説明

レンズ付きフィルムユニット

【課題】 青と白とのコントラストがはっきりしたモノクロ写真を得ることができるレンズ付きフィルムユニット。
【解決手段】 予め未露光のモノクロフィルムが装填され、撮影レンズを1枚若しくは2枚のレンズにより構成すると共に、少なくとも1枚のレンズは、550乃至650nmの波長における分光透過率が、400乃至450nmの波長における分光透過率より高く形成され、前記モノクロフィルムのISO感度をS、前記撮影レンズの焦点距離をf(mm)、絞り値をF、シャッタ速度をtとしたとき、下記の条件式を満足することを特徴とするレンズ付きフィルムユニット。
2・(S・t)1/2/280<F<f2・(S・t)1/2/190

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】未露光のモノクロフィルムが装填されたレンズ付きフィルムユニットに関する。
【0002】
【従来の技術】近年、未露光のモノクロフィルムが装填されたレンズ付きフィルムユニットが販売されているが、カラー画像を当然のものとして育った若い世代にとって、モノクロ画像は新鮮に見えるようであり、好調な売れ行きを示している。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかし、前述のモノクロフィルムが装填されたレンズ付きフィルムユニットにおいて、更に良好な写真を得ようとすると、下記の如き対策が必要になる。
【0004】例えば、青い空と白い雲のある風景写真を撮ると、人の眼ではこれらの区別を明確にできるにも拘わらず、青と白とのコントラストがはっきりしない写真になってしまうことがある。これは、フィルムが短波長の青い色に感じやすい点に原因がある。このためには、黄色のフィルターを用いてフィルムに感じやすい短波長の光を吸収すればよい。
【0005】また、フィルムは短波長の青い色ばかりでなく長波長の赤い色にも強く感じるため、女性のポートレートを撮るときにも、人の視感度と異なった写真になることがある。従ってこのためには、青と赤の両端の波長を吸収する黄緑色のフィルターを用いる必要がある。
【0006】しかし、何れのフィルターにしろ、レンズ付きフィルムユニットにフィルターを取り付けることは、部品点数が増加し、コストアップとなるので、低価格が必須用件のレンズ付きフィルムユニットでは実現困難である。
【0007】本発明は上記問題に鑑み、風景や人物の写真が更に良好に撮れるモノクロフィルムを装填したレンズ付きフィルムユニットを提案することを課題とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記課題は下記の構成の何れかにより解決される。
【0009】予め未露光のモノクロフィルムが装填され、撮影レンズを1枚若しくは2枚のレンズにより構成すると共に、少なくとも1枚のレンズは、550乃至650nmの波長における分光透過率が、400乃至450nmの波長における分光透過率より高く形成され、前記モノクロフィルムのISO感度をS、前記撮影レンズの焦点距離をf(mm)、絞り値をF、シャッタ速度をtとしたとき、下記の条件式を満足することを特徴とするレンズ付きフィルムユニット。
【0010】f2・(S・t)1/2/280<F<f2・(S・t)1/2/190予め未露光のモノクロフィルムが装填され、撮影レンズを1枚若しくは2枚のレンズにより構成すると共に、少なくとも1枚のレンズは、550乃至650nmの波長における分光透過率が、400乃至450nmの波長における分光透過率より高く形成され、前記モノクロフィルムのISO感度をS、前記撮影レンズの焦点距離をf(mm)、絞り値をFとしたとき、下記の条件式を満足することを特徴とするレンズ付きフィルムユニット。
【0011】
2・S1/2/2800<F<f2・S1/2/1900予め未露光のモノクロフィルムが装填され、撮影レンズを1枚若しくは2枚のレンズにより構成すると共に、少なくとも1枚のレンズは、500乃至580nmの波長における分光透過率が、400乃至480nmの波長における分光透過率、及び600乃至700nmの波長における分光透過率より高く形成され、前記モノクロフィルムのISO感度をS、前記撮影レンズの焦点距離をf(mm)、絞り値をF、シャッタ速度をtとしたとき、下記の条件式を満足することを特徴とするレンズ付きフィルムユニット。
【0012】f2・(S・t)1/2/280<F<f2・(S・t)1/2/190予め未露光のモノクロフィルムが装填され、撮影レンズを1枚若しくは2枚のレンズにより構成すると共に、少なくとも1枚のレンズは、500乃至580nmの波長における分光透過率が、400乃至480nmの波長における分光透過率、及び600乃至700nmの波長における分光透過率より高く形成され、前記モノクロフィルムのISO感度をS、前記撮影レンズの焦点距離をf(mm)、絞り値をFとしたとき、下記の条件式を満足することを特徴とするレンズ付きフィルムユニット。
【0013】
2・S1/2/2800<F<f2・S1/2/1900
【0014】
【発明の実施の形態】本発明におけるレンズ付きフィルムユニットの実施の形態を図1乃至図2を参照して詳細に説明する。
