説明

レンズ駆動装置

【課題】回路基板の水濡れによる回路の短絡,配線の劣化を防止する。
【解決手段】レンズ駆動装置10のケース内には、レンズ鏡胴側から順番に駆動機構部38,シート部材44,回路基板43が配されている。駆動機構部38は、モータ、ギア列,及び連結ギアを含み、連結ギアが開口から露呈され、レンズ鏡胴の操作リングと係合する。シート部材44は、駆動機構部38が駆動されたときに連結ギア等の回転で飛散する水が回路基板43に達しないようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータの回転を伝達して撮影レンズを駆動するレンズ駆動装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ENGレンズのレンズ鏡胴に取り付けられる、ドライブユニットと呼ばれるレンズ駆動装置が知られている(例えば、特許文献1,2を参照)。このレンズ駆動装置は、レンズ鏡胴の側方に取り付けられ、ケースの内部に駆動機構部、回路基板等を内蔵している。ケースは、例えば右手でグリップしたときに手のひらになじむように略卵型をしており、そのケース外面にはズームボタン等からなる操作部が設けられている。
【0003】
駆動機構部は、レンズ鏡胴の外周に回動自在に設けた操作リングを回転するためのものであり、この駆動機構部が操作リングを回動することによって、レンズ鏡胴が保持している光学系の調節、例えばズーミング、ピント調節、アイリス調節が行われる。このような駆動機構部は、駆動力を発生させるモータと、操作リングの周面に形成された歯列と噛合する連結ギアと、モータの駆動力を連結ギアに伝達するギア列などから構成されており、連結ギアがケースの側面に形成された開口から露呈するようになっている。
【0004】
回路基板には、上記の駆動機構部の駆動を制御する駆動制御回路等が形成されている。駆動制御回路は、操作部からの操作信号や、レンズ鏡胴に取り付けられたテレビカメラからの制御信号に基づいて、上記の駆動機構部の駆動を制御する。回路基板は、通常は、開口から見て駆動機構部よりもケースの奥に配されている。
【特許文献1】特開平11−184007号公報
【特許文献2】特開2007−298672号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ENGレンズは、雨天屋外等の水がかかるような状況下で使用されることも多い。しかし、連結ギアを露呈する開口からレンズ駆動装置のケース内に水が入り込み、これで回路基板が濡れると回路の短絡や、配線が劣化して断線の原因となる。そこで、上記のように回路基板を開口から見てケースの奥(レンズ鏡胴から離れる方向)に配することで水濡れを防止している。
【0006】
しかしながら、このような水濡れ防止対策は、ある程度有効であるが、駆動機構部を駆動したときの水の浸入に対しては不十分であった。すなわち、操作リングが水濡れすると、それに噛合した連結ギアに水が付着し、連結ギアが回転するとその回転による遠心力等によって付着した水が飛散するが、連結ギアは、その回転軸がレンズ鏡胴の光軸と平行となる方向であるから、飛散する水の一部がケースの奥に向い回路基板に付着してしまう。なお、ギア列を構成するギアやモータの回転部に水が付着した場合も同様な問題が生じる。
【0007】
また、駆動機構部はモータの回転等により電気的なノイズを発生させるが、そのノイズが回路基板の駆動制御回路に影響を与え誤作動を発生させるなどの問題も生じる。さらには、ケース内では、駆動機構部のモータと回路基板とを接続する配線コード等などの各種配線コードが配されるが、それら配線コードが絡み合い、過度な曲げや引っ張りが生じて断線するなどの不具合が発生する場合がある。
【0008】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、駆動機構部によって飛散する水による回路基板の水濡れを防止することができるレンズ駆動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、請求項1記載の発明では、レンズ鏡胴の操作リングと係合する連結ギアとこの連結ギアを回転するモータを含む駆動機構部と、駆動機構部を制御する電子回路が形成された回路基板と、レンズ鏡胴側のケース側面に連結ギアを露呈するギア開口が設けられ、レンズ鏡胴側から順番に駆動機構部と回路基板とが内部に配されるケースと、ケース内で駆動機構部と回路基板との間に配されるシート部材とを備えたものである。
