説明

レンズ鏡筒及び撮像装置

【課題】鏡筒内の手振れ補正用のレンズを一連の動作で光軸上から退避させて所望の位置に収納する。
【解決手段】レンズ鏡筒は、ズーミング又はフォーカシングの動作に伴って光軸方向に移動するレンズ群108,110と、光軸に対して直交する方向に移動可能なOISレンズ116と、OISレンズ116が装着され、レンズ群108,110の沈胴時にOISレンズ116を光軸上から退避させるとともに、OISレンズ116を光軸に沿った方向に移動させるOISレンズ組立体122と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズ鏡筒及び撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、デジタルカメラ等に使用されるレンズ鏡筒において、沈胴時に、レンズの一部を上下左右方向に回転移動させたり、もしくは上下方向へのレンズ跳ね上げ運動によりレンズを退避させる機構が知られている。例えば、下記の特許文献1〜3には、手振れ補正光学系を退避させる構成が記載されている。また、下記の特許文献4〜6には、光学系の一部のレンズが回動して光軸から退避した後に、後退する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-206210号公報
【特許文献2】特開2007-199320号公報
【特許文献3】特開2007-199319号公報
【特許文献4】特開2006-234951号公報
【特許文献5】特開2005-284247号公報
【特許文献6】特開2004-233923号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の技術においては、鏡筒内の一部のレンズを光軸上から退避させる動作のみを行うか、または、光軸から退避する動作と、前後方向への移動とが、別々に行われるものであった。このため、鏡筒内のレンズの一部を一連の動作で光軸上から退避させて所望の位置に収納することが困難であり、退避動作が煩雑になる問題が生じていた。
【0005】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、鏡筒内の手振れ補正用のレンズを一連の動作で光軸上から退避させるとともに、光軸方向に移動して所望の位置に収納することが可能な、新規かつ改良されたレンズ鏡筒及び撮像装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、沈胴時に光軸方向に移動するレンズ群と、光軸に対して直交する方向に移動可能な手振れ補正用レンズと、手振れ補正用レンズが装着され、前記レンズ群の沈胴時に前記手振れ補正用レンズを光軸上から退避させるとともに、前記手振れ補正用レンズを光軸に沿った方向に移動させる補正用レンズ組立体と、を備えるレンズ鏡筒が提供される。
【0007】
上記構成によれば、補正用レンズ組立体には手振れ補正用レンズが装着され、レンズ群の沈胴時において、手振れ補正用レンズが光軸上から退避されるとともに、手振れ補正用レンズが光軸に沿った方向に移動される。従って、沈胴時に手振れ補正用レンズを光軸から退避させて所望の位置に収納することができ、沈胴時の全長を最小限に抑えることが可能となる。
【0008】
また、前記補正用レンズ組立体を光軸と平行な軸を中心として回動可能に支持するベース部を備え、前記補正用レンズ組立体は、前記軸を中心として回動することで前記手振れ補正用レンズを光軸上から退避させる。この構成により、補正用レンズ組立体は、光軸と平行な軸を中心として回動することで光軸上から退避することができる。
【0009】
また、前記ベース部は、前記補正用レンズ組立体が当接する傾斜面を備え、前記補正用レンズ組立体は、前記軸を中心として回動する際に前記傾斜面に沿って移動することで、前記手振れ補正用レンズを光軸に沿った方向に移動させる。この構成によれば、補正用レンズ組立体を、傾斜面に沿って光軸に沿った方向に移動させることができる。
【0010】
