説明

レンズ鏡筒の遮光構造

【課題】省スペースに構成可能なレンズ鏡筒の遮光構造を提供する。
【解決手段】撮影光学系の結像位置に撮像素子を保持する撮像素子保持部材と、該撮像素子保持部材の前方に位置し光軸方向に移動可能な進退部材を備えたレンズ鏡筒において、撮像素子保持部材は、撮像素子を内部に保持する筒状保持部の前面に、撮像素子への被写体光の入射を許す開口と、該開口の周囲に位置し光軸方向前方へ突出して開口内への有害光の進入を防ぐ遮光壁とを有し、進退部材は、撮像素子保持部材に最も接近する光軸方向の後方移動端にあるときに遮光壁を進入させる遮光壁格納凹部を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はレンズ鏡筒の遮光構造に関する。
【背景技術】
【0002】
レンズ鏡筒において有害光の進入を防ぐ遮光構造は様々なものが提案されている。例えば、特許文献1では、レンズ鏡筒内における光軸方向への可動部材の後端部に、光軸と直交する方向の板状またはフィルム状の遮光部材(フレアカッター)が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11-305098号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
筒状部材を同心状に重ねたレンズ鏡筒において、特許文献1のような遮光構造では、外径側に位置する大径の筒状部材ほど、大型(大径)の遮光部材を必要とする。しかし、レンズ鏡筒の小型化の要求はとどまることがなく、遮光構造においても極限までの小型化が求められている。そこで本発明は、省スペースに構成可能なレンズ鏡筒の遮光構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、撮影光学系の結像位置に撮像素子を内部に保持する撮像素子保持部材と、該撮像素子保持部材の前方に位置し光軸方向に移動可能な進退部材を備えたレンズ鏡筒において、撮像素子保持部材は、撮像素子を保持する筒状保持部の前面に、撮像素子への被写体光の入射を許す開口と、該開口の周囲に位置し光軸方向前方へ突出して開口内への有害光の進入を防ぐ遮光壁とを有し、進退部材は、撮像素子保持部材に最も接近する光軸方向の後方移動端にあるときに遮光壁を進入させる遮光壁格納凹部を有していることを特徴とする。
【0006】
撮像素子保持部材の開口は略矩形をなし、撮像素子保持部材の遮光壁は、該矩形開口の少なくとも3辺を囲む形状であることが好ましい。例えば、遮光壁を矩形開口の4辺のうち3辺を囲む形状とし、進退部材に、光軸方向後方に突出して、光軸に沿って見て矩形開口の残る一辺に沿って位置するサブ遮光壁を設けた構成とすることができる。この構成では、矩形開口の3辺に沿う遮光壁と、残る一辺に沿うサブ遮光壁によって、矩形開口への有害光の進入が防がれる。別の構成として、撮像素子保持部材の遮光壁を、矩形開口の4辺すべてを囲む形状としてもよい。
【0007】
進退部材は、撮影光学系を構成する複数のレンズ群のうち最も像面に近い最像面側レンズ群を保持するレンズ保持枠であり、該最像面側レンズ群の周囲に遮光壁格納凹部が形成されることが好ましい。
【0008】
遮光壁を撮像素子保持部材の一部として一体形成することで、部品点数を少なくして製造コストを抑えることができる。
【発明の効果】
【0009】
以上の本発明によれば、撮像素子を保持する筒状保持部の前面に、光軸方向前方へ突出する形態の遮光壁を設けたため、従来の遮光構造に比べてコンパクトに構成することができる。また、撮像素子保持部材の前方に位置する進退部材に、その後方移動端で撮像素子保持部材側の遮光壁を進入させる遮光壁格納凹部を形成したことにより、レンズ鏡筒の収納状態でのスペース効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明を適用したズームレンズ鏡筒の一実施形態を示す撮影状態(ズーム域)での断面図である。
【図2】同ズームレンズ鏡筒の収納(沈胴)状態での断面図である。
【図3】同ズームレンズ鏡筒の主要な構成要素の分解斜視図である。
【図4】撮像素子ホルダに対するローパスフィルタと撮像素子の組付構造を示す分解斜視図である。
