説明

レンズ鏡筒およびそれを用いた撮像装置

【課題】レンズ枠が鏡筒内部の構造物と衝突せず、衝突音の発生を抑制したレンズ鏡筒およびそれを用いた撮像装置を提供することを目的とする。
【解決手段】フォーカスレンズ枠204に配置した第1ネジ部410と、カバーユニット112に配置した第2ネジ部420と、第1ネジ部410および第2ネジ部420に嵌り合う第3ネジ部430を配置した第1ギア部440を有しており、第1ギア部440を回転させ、第1ギア部440の第3ネジ部450を第1ネジ部410および第2ネジ部420の両方に嵌め合わせて、フォーカスレンズ枠204とカバーユニット112を固定し、第1ギア部440の第3ネジ部450を第1ネジ部410または第2ネジ部420のいずれか一方に嵌め合わせて、フォーカスレンズ枠204とカバーユニット112の固定を解除する構成である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズ系を光軸方向に駆動させる機構を備えたレンズ鏡筒およびそれを用いた撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、被写体からの光を単数または複数のレンズを通して屈折させ、CCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Compliment Metal Oxide Semiconduct)などの固体撮像素子を用いて撮像し、電気信号に変換して取り出せるようにした撮影装置が広く用いられている。また、DSC(Digital Still Camera)、DVC(Digital Video Camera)などの携帯用撮影機器の小型化、高性能化の要求に伴い、撮影装置の主要部品であるレンズ鏡筒の小型化、軽量化、薄型化が一層求められている。一般的にレンズ鏡筒は、複数のレンズをズーム、フォーカスなどそれぞれの機能単位の一群として、複数のレンズ群から構成されている。
【0003】
近年、レンズ鏡筒においては、ズームレンズ群より後方のフォーカスレンズ群を光軸方向に位置可変することでフォーカス調整を行う方式が多く用いられている。この場合、フォーカスが合う位置がズーム倍率によって移動するという特性から、フォーカスレンズ群がズームレンズ群の位置変化に追随し、光軸方向に移動する。このようにして、撮像素子の結像面上に物体像を形成する構成になっている。
【0004】
ここで、望遠側でのフォーカスが合う面の移動量が大きいという移動軌跡データの特性から、フォーカスレンズ群をズームレンズ群に追随させて動かすには、望遠側付近でフォーカスレンズ群の移動分解能を高める必要がある。
【0005】
そのため、従来のステッピングモータに代わって、高速応答性に優れ高い分解能を持つ磁気駆動型のリニアアクチュエータがフォーカスレンズ群の駆動手段に採用されている。(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−350092号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来のレンズ鏡筒においては、リニアアクチュエータに電流を供給しないとき、すなわち撮像装置の電源を切っている場合などには、フォーカスレンズ群を保持するフォーカスレンズ枠を駆動させることができない。さらに、リニアアクチュエータに電流を供給しないときは、フォーカスレンズ枠の位置は固定されない。そのため、リニアアクチュエータに電流を供給しないときに撮像装置に慣性力や重力がかかった場合、フォーカスレンズ枠がレンズ鏡筒内部の構造物と衝突する。よって、衝突音が発生し、使い勝手が悪いという問題があった。
【0008】
本発明は上記問題を解決するもので、レンズ枠の駆動のための動力を供給しない場合でも、レンズ枠が鏡筒内部の構造物と衝突せず、衝突音の発生を抑制したレンズ鏡筒およびそれを用いた撮像装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のレンズ鏡筒は、レンズ系を保持したレンズ枠と、光軸方向に可動自在な前記レンズ枠を配置したユニットと、前記レンズ枠を電磁力で可動させる可動部と、前記レンズ枠と前記ユニットを固定または解除する固定部を備え、前記固定部は、前記レンズ枠に配置した第1ネジ部と、前記第1ネジ部と同軸上に、前記ユニットに配置した第2ネジ部と、前記第1ネジ部および前記第2ネジ部に嵌り合う第3ネジ部を配置した第1ギア部を有しており、前記第1ギア部を回転させ、前記第1ギア部の第3ネジ部を前記第1ネジ部および前記第2ネジ部の両方に嵌め合わせて、前記レンズ枠と前記ユニットを固定し、前記第1ギア部の第3ネジ部を前記第1ネジ部または前記第2ネジ部のいずれか一方に嵌め合わせて、前記レンズ枠と前記ユニットの固定を解除する構成である。