【0015】レンズ付きフィルムユニットにおいては、低価格を維持するため、撮影レンズは1枚若しくは2枚のレンズにより構成されているが、本発明においては「発明が解決しようとする課題」で述べたようなフィルターを取り付けることをせずに、撮影レンズの少なくとも1枚に、下記の如き方法によりフィルター効果を持たせるものである。
【0016】例えば、特開昭60−221704号公報に開示されているように、樹脂から形成されている撮影レンズの表面に、可視光領域の光線の内、所定の範囲の波長を透過し、所定の範囲の波長を吸収する着色剤にて着色する方法がある。
【0017】また、特開平6−118227号公報に開示されているように、撮影レンズの樹脂材料に、所定の範囲の波長を透過し、所定の範囲の波長を吸収する色素を添加する方法がある。
【0018】更に、撮影レンズの表面に、所定の範囲の波長を透過し、所定の範囲の波長を吸収する蒸着膜を真空蒸着する方法や、高分子フィルムを付着させる方法を用いてもよい。
【0019】なお、フィルター特性としては、図1のグラフに示すものが好ましい。
【0020】例えば、撮影レンズの少なくとも1枚を、グラフY48に示すように、550乃至650nmの波長における分光透過率が、400乃至450nmの波長における分光透過率より高くなるように形成すれば、短波長の光を吸収すするので、青と白とのコントラストがはっきりした写真になる。
【0021】また、撮影レンズの少なくとも1枚を、グラフPOに示すように、500乃至580nmの波長における分光透過率が、400乃至480nmの波長における分光透過率、及び600乃至700nmの波長における分光透過率より高く形成すれば、長波長の光を吸収し、即ち赤みを抑える役割を果たし、女性のポートレートを撮るときにも、赤みのある肌の感じが落ちついた調子に表現され、人の視感度と異なった写真になることがない。更に、人物の背景はY48と同様にコントラストがはっきりするので、晴天時の戸外での人物撮影時に特に効果的である。
【0022】なお、撮影レンズの開放F値をF、モノクロフィルムのISO感度をS、撮影レンズの焦点距離をf(mm)、シャッタ速度をtとしたとき、 f2・(S・t)1/2/280<F<f2・(S・t)1/2/190・・・■を満足するように構成する。
【0023】また、シャッタ速度が1/100程度の場合においては、 f2・S1/2/2800<F<f2・S1/2/1900・・・■を満足するように構成する。
【0024】式■、■において、上限を越えると、通常のレンズ付きフィルムユニットで使用されるISO400程度のフィルムでは露出不足の写真が多くなり、下限を越えると最至近距離が1.4m以上となって近距離の撮影ができなくなる。
【0025】また、焦点距離fに関しても、被写界深度や撮影し易い画角を考慮して、下記の如く規定する。
【0026】27≦f≦33また、撮影レンズの開放F値も8≦Fとするのが望ましい。
【0027】Fが下限を越えると、2枚玉のレンズで構成することが困難になる。ISO400よりも低い感度のフィルムでは、被写界深度を広く取るためには、シャッタ速度を遅くする必要があり、手ぶれ等の問題が生じ易くなるため、使用するフィルムのISO感度はISO400以上のフィルムとするのが望ましい。
【0028】また、レンズ付きフィルムユニットにおいては、撮影レンズによる像が、画面の長辺方向で周辺に向かうに従い、撮影レンズ側に湾曲したフィルム面に結像し、フィルム面における撮影レンズの光軸から長辺方向にhの距離での光軸に垂直な平面からの変位量をΔ、撮影レンズのペッツバール和をP、画面長辺方向の光軸からの最大距離をhmaxとしたとき、下記の条件式となる。
【0029】
1/2(0.8・hmax2・(P−F/700)≦Δ(0.8・hmax
≦1.3・・・■ここで、■式の上限を越えると、画面の長辺方向の画質と短辺方向の画質の差が大きくなり、撮像面の長辺に沿い、撮像面の端部に近い所に写し込まれる被写体に対して発生する樽型の歪みが著しくなり、好ましくない。また、■式の下限を越えると、撮像面の長辺方向の周辺部で画質が劣化する。
【0030】また、撮影レンズによる像が、曲率半径Rの円筒側面の一部により形成され、画面の長辺方向で周辺に向かうに従い、撮影レンズ側に湾曲したフィルム面に結像し、撮影レンズのペッツバール和をPとしたとき、下記の条件式となる。
【0031】80≦R≦(P−F/700)・・・■ここで、■式の上限を越えると、像面湾曲に対し撮像面の湾曲量が不足し、画面の長辺方向で周辺部の画質が劣化する。また、■式の下限を越えると、画面長辺方向と短辺方向とで画質の差が大きくなり過ぎると共に、滑らかなフィルム給送が困難になる。
【0032】
【実施例】以上述べた撮影レンズの実施例を以下に示す。
【0033】なお、使用する符号の意味は下記の通りである。
【0034】r:屈折面の曲率半径(mm)
D:屈折面の間隔(mm)
n:レンズ材料のd線における屈折率ν:レンズ材料のアッベ数f:全系の焦点距離F:FナンバーP:ペッツバール和X:レンズ第1面から最も像側の開口絞りまでの距離(mm)
ω:半画角(度)
TL:レンズ全長(レンズ第1面から結像面までの距離)
1 :第1レンズの焦点距離f2 :第2レンズの焦点距離また、本発明の非球面の形状は、光軸方向をX軸、光軸と直交する方向をY軸とするとき、次式で表される。
【0035】
【数1】