【0010】
請求項2記載の発明では、シート部材に、駆動機構部の回路基板側の凹凸に沿うよう凹凸部を形成し、駆動機構部と回路基板とによって狭持するようにしたものである。
【0011】
請求項3記載の発明では、シート部材の縁部に、回路基板に接続された配線コードを通して支持する配線用開口と、シート部材の縁と配線用開口との間に配線用開口に対して配線コードの挿脱を行うための切込部とを形成したものである。
【0012】
請求項4記載の発明では、シート部材を、連結ギアが回転した時に、駆動機構部側から回路基板への水の飛散を防止するようにしたものである。
【0013】
請求項5記載の発明では、シート部材を、その表面が絶縁性を有するようにしたものである。
【0014】
請求項6記載の発明では、シート部材が、導電性を有し電気的ノイズのシールド機能を有するシールド層と、このシールド層の表面を覆う絶縁層を有するものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、駆動機構部と回路基板との間にシート部材を配したから、駆動機構部が駆動されたときに、駆動機構部から回路基板に向けて飛散する水をシート部材で受けて、飛散した水の回路基板への付着を防止することができ、水濡れによる回路の短絡や、配線の劣化を防止することができる。また、シート部材にノイズシールドの機能を持たせたから、駆動機構部のモータなどで発生する電気的なノイズが回路基板の駆動制御回路に影響をなくすことができる。さらには、配線コードを通す配線用開口をシート部材に形成したから、配線コードの絡み合いを防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明を実施したレンズ駆動装置を図1,図2に示す。なお、図1は、レンズ駆動装置10をレンズ鏡胴11に取り付けた状態を、図2はレンズ駆動装置10をレンズ鏡胴11から外した状態を示している。
【0017】
レンズ駆動装置10は、テレビカメラ用の撮影レンズであるレンズ鏡胴11に取り付けて使用する。レンズ鏡胴11は、フォーカスレンズ群,変倍レンズ群,アイリス(絞り)を含む光学系を内部に保持している。レンズ鏡胴11は、略円柱形状であり、その周面には、光学系を調節するための操作リングとして、ピント調節用のフォーカスリング12、ズーミング用のズームリング13、光量調節用のアイリスリング14を回転自在に設けてある。これら各リング12〜14には、その周面に歯列を形成してある。レンズ鏡胴11の後端には、レンズマウント15を設けてあり、そのレンズマウント15を介して周知のテレビカメラ16(図6参照)が取り付けられる。
【0018】
レンズ駆動装置10は、そのケース21の外面21aをグリップし易いように卵を横に寝かせた面形状に、またレンズ鏡胴側の側面としての内面21b(図3参照)をレンズ鏡胴11の周面に沿う凹面にそれぞれしてある。このレンズ駆動装置10は、レンズ鏡胴11に着脱自在としてあり、取り付け時には、レンズ鏡胴11の側面に内面21bを沿う姿勢にしてビス等の固着手段により固定される。また、レンズ駆動装置10と、レンズ鏡胴11の後端に取り付けたテレビカメラ16とは、ケーブルで接続され、これらの間で各種信号の授受が行われる。
【0019】
レンズ駆動装置10には、ズームスイッチ22、モード切替スイッチ23、オートスイッチ24、リターンスイッチ25,録画スイッチ26からなる操作部27を設けてある。各スイッチ22〜26は、その操作部材であるズームボタン22a,モード切替ツマミ23a,オートボタン24a,リターンボタン25a,録画ボタン26aをケース21の外側に露呈して設けてある。
【0020】
ズームスイッチ22は、レンズ鏡胴11の焦点距離を変化(ズーム)させるためのものであり、ズームボタン22aは、光軸Pに略直交する軸を中心として揺動自在にしてある。このズームボタン22aは、前方のテレ側凸部を押圧するとレンズ鏡胴11が望遠側に向けて変倍し、逆に後方のワイド側凸部を押圧するとレンズ鏡胴11が広角側に向けて変倍する。いずれの押圧操作においても、ズームボタン22aの押し込み量(操作量)によって変倍スピードを調整することができ、その押し込み量が大きいほど変倍スピードが高速になる。ズームボタン22aは、押圧を解除することで中立位置に復帰する。
