説明

レンズ特性表示装置

【課題】光学中心の位置や方向等を表示できるレンズ特性表示装置を提供する。
【解決手段】多焦点レンズである被検レンズ5に測定光を投光する投光部21と、その測定光を受光する受光部22と、測定光の受光像を用いて被検レンズ5の光学特性を算出する光学特性算出部23と、その光学特性を用いて、2個の光学中心の位置を特定する中心位置特定部24と、2個の光学中心の位置と被検レンズ5の基準点の位置との位置関係を示す位置関係情報と、基準点の光学特性値である基準値とを蓄積する蓄積部25と、光学特性を用いて、光学特性の値が、蓄積された基準値と同じである基準点の位置を特定する基準点位置特定部26と、光学特性の分布の表示し、位置関係情報を用いて、特定された基準点の位置に対応する2個の光学中心の位置に関する表示を行う表示部27とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多焦点レンズの光学特性の分布や光学中心の位置に関する表示を行うレンズ特性表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、レンズ特性表示装置において、レンズの光学中心の位置における球面度数や円柱度数、プリズム値などの光学特性を測定することが行われていた。また、その光学中心に印点を付すことも行われていた(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
そのような被検レンズに関する測定を行うユーザは、被検レンズの光学中心の位置を特定する必要があり、その支援のため、例えば、光学中心(測定点)に誘導するための図形を表示することも行われていた(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−83845号公報
【特許文献2】特開2002−82017号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前述の特許文献2で示される従来例では、表示された図形によってだいたいどちらの方に光学中心が存在するのかは略分かるが、光学中心の位置を知ることはできないという課題があった。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、光学中心の位置や方向等を表示することができるレンズ特性表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明によるレンズ特性表示装置は、少なくとも第1及び第2の焦点領域を有する多焦点レンズである被検レンズを保持する保持部と、被検レンズに測定光を投光する投光部と、被検レンズを通過した測定光を受光する受光部と、受光部が受光した測定光の受光像を用いて、被検レンズの光学特性を算出する光学特性算出部と、光学特性算出部が算出した光学特性を用いて、第1の焦点領域の光学中心位置である第1の中心位置と第2の焦点領域の光学中心位置である第2の中心位置とを特定する中心位置特定部と、中心位置特定部が特定した第1及び第2の中心位置と被検レンズの基準点の位置との位置関係を示す位置関係情報を蓄積し、基準点の光学特性値である基準値を蓄積する蓄積部と、光学特性算出部が算出した光学特性を用いて、光学特性の値が、蓄積部によって蓄積された基準値と同じである基準点の位置を特定する基準点位置特定部と、光学特性算出部が算出した光学特性の分布の表示を行うと共に、位置関係情報を用いて、基準点位置特定部が特定した基準点の位置に対応する第1及び第2の中心位置に関する表示を行う表示部と、を備えたものである。
【0008】
このような構成により、少なくとも2個の光学中心を有する被検レンズに対して、その2個の光学中心に関する表示を行うことができる。したがって、ユーザは、被検レンズの光学中心がどこにあるのかを容易に知ることができるようになる。また、あらかじめ蓄積した基準値や位置関係情報を用いて、光学中心の位置に関する表示を行うため、例えば、ある光学中心が光学的な測定範囲内に存在しない場合であっても、その光学中心の位置に関する表示を行うことができる。
【0009】
また、本発明によるレンズ特性表示装置では、表示部は、第2の焦点領域の光学中心が光学的な測定範囲外である場合に、位置関係情報を用いて、基準点位置特定部が特定した基準点の位置に対応する第2の中心位置に関する表示を行ってもよい。
このような構成により、光学的な測定範囲外に存在する第2の中心位置に関する表示を行うことができる。
【0010】
また、本発明によるレンズ特性表示装置では、表示部は、第2の焦点領域の光学中心が光学的な測定範囲外である場合に、第2の中心位置を示す表示を行ってもよい。
このような構成により、ユーザは、第2の中心位置を容易に知ることができるようになる。
【0011】
また、本発明によるレンズ特性表示装置では、表示部は、第1及び第2の中心位置を結ぶ線分の表示を行ってもよい。
このような構成により、例えば、一方の光学中心のみが光学的な測定範囲内にある場合であっても、その線分の延びる方向を見ることによって、他方の光学中心がどの方向にあるのかを知ることができるようになる。
【0012】
また、本発明によるレンズ特性表示装置では、被検レンズに印点を付す印点部をさらに備えてもよい。
このような構成により、被検レンズの光学中心に印点を付すことができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によるレンズ特性表示装置によれば、位置関係情報や基準値をあらかじめ蓄積しておき、それらを用いることによって、光学中心の位置や方向等を表示することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施の形態1によるレンズ特性表示装置の構成を示すブロック図
【図2】同実施の形態にける投光部や受光部について説明するための図
【図3】同実施の形態におけるパターンマスクの一例を示す図
【図4】同実施の形態によるレンズ特性表示装置の外観の一例を示す斜視図
【図5】同実施の形態によるレンズ特性表示装置の外観の一例を示す側面図
【図6】同実施の形態によるレンズ特性表示装置の動作を示すフローチャート
【図7】同実施の形態おける光学特性の分布画像の表示の一例を示す図
【図8】同実施の形態における中心位置の特定について説明するための図
【図9】同実施の形態における位置関係情報等の蓄積について説明するための図
【図10】同実施の形態おける光学特性の分布画像の表示の一例を示す図
【図11】同実施の形態における光学的な測定範囲外に存在する光学中心の位置の表示の一例を示す図
【図12】同実施の形態における光学的な測定範囲外に存在する光学中心の位置の表示の一例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明によるレンズ特性表示装置について、実施の形態を用いて説明する。なお、以下の実施の形態において、同じ符号を付した構成要素及びステップは同一または相当するものであり、再度の説明を省略することがある。
