説明

レンズ装置及びそれを有する撮像装置

【課題】
連結ガタをなくし、衝撃に強く、かつレンズ群の駆動時に生じる負荷変動による影響を軽減した、レンズ群とレンズ駆動装置とを連結する連結機構を有するレンズ装置、該レンズ装置を有する撮像装置を提供する。
【解決手段】
レンズを保持するレンズ内枠と、該レンズ内枠の外側を覆い、該レンズ内枠の駆動方向を光軸方向に規制するガイドを有するレンズ外枠と、該レンズ内枠を光軸方向に駆動するレンズ駆動装置と、該レンズ内枠と該レンズ駆動装置とを連結する連結機構とを有するレンズ装置であって、該連結機構は弾性部材を有し、該弾性部材は、該レンズ内枠の駆動方向と垂直な方向に弾性力を有する、ことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズ群とレンズ駆動装置とを連結する連結機構を有するレンズ装置、該レンズ装置を有する撮像装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図6、図7、図8は、従来の、放送用のテレビカメラに使用される箱型レンズ装置のレンズ駆動装置を示したものである。
【0003】
レンズ群17を保持するレンズ内枠1の外側には直動用のレール18が固定されている。また、レンズ内枠1の外側を覆うレンズ外枠19の内側には、ガイドとしての駆動コロ21がナット20で固定されている。そして、駆動コロ21がレール18に嵌め込まれることにより、レンズ内枠1の駆動方向は駆動コロ21に沿って光軸方向に規制される。
送りねじ(オス)22は、軸受23によってレンズ外枠19の軸固定部19a、19bに固定され、送りねじ(メス)24は、レンズ内枠1にねじ25によって固定された連結コマ26を介してレンズ内枠1と連結されている。
【0004】
このとき、連結コマ26は、送りねじ(メス)24の溝部24aに対して、レンズ群17の駆動方向に対してガタをもった接続がなされている(以下、レンズ群とレンズ駆動装置とを連結する連結機構における、レンズ群の駆動方向に対してもたされたガタのことを「連結ガタ」という)。ガイドとしてのレール18及び駆動コロ21によって規制されるレンズ内枠1の駆動方向と、送りねじ(オス)22及び送りねじ(メス)24などからなるレンズ駆動装置によって規制されるレンズ内枠1の駆動方向との微小なズレによって生じる負荷変動による影響を、連結ガタを有することにより取り除けるからである。
【0005】
レンズ群とレンズ駆動装置とを連結する連結機構を有するレンズ装置に関する従来技術としては、以下の特許文献1,2がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平05−011166号公報
【特許文献2】特開平06−229454号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、連結ガタを有することによる好ましい効果がある一方で、連結ガタを有することにより、レンズ群17を駆動する際に駆動遅れが生じたり、駆動するレンズ群17を所望の位置に停止させる際の位置精度が低下するという不都合が生じたりするので、上記負荷変動による影響を取り除けるならば、連結ガタを有しない方がより好ましい。
そこで、本発明の目的は、連結ガタをなくし、衝撃に強く、かつレンズ群の駆動時に生じる負荷変動による影響を軽減した、レンズ群とレンズ駆動装置とを連結する連結機構を有するレンズ装置、該レンズ装置を有する撮像装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明のレンズ装置は、レンズを保持するレンズ内枠と、該レンズ内枠の外側を覆い、該レンズ内枠の駆動方向を光軸方向に規制するガイドを有するレンズ外枠と、該レンズ内枠を光軸方向に駆動するレンズ駆動装置と、該レンズ内枠と該レンズ駆動装置とを連結する連結機構とを有するレンズ装置であって、該連結機構は弾性部材を有し、該弾性部材は、該レンズ内枠の駆動方向と垂直な方向に弾性力を有する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、連結ガタをなくし、衝撃に強く、かつレンズ群の駆動時に生じる負荷変動による影響を軽減した、レンズ群とレンズ駆動装置とを連結する連結機構を有するレンズ装置、該レンズ装置を有する撮像装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施例1の連結機構及びレンズ駆動装置の詳細図
