、接着層17と第1〜第2WLLアレイ21,22の両対向面により密閉されたキャビティ19が形成される。
【0032】
各第1〜第2接着層24,26の厚みのばらつきによりキャビティ19の形成タイミングに差異が生じた場合でも、各第1接着層24に予めエア抜き孔25が形成されているので、接着時に先に形成されたキャビティ19の内部の空気は、キャビティ19が押圧されたときにエア抜き孔25を通って外部に抜ける。これにより、接着層17の膨張や破裂が防止される。
【0033】
さらに本実施形態では、各第1接着層24と各第2接着層26とを重ね合わせた際に、各凸部26aがそれぞれ各エア抜き孔25に入り込むことで、エア抜き孔25が接着剤で完全に塞がれる。なお、接着剤は粘性を有しているので、エア抜き孔25が完全に塞がるまでには一定の時間が掛かる。このため、キャビティ19内からのエア抜きが妨げられることはない。
【0034】
一方、比較例を示す図13において、各第2接着層26に凸部26aを形成していない場合には、各第1接着層24と各第2接着層26とを重ね合わせて接着層17を形成した際に、エア抜き孔25が完全に塞がらない場合がある。その結果、図14に示すように接着層17に孔(以下、欠陥孔という)28があいてしまい、レンズモジュール13の歩留まりが低下する。
【0035】
このような比較例に対して本発明では、各第2接着層26に予め凸部26aを形成しておくことにより、エア抜き孔25を完全に塞いで接着層17に欠陥孔28が生じることが防止される。これより、レンズモジュール13の歩留まりの低下が防止される。
【0036】
図15に示すように、ダイシング工程では、接着層17の硬化後に、各接着層17の間に設定したダイシングライン(一点鎖線で表示)に沿って、第1〜第2WLLアレイ21,22をダイシングする。これにより、第1〜第2WLLアレイ21,22を個片化してなるレンズモジュール13が生成される。以上でレンズモジュール製造工程が完了する。
【0037】
図16に示すように、レンズモジュール取付工程では、固体撮像素子チップ11上にスペーサ12を介してレンズモジュール13を取り付ける。これにより、図1に示した撮像装置10が生成される。
【0038】
上記第1実施形態では、第1対向面21aにエア抜き孔25を有する第1接着層24を形成し、第2対向面22aに凸部26aを有する第2接着層26を形成しているが、これとは逆に、第2接着層26にエア抜き孔25を形成し、第1接着層24に凸部26aを形成してもよい(第2実施形態以降も同様)。
【0039】
[第2実施形態]
上記第1実施形態では、レンズモジュール13をウェハレベル工法で形成し、このレンズモジュール13を固体撮像素子チップ11上に取り付けることにより撮像装置10を形成しているが、レンズモジュール13と固体撮像素子チップ11とを一体に形成してもよい。
【0040】
具体的には、図17に示すように、複数の撮像素子11aが2次元配列された撮像素子基板31上に、第1WLLアレイ21と第2WLLアレイ22とを積層する。この場合は、撮像素子基板31の第1WLLアレイ21と対向する対向面31a上に、各撮像素子11aを囲みかつその一部にエア抜き孔25を有する略矩形状の第1接着層32を形成する。また、第1WLLアレイ21の撮像素子基板31に対向する対向面21b上に、各第1レンズ部15aを囲みかつエア抜き孔25に対向する位置に凸部33aを有する矩形状の第2接着層33を形成する。
【0041】
第1接着層32及び第2接着層33は、基本的には上記実施形態の第1接着層24、第2接着層26と同じである。従って、各第1接着層32と各第2接着層33とを重ね合わせるようにして、撮像素子基板31と第1WLLアレイ21とを接着する。これにより、各第1接着層32と各第2接着層33とが一体化してなる接着層35(図18参照)が形成される。この際には、上記第1実施形態と同様に、接着層35の膨張や破裂が防止されるとともに、エア抜き孔25を完全に塞いで歩留まりの低下を防止することができる。
【0042】
次いで、上記実施形態と同様に、第1WLLアレイ21上に第2WLLアレイ22を積層する。これにより、図18に示すように、撮像素子基板31、第1〜第2WLLアレイ21,22を積層してなる積層体が形成される。そして、各接着層17,35の間に設定したダイシングライン(一点鎖線で表示)に沿って、撮像素子基板31、第1〜第2WLLアレイ21,22をダイシングする。これにより、固体撮像素子チップ11と第1〜第2WLL15,16とが一体化されてなる撮像装置が生成される。
