説明

レンズユニット

【課題】
手動に頼らずレンズを移動できるにもかかわらずコンパクトな携帯端末等に搭載可能なレンズユニットを提供する。
【解決手段】
固定具であるねじBをねじ孔Haとの摩擦力に抗してゆるめれば、ハウジングHから、板材Pと一体で圧電素子PZや駆動軸DSを含むアクチュエータACTを軸線方向に引き抜くことができ、破損を回避しながら分解が可能となる。従って、検査して良品であれば再利用も可能となり、部品の歩留まりが向上する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば携帯端末などに組み込み可能なレンズユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、撮像機能付き携帯電話が急速に発達し、例えば200万画素の固体撮像素子を搭載したものも市販されている。このような撮像機能付き携帯電話において、更にオートフォーカス機能やズーム機能を設けると、ユーザーはより多彩な撮影を行うことができて好都合である。これに対し特許文献1には、ズームレンズ機能を備えた携帯電話が開示されている。
【特許文献1】特開2004−80343号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ここで、携帯電話などの携帯端末は、一般的には携帯性が重要視され、その厚さも10mm程度以下に抑えなくてはならないことから、オートフォーカス機能やズーム機構を実現するために、レンズを駆動する小型のモータ等を組み込むことが困難である。そこで、特許文献1においては、ヒンジが付いた折り畳み式の携帯電話において、ユーザーが携帯電話を折り畳んだときに、撮影光学系の光路内に進入する拡張レンズを設け、それにより画角を変更することで、ズーム機能を段階的に実現している。しかしながら、かかるズーム機能では画角を2種類しか得ることができず、撮影の範囲が限られるという問題、及びユーザーが手動で画角を切り替えることになるため、製品としての付加価値の点で劣るという問題がある。又、特許文献1の技術ではオートフォーカス機能を実現できない。
【0004】
本発明は、これらの課題に鑑みてなされたものであり、手動に頼らずレンズを移動できるにもかかわらずコンパクトな携帯端末等に搭載可能なレンズユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のレンズユニットは、
ハウジングと、
レンズを保持し、前記ハウジングに対して移動可能である鏡枠と、
前記ハウジングに対して前記鏡枠を駆動する駆動装置と、
前記駆動装置を前記ハウジングに固定する固定手段と、を有し、
前記固定手段は、前記駆動装置に取り付けられた板材と、前記ハウジングの凹部に装着されたときに発生する摩擦力を利用して前記板材を前記ハウジングに取り付ける固定具とを備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
駆動装置として、例えば圧電素子を用いてレンズを駆動する小型のアクチュエータが開発されている。かかるアクチュエータは小型であることから、携帯端末等に搭載することが容易であり、それを用いてレンズの駆動を行わせることが可能となる。ところが、そのようなアクチュエータはきわめて小さいことから、携帯端末等のハウジングに直接取り付けることが製造上困難な場合もある。そのような場合、一つの取り付け態様として、かかるアクチュエータを板材に接着し、更にその板材をハウジング等に接着することが考えられる。
【0007】
ところが、携帯端末等を組み立てた後に、レンズの駆動不良が発見される場合がある。かかる場合、再度アクチュエータを分解して、アクチュエータ自体に問題があるのか、駆動力の伝達機構に問題があるのか調査し、不良の部品を交換することが必要となる。ところが、板材をハウジングに接着した場合、これを強制的に引き剥がすとアクチュエータまで損傷し、不良の原因が不明となり、またハウジングも破損する。従って、組み付け後にレンズの駆動不良が発見された場合、良品を含んでいるにもかかわらずアッセンブリで交換しなくてはならず、部品の歩留まりが悪くなるという問題がある。