【0010】
本発明の撮像装置は、レンズ鏡筒を備えた撮像装置であって、前記レンズ鏡筒は、レンズ系を保持したレンズ枠と、光軸方向に可動自在に前記レンズ枠を配置したユニットと、前記レンズ枠を電磁力で可動させる可動部と、前記レンズ枠と前記ユニットを固定または解除する固定部を備え、前記固定部は、前記レンズ枠に配置した第1ネジ部と、前記第1ネジ部と同軸上に、前記ユニットに配置した第2ネジ部と、前記第1ネジ部および前記第2ネジ部に嵌り合う第3ネジ部を配置した第1ギア部を有しており、前記第1ギア部を回転させ、前記第1ギア部の第3ネジ部を前記第1ネジ部および前記第2ネジ部の両方に嵌め合わせて、前記レンズ枠と前記ユニットを固定し、前記第1ギア部の第3ネジ部を前記第1ネジ部または前記第2ネジ部のいずれか一方に嵌め合わせて、前記レンズ枠と前記ユニットの固定を解除する構成である。
【発明の効果】
【0011】
上記構成により、電源をOFF状態等にしてレンズ枠を可動させない場合は、第1ギア部を回転させ、レンズ枠に配置した第1ネジ部およびユニットに配置した第2ネジ部の両方に第1ギア部の第3ネジ部を嵌め合わせて、レンズ枠とユニットを固定すればよい。電源をOFF状態等にすると、レンズ枠とユニットとの間に電磁力が作用せず、ユニットに対してレンズ枠が自由に可動できる状態になるが、レンズ枠とユニットを固定するので、レンズ鏡筒の内部にレンズ枠が接触しない。すなわち、レンズ鏡筒の内部にレンズ枠が接触することに起因した騒音の発生を抑制できる。
【0012】
また、電源をON状態等にしてレンズ枠を可動させる場合は、レンズ枠に配置した第1ネジ部またはユニットに配置した第2ネジ部のいずれか一方に第1ギア部の第3ネジ部を嵌め合わせて、レンズ枠とユニットの固定を解除すればよい。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】一実施の形態におけるレンズ鏡筒の斜視図
【図2】同レンズ鏡筒の分解斜視図
【図3】図1における3−3断面の概略図
【図4】同レンズ鏡筒の要部の分解斜視図
【図5】同レンズ鏡筒の要部の断面斜視図
【図6】同レンズ鏡筒のレンズ枠とユニットを固定した時の要部の拡大斜視図
【図7】同レンズ鏡筒のレンズ枠とユニットの固定を解除した時の要部の拡大斜視図
【図8】他の実施の形態におけるレンズ鏡筒のレンズ枠とユニットを固定した時の要部の拡大斜視図
【図9】他の実施の形態におけるレンズ鏡筒のレンズ枠とユニットを固定した時の要部の拡大斜視図
【発明を実施するための形態】
【0014】
(一実施の形態)
以下、一実施の形態におけるレンズ鏡筒およびそれを用いた撮像装置について図面を参照しながら説明する。
【0015】
<1.レンズ鏡筒100の概要>
図1に示すように、X軸とY軸とZ軸とからなる3次元直交座標系が定義される。以下、それぞれの図面において、適宜このXYZ座標系を基準として説明がなされる。すなわち、それぞれの図面におけるX軸正方向、Y軸正方向、Z軸正方向は、それぞれ同じ方向を示している。
【0016】
図1〜図3に示すように、一実施の形態におけるレンズ鏡筒100は、1群枠102と2群枠104と本体枠106と像振れ補正ユニット108とフォーカスユニット110とカバーユニット112とプリズムユニット114とから構成される。
【0017】
1群枠102は、例えばポリカーボネート樹脂を成形した成形枠内に複数のレンズからなる第1レンズ群101が保持されているものである。被写体からの光は1群枠102に
最初に入射する。
【0018】
2群枠104は、例えばポリカーボネート樹脂を成形した成形枠内に複数のレンズからなる第2レンズ群103が保持されているものである。2群枠104は、レンズ鏡筒100のズーム倍率を変化させる働きを有する。ここで、2群枠104は、光軸A1に沿って本体枠106内を駆動される。具体的には、2群枠104が、1群枠102の方向(X軸負方向)に駆動されたときは、低倍率になる。一方、2群枠104が、像振れ補正ユニット108側(X軸正方向)に駆動されたときは、高倍率になる。