【0043】
[第3実施形態]
上記各実施形態では、スクリーン印刷法により第2接着層26を形成することで、この第2接着層26の四隅部に凸部26aが自然に形成されるようにしているが、凸部26aを積極的に形成してもよい。例えば、図19に示すように、第2接着層26の形成前に、第2対向面22aのエア抜き孔25に対向する位置(以下、孔対向位置という)に下地層37を予め形成しておく。これにより、第2対向面22aに第2接着層26を形成した際に、下地層37により第2接着層26の孔対向位置に凸部26aを形成することができる。なお、下地層37は第2WLLアレイ22と一体に形成してもよい。
【0044】
また、図20(A)、(B)に示すように、第2対向面22a上に第2接着層26を形成した後、この第2接着層26の孔対向位置にさらに接着剤を塗布する、いわゆる2度塗りを行うことで凸部26aを形成してもよい。
【0045】
[第4実施形態]
上記各実施形態では、第1対向面21aにエア抜き孔25を有する第1接着層24を形成し、第2対向面22aに凸部26aを有する第2接着層26を形成しているが、1つの接着層にエア抜き孔と凸部の両方を形成してもよい。例えば、図21に示すように、第2接着層26の凸部26aと異なる位置にエア抜き孔40を形成してもよい。さらに、この場合には、図22に示すように、第1接着層24のエア抜き孔40と対向する位置に凸部41を形成する。この場合も第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0046】
この際に、第1接着層24の四隅部以外に凸部を形成する場合には、例えば図23に示すように、第1接着層24のエア抜き孔40と対向する部分の幅を他よりも広くすることで、この部分の厚みを増加させる。これにより、凸部41が形成される。なお、他実施形態の凸部も接着層の幅を部分的に広げることで形成してもよい。
【0047】
[第5実施形態]
上記各実施形態では、第1〜第2接着層24,26の四隅部にエア抜き孔25、凸部26aを形成しているが、例えば図24及び図25に示すように第1〜第2接着層24,26の四隅部以外に、上記第4実施形態と同様のエア抜き孔40、凸部41を設けてもよい。なお、第1接着層24に凸部41を設け、第2接着層26にエア抜き孔40を設けてもよい。また、エア抜き孔40及び凸部41の形成位置は特に限定されない。
【0048】
[第6実施形態]
上記各実施形態では、第2接着層26を略矩形状に形成しているが、図26に示すように、第2対向面22a上のエア抜き孔25に対向する位置にのみ接着剤を塗布して、エア抜き孔25に向けて突出した凸部43aからなる第2接着層43を形成してもよい。この場合も第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0049】
上記各実施形態では、各接着層を矩形状に形成しているが、円形状、多角形状等の各種枠形状に形成してもよい。また、各実施形態において、エア抜き孔及び凸部を形成する位置は適宜変更してもよい。なお、多角形状の接着層をスクリーン印刷で形成した場合には、図7〜図9で説明したように角部に凸部が自然に形成される。
【0050】
上記各実施形態では、固体撮像素子チップ11上に2層の第1〜第2WLL15,16が積層されているが、1層または3層以上のWLLが積層されていてもよい。また、第1〜第2レンズ部15a,16aの形状も特に限定はされない。
【実施例】
【0051】
以下、本発明の効果を実証するための実施例1〜2を示し、本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。実施例1〜2ともに、上記第1実施形態で説明したように、第1対向面21aにエア抜き孔25を有する第1接着層24を形成し、第2対向面22aに凸部26aを有する第2接着層26を形成した。この際に、接着剤としてUVX−8536(DENKA製)を用い、スクリーン印刷により第1〜第2接着層24,26を縦横約3.4mmの矩形状に形成した。なお、スクリーン印刷に用いる印刷版Bとして、線径30μ〜50μmm、開口径100μm以上のメッシュMを有するものを用いた。
【0052】
