説明

レンズ特性表示装置

【課題】被検レンズの領域を示すことができるレンズ特性表示装置を提供する。
【解決手段】被検レンズ5を保持する保持部6と、測定光を投光する投光部21と、被検レンズ5を通過した測定光を受光する受光部22と、測定光の光路に存在する、グリッド状に配列された開口を有するパターンマスク14と、パターンマスク14の受光像を用いて被検レンズ5の光学特性を算出する光学特性算出部23と、その光学特性によって被検レンズ5の存在することが示されるレンズ領域を特定する領域特定部24と、領域特定部24の特定したレンズ領域とレンズ領域でない領域との境界が分かるように、光学特性の分布を表示する表示部25と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検レンズの光学特性の分布を表示するレンズ特性表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被検レンズの光学特性、例えば、球面度数や円柱度数、プリズム値等の分布を表示するレンズ特性表示装置が知られていた(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−286629号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のレンズ特性表示装置においては、ユーザ(検者)がレンズ中心位置における球面度数や円柱度数、プリズム値などの光学特性を測定するため、光学特性の分布を表示している表示画面を見ながら被検レンズを移動させるが、光学特性の分布の表示画面を見ているだけでは被検レンズの端部の位置が認識できず、レンズ移動時に被検レンズがレンズ保持部から外れてしまうことがあった。そのため、その都度、外れた被検レンズをレンズ保持部にセットする必要があり、余分な時間が必要になるという問題があった。また、被検レンズがレンズ保持部から外れる際に、被検レンズが傷つくおそれもあった。
【0005】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、光学特性の分布を表示する際に、被検レンズがどこに存在するのかを表示できるレンズ特性表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明によるレンズ特性表示装置は、被検レンズを保持する保持部と、被検レンズに測定光を投光する投光部と、被検レンズを通過した測定光を受光する受光部と、測定光の光路に存在する、グリッド状に配列された開口を有するパターンマスクと、受光部が受光したパターンマスクの受光像を用いて、被検レンズの光学特性を算出する光学特性算出部と、光学特性算出部が算出した光学特性によって被検レンズの存在することが示される領域であるレンズ領域を特定する領域特定部と、領域特定部の特定したレンズ領域とレンズ領域でない領域との境界が分かるように、光学特性算出部が算出した光学特性の分布を表示する表示部と、を備えたものである。
【0007】
このような構成により、レンズ領域とその他の領域との境界が表示されるため、表示画面を見ることによって、被検レンズの端部がどこにあるのかを容易に知ることができるようになる。したがって、ユーザは、被検レンズを操作する際に、その被検レンズが保持部から外れないように操作することができるようになる。
【0008】
また、本発明によるレンズ特性表示装置では、表示部は、領域特定部の特定したレンズ領域についてのみ、光学特性算出部が算出した光学特性の分布を表示してもよい。
このような構成により、光学特性の分布が表示されているかどうかによって、ユーザは、レンズ領域の範囲を知ることができるようになる。
【0009】
また、本発明によるレンズ特性表示装置では、表示部は、レンズ領域とレンズ領域でない領域とを色を変えて表示してもよい。
このような構成により、表示される領域の色の違いによって、被検レンズの端部の位置を容易に知ることができるようになる。
【0010】
また、本発明によるレンズ特性表示装置では、表示部は、レンズ領域とレンズ領域でない領域との境界を曲線で表示してもよい。
このような構成により、通常、被検レンズの端部は曲線であることが多いため、その曲線に応じたレンズ領域の表示を行うことができ、自然な表示となりうる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によるレンズ特性表示装置によれば、光学特性の分布を表示する際に、被検レンズがどこに存在するのかを表示できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施の形態1によるレンズ特性表示装置の構成を示す図
【図2】同実施の形態にける投光部や受光部について説明するための図
【図3】同実施の形態におけるパターンマスクの一例を示す図
【図4】同実施の形態によるレンズ特性表示装置の外観の一例を示す斜視図
【図5】同実施の形態によるレンズ特性表示装置の外観の一例を示す側面図
【図6】同実施の形態によるレンズ特性表示装置の動作を示すフローチャート
【図7】同実施の形態におけるスクリーンに表示された開口の一例を示す図
【図8】同実施の形態における点像の分類等について説明するための図
【図9】同実施の形態における光学特性の分布の表示の一例を示す図
【図10】同実施の形態における点像の分類や光学特性の分布について説明するための図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明によるレンズ特性表示装置について、実施の形態を用いて説明する。なお、以下の実施の形態において、同じ符号を付した構成要素及びステップは同一または相当するものであり、再度の説明を省略することがある。
【0014】
(実施の形態1)
本発明の実施の形態1によるレンズ特性表示装置について、図面を参照しながら説明する。本実施の形態によるレンズ特性表示装置は、被検レンズの存在する領域と他の領域との境界が分かるように、光学特性の分布を表示するものである。
【0015】
図1は、本実施の形態によるレンズ特性表示装置1の構成を示す図である。本実施の形態によるレンズ特性表示装置1は、保持部6と、パターンマスク14と、投光部21と、受光部22と、光学特性算出部23と、領域特定部24と、表示部25とを備える。なお、本実施の形態によるレンズ特性表示装置1は、図1では図示していないが、後述するように、印点部11やその他の構成を備えていてもよい。また、図1では、本実施の形態によるレンズ特性表示装置1の特徴的な構成要素のみを示している。したがって、本実施の形態によるレンズ特性表示装置1は、これら以外の構成要素を備えていてもよいことは言うまでもない。例えば、被検レンズ5の光学中心の光学特性の値を記憶する構成や、その光学特性の値を印刷する構成等が存在してもよい。