【図2】実施例1の連結機構のII−II断面図
【図3】実施例1の連結機構のIII−III断面図
【図4】本発明の実施例2の連結機構及びレンズ駆動装置の詳細図
【図5】実施例2の連結機構及びレンズ駆動装置のV−V断面図
【図6】従来のレンズ装置の全体図
【図7】従来例である連結機構及びレンズ駆動装置の側面図
【図8】従来例である連結機構及びレンズ駆動装置のVIII−VIII断面図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明の好ましい実施の形態を、添付の図面に基づいて詳細に説明する。図1は、本発明の実施形態にかかわる連結機構及びレンズ駆動装置の詳細図である。
【実施例1】
【0012】
以下、図1から図3を参照して、本発明の第1の実施例による、レンズ内枠とレンズ駆動装置とを連結する連結機構の詳細構造について説明する。
【0013】
図1において、光軸方向に駆動するレンズ内枠1の外側には、図6に示した従来例と同様に、レンズ内枠1の駆動方向を規制するガイドとしてのレール18が固定されている。レンズ群17を保持するレンズ内枠1は、レンズ内枠1の外側を覆うレンズ外枠19の内側に固定されたガイドとしての駆動コロ21に沿って光軸方向に駆動される。レンズ駆動装置としての送りねじ(オス)2は軸受によりレンズ外枠19に固定されている。送りねじ(オス)2が係合しているレンズ駆動装置としての送りねじ(メス)3はレンズ内枠1に固定された連結コマ4を介して、レンズ内枠1と接続されている。送りねじ(メス)3は、送りねじ(メス)3にある連結溝3aを介して連結コマ4と接続している。
【0014】
連結コマ4には、弾性部材である板ばね7は、スペーサ10を介してねじ11によって変形規制部である衝撃緩衝台5に2箇所で固定され、スペーサ8を介してねじ9によって連結コマ4に2箇所で固定されている。すなわち、板ばね7は、異なる位置(板ばね7の一の直径方向における2点及び他の直径方向における2点)において、レンズ内枠1側である衝撃緩衝台5(連結機構のレンズ内枠側)、及び、送りねじ(メス)3側である連結コマ4(連結機構のレンズ駆動装置側)に固定されている。そして、これにより、板ばね7はレンズ内枠1の駆動方向と垂直な方向に弾性力を有するように設置されることとなる。
衝撃緩衝台5は、ねじ6によってレンズ内枠1に固定されている。変形規制部である衝撃緩衝台5によって、弾性部材である板ばね7の弾性変形範囲を規制している。
【0015】
衝撃緩衝台5は、一体に構成されたストッパ5aを有し、レンズ内枠1の光軸方向への急激な負荷が板ばね7に加わり、板ばね7が塑性変形等の損傷に至らないよう送りねじ(メス)3の光軸方向の端面に先にストッパ5aが当たるような構成(形状)となっている。すなわち、レンズ内枠1の直線駆動方向への急激な変位に起因する板ばね7の損傷を防止するため、弾性部材の弾性変形範囲を規制する。
【0016】
図2において、送りねじ(メス)3との連結部である連結コマ4の接続状態について説明する。図2は、図1のII−II断面での断面図を示したものである。
【0017】
連結コマ4は突起部4aを有し、この突起部によって突起部4aが光軸方向において送りねじ3の連結溝3aに対して隙間がないよう、かつ、所定の角度範囲で回動可能であるように、嵌合し接続されている。しかし、連結コマ4(突起部4a)と送りねじ3の連結溝3aとは固定されていないため、光軸と垂直な方向、例えば、図2中で上下方向又は紙面方向、に対しては摺動可能となっている。また、突起部4aの形状を円柱型にすることで、レンズ内枠1の左右方向(図2中における紙面に垂直な方向を軸とする連結コマ4の回転方向)への回転による負荷を回避して、板ばね7に対する負荷を軽減している。