【0019】
本体枠106は、例えばポリカーボネート樹脂を成形した筒状の成形枠から構成される。ここで、本体枠106は、一定の剛性を有していることが必要である。よって、ポリカーボネート樹脂の換わりに、アルミニウムなどの金属材料が使用されてもよい。
【0020】
像振れ補正ユニット108は、例えばポリカーボネート樹脂を成形した成形枠内に複数のレンズからなる像振れ補正レンズ群107が保持されているものである。具体的には、像振れ補正ユニット108は、移動レンズ枠109を有する。また、移動レンズ枠109は、リニアアクチュエータ(図示せず)によって光軸A1と垂直な平面内を駆動される。像振れ補正ユニット108は、レンズ鏡筒100全体の振動によって引き起こされるプリズムユニット114への入射光の振れを補正する働きを有する。
【0021】
図4に示すように、さらに、像振れ補正ユニット108には、フォーカスユニット110を駆動するための駆動用マグネット212や、フォーカスユニット110の位置検出用のMRセンサー(磁気抵抗センサー)214などが配置されている。また、像振れ補正ユニット108のプリズムユニット114側には、ステンレスなどの金属材料から形成された第1のガイドポール207および第2のガイドポール208が光軸A1と平行に配置されている。
【0022】
フォーカスユニット110は、例えばポリカーボネート樹脂を板状に成形したレンズ枠であるフォーカスレンズ枠204を有する。また、フォーカスレンズ枠204を囲むようにコイル206がフォーカスレンズ枠204に組みつけられている。さらに、フォーカスレンズ枠204には、レンズであるフォーカスレンズ群202が保持されている。フォーカスユニット110は、コイル206と駆動用マグネット212との間に働く磁力により、光軸A1に沿ってX軸方向を前後に駆動される。
【0023】
カバーユニット112は、像振れ補正ユニット108とプリズムユニット114との間に配置される。
【0024】
プリズムユニット114は、入射光を赤、青、緑の三原色に分解するプリズム113とプリズム113の出射面に配置された撮像素子115とから構成される。撮像素子115は、CMOSセンサー、CCDセンサーなどから構成される。
【0025】
<2.フォーカスユニット110の構成>
図4および図5に示すように、フォーカスユニット110は、フォーカスレンズ群202を保持するフォーカスレンズ枠204と、フォーカスレンズ枠204の外部を囲むコイル206とからなる。
【0026】
フォーカスレンズ枠204は、フォーカスレンズ群202が嵌め合わされる開口部を有する。また、フォーカスレンズ枠204は、像振れ補正ユニット108に固定されたガイド軸である第1のガイドポール207に嵌め合わされる溝209を有する。またフォーカスレンズ枠204は、像振れ補正ユニット108に固定されたガイド軸である第2のガイドポール208が貫通する貫通部210を有する。溝209と貫通部210とは、フォーカスレンズ枠204の対角に配置される。
【0027】
さらに、第2のガイドポール208は、取付け部であるカバーユニット側取付け部606で、カバーユニット112に取付けられている。また、第2のガイドポール208は、取付け部である像振れ補正ユニット側取付け部608で、像振れ補正ユニット108に取付けられている。
【0028】
また、断面ロの字状の鉄芯に銅線を巻きつけることにより形成されたコイル206が、光軸A1と垂直になるように、フォーカスレンズ枠204に組み付けられ、固定されている。詳しくは、コイル206の内部にフォーカスレンズ群202が収まっている。一方、溝209および貫通部210は、コイル206の外部に突出している。
【0029】
このように、コイル206と第1のガイドポール207と第2のガイドポール208および駆動用マグネット212とによってリニアアクチュエータ300が構成される。
【0030】
また、貫通部210の上面(Z軸正方向側)には、接触部502が配置されている。接触部502は、フォーカスユニット110が駆動されたときに、後述するカバーユニット側規制部602および像振れ補正ユニット側規制部604と最初に接触する部分である。
【0031】
さらに、光軸A1方向に1群枠102側からN−S−N−Sと着磁された直方体のセンサーマグネット216が貫通部210の外側面(Y軸方向負側)に固定されている。なお、センサーマグネット216の着磁順序は、1群枠102側からS−N−S−Nとすることも可能である。