【0016】
本実施の形態によるレンズ特性表示装置1によって光学特性を測定する被検レンズ5は、単焦点レンズであってもよく、多焦点レンズであってもよい。その多焦点レンズは、累進多焦点レンズ(累進屈折力レンズ)であってもよく、累進レンズではない多焦点レンズ(例えば、二焦点レンズや三焦点レンズ等)であってもよい。多焦点レンズである被検レンズ5は、少なくとも第1及び第2の焦点領域を有するものとする。そして、その第1及び第2の焦点領域ごとに、光学中心が存在することになる。なお、光学中心の位置は、設計基準点とも呼ばれる位置であり、本来設計された光学性能によって物を見ることができる位置である。また、本実施の形態によるレンズ特性表示装置1の測定の対象となる被検レンズ5は、例えば、未加工レンズであってもよく、フレーム加工済みレンズであってもよい。被検レンズ5がフレーム加工済みレンズである場合に、その被検レンズ5は、メガネフレームに入ったものであってもよい。
【0017】
保持部6は、被検レンズ5を保持する。保持部6の形状は問わないが、被検レンズ5を移動可能に保持する形状であることが好適である。保持部6は、例えば、測定光が通過する孔を有する円環状の部材であってもよい。投光部21は、保持部6で保持されている被検レンズ5に測定光を投光する。また、受光部22は、投光部21から投光され、被検レンズ5を通過した測定光を受光する。
【0018】
図2は、投光部21等の詳細の一例を示す図である。図2において、投光部21は、測定光の光源である発光素子12と、その発光素子12の発した拡散光を平行な測定光にして被検レンズ5に投光する投光レンズ13とを有する。その測定光は、被検レンズ5と、パターンマスク14とを通過し、スクリーン15に投影される。受光部22は、そのスクリーン15に投影された画像を結像するための結像レンズ16と、結像された画像を電気信号に変換して画像データを生成するための撮像素子17とを有する。パターンマスク14は、例えば、図3(a)で示される、環状の開口18aを有する狭域測定用のパターンマスク14aであってもよく、あるいは、図3(b)で示される、グリッド状に規則正しく配置された複数の開口18bを有する広域測定用のパターンマスク14bであってもよい。その開口18bは、通常、ピンホール状の開口である。また、その中央のピンホールの開口18bは、通常、測定光の光軸上に配置されるようになっている。狭域測定用のパターンマスク14aは、例えば、光学中心の光学特性を詳細に測定するために用いられる。狭域測定用のパターンマスク14aを用いた場合には、スクリーン15に投影された環状の開口18aの形状を解析することによって、光学特性を知ることができる。また、広域測定用のパターンマスク14bは、例えば、広範囲の光学特性を測定するために用いられる。広域測定用のパターンマスク14bを用いた場合には、スクリーン15に投影されたピンホールの開口18bの点像の位置を解析することによって、光学特性を知ることができる。本実施の形態によるレンズ特性表示装置1は、後述するように、光学特性の分布を表示するものであるため、主に広域測定用のパターンマスク14bを用い、光学中心の光学特性を測定する際に、狭域測定用のパターンマスク14aを用いるものとする。なお、それらのパターンマスク14を用いた光学特性の測定については、例えば、前述の特許文献1を参照されたい。なお、図2で示される構成は一例であり、パターンマスク14は、測定光の光路に存在すればよく、例えば、発光素子12と投光レンズ13との間に存在してもよく、適宜、その他の位置に存在してもよい。また、後述する領域特定部24によるレンズ領域の特定は、広域測定用のパターンマスク14bを用いて行われることになる。
【0019】
光学特性算出部23は、受光部22が受光した測定光の受光像を用いて、被検レンズ5の光学特性を算出する。その受光像は、例えば、パターンマスク14の受光像である。光学特性算出部23が算出する光学特性は、例えば、球面度数であってもよく、円柱度数(柱面度数)であってもよく、プリズム値であってもよく、あるいは、それらの任意の2以上のものであってもよい。本実施の形態では、その光学特性が、球面度数と円柱度数とプリズム値である場合について説明する。なお、光学特性算出部23は、広域測定において、例えば、光学的な測定範囲内におけるピンホールの開口18bの各座標に対する光学特性を算出する。その場合に、光学特性算出部23は、算出した光学特性について、その座標間の補間を行ってもよく、あるいは、行わなくてもよい。なお、補間を行う場合には、後述するレンズ領域に含まれる光学特性を用いて補間を行うことが好適である。また、光学特性算出部23は、通常、定期的に継続して光学特性を算出する。例えば、被検レンズ5が移動された場合には、その移動後の位置における光学特性が光学特性算出部23によって算出されることになる。また、その光学特性に、軸角度(乱視軸角度)が含まれていてもよい。なお、受光像から光学特性を算出する方法は、すでに公知であり、その説明を省略する。例えば、前述の特許文献1等を参照されたい。
【0020】
領域特定部24は、光学特性算出部23が算出した光学特性によって被検レンズ5の存在することが示される領域であるレンズ領域を特定する。なお、そのレンズ領域の特定において、光学特性以外の情報が用いられてもよいことは言うまでもない。レンズ領域は、被検レンズ5に対応する領域である。例えば、光学特性の分布の表示において、被検レンズ5の存在する領域がレンズ領域となる。レンズ領域を特定するとは、レンズ領域を示す情報を、図示しない記録媒体に蓄積することであってもよく、あるいは、その他の処理であってもよい。また、領域特定部24が、ある位置がレンズ領域であるかどうかを判断する方法は問わない。本実施の形態では、領域特定部24が、(1)光学特性算出部23が算出した光学特性を用いてレンズ領域を特定する場合と、(2)受光部22が受光した受光量を用いてレンズ領域を特定する場合とについて説明する。
【0021】
(1)光学特性を用いたレンズ領域の特定
度数のある被検レンズ5に投光された測定光は、その被検レンズ5を通過することによって、被検レンズ5の光学的な影響を受ける。一方、被検レンズ5の存在しない空間に投光された測定光は、被検レンズ5の光学的な影響を受けることはない。さらに、メガネフレーム等の障害物に投光された測定光は、その障害物によって遮断される。したがって、領域特定部24は、開口18bに対応したスクリーン15上の点像ごとに、光学特性が被検レンズ5の存在を示すかどうか判断することによって、その点像に対応する位置に被検レンズ5が存在するかどうかを知ることができる。また、領域特定部24は、開口18bに対応したスクリーン15上の点像が存在するかどうかを判断することによって、その点像に対応する位置にメガネフレーム等の障害物が存在するかどうかも知ることができる。このように、領域特定部24は、点像ごとの光学特性を用いることによって、レンズ領域を特定することができる。
