説明

レンズ調芯装置およびレンズ調芯装置の制御方法

【課題】レンズの調芯時間の短縮が可能で、かつ、構成の簡素化およびチャートのセッティング作業の簡素化が可能なレンズ調芯装置を提供すること。
【解決手段】調整用レンズ3を調整してレンズ2の調芯を行うレンズ調芯装置1は、光源4と、レンズ2と光源4との間に配置され、レンズ2のMTFを求めるための所定のパターンが形成されるチャート5と、レンズ2の光軸Lに直交する方向において互いに異なる3箇所以上に配置され、メリジオナル方向におけるレンズ2のMTFであるM方向MTFを求めるためのコントラストを検出する第1のセンサ6と、レンズ2の光軸Lに直交する方向において互いに異なる3箇所以上に配置され、サジタル方向におけるレンズのMTFであるS方向MTFを求めるためのコントラストを検出する第2のセンサと、レンズ2の光軸方向におけるレンズ2とチャート5との距離を変化させる光軸方向駆動機構8とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数枚からなるレンズの調芯を行うためのレンズ調芯装置およびレンズ調芯装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、調整用のレンズを調整してこの調整用のレンズを含む複数枚のレンズの調芯を行うレンズ調芯装置が知られている(たとえば、特許文献1参照)。この特許文献1に記載のレンズ調芯装置は、レンズのサジタル方向のコントラスト値を評価するための第1のパターンとレンズのメリジオナル方向のコントラスト値を評価するための第2のパターンとが形成されるチャートと、レンズの光軸を中心にしてチャートを回転させる回転機構と、レンズによって形成されるチャートの像を撮像する撮像素子と、撮像素子から出力される第1、第2のパターンに応じた信号に基づいてレンズのサジタル方向のコントラスト値とメリジオナル方向のコントラスト値とを算出し、これらの2つのコントラスト値の差を求める演算手段とを備えている。
【0003】
特許文献1に記載のレンズ調芯装置では、回転機構によって所定の角度ピッチでチャートを回転させながら、チャートの回転角度に応じたサジタル方向のコントラスト値とメリジオナル方向のコントラスト値との差を演算手段で算出し、この差が最大となるチャートの回転角度に基づいて調整用のレンズの調整方向を決定している。また、このレンズ調芯装置では、コントラスト値の差に基づいて調整用のレンズの調整量を決定している。
【0004】
なお、特許文献1に記載のレンズ調芯装置では、チャートに形成される第1のパターンおよび第2のパターンは、光を透過する部分と光を透過しない部分とが所定のピッチで配置される縞模様であり、演算手段では、光を透過する部分と光を透過しない部分との配置ピッチに応じた空間周波数におけるサジタル方向のコントラスト値とメリジオナル方向のコントラスト値が算出されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4112165号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載のレンズ調芯装置では、チャートを所定の角度ピッチで回転させながら、チャートの回転角度に応じたサジタル方向のコントラスト値とメリジオナル方向のコントラスト値との差を算出し、この差に基づいて調整用のレンズの調整方向および調整量を決定している。そのため、調整用のレンズの調整方向および調整量の決定に時間がかかり、その結果、レンズの調芯に時間がかかる。
【0007】
また、特許文献1に記載のレンズ調芯装置では、チャートに形成される光を透過する部分と光を透過しない部分との配置ピッチに応じた空間周波数におけるサジタル方向のコントラスト値やメリジオナル方向のコントラスト値しか求めることができない。そのため、このレンズ調芯装置では、調芯されるレンズに要求される特性に応じて、パターンの異なるチャートを複数、用意する必要があり、装置の構成が複雑になる。また、このレンズ調芯装置では、調芯されるレンズに要求される特性に応じて、パターンの異なるチャートをセットする必要があり、チャートのセッティング作業が煩雑になる。
【0008】
そこで、本発明の課題は、レンズの調芯時間の短縮が可能で、かつ、構成の簡素化およびチャートのセッティング作業の簡素化が可能なレンズ調芯装置を提供することにある。また、本発明の課題は、レンズの調芯時間の短縮が可能になるレンズ調芯装置の制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するため、本発明は、複数枚からなるレンズのうちの調整用レンズを調整してレンズの調芯を行うレンズ調芯装置において、レンズに向かって光を射出する光源と、レンズと光源との間に配置されるとともに、レンズのMTFを求めるための所定のパターンが形成されるチャートと、レンズの光軸に直交する方向において互いに異なる3箇所以上に配置され、メリジオナル方向におけるレンズのMTFであるM方向MTFを求めるためのコントラストを検出する第1のセンサと、レンズの光軸に直交する方向において互いに異なる3箇所以上に配置され、サジタル方向におけるレンズのMTFであるS方向MTFを求めるためのコントラストを検出する第2のセンサと、レンズの光軸方向におけるレンズとチャートとの距離、または、第1のセンサおよび第2のセンサとレンズとの距離を変化させる光軸方向駆動機構とを備えることを特徴とする。
【0010】
本発明のレンズ調芯装置は、レンズのMTFを求めるための所定のパターンが形成されるチャートと、M方向MTFを求めるためのコントラストを検出する第1のセンサと、S方向MTFを求めるためのコントラストを検出する第2のセンサと、レンズの光軸方向におけるレンズとチャートとの距離、または、第1のセンサおよび第2のセンサとレンズとの距離を変化させる光軸方向駆動機構とを備え、第1のセンサおよび第2のセンサは、レンズの光軸に直交する方向において互いに異なる3箇所以上に配置されている。
【0011】
