説明

レンズ駆動装置及びレンズ駆動装置の製造方法

【課題】少量の加熱で板バネとコイルとを接続して熱によるレンズ保持部材の破損を防止すること。
【解決手段】レンズ体が保持されるレンズ保持部材(5)の周囲にコイル(59)を取り付け、コイル(59)に磁気回路が作用してレンズ保持部材(5)が光軸方向に移動するようにヨーク(7)及び磁石(6)を設け、光軸方向において下板バネ(4)によってレンズ保持部材(5)を支持させたレンズ駆動装置(1)の製造方法であって、レンズ保持部材(5)に設けた絡げピン(57)にコイル(59)の端部を巻き付け、下板バネ(4)に形成された切欠部(63)の近傍において、絡げピン(57)に巻き付けられたコイル(59)の端部を、半田ペースト(65)を介して下板バネ(4)に電気的に接続した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カメラ付きの携帯電話等に搭載される小型のレンズ駆動装置及びレンズ駆動装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、小型のレンズ駆動装置として、レンズが保持されたレンズ保持部材を光軸方向に磁気駆動するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載のレンズ駆動装置では、外周面にコイルを巻回したレンズ保持部材をベース部材に載置し、上方からヨークを被せることで構成される。ヨークの各側壁部の内側面には、それぞれ磁石が固定されており、レンズ保持部材に保持されたコイルの周囲に磁石が位置付けられている。そして、レンズ駆動装置は、ヨークと磁石とによって磁気回路を形成し、コイルの通電によって生じる電磁力によりレンズ保持部材を光軸方向に移動させている。
【0003】
また、ロアケースとレンズ保持部材との間には、レンズ保持部材を復帰させる板バネが配置されている。板バネは、2つのバネ片に分割されており、一方のバネ片にコイルの巻き始めの一端部が接続され、他方のバネ片にコイルの巻き終わりの他端部が接続されている。この場合、コイルの両端部は、レンズ保持部材の下端に圧入された一対の絡げピンに巻きつけられ、それぞれ溶接等によって各バネ片に接続される。このように、バネ片は、コイルを通電させるための導通路としても機能する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−286532号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記したようなレンズ駆動装置においては、溶接等によってコイルの両端部と板バネとを接続するため、絡げピンとして耐熱性の高いものを使用しなければならなかった。また、絡げピンとして金属製のピンを用いた場合には、溶接時に絡げピンに伝わる熱によって、樹脂製のレンズ保持部材から絡げピンが抜け落ちるおそれがあった。
【0006】
本発明はこのような実情に鑑みてなされたものであり、少量の加熱で板バネとコイルとを接続して熱によるレンズ保持部材の破損を防止することができるレンズ駆動装置及びレンズ駆動装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のレンズ駆動装置は、レンズ体が保持されるレンズ保持部材と、前記レンズ保持部材の周囲に取り付けられたコイルと、前記コイルに作用する磁気回路を形成し、前記レンズ保持部材を光軸方向に移動させる移動機構と、前記光軸方向において前記レンズ保持部材を支持する付勢部材とを備え、前記レンズ保持部材には、前記コイルの端部が巻きつけられる絡げピンが設けられ、前記絡げピンに巻き付けられたコイルの端部は、前記付勢部材に電気的に接合され、前記付勢部材には、前記コイルの端部との接合部分近傍に切欠部が形成されたことを特徴とする。
【0008】
