説明

レンズ駆動装置及びレンズ駆動装置の製造方法

【課題】レーザ溶接により外部端子に対して板バネを確実に接合すること。
【解決手段】レンズ体が保持されるレンズ保持部材(5)と、光軸方向においてレンズ保持部材(5)を支持する板バネ(4)と、板バネ(4)を固定すると共に、外部端子(31)を設けたロアケース(2)とを備え、板バネ(4)には、外部端子(31)に向って延在する接合片が形成されており、接合片の基端側には、ロアケース(2)に固定される固定位置P1が設けられ、接合片の先端側には、外部端子(31)に接合される接合位置P2を挟んで固定位置P1の対向側に、ロアケース(2)側に押圧される押圧位置P3が設けられる

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カメラ付きの携帯電話等に搭載される小型のレンズ駆動装置及びレンズ駆動装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、小型のレンズ駆動装置として、レンズが保持されたレンズ保持部材を光軸方向に磁気駆動するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載のレンズ駆動装置では、外周面にコイルを巻回したレンズ保持部材をベース部材に載置し、上方からヨークを被せることで構成される。ヨークの各側壁部の内側面には、それぞれ磁石が固定されており、レンズ保持部材に保持されたコイルの周囲に磁石が位置付けられている。そして、レンズ駆動装置は、ヨークと磁石とによって磁気回路を形成し、コイルの通電によって生じる電磁力によりレンズ保持部材を光軸方向に移動させている。
【0003】
また、ベース部材とレンズ保持部材との間には、レンズ保持部材を復帰させる板バネが配置されている。板バネは、一対のバネ片に分割されており、一方のバネ片にコイルの巻き始めの一端部が接続され、他方のバネ片にコイルの巻き終わりの他端部が接続されている。また、各バネ片は、それぞれベース部材に固定された外部端子に溶接される。このように、バネ片は、コイルと外部端子とを接続することで、コイルを通電させるための給電部材としても機能する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−061031号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このように構成されたレンズ駆動装置では、外部端子に対する板バネの溶接時に板バネが外部端子の設置面から浮く場合があり、板バネを外部端子に対して確実に接合することが困難となっていた。
【0006】
本発明はこのような実情に鑑みてなされたものであり、外部端子に対して板バネを確実に接合することができるレンズ駆動装置及びレンズ駆動装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のレンズ駆動装置は、レンズ体が保持されるレンズ保持部材と、光軸方向において前記レンズ保持部材を支持する板バネと、前記板バネを固定すると共に、前記板バネと電気的導通を図る外部端子を設けたベース部材とを備え、前記板バネには、前記外部端子に向って延在する接合片が形成されており、前記接合片の基端側には、前記ベース部材に固定される固定位置が設けられ、前記接合片の先端側には、前記外部端子に接合される接合位置を挟んで前記固定位置の対向側に、前記ベース部材側に押圧される押圧位置が設けられることを特徴とする。
【0008】
本発明のレンズ駆動装置の製造方法は、レンズ体が保持されるレンズ保持部材を板バネにより光軸方向に支持させ、外部端子をベース部材に設けたレンズ駆動装置の製造方法であって、前記外部端子に向って延在するように前記板バネに形成された接合片の基端側に固定位置を設け、前記固定位置を前記ベース部材に固定する工程と、前記接合片の先端側において、前記外部端子に接合される接合位置を挟んで前記固定位置の対向側に押圧位置を設け、前記押圧位置を前記ベース部材側に押圧すると共に、前記接合位置を前記外部端子に接合する工程とを有することを特徴とする。
【0009】