そのため、本発明では、レンズ調芯装置がレンズ調芯装置を制御する制御部を備えている場合には、制御部は、光軸方向駆動機構によって、光軸方向におけるレンズとチャートとの距離、または、第1のセンサおよび第2のセンサとレンズとの距離を変化させながら、第1のセンサのそれぞれで検出されるコントラストに基づいてM方向MTFを算出するとともに、第2センサのそれぞれで検出されるコントラストに基づいてS方向MTFを算出し、M方向MTFのそれぞれに基づいて特定の空間周波数におけるレンズのデフォーカス特性であるM方向デフォーカス特性を算出するとともに、S方向MTFのそれぞれに基づいて特定の空間周波数におけるレンズのデフォーカス特性であるS方向デフォーカス特性を算出し、M方向デフォーカス特性のそれぞれに基づいて光軸または光軸に直交する平面に対するメリジオナル像面の傾きを算出するとともに、S方向デフォーカス特性のそれぞれに基づいて光軸または光軸に直交する平面に対するサジタル像面の傾きを算出し、メリジオナル像面の傾きとサジタル像面の傾きとに基づいて調整用レンズの調整量を算出することが可能になる。
【0012】
したがって、本発明では、チャートを所定の角度ピッチで回転させながら、調整用レンズの調整量を算出する必要がなくなり、特許文献1に記載のレンズ調芯装置と比較して、レンズの調芯時間を短縮することが可能になる。また、本発明では、レンズのMTFを求めるための所定のパターンがチャートに形成されているため、共通のチャートを用いて、様々な空間周波数におけるM方向デフォーカス値およびS方向デフォーカス値を算出することが可能になる。したがって、調芯されるレンズに要求される特性に応じて、パターンの異なるチャートを用意したり、パターンの異なるチャートをセットする必要がなくなる。その結果、本発明では、レンズ調芯装置の構成を簡素化することが可能になるとともに、チャートのセッティング作業の簡素化が可能になる。
【0013】
本発明において、たとえば、第1のセンサは、光軸を中心にして略90°ピッチで4箇所に配置され、第2のセンサは、光軸を中心にして略90°ピッチで4箇所に配置され、第1のセンサと第2のセンサとは、光軸を中心にして略45°ずれるように、光軸に直交する略同一平面上に配置されている。このように構成すると、レンズの調芯を行う際に調整用レンズを移動させるレンズ移動機構が、たとえば、光軸方向に直交するとともに互いに直交する2方向へ調整用レンズを移動させるように構成されている場合には、調整用レンズの移動量を比較的容易に算出することが可能になる。
【0014】
本発明において、チャートには、M方向MTFを求めるための3個以上の第1の光の透過部と、S方向MTFを求めるための3個以上の第2の光の透過部とが形成され、所定のパターンは、第1の光の透過部の縁によって形成される第1のエッジパターンと、第2の光の透過部の縁によって形成される第2のエッジパターンとであることが好ましい。このように構成すると、チャートに形成される所定のパターンがスリット等である場合と比較して、第1のセンサ上や第2のセンサ上に形成されるチャートのパターンの像の焦点がぼやけていても、第1のセンサや第2のセンサでコントラストを適切に検出することが可能になる。
【0015】
また、上記の課題を解決するため、本発明のレンズ調芯装置の制御方法は、複数枚からなるレンズのMTFを求めるための所定のパターンが形成されるチャートと、レンズの光軸に直交する方向において互いに異なる3箇所以上に配置され、メリジオナル方向におけるレンズのMTFであるM方向MTFを求めるためのコントラストを検出する第1のセンサと、レンズの光軸に直交する方向において互いに異なる3箇所以上に配置され、サジタル方向におけるレンズのMTFであるS方向MTFを求めるためのコントラストを検出する第2のセンサとを備え、レンズのうちの調整用レンズを調整してレンズの調芯を行うレンズ調芯装置の制御方法であって、レンズの光軸方向におけるレンズとチャートとの距離、または、第1のセンサおよび第2のセンサとレンズとの距離を変化させながら、第1のセンサのそれぞれで検出されるコントラストに基づいてM方向MTFを算出するとともに、第2のセンサのそれぞれで検出されるコントラストに基づいてS方向MTFを算出するMTF算出ステップと、MTF算出ステップで算出されたM方向MTFのそれぞれに基づいて特定の空間周波数におけるレンズのデフォーカス特性であるM方向デフォーカス特性を算出するとともに、MTF算出ステップで算出されたS方向MTFのそれぞれに基づいて特定の空間周波数におけるレンズのデフォーカス特性であるS方向デフォーカス特性を算出するデフォーカス特性算出ステップと、デフォーカス特性算出ステップで算出されたM方向デフォーカス特性のそれぞれに基づいて光軸または光軸に直交する平面に対するメリジオナル像面の傾きを算出するとともに、デフォーカス特性算出ステップで算出されたS方向デフォーカス特性のそれぞれに基づいて光軸または光軸に直交する平面に対するサジタル像面の傾きを算出する像面傾き算出ステップと、像面傾き算出ステップで算出されたメリジオナル像面の傾きとサジタル像面の傾きとに基づいて調整用レンズの調整量を算出するレンズ調整量算出ステップとを備えることを特徴とする。
【0016】
本発明のレンズ調芯装置の制御方法では、MTF算出ステップでM方向MTFおよびS方向MTFを算出し、デフォーカス特性算出ステップでM方向デフォーカス特性およびS方向デフォーカス特性を算出し、像面傾き算出ステップでレンズの光軸または光軸に直交する平面に対するメリジオナル像面の傾きおよびサジタル像面の傾きを算出し、レンズ調整量算出ステップでメリジオナル像面の傾きとサジタル像面の傾きとに基づいて調整用レンズの調整量を算出している。そのため、本発明では、チャートを所定の角度ピッチで回転させながら、調整用レンズの調整量を算出する必要がなくなり、レンズの調芯時間を短縮することが可能になる。
【0017】
本発明において、像面傾き算出ステップでは、たとえば、M方向デフォーカス特性のそれぞれのピーク値のずれに基づいてメリジオナル像面の傾きを算出し、S方向デフォーカス特性のそれぞれのピーク値のずれに基づいてサジタル像面の傾きを算出する。
【0018】
本発明において、レンズ調芯装置の制御方法は、レンズ調整量算出ステップで算出された調整用レンズの調整量に基づいて調整用レンズを移動させるレンズ調整ステップを備え、たとえば、レンズ調整量算出ステップでは、光軸に直交する方向における調整用レンズの調整量を算出し、レンズ調整ステップでは、光軸に直交する方向に調整用レンズを移動させる。
【0019】