本発明のレンズ駆動装置の製造方法は、レンズ体が保持されるレンズ保持部材の周囲にコイルを取り付け、前記コイルに磁気回路が作用して前記レンズ保持部材が光軸方向に移動するように移動機構を設け、前記光軸方向において付勢部材によって前記レンズ保持部材を支持させたレンズ駆動装置の製造方法であって、前記レンズ保持部材に設けた絡げピンに前記コイルの端部を巻き付ける工程と、前記付勢部材に形成された切欠部の近傍において、前記絡げピンに巻き付けられた前記コイルの端部を前記付勢部材に電気的に接合する工程とを有することを特徴とする。
【0009】
これらの構成によれば、付勢部材に形成された切欠部によって、付勢部材とコイル端部との接合時の熱の逃げが抑制され、少量の加熱で付勢部材とコイル端部とを接合することができる。これにより、絡げピンに伝わる熱を抑えることができるため、熱による絡げピンの破損を防止でき、絡げピンを耐熱性材料で形成する必要がない。また、絡げピンを樹脂製のレンズ保持部材と別体に形成した場合には、絡げピンがレンズ保持部材から抜け落ちることを防止することもできる。なお、切欠部とは、付勢部材を切り欠いて形成した開口部を含むものである。
【0010】
また本発明は、上記レンズ駆動装置において、前記絡げピンに巻き付けられたコイルの端部は、溶融接合材を介して前記付勢部材に接合される。また、本発明は、上記レンズ駆動装置の製造方法において、前記コイルの端部を前記付勢部材に電気的に接合する工程において、溶融接合材を介して接合する。これらの構成によれば、少量の加熱で溶融接合材を溶かして付勢部材とコイル端部とを接合することができる。
【0011】
また本発明は、上記レンズ駆動装置において、前記絡げピンが、前記レンズ保持部材と同一材料で一体に形成されている。この構成によれば、絡げピンに伝わる熱が抑えられるため、レンズ保持部材と絡げピンとを同一材料で一体に形成しても、熱によって絡げピンが破損することがない。また、部品点数を減らしてコストを低減できる。
【0012】
また本発明は、上記レンズ駆動装置において、前記コイルの端部の表面を覆う絶縁被膜が剥がれている。また、本発明は、上記レンズ駆動装置の製造方法において、前記コイルの端部を前記絡げピンに巻き付ける前に、前記コイルの端部の表面を覆う絶縁被膜を剥がす工程を有している。これらの構成によれば、付勢部材とコイルの端部との溶融接合材を介した接合を良好に行うことができる。
【0013】
また本発明は、上記レンズ駆動装置において、前記付勢部材は、前記レンズ保持部材に固定されている。また、本発明は、上記レンズ駆動装置の製造方法において、前記コイルの端部を前記付勢部材に接合する前に、前記付勢部材を前記レンズ保持部材に固定する工程を有している。これらの構成によれば、付勢部材とレンズ保持部材とが固定されるため、付勢部材とコイルの端部との溶融接合材を介した接合を良好に行うことができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、少量の加熱で板バネとコイルとを接続して熱によるレンズ保持部材の破損を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係るレンズ駆動装置の実施の全体斜視図である。
【図2】本実施の形態に係るレンズ駆動装置の分解斜視図である。
【図3】本実施の形態に係るコイルと下板バネとの接合部分の説明図である。
【図4】本実施の形態に係るコイルと下板バネとの接合部分の部分拡大図である。
【図5】本実施の形態に係るレンズ駆動装置の組み立て作業の前半の説明図である。
【図6】本実施の形態に係るレンズ駆動装置の組み立て作業の後半の説明図である。
【図7】本実施の形態に係るレンズ駆動装置の動作説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。なお、以下のレンズ駆動装置は一例であり、これに限定されるものではない。レンズ駆動装置において、板バネとコイルの端部とを電気的に接続するものであれば、本発明を適用可能である。
【0017】
図1は、本実施の形態に係るレンズ駆動装置の全体斜視図である。図2は、本実施の形態に係るレンズ駆動装置の分解斜視図である。
【0018】
