説明

レンズ位置検出装置及びレンズ装置

【課題】コンパクトな構成でレンズの絶対位置を高精度に検出することができ、比較的大きな移動量にも対応した広い検出範囲を実現することができるレンズ位置検出装置及びこれを適用したレンズ装置を提供する。
【解決手段】レンズ枠(142)又は該レンズ枠の移動に連動する可動部に設けた第1のシートコイル(171)と、これに対面する第2のシートコイル(172)のいずれか一方を励磁コイル、他方を検出コイルとし、レンズ枠(142)の移動に伴い第1のシートコイル(202)が第2のシートコイル(172)との対面距離を保って移動することにより、当該移動位置に応じて検出コイルから出力される電気信号に基づきレンズの位置を検出する。また、第1のシートコイル(171)と接続された第1の信号伝達用コイル(180)と、これに対面する固定部(112)に設けた第2の信号伝達用コイル(190)の磁気結合により、非接触で信号を伝える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はレンズ位置検出装置及びレンズ装置に係り、特に焦点調節または変倍機構を有するレンズ装置における可動レンズの位置検出に好適な位置検出技術及びこれを適用したレンズ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、レンズ位置を検出する手段として、レンズ駆動用モータの出力軸または動力伝達ギアの回転数を検出する方式が知られている(特許文献1)。この方式は、回転部に取り付けた円盤状のスリット板とフォトインタラプタによりパルス信号を発生させ、このパル数をカウントすることによりレンズ位置を検出する構成である。
【0003】
しかし、当該方式は、移動対象であるレンズの位置を直接検出するものではなく、駆動機構の回転量から間接的にレンズの位置を把握するものであり、動力伝達系に多数のギアが存在するためバックラッシ等の機構的要因により高精度の検出が難しい。
【0004】
また、他の検出手段として、レンズ鏡胴の固定枠部に発光素子と受光素子を配置する一方、移動枠部に回折格子を配置してパルス信号を発生させ、このパルス数をカウントする構成も提案されている(特許文献2)。
【0005】
しかし、同文献2に記載の方式は、光学式であるため塵埃等の影響を受けやすく信頼性に欠けるとともに、回折格子の加工精度が検出精度に大きく影響し、高精度の検出を実現するための回折格子の製造が困難である。
【0006】
更に、特許文献1、2に記載の方式はいずれも、パルス数のカウントによる相対的な位置検出であるため、絶対位置を検出するためには、一度、原点復帰を行う必要がある。或いはまた、絶対位置を検出するために、別途、絶対位置を検出するための機構が必要であり、小型化、低コスト化に不利である。
【0007】
かかる課題に対し、平面インダクタ部材と導電部材との対面距離を変化させる構成により平面インダクタ部材から得られる電気信号の変化からレンズ位置を検出する方式が提案されている(特許文献3)。
【特許文献1】特開平1−217408号公報
【特許文献2】特開平2−77708号公報
【特許文献3】特許第4129411号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献3に記載の方式は、平面インダクタ部材と導電部材との対面距離が大きくなるにつれて急激に信号が小さくなるため(同文献3の段落[0017]及び図5参照)、レンズ位置を検出できる範囲が狭く、位置が遠くなると検出精度が悪くなるという問題がある。かかる欠点に対して、特許文献3では、複数の平面インダクタ部材を用いることで検出範囲を拡張する構成が開示されているものの、平面インダクタ部材の個数が増えて検出部の構成が複雑になる上、拡張できる範囲も2〜3倍程度であり、例えば、テレビカメラ用のレンズ装置などレンズ移動量が数十ミリというオーダーの移動量に対して検出範囲を確保することは実際に困難である。
【0009】
また、特許文献3に記載の技術以外にレンズの位置を非接触で検出する手段として、磁気抵抗素子(MRセンサ)を用いる態様も知られている。しかしながら、MRセンサはマグネットとセンサ間のギャップが短く、両者を近接して配置(概ね100μm程度の距離内に配置)する必要があるため、配置する場所が限定される。