【0036】但し、K,A2iは非球面係数である。
【0037】また、以下の実施例では結像面が画面の長辺方向について、曲率半径Rでレンズ側に湾曲するシリンドリカルな面になっている。
【0038】〔第1実施例〕レンズデータを表1に示す。
【0039】
【表1】


【0040】なお、第1面が非球面であり、非球面係数としては、 K=0,A4=0.2390×10-4(i≧3ではA2i=0)
また、f=30.00 F=8.00 P=0.0247 X/f=0.132 ω=44.93 TL=26.4 f1/f2=0.29 (r3+r4)/(r3−r4)=−4.
7 R=110である。
【0041】なお、図2に第1実施例のレンズ断面図を示す。1は第1レンズ、2は第2レンズ、3は開口絞りである。
【0042】〔第2実施例〕レンズデータを表2に示す。
【0043】
【表2】


【0044】なお、第1面が非球面であり、非球面係数としては、 K=−0.3445 A4 =3.5117×10-16 =0.13334×10-58 =−0.90823×10-11 10=0.14826×10-15 また、f=27.00 F=8.00 P=0.0210 X/f=0.120 ω=39.28 TL=26.84 f1/f2=1.40 (r3+r4)/(r3−r4)=−0.
1 R=101である。
【0045】〔第3実施例〕レンズデータを表3に示す。
【0046】
【表3】


【0047】なお、第1面が非球面であり、非球面係数としては、 K=−1.309 A4 =0.38556×10-36 =0.16781×10-48 =−0.83376×10-610=0.12682×10-7 また、f=33.00 F=8.00 P=0.0232 X/f=0.200 ω=33.5 TL=33.96 f1/f2=0.47 (r3+r4)/(r3−r4)=−5.
0 R=103である。
【0048】以上の各実施例は、絞りを固定絞りとして使用することを前提とした例を示しているが、絞りは可変絞りとしても良い。なお、この場合においては、開放絞り値が前述の条件式を満足するようにすればよい。
【0049】
【発明の効果】請求項1、2に記載のレンズ付きフィルムユニットによれば、青と白とのコントラストがはっきりし、しかも露出不足にならないモノクロ写真を得ることができる。
【0050】請求項3、4に記載のレンズ付きフィルムユニットによれば、女性のポートレートを撮るときにも、赤みのある肌の感じが落ちついた調子に表現され、人の視感度と異なった写真になることがなく、しかも露出不足にならないモノクロ写真を得ることができる。
【0051】請求項5に記載のレンズ付きフィルムユニットによれば、多くても2枚のレンズで構成できるので、安価なレンズ付きフィルムユニットが実現できる。
【0052】請求項6に記載のレンズ付きフィルムユニットによれば、撮影し易い画角にて且つ近距離まで撮影可能である。
【0053】請求項7、8に記載のレンズ付きフィルムユニットによれば、像面湾曲が良好なレンズ付きフィルムユニットが実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】フィルター特性の図である。
【図2】第1実施例のレンズ断面図である。
【符号の説明】
1 第1レンズ
2 第2レンズ
3 開口絞り