この場合には、第1のセンサは、光軸を中心にして略90°ピッチで4箇所に配置され、第2のセンサは、光軸を中心にして略90°ピッチで4箇所に配置され、第1のセンサと第2のセンサとは、光軸を中心にして略45°ずれるように、光軸に直交する略同一平面上に配置されていることが好ましい。このように構成すると、レンズ調整量算出ステップで、調整用レンズの移動量を比較的容易に算出することが可能になる。
【0020】
本発明において、レンズ調芯装置の制御方法は、レンズ調整量算出ステップで算出された調整用レンズの調整量に基づいて調整用レンズを移動させるレンズ調整ステップを備え、レンズ調整量算出ステップでは、光軸に対するメリジオナル像面の傾きの絶対値と光軸に対するサジタル像面の傾きの絶対値とが略等しくなるような調整用レンズの調整量を算出し、レンズ調整ステップでは、光軸に対するメリジオナル像面の傾きの絶対値と光軸に対するサジタル像面の傾きの絶対値とが略等しくなるように調整用レンズを移動させることが好ましい。このように構成すると、レンズ調整ステップにおいて、光軸に対するメリジオナル像面の傾きとサジタル像面の傾きとのバランスを考慮した適切なレンズの調芯が可能になる。
【発明の効果】
【0021】
以上のように、本発明のレンズ調芯装置では、レンズの調芯時間の短縮が可能になるとともに、構成の簡素化およびチャートのセッティング作業の簡素化が可能になる。また、本発明のレンズ調芯装置の制御方法によれば、レンズの調芯時間の短縮が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施の形態にかかるレンズ調芯装置の概略構成を示す概略図である。
【図2】図1に示す第1のセンサおよび第2のセンサの配置関係を光軸方向から説明するための図である。
【図3】図1に示すチャートを光軸方向から示す図である。
【図4】図3のE部の拡大図である。
【図5】図1に示すレンズ調芯装置の制御方法の一例を説明するためのフローチャートである。
【図6】図5に示すMTF算出ステップでのMTFの算出方法を説明するための概念図である。
【図7】図5に示すMTF算出ステップでのMTFの算出方法およびデフォーカス特性算出ステップでのデフォーカス特性の算出方法を説明するための概念図である。
【図8】図5に示す像面傾き算出ステップでのメリジオナル像面の傾きおよびサジタル像面の傾きの算出方法を説明するための概念図である。
【図9】図5に示すレンズ調整量算出ステップでのレンズ調整量の算出方法を説明するための概念図である。
【図10】本発明の他の実施の形態にかかる第1のセンサ、第2のセンサおよび第3のセンサの配置関係を光軸方向から説明するための図である。
【図11】本発明の他の実施の形態にかかるチャートを光軸方向から示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0024】
(レンズ調芯装置の構成)
図1は、本発明の実施の形態にかかるレンズ調芯装置1の概略構成を示す概略図である。図2は、図1に示す第1のセンサ6および第2のセンサ7の配置関係を光軸方向から説明するための図である。図3は、図1に示すチャート5を光軸方向から示す図である。図4は、図3のE部の拡大図である。
【0025】
本形態のレンズ調芯装置1は、図1に示すように、複数枚からなるレンズ(レンズ群)2のうちの調整用レンズ3を調整して、レンズ2の調芯を行うための装置である。このレンズ調芯装置1は、図1、図2に示すように、レンズ2に向かって光を射出する光源4と、レンズ2のMTFを求めるための所定のパターンが形成されるチャート5と、メリジオナル方向におけるレンズ2のMTFであるM方向MTFを求めるためのコントラストを検出する第1のセンサ6(以下、「第1センサ6」とする。)と、サジタル方向におけるレンズ2のMTFであるS方向MTFを求めるためのコントラストを検出する第2のセンサ7(以下、「第2センサ7」とする。)とを備えている。また、レンズ調芯装置1は、チャート5をレンズ2の光軸Lの方向(光軸方向)へ駆動するチャート駆動機構8と、レンズ2の調芯を行う際に調整用レンズ3を移動させるレンズ移動機構9と、レンズ調芯装置1の各種の制御を行う制御部10とを備えている。なお、以下の説明では、光軸Lに直交するとともに互いに直交する2方向をX方向およびY方向とする。
【0026】
レンズ2は、たとえば、1枚の調整用レンズ3と、3枚の固定レンズ12〜14とによって構成されている。固定レンズ12〜14は、レンズバレル(レンズ保持部材)15に固定されている。レンズバレル15は、レンズ調芯装置1を構成するバレル固定部材(図示省略)に固定されている。調整用レンズ3は、レンズ保持部材16に固定されている。レンズ保持部材16は、レンズ移動機構9に取り付けられている。なお、レンズ2が有する調整用レンズ3の枚数は、2枚以上であっても良い。また、本形態では、調整用レンズ3は、図1における固定レンズ12〜14の右側に配置されているが、調整用レンズ3は、図1における固定レンズ12〜14の左側に配置されても良い。
【0027】
第1センサ6および第2センサ7は、一次元イメージセンサ(ラインセンサ)である。たとえば、第1センサ6および第2センサ7は、直線状に配置される複数のCCD等によって構成されるリニアCCDセンサであり、光軸方向から見たときの形状が細長い長方形状となるように形成されている。図2に示すように、本形態のレンズ調芯装置1は、4個の第1センサ6と4個の第2センサ7とを備えており、4個の第1センサ6および第2センサ7は、レンズ2に対して光源4およびチャート5の反対側に配置されている。なお、第1センサ6および第2センサ7は、二次元イメージセンサ(エリアセンサ)であっても良い。ただし、ラインセンサは、エリアセンサよりもフレームレートが高く、高速での走査が可能になるため、第1センサ6および第2センサ7は、ラインセンサであることが好ましい。
【0028】
第1センサ6は、その長手方向(CCDの配列方向)とレンズ2のメリジオナル方向とが略一致するように配置されている。本形態では、4個の第1センサ6のうちの2個の第1センサ6は、その長手方向とX方向とが略平行になるように配置され、残りの2個の第1センサ6は、その長手方向とY方向とが略平行になるように配置されている。すなわち、第1センサ6は、光軸Lを中心にして略90°ピッチで4箇所に配置されている。