【0010】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、コンパクトな構成でレンズの絶対位置を高精度に検出することができ、比較的大きな移動量にも対応した広い検出範囲を実現することができるレンズ位置検出装置及びこれを適用したレンズ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は前記目的を達成するために、固定枠に対し移動可能なレンズの位置を検出するレンズ位置検出装置であって、前記レンズを保持するレンズ枠又は該レンズ枠の移動に連動する可動部に設けられた第1のシートコイルと、前記第1のシートコイルに対向し、所定の対面距離を隔てて配置される第2のシートコイルと、前記第1のシートコイルに接続され、前記第1のシートコイルとともに前記レンズ枠又は前記可動部に設けられた第1の信号伝達用コイルと、前記第1の信号伝達用コイルに対面する固定部に設けられ、前記第1の信号伝達用コイルと磁気結合される第2の信号伝達用コイルと、前記第1のシートコイル及び前記第2のシートコイルのいずれか一方を励磁コイル、他方を検出コイルとし、前記励磁コイルに励磁信号を与える励磁回路と、前記レンズ枠の移動に伴い前記第1のシートコイルが前記第2のシートコイルとの対面距離を保って前記第2のシートコイルに平行な面内で移動することにより、当該移動位置に応じて前記検出コイルから出力される電気信号により前記レンズの位置を検出する信号処理回路と、を備え、前記第1の信号伝達用コイル及び第2の信号伝達用コイルを介して前記励磁信号又は前記電気信号の伝達が行われることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、平面状のコイル(シートコイル)を用い、コイル面間の距離を変えずに、レゾルバの原理によってレンズ位置を検出するため、検出部の薄型化、小型化が可能であり、レンズの絶対位置を高精度に検出することができる。また、コイルの長さの設計によって広い検出範囲にも対応することができる。更に、本発明によれば、可動部に設けられる第1のシートコイルと非接触の磁気結合によって信号伝達がなされるため、信号線の引き回しや、摺動接点などが不要であり、信頼性の向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、添付図面を参照して本発明の好ましい実施形態について詳細に説明する。
【0014】
<検出装置の原理>
図1は、本発明の実施形態に係るレンズ位置検出装置における検出部の構成例を示す図である。ここでは、平面状のシートコイル10、20を利用したリニアタイプのレゾルバ30を例に説明する。図示のレゾルバ30は、一次側の励磁コイル32と、二次側の検出コイル36の対から構成される。一次側の励磁コイル32は、第1の励磁信号(sin波)を入力する第1励磁コイルパターン32Aと、第2の励磁信号(cos波)を入力する第2励磁コイルパターン32Bとを有し、両者は互いに絶縁されている。
【0015】
第1励磁コイルパターン32Aと第2励磁コイルパターン32Bは、それぞれ図1のように、矩形のつづら折り(メアンダ)状導体パターンからなり、両者のコイルパターンにおける折り返しピッチは等しく、両者は互いに電気角で90°位相を異ならせた空間的な位置関係で配置されている。
【0016】
この励磁コイル32に対向して配置される二次側の検出コイル36は、一次側の第1励磁コイルパターン32A(又は第2励磁コイルパターン32B)と同様に、矩形のつづら折り(メアンダ)状導体パターンからなり、折り返しピッチも励磁コイルパターン32A、32Bと同等である。
【0017】
励磁コイル32に励磁信号を与えることにより、コイル面の垂直方向に折り返しピッチを反映した正負の磁界が発生し、検出コイル36と鎖交する磁束の変化に応じて検出コイル36から出力信号が得られる。
【0018】
検出コイル36と励磁コイル32は、一定の対面距離dを隔てて対向配置され、この対面距離dを保ったまま、両者が面方向(図1の矢印Hで示す直進方向)に相対移動することにより、その位置関係に対応した変位量(図中のθ)に応じて、二次側の検出信号の位相が変化する。
【0019】
第1励磁コイルパターン32Aに励磁波V1=A・sin(ωt)を入力し、第2励磁コイルパターン32Bに励磁波V2=A・cos(ωt)を入力すると、検出コイル36に誘起される二次側信号Eは、変位量θに相当する回転角に応じてE=a・sin(ωt±θ)の信号が得られる。