【0016】
(実施の形態1)
本発明の実施の形態1によるレンズ特性表示装置について、図面を参照しながら説明する。本実施の形態によるレンズ特性表示装置は、光学中心と基準点との位置関係を記憶しておき、それを用いることによって、光学中心の位置に関する表示を行うものである。
【0017】
図1は、本実施の形態によるレンズ特性表示装置1の構成を示すブロック図である。本実施の形態によるレンズ特性表示装置1は、保持部6と、投光部21と、受光部22と、光学特性算出部23と、中心位置特定部24と、蓄積部25と、基準点位置特定部26と、表示部27とを備える。なお、本実施の形態によるレンズ特性表示装置1は、図1では図示していないが、後述するように、印点部11を備えていてもよい。また、図1では、本実施の形態によるレンズ特性表示装置1の特徴的な構成要素のみを示している。したがって、本実施の形態によるレンズ特性表示装置1は、これら以外の構成要素を備えていてもよいことは言うまでもない。例えば、被検レンズ5の光学中心の光学特性の値を記憶する構成や、その光学特性の値を印刷する構成等が存在してもよい。
【0018】
本実施の形態によるレンズ特性表示装置1によって光学特性を測定する被検レンズ5は、多焦点レンズである。その多焦点レンズは、累進多焦点レンズ(累進屈折力レンズ)であってもよく、累進レンズではない多焦点レンズ(例えば、二焦点レンズや三焦点レンズ等)であってもよい。本実施の形態では、被検レンズ5が累進多焦点レンズである場合について主に説明する。累進多焦点レンズは、例えば、遠近累進多焦点レンズであってもよく、中近累進多焦点レンズであってもよく、近近累進多焦点レンズであってもよい。その被検レンズ5は、少なくとも第1及び第2の焦点領域を有するものとする。被検レンズ5が遠近累進多焦点レンズまたは中近累進多焦点レンズである場合には、例えば、第1の焦点領域が遠用領域(遠用部)または中用領域(中用部)であり、第2の焦点領域が近用領域(近用部)であってもよい(その逆であってもよい)。また、被検レンズ5が近近累進多焦点レンズである場合には、第1の焦点領域が一方の近用領域であり、第2の焦点領域が他方の近用領域であってもよい。その第1の焦点領域における光学中心の位置を第1の中心位置と呼び、第2の焦点領域における光学中心位置を第2の中心位置と呼ぶことにする。また、第1の焦点領域における光学中心を第1の光学中心と呼び、第2の焦点領域における光学中心を第2の光学中心と呼ぶこともある。なお、光学中心の位置は、設計基準点とも呼ばれる位置であり、本来設計された光学性能によって物を見ることができる位置である。また、本実施の形態によるレンズ特性表示装置1の測定の対象となる被検レンズ5は、例えば、未加工レンズであってもよく、フレーム加工済みレンズであってもよい。
【0019】
保持部6は、被検レンズ5を保持する。保持部6の形状は問わないが、被検レンズ5を移動可能に保持する形状であることが好適である。保持部6は、例えば、測定光が通過する孔を有する円環状の部材であってもよい。投光部21は、保持部6で保持されている被検レンズ5に測定光を投光する。また、受光部22は、投光部21から投光され、被検レンズ5を通過した測定光を受光する。
【0020】
図2は、投光部21等の詳細の一例を示す図である。図2において、投光部21は、測定光の光源である発光素子12と、その発光素子12の発した拡散光を平行な測定光にして被検レンズ5に投光する投光レンズ13とを有する。その測定光は、被検レンズ5と、パターンマスク14とを通過し、スクリーン15に投影される。受光部22は、そのスクリーン15に投影された画像を結像するための結像レンズ16と、結像された画像を電気信号に変換して画像データを生成するための撮像素子17とを有する。パターンマスク14は、例えば、図3(a)で示される、環状の開口18aを有する狭域測定用のパターンマスク14aであってもよく、あるいは、図3(b)で示される、縦横のグリッド状の複数のピンホール18bを有する広域測定用のパターンマスク14bであってもよい。狭域測定用のパターンマスク14aは、例えば、光学中心の光学特性を詳細に測定するために用いられる。また、広域測定用のパターンマスク14bは、例えば、広範囲の光学特性を測定するために用いられる。したがって、本実施の形態によるレンズ特性表示装置1は、後述するように、光学特性の分布を表示するものであるため、主に広域測定用のパターンマスク14bを用い、光学中心の光学特性を測定する際に、狭域測定用のパターンマスク14aを用いるものとする。なお、それらのパターンマスク14を用いた光学特性の測定については、例えば、特開2008−286629号公報を参照されたい。なお、図2で示される構成は一例であり、パターンマスク14は、例えば、発光素子12と投光レンズ13との間に存在してもよく、適宜、その他の位置に存在してもよい。
【0021】
光学特性算出部23は、受光部22が受光した測定光の受光像を用いて、被検レンズ5の光学特性を算出する。その受光像は、例えば、パターンマスク14の受光像である。光学特性算出部23が算出する光学特性は、例えば、球面度数であってもよく、円柱度数(柱面度数)であってもよく、プリズム値であってもよく、あるいは、それらの任意の2以上のものであってもよい。本実施の形態では、その光学特性が、球面度数と円柱度数とプリズム値である場合について説明する。なお、光学特性算出部23は、広域測定において、例えば、光学的な測定範囲内におけるピンホール18bの各座標に対する光学特性を算出する。その場合に、光学特性算出部23は、算出した光学特性について、その座標間の補間を行ってもよく、あるいは、行わなくてもよい。また、光学特性算出部23は、通常、定期的に継続して光学特性を算出する。例えば、被検レンズ5が移動された場合には、その移動後の位置における光学特性が光学特性算出部23によって算出されることになる。また、その光学特性に、軸角度(乱視軸角度)が含まれていてもよい。なお、受光像から光学特性を算出する方法は、すでに公知であり、その説明を省略する。例えば、前述の特開2008−286629号公報等を参照されたい。
【0022】
なお、光学特性算出部23は、後述するように、蓄積部25が位置関係情報や基準値を蓄積した後に、その位置関係情報等が蓄積された時点に対する被検レンズ5の角度を算出してもよい。この角度を求める方法は問わない。光学特性算出部23は、例えば、公知の方法によって第1及び第2の中心位置を結ぶ累進線または累進帯を特定し、位置関係情報等が蓄積された時点の累進線等の角度に対する、その時点の累進線等の角度を求めることによって、その角度の算出を行ってもよい。また、光学特性算出部23は、例えば、被検レンズ5の異なる2点の光学特性の値(例えば、プリズム値であってもよい)を記憶しておき、算出した光学特性の分布において、その光学特性の値を有する2点を追従することによって、その2点を結ぶ直線の角度の変化を知ることができる。したがって、光学特性算出部23は、その角度の変化を算出することによって、位置関係情報等が蓄積された時点に対する被検レンズ5の角度を算出してもよい。なお、その2点は、被検レンズ5が移動されたとしても光学的な測定範囲内に存在する必要があるため、そのような位置に存在する2点が選択されることが好適である。また、その他の方法によって角度の検知が行われてもよいことは言うまでもない。また、光学特性算出部23が算出した光学特性や角度は、図示しない記録媒体で記憶されてもよい。