これらの構成によれば、接合片における基端側に設けた固定位置と先端側に設けた押圧位置との間に接合位置が設けられるため、外部端子に対する接合片の接合位置の浮きを防止できる。よって、接合片を外部端子に対して密着させることができ、板バネと外部端子とを確実に接合することができる。
【0010】
また本発明は、上記レンズ駆動装置において、前記接合片の先端側には、開口部が形成されており、前記接合片には、前記開口部において対向する内縁部のうち、基端側の内縁部に前記接合位置が設けられ、先端側の内縁部に沿う領域に前記押圧位置が設けられることを特徴とする。また本発明は、上記レンズ駆動装置の製造方法において、前記接合位置を前記外部端子に接合する工程は、前記接合片の先端側に形成された開口部を挟んで対向する内縁部のうち、先端側の内縁部に沿う領域に前記押圧位置を設けると共に、基端側の内縁部に前記接合位置を設ける。これらの構成によれば、開口部を挟んで先端側の内縁部に沿う領域の1ヶ所を押圧することで、外部端子に対する接合片の接合位置の浮きを防止できる。よって、接合片の先端側を切り欠いて二股に形成する場合のように、接合片の先端側の2ヶ所を押圧する必要がない。
【0011】
また本発明は、上記レンズ駆動装置において、前記接合片の前記固定位置は、熱カシメにより前記ベース部材に固定される。また本発明は、上記レンズ駆動装置の製造方法において、前記固定位置を前記ベース部材に固定する工程は、前記固定位置を熱カシメにより前記ベース部材に固定する。これらの構成によれば、接合片の固定位置をベース部材に対して強く固定することができる。
【0012】
また本発明は、上記レンズ駆動装置において、前記接合片の前記押圧位置は、治具により前記ベース部材に押し当てられる。また本発明は、上記レンズ駆動装置の製造方法において、前記接合位置を前記外部端子に接合する工程は、前記押圧位置を治具により前記ベース部材に押し当てる。これらの構成によれば、治具を用いて接合片の押圧位置をベース部材に押し当てることにより、レンズ駆動装置の製造の自動化を図ることができる。
【0013】
また本発明は、上記レンズ駆動装置において、前記接合片の前記接合位置は、レーザ溶接により前記外部端子に接合される。また本発明は、上記レンズ駆動装置の製造方法において、前記接合位置を前記外部端子に接合する工程は、前記接合位置をレーザ溶接により前記外部端子に接合する。これらの構成によれば、半田ボール等の異物を発生させることなく、接合片を外部端子に接合することができる。よって、レンズ駆動装置内への異物の侵入を抑制することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、板バネに設けた接合片の外部端子に対する浮きを防止して、外部端子に対して板バネを確実に接合することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係るレンズ駆動装置の実施の全体斜視図である。
【図2】本実施の形態に係るレンズ駆動装置の分解斜視図である。
【図3】本実施の形態に係るロアケース及びバネ片の上面模式図である。
【図4】本実施の形態に係る下板バネと外部端子との接合方法の説明図である。
【図5】本実施の形態に係るレンズ駆動装置の組み立て作業の前半の説明図である。
【図6】本実施の形態に係るレンズ駆動装置の組み立て作業の後半の説明図である。
【図7】本実施の形態に係るレンズ駆動装置の動作説明図である。
【図8】本実施の形態に係る固定片の変形例である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。なお、以下のレンズ駆動装置は一例であり、これに限定されるものではない。レンズ駆動装置において、板バネと外部端子とを電気的導通を図るものであれば、本発明を適用可能である。
【0017】
図1は、本実施の形態に係るレンズ駆動装置の全体斜視図である。図2は、本実施の形態に係るレンズ駆動装置の分解斜視図である。
【0018】
図1及び図2に示すように、レンズ駆動装置1は、イメージセンサ(不図示)を実装した基板上に取り付けられており、イメージセンサに対してレンズ体(不図示)を光軸方向に駆動させて焦点距離を調整するものである。レンズ駆動装置1においては、外部端子31が埋設されたロアケース2(ベース部材)上に、下板バネ4(板バネ)を介してレンズ保持部材5が取り付けられている。レンズ保持部材5の周囲には、コイル59が巻回されており、このコイル59を覆うように磁石6付きのヨーク7がロアケース2に固定される。ヨーク7の上面には、上板バネ8を介してトップカバー9が取り付けられる。