また、沈胴解除時に前記ベース部を光軸と直交する方向へ移動可能に保持する保持枠と、前記保持枠に対して回動可能に支持され、前記沈胴時に前記ベース部を前記保持枠に対して固定する固定部材と、を更に備える。この構成によれば、沈胴時においては、固定部材によってベース部が保持枠に対して固定される。従って、沈胴時に手振れ補正用レンズが移動してしまうことを確実に抑止できる。
【0011】
また、前記固定部材は、前記沈胴時に回動することにより前記ベース部の外周を保持することで、前記ベース部を前記保持枠に対して光軸と直交する方向で固定する。この構成によれば、固定部材によってベース部が保持枠に対して光軸と直交する方向で固定されるため、沈胴時に手振れ補正用レンズが光軸と直交する方向に移動してしまうことを確実に抑止できる。
【0012】
また、前記固定部材は、前記沈胴時に回動することにより前記ベース部の光軸と直交する面を保持することで、前記ベース部を前記保持枠に対して光軸方向で固定する。この構成によれば、固定部材によってベース部が保持枠に対して光軸方向で固定されるため、沈胴時に手振れ補正用レンズが光軸方向に移動してしまうことを確実に抑止できる。
【0013】
また、前記固定部材は、前記沈胴時に回動することにより補正用レンズ組立体を前記軸を中心として回動させる。この構成によれば、固定部材の回動によって補正レンズ組立体が回動されるため、固定部材によってベース部が保持枠に対して固定されるとともに、固定部材によって補正用レンズ組立体を回動させることができる。
【0014】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、被写体の光学像を結像する撮像光学系に含まれ、沈胴時に光軸方向に移動するレンズ群と、前記撮像光学系により被写体の光学像が結像される撮像面を有し、前記光学像を電気信号に変換する撮像素子と、前記撮像光学系に含まれ、光軸に対して直交する方向に移動可能な手振れ補正用レンズと、手振れ補正用レンズが装着され、前記レンズ群の沈胴時に前記手振れ補正用レンズを光軸上から退避させるとともに、前記手振れ補正用レンズを光軸に沿った方向に移動させる補正用レンズ組立体と、を備える撮像装置が提供される。
【0015】
上記構成によれば、補正用レンズ組立体には手振れ補正用レンズが装着され、レンズ群の沈胴時において、手振れ補正用レンズが光軸上から退避されるとともに、手振れ補正用レンズが光軸に沿った方向に移動される。従って、沈胴時に手振れ補正用レンズを光軸から退避させて所望の位置に収納することができ、沈胴時の全長を最小限に抑えることが可能となる。
【0016】
また、前記補正用レンズ組立体を光軸と平行な軸を中心として回動可能に支持するベース部を備え、前記補正用レンズ組立体は、前記軸を中心として回動することで前記手振れ補正用レンズを光軸上から退避させる。この構成により、補正用レンズ組立体は、光軸と平行な軸を中心として回動することで光軸上から退避することができる。
【0017】
また、前記ベース部は、前記補正用レンズ組立体が当接する傾斜面を備え、前記補正用レンズ組立体は、前記軸を中心として回動する際に前記傾斜面に沿って移動することで、前記手振れ補正用レンズを光軸に沿った方向に移動させる。この構成によれば、補正用レンズ組立体を、傾斜面に沿って光軸に沿った方向に移動させることができる。
【0018】
また、沈胴解除時に前記ベース部を光軸と直交する方向へ移動可能に保持する保持枠と、前記保持枠に対して回動可能に支持され、前記沈胴時に前記ベース部を前記保持枠に対して固定する固定部材と、を更に備える。この構成によれば、沈胴時においては、固定部材によってベース部が保持枠に対して固定される。従って、沈胴時に手振れ補正用レンズが移動してしまうことを確実に抑止できる。
【0019】
また、前記固定部材は、前記沈胴時に回動することにより前記ベース部の外周を保持することで、前記ベース部を前記保持枠に対して光軸と直交する方向で固定する。この構成によれば、固定部材によってベース部が保持枠に対して光軸と直交する方向で固定されるため、沈胴時に手振れ補正用レンズが光軸と直交する方向に移動してしまうことを確実に抑止できる。
【0020】
また、前記固定部材は、前記沈胴時に回動することにより前記ベース部の光軸と直交する面を保持することで、前記ベース部を前記保持枠に対して光軸方向で固定する。この構成によれば、固定部材によってベース部が保持枠に対して光軸方向で固定されるため、沈胴時に手振れ補正用レンズが光軸方向に移動してしまうことを確実に抑止できる。