【特許請求の範囲】
【請求項1】 予め未露光のモノクロフィルムが装填され、撮影レンズを1枚若しくは2枚のレンズにより構成すると共に、少なくとも1枚のレンズは、550乃至650nmの波長における分光透過率が、400乃至450nmの波長における分光透過率より高く形成され、前記モノクロフィルムのISO感度をS、前記撮影レンズの焦点距離をf(mm)、絞り値をF、シャッタ速度をtとしたとき、下記の条件式を満足することを特徴とするレンズ付きフィルムユニット。
2・(S・t)1/2/280<F<f2・(S・t)1/2/190
【請求項2】 予め未露光のモノクロフィルムが装填され、撮影レンズを1枚若しくは2枚のレンズにより構成すると共に、少なくとも1枚のレンズは、550乃至650nmの波長における分光透過率が、400乃至450nmの波長における分光透過率より高く形成され、前記モノクロフィルムのISO感度をS、前記撮影レンズの焦点距離をf(mm)、絞り値をFとしたとき、下記の条件式を満足することを特徴とするレンズ付きフィルムユニット。
2・S1/2/2800<F<f2・S1/2/1900
【請求項3】 予め未露光のモノクロフィルムが装填され、撮影レンズを1枚若しくは2枚のレンズにより構成すると共に、少なくとも1枚のレンズは、500乃至580nmの波長における分光透過率が、400乃至480nmの波長における分光透過率、及び600乃至700nmの波長における分光透過率より高く形成され、前記モノクロフィルムのISO感度をS、前記撮影レンズの焦点距離をf(mm)、絞り値をF、シャッタ速度をtとしたとき、下記の条件式を満足することを特徴とするレンズ付きフィルムユニット。
2・(S・t)1/2/280<F<f2・(S・t)1/2/190
【請求項4】 予め未露光のモノクロフィルムが装填され、撮影レンズを1枚若しくは2枚のレンズにより構成すると共に、少なくとも1枚のレンズは、500乃至580nmの波長における分光透過率が、400乃至480nmの波長における分光透過率、及び600乃至700nmの波長における分光透過率より高く形成され、前記モノクロフィルムのISO感度をS、前記撮影レンズの焦点距離をf(mm)、絞り値をFとしたとき、下記の条件式を満足することを特徴とするレンズ付きフィルムユニット。
2・S1/2/2800<F<f2・S1/2/1900
【請求項5】 絞り値が下記の条件式を満足することを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載のレンズ付きフィルムユニット。
8≦F
【請求項6】 焦点距離が下記の条件式を満足することを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載のレンズ付きフィルムユニット。
27≦f≦33400≦S
【請求項7】 前記撮影レンズによる像が、画面の長辺方向で周辺に向かうに従い、前記撮影レンズ側に湾曲したフィルム面に結像し、前記フィルム面における前記撮影レンズの光軸から長辺方向にhの距離での光軸に垂直な平面からの変位量をΔ、前記撮影レンズのペッツバール和をP、画面長辺方向の光軸からの最大距離をhmaxとしたとき、下記の条件式を満足することを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載のレンズ付きフィルムユニット。
1/2(0.8・hmax2・(P−F/700)≦Δ(0.8・hmax
≦1.3
【請求項8】 前記撮影レンズによる像が、曲率半径Rの円筒側面の一部により形成され、画面の長辺方向で周辺に向かうに従い、前記撮影レンズ側に湾曲したフィルム面に結像し、前記撮影レンズのペッツバール和をPとしたとき、下記の条件式を満足することを特徴とする請求項1〜7の何れか1項に記載のレンズ付きフィルムユニット。
80≦R≦(P−F/700)

【図1】
image rotate


【図2】
image rotate