【0022】
なお、光学特性が被検レンズ5の存在を示す場合は、例えば、球面度数の絶対値がしきい値以上である場合、または、プリズム値がしきい値以上である場合であってもよい。すなわち、ある点像の位置の球面度数の絶対値とプリズム値との少なくとも一方がしきい値以上である場合に、その位置には被検レンズ5が存在すると判断してもよい。なお、これ以外の場合、すなわち、ある点像の位置の球面度数の絶対値がしきい値未満であり、かつ、その位置のプリズム値がしきい値未満である場合には、その位置には被検レンズ5が存在しないと判断してもよい。また、光学特性が被検レンズ5の存在を示す場合は、例えば、球面度数の絶対値がしきい値以上である場合、プリズム値がしきい値以上である場合、または、円柱度数の絶対値がしきい値以上である場合であってもよい。すなわち、ある点像の位置の球面度数の絶対値とプリズム値と円柱度数の絶対値との少なくとも一つがしきい値以上である場合に、その位置には被検レンズ5が存在すると判断してもよい。なお、これ以外の場合、すなわち、ある点像の位置の球面度数の絶対値がしきい値未満であり、かつ、その位置のプリズム値がしきい値未満であり、かつ、その位置の円柱度数の絶対値がしきい値未満である場合には、その位置には被検レンズ5が存在しないと判断してもよい。また、そのしきい値は、通常、球面度数などの光学特性ごとに異なる値である。また、円柱度数が正の値である場合には、円柱度数の絶対値に代えて円柱度数そのものを用いてもよい。あるいは、その他の判断基準によって、被検レンズ5の存在に関する判断を行ってもよい。また、この方法によって存在を特定することができる被検レンズ5は、前述のように、度数のある被検レンズ5だけである。したがって、度数のない被検レンズ5の場合には、たとえ測定光が被検レンズ5を通過していたとしても、被検レンズ5を通過していないと判断されることになる。その場合には、後述する(2)の特定方法を用いてもよい。また、ある点像の位置に対応する球面度数等の光学特性が存在しない場合には、その点像の位置には障害物が存在すると判断してもよい。
【0023】
その判断で用いられるしきい値は、被検レンズ5が存在しない場合における球面度数やプリズム値等に対して、測定誤差や、測定時の操作に応じたばらつき(例えば、被検レンズ5が傾くことなどによる測定値のばらつき)を考慮した値であってもよい。例えば、球面度数は被検レンズ5が存在しない場合の値が0であるため、それに微小な正の値ε1を加算したε1をしきい値にしてもよい。また、例えば、プリズム値も被検レンズ5が存在しない場合の値が0であるため、それに微小な正の値ε2を加算したε2をしきい値にしてもよい。また、しきい値との比較の対象である値(例えば、球面度数の絶対値等)が、しきい値と同じ値である場合に、その点像の位置に被検レンズ5が存在すると判断してもよく、あるいは、存在しないと判断してもよい。このように、しきい値との比較の対象である値がしきい値と同じ値である場合には、どちらの判断結果にしてもよい。このことは、しきい値を用いた他の判断についても同様であるとする。
【0024】
また、本実施の形態では、領域特定部24は、開口18bに対応したスクリーン15上の点像の位置ごとに、(A)測定光が被検レンズ5を通過したのか、(B)測定光が被検レンズ5の存在しないエリアを通過したのか、(C)測定光がメガネフレームなどの障害物によって遮断されたのか、を判断するものとする。ここで、(A)の場合の点像を「レンズ点像」と呼ぶことにする。また、(B)の場合の点像を「スルー点像」と呼ぶことにする。また、(C)の場合の点像を「ブロック点像」と呼ぶことにする。なお、(C)の場合には厳密にはスクリーン15に点像は存在しないが、説明の便宜上、このように呼ぶことにする。また、この(1)の特定方法の場合には、度数のない被検レンズ5を通過した測定光の点像も、スルー点像に分類されることになる。
【0025】
領域特定部24は、例えば、ある点像に対応する光学特性が、被検レンズ5の存在を示すものである場合には、その点像がレンズ点像であると判断してもよい。また、領域特定部24は、例えば、ある点像に対応する光学特性自体は存在するが、被検レンズ5の存在を示さないものである場合には、その点像がスルー点像であると判断してもよい。また、領域特定部24は、例えば、ある点像に対応する光学特性自体が存在しない場合には、その点像(厳密に言えば、障害物がなければ存在するはずの点像)がブロック点像であると判断してもよい。なお、ブロック点像であるかどうかは、受光部22が受光した点像の並びにおいて、スクリーン15に点像が映っているかどうか(点像が存在するかどうか)によって判断してもよい。注目している位置に点像が存在しないのであれば、その位置はブロック点像であることになる。また、注目している位置に点像が存在するかどうかは、例えば、その位置の輝度値がしきい値よりも大きいかどうかに応じて判断してもよい。例えば、ある位置の輝度値がしきい値未満であれば、点像がないと判断し、その位置の輝度値がしきい値以上であれば、点像があると判断してもよい。また、映っていない点像の位置については、周辺(上下左右)の点像との位置関係から推定することができる。この処理は、グリッド状の開口18bを有するパターンマスク14bを用いた光学特性の測定における処理としてすでに公知であり、その詳細な説明を省略する。また、点像に対応する光学特性とは、その点像に対応する開口18bを通過した測定光の位置(被検レンズ5の位置または被検レンズ5の存在しない位置)における光学特性のことである。
【0026】
(2)受光量を用いたレンズ領域の特定
透過度が100%ではない被検レンズ5に投光された測定光は、その被検レンズ5を通過することによって、多少なりとも減衰することになる。一方、被検レンズ5の存在しない空間に投光された測定光は、被検レンズ5による減衰の影響を受けることはない。したがって、領域特定部24は、開口18bに対応したスクリーン15上の点像ごとに、光量が減衰しているかどうかを判断することによって、その点像に対応する位置に透過度が100%ではない被検レンズ5が存在するかどうかを知ることができる。このように、領域特定部24は、点像ごとの受光量を、被検レンズ5が存在しない場合の受光量と比較することによって、レンズ領域を特定することができる。具体的には、領域特定部24は、パターンマスク14bの開口18bに応じた受光量が、被検レンズ5が存在しない場合と比較して低い点像がレンズ点像であると判断してもよい。なお、その受光量は、輝度であってもよく、その他の値であってもよい。また、領域特定部24は、ある開口18bに対応したスクリーン15上の位置の受光量が0(または、0に近い正のしきい値以下)の場合、すなわち、測定光が遮断されている場合には、ブロック点像であると判断してもよい。