【図5】3群レンズ枠を後方から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1及び図2は、本発明を適用した沈胴式ズームレンズ鏡筒ZLの一実施形態を示している。このズームレンズ鏡筒ZLの撮影光学系は、物体(被写体)側から順に第1レンズ群LG1、シャッタS、開口可変絞りA、第2レンズ群LG2、第3レンズ群LG3、ローパスフィルタ25及び撮像素子26を備えている。以下の説明中で光軸方向とは、この撮影光学系の光軸Oと平行な方向を意味し、前方とは光軸方向の前方(被写体側)、後方とは光軸方向の後方(像面側)を意味する。
【0012】
ズームレンズ鏡筒ZLは固定部材として筒状のハウジング22を有し、ハウジング22の後部に撮像素子ホルダ(撮像素子保持部材)21が固定される。図1ないし図4に示すように、撮像素子ホルダ21は角筒状の筒状保持部21aを有し、その内部にローパスフィルタ25と撮像素子26が保持される。詳細には、筒状保持部21aは、光軸Oと略直交する方向の前面壁部21bを有し、該前面壁部21bの中央に、矩形の前面開口21cが光軸方向へ貫通形成されている。筒状保持部21a内には、前面壁部21bの後面に当て付けてローパスフィルタ25が保持され、該ローパスフィルタ25の後面の外縁部付近に、四角枠状のパッキン27が当接している。パッキン27の後部には撮像素子26が当接し、該撮像素子26が固定される撮像素子保持板62をネジ63(図4)を用いて撮像素子ホルダ21の後方から締結固定することにより、ローパスフィルタ25、撮像素子26及びパッキン27が筒状保持部21a内に支持固定される。この支持固定状態で、撮像素子26の前面の受光面26aとローパスフィルタ25の間はパッキン27によって密封される。受光面26aが撮影光学系の結像位置に位置するように、撮像素子26の光軸方向位置がスペーサ64(図4)などを用いて適宜調整される。
【0013】
第3レンズ群LG3は、ズームレンズ鏡筒ZLの撮影光学系における最も像面側のレンズ群であり、フォーカスレンズ群である。図3及び図5に示すように、3群レンズ枠(進退部材)51は、第3レンズ群LG3を保持するレンズ保持筒部51aと、該レンズ保持筒部51aから外径方向に延設される一対のガイド腕部51b、51cを有する。レンズ保持筒部51aとガイド腕部51cの境界部分には、2群レンズ保持枠6に保持される第2レンズ群LG2が進入可能な2群レンズ収納凹部51dが形成されている。撮像素子ホルダ21の筒状保持部21aには、前面開口21cの4辺のうち一辺に隣接する領域に、この2群レンズ収納凹部51dを進入可能とさせる半円状凹部21dが形成されている。一方のガイド腕部51bに形成されたガイド孔に対して、ハウジング22と撮像素子ホルダ21に固定されたガイド軸52が挿通され、このガイド軸52を介して3群レンズ枠51が光軸方向に直進移動可能に支持されている。他方のガイド腕部51cの先端に設けた回り止め部が、ハウジング22内に形成した回転規制部(不図示)に係合して3群レンズ枠51の回転を規制する。3群レンズ枠51は、ハウジング22の外面に支持されるトーションバネからなる3群付勢バネ55によって光軸方向前方へ付勢され、AFナット54に当て付いて前方への移動が規制される。AFナット54は、リードスクリュー58に螺合しており、AFモータ160によってリードスクリュー58を回転させることにより光軸方向に移動される。したがって、3群レンズ枠51はAFモータ160の駆動によって光軸方向に移動される。
【0014】
ハウジング22の内側には、3群レンズ枠51の支持駆動手段とは別に、ズームモータ150により駆動制御される変倍群(カム環)ブロックが支持されている。変倍群(カム環)ブロックは、図3に示すように、直進案内環10、カム環11、繰出筒12及び2群レンズブロック80を含んでいる。
【0015】
カム環11は、繰出筒12と共にズームレンズ鏡筒ZLの外観筒を構成しており、ハウジング22の内周面に形成したカム環ガイド溝22aに対して摺動可能に嵌るガイド突起11aを有する。カム環11は、ズームモータ150(図3)により回転駆動されるズームギヤ28の駆動力をギヤ部11bで受けて回転され、カム環ガイド溝22aの案内により回転しながら光軸方向に移動する。