【0021】
モード切替スイッチ23は、アイリス調節を自動で行うオートモードと、手動で行うマニュアルモモードとに切り換えるものである。モード切替スイッチ23は、そのモード切替ツマミ23aを光軸Pと略平行な方向に沿ってスライド自在としてあり、このモード切替ツマミ23aをスライド操作することで、オートモードとマニュアルモードとのいずれか一方のモードに切り替えられる。
【0022】
オートスイッチ24は、アイリス調節をマニュアルモードに設定しているときに、一時的にオートモードとするためのスイッチとなっている。このオートスイッチ24は、オートボタン24aを押圧する押しボタン式のスイッチであり、アイリス調節をマニュアルモードに設定しているときに、そのオートボタン24aを押圧している間だけ、アイリス調節がオートモードとなる。
【0023】
リターンスイッチ25は、オンエア中の画面や他のカメラで撮影している画面などの他画面をテレビカメラ16に設けたビューファインダに表示するか否かを切り換えるスイッチである。このリターンスイッチ25は、リターンボタン25aを押圧する押しボタン式スイッチであり、リターンボタン25aの押圧するごとに、ビューファインダでの他画面の表示の有無が切り換えられる。
【0024】
録画スイッチ26は、録画ボタン26aの押圧操作ごとに録画の開始/終了を切り換えるものである。録画ボタン26aは、撮影者がレンズ駆動装置10をグリップしたときに、そのグリップする右手の親指が自然に掛かる位置に配してある。録画が開始されると、撮影中の映像がビデオテープやメモリ等の記録媒体に記録(録画)される。
【0025】
図2に示されるように、ケース21の外面21aには、前後方向に長いグリップベルト28を取り付けるためのベルト通し穴29a,29bをそれぞれ設けてある。カメラマンは、ケース21とグリップベルト28の間に右手(親指以外の4本の指)を挿入することによって、レンズ駆動装置10とともにレンズ鏡胴11を保持することができる。また、このようにグリップしたときに、その右手の親指の自然に掛かる位置に録画ボタン26aを配してある。
【0026】
図3に示すように、ケース21の内面21bには、フォーカスリング12,ズームリング13,アイリスリング14に対面する部分に、それぞれギア開口31〜33を形成してあり、これらギア開口31〜33からは、連結ギア34〜36を露呈してある。レンズ駆動装置10をレンズ鏡胴11に取り付けた際には、連結ギア34がフォーカスリング12に形成した歯列に噛合する。同様に、連結ギア35がズームリング13の歯列に、連結ギア36がアイリスリング14の歯列にそれぞれ噛合する。
【0027】
ケース21には、各リング12〜14を回動するための駆動機構部38(図4参照)を内蔵してある。駆動機構部38からの駆動力は、上記3つの連結ギア34〜36に個別に伝達され、これによりフォーカスリング12、ズームリング13、及びアイリスリング14を個別に回動させる。
【0028】
図4に示すように、ケース21は、外面21aを形成した外側カバー41と、内面21bを形成した内側カバー42とからなり、その中空な内部に駆動機構部38及び回路基板43と、シート部材44とを配してある。駆動機構部38は、内側カバー42側に、また回路基板43は、外側カバー41側にそれぞれ組み付けてあり、これらの間にシート部材44を配してある。すなわち、レンズ鏡胴11側から駆動機構部38,シート部材44,回路基板43の順番で配してある。
【0029】
駆動機構部38は、各リング12〜14に対応して設けたフォーカス駆動機構45,ズーム駆動機構46、アイリス駆動機構47からなる。各駆動機構45〜47は、後述するようにモータ,ギア列,連結ギア,ポテンショメータから構成され、モータの回転を連結ギアに伝達し、その連結ギアを介して対応するリングを回動する。
【0030】
回路基板43は、そのプリント基板上に各種回路素子を実装することによって、駆動機構部38を駆動するための回路部としての駆動制御部48(図6参照)を形成してある。駆動制御部48は、各駆動機構45〜47のモータを駆動するためのドライバ、テレビカメラ16との間で信号の授受を行うための回路、操作部27からの操作信号及びテレビカメラ16からの制御信号に基づいてモータの駆動を制御する制御回路等から構成される。
【0031】