【0029】
第2センサ7は、その長手方向(CCDの配列方向)とレンズ2のサジタル方向とが略一致するように配置されている。本形態では、4個の第2センサ7は、その長手方向がX方向およびY方向に対して略45°傾くように配置されている。具体的には、第2センサ7は、光軸Lを中心にして略90°ピッチで4箇所に配置されており、第1センサ6と第2センサ7とは、光軸Lを中心にして略45°ずれている。また、第1センサ6と第2センサ7とは、光軸Lに直交する略同一平面上に配置されている。
【0030】
チャート5は、光軸方向において、レンズ2と光源4との間に配置されている。また、光軸方向における光源4とチャート5との間には、ライトパイプ18と拡散板19とが光源4からチャート5に向かってこの順番で配置されている。
【0031】
チャート5は、図3に示すように、光軸方向から見たときの形状が円形状となる円板状に形成されている。このチャート5には、M方向MTFを求めるための4個の第1の光の透過部5a(以下、「第1光透過部5a」とする。)と、S方向MTFを求めるための4個の第2の光の透過部5b(以下、「第2光透過部5b」とする。)とが形成されている。本形態のチャート5は、たとえば、石英ガラスで形成されており、第1光透過部5aおよび第2光透過部5bを除くチャート5の表面(図3の斜線部)に光の透過を防ぐマスクが施されることで、第1光透過部5aと第2光透過部5bとが形成されている。
【0032】
第1光透過部5aの縁は、図4に示すように、光軸Lを中心とする円弧状に形成される大径円弧部5cと、光軸Lを中心として大径円弧5cと同心状に形成され、かつ、大径円弧5cよりも半径の小さな円弧状に形成される小径円弧部5dと、チャート5の径方向に沿って大径円弧部5cと小径円弧部5dとの間に形成される2個の径方向直線部5eとから構成されている。
【0033】
4個の第1光透過部5aは、光軸Lを中心にして略90°ピッチで配置されている。具体的には、図3に示すように、光軸Lに対して点対称に配置される2個の第1光透過部5aの円周方向の中心を結ぶ線がX方向あるいはY方向と平行になるように、4個の第1光透過部5aが配置されている。すなわち、4個の第1光透過部5aは、4箇所に配置される第1センサ6の配置位置に対応するように形成されている。そのため、光源4から射出され、第1光透過部5aを通過した光は、レンズ2を透過して第1センサ6に入射する。具体的には、光源4から射出され、第1光透過部5aの径方向内側部分を通過した光が、レンズ2を透過して第1センサ6に入射する。
【0034】
したがって、本形態の第1センサ6では、小径円弧部5dに対応する位置を境界にしてコントラストが検出される。すなわち、本形態では、第1光透過部5aの小径円弧部5dによって、M方向MTFを求めるための第1のエッジパターンが形成されている。
【0035】
第2光透過部5bの縁は、図4に示すように、光軸Lを中心とする円弧状に形成される大径円弧部5fと、光軸Lを中心として大径円弧部5fと同心状に形成され、かつ、大径円弧部5fよりも半径の小さな円弧状に形成される小径円弧部5gと、チャート5の径方向に沿って大径円弧部5fと小径円弧部5gとの間に形成される2個の径方向直線部5hとから構成されている。また、大径円弧部5fの半径は、大径円弧部5cの半径よりも大きく、小径円弧部5gの半径は、小径円弧部5dの半径よりも小さくなっている。
【0036】
4個の第2光透過部5bは、光軸Lを中心にして略90°ピッチで配置されている。具体的には、第2光透過部5bの時計方向側の径方向直線部5hがX方向およびY方向に対して略45°傾くように、4個の第2光透過部5bが配置されている。すなわち、4個の第2光透過部5bは、4箇所に配置される第2センサ7の配置位置に対応するように形成されている。そのため、光源4から射出され、第2光透過部5bを通過した光は、レンズ2を透過して第2センサ7に入射する。具体的には、光源4から射出され、第2光透過部5bの時計方向側部分を通過した光が、レンズ2を透過して第2センサ7に入射する。
【0037】
したがって、本形態の第2センサ7では、時計方向側の径方向直線部5hに対応する位置を境界にしてコントラストが検出される。すなわち、本形態では、第2光透過部5bの時計方向側の径方向直線部5hによって、S方向MTFを求めるための第2のエッジパターンが形成されている。
【0038】
チャート駆動機構8は、チャート5を光軸方向へ移動させるためのモータ等の駆動源やボールネジ等の送り機構を備えている。本形態のチャート駆動機構8は、光軸方向におけるレンズ2とチャート5との距離を変化させる光軸方向駆動機構である。
【0039】
レンズ移動機構9は、レンズ保持部材16をX方向およびY方向へ移動させるためのモータ等の駆動源やボールネジ等の送り機構を備えている。すなわち、本形態のレンズ調芯装置1では、レンズ移動機構9によってX方向およびY方向に調整用レンズ3を移動させることで、レンズ2の調芯が行われる。
【0040】
制御部10には、第1センサ6および第2センサ7が接続されている。また、制御部10には、チャート駆動機構8およびレンズ移動機構9も接続されている。制御部10は、以下に説明するように、M方向MTFおよびS方向MTFを算出するとともに、M方向MTFの特定の空間周波数におけるデフォーカス(スルーフォーカス)特性であるM方向デフォーカス特性とS方向MTFの特定の空間周波数におけるデフォーカス特性であるS方向デフォーカス特性とを算出する。また、制御部10は、M方向デフォーカス特性に基づいて光軸Lまたは光軸Lに直交する平面に対するメリジオナル像面の傾きを算出するとともに、S方向デフォーカス特性に基づいて光軸Lまたは光軸Lに直交する平面に対するサジタル像面の傾きを算出する。さらに、制御部10は、メリジオナル像面の傾きとサジタル像面の傾きとに基づいて調整用レンズ3の調整量を算出する。
【0041】
なお、本形態のレンズ調芯装置1では、逆投影法を用いてMTFを求めている。すなわち、レンズ調芯装置1では、調整後のレンズ2が搭載されるカメラ等における撮像素子の撮像面にチャート5が配置され、調整後のレンズ2が搭載されるカメラ等における被写体面に第1センサ6および第2センサ7が配置されている。そのため、レンズ調芯装置1では、第1センサ6および第2センサ7の配置スペースを大きくすることができ、第1センサ6および第2センサ7として、汎用性品のセンサを使用することが可能になる。また、レンズ調芯装置1では、第1センサ6および第2センサ7として、比較的分解能の低いセンサを使用することが可能になる。