図1及び図2に示すように、レンズ駆動装置1は、イメージセンサ(不図示)を実装した基板上に取り付けられており、イメージセンサに対してレンズ体(不図示)を光軸方向に駆動させて焦点距離を調整するものである。レンズ駆動装置1においては、外部端子3が取り付けられたロアケース2上に、下板バネ4(付勢部材)を介してレンズ保持部材5が取り付けられている。レンズ保持部材5の周囲には、コイル59が巻回されており、このコイル59を覆うように磁石6付きのヨーク7(移動機構)がロアケース2に固定される。ヨーク7の上面には、上板バネ8を介してトップカバー9が取り付けられる。
【0019】
ロアケース2は、合成樹脂によって下面を開口した薄厚の箱状に形成されている。ロアケース2の上壁部の中央には、矩形状の開口部21が形成されており、この開口部21を介して基板上のイメージセンサを上方に露出させている。矩形状の開口部21の周囲には、ロアケース2の中央側への異物の進入を防止する環状凸部22が形成されている。ロアケース2の上壁部の4隅には、下板バネ4の位置決め用の位置決め凸部23と、下板バネ4の固定用の突起部24とが形成されている。位置決め凸部23及び突起部24により、ロアケース2上において下板バネ4が前後左右に位置決めされた状態で取り付けられる。
【0020】
また、ロアケース2には、導電性の金属プレート25がインサート成形されている。金属プレート25は、ロアケース2から部分的に露出されており、ヨーク7が電気的に接続される。ロアケース2の隣接する2隅周辺には、一対の外部端子3を取り付ける一対の取付孔26及び突起部27が形成されている。一対の外部端子3は、導電性の金属板の一部を折り曲げて形成されている。外部端子3は、折り曲げられた側板部を取付孔26に挿入し、平板部に形成された挿通孔31から突起部27を突出させた状態で、突起部27の熱カシメによりロアケース2に固定される。
【0021】
下板バネ4は、導電性のリン青銅等によって形成され、一対のバネ片41により構成されている。一対のバネ片41は、ロアケース2の環状凸部22に沿うように中央に開口を形成するように配置されている。各バネ片41は、径方向外側に位置する外側板部42と、径方向内側に位置する内側板部43と、外側板部42及び内側板部43を接続する蛇行形状のバネ板部44とを有している。外側板部42には、ロアケース2の突起部24に対応して挿通孔46が形成され、内側板部43には、レンズ保持部材5の突起部56(図3参照)に対応して挿通孔45が形成されている。
【0022】
外側板部42は、挿通孔46からロアケース2の突起部24を突出させて、突起部24の熱カシメによりロアケース2に固定される。内側板部43は挿通孔45からレンズ保持部材5の突起部56を突出させて、突起部56の熱カシメによりレンズ保持部材5に固定される。このように、ロアケース2とレンズ保持部材5は、下板バネ4を介して連結される。また、各バネ片41のバネ板部44は、レンズ保持部材5に対してロアケース2側に向けて付勢力を作用させている。また、一対のバネ片41は、それぞれ一対の外部端子3に電気的に接合されると共に、コイル59の端部に電気的に接合されている。
【0023】
レンズ保持部材5は、合成樹脂により形成され、内周面に雌ねじ部51が形成された筒状部52と、筒状部52の下端部から径方向外側に突出したフランジ部53とを有している。筒状部52の内側には、外周面に雄ねじ部が形成されたレンズユニット(不図示)が装着される。筒状部52の外周面には、コイル59を内側から支持する4つのコイル支持部54が突出して形成されている。筒状部52に設けたコイル支持部54に、導線が巻回されることで八角形の筒状のコイル59が形成される。この場合、コイル59と筒状部52との間には、後述するヨーク7の内壁部74が介在する隙間が形成されている。
【0024】