【0019】
ロアケース2は、合成樹脂によって上面視において略矩形枠状に形成されている。ロアケース2の中央には、円形の開口部21が形成されており、この開口部21を介して基板上のイメージセンサを上方に露出させている。ロアケース2の4隅には、下板バネ4の固定用の突起部24が形成されている。突起部24により、ロアケース2上において下板バネ4が前後左右に位置決めされた状態で取り付けられる。
【0020】
また、ロアケース2には、導電性の金属プレート25がインサート成形されている。金属プレート25は、ロアケース2の4隅において露出され、ヨーク7の4隅に電気的に接続される。また、ロアケース2の隣接する2隅近傍には、一対の外部端子31がインサート成形されている。一対の外部端子31は、導電性の金属板を折り曲げて形成され、上板部32がロアケース2の上面から露出され、側板部33がロアケース2の下面から突出されている。ロアケース2から露出した一対の外部端子31の上板部32は、下板バネ4に電気的に接続される。なお、金属プレート25と外部端子31とは電気的に接続されていない。
【0021】
下板バネ4は、導電性のリン青銅等によって形成され、一対のバネ片41により構成されている。一対のバネ片41は、ロアケース2の開口部21に沿うように中央に開口を形成するように配置される。各バネ片41は、径方向外側に位置する外側板部42と、径方向内側に位置する内側板部43と、外側板部42及び内側板部43を接続する蛇行形状のバネ板部44とを有している。外側板部42には、ロアケース2の突起部24に対応して挿通孔46が形成され、内側板部43には、レンズ保持部材5の突起部56(図5D参照)に対応して挿通孔45が形成されている。
【0022】
外側板部42は、挿通孔46からロアケース2の突起部24を突出させて、突起部24の熱カシメによりロアケース2に固定される。内側板部43は挿通孔45からレンズ保持部材5の突起部56を突出させて、突起部56の熱カシメによりレンズ保持部材5に固定される。このように、ロアケース2とレンズ保持部材5は、下板バネ4を介して連結される。また、各バネ片41のバネ板部44は、レンズ保持部材5に対してロアケース2側に向けて付勢力を作用させている。また、一対のバネ片41は、それぞれ一対の外部端子31に電気的に接合されると共に、コイル59の端部に電気的に接合されている。
【0023】
レンズ保持部材5は、合成樹脂により形成され、内周面に雌ねじ部51が形成された筒状部52と、筒状部52の下端部から径方向外側に突出したフランジ部53とを有している。筒状部52の内側には、外周面に雄ねじ部が形成されたレンズユニット(不図示)が装着される。筒状部52の外周面には、コイル59を内側から支持する4つのコイル支持部54が突出して形成されている。筒状部52に設けたコイル支持部54に、導線が巻回されることで筒状のコイル59が形成される。この場合、コイル59と筒状部52との間には、後述するヨーク7の内壁部74が介在する隙間が形成されている。
【0024】
レンズ保持部材5の下部には、下板バネ4の固定用の複数の突起部56と、コイル59の両端部が巻きつけられる一対の絡げピン57とが形成されている(図5D参照)。コイル59の一端部は、一方の絡げピン57に巻き付けられた状態で一方のバネ片41に接合され、コイル59の他端部は、他方の絡げピン57に巻き付けられた状態で他方のバネ片41に接合されている。また、レンズ保持部材5の下部には、ロアケース2に当接される4つの脚部58が形成されている。
【0025】
ヨーク7は、下面を開口した箱型であり、上壁部71にレンズ保持部材5の筒状部52を露出する窓部72が形成されている。また、ヨーク7には、上面視矩形状の外周壁部73の四隅に対して間隔を空けて対向する4つの内壁部74が形成されている。各内壁部74は、コイル59と筒状部52との隙間に挿通される。外周壁部73の内周面の四隅には、それぞれ磁石6が取り付けられている。磁石6は、ヨーク7の角部に合わせて上面視略台形状に形成され、内壁部74の壁面に対して平行な磁極面を有している。ヨーク7の四隅においては、磁石6と内壁部74との間にコイル59が配置される。
