説明

レンズ脱着式の跳ね上げ眼鏡

【課題】レンズの交換を容易に低コストで行えるだけでなく、レンズの跳ね上げ操作を片手で安定して行うことができ、またヒンジのアガキも失われ難く、しかも、繰り返しレンズの跳ね上げ操作を行った場合でも止着部材の緩みによるガタつきが生じ難いレンズ脱着式の跳ね上げ眼鏡を提供すること。
【解決手段】両側にテンプルT・Tが連結されたブローバー1と;このブローバー1の左右の眉形部に両サイドがヒンジ連結された跳ね上げビーム2と;この跳ね上げビーム2の中央下部の背面に着脱自在にブリッジが取着され、かつ、このブリッジの両側に左右レンズL・Lを装着可能なレンズ固定部が設けられたインナー枠3とを含んでレンズ脱着式の跳ね上げ眼鏡を構成し、更に前記跳ね上げビーム2には、中央下部の背面に横方向の凹溝を設け、当該凹溝に前記インナー枠3のブリッジを嵌め込んだ状態で止着可能とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズ脱着式の跳ね上げ眼鏡の改良、詳しくは、レンズの交換を容易に行えるだけでなく、レンズの跳ね上げ操作を片手で安定して行うことができ、しかも、繰り返しレンズの跳ね上げ操作を行った場合でもガタつきが生じ難いレンズ脱着式の跳ね上げ眼鏡に関するものである。
【背景技術】
【0002】
周知のとおり、眼鏡のバリーションの中には、レンズをブローバーに揺動自在に連結して、レンズを必要なときには目の前に、不要なときには眼前から額側へ跳ね上げできるようにしたもの(所謂、跳ね上げ眼鏡)があり、このような跳ね上げ式の構造は、比較的頻繁に付け外しが必要なサングラスや老眼鏡で多く採用されている。
【0003】
また、上記跳ね上げ眼鏡については、レンズが装着された枠体(前掛け枠やインナー枠)を、ブローバーに連結した跳ね上げ部材に着脱自在に取り付けたものが従来知られており(例えば、特許文献1,2参照)、このような構造を採用することによって、レンズの交換作業を枠体ごと簡単に行うことができる。
【0004】
しかしながら、上記従来の跳ね上げ眼鏡では、跳ね上げ部材とブローバーが中央の一点でヒンジ連結されていたため、使用者が片手でレンズを摘んで跳ね上げようとすると、左右のレンズを繋ぐ枠体に捩れが生じ、更にこの枠体の捩れが跳ね上げ部材にまで及んでヒンジの回転に引っ掛かりが生じることがあった。
【0005】
しかも、上記引っ掛かりが生じた状態で跳ね上げ操作を繰り返すと、ヒンジ部の摩耗が進んでアガキ(回転抵抗)が失われ易かったため、アガキを利用してレンズを跳ね上げた状態に保持する跳ね上げ眼鏡において、商品寿命を縮める結果に繋がった。
【0006】
一方、従来においては、左右レンズを装着した枠体をブローバーに二点で連結した構造も公知となっているが(特許文献3参照)、この文献3に係る眼鏡の構造では、レンズの交換を枠体だけでなくブローバーごと一緒に交換しなければならなかったため、交換コストが高く付く欠点があった。
【0007】
また、本件発明者は、上記問題を解決するために、ブローバーに二点で連結した跳ね上げビームにレンズ付きの枠体を着脱自在に取り付ける方法を思い付いたものの、単に枠体と跳ね上げビームを止着部で連結するだけでは、跳ね上げ操作を繰り返し行った際に止着部が緩んでガタつきが生じ易かったため、更なる工夫が必要となった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開昭59−195620号公報
【特許文献2】特開2004−177849号公報
【特許文献3】特開2001−215449号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで本発明は、上記の如き問題に鑑みて為されたものであり、その目的とするところは、レンズの交換を容易に低コストで行えるだけでなく、レンズの跳ね上げ操作を片手で安定して行うことができ、またヒンジのアガキも失われ難く、しかも、繰り返しレンズの跳ね上げ操作を行った場合でも止着部材の緩みによるガタつきが生じ難いレンズ脱着式の跳ね上げ眼鏡を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者が上記課題を解決するために採用した手段は次のとおりである。