【0032】
像振れ補正ユニット108に固定されたMRセンサー214は、センサーマグネット216の位置変化に応じた電気信号を出力する。つまり、MRセンサー214は、フォーカスユニット110のX軸方向の位置情報の値を電気信号として出力する。
【0033】
<3.フォーカスユニット110の動作>
図4に示すようにフォーカスユニット110は、駆動手段としてのリニアアクチュエータ300によって駆動される。具体的には、フォーカスレンズ枠204に固定されたコイル206に電流が流れると光軸A1方向に磁場が発生する。すると、コイル206と駆動用マグネット212との間に引力または斥力が発生する。したがって、フォーカスレンズ枠を有するフォーカスユニット110は、第1のガイドポール207と第2のガイドポール208に案内され、光軸A1に沿ってX軸方向を前後に駆動される。
【0034】
図5に示すように、実際には、フォーカスユニット110の駆動範囲は、カバーユニット側規制部602と像振れ補正ユニット側規制部604との間で規制される。すなわち、接触部502が、カバーユニット側規制部602または、像振れ補正ユニット側規制部604と接触することで、フォーカスユニット110の駆動が停止される。
【0035】
また、本実施の形態のように、フォーカスユニット110の駆動手段としてリニアアクチュエータ300が用いられる場合には、フォーカスユニット110の原点を精度よく算出することが重要になる。そのため、電源をON状態等にした投入したときには、まず、フォーカスユニット110は像振れ補正ユニット側規制部604に接触部502が接触するまで駆動される。ここで、MRセンサー214が位置情報の値を出力し、値はメモリ(図示せず)に一時記憶される。次に、フォーカスユニット110は、カバーユニット側規制部602に接触部502が接触するまで駆動される。ここで、MRセンサー214が位置情報の値を出力し、値はメモリ(図示せず)に一時記憶される。次に、メモリ(図示せず)に一時記憶された位置情報の値が演算装置(図示せず)に送られる。次に、演算装置(図示せず)によって、位置情報の値の平均値が算出される。このようにして算出された位置情報の値の平均値がフォーカスユニット110の原点とされる。
【0036】
フォーカスユニット110の原点を算出する上で、接触部502がエラストマー、スポンジなどの弾性部材で形成されていると、フォーカスユニット110の位置検出精度が悪化する。言い換えると、フォーカスユニット110の原点がばらつく原因となる。
【0037】
したがって、接触部502には、カバーユニット側規制部602および像振れ補正ユニット側規制部604と接触したときに弾性変形量が小さい部材が用いられる。
【0038】
さらに、カバーユニット側規制部602および像振れ補正ユニット側規制部604に歪みがあると、同様にフォーカスユニット110の位置検出精度が悪化する。よってカバーユニット側規制部602は、カバーユニット側取付け部606を除く部分、つまり、カバーユニット取付け部606の上部(Z軸正方向)に形成される。さらに、像振れ補正ユニット側規制部604は、像振れ補正ユニット側取付け部608を除く部分、つまり、像振れ補正ユニット取付け部608の上部(Z軸正方向)に形成される。
【0039】
<4.フォーカスユニット110とカバーユニット112の固定および解除>
図2〜図4に示すように、一実施の形態におけるレンズ鏡筒100は、フォーカスレンズ群202を保持するフォーカスレンズ枠204と、光軸A1方向に可動自在にフォーカスレンズ枠204を配置したユニット(カバーユニット112および像振れ補正ユニット108)と、フォーカスユニット110を電磁力で可動させる可動部(リニアアクチュエータ300)を備えている。このフォーカスユニット110のフォーカスレンズ枠204とカバーユニット112は、図6および図7に示すように、固定部400によって、固定されたり解除されたりする。
【0040】
この固定部400は、フォーカスレンズ枠204に配置した第1ネジ部410と、この第1ネジ部410と同軸上に、カバーユニット112に配置した第2ネジ部420と、第1ネジ部410および第2ネジ部420に嵌り合う第3ネジ部430を中心部に配置した第1ギア部440を有する。本実施の形態では、第1ネジ部410は雄ネジ部とし、第2ネジ部420は雄ネジ部とし、第3ネジ部430は雌ネジ部としており、それらの中心軸を同軸上に位置させている。