【0020】
本例では、励磁信号(V1)により高周波信号を振幅変調し、かつ当該高周波信号の極性を励磁信号の極性反転位置で反転させた変調信号(V1を包絡線とする高周波励磁信号)V1’=Asin(ωt)×sin(n・ωt)を第1励磁コイルパターン32Aに入力させる。また、第2励磁コイルパターン32Bには、励磁信号(V2)により高周波信号を振幅変調し、かつ当該高周波信号の極性を励磁信号の極性反転位置で反転させた変調信号(V2を包絡線とする高周波励磁信号)高周波励磁信号V2’=Acos(ωt)×sin(n・ωt)を入力させる。
【0021】
検出コイル36に誘起される電圧信号を復調することにより、励磁コイル32に対する検出コイル36の変位量θに相当する位相差を求めることができる。
【0022】
このように変調した高周波励磁を利用する2相励磁1相検出方式の原理及び回路構成については、特許第3047231号の明細書に記載されている。
【0023】
なお、レゾルバの原理から1相励磁2相検出方式も可能であり(例えば、特開平8−292066号公報参照)、本発明の実施に際しては、対向して配置されるコイルの役割について入れ替えが可能である。
【0024】
<レンズ装置の構成例>
図2は、レンズ装置110の構成例を示す一例を示す構成図である。図2において、レンズ鏡胴112内には、前方にフォーカスレンズ114が配置され、フォーカスレンズ114の後方には、変倍レンズ116と補正レンズ118、及びリレーレンズ120が順に配置されている。なお、各レンズは複数枚のレンズを組み合わせたレンズ群によって構成されてもよい。
【0025】
フォーカスレンズ114は枠体(「レンズ枠」に相当)122に保持され、この枠体122は撮影光軸124と平行に配設された不図示のガイド棒にスライド移動自在に支持される。また、枠体122にはピン128が突設され、このピン128はレンズ鏡胴112に形成された長孔130を介して移動駒132に固着されている。移動駒132は、撮影光軸124と平行に敷設されたリードスクリュウ134に螺合されており、また、このリードスクリュウ134はギア136、138を介してモータ140に連結されている。従って、モータ140の回転駆動力をギア138、136を介してリードスクリュウ134に伝達すると、移動駒132がリードスクリュウ134に沿って前後移動するので、フォーカスレンズ114を光軸124に沿って前後移動させることができる。これにより、フォーカスレンズ114による焦点調節が行われる。
【0026】
変倍レンズ116と補正レンズ118とは、レンズ鏡胴112の小径部112A内にそれぞれ配置される。変倍レンズ116は枠体142に保持され、この枠体142の外周面には、3本のガイドピン144(図3において2本は図示せず)が円周方向に対して120°の間隔で突設されている。これらのガイドピン44は、小径部112Aの内周面112Bに撮影光軸124と平行に形成された直進溝146Aにスライド移動自在に支持されている。これにより、変倍レンズ116は、光軸124方向に前後移動することができる。また、変倍レンズ116の枠体142にはカムピン148が突設される。このカムピン148は、レンズ鏡胴112の小径部112Aに形成された長孔150を介して、レンズ鏡胴112と並設されたカム筒152の変倍用カム溝154に係合されている。
【0027】
同様に、補正レンズ118は枠体162に保持される。この枠体162の外周面には、3本のガイドピン(不図示)が120°の間隔(変倍レンズ116と異なる位相)で突設され、これらのガイドピンは、レンズ鏡胴112の小径部112Aの内周面112Bに撮影光軸124と平行に形成された直進溝(不図示)にスライド移動自在に支持されている。これにより、補正レンズ118は、光軸124方向に前後移動することができる。また、補正レンズ118の枠体162にはカムピン168が突設され、このカムピン168は、レンズ鏡胴112の小径部112Aの長孔150を介してカム筒152の補正用カム溝170に係合されている。
【0028】
カム筒152は、ギア156、158を介してモータ160に連結され、モータ160からの駆動力で回転することができる。カム筒152をモータ160で回転させると、変倍レンズ116は変倍用カム溝154に沿って前後移動し、補正レンズ118は補正用カム溝170に沿って前後移動する。この前後移動によって、焦点距離が変倍レンズ116によって変えられ、そして、変倍レンズ116の移動によって発生するピントのズレが補正レンズ118によって補正される。