【0023】
中心位置特定部24は、光学特性算出部23が算出した光学特性を用いて、第1の焦点領域の光学中心位置である第1の中心位置と、第2の焦点領域の光学中心位置である第2の中心位置とを特定する。第1及び第2の中心位置は、例えば、被検レンズ5において、球面度数の傾きの変化が大きい位置である。したがって、中心位置特定部24は、例えば、光学特性算出部23が算出した球面度数を用いて、第1及び第2の中心位置を特定してもよい。その位置の特定は、例えば、ある座標系における第1及び第2の中心位置の座標値を図示しない記録媒体に蓄積することであってもよい。この光学中心位置を特定する処理の詳細については後述する。
【0024】
蓄積部25は、中心位置特定部24が特定した第1及び第2の中心位置と被検レンズ5の基準点の位置との位置関係を示す位置関係情報を記録媒体に蓄積する。また、その基準点の光学特性の値である基準値を記録媒体に蓄積する。蓄積部25は、被検レンズ5がある位置で止まっている時点において、その位置関係情報の蓄積と、基準値の蓄積との両方を行うことが好適である。その記録媒体は、例えば、半導体メモリや、光ディスク、磁気ディスク等であり、蓄積部25が有していてもよく、あるいは蓄積部25の外部に存在してもよい。また、その記録媒体は、情報を一時的に記憶するものであってもよく、そうでなくてもよい。また、位置関係情報と基準値とは同じ記録媒体に蓄積されてもよく、異なる記録媒体に蓄積されてもよい。
【0025】
なお、基準点は、例えば、あらかじめ決まっている位置(例えば、未加工レンズの中心点等)であってもよく、あるいは、その蓄積の時点に決められた点であってもよい。本実施の形態では、蓄積部25が位置関係情報等を蓄積する際の画面中心(あるいは、画像中心)の位置を基準点とする。その基準点は、後述するように、第1及び第2の中心位置を特定するための基準となる点である。そのため、光学的な測定範囲内に第1の中心位置のみが存在する場合であっても、第2の中心位置のみが存在する場合であっても、その基準点が光学的な測定範囲内に含まれていることが必要である。したがって、基準点は、例えば、第1の中心位置と第2の中心位置の中点付近の位置であることが好適である。例えば、第1の中心位置と第2の中心位置を結ぶ線分の中点を基準点としてもよい。また、例えば、蓄積部25が位置関係情報等を蓄積する際の画面中心(あるいは、画像中心)の位置を基準点とする場合であっても、その基準点の位置が、第1及び第2の中心位置の中点付近の位置となるようにしておくことが好適である。第1及び第2の中心位置と基準点の位置との位置関係を示す位置関係情報は、基準点の位置を基点として、第1及び第2の中心位置を特定できる情報であれば、その内容を問わない。位置関係情報は、例えば、その3点の位置のそれぞれの座標を示す情報であってもよく、基準点から第1及び第2の中心位置のそれぞれまでの座標の変化(ベクトル)を示す情報であってもよい。その座標は、例えば、後述する表示部27が表示する光学特性の分布の表示画面上(あるいは、表示画像上)における座標系(スクリーン座標系)の座標であってもよく、あるいは、その他の座標系の座標であってもよい。また、位置関係情報は、第1及び第2の中心位置を示す図形(マーカ)を有する画像とその画像における基準点の位置の座標とを含むものであってもよい。その画像は、例えば、第1及び第2の中心位置を示す図形のみを有する画像であってもよく、あるいは、光学特性の分布の表示画像において、第1及び第2の中心位置を示す図形を表示する画像であってもよい。また、位置関係情報は、その画像と共に、基準点の位置を基点として、第1及び第2の中心位置を特定できる前述の情報を含んでいてもよい。また、基準値は、基準点のプリズム値であってもよく、その他の光学特性の値であってもよい。本実施の形態では、基準値が基準点のプリズム値である場合について説明する。
【0026】
基準点位置特定部26は、光学特性算出部23が算出した光学特性を用いて、光学特性の値が、蓄積部25によって蓄積された基準値と同じである基準点の位置を特定する。ユーザが被検レンズ5を移動させた場合には、その基準点の位置が変化することになる。その変化後の基準点の位置を特定するのがこの基準点位置特定部26である。なお、光学的な測定範囲内に、光学特性の値が基準値と同じである位置が複数存在する可能性もあるため、基準点位置特定部26は、蓄積部25が位置関係情報等を蓄積した時点から、その基準点の位置を、蓄積された基準値を用いて追従して特定することが好適である。そのため、例えば、基準点位置特定部26は、前回の光学特性の算出時に特定された基準点の位置からあらかじめ決められた範囲内(例えば、前回の基準点の位置を中心とした、あらかじめ決められた半径の範囲内や、あらかじめ決められた大きさの矩形の範囲内等)において、基準点の位置を特定するようにしてもよい。そして、その範囲内において、光学特性の値が基準値と同じである位置が1個だけ存在する場合には、基準点位置特定部26は、その位置である基準点の位置を特定する。また、その範囲内において、光学特性の値が基準値と同じである位置が2個以上存在する場合には、基準点位置特定部26は、前回の基準点に最も近い位置である基準点の位置を特定する。また、その範囲内に、光学特性の値が基準値と同じである位置が存在しない場合には、光学的な測定範囲内の全域において、その基準点の位置を特定してもよい。その場合に、光学特性の値が基準値と同じである位置が2個以上存在する場合には、前述のように、前回の基準点に最も近い位置である基準点の位置を特定してもよい。また、光学特性算出部23が座標間の補間を行っていない場合には、蓄積された基準値と同じ光学特性の値を有する位置が存在しないこともありうる。その場合には、蓄積された基準値に最も近い光学特性の値を有する位置を、基準点の位置として特定してもよい。基準点の位置の特定は、例えば、その基準点の位置に対応する座標を図示しない記録媒体に蓄積することであってもよい。
【0027】
表示部27は、光学特性算出部23が算出した光学特性の分布の表示を行う。その光学特性の分布の表示は、例えば、等高線を用いた表示であってもよく、カラーやグレースケールのグラデーションを用いた表示であってもよい。表示される光学特性の分布は、1個の光学特性の分布であってもよく、あるいは、2個以上の光学特性の分布であってもよい。後者の場合には、例えば、ある光学特性の分布が等高線で表示され、別の光学特性の分布がグラデーションで表示されてもよい。また、表示対象の光学特性を、ユーザが選択できるようになっていてもよい。
【0028】