【0021】
また、前記固定部材は、前記沈胴時に回動することにより補正用レンズ組立体を前記軸を中心として回動させる。この構成によれば、固定部材の回動によって補正レンズ組立体が回動されるため、固定部材によってベース部が保持枠に対して固定されるとともに、固定部材によって補正用レンズ組立体を回動させることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、鏡筒内の手振れ補正用のレンズを一連の動作で光軸上から退避させるとともに、光軸方向に移動して所望の位置に収納することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】レンズ鏡筒が沈胴している状態を示す模式図である。
【図2】レンズ鏡筒の沈胴が解除された状態(撮影時の状態)を示す模式図である。
【図3】OISレンズ群の構成を示す分解斜視図である。
【図4】OISレンズが光軸上に位置する第1の状態を示す模式図である。
【図5】OISレンズが光軸よりも下側に退避した第2の状態を示す模式図である。
【図6】OISレンズ組立体の孔がOISベースの軸に挿入される様子を示す模式図である。
【図7】OISレンズ群を撮像素子側から見た状態を示す模式図である。
【図8】図7中の一点鎖線で囲まれた領域Bを拡大して示す模式図である。
【図9】沈胴する過程において、固定枠から突出した突起部がリトラクタガイドの傾斜面に当接する様子を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0025】
[レンズ鏡筒の構成例]
まず、図1及び図2を参照して、本発明の第1の実施形態に係る撮像装置のレンズ鏡筒100の概略構成について説明する。図1は、本実施形態における撮像装置において、レンズ鏡筒100が沈胴している状態を示す模式図であり、図2はレンズ鏡筒100の沈胴が解除された状態(撮影時の状態)を示している。また、図1(A)及び図2(A)はレンズ鏡筒100を被写体側から見た状態を示しており、図1(B)及び図2(B)はレンズ鏡筒100の光軸300に沿った断面を示している。
【0026】
図2に示すように、レンズ鏡筒100は、レンズ枠102、レンズ枠104、レンズ枠106、及び固定枠107を備えている。レンズ枠102は第1群レンズ108を保持し、レンズ枠104は第2群レンズ110を保持している。また、レンズ枠106は第3群レンズ112を保持している。ここで、第1群レンズ108及び第2群レンズ110はズーミング時に光軸方向に移動し、第3群レンズ112はフォーカシング時に光軸方向に移動する。
【0027】
また、第2群レンズ110と第3群レンズ112の間には、OISレンズ群114が配置されている。OISレンズ群114は、手振れを補正するため、手振れに応じて光軸と直交する方向へ移動するOISレンズ116を備えている。
【0028】
図1に示すように、沈胴時の状態では、レンズ枠102、レンズ枠104、レンズ枠106が撮像素子109側に退避しており、レンズ鏡筒100の光軸方向の長さが最も短くなる。また、図2に示すように、沈胴解除時(撮影時)には、レンズ枠102、レンズ枠104、レンズ枠106が被写体側に繰り出した状態となる。第1群レンズ108、第2群レンズ110、及び第3群レンズ112は、被写体の光学像を結像する撮像光学系に含まれ、撮像素子109は、これらの撮像光学系により被写体の光学像が結像される撮像面を有している。
【0029】
沈胴時には、第2群レンズ110の最も撮像素子109側のレンズ110aがOISレンズ群114に接近する。このとき、OISレンズ116が光軸300上に位置していると、レンズ110aとOISレンズ116の距離を確保する必要があるため、第2群レンズ110の沈胴量に制約が生じてしまう。つまり、第2群レンズ110の沈胴量がより少なくなり、沈胴時のレンズ鏡筒200の全長が長くなってしまう。
【0030】