【0027】
本実施の形態では、領域特定部24は、前述の(1)の特定において、レンズ点像が全く存在せず、かつ、スルー点像が存在した場合に、(2)の特定によって、スルー点像の位置に被検レンズ5が存在するかどうかを判断するものとする。その結果、例えば、スルー点像に分類された点像が、(2)の特定によって、レンズ点像またはスルー点像に再分類されることになる。なお、その判断で用いる被検レンズ5が存在しない場合の点像ごとの受光量は、あらかじめ被検レンズ5が存在しない状況で測定しておき、図示しない記録媒体で記憶しているものとする。
【0028】
また、領域特定部24が特定するレンズ領域は、例えば、レンズ領域に対応する点像(あるいは、その点像に対応する開口18b)によって示されるものであってもよく、あるいは、座標によって示されるものであってもよい。前者の場合には、例えば、レンズ領域に対応する点像(すなわち、レンズ点像)を特定できる情報(例えば、レンズ点像の識別子の集合)や、そのレンズ点像に対応する開口18bを特定できる情報(例えば、その開口18bの識別子の集合)が、レンズ領域を示す情報であってもよい。また、後者の場合には、レンズ点像に応じた領域であるレンズ領域の輪郭を座標によって示す情報が、レンズ領域を示す情報であってもよい。その際に用いられる座標は、例えば、表示画像における座標(クライアント座標)や表示画面における座標(スクリーン座標)であってもよく、パターンマスク14bにおける座標であってもよく、あるいは、その他の座標であってもよい。例えば、各点像をレンズ点像、スルー点像、ブロック点像に分類することによって、領域特定部24は、各開口18bの位置ごとに被検レンズ5の有無を知ることができる。したがって、領域特定部24は、その開口18bに対応する表示位置や表示画像上の位置ごとに、被検レンズ5の有無を知ることができ、その結果、光学特性の分布の表示画像上において、どこに被検レンズ5が位置するのかを知ることができるようになる。なお、座標によってレンズ領域を特定する際に、領域特定部24は、例えば、レンズ点像に対応する隣接した複数の開口18bのうち、最外周の開口18bによって囲われる領域をレンズ領域としてもよく、あるいは、その最外周の開口18bと、それに隣接するスルー点像またはブロック点像に対応する開口18bとの間(レンズ点像に対応する開口18bとスルー点像やブロック点像に対応する開口18bとの中点であってもよく、そうでなくてもよい)を結んだ線によって囲われる領域をレンズ領域としてもよい。また、各開口18bと、その各開口18bに対応する表示位置や表示画像上の位置との関係は決まっているため、領域特定部24は、そのレンズ領域を、前述のように、パターンマスク14bの座標で特定することができると共に、表示画面や表示画像の座標でも特定することができる。また、後述するように、そのレンズ領域の境界の線を曲線にしてもよく、あるいは、そうでなくてもよい。通常、レンズ領域は一つであるが、被検レンズ5がメガネフレームに装着されている場合には、レンズ領域が2個存在することもあり得る。
【0029】
表示部25は、光学特性算出部23が算出した光学特性の分布の表示を行う。その光学特性の分布の表示は、例えば、等高線を用いた表示であってもよく、カラーやグレースケールのグラデーションを用いた表示であってもよい。表示される光学特性の分布は、1個の光学特性の分布であってもよく、あるいは、2個以上の光学特性の分布であってもよい。後者の場合には、例えば、ある光学特性の分布が等高線で表示され、別の光学特性の分布がグラデーションで表示されてもよい。また、表示対象の光学特性を、ユーザが選択できるようになっていてもよい。
【0030】
なお、表示部25は、その光学特性の分布の表示を行う際に、領域特定部24の特定したレンズ領域と、そのレンズ領域ではない領域との境界が分かるように表示するものとする。その結果、ユーザは、表示された光学特性の分布を見るだけで、被検レンズ5の端部がどこにあるのかを知ることができるようになり、その被検レンズ5が保持部6から外れないようにすることができる。ここで、レンズ領域と、そのレンズ領域ではない領域との境界が分かるように表示する方法は問わない。例えば、表示部25は、(α)領域特定部24の特定したレンズ領域についてのみ光学特性の分布を表示してもよく、(β)領域特定部24の特定したレンズ領域と、そのレンズ領域ではない領域との境界を示す図形を表示してもよく、(γ)領域特定部24の特定したレンズ領域と、そのレンズ領域ではない領域とを色を変えて表示してもよく、あるいは、(α)(β)(γ)のうち任意の2以上を組み合わせた表示を行ってもよい。(α)の場合には、表示部25は、レンズ領域のみの表示を行うようにしてもよく(この場合には、レンズ領域以外は、表示そのものが行われないことになる)、あるいは、領域特定部24の特定したレンズ領域ではない領域についてマスクをして光学特性の分布を表示することによって、結果として、レンズ領域についてのみ光学特性の分布が表示されるようにしてもよい(この場合には、レンズ領域以外の表示も行われるが、レンズ領域以外については、光学特性の分布は表示されないことになる)。また、(β)の場合には、表示部25は、光学特性の分布を表示する際に、レンズ領域の境界の位置に、その境界を示す図形(通常、線状の図形である)を表示してもよい。その境界を示す図形は、例えば、レンズ領域の輪郭を示す線状の図形であってもよい。また、(γ)の場合には、表示部25は、レンズ領域については、あらかじめ決められた第1の色で表示し、レンズ領域でない領域については、あらかじめ決められた第2の色で表示する。その第1の色と第2の色とは、容易に区別できる色であることが好適である。例えば、第1及び第2の色のうち、一方が寒色系の色であり、他方が暖色系の色であってもよく、その他の組合せであってもよい。
【0031】