また、表示部27は、蓄積部25が蓄積した位置関係情報を用いて、基準点位置特定部26が特定した基準点の位置に対応する第1及び第2の中心位置に関する表示を行う。第1及び第2の中心位置に関する表示は、例えば、表示部27が表示する光学特性の分布において、第1及び第2の中心位置に対応した位置に、それぞれマーカを表示することであってもよい。表示部27は、基準点位置特定部26が特定した基準点の位置によって、表示対象の光学特性の分布画像における基準点の位置を知ることができる。また、位置関係情報を用いることによって、その基準点と、第1及び第2の中心位置との位置関係を知ることができる。その結果、表示部27は、表示対象の光学特性の分布画像における第1及び第2の中心位置を特定することができる。そして、表示部27は、その特定した第1及び第2の中心位置に対応した位置に、マーカを表示してもよい。そのマーカは、例えば、図示しない記録媒体で記憶されている図形(例えば、円形や三角形、四角形の図形、クロス図形等)であってもよく、あるいは、あらかじめ決められたルールに応じて生成された図形(例えば、半径がAピクセルの円の図形等)であってもよい。なお、位置関係情報や基準値が蓄積された時点から、被検レンズ5が回転された場合には、その回転を考慮して、表示対象の光学特性の分布画像における第1及び第2の中心位置を特定する必要がある。例えば、光学特性算出部23によって被検レンズ5が時計回りにB度回転したことが検出されていた場合には、表示部27は、位置関係情報によって示される位置関係を同じ角度だけ回転させた状態で、特定された基準点の位置に対応する第1及び第2の光学中心に対応した位置を特定することになる。また、位置関係情報が、前述のように、第1及び第2の中心位置を示す図形を有する画像とその画像における基準点の位置の座標とを含むものである場合には、表示部27は、表示対象の光学特性の分布画像における基準点の位置に、その位置関係情報の画像の基準点の位置を重ねる。また、被検レンズ5が回転している場合には、その回転に応じて、位置関係情報の画像も回転させる。そのようにすることで、位置関係情報の画像における第1及び第2の中心位置を示す図形の位置が、表示対象の光学特性の分布画像における第1及び第2の中心位置となる。なお、その場合には、位置関係情報の画像は、第1及び第2の中心位置を示す図形以外、透明な画像であってもよい。また、表示部27が光学中心の位置にマーカを表示する場合において、一方の中心位置が表示範囲外であれば、表示部27は、その表示範囲外の中心位置に応じたマーカを表示しなくてもよい。
【0029】
なお、表示部27は、基準点位置特定部26が特定した基準点の位置と、位置関係情報とを用いることによって、光学的な測定範囲内に基準点が存在する場合には、光学的な測定範囲外の中心位置をも特定することができる。したがって、表示部27は、その中心位置に関する表示を行ってもよい。すなわち、表示部27は、第2(第1)の焦点領域の光学中心が光学的な測定範囲外である場合に、位置関係情報を用いて、基準点位置特定部26が特定した基準点の位置に対応する第2(第1)の中心位置に関する表示を行ってもよい。その中心位置に関する表示は、例えば、中心位置を示す表示であってもよく、中心位置の方向を示す表示であってもよい。中心位置を示す表示を行う場合には、表示部27は、例えば、光学特性の分布画像を縮小表示することによって、光学的な測定範囲外に存在する中心位置を示す表示を行ってもよく(例えば、後述する図11(a)参照)、光学特性の分布画像の表示の枠外において中心位置を示す表示を行ってもよい(例えば、後述する図11(b)参照)。また、中心位置の方向を示す表示を行う場合には、表示部27は、例えば、光学特性の分布画像の表示において、光学的な測定範囲外の中心位置の方向を示す図形(例えば、矢印等)の表示を行ってもよい(例えば、後述する図11(c)参照)。また、表示部27は、第1及び第2の中心位置が光学的な測定範囲内にあるか、あるいは、測定範囲外にあるかに関係なく、その第1及び第2の中心位置を結ぶ線分の表示を行ってもよい。その線分の表示は、光学特性の分布画像の表示の範囲内において行ってもよく(例えば、後述する図12(a)、図12(b)参照)、あるいは、その分布画像の表示の範囲外を含めて行ってもよい(例えば、後述する図12(c)参照)。
【0030】
また、表示部27が、光学的な測定範囲外に存在する中心位置に関する表示を行う場合に、表示部27は、その表示を絶えず行っていてもよく、あるいは、あらかじめ決められた表示開始のタイミングでその表示を開始し、あらかじめ決められた表示終了のタイミングでその表示を終了してもよい。後者の場合に、その光学的な測定範囲外に存在する中心位置に関する表示を開始するタイミングは、例えば、光学中心の光学特性の値を蓄積するタイミング(例えば、その蓄積を指示するボタンの押されたタイミング)であってもよく、印点を付すタイミングであってもよく、レンズの光学中心が測定光軸上にアライメントされたタイミング(例えば、表示画面、または表示画像の中心に光学中心が位置することになったタイミング)であってもよく、被検レンズ5があらかじめ決められた時間以上、止まっていたタイミングであってもよく、その表示を行う旨の指示が受け付けられたタイミング(例えば、その表示の開始を指示するボタンの押されたタイミング)であってもよく、その他のタイミングであってもよい。また、その光学的な測定範囲外に存在する中心位置に関する表示を終了するタイミングは、例えば、光学中心の光学特性の値を蓄積するタイミング(この場合には、それまでに、その表示が行われている必要がある)であってもよく、印点を付すタイミングであってもよく(この場合には、それまでに、その表示が行われている必要がある)、レンズの光学中心が測定光軸上から外れたタイミングであってもよく、被検レンズ5の移動が開始されたタイミングであってもよく、その表示を終了する旨の指示が受け付けられたタイミング(例えば、その表示の終了を指示するボタンの押されたタイミング)であってもよく、その他のタイミングであってもよい。
【0031】
また、表示部27は、それらの表示を行う表示デバイス(例えば、CRTや液晶ディスプレイなど)を含んでもよく、あるいは含まなくてもよい。また、表示部27は、ハードウェアによって実現されてもよく、あるいは表示デバイスを駆動するドライバ等のソフトウェアによって実現されてもよい。
【0032】
図4、図5は、本実施の形態によるレンズ特性表示装置1の外観の一例を示す図である。図1で示される保持部6以外の各構成要素は、装置本体2の内部にそれぞれ収用されている。また、レンズ特性表示装置1は、表示部27による表示がなされる表示画面3を備えている。また、レンズ特性表示装置1は、光学特性データを記憶させるためのメモリスイッチ7を備えており、そのメモリスイッチ7の押下に応じて、その時点の画面中心における光学特性のデータが記憶されるものとする。その際には、前述した狭域測定用のパターンマスク14aを用いた光学特性の算出が行われてもよい。また、レンズ特性表示装置1は、被検レンズ5の保持部6上での位置決めを助ける当接板9及び押さえ部材10を有し、さらに、保持部6上に位置決めした被検レンズ5に光学中心を印点する印点部11を有している。したがって、ユーザは、表示画面3に表示された光学特性の分布や、光学中心の位置を示すマーカ等を参考にしながら、被検レンズ5を移動させ、光学中心がアライメントされた時点(例えば、光学中心の位置が画面中心や画像中心の位置に重なった時点等)で、印点部11を操作することによって、光学中心に印点を付すことができる。