また、回路基板43は、その上部に、ズームスイッチ22,リターンスイッチ25のスイッチ本体25bをユニット化したスイッチユニット49を取り付けてあり、このスイッチユニット49を外側カバー41に取り付けることによって組み付けられる。回路基板43には、各スイッチ22〜26が配線コード等によって電気的に接続される。
【0032】
シート部材44は、水濡れした連結ギア34〜36やギア列のギアが回動したときに、その回動によって飛散する水が上述のような回路基板43及び各スイッチ22〜26に達しないように設けてあり、回路基板43上の回路の短絡、配線の劣化を防止する。
【0033】
シート部材44は、水濡れによって変質したり変形したりしない耐水性を有する、例えばプラスチック製の板状部材に、駆動機構部の回路基板43側の凹凸に沿うように凹凸部44aを形成してある。シート部材44は、凹凸部44aにより、連結ギア34〜36やギア列のギア等の可動部材に干渉しないようにしてあるとともに、モータの表面などの可動しない部分に密着するようにし、シート部材44を駆動機構部38と回路基板43との間に狭持して固定している。このように、駆動機構部38と回路基板43とでシート部材44を狭持することによって、駆動機構部38のメンテナンス等の際にシート部材44を容易に取り外すことができるようにしている。
【0034】
シート部材44の縁部には、複数の開口51を設けてある。図5に示すように、各開口51には、その開口51からシート部材44の縁にまで伸びた切込部51aを形成してあり、この切込部51aから開口51に対する配線コード52の挿脱を行う。開口51に配線コード52を通すことにより、ケース21内での配線コード52の絡みつきの防止を図る。また、開口51に配線コード52を通しておくことによって、ケース21を分解したときのシート部材44の不用意な脱落を防止する。なお、切込部51aは、開口51に対して配線コード52の挿脱を行うことができ、また開口51内に配線コード52を通した状態を維持できるのならば、適当な幅を有するスリット状に形成してもよい。
【0035】
配線コード52としては、駆動機構部38に設けた各モータ,各ポテンショメータと回路基板43とを接続する配線、テレビカメラ16と回路基板43との間で信号を授受するためのケース21内の配線などがある。
【0036】
上記シート部材44は、それが回路基板43と接触したときに、回路基板43上の回路を短絡させないために、少なくともその表面が絶縁性を有するようにするのがよい。また、モータ等で発生する電気的なノイズのシールド機能を持たせてもよい。例えば、金属薄膜などからなるシールド層の表面を絶縁性のプラスチック樹脂などで覆う構成としてもよい。
【0037】
図6に示すように、操作部27の操作に応じた操作信号は、駆動制御部48に送られる。駆動制御部48は、操作部27からの操作信号に基づいて、またテレビカメラ16から入力する制御信号に基づいて、駆動機構部38を制御する。駆動機構部38は、前述のようにフォーカス駆動機構45,ズーム駆動機構46,アイリス駆動機構47からなる。
【0038】
フォーカス駆動機構45は、フォーカス駆動用モータ45a,ギア列45b,ポテンショメータ45c、及び連結ギア34からなる。駆動制御部48は、テレビカメラ16からのフォーカス制御信号に基づいて、フォーカス駆動用モータ45aの駆動を制御する。フォーカス駆動用モータ45aの駆動力は、複数のギアからなるギア列47b,連結ギア34を介してフォーカスリング12に伝達されて、これを回転する。フォーカスリング12が回転すると、レンズ鏡胴11のフォーカスレンズ群55が光軸Pに沿って前後移動してピント調節が行われる。
【0039】
ポテンショメータ45cは、ギア列45bの出力に連結されており、フォーカスレンズ群55の位置を検出する検出手段として用いられる。ポテンショメータ45cから出力される位置検出信号は、駆動制御部48にフィードバックされる。
【0040】
ズーム駆動機構46,アイリス駆動機構47は、フォーカス駆動機構45と同様な構成であり、ズーム駆動機構46は、ズーム駆動用モータ46a,ギア列46b,ポテンショメータ46c、及び連結ギア35からなり、アイリス駆動機構47は、アイリス駆動用モータ47a,ギア列47b,ポテンショメータ47c、及び連結ギア36からなる。
【0041】