また、表示部25は、レンズ領域とレンズ領域でない領域との境界を曲線で表示してもよく、あるいは、そうでなくてもよい。パターンマスク14bは、グリッド状の開口18bを有しており、その開口18bに応じた位置についてレンズ点像、スルー点像、ブロック点像の判断を行うため、通常、レンズ領域の境界は、折線となる(その折れ線の折れ角度は通常90度であるが、そうでなくてもよい)。一方、通常、被検レンズ5の端部は、そのような折線ではなく、曲線で示されることが多い。したがって、表示部25が、レンズ領域の境界を曲線で表示することによって、より自然な表示になると考えられる。なお、曲線の境界を表示する場合には、例えば、折線の境界が曲線に変換されたものを表示部25が表示してもよい。その変換の際に、レンズ領域が、そうでない領域に対して凸となるように、言い換えれば、レンズ領域ではない領域がレンズ領域の中心の方に向かって凹となるようにすることが好適である。すなわち、その境界線の被検レンズ5側に、その境界線の一部を円弧に近似した場合の円の中心点が存在するようになることが好適である。その変換は、例えば、折線をベジェ曲線にする変換であってもよく、また滑らかなスプライン曲線にする変換であってもよい。なお、その変換は、例えば、表示部25が行ってもよく、領域特定部24が行ってもよい。すなわち、表示部25が曲線の境界を表示する場合に、特定されたレンズ領域の境界自体が曲線であってもよく、あるいは、折線であるレンズ領域の境界を曲線に変換して表示してもよい。その曲線が滑らかなものであるほうが好適なことは言うまでもない。
【0032】
また、表示部25は、領域特定部24が特定したレンズ領域が、例えば、レンズ点像に対応する点像や各開口18bを識別する情報によって示されるものである場合には、各点像や各開口18bを識別する情報と、その点像等に対応する表示画面または表示画像の位置とを対応付ける情報を用いて、その点像等の識別情報によって示されるレンズ領域を、表示画面や表示画像における位置を示す情報に変換した上で、上記のようなレンズ領域と、その他の領域との境界が分かる表示を行うことになる。なお、表示画面や表示画像におけるレンズ点像に対応した位置を用いて、表示部25は、前述した領域特定部24の処理と同様に、例えば、レンズ点像に対応する隣接した複数の位置のうち、最外周の位置によって囲われる領域をレンズ領域として境界の分かる表示を行ってもよく、あるいは、その最外周の位置と、それに隣接するスルー点像またはブロック点像に対応する位置との間(両位置の中点であってもよく、そうでなくてもよい)を結んだ線によって囲われる領域をレンズ領域として境界の分かる表示を行ってもよい。なお、レンズ領域が、表示画面や表示画像の座標とは異なる座標(例えば、パターンマスク14bの座標)で表現されている場合にも、表示部25は、そのレンズ領域の座標を、表示画面や表示画像の座標に変換して、同様の表示を行ってもよい。
【0033】
なお、表示部25は、それらの表示を行う表示デバイス(例えば、CRTや液晶ディスプレイなど)を含んでもよく、あるいは含まなくてもよい。また、表示部25は、ハードウェアによって実現されてもよく、あるいは表示デバイスを駆動するドライバ等のソフトウェアによって実現されてもよい。
【0034】
図4、図5は、本実施の形態によるレンズ特性表示装置1の外観の一例を示す図である。図1で示される保持部6以外の各構成要素は、装置本体2の内部にそれぞれ収用されている。また、レンズ特性表示装置1は、表示部25による表示がなされる表示画面3を備えている。また、レンズ特性表示装置1は、光学特性データを記憶させるためのメモリスイッチ7を備えており、そのメモリスイッチ7の押下に応じて、その時点の画面中心における光学特性のデータが記憶されるものとする。その際には、前述した狭域測定用のパターンマスク14aを用いた光学特性の算出が行われてもよい。また、レンズ特性表示装置1は、被検レンズ5の保持部6上での位置決めを助ける当接板9及び押さえ部材10を有し、さらに、保持部6上に位置決めした被検レンズ5に光学中心を印点する印点部11を有している。したがって、ユーザは、表示画面3に表示された光学特性の分布を参考にしながら被検レンズ5を移動させ、光学中心がアライメントされた時点に印点部11を操作することによって、光学中心に印点を付すことができる。
【0035】
次に、本実施の形態によるレンズ特性表示装置1の動作について、図6のフローチャートを用いて説明する。なお、図6のフローチャートでは、光学特性を用いたレンズ領域の特定と、受光量を用いたレンズ領域の特定との両方を行う場合について説明する。また、図6のフローチャートでは、投光部21が測定光を被検レンズ5に投光し、受光部22がその測定光を受光する処理や、印点を付す処理、メモリスイッチ7の押下に応じて測定光軸に対応する被検レンズ5の光学特性の値を蓄積する処理については、説明を省略している。
【0036】
(ステップS101)領域特定部24は、被検レンズ5が存在しない場合における各点像の受光量を蓄積するかどうか判断する。そして、蓄積する場合には、ステップS102に進み、そうでない場合には、ステップS103に進む。なお、領域特定部24は、例えば、その蓄積を行う旨の指示をレンズ特性表示装置1が受け付けた場合に、各点像の受光量を蓄積すると判断してもよく、あるいは、所定のイベント(例えば、レンズ特性表示装置1の起動等)の発生に応じてその蓄積を行うことが決まっているのであれば、その所定のイベントの発生を検知した場合に、各点像の受光量を蓄積すると判断してもよい。
【0037】
(ステップS102)領域特定部24は、被検レンズ5が存在しない場合における各点像の受光量を図示しない記録媒体に蓄積する。そして、ステップS101に戻る。なお、蓄積された受光量を示す各データは、どの点像のものであるのかが分かるようになっている必要がある。そのため、例えば、受光量を示すデータと、点像の識別子とが対応付けられて蓄積されてもよい。
【0038】
(ステップS103)光学特性算出部23は、光学特性を算出するかどうか判断する。そして、光学特性を算出する場合には、ステップS104に進み、そうでない場合には、ステップS101に戻る。光学特性算出部23は、例えば、定期的(例えば、1秒ごと、0.1秒ごと等)に光学特性を算出すると判断してもよく、あるいは、その他のタイミングで光学特性を算出すると判断してもよい。
【0039】
(ステップS104)光学特性算出部23は、受光部22が受光した測定光の受光像を用いて、公知の方法により、光学特性を算出する。なお、その光学特性は、前述のように、球面度数であってもよく、円柱度数であってもよく、プリズム値であってもよいが、少なくとも、レンズ領域の特定で用いられる光学特性が含まれているものとする。その光学特性を用いて後述するレンズ領域の特定を行うためである。その算出された光学特性のデータは、図示しない記録媒体で記憶されてもよい。
【0040】
(ステップS105)領域特定部24は、各開口18bに対応した点像をレンズ点像、スルー点像、ブロック点像に分類する。この分類結果は、図示しない記録媒体で記憶されてもよい。
【0041】