【0041】
第1ギア部440を回転させ、第1ギア部440の第3ネジ部430を第1ネジ部410および第2ネジ部420の両方に嵌め合わせて、フォーカスレンズ枠204とカバーユニット112を固定し、第1ギア部440の第3ネジ部430を第1ネジ部410または第2ネジ部420のいずれか一方に嵌め合わせて、フォーカスレンズ枠204とカバーユニット112の固定を解除している。
【0042】
なお、第1ギア部440を回転させるためには、例えば、第1ギア部440と噛み合う第2ギア部450が取り付けられたモータ500を、カバーユニット112に配置しておく。モータ500を駆動させて第2ギア部450を回転させれば、この第2ギア部450の回転によって第1ギア部440が回転する。第1ギア部440と第2ギア部450の周面には、互いに噛み合うギア歯が形成されている。
【0043】
このような構成において、電源をON状態とOFF状態にした場合は、次のようになる。
【0044】
電源をON状態にした場合、フォーカスレンズ枠204を可動させる際は、リニアアクチュエータ300によって、第1ギア部440をカバーユニット112側の端に可動させる。
【0045】
これによって、第1ギア部440の第3ネジ部430を第1ネジ部410または第2ネジ部420のいずれか一方に嵌め合わせて、フォーカスレンズ枠204とカバーユニット112の固定を解除できる。すなわち、第1ギア部440によってフォーカスレンズ枠204の動きが制限されることがなく、電磁力によって、所望の位置にフォーカスレンズ枠204を可動させることができる。
【0046】
但し、第1ギア部440をカバーユニット112側の端に位置させる際、フォーカスレンズ枠204が可動しても第2ネジ部420が第1ギア部440に接触しないようにしておく必要がある。これは、第2ネジ部420の先端が第1ギア部440の第3ネジ部430に引っかかり、フォーカスレンズ枠204の動きが阻害されないようにするためである。
【0047】
また、電源をOFF状態にした場合、フォーカスレンズ枠204を駆動させない際は、リニアアクチュエータ300によって、第1ギア部440をカバーユニット112とフォーカスレンズ枠204との間に可動させる。
【0048】
これによって、フォーカスレンズ枠204に配置された第1ネジ部410と、カバーユニット112に配置された第2ネジ部420および第1ギア部440の第3ネジ部430とは、同軸上に位置した状態で近接しているので、第1ギア部440を所定数回転させると、第1ギア部440の第3ネジ部430を第1ネジ部410と第2ネジ部420に嵌り合わせて、フォーカスレンズ枠204とカバーユニット112を固定できる。
【0049】
第1ギア部440は、モータ500を駆動させて第2ギア部450を回転させることによって、所望の位置まで回転させることができる。所望の位置、すなわち、第1ネジ部410と第2ネジ部420とが嵌り合う位置において、モータ500の駆動を停止する。第2ギア部450および第1ギア部440の回転も停止し、第1ギア部440の第3ネジ部が第1ネジ部410および第2ネジ部420と嵌り合った状態となる。すなわち、カバーユニット112とフォースレンズ枠204が固定される。
【0050】
<レンズ鏡筒100を用いた撮像装置>
撮像装置(図示せず)は、上述したレンズ鏡筒100を備えたものである。このレンズ鏡筒100は着脱可能なものでもよいし、着脱不可能なものでもよい。
【0051】
<一実施の形態のまとめ>
上記構成により、電源をOFF状態にしてフォーカスレンズ枠204を可動させない場合は、第1ギア部440を回転させ、フォーカスレンズ枠204に配置した第1ネジ部410およびユニット(カバーユニット112)に配置した第2ネジ部420の両方に第1ギア部440の第3ネジ部430を嵌め合わせて、フォーカスレンズ枠204とユニット(カバーユニット112)を固定すればよい。電源をOFF状態にすると、フォーカスレンズ枠204とユニット(カバーユニト112)との間に電磁力が作用せず、ユニット(カバーユニット112)に対してフォーカスレンズ枠204が自由に可動できる状態になるが、フォーカスレンズ枠204とユニット(カバーユニット112)を固定するので、レンズ鏡筒100の内部にフォーカスレンズ枠204が接触しない。すなわち、フォーカスレンズ枠204の接触に起因した騒音の発生を抑制できる。
【0052】