【0033】
次に、本実施の形態によるレンズ特性表示装置1の動作について、図6のフローチャートを用いて説明する。なお、このフローチャートでは、光学中心が画面中心に位置した際(すなわち、アライメントがなされた際)に、他の光学中心の位置を示す表示を行い、その後に被検レンズ5の移動が検知されると、その表示を終了する場合について示しているが、前述のように、その他のタイミングで他の光学中心の位置の表示やその表示の終了が行われてもよいことは言うまでもない。また、この図6のフローチャートでは、第1及び第2の中心位置にマーカを表示する場合について説明する。また、図6のフローチャートでは、投光部21が測定光を被検レンズ5に投光し、受光部22がその測定光を受光する処理や、印点を付す処理、メモリスイッチ7の押下に応じて画面中心の位置に対応する被検レンズ5の光学特性の値を蓄積する処理については、説明を省略している。
【0034】
(ステップS101)光学特性算出部23は、光学特性を算出するかどうか判断する。そして、光学特性を算出する場合には、ステップS102に進み、そうでない場合には、ステップS107に進む。光学特性算出部23は、例えば、定期的(例えば、1秒ごと、0.1秒ごと等)に光学特性を算出すると判断してもよく、あるいは、その他のタイミングで光学特性を算出すると判断してもよい。
【0035】
(ステップS102)光学特性算出部23は、受光部22が受光した測定光の受光像を用いて、公知の方法により、光学特性を算出する。なお、その光学特性は、前述のように、球面度数であってもよく、円柱度数であってもよいが、少なくとも、プリズム値が含まれているものとする。そのプリズム値を用いて後述する基準点の位置の特定を行うためである。その算出された光学特性のデータは、図示しない記録媒体で記憶されてもよい。
【0036】
(ステップS103)表示部27は、蓄積部25によって蓄積された位置関係情報等が存在するかどうか判断する。そして、その蓄積がなされていた場合には、ステップS104に進み、そうでない場合には、ステップS106に進む。なお、表示部27は、例えば、蓄積部25が位置関係情報等を蓄積する記録媒体の領域を参照し、そこにデータが存在すれば、蓄積がなされたと判断し、そうでない場合には、蓄積がなされていないと判断してもよい。
【0037】
(ステップS104)基準点位置特定部26は、光学特性算出部23によって算出されたその時点の光学特性を用いて、基準点の位置を特定する。その特定された基準点の位置を示す情報は、図示しない記録媒体で記憶されてもよい。
【0038】
(ステップS105)表示部27は、基準点位置特定部26が特定した基準点の位置と、蓄積部25によって蓄積された位置関係情報とを用いて、その時点における第1及び第2の中心位置を特定する。その特定された第1及び第2の中心位置を示す情報は、図示しない記録媒体で記憶されてもよい。
【0039】
(ステップS106)表示部27は、光学特性算出部23が算出した光学特性の分布画像を表示する。この表示は、前述のように、例えば、等高線の表示であってもよく、あるいは、グラデーションの表示であってもよい。また、ステップS105において中心位置の特定が行われた場合には、表示部27は、その特定された第1及び第2の中心位置に対応する分布画像の位置に、光学中心を示すマーカを表示する。なお、第1及び第2の中心位置のうち、一方が分布画像の範囲外、すなわち、光学的な測定範囲外に存在する場合には、その中心位置に対応するマーカの表示を行わなくてもよい。また、ステップS105における中心位置の特定が行われなかった場合には、表示部27は、マーカを含まない光学特性の分布画像を表示する。そして、ステップS101に戻る。このように、このステップS106における光学特性の分布の表示においては、光学中心の位置に対応するマーカの表示が行われる場合と、そうでない場合とがある。
【0040】
(ステップS107)蓄積部25は、位置関係情報等を蓄積するかどうか判断する。そして、位置関係情報等を蓄積する場合には、ステップS108に進み、そうでない場合には、ステップS110に進む。なお、蓄積部25は、例えば、レンズ特性表示装置1が位置関係情報等を蓄積する旨の指示を受け付けた場合に、位置関係情報等を蓄積すると判断してもよく、あるいは、光学特性算出部23が算出した光学特性等を参照することによって、位置関係情報等を蓄積するのに適したタイミングかどうかを判断することによって、位置関係情報等を蓄積すると判断してもよい。後者の場合には、蓄積部25は、例えば、球面度数があまり変化しない2個の領域(すなわち、光学中心の付近の領域)が光学的な測定範囲内に含まれる場合に、位置関係情報等を蓄積すると判断してもよい。なお、この判断を行うためには、光学特性算出部23によって、球面度数が算出されている必要がある。
【0041】
(ステップS108)中心位置特定部24は、光学特性算出部23が算出した光学特性を用いて、第1及び第2の中心位置を特定する。その特定された第1及び第2の中心位置を示す情報は、図示しない記録媒体で記憶されてもよい。
【0042】
(ステップS109)蓄積部25は、第1及び第2の中心位置と基準点の位置との位置関係を示す位置関係情報と、その基準点の光学特性の値(本実施の形態では、プリズム値)とを記録媒体に蓄積する。そして、ステップS101に戻る。なお、その位置関係情報に、その時点における光学特性の分布画像が含まれていてもよい。また、その分布画像において、ステップS108で特定された第1及び第2の中心位置にマーカが含まれるようにしてもよい。
【0043】
(ステップS110)表示部27は、ステップS105で特定したいずれかの中心位置が画面の中心に位置するかどうか判断する。そして、その中心位置が画面の中心に位置する場合には、ステップS111に進み、そうでない場合には、ステップS101に戻る。なお、ステップS109での蓄積が行われていない場合には、ステップS105での中心位置の特定も行われないため、その場合には、この判断処理の結果はNOになる。
【0044】
(ステップS111)表示部27は、画面中心に位置しない方の中心位置に関する表示を行う。その表示は、前述のように、例えば、あらかじめ蓄積していたマーカを含む分布画像の縮小表示であってもよく、光学特性の分布の表示の枠外における中心位置の表示であってもよく、中心位置の方向を示す矢印等の表示であってもよい。
なお、この時点で光学中心のアライメントがなされていることになるため、レンズ特性表示装置1のユーザは、その光学中心の位置に印点を付す操作や、その光学中心の光学特性の蓄積等の指示を入力する操作を行ってもよい。また、レンズ特性表示装置1は、その操作に応じて、例えば、光学中心の光学特性の蓄積や印刷等の処理を行ってもよい。