(ステップS106)領域特定部24は、光学特性を用いてレンズ領域を特定できるかどうか判断する。例えば、領域特定部24は、分類後の点像に少なくともレンズ点像が存在し、かつ、レンズ点像以外の点像も存在する場合には、レンズ領域の特定ができると判断し、それ以外の場合には、レンズ領域の特定ができないと判断する。そして、レンズ領域を特定できる場合には、ステップS107に進み、そうでない場合には、ステップS109に進む。
【0042】
(ステップS107)領域特定部24は、レンズ点像に応じた領域であるレンズ領域を特定する。領域特定部24は、例えば、特定したレンズ領域を示す情報を図示しない記録媒体に蓄積してもよい。
【0043】
(ステップS108)表示部25は、ステップS107またはステップS112で特定されたレンズ領域と、そのレンズ領域でない領域との境界が分かるように、ステップS104で算出された光学特性の分布を表示する。この光学特性の分布の表示は、前述のように、例えば、等高線の表示であってもよく、あるいは、グラデーションの表示であってもよい。そして、ステップS101に戻る。
【0044】
(ステップS109)領域特定部24は、分類後の点像がすべてレンズ点像であるかどうか判断する。そして、分類後の点像がすべてレンズ点像である場合には、全領域を表示する旨の指示を表示部25に渡してステップS110に進み、そうでない場合には、ステップS111に進む。
【0045】
(ステップS110)表示部25は、ステップS104で算出された光学特性の分布を、全領域について表示する。したがって、この場合の表示は、従来の光学特性の分布の表示と同じとなる。そして、ステップS101に戻る。
【0046】
(ステップS111)領域特定部24は、分類後の点像がすべてブロック点像であるかどうか判断する。そして、分類後の点像がすべてブロック点像である場合には、表示すべき光学特性は存在しないため、光学特性の表示を行うことなくステップS101に戻る。なお、この場合に、表示部25は、すべての測定光が障害物で遮断されている旨を表示してもよい。一方、分類後の転送にブロック点像でないもの、すなわち、スルー点像が含まれる場合には、ステップS112に進む。
【0047】
(ステップS112)領域特定部24は、受光量を用いたレンズ領域の特定を行う。その特定の結果、スルー点像のうち、少なくとも一部がレンズ点像になる場合と、そうでない場合とがある。前者の場合には、レンズ領域が特定されることになり、後者の場合には、レンズ領域が特定されないことになる。なお、ステップS102での受光量の蓄積が行われる前には、この受光量を用いたレンズ領域の特定の処理を行うことはできないため、ステップS111でNOと判断された場合には、ステップS101に戻ってもよい。
【0048】
(ステップS113)領域特定部24は、ステップS112において、レンズ領域が特定されたかどうか、すなわち、レンズ点像が存在するかどうか判断する。そして、レンズ領域が特定された場合、すなわち、レンズ点像が存在する場合には、ステップS108に進み、レンズ領域が特定されなかった場合、すなわち、レンズ点像が存在しない場合には、表示すべき光学特性は存在しないため、光学特性の表示を行うことなくステップS101に戻る。なお、レンズ領域が特定されなかった場合に、表示部25は、測定光が被検レンズ5を通過していない旨を表示してもよい。
【0049】
なお、図6のフローチャートにおいて、電源オフや処理終了の割り込みにより処理は終了する。また、図6のフローチャートのステップS106において、分類後の点像に少なくともレンズ点像が含まれる場合にはレンズ領域を特定できると判断してもよい。そして、分類後の点像がすべてレンズ点像である場合には、全領域をレンズ領域に特定してもよい。その場合には、ステップS106の判断結果がNOである場合に、ステップS111に進んでもよい。
【0050】
次に、本実施の形態によるレンズ特性表示装置1の動作について、具体例を用いて説明する。なお、この具体例では、光学特性が算出されるタイミングで、受光部22がスクリーン15に投影された点像に関する受光像の画像データを一時的に記憶するものとする。なお、受光部22が記憶する受光像の画像データは、最新のものだけでよい。
【0051】
レンズ特性表示装置1の起動後に、まず、被検レンズ5が存在しない状態で受光量を蓄積するため、自動的に、あるいは、図示しない受光量蓄積ボタンの押下に応じて、領域特定部24は、受光部22が受光した各点像の輝度値を蓄積するタイミングであると判断し(ステップS101)、その各点像の輝度値を図示しない記録媒体に蓄積する(ステップS102)。なお、この場合におけるスクリーン15に投影された点像は、図7(a)で示されるものである。また、この場合にも光学特性の算出や、レンズ領域の特定の処理が行われるが、この時点では、被検レンズ5が存在しないため、すべてがスルー点像であると判断され、光学特性の表示は行われないことになる(ステップS103〜S113)。
【0052】
次に、ユーザが保持部6にメガネフレームに装着された被検レンズ5を載置し、そのメガネフレームを当接板9に当接し、押さえ部材10で被検レンズ5を上から押さえたとする。すると、投光部21から投光された測定光が被検レンズ5を介して受光部22で受光される。その場合におけるスクリーン15に投影された点像は、例えば、図7(b)で示されるものである。その後、光学特性算出部23は、光学特性の算出を行うと判断したタイミングで、受光部22が受光した測定光の受光像を用いて、被検レンズ5の光学特性を算出する(ステップS103,S104)。ここでは、球面度数と、円柱度数と、プリズム値とが光学的な測定範囲内のピンホール開口18bの座標ごとに算出され、適宜、補間されて図示しない記録媒体で記憶されるものとする。なお、その光学特性の算出のタイミングで、前述のように、受光部22は、スクリーン15に投影された点像の受光像の画像を、図示しない記録媒体に上書きで蓄積するものとする。
【0053】
光学特性の算出が行われると、領域特定部24は、各点像の分類を行う(ステップS105)。具体的には、領域特定部24は、受光部22が蓄積した受光像の画像(本具体例では、図7(b)であるとする)を用いて、映っていない点像の位置を特定する。領域特定部24は、点像の存在するはずの位置における輝度値がしきい値未満である場合に、その位置に対応する点像が映っていないと判断し、点像の存在するはずの位置における輝度値がしきい値以上である場合に、その位置に対応する点像が映っていると判断することによって、映っていない点像の位置を特定してもよい。この処理によって、ブロック点像を検出できることになる。その後、領域特定部24は、光学特性算出部23によって算出された光学特性を用いて、ブロック点像以外の各点像について、球面度数の絶対値が球面度数のしきい値以上であるか、あるいは、プリズム値がプリズム値のしきい値以上である場合に、その点像がレンズ点像であると判断し、そうでない場合に、その点像がスルー点像であると判断する。このようにして、各点像の分類が行われる。なお、領域特定部24は、この点像の分類に応じて、点像ごとに、その点像がレンズ点像、スルー点像、ブロック点像のいずれであるのかを示す情報を記録媒体に蓄積するものとする。図8(a)は、図7(b)の各点像を分類ごとに異なる図形で示したものである。レンズ点像が○で示されており、スルー点像が△で示されており、ブロック点像が×で示されている。