フランジ部53には、ヨーク7の内壁部74に対応して切り欠かれた逃げ部55が形成されている。この逃げ部55により、レンズ保持部材5の上方への移動時に、ヨーク7の内壁部74の下端部とフランジ部53との干渉が防止される。レンズ保持部材5の下部には、下板バネ4の固定用の複数の突起部56と、コイル59の両端部が巻きつけられる一対の絡げピン57とが形成されている(図3参照)。コイル59の一端部は、一方の絡げピン57に巻き付けられた状態で一方のバネ片41に接合され、コイル59の他端部は、他方の絡げピン57に巻き付けられた状態で他方のバネ片41に接合されている。また、レンズ保持部材5の下部には、ロアケース2に当接される4つの脚部58が形成されている。
【0025】
ヨーク7は、下面を開口した箱型であり、上壁部71にレンズ保持部材5の筒状部52を露出する窓部72が形成されている。また、ヨーク7には、上面視矩形状の外周壁部73の四隅に対して間隔を空けて対向する4つの内壁部74が形成されている。各内壁部74は、コイル59と筒状部52との隙間に挿通される。外周壁部73の内周面の四隅には、それぞれ磁石6(移動機構)が取り付けられている。磁石6は、ヨーク7の角部に合わせて上面視台形状に形成され、内壁部74の壁面に対して平行な磁極面を有している。ヨーク7の四隅においては、磁石6と内壁部74との間にコイル59が配置される。
【0026】
そして、ヨーク7と磁石6とにより磁気回路が形成され、コイル59が通電されることにより、レンズ保持部材5が光軸方向に駆動される。また、ヨーク7の下部は、ロアケース2の金属プレート25に接合される縁部75が形成されている。ヨーク7の上壁部71の四隅には、トップカバー9の取付用の挿通孔76が形成されている。
【0027】
上板バネ8は、リン青銅等によって形成され、ヨーク7の窓部72よりも小径な開口部81を有している。上板バネ8は、径方向外側に位置する外側板部82と、径方向内側に位置する内側板部83と、外側板部82及び内側板部83を接続するバネ板部84とを有している。外側板部82には、ヨーク7の挿通孔76に対応して切欠部85が形成されている。また、内側板部83は、筒状部52の上端面に接着剤により固定される。上板バネ8のバネ板部84は、レンズ保持部材5に対してロアケース2側に向けて付勢力を作用させている。
【0028】
トップカバー9は、合成樹脂により矩形枠状に形成されている。トップカバー9の四隅には、下面から突出する上板バネ8の固定用の突起部91が形成されている。トップカバー9は、上板バネ8の切欠部85及びヨーク7の挿通孔76に突起部91を挿通させた状態で、突起部91の熱カシメにより、上板バネ8及びヨーク7と一体化される。なお、レンズ駆動装置1の組み立て作業の詳細については後述する。
【0029】
ここで、図3及び図4を参照して、コイルと下板バネとの接合部分について詳細に説明する。図3は、本実施の形態に係るコイルと下板バネとの接合部分の説明図である。図4は、図3の拡大図である。なお、図3及び図4は、レンズ保持部材の下面を上方から見た図である。
【0030】
図3及び図4に示すように、一対のバネ片41の内側板部43は、半円状に延在しており、延在方向の3箇所においてレンズ保持部材5の下面に固定されている。内側板部43は、延在方向の両端位置及び中間位置の固定板部61a−61cにおいて熱カシメされている。中間位置の固定板部61bは、レンズ保持部材5の下面から突出した絡げピン57及び脚部58を避けるように切り欠かれている。この中間位置の固定板部61bには、絡げピン57に沿って、コイル59の端部に接合される接合部62が形成されている。接合部62は、絡げピン57の周囲の略半部を囲うように形成されている。
【0031】
また、中間位置の固定板部61bには切欠部63が形成されている。この切欠部63によって、中間位置の固定板部61bがコイル59に接合される接合部62側とレンズ保持部材5に固定される固定部64側とに分けられている。固定板部61bの接合部62側と固定部64側とは、切欠部63によって狭められた連結部分によって連結されている。また、接合部62は、片端側に位置する固定板部61aに対して円弧状の細長い連結部分によって連結されている。このように、バネ片41は、連結部分を狭めることによって、半田付けによって接合部62における熱の逃げを抑制するように形成されている。