【0029】
上記のようなレンズ装置110における移動レンズ(フォーカスレンズ114、変倍レンズ116、補正レンズ118の少なくとも1つ)について、レンズ位置を検出する手段として、図1で説明したレゾルバ30を適用する。
【0030】
<取付例>
図3は、レゾルバ30の取り付け例を示す要部構成図である。図3において、符号112は、固定枠に相当するレンズ鏡胴の本体(以下、必要に応じて「固定鏡胴」という。)、符号142は変倍レンズ116の枠体(「移動枠」に相当)である。ここでは、変倍レンズ116の位置を検出する手段を例に説明するが、図2で説明した他の移動レンズ(フォーカスレンズ114、補正レンズ118)についても同様の構成を採用し得る。
【0031】
図3のように、枠体142の外周面に、リニア(直動)タイプのレゾルバ30を構成する第1シートコイル171(例えば、図1の符号10に相当)を取り付け、これと対向する固定鏡胴112の内周面112Bに第2シートコイル172(図1の符号20に相当)を取り付ける。なお、どちらのシートコイルを励磁側(一次側)、検出側(二次側)とする構成も可能であるが、図1の例において、励磁側は2相の励磁巻線となるため配線の関係上、移動する枠体142に検出側(二次側)のシートコイルを取り付ける態様が好ましい。
【0032】
図3では、枠体142に取り付けた第1シートコイル171から検出信号を取り出す手段として、枠体142の側面部に信号送り出しコイル180が設けられ、固定鏡胴側に信号取り出しコイル190が設けられている。信号送り出しコイル180は、レゾルバ30を構成する第1シートコイル171と接続されており、第1シートコイル171に誘起される電圧により信号送り出しコイル180に電流が流れる。
【0033】
図中の符号182、184は、第1シートコイル171と信号送り出しコイル180とを電気接続する配線部材である。配線部材182、184は、枠体142の周面にパターニングされた導体パターンとする構成が好ましいが、ケーブルを用いてもよい。
【0034】
信号送り出しコイル180は、枠体142が移動する方向(レンズの光軸方向)に長く延在し、第1シートコイル171に流れる電流によって信号送り出しコイル180にはコイル面に垂直な方向(枠体142の外周面に対して垂直な方向)の磁束が発生する。また、第1シートコイル171に流れる電流変化により信号送り出しコイル180の垂直方向の磁束が変化する。
【0035】
一方、信号送り出しコイル180から所定の対面距離を隔てて固定鏡胴112に取り付けられた信号取り出しコイル190は、信号送り出しコイル180とオーバーラップして対向する位置に設けられており、信号取り出しコイル190を貫く磁束(鎖交磁束数)の変化によって信号取り出しコイル190に電圧が誘起され、電流が流れる。
【0036】
信号送り出しコイル180のコイル面上に発生する磁束のコイル面に垂直な方向の成分は、当該信号送り出しコイル180の長手方向(延在方向)位置によらず略一定(一様な磁束密度)であり(図4参照)、信号送り出しコイル180は、このような略均一の磁束を発生させるコイルパターン形状を有する。
【0037】
一方、信号取り出しコイル190の面積は一定であり、枠体142の移動に伴い信号送り出しコイル180が移動する際、信号取り出しコイル190とのオーバーラップ面積が常に一定に保たれるように、枠体142のストロークに対応して、信号送り出しコイル180の長さ及び取り付け位置並びに信号取り出しコイル190の取り付け位置が設計される。
【0038】
かかる構成により、信号取り出しコイル190を貫く磁束(鎖交磁束数)の変化が枠体142の位置(信号送り出しコイル180に対する信号取り出しコイル190の軸方向の相対位置)に依存しないものとなっている。
【0039】
レゾルバ30を構成する第1シートコイル171に流れる電流変化により信号送り出しコイル180の垂直方向の磁束が変化するが、信号送り出しコイル180(枠体142)が移動しても、信号取り出しコイル190を貫く磁束は両者の相対位置によらず一定であり、第1シートコイル171に流れた信号を非接触で信号取り出しコイル190から取り出すことができる。
【0040】