また、電源をON状態にしてフォーカスレンズ枠204を可動させる場合は、フォーカスレンズ枠204に配置した第1ネジ部410またはユニット(カバーユニット112)に配置した第2ネジ部420のいずれか一方に第1ギア部440の第3ネジ部430を嵌め合わせて、フォーカスレンズ枠204とユニット(カバーユニット112)の固定を解除すればよい。
【0053】
なお、本実施の形態では、第2ネジ部420をカバーユニット112に配置したが、像振れ補正ユニット108に配置してもよい。その場合は、フォーカスレンズ枠204と固定するユニットは、像振れ補正ユニット108となる。
【0054】
また、本実施の形態では、可動するレンズ枠としてフォーカスレンズ枠204について説明したが、像振れ補正レンズ群107を保持する移動レンズ枠109についても同様である。像振れ補正ユニット108は、像振れ補正レンズ群107を保持する移動レンズ枠109が配置されている。この移動レンズ枠109は、リニアアクチュエータ300によって、移動させられるので、本実施の形態を適用できる。
【0055】
また、両端部が取付け部で固定されたガイド軸を備え、フォーカスレンズ枠204はガイド軸に沿って駆動され、規制部(カバーユニット側規制部602または像振れ補正ユニット側規制部604)は取付け部を除く部分に形成されてもよい。このような構成によれば、ガイド軸取り付けのために、歪んだ領域に規制部が形成されていないので、フォーカスレンズ枠204の位置検出精度が向上する。
【0056】
また、第1ギア部440の第3ネジ部430が第1ネジ部410または第2ネジ部420と接触した瞬間に、第1ギア部440の第3ネジ部430とフォーカスレンズ枠204の第1ネジ部410または第2ネジ部420が噛み合う必要はない。第1ギア部440は第2ギア部450によって回転しつつフォーカスレンズ枠204の方へ移動する。しかし、フォーカスレンズ枠204はリニアアクチュエータ300によって駆動されるので、第1ギア部440がフォーカスレンズ枠204を押す形となり、第1ギア部440の回転が噛み合い位置に来たときから、第1ギア部440の第3ネジ部430とフォーカスレンズ枠204の第1ネジ部410または第2ネジ部420との噛み合いがはじまる。
【0057】
(他の実施の形態)
次に、他の実施の形態におけるレンズ鏡筒およびそれを用いた撮像装置について図面を参照しながら説明する。他の実施の形態におけるレンズ鏡筒は、一実施の形態におけるレンズ鏡筒において、第1ネジ部410と第2ネジ部420と第3ネジ部430を改良したものである。
【0058】
例えば、図8に示すように、第1ネジ部410と第2ネジ部420を雌ネジ部とし、第3ネジ部430を雄ネジ部としてもよい。第3ネジ部430を配置した第1ギア部440を回転させると、第1ネジ部410および第2ネジ部420と嵌り合う。
【0059】
さらに、例えば、第1ネジ部410と第2ネジ部420と第3ネジ部430を、互いに嵌め合うことが可能な雄ネジ部と雌ネジ部の組み合わせによって構成してもよい。
【0060】
上記構成により、一実施の形態と同様の効果を得ることができる。すなわち、電源をOFF状態にしてフォーカスレンズ枠204を可動させない場合は、第1ギア部440を回転させ、フォーカスレンズ枠204に配置した第1ネジ部410およびユニット(カバーユニット112)に配置した第2ネジ部420の両方に第1ギア部440の第3ネジ部430を嵌め合わせて、フォーカスレンズ枠204とユニット(カバーユニット112)を固定すればよい。電源をOFF状態にすると、フォーカスレンズ枠204とユニット(カバーユニット112)との間に電磁力が作用せず、ユニット(カバーユニット112)に対してフォーカスレンズ枠204が自由に可動できる状態になるが、フォーカスレンズ枠204とユニット(カバーユニット112)を固定するので、レンズ鏡筒100の内部にフォーカスレンズ枠204が接触しない。すなわち、フォーカスレンズ枠204の接触に起因した騒音の発生を抑制できる。
【0061】
また、電源をON状態にしてフォーカスレンズ枠204を可動させる場合は、フォーカスレンズ枠204に配置した第1ネジ部410またはユニット(カバーユニット112)に配置した第2ネジ部420のいずれか一方に第1ギア部440の第3ネジ部430を嵌め合わせて、フォーカスレンズ枠204とユニット(カバーユニット112)の固定を解除すればよい。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明は、デジタルスチルカメラ、ビデオカメラ等に適用可能である。