【0042】
(レンズ調芯装置の制御方法)
図5は、図1に示すレンズ調芯装置1の制御方法の一例を説明するためのフローチャートである。図6は、図5に示すMTF算出ステップS1でのMTFの算出方法を説明するための概念図である。図7は、図5に示すMTF算出ステップS1でのMTFの算出方法およびデフォーカス特性算出ステップS3でのデフォーカス特性の算出方法を説明するための概念図である。図8は、図5に示す像面傾き算出ステップS4でのメリジオナル像面の傾きおよびサジタル像面の傾きの算出方法を説明するための概念図である。図9は、図5に示すレンズ調整量算出ステップS6でのレンズ調整量の算出方法を説明するための概念図である。
【0043】
以上のように構成されたレンズ調芯装置1では、たとえば、図5に示すフローにしたがって制御が行われ、レンズ2の調芯が行われる。すなわち、まず、調整用レンズ3が固定されたレンズ保持部材16をレンズ移動機構9に取り付ける等の所定の初期設定が行われた後、制御部10は、チャート駆動機構8によって、チャート5を光軸方向へ走査させて光軸方向におけるレンズ2とチャート5との距離を変化させながら、4個の第1センサ6のそれぞれで検出されるコントラストに基づいて4個のM方向MTFを算出するとともに、4個の第2センサ7のそれぞれで検出されるコントラストに基づいて4個のS方向MTFを算出する(ステップS1)。具体的には、制御部10は、たとえば、数μmピッチでチャート5を光軸方向へ走査させながら、各走査位置で、4箇所に配置される第1センサ6の配置位置のそれぞれにおけるM方向MTFと、4箇所に配置される第2センサ7の配置位置のそれぞれにおけるS方向MTFとを算出する。
【0044】
このM方向MTFおよびS方向MTFの算出は、チャート5の所定距離の走査が終了するまで行われる。すなわち、ステップS2においてチャート5の走査が終了したと判断されるまで、制御部10は、M方向MTFおよびS方向MTFを算出する。
【0045】
ステップS1では、制御部10には、たとえば、図6(A)に示すような波形の信号が第1センサ6や第2センサ7から入力される。すなわち、チャート5の第1光透過部5aの小径円弧部5dに対応する位置、あるいは、チャート5の第2光透過部5bの時計方向側の径方向直線部5hに対応する位置を境界にして明暗が切り替わる図6(A)のような波形の信号が第1センサ6や第2センサ7から制御部10に入力される。制御部10は、第1センサ6や第2センサ7から入力された信号を微分し(図6(B)参照)、その後、FFT(高速フーリエ変換)による周波数分析を行って、図6(C)に示すようなMTF(M方向MTFおよびS方向MTF)を算出する。
【0046】
また、ステップS1では、上述のように、数μmピッチでチャート5を光軸方向へ走査させながら、各走査位置でM方向MTFとS方向MTFとを算出する。すなわち、図7に示すように、光軸方向におけるチャート5の位置(チャート位置)を変化させながら、各チャート位置でのMTFを算出する。
【0047】
その後、制御部10は、ステップS1で算出されたM方向MTFのそれぞれに基づいて特定の空間周波数fにおけるレンズ2のデフォーカス特性であるM方向デフォーカス特性を算出するとともに、ステップS1で算出されたS方向MTFのそれぞれに基づいて特定の空間周波数fにおけるレンズ2のデフォーカス特性であるS方向デフォーカス特性を算出する(ステップS3)。すなわち、制御部10は、図7に示すように、特定の空間周波数fにおけるチャート位置とコントラストとの関係を示すデフォーカス特性(M方向デフォーカス特性およびS方向デフォーカス特性)を算出する。
【0048】
具体的には、制御部10は、ステップS1において各チャート位置のそれぞれで算出された4個のM方向MTFのそれぞれに基づいて特定の空間周波数fにおける4個のM方向デフォーカス特性を算出するとともに、ステップS1において各チャート位置のそれぞれで算出された4個のS方向MTFのそれぞれに基づいて4個のS方向デフォーカス特性を算出する。すなわち、4箇所に配置される第1センサ6の配置位置のそれぞれにおけるM方向デフォーカス特性と、4箇所に配置される第2センサ7の配置位置のそれぞれにおけるS方向デフォーカス特性とを算出する。
【0049】
なお、特定の空間周波数fは、レンズ2の仕様に基づいて制御部10で任意に設定することが可能となっている。たとえば、レンズ2に高い解像度が要求される場合には、比較的高い空間周波数fが設定され、レンズ2に高い解像度が要求されない場合には、比較的低い空間周波数fが設定される。
【0050】
その後、制御部10は、ステップS3で算出された4個のM方向デフォーカス特性のそれぞれに基づいて光軸Lまたは光軸Lに直交する平面に対するメリジオナル像面(M像面)の傾きを算出するとともに、ステップS3で算出された4個のS方向デフォーカス特性のそれぞれに基づいて光軸Lまたは光軸Lに直交する平面に対するサジタル像面(S像面)の傾きを算出する(ステップS4)。
【0051】
すなわち、制御部10は、4箇所に配置される第1センサ6の配置位置のそれぞれにおけるM方向デフォーカス特性からM像面の傾きを算出し、4箇所に配置される第2センサ7の配置位置のそれぞれにおけるS方向デフォーカス特性からS像面の傾きを算出する。具体的には、制御部10は、図8に示すように、それぞれのデフォーカス特性のピーク位置(すなわち、最も焦点が合う位置)のずれΔZに基づいて、M像面の傾きおよびS像面の傾きを算出する。すなわち、制御部10は、4個のM方向デフォーカス特性のピーク位置のずれΔZに基づいてM像面の傾きを算出し、4個のS方向デフォーカス特性のピーク位置のずれΔZに基づいてS像面の傾きを算出する。
【0052】
その後、制御部10は、ステップS4で算出されたM像面の傾きおよびS像面の傾きが所定の規格を満足しているか否かを判断する(ステップS5)。たとえば、制御部10は、M像面の傾きおよびS像面の傾きが所定の規格値以下であるか否か、あるいは、M像面の傾きとS像面の傾きとの差が所定の規格値以下であるか否かを判断する。