本実施形態によれば、可動部である枠体142の第1シートコイル171からの配線の引き回しが不要となる。また、磁気結合による非接触の信号伝達形態であるため、電気接点の接触不良などの問題が発生せず、信頼性に優れる。
【0041】
本実施形態の構成により、レンズの位置を直接的に検出することにより、バックラッシ等の要因を排除した高精度の位置検出が可能である。
【0042】
なお、信号送り出しコイル180及び信号取り出しコイル190の取り付け位置は様々な設計が可能であるが、レゾルバ30の励磁コイル32のコイル面と、信号取り出しコイル190のコイル面とが互いに直交する位置関係で配置される態様が好ましい。かかる配置形態によれば、励磁コイル32が発生する磁束によるノイズ成分を大幅に低減することができる。
【0043】
<レンズ装置のブロック図>
図5は、レンズ装置110の回路構成の例を示すブロック図である。同図における二相の励磁コイル202、204は、図1で説明した符号32A、32Bに相当する。また、図5における検出コイル206は、図1で説明した符号36に相当する。検出コイル206は、信号送り出しコイル180と接続されており、この検出コイル206及び信号送り出しコイル180は、図2で説明したフォーカスレンズ14や変倍レンズ116などの移動レンズの枠体122、144その他の可動部208に取り付けられる(図5参照)。
【0044】
図5に示したように、二相の励磁コイル202、204は、それぞれ励磁回路212、214から励磁信号が入力される。励磁回路212、214の詳細な構成は図示しないが、例えば、特許第3047231号に開示されているように、発振回路、カウンタパルス回路、高周波信号生成回路、励磁信号生成回路、極性反転回路、変調回路等を含んで構成される。
【0045】
励磁回路212、214が搭載される検出回路部220には、検出コイル206から出力される電気信号を処理する信号処理回路230が含まれている。本例では、検出コイル206の信号を信号送り出しコイル180と信号取り出しコイル190の磁気結合によって取り出し、信号処理回路230に入力する構成となっている。信号処理回路230の詳細な構成は図示しないが、信号処理回路230は変調信号を復調して検出信号を得る復調回路と、復調された検出信号から、検出コイル206と励磁コイル202、204の相対位置(変位量、回転角度)を検出してレンズの位置情報を出力する位置演算回路を含む。
【0046】
信号処理回路230で得られた位置情報はレンズ位置制御回路240に通知され、レンズ位置制御回路240はこの位置情報からレンズの現在位置(絶対位置)を把握する。
【0047】
レンズ位置制御回路240は、駆動回路242を制御し、モータ244の駆動によって移動レンズ(例えば、図2で説明したフォーカスレンズ14や変倍レンズ116など)を移動させる。
【0048】
レンズ位置制御回路240は、信号処理回路230から取得する位置情報に基づいて、モータ244を自動制御することができ、オートフォーカス制御やオートズーム制御が可能である。また、レンズ位置制御回路240は、不図示の表示部にレンズ位置の情報を表示させることができる。
【0049】
<本実施形態の他の利点について>
上述した実施形態によれば、以下のような利点がある。
【0050】
[1]従来のポテンショメータやフォトインタラプタなどの位置検出器が不要となり、省スペース化を図ることができる。
【0051】
[2]レンズの絶対位置を検出することができる。
【0052】
[3]磁気を利用した検出のため、光学式に比べて、ゴミ等の影響によるノイズが少なく、信頼性が高い。
【0053】
[4]コイル間の対面距離が不変であるため検出信号が安定しており、高精度の検出が可能である。
【0054】
[5]直進方向の位置(変位)検出、回転方向の位置(角度)検出のいずれの形態も設計可能であり、コイル長の設計により検出範囲の拡張も容易である。
【0055】
[6]コイルのプリントパターン化により、微細化が可能であり、小型化、高分解能化、低コスト化が可能である。
【0056】
[7]励磁コイル及び検出コイルに変調信号による高周波電流が流れるため、平面状のシートコイル(巻数の少ないコイル)でも十分な検出信号が得られる。
【0057】
[8]温度の変化に対して検出信号の変動が少なく、安定した検出が可能である。
【0058】
[9]検出回路のIC化により、回路の小型化が可能である。
【0059】
<他の変形例1>