このため、本実施形態では、図1(B)に示す沈胴時には、OISレンズ群114を光軸300よりも下側に退避させる。更に、沈胴時には、OISレンズ116を光軸300から退避させた状態で、OISレンズ116を保持するOISレンズ保持枠118に対してOISレンズ116を後ろ側(撮像素子109側)に退避させている。これにより、沈胴時の全長を短くすることが可能となる。
【0031】
レンズ鏡筒100を薄型化させる場合、各群の移動量が大きい場合、沈胴段数を増やす必要が出てくる。この場合、沈胴動作に必要なカムの数も増える為、薄型の障害となる場合がある。本実施形態では、沈胴時に、レンズ鏡筒100の全長を更に薄くするために、撮像素子109側の使用していないスペースをより有効に活用して沈胴するレンズ群を収納できるように、前後方向(光軸方向)へもOISレンズ116を移動させるため、第2群レンズ110の沈胴量をより大きくすることができ、更なる薄型化を達成することができる。例えば、沈胴時にOISレンズ116を撮像素子109側へ2mm移動させた場合、沈胴時にOISレンズ116を撮像素子109側へ移動させない場合に比べて、第2群レンズ110の沈胴量も少なくとも2mm増加することができる。従って、レンズ鏡筒100及び撮像装置の更なる薄型化を達成することが可能である。
【0032】
[OISレンズ群の構成]
次に、OISレンズ群114の構成について説明する。図3は、OISレンズ群114の構成を示す分解斜視図である。図3に示すように、OISレンズ群114は、OISレンズ保持枠118、OISベース120、OISレンズ組立体122、バネ124、ホルダー126、リトラクトガイド(固定部材)128、バネ130,132を有して構成されている。
【0033】
OISベース120には、マグネット134,136が装着されている。OISベース120は、マグネット134,136の磁力により、OISレンズ保持枠118に対して光軸300と直交する2方向へ移動可能とされている。また、OISベース120には、OISレンズ組立体122が装着されている。OISレンズ組立体122には、OISレンズ116が固定されている。図2に示す沈胴解除時において、OISレンズ116は光軸300上に配置され、OISレンズ116はOISベース120と一体に駆動される。これにより、手振れによるレンズ鏡筒100の移動を検知した場合に、手振れに応じてOISベース120をOISレンズ保持枠118に対して光軸と直交する方向へ駆動することで、撮像素子109の撮像面上での結像位置が変化し、手振れによる画像の劣化を補正することができる。
【0034】
OISベース120には、軸120aが設けられている。また、OISレンズ組立体122には、軸120aが挿入される孔122aが設けられており、OISレンズ組立体122は、孔122aに軸120aが挿入された状態で回動可能に構成されている。このような構成により、OISレンズ組立体122は、OISレンズ116が光軸300上に位置する第1の状態と、OISレンズ116が光軸300よりも下側に退避した第2の状態との間を移動することができる。
【0035】
図4及び図5は、OISレンズ群114を撮像素子109側から見た状態を示す模式図である。図4は、OISレンズ116が光軸300上に位置する第1の状態を示しており、図5は、OISレンズ116が光軸300よりも下側に退避した第2の状態を示している。図4及び図5に示すように、OISレンズ組立体122が軸120aを中心として回動することで、OISレンズ組立体122は、第1の状態と第2の状態の位置に設定される。
【0036】
ホルダー126は、OISレンズ組立体122の孔122aに軸120aが挿入された状態でOISベース120に固定され、軸120aからOISレンズ組立体122が離脱しないように、抜け止めの機能を果たす。また、バネ124は、弦巻バネから構成され、孔122aが設けられたボス122bに挿入され、OISレンズ組立体122を第1の状態の方向(図4及び図5中の矢印A1方向)に向けて付勢する。
【0037】
図3、図4、及び図5に示すように、OISベース120には、傾斜面120aが設けられており、傾斜面120aにはOISレンズ組立体122が当接している。傾斜面120aは、光軸300から離れるほどOISベース120から撮像素子109側への高さが高くなるように構成されている。これにより、OISレンズ組立体122は、第1の状態から第2の状態に移行するにつれて、傾斜面120aによって撮像素子109側へ移動する。