【符号の説明】
【0063】
100 レンズ鏡筒
101 第1レンズ群
102 1群枠
103 第2レンズ群
104 2群枠
106 本体枠
107 像振れ補正レンズ群
108 像振れ補正ユニット
109 移動レンズ枠
110 フォーカスユニット
112 カバーユニット
113 プリズム
114 プリズムユニット
115 撮像素子
202 フォーカスレンズ群
204 フォーカスレンズ枠
206 コイル
207 第1のガイドポール
208 第2のガイドポール
209 溝
210 貫通部
212 駆動用マグネット
214 MRセンサー
216 センサーマグネット
300 リニアアクチュエータ
400 固定部
410 第1ネジ部
420 第2ネジ部
430 第3ネジ部
440 第1ギア部
450 第2ギア部
500 モータ
502 接触部
504 接触基部
602 カバーユニット側規制部
604 像振れ補正ユニット側規制部
606 カバーユニット側取付け部
608 像振れ補正ユニット側取付け部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レンズ系を保持したレンズ枠と、
光軸方向に可動自在な前記レンズ枠を配置したユニットと、
前記レンズ枠を電磁力で可動させる可動部と、
前記レンズ枠と前記ユニットを固定または解除する固定部を備え、
前記固定部は、
前記レンズ枠に配置した第1ネジ部と、
前記第1ネジ部と同軸上に、前記ユニットに配置した第2ネジ部と、
前記第1ネジ部および前記第2ネジ部に嵌り合う第3ネジ部を配置した第1ギア部を有しており、
前記第1ギア部を回転させ、
前記第1ギア部の第3ネジ部を前記第1ネジ部および前記第2ネジ部の両方に嵌め合わせて、前記レンズ枠と前記ユニットを固定し、
前記第1ギア部の第3ネジ部を前記第1ネジ部または前記第2ネジ部のいずれか一方に嵌め合わせて、前記レンズ枠と前記ユニットの固定を解除する
レンズ鏡筒。
【請求項2】
前記レンズ枠に配置した第1ネジ部を雄ネジ部とし、前記ユニットに配置した第2ネジ部を雄ネジ部とし、前記第1ギア部に配置した第3ネジ部を雌ネジ部とし、
前記第1ギア部を回転させ、
前記第1ギア部に配置した雌ネジ部を前記レンズ枠に配置した雄ネジ部および前記ユニットに配置した雄ネジ部の両方に嵌め合わせて、前記レンズ枠と前記ユニットを固定し、
前記第1ギア部に配置した雌ネジ部を前記レンズ枠に配置した雄ネジ部または前記ユニットに配置した雄ネジ部のいずれか一方に嵌め合わせて、前記レンズ枠と前記ユニットの固定を解除する
請求項1に記載のレンズ鏡筒。
【請求項3】
前記レンズ枠に配置した第1ネジ部を第1雌ネジ部とし、前記ユニットに配置した第2ネジ部を雌ネジ部とし、前記第1ギア部に配置した第3ネジ部を雄ネジ部とし、
前記第1ギア部を回転させて、
前記第1ギア部に配置した雄ネジ部を前記レンズ枠に配置した雌ネジ部および前記ユニットに配置した雌ネジ部の両方に嵌め合わせて、前記レンズ枠と前記ユニットを固定し、
前記第1ギア部に配置した雄ネジ部を前記レンズ枠に配置した雌ネジ部または前記ユニットに配置した雌ネジ部のいずれか一方に嵌め合わせて、前記レンズ枠と前記ユニットの固定を解除する
請求項1に記載のレンズ鏡筒。
【請求項4】
前記第1ギア部と噛み合う第2ギア部が取り付けられたモータを、前記レンズ枠または前記ユニットのいずれかに配置し、
前記モータを駆動させて前記第2ギア部を回転させ、
前記第2ギア部の回転によって前記第1ギア部を回転させる請求項1に記載のレンズ鏡筒。
【請求項5】
前記レンズ系はフォーカス用レンズ系とした請求項1に記載のレンズ鏡筒。
【請求項6】
前記レンズ系は像振れ補正用レンズ系とした請求項1に記載のレンズ鏡筒。
【請求項7】
請求項1〜請求項6に記載のレンズ鏡筒を備えた撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−186266(P2011−186266A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−52671(P2010−52671)
【出願日】平成22年3月10日(2010.3.10)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】