【0011】
即ち、本発明は、両側にテンプルT・Tが連結されたブローバー1と;このブローバー1の左右の眉形部11に両サイドがヒンジ連結された跳ね上げビーム2と;この跳ね上げビーム2の中央下部の背面に着脱自在にブリッジ32が取着され、かつ、このブリッジ32の両側に左右レンズL・Lを装着可能なレンズ固定部31・31が設けられたインナー枠3とを含んでレンズ脱着式の跳ね上げ眼鏡を構成し、
更に前記跳ね上げビーム2には、中央下部の背面に横方向の凹溝21を設け、当該凹溝21に前記インナー枠3のブリッジ32を嵌め込んだ状態で止着可能とした点に特徴がある。
【0012】
なお、上記ブローバーの「眉形部」とは、ブローバーにおいて下方にレンズが配置される部分を意味し、特に眉のような円弧型の形状となっている必要はなく、全体が直線状のブローバーであっても眉形部は存在するものとする。
【0013】
また、上記インナー枠3のレンズ固定部31・31を、レンズL・L周囲に巻き付けるバンドNと、このバンドNの両端を固定するリム31・31とから構成する場合には、跳ね上げビーム2の左右下側の屈曲縁部に、前記リム31・31を嵌め込み可能な切欠溝22・22を形成することができ、これによって跳ね上げ部材とインナー枠3の接触面積が増えて、操作時に加える力が跳ね上げ部材全体に伝わり易くなる。
【0014】
そしたまた、上記跳ね上げビーム2の中央下部に対して、インナー枠3をブリッジ32の中央一点で止着部材により連結すれば、部品点数を減らせるだけでなく着脱作業をより迅速に行うことも可能となる。
【発明の効果】
【0015】
本発明では、左右のレンズを装着したインナー枠を跳ね上げ部材に取着すると共に、この跳ね上げ部材をブローバーに左右の二点でヒンジ連結して構成したことにより、片手でレンズを摘んで跳ね上げる場合でも、跳ね上げ部材に枠体の捻りの影響が及び難くなるため、ヒンジの引っ掛かりがない安定した状態で跳ね上げ操作を行うことができる。
【0016】
また、上記のようにヒンジの引っ掛かりを防止することで、ヒンジの摩耗を抑制することもできるため、繰り返し跳ね上げ操作を行った場合でもヒンジのアガキは失われ難く、レンズの角度保持にアガキを利用する眼鏡であっても商品寿命が縮むことはない。
【0017】
そしてまた、本発明では、上記跳ね上げ部材の背面に横方向の凹溝を設けて、この凹溝にインナー枠のブリッジを嵌め込んだ状態で止着可能としたことにより、跳ね上げ操作時にかかる止着部への負荷を大幅に軽減することができるため、跳ね上げ操作の繰り返しにより止着部が緩んでガタつきが生じる心配もない。
【0018】
また更に、上記跳ね上げ構造を採用したことによって、レンズの交換をインナー枠ごと行うことができるため、レンズの交換作業は素人でも簡単に行うことができる。また、跳ね上げ部材やブローバーについては交換せずにそのまま使用できるため、交換コストが高く付くこともない。
【0019】
したがって、本発明により、レンズの交換を手軽に行え、レンズの跳ね上げ機能も改善でき、しかも、長期間使用しても故障が生じ難いレンズ脱着式の跳ね上げ眼鏡を提供できることから、本発明の実用的利用価値は頗る高い。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施例1におけるレンズ脱着式の跳ね上げ眼鏡を表わす分解斜視図である。
【図2】本発明の実施例1におけるレンズ脱着式の跳ね上げ眼鏡を表わす平面図及び正面図である。
【図3】本発明の実施例1における跳ね上げ部材とインナー枠の取着構造を表わす分解斜視図である。
【図4】本発明の実施例1における跳ね上げ眼鏡の使用状態を表わす状態説明図である。