【0053】
ステップS4で算出されたM像面の傾きおよびS像面の傾きが所定の規格を満足している場合には、所定のチャート位置(規格位置)におけるMTFを算出し、算出されたMTFが所定の規格を満足しているか否かを判断する(ステップS8)。具体的には、所定のチャート位置において、4箇所に配置される第1センサ6の配置位置のそれぞれでのM方向MTFと、4箇所に配置される第2センサ7の配置位置のそれぞれでのS方向MTFとを算出して、これらのMTFが所定の規格を満足しているか否かを判断する。MTFが所定の規格を満足している場合には、接着等によってレンズバレル15に調整用レンズ3が固定されるとともに、レンズ移動機構9からレンズ保持部材16が取り外されて、レンズ2の調芯が終了する。また、MTFが所定の規格を満足していない場合には、このレンズ2は不良品と判断される。そのため、たとえば、レンズバレル15に調整用レンズ3が固定されずに、レンズ移動機構9からレンズ保持部材16が取り外されて、レンズ2の調芯が終了する。
【0054】
一方、ステップS4で算出されたM像面の傾きおよびS像面の傾きが所定の規格を満足していない場合には、制御部10は、ステップS4で算出されたM像面の傾きとS像面の傾きとに基づいて調整用レンズ3の調整量を算出する(ステップS6)。具体的には、制御部10は、M像面の傾きおよびS像面の傾きが所定の規格を満足するように、X方向およびY方向における調整用レンズ3の調整量を算出する。
【0055】
また、ステップS6では、たとえば、制御部10は、図9(A)に示すように、M像面の傾きθ1とS像面の傾きθ2とが略一致するような調整用レンズ3の調整量を算出する。あるいは、制御部10は、図9(B)に示すように、M像面の傾きθ1とS像面の傾きθ2とがバランス良く小さくなるような調整用レンズ3の調整量を算出する。すなわち、制御部10は、図9(C)に示すように、調整後のM像面の傾きθ1とS像面の傾きθ2とが略一致する調整用レンズ3の調整量R1、あるいは、M像面の傾きθ1とS像面の傾きθ2とがバランス良く小さくなる調整用レンズ3の調整量R2を算出する。すなわち、制御部10は、たとえば、M像面の傾きθ1の絶対値とS像面の傾きθ2の絶対値とが略等しくなるような調整用レンズ3の調整量を算出する。
【0056】
その後、制御部10は、ステップS6で算出された調整用レンズ3の調整量に基づいて、レンズ移動機構9を駆動して、調整用レンズ3をX方向および/またはY方向へ移動させる(ステップS7)。ステップS7では、たとえば、M像面の傾きθ1とS像面の傾きθ2とが略一致するように、あるいは、M像面の傾きθ1とS像面の傾きθ2とがバランス良く小さくなるように、調整用レンズ3をX方向および/またはY方向へ移動させる。すなわち、ステップS7では、たとえば、M像面の傾きθ1の絶対値とS像面の傾きθ2の絶対値とが略等しくなるように調整用レンズ3を移動させる。
【0057】
その後、ステップS1へ戻って、制御部10は、再度、M方向MTFおよびS方向MTFと、M方向デフォーカス特性およびS方向デフォーカス特性とを算出するとともに、M像面の傾きおよびS像面の傾きを算出して、算出されたM像面の傾きおよびS像面の傾きが所定の規格を満足しているか否かを判断する。
【0058】
なお、本形態のステップS1は、M方向MTFとS方向MTFとを算出するMTF算出ステップであり、ステップS3は、M方向デフォーカス特性とS方向デフォーカス特性とを算出するデフォーカス特性算出ステップである。また、ステップS4は、メリジオナル像面の傾きとサジタル像面の傾きとを算出する像面傾き算出ステップであり、ステップS6は、調整用レンズ3の調整量を算出するレンズ調整量算出ステップであり、ステップS7は、調整用レンズ3の調整量に基づいて調整用レンズ3を移動させるレンズ調整ステップである。
【0059】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態では、レンズ調芯装置1が、チャート5と4個の第1センサ6と4個の第2センサ7とチャート駆動機構8とを備えるとともに、ステップS1でM方向MTFおよびS方向MTFを算出し、ステップS3でM方向デフォーカス特性およびS方向デフォーカス特性を算出し、ステップS4でM像面の傾きおよびS像面の傾きを算出し、ステップS6でM像面の傾きとS像面の傾きとに基づいて調整用レンズ3の調整量を算出している。そのため、本形態は、チャート5を所定の角度ピッチで回転させながら、調整用レンズ3の調整量を算出する必要がなくなり、特許文献1に記載のレンズ調芯装置と比較して、レンズ2の調芯時間を短縮することが可能になる。
【0060】
本形態では、チャート5にレンズ2のMTFを求めるための所定のパターンが形成されている。そのため、共通のチャート5を用いて、様々な空間周波数におけるM方向デフォーカス値およびS方向デフォーカス値を算出することができる。したがって、調芯されるレンズ2に要求される特性に応じて、パターンの異なるチャート5を用意したり、パターンの異なるチャート5をセットする必要がなくなる。その結果、本形態では、レンズ調芯装置1の構成を簡素化することができ、また、チャート5のセッティング作業を簡素化することができる。
【0061】
特に本形態では、チャート5の第1光透過部5aの小径円弧部5dによって、M方向MTFを求めるための第1のエッジパターンが形成され、チャート5の第2光透過部5bの時計方向側の径方向直線部5hによって、S方向MTFを求めるための第2のエッジパターンが形成されている。そのため、たとえば、チャート5に形成されるスリット等を利用してM方向MTFやS方向MTFを求める場合と比較して、第1センサ6上や第2センサ7上に形成されるチャート5のパターンの像の焦点がぼやけていても、第1センサ6や第2センサ7でコントラストを適切に検出することが可能になる。
【0062】
本形態では、4個の第1センサ6のうちの2個の第1センサ6は、その長手方向とX方向とが略平行になるように配置され、残りの2個の第1センサ6は、その長手方向とY方向とが略平行になるように配置されている。また、4個の第2センサ7は、その長手方向がX方向およびY方向に対して略45°傾くように配置されている。また、レンズ移動機構9は、X方向とY方向とへ調整用レンズ3を移動させるように構成されている。そのため、本形態では、4個の第1センサ6および4個の第2センサ7での検出結果に基づいて、調整用レンズ3の移動量を比較的容易に算出することができる。