【0038】
図6は、OISレンズ組立体122の孔122aがOISベース120の軸120aに挿入される様子を示す模式図である。孔122aが軸120aに挿入されると、OISレンズ組立体122の突起部122dが傾斜面120aと当接する。OISレンズ組立体122は、バネ124によってOISベース120側に付勢されており、突起部122dは常に傾斜面120aと当接している。つまり、バネ124は、OISレンズ組立体122を軸120aを中心とした回動方向に付勢するとともに、OISレンズ組立体122を光軸方向にも付勢している。従って、第1の状態から第2の状態に移行するにつれて、OISレンズ組立体122の突起部122dが傾斜面120aを上っていき、OISレンズ組立体122が撮像素子109側へ移動する。また、傾斜面120aは、OISレンズ組立体122の光軸方向の移動量を規制するため、所定の量、前後移動した後、OISレンズ組立体122が回転方向と並行(光軸と直交する方向のみ)に移動するように構成されている。
【0039】
リトラクタガイド128は、その外周面がOISレンズ保持枠118の内周面118bに対して回動可能にかん合している。図3に示すように、リトラクタガイド128には、撮像素子109側に向けて3つの突起128a,128b,128cが設けられている。3つの突起128a,128b,128cは、OISレンズ保持枠118に設けられた孔118aに挿通され、OISベース120及びOISレンズ組立体122と係合可能に構成されている。
【0040】
3つの突起128a,128b,128cのうち、突起128a,128bは、OISベース120のOISレンズ保持枠118に対する移動を抑制する機能を有する。また、突起128cは、OISレンズ組立体122を第1の状態と第2の状態の間で回動させる機能を有する。図7は、OISレンズ群110を撮像素子109側から見た状態を示す模式図であって、リトラクタガイド128の回動によってOISレンズ組立体122が第1の状態から第2の状態へ移動し、OISベース120がOISレンズ保持枠118に対して固定される様子を示している。
【0041】
図7(A)は、OISレンズ組立体122が第1の状態に位置している状態を示している。この状態では、バネ124の付勢力によってOISレンズ116が光軸上に位置している。図7(A)に示す状態からリトラクタガイド128が反時計回りに回動すると、図7(B)に示すように、リトラクタガイド128の突起128cが、OISレンズ組立体122の外側に設けられた突起122cと当接する。この状態から更にリトラクタガイド128が反時計回りに回動すると、突起122cが突起128cに押されて、OISレンズ組立体122が第2の状態に向けて回動する。そして、図7(C)に示すように、リトラクタガイド128が反時計回りの終端まで回動すると、突起128cに押されて回動したOISレンズ組立体122が第2の位置に到達する。OISレンズ組立体122は、その突起部122dが傾斜面120aと当接しているため、第1の状態から第2の状態に移行するにつれて、光軸方向を撮像素子109側へ移動する。
【0042】
また、リトラクタガイド128が反時計回りに回動すると、突起128a,128bによってOISベース120がOISレンズ保持枠118に対して固定される。図7(A)〜図7(C)に示すように、OISベース120には、外径が周囲よりも大きい突出部120bが設けられている。突出部120bの外径は、突起128a,128bの内径の大きさと一致している。リトラクタガイド128が反時計回りに回動すると、突出部120bと突起128a,128bの角度位置が一致し、突出部120bの外径が突起128a,128bの内径によって保持される。
【0043】
図8は、図7中の一点鎖線で囲まれた領域Bを拡大して示す模式図であり、図8(A)、図8(B)、図8(C)は、それぞれ図7(A)、図7(B)、図7(C)に対応している。また、図8(D)は、図8(A)中の矢印A2方向から突起128b及び突出部120bを見た状態を示す模式図である。
【0044】