【0054】
次に、領域特定部24は、分類された点像に、レンズ点像と、それ以外の点像とが含まれているため、レンズ領域を特定可能であると判断し(ステップS106)、レンズ領域を特定する(ステップS107)。ここでのレンズ領域の特定は、レンズ領域に含まれる点像の特定であるとする。すなわち、領域特定部24は、レンズ領域に含まれる点像を識別する情報を、図示しない記録媒体に蓄積する。
【0055】
その後、表示部25は、レンズ領域と、その他の領域との境界が分かるように、光学特性算出部23が算出した光学特性の分布を表示する(ステップS108)。本具体例では、表示部25は、レンズ領域でない領域をマスクして光学特性の分布を表示するものとする。具体的には、表示部25は、領域特定部24が蓄積した、レンズ領域に含まれる点像を識別する情報、及び、各点像を識別する情報と表示画面または表示画像の位置とを対応付ける情報を用いて、図8(b)で示されるように、レンズ領域と、その他の領域との間の境界を特定する。なお、図8(b)は、各点像の種類を表示画面上や表示画像上で示したものである。図8(b)において、折線で記載された2個の線が境界を示す線である。また、図8(b)では、レンズ点像に対応する隣接した複数の開口18bのうち、最外周の開口18bと、それに最も近いスルー点像またはブロック点像に対応する開口18bとの中点を、グリッドの並びに平行な縦横の線分で結んだ折線を境界としている。また、表示部25は、その折線を、図8(c)で示されるように、曲線に変換する。そして、その曲線である境界によって区切られるレンズ領域でない領域にマスクをした光学特性の分布を、図9(a)で示されるように表示する。この表示を見たユーザは、被検レンズ5が存在する領域を直感的に知ることができるようになる。また、被検レンズ5を移動させても、それに応じたレンズ領域の表示が行われる。したがって、ユーザは、被検レンズ5を見ないで表示画面3を見ているだけであっても、被検レンズ5の位置を知ることができ、その被検レンズ5が保持部6や押さえ部材10から外れないように操作を行うことができる。なお、図8(a)は、スクリーン15上の点像を分類ごとに示すものであるが、図8(b)、図8(c)は、表示画像上の点像に対応する位置ごとに点像の分類を示したものである。
【0056】
なお、レンズ領域と、その他の領域とを区別可能なように表示する方法は、前述のように、図9(a)に限られるものではない。例えば、図8(c)で示されるようにして特定された境界に対応する図形を、図9(b)で示されるように、光学特性の分布に重畳して表示するだけであってもよい。この場合であっても、境界を示す図形が表示されることによって、ユーザは、被検レンズ5がどこに存在するのかを直感的に容易に知ることができるようになる。また、レンズ領域の境界は、図8(b)で示されるように、折線で示されるものであってもよい。したがって、図9(a)や図9(b)で示される境界も、折線で示されるものであってもよい。また、レンズ領域と、その他の領域とを色を変えて表示することによって、両領域を区別可能に表示してもよいことは前述の通りである。
【0057】
また、図9(a)、図9(b)で示される表示を見ながら被検レンズ5を操作し、被検レンズ5の光学中心が測定光軸上にアライメントされた際に、印点部11を用いて、被検レンズ5の光学中心の位置に印点を付したり、メモリスイッチ7を押すことによって、光学中心の位置における光学特性の値を蓄積したりしてもよい。
【0058】
次に、度数のない被検レンズ5の測定が行われる場合について簡単に説明する。度数のない被検レンズ5が保持部6に載置され、光学特性の算出が行われたとする(ステップS103,S104)。この場合に、受光部22が受光した開口18bの受光像が図7(a)で示されるものであったとすると、領域特定部24は、すべての点像をスルー点像に分類する(ステップS105)。したがって、領域特定部24は、レンズ領域を特定できないと判断し(ステップS106)、レンズ点像のみではなく、ブロック点像のみではないと判断する(ステップS109,S111)。そして、領域特定部24は、あらかじめ蓄積していた点像ごとの輝度値と、光学特性の算出の際に蓄積された点像の画像とを用いて、光学特性の算出の際の点像の輝度値が、蓄積された輝度値未満であるかどうか判断する。そして、蓄積された輝度値未満である点像の位置に、被検レンズ5が存在すると判断する。この具体例では、図10(a)で示される●が、輝度値が、被検レンズ5の存在しない時の輝度値より低い点像を示している。すなわち、その黒丸で示される点像に対応する位置に、被検レンズ5が存在することになる。したがって、レンズ点像等を前述した記号で記述すると、図10(b)で示されるようになる(ステップS112)。その後、レンズ領域が存在すると判断され(ステップS113)、そのレンズ領域の境界が分かるように光学特性の分布が表示されることは、前述の通りである。例えば、図10(c)で示されるように、光学特性の分布が表示される(ステップS108)。この場合には、度数のない被検レンズ5の表示であるため、このような等高線のない表示となる。
【0059】
なお、この具体例では、レンズ領域を特定する際に、レンズ領域に含まれるすべての点像を特定する場合について説明したが、そうでなくてもよい。レンズ領域に含まれる点像であって、他の領域との境界に位置する点像を特定してもよい。その際には、その境界の点像のどちら側がレンズ領域であるのかが分かるように特定することが好適である。例えば、その境界に位置する点像以外に、レンズ領域に含まれる点像を一点だけ余分に特定してもよく(この場合には、その余分な一点のある側がレンズ領域側となる)、その境界に位置する複数の点像を特定する向きに応じて、レンズ領域の側が決まっていてもよく(例えば、第1の点像から、第N(Nは2以上の整数)の点像に向かって複数の点像が特定された場合には、第1の点像を基点として、第Nの点像の方を向いた場合における左側がレンズ領域の側であると決まっていてもよい)、あるいは、その他の方法によって、レンズ領域の側が分かるようになっていてもよい。
【0060】