図2では、固定鏡胴112の外部にカム筒152を配置する構成を説明したが、本発明の実施に際して、レンズ装置の構造は図2の例に限定されない。例えば、固定鏡胴の内側にカム筒が回動自在に設けられ、該カム筒の内側に変倍レンズ等の移動レンズが配置される構造のレンズ装置についても適用可能である。
【0060】
この場合、移動レンズを保持するレンズ枠(以下「移動枠」という。)に突設されたカムピンがカム筒のカム溝に係合し、カム筒の回転によってレンズ枠を光軸方向に移動させる構造となる。かかる構造において、移動枠にレゾルバ30の第1シートコイルを設け、固定鏡胴に第2シートコイルを設ける態様が可能である。第1シートコイルと第2シートコイルの間にカム筒が介在する場合でも、励磁コイルによって発生する磁束は検出コイルと鎖交するため、検出信号が得られる。
【0061】
<他の変形例2>
図3では、固定鏡胴(レンズ鏡胴の本体)に対して移動枠が光軸周りに回転せずに直進移動する構造を例示したため、信号送り出しコイル180を光軸方向と平行に直線的に延在させる形態で配置したが、本発明の実施に際して、信号送り出しコイルは必ずしも軸方向に平行でなくてもよい。例えば、移動枠が回転しながら直進移動する構造の場合、信号送り出しコイルは、移動枠の周面において、光軸方向に対して斜めに形成されていてもよい。
【0062】
<他の変形例3>
上述の実施形態では、移動枠の位置を直接的に検出する構成を説明したが、移動枠の動きに連動する可動部にレゾルバ30と同様の構成を適用し、レンズ位置を間接的に把握する態様も可能である。例えば、移動枠を移動させる駆動機構としてのカム筒、カム筒に動力を伝達するベルト、ギアその他の動力伝達機構などの可動部にレゾルバ30と同様の構成を適用し、図3で説明した信号送り出しコイル180と信号取り出しコイル190と類似の構成によって、磁気結合を利用してレゾルバ30から信号を取り出すことができる。
【0063】
<他の変形例4>
上述の実施形態では、検出コイルからの電気信号を非接触で取り出す例を説明したが、同様の原理により、励磁コイルに対して励磁信号を非接触で伝達することが可能である。
【0064】
<他の変形例5>
平面状のコイルパターンの形態は、メアンダ形状に限らず、スパイラル形状でもよい。
【0065】
<付記>
上記に詳述した実施形態についての記載から把握されるとおり、本明細書では以下に示す発明を含む多様な技術思想の開示を含んでいる。
【0066】
(発明1): 固定枠に対し移動可能なレンズの位置を検出するレンズ位置検出装置であって、前記レンズを保持するレンズ枠又は該レンズ枠の移動に連動する可動部に設けられた第1のシートコイルと、前記第1のシートコイルに対向し、所定の対面距離を隔てて配置される第2のシートコイルと、前記第1のシートコイルに接続され、前記第1のシートコイルとともに前記レンズ枠又は前記可動部に設けられた第1の信号伝達用コイルと、前記第1の信号伝達用コイルに対面する固定部に設けられ、前記第1の信号伝達用コイルと磁気結合される第2の信号伝達用コイルと、前記第1のシートコイル及び前記第2のシートコイルのいずれか一方を励磁コイル、他方を検出コイルとし、前記励磁コイルに励磁信号を与える励磁回路と、前記レンズ枠の移動に伴い前記第1のシートコイルが前記第2のシートコイルとの対面距離を保って前記第2のシートコイルに平行な面内で移動することにより、当該移動位置に応じて前記検出コイルから出力される電気信号により前記レンズの位置を検出する信号処理回路と、を備え、前記第1の信号伝達用コイル及び第2の信号伝達用コイルを介して前記励磁信号又は前記電気信号が伝達されることを特徴とするレンズ位置検出装置。
【0067】
(発明2):発明1に記載のレンズ位置検出装置において、前記第1のシートコイル及び前記第2のシートコイルのいずれか一方は、電気角で90°位相を異ならせた空間位置に形成された第1のコイルパターンと第2のコイルパターンとを有する二相のコイルであり、他方のシートコイルは、第3のコイルパターンが形成された一相のコイルであることを特徴とするレンズ位置検出装置。
【0068】
二相励磁一相検出方式を採用することも可能であるし、一相励磁二相検出方式を採用することも可能である。
【0069】
(発明3):発明2に記載のレンズ位置検出装置において、前記二相のコイルを前記励磁コイルとして用い、前記一相のコイルを前記検出コイルとして用いることを特徴とするレンズ位置検出装置。