【0026】
そして、ヨーク7と磁石6とにより磁気回路が形成され、コイル59が通電されることにより、レンズ保持部材5が光軸方向に駆動される。また、ヨーク7の下部は、ロアケース2の金属プレート25に接合される縁部75が形成されている。ヨーク7の上壁部71の四隅には、トップカバー9の取付用の挿通孔76が形成されている。
【0027】
上板バネ8は、リン青銅等によって形成され、ヨーク7の窓部72よりも小径な開口部81を有している。上板バネ8は、径方向外側に位置する外側板部82と、径方向内側に位置する内側板部83と、外側板部82及び内側板部83を接続する蛇行状のバネ板部84とを有している。外側板部82には、ヨーク7の挿通孔76に対応して挿通孔85が形成されている。また、内側板部83は、筒状部52の上端面に接着剤により固定される。上板バネ8のバネ板部84は、レンズ保持部材5に対してロアケース2側に向けて付勢力を作用させている。
【0028】
トップカバー9は、合成樹脂により矩形枠状に形成されている。トップカバー9の四隅には、下面から突出する上板バネ8の固定用の突起部91が形成されている。トップカバー9は、上板バネ8の挿通孔85及びヨーク7の挿通孔76に突起部91を挿通させた状態で、突起部91の熱カシメにより、上板バネ8及びヨーク7と一体化される。なお、レンズ駆動装置1の組み立て作業の詳細については後述する。
【0029】
ここで、図3及び図4を参照して、バネ片と外部端子との接合方法について説明する。図3は、本実施の形態に係るロアケース及びバネ片の上面模式図である。図4は、本実施の形態に係る下板バネと外部端子との接合方法の説明図である。なお、図4A、Bは本実施の形態に係る板バネと外部端子との接合方法を示し、図4C、Dは比較例に係る板バネと外部端子との接合方法を示す。また、図3及び図4では説明の便宜上、バネ片に固定されたレンズ保持部材については省略している。
【0030】
図3に示すように、一対のバネ片41は、フープ材93(枠体)に連結された状態で供給されており、ロアケース2に固定された後にフープ材93から切り離される。一対のバネ片41の外側板部42は、ロアケース2の外側面に沿って延在する細長の直線部66と、直線部66の両端においてロアケース2に固定される一対の固定片67とを有している。一対の固定片67は、ロアケース2の対角線を横切るように斜めに延在しており、直線部66側の略半部においてロアケース2の突起部24に熱カシメによって固定されている。また、一対の固定片67には、蛇行状のバネ板部44を介して内側板部43に連結されている。
【0031】
また、各固定片67は、ロアケース2の略対角線上に延在する繋ぎ部69を介してフープ材93に連結されている。片側の固定片67の先端側は、開口部68が形成されており、ロアケース2から露出された外部端子31の上板部32上に位置している。この固定片67は、開口部68の内縁部と外部端子31との設置部分がレーザ溶接されることで、外部端子31に電気的に接続される。すなわち、一方の固定片67は、ロアケース2に対する固定位置から外部端子31に向って延在し、外部端子31に接合される接合片となっている。
【0032】
より具体的には図4A、Bに示すように、片側の固定片67は、外部端子31に向って斜めに延在し、基端側から先端側に向って固定位置P1、接合位置P2、押圧位置P3がそれぞれ設けられている。固定位置P1は、直線部66に連なる基端側に位置している。固定位置P1では、熱カシメにより固定片67の基端側がロアケース2に固定される。接合位置P2は、外部端子31の上板部32上において、開口部68の対向する内縁部77、78のうち基端側の内縁部77に位置している。接合位置P3では、レーザ溶接により固定片67の先端側が上板部32に接合される。
【0033】