【0008】
これに対し、本発明のレンズユニットによれば、前記固定手段は、前記駆動装置に取り付けられた板材と、前記ハウジングの凹部に装着されたときに発生する摩擦力を利用して前記板材を前記ハウジングに取り付ける固定具とを備えているので、前記固定具を用いることで、接着剤に頼らず前記板材を前記ハウジングに固定でき、且つ前記摩擦力に抗して前記固定具を抜き出すことで、前記板材や前記ハウジングを損傷することなく分解が行えるため、部品交換を容易に行うことができる。
【0009】
前記駆動装置は、前記板材に対しておもりと共に取り付けられた電気機械変換素子と、前記電気機械変換素子の一端に固定され前記鏡枠に相対移動可能に連結された駆動部材と、を有し、前記電気機械変換素子を、伸び方向と縮み方向とで速度を変えて繰り返し伸縮させることで、前記鏡枠を所定の方向に移動させるようになっていると、例えば携帯端末等に搭載可能な小型のアクチュエータを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を図面を用いて説明する。図1は、本実施の形態にかかるレンズユニットを搭載した撮像機能付き携帯電話Tの正面図(a)及びその背面図(b)である。かかる携帯電話Tについて説明する。図1に示すように、携帯電話Tは、表示画面(表示部ともいう)174を備えたケースとしての上筐体171と、操作ボタン群16を備えた下筐体172とがヒンジ173を介して連結されている。レンズと固体撮像素子とを含むレンズユニット100は、上筐体171の内表面側(表示画面174を有する側)の表示画面174の下方に内蔵されており、レンズユニット100内へと、レンズL1,L2(図2参照)を介して上筐体171の外表面から光を取り込めるようになっている。
【0011】
図2は、レンズユニット100の光軸方向断面図である。図2において、ハウジングHに対して、光軸方向に並ぶようにレンズL1,L2を保持した鏡枠LFが、その光軸方向に移動可能に配置されている。又、レンズL1,L2の像側には固体撮像素子CCD(C−MOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)センサでも良い)が配置され、ハウジングHに取り付けられている。更に、アクチュエータACTに接合された板材Pは、円孔Paを介して挿入され、且つハウジングHのねじ孔Haに螺合するねじ(固定具)Bにより、ハウジングHに対して固定されている。なお、板材Pに位置決め用の孔Pb(図3参照)を設け、ハウジングに設けた突起を挿入することで、単一のねじBに関わらず精度良い位置決め固定を行える。板材Pと、ねじBとにより固定手段を構成する。
【0012】
図3は、アクチュエータの取り付け態様を示す斜視図であり、ハウジングは省略して示している。図3において、アクチュエータACTは、以下の順序で、板材Pに接合された重りWと、重りWに接合された圧電素子PZと、圧電素子PZに接合された駆動軸DSとからなる。電気機械変換素子である圧電素子PZは、その周囲に配置された基板PCより電力を供給されるようになっている。圧電素子PZと、駆動軸DSと、連結部LFbと、抑え板SGとで駆動装置を構成する。
【0013】
ハウジングH内を、レンズL1,L2の光軸に平行にガイド軸GSが延在しており、その両端はハウジングHに取り付けられている(図2参照)。又、レンズL1,L2を保持する鏡枠LFには、ガイド軸GSに係合する係合部LFaと、駆動力を受ける連結部LFbとを設けている。
【0014】
連結部LFbはV溝を設けてあり、その上面に、逆V形状に折れ曲がった抑え板SGを取り付けている。連結部LFbのV溝と、抑え板SGとの逆V形状部とは、その間に配置された駆動部材である駆動軸DSの外周面に対して、抑え板SGと連結部LFbとに両端を取り付けたコイルバネCSの付勢力で適度に押圧されている。
【0015】