図8(D)に示すように、突起128bの先端には、光軸300側に向かって突出する突起128dが設けられている。同様に、突起128aの先端には、光軸側に向かって突出する突起128dが設けられている。突起128dの被写体側の面128eは、突出部120bの撮像素子109側の面120cの位置と一致している。
【0045】
図7(A)及び図8(A)に示す状態では、突出部120bの外径と突起128a,128bの内径は当接していない。従って、OISベース120は、光軸と直交する2方向へ移動することができる。これにより、上述したように、OISベース120の移動によって手振れ補正が行われる。
【0046】
図7(B)及び図8(B)に示すように、リトラクタガイド128が反時計回り(矢印A4方向)に回動すると、突出部120bの外径と突起128a,128bの内径の光軸を中心とした角度位置が重なり、突出部120bの外径と突起128a,128bの内径は当接し始める。これにより、OISベース120が光軸300と直交する方向においてリトラクタガイド128によって保持される。また、突起128dの被写体側の面128eと突出部120bの撮像素子109側の面120cとが当接し、OISベース120の撮像素子109側への移動が規制される。
【0047】
そして、図7(C)及び図8(C)に示すように、リトラクタガイド128が反時計回りの終端まで回動すると、突出部120bの外径と突起128a,128bの内径が完全に当接した状態となる。突出部120bの外径と突起128a,128bの内径が当接した状態になると、OISベース120が光軸300と直交する方向においてリトラクタガイド128によって保持される。リトラクタガイド128は、その外径がOISレンズ保持枠118の内径に対して回動可能にかん合しているため、OISベース120が光軸と直交する方向においてリトラクタガイド128によって保持されると、この結果、OISベース120が光軸と直交する方向においてOISレンズ保持枠118に保持される。
【0048】
また、図7(C)及び図8(C)に示す状態では、突起128dの被写体側の面128eと突出部120bの撮像素子109側の面120cとが当接する。これにより、突起128dとOISベース120が係合する。OISベース120の被写体側は、OISレンズ保持枠118の撮像素子109側と常に当接している。従って、突起128dとOISベース120が係合することによって、OISベース120の撮像素子109側への移動が規制される。従って、図7(C)及び図8(C)に示す状態では、光軸方向と光軸と直交する方向のいずれにおいても、OISベース120がOISレンズ保持枠118に対して固定された状態となる。
【0049】
これにより、沈胴時において、OISベース120がレンズ鏡筒200の内部で動いてしまうことを抑止することができ、沈胴時にOISレンズ116が光軸300から退避する構成において、OISレンズ116を固定した状態で安定して保持することができる。
【0050】
OISベース120は手振れ補正時(OIS時)に光軸と直交する2方向(上下左右)に動作する必要があるため、位置決めはマグネット134,136の力のみで行われ、マグネット134,136の力に応じて光軸と直交する2方向に自由に動くことが可能となっている。しかし、退避時には、リトラクタガイド128によってOISレンズ組立体122が回動方向に押されるため、仮にリトラクタガイド128によってOISレンズ保持枠118に対してOISベース120が固定されていないと、OISベース120が移動してしまい、退避動作に支障が生じてしまう。本実施形態では、OISレンズ116を退避させる際に、OISベース120がOISレンズ保持枠118に対して固定された状態となるため、安定してOISレンズ116を退避させることが可能である。
【0051】
沈胴時から沈胴解除時へ移行する場合は、上述した動作と逆の動作が行われる。この場合、図7(C)に示す状態からリトラクタガイド128が時計周りに回動すると、バネ124の付勢力によってOISレンズ組立体122が第1の状態に向かって回動する。そして、図7(A)の状態に復帰すると、OISレンズ116が光軸300上の位置に復帰する。また、図7(A)の状態に復帰すると、突出部120bと突起128a,128bの係合が外れ、OISベース120がOISレンズ保持枠118に対して光軸300と直交する方向へ移動可能となる。