押圧位置P3は、外部端子31の上板部32上において、開口部68の対向する内縁部77、78のうち先端側の内縁部78に沿う細幅の先端領域79に位置している。押圧位置P3では、金属製の治具95により固定片67の先端領域79が上板部32に押し付けられる。この固定片67は、固定位置P1にてロアケース2に固定された後、押圧位置P3が治具95で押えられた状態で、接合位置P2でレーザ溶接されることで上板部32に接合される。このように、本実施の形態においては、接合位置P2を間に挟んで固定位置P1と押圧位置P3とで上板部32に押し付けられることで、接合位置P2の浮きを抑えた状態で固定片67を外部端子31に接合している。このため、固定片67の先端側が上板部32に密着され、レーザ溶接によって固定片67と外部端子31とが確実に接合される。
【0034】
ところで、半田付けにより接合すれば、固定片67の先端側が浮く場合でも、上板部32に半田ブリッジで接合することが可能である。しかしながら、半田付けにより接合する場合には、半田ペーストの溶け残りが発生したり、半田ボール等の異物が飛散したりするおそれがある。この場合には、異物がレンズ駆動装置内に入り込んで、イメージセンサにおいて異物が映り込むという問題がある。また、半田付けには半田ゴテを使用するため、小型のレンズ駆動装置に対応することができない。
【0035】
本実施の形態では、レーザ溶接によって固定片67と外部端子31とを密着状態で接合することにより、溶接時に異物を発生することなく、小型のレンズ駆動装置に対応することが可能となっている。また、固定片67の先端領域79は、固定片67の幅方向における略中間位置を治具95により押圧可能としている。これにより、先端領域79の長手方向における中間位置の1ヶ所を押圧するだけで、固定片67を上板部32の上面に対して均一に密着させることができる。
【0036】
一方図4C、Dに示すように、比較例に係る固定片101は、先端側に開口部が形成されていない点において本実施の形態に係る固定片67と相違する。固定片101は、外部端子102に向って斜めに延在し、基端側から先端側に向って固定位置P1、押圧位置P3、接合位置P2がそれぞれ設けられている。固定片101の固定位置P1は、直線部103に連なる基端側に位置しており、熱カシメによりロアケース104に固定される。固定片101の押圧位置P3は、固定位置P1と接合位置P2との間に位置しており、金属製の治具105によりロアケース104に押し付けられる。固定片101の接合位置P2は、先端に位置しており、レーザ溶接により上板部106に接合される。
【0037】
この固定片101は、固定位置P1にてロアケース104に固定された後、押圧位置P3が治具105で押えられた状態で、接合位置P2でレーザ溶接される。このとき、押圧位置P3が固定片101の先端よりも基端側に位置するため、治具105の押し込みによって固定片101が反り返り、固定片101の先端側が上板部106に対して浮く場合がある。このように比較例に係る固定片101では、レーザ溶接により固定片101を上板部106に確実に接合することが困難となっている。
【0038】
なお、本実施の形態では、固定位置P1、接合位置P2、押圧位置P3が略直線上に配置される構成としたが、この構成に限定されない。固定位置P1が固定片67の基端側に位置され、押圧位置P3が固定片67の先端側に位置され、接合位置P2が固定位置P1と押圧位置P3との間に位置されていればよい。
【0039】
次に、図5を参照して、レンズ駆動装置の組み立て作業について説明する。図5は、本実施の形態に係るレンズ駆動装置の組み立て作業の前半の説明図である。図6は、本実施の形態に係るレンズ駆動装置の組み立て作業の後半の説明図である。なお、以下の組み立て作業は、自動機によって自動で実施可能な作業である。
【0040】
図5Aに示すように、接着剤によってヨーク7の四隅の角部にそれぞれ磁石6が固定される。このとき、磁石6の磁極面は、ヨーク7の内壁部74の壁面に対して所定の間隔を空けて対向される(図7参照)。次に、図5Bに示すように、ヨーク7の上面に上板バネ8が載置され、上方からトップカバー9が取り付けられる。このとき、トップカバー9の四隅の突起部91が、それぞれ上板バネ8の四隅の挿通孔85及びヨーク7の四隅の挿通孔76に挿通される。そして、トップカバー9の各突起部91が熱カシメされることで、トップカバー9、上板バネ8及びヨーク7が一体化される。
【0041】