【図5】本発明の実施例2におけるレンズ脱着式の跳ね上げ眼鏡を表わす全体正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
『実施例1』
本発明の実施例1について、図1〜図4に基いて説明する。なお同図において、符号1で指示するものは、ブローバーであり、符号2で指示するものは、跳ね上げ部材である。符号3で指示するものは、インナー枠である。
【0022】
まず実施例1では、両側にテンプルT・Tが連結されたブローバー1の眉形部11・11と、跳ね上げビーム2の両端部とを二点でヒンジ連結すると共に(図1、図2参照)、跳ね上げビーム2の中央下部の背面に、図3(a)及び(b)に示すように左右レンズL・Lを装着したインナー枠3を着脱自在に取着して眼鏡フレームFを構成している。
【0023】
なお、本実施例では、上記ブローバー1と跳ね上げビーム2に樹脂製フレームを、インナー枠3に金属製フレームを使用している。また、インナー枠3の両側のレンズ固定部31・31は、レンズL・L周囲に巻き付けるバンドNと、このバンドNの両端を固定するレンズ外周の四分の一程度の長さのリム31a・31aとから構成している。
【0024】
一方、上記跳ね上げビーム2の中央下部の背面には横方向の凹溝21を設けて、この凹溝21にインナー枠3のブリッジ32を嵌め込んだ状態で止着している。また、インナー枠3の止着方法については、インナー枠3のブリッジ32中央に設けた挿通孔32aにネジSを差し込み、このネジSを跳ね上げビーム2の背面側に固定している。
【0025】
ちなみに、上記のようにインナー枠3をブリッジ32の中央で一点留めした場合であっても、インナー枠3のブリッジ32は跳ね上げビーム2の凹溝21に嵌め込まれているため、インナー枠3がブリッジ32の止着部を支点として回転するようなことはない。
【0026】
また、上記のようにインナー枠3をブリッジ32の中央一点で連結すれば、止着部材の部品点数を減らして製造コストを低減できるだけでなく、止着部材の取付け・取外しの作業回数を減らして、インナー枠3の着脱作業を迅速化することもできる。
【0027】
また更に、本実施例では、上記跳ね上げビーム2の左右下側の屈曲縁部にも、インナー枠3のリム31・31を嵌め込み可能な切欠溝22・22を形成して、跳ね上げビーム2とインナー枠3の接触面積を増やしているため、跳ね上げ操作時に加える力を効率的に跳ね上げビーム2全体に伝えることができる。
【0028】
そして、上記のように跳ね上げビーム2をブローバー1に二点でヒンジ連結して構成したことにより、図4(a)及び(b)のようにレンズL・Lの跳ね上げ操作(及び元に戻す操作)行った場合でも、跳ね上げビーム2に捻りが加わることはないため、左右のヒンジ部H・Hに大きな負荷がかかる心配はない。
【0029】
また、上記インナー枠3は、ブリッジ32が跳ね上げビーム2の凹溝21に嵌め込まれた状態で取着されているため、跳ね上げ操作を繰り返し行った場合でも、インナー枠3と跳ね上げビーム2を連結するネジSに緩みが生じることもない。
【0030】
他方また、本実施例では、上記ブローバー1の中央部に下側に突き出したノーズパッド12の取着部を設けて、このノーズパッド12の取着部が、跳ね上げ前の跳ね上げビーム2の背面部を覆うようにしたことにより、跳ね上げビーム2とインナー枠3の連結部分が眼鏡フレームFの裏側から見えないようにしている。
【0031】
『実施例2』
次に、本発明の実施例2について、図5に基いて以下に説明する。この実施例2では、インナー枠3のレンズ固定部31に、実施例1のようなリム式ではなくツーポイント式の止着部31b・31bを採用しており、これらの止着部31b・31bを繋ぐブリッジ32を跳ね上げビーム2の背面に固定して眼鏡フレームFを構成している。
【0032】
本発明は、概ね上記のように構成されるが、記載した実施例にのみ限定されるものではなく、「特許請求の範囲」の記載内において種々の変更が可能であって、例えば、ブローバー1、跳ね上げビーム2及びインナー枠3の材質には、合成樹脂や金属、竹などを自由に選択することができ、また必要に応じて複合材料を選択することもできる。