【0063】
本形態では、制御部10は、たとえば、ステップS6で、M像面の傾きθ1の絶対値とS像面の傾きθ2の絶対値とが略等しくなるような調整用レンズ3の調整量を算出し、ステップS7で、M像面の傾きθ1の絶対値とS像面の傾きθ2の絶対値とが略等しくなるように調整用レンズ3を移動させている。この場合には、M像面の傾きとS像面の傾きとのバランスを考慮した適切なレンズ2の調芯が可能になる。
【0064】
なお、図9(A)に示すように、M像面の傾きθ1とS像面の傾きθ2とが略一致するように調整用レンズ3が調整される場合には、調芯後のレンズ2が搭載されるカメラ等では、たとえば、M像面の傾きθ1およびS像面の傾きθ2と撮像素子の撮像面の傾きとが略一致するように、カメラ等に撮像素子が搭載される。また、図9(B)に示すように、M像面の傾きθ1とS像面の傾きθ2とがバランス良く小さくなるように調整用レンズ3が調整される場合には、調芯後のレンズ2が搭載されるカメラ等では、たとえば、光軸Lに対して撮像面が直交するように、カメラ等に撮像素子が搭載される。
【0065】
(他の実施の形態)
上述した形態では、レンズ調芯装置1は、4個の第1センサ6と4個の第2センサ7とを備えているが、レンズ調芯装置1が備える第1センサ6および第2センサ7の数は、3個以上であれば良い。すなわち、M像面の傾きおよびS像面の傾きを算出することができるように、レンズ調芯装置1が3個以上の第1センサ6および第2センサ7を備えていれば良い。
【0066】
上述した形態では、光軸Lを中心にして略90°ピッチで4個の第1センサ6が配置されるとともに、光軸Lを中心にして略90°ピッチで第2センサ7が配置されており、レンズ調芯装置1は、光軸L上のレンズ2のデフォーカス特性の算出が可能な構成とはなっていない。この他にもたとえば、レンズ調芯装置1は、光軸L上のレンズ2のデフォーカス特性の算出が可能となるように構成されても良い。すなわち、図10、図11に示すように、光軸L上に第3のセンサ(第3センサ)26が配置され、かつ、第3センサ26に対応するようにチャート5の中心の近傍に第3の光透過部(第3光透過部)5kが形成されても良い。この場合には、第3センサ26は、たとえば、ラインセンサであり、その長手方向とX方向とが略平行になるように配置される。また、第3光透過部5kは、その一辺(エッジ)が光軸Lを通過するとともに、その四辺がX方向またはY方向と略平行になる略矩形状に形成される。
【0067】
また、この場合には、第3センサ26で検出されるコントラストに基づいて算出される光軸L上のデフォーカス特性が最良となる位置で、M像面の傾きとS像面の傾きとが略一致するように調整用レンズ3を調整することが好ましい。このようにすると、調整後のレンズ2が搭載されるカメラ等では、光軸L上のフォーカスが最良になるようにフォーカス調整を行うことで、M像面およびS像面のばらつきを最小にすることができる。
【0068】
上述した形態では、レンズ2のデフォーカス特性を算出するために、チャート5を光軸方向に移動させているが、レンズ2のデフォーカス特性を算出するために、レンズ2を光軸方向へ移動させても良いし、第1センサ6および第2センサ7を光軸方向に移動させても良い。なお、逆投影法を用いてMTFを求める場合には、第1センサ6および第2センサ7を光軸方向に移動させると、第1センサ6および第2センサ7の移動量が大きくなるため、レンズ2またはチャート5を光軸方向に移動させることが好ましい。
【0069】
上述した形態では、レンズ移動機構9は、X方向およびY方向へ調整用レンズ3を移動させるように構成されているが、レンズ移動機構9は、Z方向へ調整用レンズ3を移動させるように構成されても良いし、光軸Lに対して調整用レンズ3を傾けるように構成されても良い。
【符号の説明】
【0070】
1 レンズ調芯装置
2 レンズ
3 調整用レンズ
4 光源
5 チャート
5a 第1光透過部(第1の光の透過部)
5b 第2光透過部(第2の光の透過部)
5d 小径円弧部(第1のエッジパターン)
5h 径方向直線部(第2のエッジパターン)
6 第1センサ(第1のセンサ)
7 第2センサ(第2のセンサ)
8 チャート駆動機構(光軸方向駆動機構)
10 制御部
L 光軸
S1 MTF算出ステップ
S3 デフォーカス特性算出ステップ
S4 像面傾き算出ステップ
S6 レンズ調整量算出ステップ
S7 レンズ調整ステップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数枚からなるレンズのうちの調整用レンズを調整して前記レンズの調芯を行うレンズ調芯装置において、
前記レンズに向かって光を射出する光源と、
前記レンズと前記光源との間に配置されるとともに、前記レンズのMTF(Modulation Transfer Function)を求めるための所定のパターンが形成されるチャートと、
前記レンズの光軸に直交する方向において互いに異なる3箇所以上に配置され、メリジオナル方向における前記レンズのMTFであるM方向MTFを求めるためのコントラストを検出する第1のセンサと、
前記レンズの光軸に直交する方向において互いに異なる3箇所以上に配置され、サジタル方向における前記レンズのMTFであるS方向MTFを求めるためのコントラストを検出する第2のセンサと、
前記レンズの光軸方向における前記レンズと前記チャートとの距離、または、前記第1のセンサおよび前記第2のセンサと前記レンズとの距離を変化させる光軸方向駆動機構とを備えることを特徴とするレンズ調芯装置。
【請求項2】
前記レンズ調芯装置を制御する制御部を備え、