一方、図5Cに示すように、レンズ保持部材5の外周には、コイル59が巻きつけられる。レンズ保持部材5に巻き付けられたコイル59の両端部は、一対の絡げピン57に巻き付けられる。この場合、コイル59の両端部は、レーザ等により絶縁被膜が除去された後に巻き付けられる。
【0042】
次に、図5Dに示すように、レンズ保持部材5の下部に一対のバネ片41が取り付けられる。一対のバネ片41は、繋ぎ部69を介してフープ材93に繋がれた状態でレンズ保持部材5に供給される。このとき、レンズ保持部材5の突起部56が、それぞれ一対のバネ片41の挿通孔45に挿通される。そして、レンズ保持部材5の突起部56が熱カシメされることで、レンズ保持部材5と一対のバネ片41とが一体化される。また、絡げピン57に巻回されたコイル59の端部と一対のバネ片41の内側板部43とがレーザ半田付けされる。これにより、一対のバネ片41とコイル59の両端部とが電気的に接続される。
【0043】
図6Aに示すように、ロアケース2上にはコイル59付きのレンズ保持部材5が載置され、一対のバネ片41を介してロアケース2とレンズ保持部材5が取り付けられる。このとき、一対のバネ片41の挿通孔46に、ロアケース2の突起部24が挿通され、突起部24が熱カシメされることで、ロアケース2とレンズ保持部材5とが一体化される。また、ロアケース2に対して一対のバネ片41が固定されると、一対のバネ片41の固定片67がそれぞれ外部端子31の上板部32にレーザ溶接により接合される。
【0044】
この場合、固定片67の先端領域79が治具95によりロアケース2に押し付けられた状態で、開口部68の基端側に位置する内縁部77がレーザ溶接される(図4A参照)。固定片67の基端側がロアケース2に固定され、固定片67の先端側がロアケース2に押し付けられているため、これらの間に位置する内縁部77が上板部32に密着された状態でレーザ溶接される。これにより、固定片67が外部端子31に対して確実に接合され、一対の外部端子31とコイル59の両端部とが、一対のバネ片41を介してコイル59の両端部に電気的に接続される。
【0045】
次に、図6Bに示すように、レーザカットにより一対のバネ片41からフープ材93が切り離される。このとき、レーザ光線は、ロアケース2の4隅に位置する繋ぎ部69の根元部分に向けて照射される。繋ぎ部69の根元部分がロアケース2上に露出された金属プレート25に対向しているため、レーザ光線がロアケース2の樹脂成形部分に照射されることがない。
【0046】
一対のバネ片41からフープ材93が切り離されると、図6Cに示すように、トップカバー9付きのヨーク7が上方から被せられる。このとき、ヨーク7の内壁部74が、レンズ保持部材5のコイル59と筒状部52との隙間に挿通される。これにより、ヨーク7の四隅において、磁石6と内壁部74との間に内壁部74が介在されて磁気回路が形成される。また、ヨーク7の縁部75が、ロアケース2の金属プレート25上に載置され、レーザ溶接によりロアケース2の4隅に位置する金属プレート25に接合される。
【0047】
そして、図6Dに示すように、筒状部52の上端面と上板バネ8の内側板部83とに対して、ヨーク7の窓部72を介して接着剤が塗布される。これにより、ヨーク7及びトップカバー9とレンズ保持部材5とが、上板バネ8を介して連結される。このようにして、組み立てられたレンズ駆動装置1は、レンズ保持部材5の上下に設けられた板バネ4、8により、ロアケース2側に向けて付勢されている。そして、レンズ駆動装置1は、レンズ保持部材5の巻き付けられたコイル59が通電されることで、板バネ4、8の付勢力に抗してレンズ保持部材5が光軸方向に移動される。
【0048】
以下、図7を参照して、レンズ駆動装置の動作について説明する。図7は、本実施の形態に係るレンズ駆動装置の動作説明図である。
【0049】
図7に示すように、ヨーク7の外周壁部73の四隅に磁石6が固定され、磁石6の磁極面に対向して内壁部74が位置されており、レンズ駆動装置1の四隅に磁気回路が形成される。磁石6と内壁部74との間には、レンズ保持部材5に巻き付けられたコイル59が介在されている。磁気回路は、磁石6の磁極面に発生した磁束線がコイル59を通過して内壁部74に向うように形成されている。レンズ保持部材5は、上板バネ8及び下板バネ4により、ロアケース2側にプリテンションが作用されている。