【0045】
(ステップS112)光学特性算出部23は、ステップS102と同様に、光学特性の算出を行う。
【0046】
(ステップS113)基準点位置特定部26は、ステップS104と同様に、基準点の位置の特定を行う。
【0047】
(ステップS114)表示部27は、ステップS113で特定された基準点の位置を用いて、被検レンズ5が移動したかどうか判断する。ステップS111の表示が行われた時点から基準点の位置が変わらない場合には、被検レンズ5が移動していないと判断し、ステップS111の表示が行われた時点から基準点の位置が変わった場合には、被検レンズ5が移動したと判断してもよい。なお、その被検レンズ5の移動の判断を、基準点の位置が所定の範囲(例えば、誤差範囲)以上、変わったかどうかによって判断してもよい。そして、被検レンズ5が移動していない場合には、ステップS112に戻り、被検レンズ5が移動した場合には、ステップS101に戻る。
なお、図6のフローチャートにおいて、電源オフや処理終了の割り込みにより処理は終了する。
【0048】
次に、本実施の形態によるレンズ特性表示装置1の動作について、具体例を用いて説明する。
まず、ユーザが保持部6に被検レンズ5を載置し、その被検レンズ5を当接板9に当接し、押さえ部材10で被検レンズ5を上から押さえたとする。そして、ユーザがレンズ特性表示装置1を動作させると、投光部21から投光された測定光が被検レンズ5を介して受光部22で受光される。また、光学特性算出部23は、定期的に光学特性の算出を行うと判断し(ステップS101)、受光部22が受光した測定光の受光像を用いて、被検レンズ5の光学特性を算出する(ステップS102)。ここでは、球面度数と、円柱度数と、プリズム値とが光学的な測定範囲内のピンホール18bの座標ごとに算出され、適宜、補間されて図示しない記録媒体で記憶されるものとする。この時点では、位置関係情報等がまだ蓄積されていないとする。すると、表示部27は、その蓄積が行われていないと判断し(ステップS103)、図7で示されるように、球面度数の分布を表示する(ステップS106)。図7において、球面度数が等高線によって表示されている。なお、ユーザが表示対象の光学特性を円柱度数やプリズム値に変更することによって、それらの表示に切り替わることになる。また、この光学特性の算出と、光学特性の分布の表示の処理(ステップS101〜S106)は定期的に繰り返して実行されるため、被検レンズ5が移動されても、その移動後の光学特性の分布がすぐに表示されることになる。
【0049】
次に、図7での分布表示では、2個の中心位置が分布画像内に含まれており、それらの中点が画像中心付近に位置していると考えられるため、その図7で示される光学特性の分布表示が行われている際に、ユーザが、位置関係情報等の蓄積を指示する図示しないボタンスイッチを押したとする。すると、その指示がレンズ特性表示装置1で受け付けられ、蓄積部25は、位置関係情報等を蓄積するタイミングであると判断し(ステップS107)、中心位置特定部24に中心位置の特定する旨の指示を渡す。すると、中心位置特定部24は、中心位置の特定を行う(ステップS108)。
【0050】
具体的には、中心位置特定部24は、図7の球面度数の等高線表示において、図8(a)の網掛け領域で示されるように、高度数領域(図8(a)の上側の網掛け領域)と低度数領域(図8(a)の下側の網掛け領域)とを特定する。次に、中心位置特定部24は、その高度数領域と低度数領域とのそれぞれにおいて、重心の位置を算出する。その後、中心位置特定部24は、図8(b)の左側のグラフで示されるように、算出した重心の位置を結ぶ直線上の球面度数の変化を参照し、その球面度数の傾きの変化が最大であるところと最低であるところの2箇所を特定する。すなわち、その球面度数の2階微分が最大であるところと最低であるところとを特定する。その2箇所に対応する位置が、図8(b)の右側の光学特性の分布画像で示されるように、第1及び第2の中心位置である。そして、中心位置特定部24は、第1の中心位置に対応する表示画像上の座標(X1,Y1)と、第2の中心位置に対応する表示画像上の座標(X2,Y2)とを図示しない記録媒体に蓄積する。なお、その座標は、表示画像(すなわち、図7の画像)の中心を原点として、右向きにX軸、上向きにY軸が設定された座標系であるとする。
【0051】
中心位置特定部24による第1及び第2の中心位置の特定が行われると、蓄積部25は、その時点の基準点のプリズム値P1を記録媒体に蓄積する。この具体例では、基準点は、その基準値の蓄積を行う際の画像中心の位置であるとする。したがって、図9で示されるように、画像中心である基準点のプリズム値が記憶されることになる。なお、図9において、左右方向の破線と、上下方向の破線の交わる位置が、画像中心である。また、蓄積部25は、位置関係情報として、第1及び第2の中心位置の座標(X1,Y1)、(X2,Y2)と、基準点の位置の座標(0,0)とを蓄積する。また、この具体例では、位置関係情報に球面度数の分布画像も含まれるとする。したがって、蓄積部25は、図7で示される、その時点の球面度数の分布画像の第1及び第2の中心位置に第1及び第2のマーカを付け加えた図9で示される分布画像も、位置関係情報として蓄積する(ステップS109)。
【0052】
その後、ユーザが被検レンズ5を移動させ、第1の中心位置が表示画像の中心に近づいてきたとする。その際にも、移動に応じて変化する光学特性の分布が表示されることになる。例えば、前述のようにして、光学特性算出部23が光学特性の算出を行うと判断し(ステップS101)、被検レンズ5の光学特性を算出したとする(ステップS102)。なお、光学特性算出部23は、位置関係情報等が蓄積された時点を基準とした被検レンズ5の時計回りの角度θも算出するものとする。また、この時点では、すでに位置関係情報等が蓄積されているため、表示部27は、その蓄積が行われたと判断し(ステップS103)、基準点位置特定部26に基準点位置を特定する旨の指示を渡す。すると、基準点位置特定部26は、光学特性算出部23が算出した光学特性と、蓄積部25が蓄積した基準値であるプリズム値P1とを用いて、その光学特性の示すプリズム値がP1である表示座標を特定する。ここでは、その座標が(X3,Y3)であったとする。すると、基準点位置特定部26は、その特定した基準点の位置を示す座標(X3,Y3)を図示しない記録媒体に蓄積する(ステップS104)。基準点の位置の特定が行われると、表示部27は、基準点の位置(X3,Y3)と、位置関係情報と、角度θとを用いて、第1及び第2の中心位置に対応する表示座標を特定する(ステップS105)。すなわち、被検レンズ5が角度θだけ回転しているため、基準点(0,0)、第1及び第2の中心位置(X1,Y1)(X2,Y2)を含む座標系を角度θだけ回転させる。そして、その座標系の基準点の位置すなわち原点を、特定された基準点の位置(X3,Y3)に重ねた場合における座標(X1,Y1)(X2,Y2)に対応する位置が、表示画像における第1及び第2の中心位置となる。具体的には、表示画像における第1の中心位置の座標(X11,Y11)は、次式のようにして求めることができる。