前記制御部は、前記光軸方向駆動機構によって、前記光軸方向における前記レンズと前記チャートとの距離、または、前記第1のセンサおよび前記第2のセンサと前記レンズとの距離を変化させながら、前記第1のセンサのそれぞれで検出されるコントラストに基づいて前記M方向MTFを算出するとともに、前記第2センサのそれぞれで検出されるコントラストに基づいて前記S方向MTFを算出し、前記M方向MTFのそれぞれに基づいて特定の空間周波数における前記レンズのデフォーカス特性であるM方向デフォーカス特性を算出するとともに、前記S方向MTFのそれぞれに基づいて前記特定の空間周波数における前記レンズのデフォーカス特性であるS方向デフォーカス特性を算出し、前記M方向デフォーカス特性のそれぞれに基づいて前記光軸または前記光軸に直交する平面に対するメリジオナル像面の傾きを算出するとともに、前記S方向デフォーカス特性のそれぞれに基づいて前記光軸または前記光軸に直交する平面に対するサジタル像面の傾きを算出し、前記メリジオナル像面の傾きと前記サジタル像面の傾きとに基づいて前記調整用レンズの調整量を算出することを特徴とする請求項1記載のレンズ調芯装置。
【請求項3】
前記第1のセンサは、前記光軸を中心にして略90°ピッチで4箇所に配置され、
前記第2のセンサは、前記光軸を中心にして略90°ピッチで4箇所に配置され、
前記第1のセンサと前記第2のセンサとは、前記光軸を中心にして略45°ずれるように、前記光軸に直交する略同一平面上に配置されていることを特徴とする請求項1または2記載のレンズ調芯装置。
【請求項4】
前記チャートには、前記M方向MTFを求めるための3個以上の第1の光の透過部と、前記S方向MTFを求めるための3個以上の第2の光の透過部とが形成され、
前記所定のパターンは、前記第1の光の透過部の縁によって形成される第1のエッジパターンと、前記第2の光の透過部の縁によって形成される第2のエッジパターンとであることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のレンズ調芯装置。
【請求項5】
複数枚からなるレンズのMTFを求めるための所定のパターンが形成されるチャートと、前記レンズの光軸に直交する方向において互いに異なる3箇所以上に配置され、メリジオナル方向における前記レンズのMTFであるM方向MTFを求めるためのコントラストを検出する第1のセンサと、前記レンズの光軸に直交する方向において互いに異なる3箇所以上に配置され、サジタル方向における前記レンズのMTFであるS方向MTFを求めるためのコントラストを検出する第2のセンサとを備え、前記レンズのうちの調整用レンズを調整して前記レンズの調芯を行うレンズ調芯装置の制御方法であって、
前記レンズの光軸方向における前記レンズと前記チャートとの距離、または、前記第1のセンサおよび前記第2のセンサと前記レンズとの距離を変化させながら、前記第1のセンサのそれぞれで検出されるコントラストに基づいて前記M方向MTFを算出するとともに、前記第2のセンサのそれぞれで検出されるコントラストに基づいて前記S方向MTFを算出するMTF算出ステップと、
前記MTF算出ステップで算出された前記M方向MTFのそれぞれに基づいて特定の空間周波数における前記レンズのデフォーカス特性であるM方向デフォーカス特性を算出するとともに、前記MTF算出ステップで算出された前記S方向MTFのそれぞれに基づいて前記特定の空間周波数における前記レンズのデフォーカス特性であるS方向デフォーカス特性を算出するデフォーカス特性算出ステップと、
前記デフォーカス特性算出ステップで算出された前記M方向デフォーカス特性のそれぞれに基づいて前記光軸または前記光軸に直交する平面に対するメリジオナル像面の傾きを算出するとともに、前記デフォーカス特性算出ステップで算出された前記S方向デフォーカス特性のそれぞれに基づいて前記光軸または前記光軸に直交する平面に対するサジタル像面の傾きを算出する像面傾き算出ステップと、
前記像面傾き算出ステップで算出された前記メリジオナル像面の傾きと前記サジタル像面の傾きとに基づいて前記調整用レンズの調整量を算出するレンズ調整量算出ステップとを備えることを特徴とするレンズ調芯装置の制御方法。
【請求項6】
前記像面傾き算出ステップでは、前記M方向デフォーカス特性のそれぞれのピーク値のずれに基づいて前記メリジオナル像面の傾きを算出し、前記S方向デフォーカス特性のそれぞれのピーク値のずれに基づいて前記サジタル像面の傾きを算出することを特徴とする請求項5記載のレンズ調芯装置の制御方法。
【請求項7】
前記レンズ調整量算出ステップで算出された前記調整用レンズの調整量に基づいて前記調整用レンズを移動させるレンズ調整ステップを備え、
前記レンズ調整量算出ステップでは、前記光軸に直交する方向における前記調整用レンズの調整量を算出し、
前記レンズ調整ステップでは、前記光軸に直交する方向に前記調整用レンズを移動させることを特徴とする請求項5または6記載のレンズ調芯装置の制御方法。
【請求項8】
前記第1のセンサは、前記光軸を中心にして略90°ピッチで4箇所に配置され、
前記第2のセンサは、前記光軸を中心にして略90°ピッチで4箇所に配置され、
前記第1のセンサと前記第2のセンサとは、前記光軸を中心にして略45°ずれるように、前記光軸に直交する略同一平面上に配置されていることを特徴とする請求項7記載のレンズ調芯装置の制御方法。
【請求項9】
前記レンズ調整量算出ステップで算出された前記調整用レンズの調整量に基づいて前記調整用レンズを移動させるレンズ調整ステップを備え、
前記レンズ調整量算出ステップでは、前記光軸に対する前記メリジオナル像面の傾きの絶対値と前記光軸に対する前記サジタル像面の傾きの絶対値とが略等しくなるような前記調整用レンズの調整量を算出し、
前記レンズ調整ステップでは、前記光軸に対する前記メリジオナル像面の傾きの絶対値と前記光軸に対する前記サジタル像面の傾きの絶対値とが略等しくなるように前記調整用レンズを移動させることを特徴とする請求項5から8のいずれかに記載のレンズ調芯装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−230745(P2010−230745A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−75461(P2009−75461)
【出願日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【出願人】(509304667)株式会社SUWAオプトロニクス (17)
【出願人】(000005810)日立マクセル株式会社 (2,366)
【上記1名の代理人】
【識別番号】100125690
【弁理士】
【氏名又は名称】小平 晋
【Fターム(参考)】