以上のように、本実施の形態によるレンズ特性表示装置1によれば、被検レンズ5の光学特性の分布を表示する際に、被検レンズ5の領域であるレンズ領域と、その他の領域との境界が分かるように表示することができる。したがって、光学特性の分布に慣れていないユーザであっても、その表示を見ることによって、被検レンズ5の端部がどこにあるのかを容易に知ることができるようになる。したがって、ユーザは、被検レンズ5を操作する際に、その被検レンズ5が保持部6や押さえ部材10から外れないように操作することができるようになる。また、レンズ領域を特定し、その境界が分かるように表示を行うことによって、例えば、枠を有しない被検レンズ5の光学特性を表示する場合であっても、適切に、その境界が分かるように表示を行うことができるようになる。
【0061】
なお、本実施の形態において、レンズ領域を特定する方法は、前述のものに限定されないことは言うまでもない。例えば、受光量を用いたレンズ領域の特定を行わなくてもよい。
【0062】
また、本実施の形態では、領域特定部24がレンズ領域の特定を行い、その後に、表示部25が、レンズ領域の境界が分かるように光学特性の分布を表示する場合について説明したが、レンズ領域の特定は、光学特性の分布の表示の際に順次、行われてもよい。例えば、表示部25が、ある点像の位置に対応した光学特性の分布を表示する際に、領域特定部24が、その点像の位置がレンズ領域であるかどうか判断し、レンズ領域であれば光学特性の分布を表示し、レンズ領域でなければ光学特性の分布の表示以外を行う(例えば、マスクを表示する、何も表示しないなど)ようにしてもよい。このように、光学特性の分布を表示する際にレンズ領域の特定を順次、行うことによって、結果としてレンズ領域の境界が分かるように光学特性の分布を表示してもよい。
【0063】
また、本実施の形態では、レンズ特性表示装置1が印点部11を備えた場合について説明したが、印点を付す必要がない場合には、レンズ特性表示装置1が印点部11を備えていなくてもよい。
【0064】
また、上記実施の形態において、各処理または各機能は、単一の装置または単一のシステムによって集中処理されることによって実現されてもよく、あるいは、複数の装置または複数のシステムによって分散処理されることによって実現されてもよい。
【0065】
また、上記実施の形態において、各構成要素が実行する処理に関係する情報、例えば、各構成要素が受け付けたり、取得したり、選択したり、生成したりした情報や、各構成要素が処理で用いるしきい値や数式等の情報等は、上記説明で明記していない場合であっても、図示しない記録媒体において、一時的に、あるいは長期にわたって保持されていてもよい。また、その図示しない記録媒体への情報の蓄積を、各構成要素、あるいは、図示しない蓄積部が行ってもよい。また、その図示しない記録媒体からの情報の読み出しを、各構成要素、あるいは、図示しない読み出し部が行ってもよい。
【0066】
また、上記実施の形態において、各構成要素等で用いられる情報、例えば、各構成要素が処理で用いるしきい値や各種の設定値等の情報がユーザによって変更されてもよい場合には、上記説明で明記していない場合であっても、ユーザが適宜、それらの情報を変更できるようにしてもよく、あるいは、そうでなくてもよい。それらの情報をユーザが変更可能な場合には、その変更は、例えば、ユーザからの変更指示を受け付ける図示しない受付部と、その変更指示に応じて情報を変更する図示しない変更部とによって実現されてもよい。その図示しない受付部による変更指示の受け付けは、例えば、入力デバイスからの受け付けでもよく、通信回線を介して送信された情報の受信でもよく、所定の記録媒体から読み出された情報の受け付けでもよい。
【0067】
また、上記実施の形態において、各構成要素は専用のハードウェアにより構成されてもよく、あるいは、ソフトウェアにより実現可能な構成要素については、プログラムを実行することによって実現されてもよい。例えば、ハードディスクや半導体メモリ等の記録媒体に記録されたソフトウェア・プログラムをCPU等のプログラム実行部が読み出して実行することによって構成要素が実現され得る。
【0068】
また、本発明は、以上の実施の形態に限定されることなく、種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0069】
以上より、本発明によるレンズ特性表示装置によれば、被検レンズの領域を示すことができるという効果が得られ、例えば、被検レンズの光学特性を表示する装置等として有用である。
【符号の説明】
【0070】
1 レンズ特性表示装置
2 装置本体
3 表示画面
5 被検レンズ
6 保持部
7 メモリスイッチ
9 当接板
10 押さえ部材
11 印点部
12 発光素子
13 投光レンズ
14、14a、14b パターンマスク
15 スクリーン
16 結像レンズ
17 撮像素子
18a、18b 開口
21 投光部
22 受光部
23 光学特性算出部
24 領域特定部
25 表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検レンズを保持する保持部と、
前記被検レンズに測定光を投光する投光部と、
前記被検レンズを通過した測定光を受光する受光部と、
測定光の光路に存在する、グリッド状に配列された開口を有するパターンマスクと、
前記受光部が受光した前記パターンマスクの受光像を用いて、前記被検レンズの光学特性を算出する光学特性算出部と、
前記光学特性算出部が算出した光学特性によって前記被検レンズの存在することが示される領域であるレンズ領域を特定する領域特定部と、
前記領域特定部の特定したレンズ領域と当該レンズ領域でない領域との境界が分かるように、前記光学特性算出部が算出した光学特性の分布を表示する表示部と、を備えたレンズ特性表示装置。
【請求項2】
前記表示部は、
前記領域特定部の特定したレンズ領域についてのみ、前記光学特性算出部が算出した光学特性の分布を表示する、請求項1記載のレンズ特性表示装置。
【請求項3】
前記表示部は、
前記レンズ領域と当該レンズ領域でない領域とを色を変えて表示する、請求項1または請求項2記載のレンズ特性表示装置。
【請求項4】
前記表示部は、
前記レンズ領域と当該レンズ領域でない領域との境界を曲線で表示する、請求項1から請求項3のいずれか記載のレンズ特性表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−32289(P2012−32289A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−172460(P2010−172460)
【出願日】平成22年7月30日(2010.7.30)
【出願人】(390000594)株式会社レクザム (64)
【Fターム(参考)】