【0032】
一対の絡げピン57には、それぞれコイル59の端部がそれぞれ巻回されている。この場合、一対の絡げピン57に巻回されたコイル59の端部は、表面を覆う絶縁被膜が剥がされている。そして、コイル59の端部の絶縁被膜が剥がされ、バネ片41がレンズ保持部材5に熱カシメにて固定された後に、バネ片41がコイル59の端部に半田付けされる。このため、コイル59の端部と半田ペースト65との密着性が高められ、バネ片41がレンズ保持部材5に対して安定姿勢で保持されることから、バネ片41の接合部62とコイル59の端部とを半田付けにより良好に接合できる。
【0033】
バネ片41の接合部62とコイル59の端部との半田付け時には、上記したように切欠部63によって接合部62における熱の逃げが抑制される。したがって、半田ペースト65に対する少量の加熱により、半田ペースト65を溶融させることができる。このため、絡げピン57を損傷させない程度の温度に抑えて、バネ片41の接合部62とコイル59の端部との半田付けを行うことができる。また、絡げピン57の損傷が防止されるため、絡げピン57(レンズ保持部材5)を耐熱性材料で形成する必要がない。
【0034】
ところで、接合部62の内縁部とコイル59の素面との間には僅かな隙間Lが形成されている。この隙間Lは、自動機によってバネ片41をレンズ保持部材5に設置する際に必要となっている。一般に、コイルと接合部との間に隙間が形成されると、半田ペーストが広がり易くなり、接合部とコイルの端部とを十分に接合できないおそれがある。具体的には、半田ペーストに含まれるフラックスによって、半田ペーストがコイルの素面から離れ易くなり、接合部とコイルとの間に良好な半田ブリッジを形成することが困難となっていた。
【0035】
しかしながら、本実施の形態に係るバネ片41では、切欠部63によって接合部62と固定部64との連結部分が幅狭に形成されており、接合部62側から固定部64側への半田ペースト65の広がりが抑制されている。このため、半田ペースト65が絡げピン57の周囲に留まって接合部62とコイル59との密着性が維持され、接合部62とコイル59との間に良好な半田ブリッジが形成される。このように、本実施の形態に係るレンズ駆動装置1では、絡げピン57が損傷することを防止すると共に、バネ片41とコイル59の端部とを良好に半田付けすることが可能となっている。
【0036】
なお、本実施の形態では、自動機によってバネ片41をレンズ保持部材5に設置する構成としたが、この構成に限定されない。手動によってバネ片41をレンズ保持部材5に設定する構成としてもよい。この場合には、接合部62の内縁部とコイル59の素面との間に隙間が形成されないように設置されることが好ましい。
【0037】
次に、図5を参照して、レンズ駆動装置の組み立て作業について説明する。図5は、本実施の形態に係るレンズ駆動装置の組み立て作業の前半の説明図である。図6は、本実施の形態に係るレンズ駆動装置の組み立て作業の後半の説明図である。なお、以下の組み立て作業は、自動機によって自動で実施可能な作業である。
【0038】
図5Aに示すように、接着剤によってヨーク7の四隅の角部にそれぞれ磁石6が固定される。このとき、磁石6の磁極面は、ヨーク7の内壁部74の壁面に対して所定の間隔を空けて対向される(図7参照)。次に、図5Bに示すように、ヨーク7の上面に上板バネ8が載置され、上方からトップカバー9が取り付けられる。このとき、トップカバー9の四隅の突起部91が、それぞれ上板バネ8の四隅の切欠部85及びヨーク7の四隅の挿通孔76に挿通される。そして、トップカバー9の各突起部91が熱カシメされることで、トップカバー9、上板バネ8及びヨーク7が一体化される。
【0039】