【0070】
(発明4):発明2又は3に記載のレンズ位置検出装置において、前記第1のシートコイルが前記一相のコイルであり、前記第2のシートコイルが前記二相のコイルであることを特徴とするレンズ位置検出装置。
【0071】
電気的接続を得るための配線数などを考慮すると、固定部に二相のコイルを配置し、可動部に一相のコイルを配置する形態が好ましい。
【0072】
(発明5):発明1乃至4のいずれか1項に記載のレンズ位置検出装置において、前記第2の信号伝達用コイルと前記励磁コイルとは、互いのコイル面が直交する位置関係で配置されることを特徴とするレンズ位置検出装置。
【0073】
かかる態様によれ、励磁コイルに起因するノイズを低減できる。
【0074】
(発明6):レンズを保持するレンズ枠と、前記レンズ枠を移動自在に支持する固定枠と、前記レンズ枠を移動させる駆動機構と、前記レンズ枠又は該レンズ枠の移動に連動する可動部に設けられた第1のシートコイルと、前記第1のシートコイルに対向し、所定の対面距離を隔てて配置される第2のシートコイルと、前記第1のシートコイルに接続され、前記第1のシートコイルとともに前記レンズ枠又は前記可動部に設けられた第1の信号伝達用コイルと、前記第1の信号伝達用コイルに対面する固定部に設けられ、前記第1の信号伝達用コイルと磁気結合される第2の信号伝達用コイルと、前記第1のシートコイル及び前記第2のシートコイルのいずれか一方を励磁コイル、他方を検出コイルとし、前記励磁コイルに励磁信号を与える励磁回路と、前記レンズ枠の移動に伴い前記第1のシートコイルが前記第2のシートコイルとの対面距離を保って前記第2のシートコイルに平行な面内で移動することにより、当該移動位置に応じて前記検出コイルから出力される電気信号により前記レンズの位置を検出する信号処理回路と、を備え、前記第1の信号伝達用コイル及び第2の信号伝達用コイルを介して前記励磁信号又は前記電気信号が伝達されること特徴とするレンズ装置。
【0075】
本発明によれば、コンパクトな構成でレンズの絶対位置を高精度に検出することができる信頼性の高いレンズ装置を実現できる。なお、本発明はテレビカメラ用のレンズ装置、ビデオカメラ用のレンズ装置、写真カメラ用のレンズ装置など、様々なレンズ装置に適用可能である。
【0076】
(発明7):発明6に記載のレンズ装置において、前記レンズ枠は光軸方向に移動可能であり、前記第1のシートコイルは、前記レンズ枠の側面部に設けられ、前記第2のシートコイルは、前記固定枠に設けられることを特徴とするレンズ装置。
【0077】
レンズ枠の位置を直接的に検出することにより、バックラッシ等の要因を排除した高精度の位置検出が可能である。
【0078】
(発明8):発明7に記載のレンズ装置において、前記固定枠に前記第2の信号伝達用コイルが配設されていることを特徴とするレンズ装置。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本発明の実施形態に係るレンズ位置検出装置における検出部の構成例を示す斜視図
【図2】レンズ装置の構成例を示す構成図
【図3】図2に示したレンズ装置に対するレゾルバの取付方法の例を示す要部構成図
【図4】信号送り出しコイルと信号取り出しコイルの磁気結合の様子を示す説明図
【図5】二相励磁一相検出方式のレンズ位置検出装置を適用したレンズ装置の回路構成の例を示すブロック図
【符号の説明】
【0080】
10…シートコイル、20…シートコイル、30…レゾルバ、32…励磁コイル、32A…第1励磁コイルパターン、32B…第2励磁コイルパターン、36…検出コイル、110…レンズ装置、112…レンズ鏡胴(固定鏡胴)、114…フォーカスレンズ、116…変倍レンズ、118…補正レンズ、120…リレーレンズ、122…枠体、124…光軸方向、142…枠体、162…枠体、152…カム筒、171…第1シートコイル、172…第2シートコイル、180…信号送り出しコイル、190…信号取り出しコイル、212,214…励磁回路、220…検出回路、230…信号処理回路、240…レンズ位置制御回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定枠に対し移動可能なレンズの位置を検出するレンズ位置検出装置であって、
前記レンズを保持するレンズ枠又は該レンズ枠の移動に連動する可動部に設けられた第1のシートコイルと、