【数1】

【0053】
また同様に、表示画像における第2の中心位置の座標(X12,Y12)も、次式のようにして求めることができる。
【数2】

【0054】
その後、表示部27は、前述のように、光学特性算出部23が算出した光学特性の分布画像を表示すると共に、その画像上の第1及び第2の中心位置に対応する位置、すなわち、座標(X11,Y11)(X12,Y12)の位置にマーカを表示する。なお、その座標が表示画像の範囲外である場合には、そのマーカを表示しなくてもよい。その結果、例えば、図10で示される表示が行われる。図10の場合には、現在の基準点の位置が、基準値の蓄積された時点の基準点の位置よりも図中の両矢印だけ上方に存在し、回転は行われていないものとする。すると、第1の中心位置や、第1のマーカは、図9の場合に対して、その両矢印の長さだけ上方に位置することになる。なお、図10では、説明の便宜上、第1の中心位置を表示しているが、表示画面3に表示される際には、第1の中心位置は表示されなくてもよい。
【0055】
その後、ユーザがさらに被検レンズ5を移動させて、第1のマーカが表示画像の中心位置に来るようにしたとする。そして、その第1のマーカの中心領域(半径がマーカの半分である同心円の領域)が表示画面の中心にくると、表示部27は、光学中心の位置が画面中心になったと判断し(ステップS110)、第2の中心位置を示す表示を行う(ステップS111)。第1のマーカが表示画面の中心位置に来たかどうかは、例えば、第1の中心位置(X11,Y11)と表示画像の中心との距離が、所定のしきい値以下となったかどうかによって判断してもよい。ここでは、図11(a)で示されるように、表示部27は、位置関係情報に含まれる画像を縮小し、その第1の中心位置が画面中心に位置し、その時点の角度θだけ回転させた分布画像を表示する。この表示によって、ユーザは、第2の中心位置の存在する位置を知ることができるようになる。ユーザは、このように第1の中心位置が画像中心に位置している際に、印点部11を操作することによって、その第1の光学中心の位置に印点を付すことができる。また、ユーザは、その時点においてメモリスイッチ7を押すことによって、その第1の光学中心における光学特性の値を記憶させることができる。その際の光学特性は、前述のように、狭域測定用のパターンマスク14aを用いて測定されたものであってもよい。また、その光学特性の値は、図示しないプリンタによって印刷されてもよい。なお、この場合であっても、基準点位置特定部26が特定した基準点の位置を用いて第1の中心位置に第1のマーカを表示し、その第1の中心位置に対応する第2の中心位置の表示(図11(a)の表示)を行っているため、間接的に、位置関係情報を用いて、特定された基準点の位置に対応する第2の中心位置を示す表示を行っていることになる。その後、光学特性算出部23による光学特性の算出と、基準点位置特定部26による基準点の位置の特定とが繰り返して実行される(ステップS112,S113)。そして、基準点の位置が変化した場合には、表示部27は、被検レンズ5が移動されたと判断し(ステップS114)、図10で示されるような通常の光学特性の分布とマーカとの表示に戻る(ステップS101〜S106)。
【0056】
なお、ここで、光学的な測定範囲外に存在する第2の中心位置に関する表示のバリエーションについて説明する。表示中の表示画像の枠外にも表示領域が存在する場合には、表示部27は、図11(b)で示されるように、その時点で表示されている光学的な測定範囲内の光学特性の分布及びその範囲内に含まれる中心位置に応じたマーカの表示に加えて、光学的な測定範囲外に存在する光学中心に対応するマーカの表示も行ってもよい。このようにすることで、ユーザは、どこに光学中心が存在するのかを知ることができるようになる。また、表示部27は、図11(c)で示されるように、その時点で表示されている光学特性の分布及びマーカの表示に加えて、光学的な測定範囲外に存在する光学中心の位置の方向を向いている矢印等を表示してもよい。その矢印は、例えば、基点が画像中心や、第1の中心位置を向いており、終点が第1の中心位置を向いていることが好適である。この矢印によって、ユーザは、被検レンズ5をどちらに動かせば他方の光学中心の位置になるのかを知ることができるようになる。また、この図11(c)の表示を行う場合には、表示画像の枠外に表示領域が存在しなくてもよい。
【0057】
また、表示部27は、マーカの表示と共に、あるいは、マーカの表示に変えて、図12で示されるように、第1及び第2の中心位置を結ぶ線分を表示するようにしてもよい。この線分は、前述のようにして算出された2個の座標(X11,Y11)(X12,Y12)を結ぶ線分である。この線分の一部が光学特性の分布表示の枠外になった場合には、例えば、図12(b)で示されるように、その表示を行わなくてもよく、あるいは、図12(c)で示されるように、その表示を行ってもよい。
【0058】
また、同様にして、第2の中心位置が画像中心に位置する際に、第1の中心位置に関する表示を行うこともできうる。これは、第1の中心位置と第2の中心位置とが入れ替わっただけであるため、その説明を省略する。
【0059】
なお、この具体例では、第1及び第2の中心位置に表示されるマーカが、その中心位置に対して大きいものである場合について説明したが、そのマーカは、中心位置そのものをピンポイントに示すものであってもよい。
【0060】
以上のように、本実施の形態によるレンズ特性表示装置1によれば、位置関係情報等を用いることによって、第1及び第2の中心位置に関する表示を行うことができる。その結果、例えば、第1または第2の中心位置に応じたマーカが表示されることによって、光学中心のアライメントを容易に行うことができるようになる。また、従来例の特許文献2等の場合には、光学的な測定範囲内の情報を用いて光学中心に誘導するための図形を表示するため、その誘導先の光学中心が光学的な測定範囲外に存在のであれば、正確な誘導を行うことができないことになる。一方、本実施の形態によるレンズ特性表示装置1では、位置関係情報をあらかじめ記憶しておくことによって、光学的な測定範囲外に存在する光学中心の位置を示す表示や、その位置を示唆する表示を行うことができる。したがって、ユーザは、一方の光学中心に関するアライメントと光学特性の測定が終了した後に、他の光学中心のアライメントを容易に行うことができるようになり、ユーザの利便性が向上されることになる。また、中心位置特定部24による第1及び第2の中心位置を特定する処理は負荷の高い処理であるため、第1及び第2の中心位置が光学的な測定範囲内に存在する場合であっても、中心位置特定部24によって第1及び第2の中心位置を特定すると、リアルタイム性を担保できず、第1及び第2の中心位置にマーカを適切に表示できなくなることもあり得る。一方、本実施の形態のように、位置関係情報等を用いて中心位置を特定することにより、中心位置特定部24によって第1及び第2の中心位置を特定するよりも軽い処理によって第1及び第2の中心位置を特定することができ、中心位置特定部24による特定よりもリアルタイム性を担保することが容易になり、リアルタイムで第1及び第2の中心位置にマーカを表示できるようになりうる。また、基準点位置特定部26が1個の基準点の位置を特定するのみで、第1及び第2の中心位置の両方の位置を特定することができ、第1及び第2の中心位置ごとに基準点が存在する場合よりも、処理負荷が軽減されることになる。