【0052】
以上のように、本実施形態の構成によれば、リトラクタガイド128の回動によって、OISレンズ組立体122を第1の位置と第2の位置の間で回動させることができる。また、リトラクタガイド128の回動によって、OISベース120をOISレンズ保持枠118に対して固定することができ、またその固定を解除することができる。
【0053】
また、OISレンズ組立体122の移動に傾斜面120aを使用することで、回転方向への退避動作だけでなく、前後方向(光軸方向)への退避動作も同時に行うことが可能となる。これにより、沈胴時の鏡筒全長を更に薄型化することが可能となる。
【0054】
次に、リトラクタガイド128を回動させるための構成について説明する。図3に示すように、リトラクタガイド128の突起部128cには、傾斜面128fが設けられている。リトラクタガイド128は、バネ130,132の付勢力により、光軸300を中心として、図4及び図5に示す矢印A3方向へ回動するように付勢されている。
【0055】
図9は、沈胴する過程において、固定枠107から突出した突起部107aがリトラクタガイド128の傾斜面128fに当接する様子を示している。沈胴に伴い、OISレンズ群114が撮像素子109側へ移動すると、固定枠107から突出した突起部107aがリトラクタガイド128の傾斜面128fに当接し、更にOISレンズ群110が撮像素子109側へ移動することによって、傾斜面128fが突起部107aから受けた力の分力によって、リトラクタガイド128が図4及び図5に示す矢印A3と反対方向に回動する。これにより、沈胴解除時から沈胴時に移行する際に、リトラクタガイド128を図7(A)〜図7(C)中の矢印A4方向へ回動させることができる。
【0056】
一方、沈胴時から沈胴解除時へ移行する際には、リトラクタガイド128は、バネ130,132の付勢力により、光軸300を中心として、図4及び図5に示す矢印A4方向へ回動するように付勢されているため、傾斜面128fの被写体側への移動に伴って図7に示す矢印A4方向へ回動し、図7(A)に示す状態に復帰する。これにより、OISレンズ組立体122が第1の位置に復帰するとともに、OISベース120のOISレンズ保持枠118に対する固定が解除された状態となる。
【0057】
以上説明したように本実施形態によれば、沈胴時に手振れ補正用のOISレンズ116を光軸300上から退避させるとともに、光軸300の方向に移動させるようにしたため、OISレンズ116によって沈胴の動作が妨げられてしまうことを回避できる。従って、沈胴時にレンズ鏡筒200の全長を最小限に抑えることが可能となる。
【0058】
また、沈胴時にOISベース120をOISレンズ保持枠118に対して固定することができるため、沈胴時にマグネット134,136への通電がオフになった状態においても、OISベース120がOISレンズ保持枠118に対して移動することを抑止することができる。
【0059】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0060】
100 レンズ鏡筒
108 第1群レンズ
110 第2群レンズ
112 第3群レンズ
116 OISレンズ
118 OISレンズ保持枠
120 OISベース
120a 傾斜面
120a 軸
122 OISレンズ組立体
128 リトラクトガイド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
沈胴時に光軸方向に移動するレンズ群と、
光軸に対して直交する方向に移動可能な手振れ補正用レンズと、
手振れ補正用レンズが装着され、前記レンズ群の沈胴時に前記手振れ補正用レンズを光軸上から退避させるとともに、前記手振れ補正用レンズを光軸に沿った方向に移動させる補正用レンズ組立体と、
を備えることを特徴とする、レンズ鏡筒。
【請求項2】
前記補正用レンズ組立体を光軸と平行な軸を中心として回動可能に支持するベース部を備え、
前記補正用レンズ組立体は、前記軸を中心として回動することで前記手振れ補正用レンズを光軸上から退避させることを特徴とする、請求項1に記載のレンズ鏡筒。