【0016】
直進案内環10は、ハウジング22の内面に形成した直進案内溝22bに対して直進案内突起10aを摺動可能に係合させることで、光軸方向に直進移動可能に案内されている。直進案内突起10aの基部を構成する壁部と回転案内爪10bの間に回転案内爪11cを挟むことによって、直進案内環10とカム環11は、相対回転は可能で光軸方向に共に移動するように結合されている。
【0017】
2群レンズブロック80は、2群レンズ移動枠8の前部にシャッタブロック100を固定した構成であり、2群レンズ移動枠8から外径方向に突出する直進案内キー8aを、直進案内環10に形成した光軸方向への長孔である直進案内スロット10cに対して摺動可能に係合させることにより光軸方向へ直進案内されている。シャッタSは光軸Oと平行な軸により軸支された複数枚のシャッタ羽根で構成され、この複数のシャッタ羽根をシャッタブロック100に内蔵したアクチュエータにより駆動することで、シャッタSが開閉される。シャッタブロック100の後部には、ズームレンズ鏡筒ZLの状態に応じて開口径が変化する開口可変絞りAが設けられている。開口可変絞りAは、光軸Oと平行な軸により軸支された複数枚の絞り羽根で構成され、ズーム域のテレ端側(図1の下半断面)よりもワイド端側(図1の上半断面)で開口径を小さくするように開度が切り替えられるが、その両方の状態において、絞り開口内への第2レンズ群LG2の一部の進入を許す開口径となっている。
【0018】
また、2群レンズ移動枠8の内部には、第2レンズ群LG2を保持した2群レンズ保持枠6が支持されている。2群レンズ保持枠6は、光軸方向に軸線を向けた回動軸を中心として揺動可能に支持されており、図1に示す撮影状態では、第2レンズ群LG2の中心を光軸Oと一致させる挿入位置に保持される。ズームレンズ鏡筒ZLの収納動作によって2群レンズ移動枠8が光軸方向後方に移動されると、2群レンズ保持枠6が撮像素子ホルダ21に設けた離脱制御突起40に当接して押圧回動され、図2に示す収納状態では、第2レンズ群LG2を、2群レンズ移動枠8に形成した径方向貫通孔8sや直進案内環10に形成した径方向貫通孔10sに進入させる離脱位置に保持される。2群レンズ保持枠6の詳細な支持駆動構造については、本発明の要旨と関係がないので詳細な説明を省略する。
【0019】
カム環11の内周面に形成した2群制御カム溝CG2に対し、2群レンズ移動枠8に設けた2群用カムフォロアCF2が摺動可能に係合している。2群用カムフォロアCF2は、直進案内キー8aの外径部に設けられ、直進案内環10を径方向に貫通する直進案内スロット10cを通して2群用カムフォロアCF2との係合位置まで突出されている。2群レンズ移動枠8(2群レンズブロック80)は直進案内環10を介して光軸方向に直進案内されているため、カム環11が回転すると、2群制御カム溝CG2の形状に従って、2群レンズ移動枠8(2群レンズブロック80)が光軸方向へ所定の軌跡で移動する。
【0020】
繰出筒12内には第1レンズ群LG1が保持されている。繰出筒12は内面側に設けた直進案内キー12a(図1)を直進案内環10の直進案内溝10dに対して摺動可能に係合させることで光軸方向へ直進案内されている。なお、繰出筒12の直進案内機構である直進案内溝10d及び直進案内キー12aと、2群レンズブロック80の直進案内機構である直進案内スロット10c及び直進案内キー8aを、図1では同一断面位置に示しているが、図3から分かるように、それぞれの直進案内機構の実際の周方向位置は異なる。
【0021】
カム環11の内周面に形成した1群制御カム溝CG1に対し、繰出筒12の後端部付近に設けた1群用カムフォロアCF1が摺動可能に係合している。繰出筒12は直進案内環10を介して光軸方向に直進案内されているため、カム環11が回転すると、1群制御カム溝CG1の形状に従って繰出筒12が光軸方向へ所定の軌跡で移動する。
【0022】