圧電素子PZは、PZT(ジルコン・チタン酸鉛)などで形成された圧電セラミックスを積層してなる。圧電セラミックスは、その結晶格子内の正電荷の重心と負電荷の重心とが一致しておらず、それ自体分極していて、その分極方向に電圧を印加すると伸びる性質を有している。しかし、圧電セラミックスのこの方向への歪みは微小であり、この歪み量により被駆動部材を駆動することは困難であるため、図4に示すように、複数の圧電セラミックスPEを積み重ねてその間に電極Cを並列接続した構造の積層型圧電素子PZが実用可能なものとして提供されている。本実施の形態では、この積層型圧電素子PZを駆動源として用いているために、きわめてコンパクトなアクチュエータを得ることができるのである。尚、積層型圧電素子PZの代わりに、ロール型の圧電素子を用いることもできる。ロール型の圧電素子については、例えば特開平11−299273号公報,特開2001−44525号公報、特開2001−157471号公報、特開2001−135873号公報等に開示がある。
【0016】
次に、このレンズユニットCUによるレンズL1,L2の駆動方法について説明する。一般に、積層型圧電素子PZは、電圧印加時の変位量は小さいが、発生力は大でその応答性も鋭い。したがって、例えばユーザーが携帯電話のレリーズスイッチ(不図示)を半押し操作することに応じて、不図示のオートフォーカス機構が動作し、測定した被写体距離に応じた位置へとレンズを移動させるために、図5(a)に示すように立ち上がりが鋭く立ち下がりがゆっくりとした略鋸歯状波形のパルス電圧を印加すると、圧電素子PZは、パルスの立ち上がり時に急激に伸び、立ち下がり時にそれよりもゆっくりと縮む。したがって、圧電素子PZの伸長時には、その衝撃力で駆動軸DSが図3の奥側へ押し出されるが、レンズL1,L2を保持した鏡枠LFの連結部LFbと抑え板SGは、その慣性により、駆動軸DSと一緒には移動せず、駆動軸DSとの間で滑りを生じてその位置に留まる(わずかに移動する場合もある)。一方、パルスの立ち下がり時には立ち上がり時に比較して駆動軸DSがゆっくりと戻るので、連結部LFbと抑え板SGが駆動軸DSに対して滑らずに、駆動軸DSと一体的に図3の手前側へ移動する。即ち、周波数が数百から数万ヘルツに設定されたパルスを印加することにより、鏡枠LFを所望の速度で連続的に移動させることができ、それによりレンズL1,L2の光軸方向位置を調整して合焦動作を行い、固体撮像素子CCDの受光面にピントのあった光学像を入射させることができる。尚、以上より明らかであるが、図5(b)に示すように電圧の立ち上がりがゆっくりで、立ち下がりが鋭いパルスを印加すれば、鏡枠LFを逆の方向へ移動させることができる。特に、駆動軸DSとガイド軸GSがまっすぐであれば、鏡枠LFは光軸方向に精度良く移動することとなり、駆動により光軸ずれが生じる場合に比べ、収差劣化を効果的に抑制できる。
【0017】
なお、本実施の形態において、圧電素子PZと板材Pとの間に重りWを配置したのは、携帯電話などの携帯端末においては、ハウジングHに直接圧電素子PZを取り付けることが困難であるため、板材Pを介して取り付けざるを得ず、そうすると圧電素子PZの高周波振動に応じて板材Pが弾性変形し、その分駆動軸DSの移動量が低下するからである。従って、板材Pを厚くできる場合には、重りWを設けなくても良い場合がある。
【0018】
本実施の形態の効果を、比較例を例に取り説明する。図6は、比較例にかかるレンズユニットの図2と同様な断面図である。比較例のレンズユニットは、板材Pがコ字状に折り曲げられており、その両端近傍をハウジングHの側面に接着(BD)している点のみが異なる。
【0019】
携帯端末Tを組み立てた後の検査で、レンズL1,L2の駆動不良が発見された場合、比較例のレンズユニットを分解しようとすると、図6に示すように、板材Pの接着(BD)を強制的にはがさなくてはならないが、板材Pを変形させると重りWを介して圧電素子PZや駆動軸DSに曲げ応力が付与され、その破損を招く恐れがある。
【0020】
これに対し、本実施の形態によれば、図2に示すように、固定具であるねじBをねじ孔Haとの摩擦力に抗してゆるめれば、ハウジングHから、板材Pと一体で圧電素子PZや駆動軸DSを含むアクチュエータACTを軸線方向に引き抜くことができ、破損を回避しながら分解が可能となる。従って、検査して良品であれば再利用も可能となり、部品の歩留まりが向上する。
【0021】