【0018】
図3において、板ばね7の形状および固定ねじの配置について説明する。図3は、図1のIII−III断面での断面図を示したものである。
【0019】
板ばね7は薄肉のリング型の形状を有し、図3に示すように中央に孔7aを有する形状である。板ばね7は、スペーサ8を介して直径方向(他の直径方向)の2点で連結コマ4(連結機構のレンズ駆動装置側)にねじ9で固定され、スペーサ10を介して直径方向(一の直径方向)の2点で衝撃緩衝台5(連結機構のレンズ内枠側)に固定ねじ11で固定されている。板ばね7における、スペーサ8を介して連結コマ4にねじ9で固定された2点を結ぶ直線と、スペーサ10を介して衝撃緩衝台5に固定ねじ11で固定された2点を結ぶ直線とは、互いに略直交する配置となっている。この構成により、板ばね7の薄肉リング型の形状の半径方向を含む平面は、光軸方向(レンズ内枠の駆動方向)と平行となるように設置されているため、送りねじ2、3の駆動力による、レンズ群の光軸方向への駆動に対しては、十分な剛性を有してレンズ群を駆動することを可能としながら、より効果的に弾性効果を発揮している。
【0020】
上記構成によって、送りねじ2、3によって連結コマ4、板ばね7、衝撃緩衝台5を介して連結されたレンズ内枠1は、連結部がガタを有することなく直線駆動することが可能となる。
【0021】
また、レンズ内枠1の回転や倒れによる変動は、板ばね7によって送りねじ2,3へ伝達することは回避される。
【0022】
さらに、衝撃などによる急激な変動がレンズ内枠1に発生した場合においては、板ばね7の塑性変形の危険性のある光軸方向への負荷に対して、ストッパ5aが送りねじ(メス)3に当たることによって衝撃を吸収する。
【0023】
本実施形態によれば、連結ガタをなくし、衝撃に強く、かつレンズ群の駆動時に生じる負荷変動による影響を軽減した、レンズ群とレンズ駆動装置とを連結する連結機構を有するレンズ装置、該レンズ装置を有する撮像装置を提供することができる。
【実施例2】
【0024】
以下、図4、図5を参照して、本発明の第2の実施例による連結機構について説明する。
【0025】
第2の実施例においては、送りねじ(オス)12と係合する送りねじ(メス)13は、外周に設けられた連結溝13aを有し、薄肉のコの字型の形状をした弾性部材である板ばね14が、送りねじ(メス)13に被さるように設置されている。板ばね14には送りねじ(メス)13との連結部である連結ピン15が圧着されて一体化して構成され、連結ピン15は送りねじ(メス)13の外周の連結溝13aをガタなく挟み込んでいる。つまり、連結ピン15は、連結ピン15の軸周りで回動可能に、かつ、送りねじ(オス)12の軸周りで回動可能に、送りねじ(メス)13の外周の連結溝13aと嵌合し連結している。板ばね14は固定ねじ16によって衝撃緩衝台5に固定され、衝撃緩衝台5はねじ6によってレンズ群17を保持するレンズ内枠1に固定されている。変形規制部である衝撃緩衝台5は、一体に構成されたストッパ5aを有し、レンズ内枠1の光軸方向(直線駆動方向)への急激な負荷が板ばね14に加わり、板ばね14が塑性変形等の損傷に至らないよう送りねじ(メス)13の光軸方向の端面に先にストッパ5aが当たるような構成(形状)となっている。これについては、第1の実施例と同様である。その他の符号に関しては、実施例1の説明の通りである。
この構成により、板ばね14の平面は、光軸方向(レンズ内枠の駆動方向)と平行となるように設置されているため、送りねじ2、3の駆動力による、レンズ群の光軸方向への駆動に対しては、十分な剛性を有してレンズ群を駆動することを可能としながら、より効果的に弾性効果を発揮している。
【0026】
本実施例の構成において、連結ピン15を介して板ばね14と送りねじ(メス)13の連結溝13aが連結している。連結ピン15の形状が略円筒形状であるため、板ばね14は送りねじ(メス)13に対して、連結ピンの軸に対する回転方向に自由度を有し、連結部のガタつきを防止している。
【0027】