【0033】
また、インナー枠3のレンズ固定部31に関しても、バンドNでレンズLを固定するハーフリム式のリムや、ツーポイント式の止着部だけでなく、レンズL全周を囲うフルリム型のリムを採用することもできる。
【0034】
また更に、インナー枠3のブリッジ32、及びこのブリッジ32を嵌め込む跳ね上げビーム2の凹溝21の形状についても、直線型の形状である必要はなく、円弧型やジグザグ型の形状としてもよく、その場合には、インナー枠3の取り付け時にブリッジ32が左右にズレないように位置決めすることができる。
【0035】
そしてまた、インナー枠3のブリッジ32と跳ね上げビーム2の止着方法についても、ネジ留め以外の方法、例えば、凹凸嵌合を用いた方法や係止突起を用いた方法を採用することができ、何れのものも本発明の技術的範囲に属する。
【産業上の利用可能性】
【0036】
近年においては、跳ね上げ式の構造を採り入れた使い勝手の良いサングラスや老眼鏡の人気が高く、幅広い年齢層で跳ね上げ眼鏡が使用されている。しかし、跳ね上げ眼鏡は、繰り返しの跳ね上げ操作によってヒンジ部に摩耗が生じ易いため、長期間使用すると故障が発生し易い。またサングラスレンズの場合には、着色レンズを他の色に交換可能とすることで服装との相性をより高めることができる。
【0037】
そのような中で、本発明のレンズ脱着式の跳ね上げ眼鏡は、跳ね上げ操作を繰り返し行って長期間使用した場合でも故障が起き難いだけでなく、ファッション面でもレンズの交換作業を素人でも簡単に行えるようにした有用な技術であるため、その産業上の利用価値は非常に高い。
【符号の説明】
【0038】
1 ブローバー
11 眉形部
12 ノーズパッド
2 跳ね上げ部材
21 凹溝
22 切欠溝
3 インナー枠
31 レンズ固定部
31a リム
31b 止着部
32 ブリッジ
32a 挿通孔
T テンプル
L レンズ
F 眼鏡フレーム
H ヒンジ部
N バンド
S ネジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
両側にテンプル(T)・(T)が連結されたブローバー(1)と;このブローバー(1)の左右の眉形部(11)に両サイドがヒンジ連結された跳ね上げビーム(2)と;この跳ね上げビーム(2)の中央下部の背面に着脱自在にブリッジ(32)が取着され、かつ、このブリッジ(32)の両側に左右レンズ(L)・(L)を装着可能なレンズ固定部(31)・(31)が設けられたインナー枠(3)とを少なくとも含んで成り、
更に前記跳ね上げビーム(2)には、中央下部の背面に横方向の凹溝(21)が設けられて、当該凹溝(21)に前記インナー枠(3)のブリッジ(32)を嵌め込んだ状態で止着可能であることを特徴とするレンズ脱着式の跳ね上げ眼鏡。
【請求項2】
インナー枠(3)のレンズ固定部(31)・(31)を、レンズ(L)・(L)周囲に巻き付けるバンド(N)と、このバンド(N)の両端を固定するリム(31)・(31)とから構成し、更に跳ね上げビーム(2)の左右下側の屈曲縁部には、前記リム(31)・(31)を嵌め込み可能な切欠溝(22)・(22)を形成したことを特徴とする請求項1記載のレンズ脱着式の跳ね上げ眼鏡。
【請求項3】
跳ね上げビーム(2)の中央下部に対して、インナー枠(3)をブリッジ(32)の中央一点で止着部材により連結したことを特徴とする請求項1または2に記載のレンズ脱着式の跳ね上げ眼鏡。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2013−88539(P2013−88539A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−227568(P2011−227568)
【出願日】平成23年10月17日(2011.10.17)
【出願人】(397038565)株式会社エニックス (5)
【Fターム(参考)】