【0050】
この初期状態で、コイル59が通電されると、コイル59に対して光軸方向に電磁力が発生する。このコイル59に発生した電磁力により、レンズ保持部材5が、上板バネ8及び下板バネ4の付勢力に抗して光軸方向に移動し、不図示のレンズ体とイメージセンサとの焦点距離が調整される。この場合、ヨーク7の内壁部74と磁石6の磁極面とが平行であるため、コイル59を通過する磁束線の量が多く、磁気回路をレンズ駆動装置1の四隅にしか形成していなくても十分な駆動力を発生させることが可能となる。そして、コイル59に対する通電が停止されると、上板バネ8及び下板バネ4の復帰力により、レンズ保持部材5が初期位置に引き戻される。
【0051】
以上のように、本実施の形態に係るレンズ駆動装置1によれば、固定片67における基端側に設けた固定位置P1と先端側に設けた押圧位置P3との間に接合位置P2が設けられるため、外部端子31に対する固定片67の接合位置P2の浮きを防止できる。よって、固定片67を外部端子31に対して密着させることができ、板バネ4と外部端子31とを確実に接合することができる。
【0052】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されず、種々変更して実施することが可能である。上記実施の形態において、添付図面に図示されている大きさや形状などについては、これに限定されず、本発明の効果を発揮する範囲内で適宜変更することが可能である。その他、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施することが可能である。
【0053】
例えば、本実施の形態においては、接合片としての固定片の先端側に開口部を設けて、開口部の基端側の内縁部を接合位置とし、開口部の先端側の内縁部に沿う細幅領域を押圧位置としたが、この構成に限定されない。固定片の先端側に、接合位置を挟んで固定位置の対向側に押圧位置が設けられる構成であればよい。例えば、図8Aに示すように、固定片111の先端側を切り欠いて二股に形成し、二股に分かれた部分にそれぞれ押圧位置P3を設け、切欠部112の基端側の縁部に接合位置P2を設けてもよい。また、図8Bに示すように、固定片115の側辺を切り欠いて、切欠部116よりも先端側に残存する領域に押圧位置P3を設け、切欠部116の基端側の縁部に接合位置P2を設けてもよい。
【0054】
また、本実施の形態においては、開口部が矩形状に形成されたが、この構成に限定されない。開口部は、接合片としての固定片に対して接合位置を形成するものであればよく、例えば、円形状や惰円形状に形成されてもよい。
【0055】
また、本実施の形態においては、接合片としての固定片の先端側に接合位置と押圧位置とを設けたが、この構成に限定されない。接合位置は、固定位置と押圧位置との間に設けられればよく、例えば、固定位置と押圧位置との中間位置に設けられてもよい。
【0056】
また、本実施の形態においては、レーザ溶接により下板バネと外部端子とを接合したが、この構成に限定されない。下板バネと外部端子とを接合可能であれば、どのような方法で下板バネと外部端子とが接合されてもよい。
【0057】
また、本実施の形態において、自動機によりレンズ駆動装置を組み立てる構成としたが、この構成に限定されない。手動によりレンズ駆動装置を組み立てる構成としてもよいし、自動機と手動とを組み合わせてレンズ駆動装置を組み立てる構成としてもよい。
【0058】
また、本実施の形態において、上記した組み立て順序に限定されるものではない。本実施の形態では、下板バネをロアケースに固定した後に、下板バネを外部端子に接合する構成としたが、この構成に限定されない。固定片の基端側がロアケースに抑えつけられた状態で下板バネを外部端子に接合した後に、下板バネをロアケースに固定してもよい。
【0059】
また、本実施の形態において、熱カシメにより接合片としての固定片の固定位置がレンズ保持部材に固定されたが、この構成に限定されない。板バネをレンズ保持部材に固定可能であれば、どのような方法で固定してもよい。
【0060】
また、本実施の形態において、接合片としての固定片の押圧位置がロアケースに押し付けられたが、この構成に限定されない。押圧位置は、接合位置が外部端子に密着するようにロアケース側に押圧されればよい。