前記第1のシートコイルに対向し、所定の対面距離を隔てて配置される第2のシートコイルと、
前記第1のシートコイルに接続され、前記第1のシートコイルとともに前記レンズ枠又は前記可動部に設けられた第1の信号伝達用コイルと、
前記第1の信号伝達用コイルに対面する固定部に設けられ、前記第1の信号伝達用コイルと磁気結合される第2の信号伝達用コイルと、
前記第1のシートコイル及び前記第2のシートコイルのいずれか一方を励磁コイル、他方を検出コイルとし、前記励磁コイルに励磁信号を与える励磁回路と、
前記レンズ枠の移動に伴い前記第1のシートコイルが前記第2のシートコイルとの対面距離を保って前記第2のシートコイルに平行な面内で移動することにより、当該移動位置に応じて前記検出コイルから出力される電気信号により前記レンズの位置を検出する信号処理回路と、
を備え、前記第1の信号伝達用コイル及び第2の信号伝達用コイルを介して前記励磁信号又は前記電気信号が伝達されることを特徴とするレンズ位置検出装置。
【請求項2】
請求項1に記載のレンズ位置検出装置において、
前記第1のシートコイル及び前記第2のシートコイルのいずれか一方は、電気角で90°位相を異ならせた空間位置に形成された第1のコイルパターンと第2のコイルパターンとを有する二相のコイルであり、
他方のシートコイルは、第3のコイルパターンが形成された一相のコイルであることを特徴とするレンズ位置検出装置。
【請求項3】
請求項2に記載のレンズ位置検出装置において、
前記二相のコイルを前記励磁コイルとして用い、前記一相のコイルを前記検出コイルとして用いることを特徴とするレンズ位置検出装置。
【請求項4】
請求項2又は3に記載のレンズ位置検出装置において、
前記第1のシートコイルが前記一相のコイルであり、
前記第2のシートコイルが前記二相のコイルであることを特徴とするレンズ位置検出装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載のレンズ位置検出装置において、
前記第2の信号伝達用コイルと前記励磁コイルとは、互いのコイル面が直交する位置関係で配置されることを特徴とするレンズ位置検出装置。
【請求項6】
レンズを保持するレンズ枠と、
前記レンズ枠を移動自在に支持する固定枠と、
前記レンズ枠を移動させる駆動機構と、
前記レンズ枠又は該レンズ枠の移動に連動する可動部に設けられた第1のシートコイルと、
前記第1のシートコイルに対向し、所定の対面距離を隔てて配置される第2のシートコイルと、
前記第1のシートコイルに接続され、前記第1のシートコイルとともに前記レンズ枠又は前記可動部に設けられた第1の信号伝達用コイルと、
前記第1の信号伝達用コイルに対面する固定部に設けられ、前記第1の信号伝達用コイルと磁気結合される第2の信号伝達用コイルと、
前記第1のシートコイル及び前記第2のシートコイルのいずれか一方を励磁コイル、他方を検出コイルとし、前記励磁コイルに励磁信号を与える励磁回路と、
前記レンズ枠の移動に伴い前記第1のシートコイルが前記第2のシートコイルとの対面距離を保って前記第2のシートコイルに平行な面内で移動することにより、当該移動位置に応じて前記検出コイルから出力される電気信号により前記レンズの位置を検出する信号処理回路と、
を備え、前記第1の信号伝達用コイル及び第2の信号伝達用コイルを介して前記励磁信号又は前記電気信号が伝達されることを特徴とするレンズ装置。
【請求項7】
請求項6に記載のレンズ装置において、
前記レンズ枠は光軸方向に移動可能であり、
前記第1のシートコイルは、前記レンズ枠の側面部に設けられ、
前記第2のシートコイルは、前記固定枠に設けられることを特徴とするレンズ装置。
【請求項8】
請求項7に記載のレンズ装置において、
前記固定枠に前記第2の信号伝達用コイルが配設されていることを特徴とするレンズ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−107741(P2010−107741A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−279766(P2008−279766)
【出願日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【出願人】(000005430)フジノン株式会社 (2,231)
【Fターム(参考)】