一方、図5Cに示すように、レンズ保持部材5の外周には、コイル59が巻きつけられる。このとき、レンズ保持部材5には、フランジ部53に形成された逃げ部55を介して巻き付け用の治具95が取り付けられており、この治具95によってコイル59の巻きダレが防止される。また、コイル59の両端部は、レーザ等により絶縁被膜が除去された後に、一対の絡げピン57に巻き付けられる。次に、図5Dに示すように、レンズ保持部材5の下部に一対のバネ片41が取り付けられる。このとき、レンズ保持部材5の突起部56が、それぞれ一対のバネ片41の挿通孔45に挿通される。そして、レンズ保持部材5の突起部56が熱カシメされることで、レンズ保持部材5と一対のバネ片41とが一体化される。
【0040】
また、絡げピン57に巻回されたコイル59の端部と一対のバネ片41の接合部62とがレーザ半田付けされる。このとき、接合部62近傍の切欠部63によって、接合部62における熱の逃げが抑えられ、少量の加熱で半田ペースト65が溶融される。また、接合部62近傍の切欠部63によって、半田ペースト65の拡散が抑えられ、コイル59と接合部62との間に良好な半田ブリッジが形成される。これにより、一対のバネ片41とコイル59の両端部とが電気的に接続される。
【0041】
また、図6Aに示すように、ロアケース2には、一対の外部端子3が取り付けられる。このとき、外部端子3は、側板部をロアケース2の取付孔26に挿通させると共に、挿通孔31からロアケース2の突起部27を突出させる。そして、ロアケース2の突起部27が熱カシメされることで、ロアケース2と一対の外部端子3とが一体化される。
【0042】
このようにして、組み立てられたロアケース2上には、図6Bに示すように、コイル59付きのレンズ保持部材5が載置され、一対のバネ片41を介してロアケース2とレンズ保持部材5が取り付けられる。このとき、一対のバネ片41の挿通孔46に、ロアケース2の突起部24が挿通され、突起部24が熱カシメされることで、ロアケース2とレンズ保持部材5とが一体化される。また、一対のバネ片41は、それぞれ外部端子3にレーザ溶接により接合される。これにより、一対の外部端子3とコイル59の両端部とが、一対のバネ片41を介してコイル59の両端部に電気的に接続される。
【0043】
ロアケース2とレンズ保持部材5とが一体化されると、図6Cに示すように、トップカバー9付きのヨーク7が上方から被せられる。このとき、ヨーク7の内壁部74が、レンズ保持部材5のコイル59と筒状部52との隙間に挿通される。これにより、ヨーク7の四隅において、磁石6と内壁部74との間にコイル59が介在されて磁気回路が形成される。また、ヨーク7の縁部75が、ロアケース2の金属プレート25上に載置され、レーザ溶接により金属プレート25に接合される。
【0044】
そして、図6Dに示すように、筒状部52の上端面と上板バネ8の内側板部83とに対して、ヨーク7の窓部72を介して接着剤が塗布される。これにより、ヨーク7及びトップカバー9とレンズ保持部材5とが、上板バネ8を介して連結される。このようにして、組み立てられたレンズ駆動装置1は、レンズ保持部材5の上下に設けられた板バネ4、8により、ロアケース2側に向けて付勢されている。そして、レンズ駆動装置1は、レンズ保持部材5の巻き付けられたコイル59が通電されることで、板バネ4、8の付勢力に抗してレンズ保持部材5が光軸方向に移動される。
【0045】
以下、図7を参照して、レンズ駆動装置の動作について説明する。図7は、本実施の形態に係るレンズ駆動装置の動作説明図である。
【0046】
図7に示すように、ヨーク7の外周壁部73の四隅に磁石6が固定され、磁石6の磁極面に対向して内壁部74が位置されており、レンズ駆動装置1の四隅に磁気回路が形成される。磁石6と内壁部74との間には、レンズ保持部材5に巻き付けられたコイル59が介在されている。磁気回路は、磁石6の磁極面に発生した磁束線がコイル59を通過して内壁部74に向うように形成されている。レンズ保持部材5は、上板バネ8及び下板バネ4により、ロアケース2側にプリテンションが作用されている。
【0047】