ズームレンズ鏡筒ZLは、正規の撮影光路である各レンズ群LG1〜LG3を通らずに撮像素子26側へ進もうとする有害光を防ぐ遮光手段を、撮像素子ホルダ21上に備えている。この遮光手段は、筒状保持部21aの前面壁部21bから光軸方向前方に突出する遮光壁21eからなる。図3及び図4から分かるように、遮光壁21eは、矩形をなす前面開口21cの4辺のうち、半円状凹部21dに隣接する一辺を除く他の3辺を囲む位置に配した直線状壁部と、各直線状壁部を接続する湾曲状壁部からなっている。撮像素子ホルダ21は合成樹脂の成形品であり、遮光壁21eは、筒状保持部21aの一部として一体に形成されている。
【0023】
レンズ系(LG1〜LG3)を通った被写体光は、前面開口21cを通して筒状保持部21a内に入り、ローパスフィルタ25によりノイズの原因となる高周波数域の光がカットされた後、撮像素子26の受光面26aに入射する。図1及び図2から分かるように、遮光壁21eは、光軸Oを中心とする径方向において、撮影光学系の最像面側レンズである第3レンズ群LG3の外縁部よりも外径側に配置されており、第3レンズ群LG3の後面(凸面)から出て撮像素子26に向かおうとする被写体光については遮光壁21eによって遮断されることがない。一方、図1に示すように、各レンズ群LG1〜LG3を通らずに撮像素子ホルダ21の前面開口21cに向かう有害光HLは、遮光壁21eによって遮断される。なお、図1では有害光の例として、ハウジング22の前端部とカム環11の間の隙間から進入し、ハウジング22の内面で反射された内面反射光を示しているが、これ以外に、3群レンズ枠51のレンズ保持筒部51aの外側(ガイド腕部51b、51cの間の空間)を通過する迷光などについても遮光壁21eで遮断することが可能である。
【0024】
図5に示すように、3群レンズ枠51のレンズ保持筒部51aの後面側には、光軸方向後方に向けて開口する有底の凹部として、遮光壁21eが進入可能な遮光壁格納凹部51eが形成されている。図5では、識別しやすくするために、遮光壁格納凹部51eの底部(光軸方向前方の面)にハッチングを付している。同図から分かるように、遮光壁格納凹部51eは、角部が丸められた略正方形をなす第3レンズ群LG3のうち、2群レンズ収納凹部51dに面する側の一辺を除いた残り3辺を囲む位置に形成されており、遮光壁21eにおける3つの直線状壁部と、これらを接続する湾曲状壁部とに対応した形状となっている。
【0025】
3群レンズ枠51にはさらに、レンズ保持筒部51aとガイド腕部51cの境界付近(2群レンズ収納凹部51dの近傍)に、後方へ突出する壁部として、サブ遮光壁51fが形成されている(図1、図2及び図5参照)。光軸Oに沿って正面視して、サブ遮光壁51fは、撮像素子ホルダ21の前面開口21cの4辺のうち、遮光壁21eによって囲まれていない残り一辺部に沿う位置に配置されている。このサブ遮光壁51fによって、遮光壁21eがカバーしていない側からの前面開口21cへの有害光の入射を防ぐことができる。図1の上半と下半は、撮影状態でAFモータ160により制御される3群レンズ枠51の光軸方向の移動範囲の前方端と後方端付近を示しているが、3群レンズ枠51がこの移動範囲のいずれにある場合でも、サブ遮光壁51fの形成領域では、遮光壁21eの形成領域と同等の有害光遮断効果を得ることができる。
【0026】
以上の構造からなるズームレンズ鏡筒ZLは次のように動作する。図1に示す撮影状態(ズーム域)でズームモータ150を正逆に駆動すると、ハウジング22に対してカム環11が光軸方向に移動する。カム環11の光軸方向位置はカム環ガイド溝22aの軌跡により制御される。第1レンズ群LG1を支持する繰出筒12と、第2レンズ群LG2を支持する2群レンズブロック80(2群レンズ移動枠8)はそれぞれ、カム環11の回転に応じてカムフォロアCF1、CF2がカム溝CG1、CG2の案内を受けて光軸方向に相対移動し、図1上半のワイド端では第1レンズ群LG1と第2レンズ群LG2の間隔が大きく、図2下半のテレ端では第1レンズ群LG1と第2レンズ群LG2の間隔が小さくなる。ワイド端からテレ端までのズーム域全体において、2群レンズ保持枠6は、第2レンズ群LG2の中心を光軸Oに一致させる挿入位置(図1)に保持される。また、3群レンズ枠51はAFモータ160によって光軸方向に駆動され、第3レンズ群LG3が被写体距離に応じた合焦位置に位置制御される。