【0061】
なお、本実施の形態では、レンズ特性表示装置1が印点部11を備えた場合について説明したが、印点を付す必要がない場合には、レンズ特性表示装置1が印点部11を備えていなくてもよい。
【0062】
また、表示部27による第1及び第2の中心位置に関する表示は、前述のように、種々のバリエーションが存在する。したがって、表示部27は、そのバリエーションのうち、いずれかの表示のみを行ってもよく、任意の2以上の表示を行ってもよい。
【0063】
また、表示部27が図11で示されるように第2の中心位置を示す表示を行う場合に、例えば、その第2の中心位置が光学的な測定範囲内に含まれるようになるまで、あるいは、その第2の中心位置がアライメントされるまで(例えば、画面中心や画像中心に来るまで)、その表示を継続してもよい。図11(a)の表示を行う場合には、例えば、特定された基準点の位置と、縮小率と、被検レンズ5の角度とを用いることによって、被検レンズ5の位置に応じた縮小画像を適宜、表示することが可能である。
【0064】
また、上記実施の形態において、各処理または各機能は、単一の装置または単一のシステムによって集中処理されることによって実現されてもよく、あるいは、複数の装置または複数のシステムによって分散処理されることによって実現されてもよい。
【0065】
また、上記実施の形態において、各構成要素が実行する処理に関係する情報、例えば、各構成要素が受け付けたり、取得したり、選択したり、生成したりした情報や、各構成要素が処理で用いるしきい値や数式等の情報等は、上記説明で明記していない場合であっても、図示しない記録媒体において、一時的に、あるいは長期にわたって保持されていてもよい。また、その図示しない記録媒体への情報の蓄積を、各構成要素、あるいは、図示しない蓄積部が行ってもよい。また、その図示しない記録媒体からの情報の読み出しを、各構成要素、あるいは、図示しない読み出し部が行ってもよい。
【0066】
また、上記実施の形態において、各構成要素等で用いられる情報、例えば、各構成要素が処理で用いる数式や各種の設定値等の情報がユーザによって変更されてもよい場合には、上記説明で明記していない場合であっても、ユーザが適宜、それらの情報を変更できるようにしてもよく、あるいは、そうでなくてもよい。それらの情報をユーザが変更可能な場合には、その変更は、例えば、ユーザからの変更指示を受け付ける図示しない受付部と、その変更指示に応じて情報を変更する図示しない変更部とによって実現されてもよい。その図示しない受付部による変更指示の受け付けは、例えば、入力デバイスからの受け付けでもよく、通信回線を介して送信された情報の受信でもよく、所定の記録媒体から読み出された情報の受け付けでもよい。
【0067】
また、上記実施の形態において、各構成要素は専用のハードウェアにより構成されてもよく、あるいは、ソフトウェアにより実現可能な構成要素については、プログラムを実行することによって実現されてもよい。例えば、ハードディスクや半導体メモリ等の記録媒体に記録されたソフトウェア・プログラムをCPU等のプログラム実行部が読み出して実行することによって、各構成要素が実現され得る。
また、本発明は、以上の実施の形態に限定されることなく、種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0068】
以上より、本発明によるレンズ特性表示装置によれば、光学中心の位置や方向等を表示することができるという効果が得られ、例えば、被検レンズの光学特性を表示する装置等として有用である。
【符号の説明】
【0069】
1 レンズ特性表示装置
2 装置本体
3 表示画面
5 被検レンズ
6 保持部
7 メモリスイッチ
9 当接板
10 押さえ部材
11 印点部
12 発光素子
13 投光レンズ
14、14a、14b パターンマスク
15 スクリーン
16 結像レンズ
17 撮像素子
21 投光部
22 受光部
23 光学特性算出部
24 中心位置特定部
25 蓄積部
26 基準点位置特定部
27 表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも第1及び第2の焦点領域を有する多焦点レンズである被検レンズを保持する保持部と、
前記被検レンズに測定光を投光する投光部と、
前記被検レンズを通過した測定光を受光する受光部と、
前記受光部が受光した測定光の受光像を用いて、前記被検レンズの光学特性を算出する光学特性算出部と、
前記光学特性算出部が算出した光学特性を用いて、前記第1の焦点領域の光学中心位置である第1の中心位置と前記第2の焦点領域の光学中心位置である第2の中心位置とを特定する中心位置特定部と、
前記中心位置特定部が特定した第1及び第2の中心位置と前記被検レンズの基準点の位置との位置関係を示す位置関係情報を蓄積し、前記基準点の光学特性値である基準値を蓄積する蓄積部と、
前記光学特性算出部が算出した光学特性を用いて、光学特性の値が、前記蓄積部によって蓄積された基準値と同じである基準点の位置を特定する基準点位置特定部と、
前記光学特性算出部が算出した光学特性の分布の表示を行うと共に、前記位置関係情報を用いて、前記基準点位置特定部が特定した基準点の位置に対応する第1及び第2の中心位置に関する表示を行う表示部と、を備えたレンズ特性表示装置。
【請求項2】
前記表示部は、
前記第2の焦点領域の光学中心が光学的な測定範囲外である場合に、前記位置関係情報を用いて、前記基準点位置特定部が特定した基準点の位置に対応する第2の中心位置に関する表示を行う、請求項1記載のレンズ特性表示装置。
【請求項3】
前記表示部は、
前記第2の焦点領域の光学中心が光学的な測定範囲外である場合に、第2の中心位置を示す表示を行う、請求項2記載のレンズ特性表示装置。
【請求項4】
前記表示部は、
前記第1及び第2の中心位置を結ぶ線分の表示を行う、請求項1または請求項2記載のレンズ特性表示装置。
【請求項5】
前記被検レンズに印点を付す印点部をさらに備えた、請求項1から請求項4のいずれか記載のレンズ特性表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−252765(P2011−252765A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−126047(P2010−126047)
【出願日】平成22年6月1日(2010.6.1)
【出願人】(390000594)株式会社レクザム (64)
【Fターム(参考)】