この初期状態で、コイル59が通電されると、コイル59に対して光軸方向に電磁力が発生する。このコイル59に発生した電磁力により、レンズ保持部材5が、上板バネ8及び下板バネ4の付勢力に抗して光軸方向に移動し、不図示のレンズ体とイメージセンサとの焦点距離が調整される。この場合、ヨーク7の内壁部74と磁石6の磁極面とが平行であるため、コイル59を通過する磁束線の量が多く、磁気回路をレンズ駆動装置1の四隅にしか形成していなくても十分な駆動力を発生させることが可能となる。そして、コイル59に対する通電が停止されると、上板バネ8及び下板バネ4の復帰力により、レンズ保持部材5が初期位置に引き戻される。
【0048】
以上のように、本実施の形態に係るレンズ駆動装置1によれば、バネ片41に形成された切欠部63によって、バネ片41とコイル59の端部との溶融接合時の熱の逃げが抑制され、少量の加熱で溶融接合材を溶かしてバネ片41とコイル59の端部とを接合することができる。これにより、絡げピン57に伝わる熱を抑えることができるため、熱による絡げピン57の破損を防止でき、絡げピン57を耐熱性材料で形成する必要がない。
【0049】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されず、種々変更して実施することが可能である。上記実施の形態において、添付図面に図示されている大きさや形状などについては、これに限定されず、本発明の効果を発揮する範囲内で適宜変更することが可能である。その他、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施することが可能である。
【0050】
例えば、本実施の形態において、絡げピンがレンズ保持部材と同一材料で一体に形成される構成としたが、この構成に限定されない。絡げピンは、レンズ保持部材と別材料により形成されて、レンズ保持部材に設けられてもよい。例えば、絡げピンを金属で形成して、合成樹脂製のレンズ保持部材に圧入してもよい。この場合であっても、絡げピンに伝わる熱が抑えられるため、絡げピンがレンズ保持部材から抜け落ちることを防止できる。
【0051】
また、本実施の形態において、バネ片を内縁側から切り欠いてバネ片とコイル端部との溶融接合時の熱の逃げを抑制する構成としたが、この構成に限定されるものではない。切欠部は、溶融接合時の熱の逃げを抑制するように形成されていればよく、例えばバネ片を切り欠いて形成した開口部であってもよい。また、バネ片には、複数の切欠部が形成されてもよい。
【0052】
また、本実施の形態において、付勢部材として一対のバネ片にコイルの端部を接合する構成としたが、この構成に限定されない。付勢部材は、レンズ保持部材を支持するものであれば、どのようなものでもよい。
【0053】
また、本実施の形態において、移動機構として磁石とヨークにより磁気回路を形成したが、この構成に限定されない。移動機構は、磁気回路を形成する構成であれば、どのような構成でもよい。
【0054】
また、本実施の形態において、溶融接合材として半田ペーストを例示して説明したが、この構成に限定されない。溶融接合材は、コイルの端部と付勢部材とを溶融接合可能な材料であれば、どのような材料でもよい。
【0055】
また、本実施の形態において、自動機によりレンズ駆動装置を組み立てる構成としたが、この構成に限定されない。手動によりレンズ駆動装置を組み立てる構成としてもよいし、自動機と手動とを組み合わせてレンズ駆動装置を組み立てる構成としてもよい。
【0056】
また、本実施の形態において、上記した組み立て順序に限定されるものではない。例えば、絡げピンにコイルの端部を巻き付けた後に、コイルの端部の絶縁被膜を剥がしてもよい。また、本付勢部材をレンズ保持部材に固定する前に、コイルの端部を付勢部材に接合してもよい。
【0057】
また、本実施の形態において、熱カシメによりバネ片がレンズ保持部材に固定されたが、この構成に限定されない。付勢部材をレンズ保持部材に安定姿勢で固定可能であれば、どのような方法で固定してもよい。
【0058】