【0027】
一方、図1に示す撮影状態(より詳細には図1上半のワイド端)からズームモータ150を鏡筒収納方向に駆動させると、ガイド突起11aがカム環ガイド溝22aの案内を受け、カム環11が回転しながら光軸方向後方へ移動される。繰出筒12と2群レンズブロック80(2群レンズ移動枠8)は、カム環11上のカム溝CG1、CG2の軌跡による所定の相対移動を伴いつつ、カム環11と共に光軸方向後方へ移動する。そして、2群レンズ移動枠8と共に2群レンズ保持枠6が光軸方向後方へ移動して撮像素子ホルダ21に接近すると、2群レンズ保持枠6が離脱位置へ向けて回動し、離脱位置に移動する(図2)。また、撮影状態からの収納動作では、3群レンズ枠51は光軸方向後方に移動されて、図2の収納状態では、レンズ保持筒部51aを撮像素子ホルダ21の筒状保持部21aに近接させた後方移動端まで後退される。この3群レンズ枠51の後方移動端では、図2から分かるように、2群レンズ収納凹部51dが半円状凹部21dに嵌ると共に、遮光壁格納凹部51e内に遮光壁21eが進入する。また、サブ遮光壁51fは、筒状保持部21aの外側空間に進入し、撮像素子ホルダ21とは干渉しない。
【0028】
なお、収納状態になるときの3群レンズ枠51の後方移動端への移動は、AFモータ160を駆動して行わせる態様と、2群レンズブロック80の後退移動力により3群レンズ枠51を後方に押圧して行わせる態様のいずれとすることも可能である。3群レンズ枠51は、3群付勢バネ55によって光軸方向前方へ付勢され、AFナット54に当て付いて前方への移動が規制された構造であるため、2群レンズブロック80によって後方に押圧して移動させることができる。2群レンズブロック80は、ズーム域では、3群レンズ枠51に当接する位置まで後退することがないように撮影状態での可動範囲が定められているため、収納動作以外では3群レンズ枠51の位置制御には影響することがない。
【0029】
前述の通り、図1の撮影状態では、撮像素子ホルダ21に設けた遮光壁21eや3群レンズ枠51のサブ遮光壁51fによって、前面開口21cへの有害光(HL)の入射を防ぐことができる。ズームレンズ鏡筒ZLにおける可動部位である変倍群(カム環)ブロックの外側から深い(光軸Oに対する傾きが大きい)角度で入ってくるこのような有害光HLを遮断する場合、従来では、カム環11の後端部に光軸Oと直交する平面状の環状遮光部材を設けるなどしていたが、その遮光部材は大径の環状部材であるカム環11に対応した大型なものになってしまう。また、3群レンズ枠51のレンズ保持筒部51aの外側を通る有害光を遮断する場合に、3群レンズ枠51の一対のガイド腕部51b、51cの間を塞ぐような形態の遮光部材は、同様に大型のものになってしまう。そして、これらの大型の遮光部材は、単に大型であるだけでなく、各可動部材間のスペースが極めて小さくなる図2の収納状態になるとき、他の可動部材と干渉してその収納動作の妨げとなるおそれがある。これに対し、本実施形態の遮光壁21eは、撮像素子26の受光面に近い撮像素子ホルダ21の筒状保持部21aの前面に、前方へ突出する壁部として設けられているため、極めて小型に構成することができる。また、遮光壁21eは撮像素子ホルダ21の一部として一体に成形されるので、製造コストが低く、取り付けの手間もかからない。加えて、ズームレンズ鏡筒ZLの収納状態では、遮光壁21eは3群レンズ枠51の遮光壁格納凹部51eに入り込むため、3群レンズ枠51との干渉が生じず、収納状態でのスペース効率にも優れている。また、遮光壁21eと共に遮光手段を構成するサブ遮光壁51fは、3群レンズ枠51のレンズ保持筒部51aのうち2群レンズ収納凹部51dに沿う一辺部にのみ設けられているので、これも小型に構成することができる。
【0030】