図7は、固定具の変形例を示す部分断面拡大図である。図7において、固定具Bは、ピン状であって中程に大径部Baを有している。固定具Bの頭部Bbは、下部が逆テーパ状になっている。ハウジングHの孔Haは、大径部Baに対応した形状を有する。外方から固定具BをハウジングHの孔Haに強い力で挿入すると、弾性変形することで固定具Bの大径部Baが孔Haの大径部に嵌合する。よって、固定具Bと孔Haとの間に作用する摩擦力で、ハウジングHに対して固定具Bが固定される。なお、それ以外の構成については、上述した実施の形態と同様であるため説明を省略する。
【0022】
固定具Bを取り外す際は、逆テーパ形状である頭部Bbの下部に、図7に示す治具Jの二股部を差し込んで、釘抜きのように梃子の原理で、固定具Bを摩擦力に抗して抜き出すことができる。従って、上述した実施の形態と同様に、ハウジングHから、板材Pと一体で圧電素子PZや駆動軸DSを含むアクチュエータACTを軸線方向に引き抜くことができ、破損を回避しながら分解が可能となる(図2参照)。
【0023】
以上、本発明を実施の形態を参照して説明してきたが、本発明は上記実施の形態に限定して解釈されるべきではなく、適宜変更・改良が可能であることはもちろんである。例えば、携帯端末とは、携帯電話に限らず、PDA(Personal Digital(Data) Assistants)なども含む。 又、本発明を用いてズーム機能を実現しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本実施の形態にかかる携帯電話Tの正面図(a)及びその背面図(b)である。
【図2】レンズユニットの光軸方向断面図である。
【図3】アクチュエータの取り付け態様を示す斜視図である。
【図4】複数の圧電セラミックスPEを積み重ねてその間に電極Cを並列接続した構造の積層型圧電素子PZを示す斜視図である。
【図5】圧電アクチュエータPZに印加される電圧パルスの波形を示す図である。
【図6】比較例にかかるレンズユニットの図2と同様な断面図である。
【図7】固定具の変形例を示す部分断面拡大図である。
【符号の説明】
【0025】
100 レンズユニット
171 上筐体
172 下筐体
173 ヒンジ
174 表示画面
ACT アクチュエータ
B 固定具
Ba 大径部
Bb 頭部
C 電極
CCD 固体撮像素子
CS コイルバネ
DS 駆動軸
GS ガイド軸
H ハウジング
Ha 孔
J 治具
L1,L2 レンズ
LF 鏡枠
LFa 係合部
LFb 連結部
P 板材
PC 基盤
PE 圧電セラミックス
PZ 圧電素子
Pa 円孔
Pb 孔
SG 板
T 携帯電話
W 重り


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと、
レンズを保持し、前記ハウジングに対して移動可能である鏡枠と、
前記ハウジングに対して前記鏡枠を駆動する駆動装置と、
前記駆動装置を前記ハウジングに固定する固定手段と、を有し、
前記固定手段は、前記駆動装置に取り付けられた板材と、前記ハウジングの凹部に装着されたときに発生する摩擦力を利用して前記板材を前記ハウジングに取り付ける固定具とを備えていることを特徴とするレンズユニット。
【請求項2】
前記駆動装置は、前記板材に対しておもりと共に取り付けられた電気機械変換素子と、前記電気機械変換素子の一端に固定され前記鏡枠に相対移動可能に連結された駆動部材と、を有し、前記電気機械変換素子を、伸び方向と縮み方向とで速度を変えて繰り返し伸縮させることで、前記鏡枠を所定の方向に移動させるようになっていることを特徴とする請求項1に記載のレンズユニット。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−113155(P2006−113155A)
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−298327(P2004−298327)
【出願日】平成16年10月13日(2004.10.13)
【出願人】(303000408)コニカミノルタオプト株式会社 (3,255)
【Fターム(参考)】