また、本実施の形態において、レーザ半田付けによりバネ片とコイルの端部とが接合されたが、この構成に限定されない。付勢部材とコイルの端部との接合時におけるレンズ駆動装置の破損を防止可能な接合方法であれば、付勢部材とコイルの端部とがどのように接合されてもよい。例えば、半田ペース等の溶融接合材を用いずに、レーザ溶接により付勢部材とコイルの端部とを接合してもよい。
【符号の説明】
【0059】
1 レンズ駆動装置
2 ロアケース
3 外部端子
4 下板バネ(付勢部材)
5 レンズ保持部材
6 磁石(移動機構)
7 ヨーク(移動機構)
8 上板バネ
9 トップカバー
41 バネ片(付勢部材)
42 外側板部
43 内側板部
44 バネ板部
45 挿通孔
53 フランジ部
56 突起部
57 絡げピン
59 コイル
62 接合部
63 切欠部
65 半田ペースト(溶融接合材)
73 外周壁部
74 内壁部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レンズ体が保持されるレンズ保持部材と、
前記レンズ保持部材の周囲に取り付けられたコイルと、
前記コイルに作用する磁気回路を形成し、前記レンズ保持部材を光軸方向に移動させる移動機構と、
前記光軸方向において前記レンズ保持部材を支持する付勢部材とを備え、
前記レンズ保持部材には、前記コイルの端部が巻きつけられる絡げピンが設けられ、
前記絡げピンに巻き付けられたコイルの端部は、前記付勢部材に電気的に接合され、
前記付勢部材には、前記コイルの端部との接合部分近傍に切欠部が形成されたことを特徴とするレンズ駆動装置。
【請求項2】
前記絡げピンに巻き付けられたコイルの端部は、溶融接合材を介して前記付勢部材に接合されることを特徴とする請求項1に記載のレンズ駆動装置。
【請求項3】
前記絡げピンが、前記レンズ保持部材と同一材料で一体に形成されたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のレンズ駆動装置。
【請求項4】
前記コイルの端部の表面を覆う絶縁被膜が剥がれていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載のレンズ駆動装置。
【請求項5】
前記付勢部材は、前記レンズ保持部材に固定されていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載のレンズ駆動装置。
【請求項6】
レンズ体が保持されるレンズ保持部材の周囲にコイルを取り付け、前記コイルに磁気回路が作用して前記レンズ保持部材が光軸方向に移動するように移動機構を設け、前記光軸方向において付勢部材によって前記レンズ保持部材を支持させたレンズ駆動装置の製造方法であって、
前記レンズ保持部材に設けた絡げピンに前記コイルの端部を巻き付ける工程と、
前記付勢部材に形成された切欠部の近傍において、前記絡げピンに巻き付けられた前記コイルの端部を前記付勢部材に電気的に接合する工程とを有することを特徴とするレンズ駆動装置の製造方法。
【請求項7】
前記コイルの端部を前記付勢部材に電気的に接合する工程において、溶融接合材を介して接合することを特徴とする請求項6に記載のレンズ駆動装置の製造方法。
【請求項8】
前記コイルの端部を前記絡げピンに巻き付ける前に、前記コイルの端部の表面を覆う絶縁被膜を剥がす工程を有することを特徴とする請求項6又は請求項7に記載のレンズ駆動装置の製造方法。
【請求項9】
前記コイルの端部を前記付勢部材に接合する前に、前記付勢部材を前記レンズ保持部材に固定する工程を有することを特徴とする請求項6から請求項8のいずれかに記載のレンズ駆動装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−242647(P2012−242647A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−113375(P2011−113375)
【出願日】平成23年5月20日(2011.5.20)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】