実施例1では、図27に示すように第1接着層24の厚みを20μm、第2接着層26の厚みを40μmに形成した。実施例2では、図28に示すように第1接着層24の厚みを40μm、第2接着層26の厚みを20μmに形成した。次いで、各実施例の第1WLLアレイ21と第2WLLアレイ22とを、圧力0.3〜0.5Mpa、スピード0.05〜0.30mm/secの条件で接着した。これにより、第1接着層24と第2接着層26とが重ね合わせてなる略40μmの厚みの接着層17が形成された。
【0053】
接着層17の硬化後に、第1〜第2WLLアレイ21,22をダイシングしてレンズモジュール13を生成した。次いで、レンズモジュール13の接着層17のエア抜き孔25が完全に塞がっているか否かを目視または光学顕微鏡で観察した。その結果、実施例1〜2ともに、エア抜き孔25が完全に塞がっていることが確認された。
【符号の説明】
【0054】
10 撮像装置
11 固体撮像素子チップ
13 レンズモジュール
15 第1WLL
16 第2WLL
17 接着層
21 第1WLLアレイ
22 第2WLLアレイ
24,32 第1接着層
25,40 エア抜き孔
26,33,43 第2接着層
26a,33a,41,43a 凸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のレンズ部を有するウェハレベルレンズアレイを、個々の前記レンズ部を囲む略枠状の接着層を介して複数積層し、前記ウェハレベルレンズアレイの積層体を各前記接着層の間で切断してレンズモジュールを生成するレンズモジュールの製造方法において、
互いに接着されるウェハレベルレンズアレイの両対向面の一方に、各前記レンズ部をそれぞれ囲みかつその一部に略スリット状のエア抜き孔を有する略枠状の第1接着層を形成する第1接着層形成工程と、
前記両対向面の他方に、前記エア抜き孔と対向する位置に当該エア抜き孔に向けて突出した凸部を有する第2接着層を形成する第2接着層形成工程と、
前記エア抜き孔と前記凸部とを重ね合わせるようにして前記ウェハレベルレンズアレイ同士を接着する接着工程と、
を有することを特徴とするレンズモジュールの製造方法。
【請求項2】
前記第2接着層形成工程は、前記第2接着層を、各前記レンズ部を囲む略枠形状に形成することを特徴とする請求項1記載のレンズモジュールの製造方法。
【請求項3】
前記第2接着層形成工程では、前記第2接着層の前記エア抜き孔に対向する部分の厚みを他の部分よりも厚くすることで前記凸部を形成することを特徴する請求項1または2記載のレンズモジュールの製造方法。
【請求項4】
前記第2接着層形成工程では、前記第2接着層の前記エア抜き孔に対向する部分の幅を他の部分よりも広げることを特徴する請求項3記載のレンズモジュールの製造方法。
【請求項5】
前記第2接着層形成工程の前に、前記他方の対向面の前記エア抜き孔に対向する部分に下地層を形成する下地層形成工程を有しており、前記下地層により前記第2接着層に前記凸部が形成されることを特徴とする請求項1または2記載のレンズモジュールの製造方法。
【請求項6】
前記第1接着層形成工程及び第2接着層形成工程では、それぞれ前記エア抜き孔、前記凸部を複数形成することを特徴とする請求項1ないし5いずれか1項記載のレンズモジュールの製造方法。
【請求項7】
前記第1接着層及び前記第2接着層は略矩形状に形成されており、前記エア抜き孔及び前記凸部は、それぞれ前記第1接着層、前記第2接着層の角部分に形成されることを特徴とする請求項1ないし6いずれか1項記載のレンズモジュールの製造方法。
【請求項8】
前記第1接着層形成工程及び第2接着層形成工程では、それぞれスクリーン印刷により接着剤を前記対向面に塗布して、前記第1接着層、前記第2接着層を形成することを特徴とする請求項1ないし7いずれか1項記載のレンズモジュールの製造方法。
【請求項9】
請求項1ないし8いずれか1項記載のレンズモジュールの製造方法で製造されたレンズモジュールと、
前記レンズモジュールを透過した被写体光を撮像する撮像素子と、を備えることを特徴とする撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【公開番号】特開2012−203195(P2012−203195A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−67726(P2011−67726)
【出願日】平成23年3月25日(2011.3.25)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】