このように、本実施例の構成においても、レンズ内枠1は、連結部に連結ガタを持たずに直線駆動することができる。
【0028】
また、レンズ内枠1の回転や倒れによる変動は、板ばね14のたわみと連結ピン15が連結溝13aに沿って回転することによって、送りねじ12,13への伝達は回避される。
【0029】
本実施形態によれば、実施例1と同様の効果がある。
本発明の連結機構によって、連結ガタを持たずにレンズを直線駆動することができる、レンズ装置、及び、撮像装置を実現することができる。
上記の本発明の実施例においては、レンズ群を保持するレンズ内枠を光軸方向に直線駆動するレンズ駆動装置として送りねじを有する機構を例示して説明したが、本発明はこれに限定されることはなく、直線駆動を実現する手段であれば本発明の効果を奏することができる。
【0030】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。
【符号の説明】
【0031】
1 レンズ内枠
2,12,22 送りねじ(オス)
3,13,24 送りねじ(メス)
5 衝撃緩衝台(変形規制部)
5a ストッパ
7,14 板ばね(弾性部材)
17 レンズ群
19 レンズ外枠

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レンズを保持するレンズ内枠と、
該レンズ内枠の外側を覆い、該レンズ内枠の駆動方向を光軸方向に規制するガイドを有するレンズ外枠と、
該レンズ内枠を光軸方向に駆動するレンズ駆動装置と、
該レンズ内枠と該レンズ駆動装置とを連結する連結機構とを有するレンズ装置であって、
該連結機構は弾性部材を有し、
該弾性部材は、該レンズ内枠の駆動方向と垂直な方向に弾性力を有する、ことを特徴とするレンズ装置。
【請求項2】
前記連結機構は、前記弾性部材の弾性変形範囲を規制する変形規制部を有する、ことを特徴とする請求項1に記載のレンズ装置。
【請求項3】
前記レンズ駆動装置は、前記連結機構と連結する連結溝を有し、
前記連結機構は、該連結溝において回動可能に嵌合する突起部を有する連結部を有する、ことを特徴とする請求項1又は2に記載のレンズ装置。
【請求項4】
前記弾性部材は、リング型の板ばねである、ことを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載のレンズ装置。
【請求項5】
前記リング型の板ばねの平面が前記レンズ内枠の駆動方向と平行になるように、前記リング型の板ばねが設置されていることを特徴とする請求項4に記載のレンズ装置。
【請求項6】
前記リング型の板ばねは、該リング型の板ばねの一の直径方向における2点において前記連結機構のレンズ内枠側に固定され、該リング型の板ばねの該一の直径方向と直交する他の直径方向における2点において前記連結機構のレンズ駆動装置側に固定される、ことを特徴とする請求項4又は5に記載のレンズ装置。
【請求項7】
前記弾性部材は、コの字型の板ばねである、ことを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載のレンズ装置。
【請求項8】
前記コの字型の板ばねの平面が前記レンズ内枠の駆動方向と平行になるように、前記コの字型の板ばねが設置されていることを特徴とする請求項7に記載のレンズ装置。
【請求項9】
前記レンズ駆動装置は送りねじを有し、前記連結機構により該送りねじと前記レンズ内枠とが連結されている、ことを特徴とする請求項1乃至8の何れか1項に記載のレンズ装置。
【請求項10】
請求項1乃至9の何れか1項に記載のレンズ装置を有する、ことを特徴とする撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−54285(P2013−54285A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−193910(P2011−193910)
【出願日】平成23年9月6日(2011.9.6)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】