【符号の説明】
【0061】
1 レンズ駆動装置
2 ロアケース(ベース部材)
4 下板バネ(板バネ)
5 レンズ保持部材
6 磁石
7 ヨーク
8 上板バネ
9 トップカバー
31 外部端子
32 上板部
41 バネ片
59 コイル
66 直線部
67 固定片(接合片)
68 開口部
77、78 内縁部
79 先端領域
95 治具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レンズ体が保持されるレンズ保持部材と、
光軸方向において前記レンズ保持部材を支持する板バネと、
前記板バネを固定すると共に、前記板バネと電気的導通を図る外部端子を設けたベース部材とを備え、
前記板バネには、前記外部端子に向って延在する接合片が形成されており、
前記接合片の基端側には、前記ベース部材に固定される固定位置が設けられ、前記接合片の先端側には、前記外部端子に接合される接合位置を挟んで前記固定位置の対向側に、前記ベース部材側に押圧される押圧位置が設けられることを特徴とするレンズ駆動装置。
【請求項2】
前記接合片の先端側には、開口部が形成されており、
前記接合片には、前記開口部において対向する内縁部のうち、基端側の内縁部に前記接合位置が設けられ、先端側の内縁部に沿う領域に前記押圧位置が設けられることを特徴とする請求項1に記載のレンズ駆動装置。
【請求項3】
前記接合片の前記固定位置は、熱カシメにより前記ベース部材に固定されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のレンズ駆動装置。
【請求項4】
前記接合片の前記押圧位置は、治具により前記ベース部材に押し当てられることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載のレンズ駆動装置。
【請求項5】
前記接合片の前記接合位置は、レーザ溶接により前記外部端子に接合されることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載のレンズ駆動装置。
【請求項6】
レンズ体が保持されるレンズ保持部材を板バネにより光軸方向に支持させ、外部端子をベース部材に設けたレンズ駆動装置の製造方法であって、
前記外部端子に向って延在するように前記板バネに形成された接合片の基端側に固定位置を設け、前記固定位置を前記ベース部材に固定する工程と、
前記接合片の先端側において、前記外部端子に接合される接合位置を挟んで前記固定位置の対向側に押圧位置を設け、前記押圧位置を前記ベース部材側に押圧すると共に、前記接合位置を前記外部端子に接合する工程とを有することを特徴とするレンズ駆動装置の製造方法。
【請求項7】
前記接合位置を前記外部端子に接合する工程は、前記接合片の先端側に形成された開口部を挟んで対向する内縁部のうち、先端側の内縁部に沿う領域に前記押圧位置を設けると共に、基端側の内縁部に前記接合位置を設けることを特徴とする請求項6に記載のレンズ駆動装置の製造方法。
【請求項8】
前記固定位置を前記ベース部材に固定する工程は、前記固定位置を熱カシメにより前記ベース部材に固定することを特徴とする請求項6又は請求項7に記載のレンズ駆動装置の製造方法。
【請求項9】
前記接合位置を前記外部端子に接合する工程は、前記押圧位置を治具により前記ベース部材に押し当てることを特徴とする請求項6から請求項8のいずれかに記載のレンズ駆動装置の製造方法。
【請求項10】
前記接合位置を前記外部端子に接合する工程は、前記接合位置をレーザ溶接により前記外部端子に接合することを特徴とする請求項6から請求項9のいずれかに記載のレンズ駆動装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−247654(P2012−247654A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−119969(P2011−119969)
【出願日】平成23年5月30日(2011.5.30)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】