【請求項3】
前記ベース部は、前記補正用レンズ組立体が当接する傾斜面を備え、
前記補正用レンズ組立体は、前記軸を中心として回動する際に前記傾斜面に沿って移動することで、前記手振れ補正用レンズを光軸に沿った方向に移動させることを特徴とする、請求項1又は2に記載のレンズ鏡筒。
【請求項4】
沈胴解除時に前記ベース部を光軸と直交する方向へ移動可能に保持する保持枠と、
前記保持枠に対して回動可能に支持され、前記沈胴時に前記ベース部を前記保持枠に対して固定する固定部材と、
を更に備える、請求項1〜3のいずれかに記載のレンズ鏡筒。
【請求項5】
前記固定部材は、前記沈胴時に回動することにより前記ベース部の外周を保持することで、前記ベース部を前記保持枠に対して光軸と直交する方向で固定することを特徴とする、請求項4に記載のレンズ鏡筒。
【請求項6】
前記固定部材は、前記沈胴時に回動することにより前記ベース部の光軸と直交する面を保持することで、前記ベース部を前記保持枠に対して光軸方向で固定することを特徴とする、請求項4に記載のレンズ鏡筒。
【請求項7】
前記固定部材は、前記沈胴時に回動することにより補正用レンズ組立体を前記軸を中心として回動させることを特徴とする、請求項4〜6のいずれかに記載のレンズ鏡筒。
【請求項8】
被写体の光学像を結像する撮像光学系に含まれ、沈胴時に光軸方向に移動するレンズ群と、
前記撮像光学系により被写体の光学像が結像される撮像面を有し、前記光学像を電気信号に変換する撮像素子と、
前記撮像光学系に含まれ、光軸に対して直交する方向に移動可能な手振れ補正用レンズと、
手振れ補正用レンズが装着され、前記レンズ群の沈胴時に前記手振れ補正用レンズを光軸上から退避させるとともに、前記手振れ補正用レンズを光軸に沿った方向に移動させる補正用レンズ組立体と、
を備えることを特徴とする、撮像装置。
【請求項9】
前記補正用レンズ組立体を光軸と平行な軸を中心として回動可能に支持するベース部を備え、
前記補正用レンズ組立体は、前記軸を中心として回動することで前記手振れ補正用レンズを光軸上から退避させることを特徴とする、請求項8に記載の撮像装置。
【請求項10】
前記ベース部は、前記補正用レンズ組立体が当接する傾斜面を備え、
前記補正用レンズ組立体は、前記軸を中心として回動する際に前記傾斜面に沿って移動することで、前記手振れ補正用レンズを光軸に沿った方向に移動させることを特徴とする、請求項8又は9に記載の撮像装置。
【請求項11】
沈胴解除時に前記ベース部を光軸と直交する方向へ移動可能に保持する保持枠と、
前記保持枠に対して回動可能に支持され、前記沈胴時に前記ベース部を前記保持枠に対して固定する固定部材と、
を更に備える、請求項8〜10のいずれかに記載の撮像装置。
【請求項12】
前記固定部材は、前記沈胴時に回動することにより前記ベース部の外周を保持することで、前記ベース部を前記保持枠に対して光軸と直交する方向で固定することを特徴とする、請求項11に記載の撮像装置。
【請求項13】
前記固定部材は、前記沈胴時に回動することにより前記ベース部の光軸と直交する面を保持することで、前記ベース部を前記保持枠に対して光軸方向で固定することを特徴とする、請求項11に記載の撮像装置。
【請求項14】
前記固定部材は、前記沈胴時に回動することにより補正用レンズ組立体を前記軸を中心として回動させることを特徴とする、請求項11〜13のいずれかに記載の撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−61415(P2013−61415A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−198622(P2011−198622)
【出願日】平成23年9月12日(2011.9.12)
【出願人】(390019839)三星電子株式会社 (8,520)
【氏名又は名称原語表記】Samsung Electronics Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】129,Samsung−ro,Yeongtong−gu,Suwon−si,Gyeonggi−do,Republic of Korea
【Fターム(参考)】