以上、図示実施形態に基づき説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、図示実施形態では、遮光壁21eは、撮像素子ホルダ21における前面開口21cを構成する4辺のうち半円状凹部21dに隣接する一辺を除く3辺を囲む壁部として構成されているが、これは、第2レンズ群LG2を撮影状態での挿入位置と収納状態での離脱位置に移動させる関係上、その離脱用のスペースとして3群レンズ枠51の2群レンズ収納凹部51dや撮像素子ホルダ21の半円状凹部21dが設けられていることに由来する。第2レンズ群LG2がこのような離脱移動を行わない場合、撮像素子ホルダ21に半円状凹部21dを形成せず、遮光壁21eを、前面開口21cの4辺全てを囲む完全環状の壁部として形成してもよい。この場合、3群レンズ枠51からサブ遮光壁51fを省略することができる。あるいは逆に、有害光の進入方向が特定されている場合には、当該特定範囲にのみに対応する、図示実施形態の遮光壁21eよりも狭い範囲の遮光壁を配することも可能である
【符号の説明】
【0031】
6 2群レンズ保持枠
8 2群レンズ移動枠
10 直進案内環
11 カム環
12 繰出筒
21 撮像素子ホルダ(撮像素子保持部材)
21a 筒状保持部
21b 前面壁部
21c 前面開口
21d 半円状凹部
21e 遮光壁
22 ハウジング
26 撮像素子
51 3群レンズ枠(進退部材)
51a レンズ保持筒部
51e 遮光壁格納凹部
51f サブ遮光壁
62 撮像素子保持板
80 2群レンズブロック
100 シャッタブロック
150 ズームモータ
160 AFモータ
CF1 1群用カムフォロア
CF2 2群用カムフォロア
CG1 1群制御カム溝
LG1 第1レンズ群
LG2 第2レンズ群
LG3 第3レンズ群(最像面側レンズ群)
ZL ズームレンズ鏡筒

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮影光学系の結像位置に撮像素子を保持する撮像素子保持部材と、該撮像素子保持部材の前方に位置し光軸方向に移動可能な進退部材を備えたレンズ鏡筒において、
上記撮像素子保持部材は、上記撮像素子を内部に保持する筒状保持部の前面に、撮像素子への被写体光の入射を許す開口と、該開口の周囲に位置し光軸方向前方へ突出して開口内への有害光の進入を防ぐ遮光壁とを有し、
上記進退部材は、上記撮像素子保持部材に最も接近する光軸方向の後方移動端にあるとき、上記遮光壁を進入させる遮光壁格納凹部を有していることを特徴とするレンズ鏡筒の遮光構造。
【請求項2】
請求項1記載のレンズ鏡筒の遮光構造において、上記撮像素子保持部材の開口は略矩形をなし、上記遮光壁は、該矩形開口の少なくとも3辺を囲む形状であるレンズ鏡筒の遮光構造。
【請求項3】
請求項2記載のレンズ鏡筒の遮光構造において、上記撮像素子保持部材の遮光壁は、上記矩形開口の3辺を囲む形状であり、
上記進退部材は、光軸方向後方に突出し、光軸に沿って見て上記矩形開口の残る一辺に沿って位置するサブ遮光壁を有し、
上記遮光壁とサブ遮光壁によって上記矩形開口への有害光の進入を防ぐレンズ鏡筒の遮光構造。
【請求項4】
請求項2記載のレンズ鏡筒の遮光構造において、上記撮像素子保持部材の遮光壁は、上記矩形開口の4辺を囲む形状であるレンズ鏡筒の遮光構造。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項記載のレンズ鏡筒の遮光構造において、上記進退部材は、撮影光学系を構成する複数のレンズ群のうち最も像面に近い最像面側レンズ群を保持し、該最像面側レンズ群の周囲に上記遮光壁格納凹部が形成されているレンズ鏡筒の遮光構造。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1項記載のレンズ鏡筒の遮光構造において、上記遮光壁は、上記撮像素子保持部材の一部として一体形成されているレンズ鏡筒の遮光構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−150131(P2011−150131A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−11132(P2010−11132)
【出願日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【出願人】(000113263)HOYA株式会社 (3,820)
【Fターム(参考)】