ズーム駆動機構46は、駆動制御部48がズームスイッチ22の操作に応じてズーム駆動用モータ46aを駆動制御することにより、そのズーム駆動用モータ46aの駆動力をギア列46b,連結ギア35を介してズームリング13に伝達し、ズームリング13を回転する。このズームリング13の回転によって変倍レンズ群56が光軸Pに沿って移動して、倍率調節が行われる。
【0042】
モード切替スイッチ23、オートスイッチ24が操作されることで発生する各操作信号は、駆動制御部48を介してテレビカメラ16に送られ、テレビカメラ16のアイリス調節のモードは切り替えられる。また、ポテンショメータ47cから得られるアイリス57の位置検出情報、すなわち絞り値が駆動制御部48を介してテレビカメラ16に送られる。
【0043】
テレビカメラ16は、アイリス調節がオートモードのときには、絞り値と撮影中の被写体の輝度などに基づいてアイリス57を制御するアイリス制御信号を発生して、駆動制御部48に送る。駆動制御部48は、そのアイリス制御信号に応じてアイリス駆動用モータ47aの駆動を制御する。アイリス駆動用モータ47aの駆動力は、ギア列47b,連結ギア36を介してアイリスリング14に伝達される。アイリスリング14が回転すると、アイリス57が絞り開口を拡縮する。
【0044】
次に上記構成の作用について説明する。レンズ鏡胴11にレンズ駆動装置10を取り付けた状態では、連結ギア34がフォーカスリング12に、連結ギア35がズームリング13に、連結ギア36がアイリスリング14にそれぞれ噛合している。
【0045】
例えば、ズーミングする場合には、ズームスイッチ22を操作する。この操作により、ズーム駆動用モータ46aが駆動制御部48によって、ズームスイッチ22の操作に応じていずれか一方向に回転する。そして、このズーム駆動用モータ46aの回転が、ギア列46bを介して連結ギア34に伝達され、この連結ギア34と噛合しているズームリング13を回転させる。これにより、変倍レンズ群56が移動してレンズ鏡胴11の倍率が変化する。
【0046】
また、オートモードのときには、テレビカメラ16からのアイリス制御信号が駆動制御部48に入力され、このアイリス制御信号に応じてアイリス駆動用モータ47aが回転される。そして、アイリス駆動用モータ47aの回転は、ギア列47bを介して、連結ギア36を回転させ、さらにアイリスリング14を回転する。これにより、アイリス57の調節が行われる。同様に、テレビカメラ16からのフォーカス制御信号に基づいて、駆動制御部48によって、フォーカス駆動用モータ45aが駆動され、ギア列47bを介して連結ギア34が回転し、この回転でフォーカスリング12が回転する。これにより、フォーカスレンズ群55が移動してピント調節される。
【0047】
上記のように動作するレンズ駆動装置10は、レンズ鏡胴11とともに、例えば雨天のような水がかかるような状況で使用されることもある。このような場合に、内面21bに形成されたギア開口31〜33から直接に水滴がケース21内に浸入しなくても、フォーカスリング12やズームリング13,アイリスリング14に付着した水が連結ギア34〜36に付着し、あるいはさらに連結ギア34〜36からギア列45b〜47bを構成するギアに付着することがある。
【0048】
連結ギア34〜36やギア列45b〜47bを構成するギアに水が付着し、それらギアが回転すると、遠心力によって付着した一部の水が回路基板43や各スイッチ22〜26を配したケース21の奥に向けて飛散する。しかし、駆動機構部38と回路基板43との間にシート部材44を配してあるため、駆動機構部38から飛散した水はシート部材44に遮断されて回路基板43や各スイッチ22〜26に達することはない。
【0049】
したがって、回路基板43が水濡れしてその基板上に形成されている回路が短絡したり、各スイッチ22〜26の接点が短絡したりすることがない。また、水濡れによる配線や接点の劣化も防止することができる。
【0050】
上記実施形態では、テレビカメラ用のレンズ鏡胴11の側部に着脱自在としたレンズ駆動装置10を例に説明しているが、本発明はこれに限らず、テレビカメラや電子カメラ、あるいはビデオカメラ等に一体に設けてなるレンズ駆動装置にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明のレンズ駆動装置をレンズ鏡胴に取り付けた使用状態を示す斜視図である。
【図2】レンズ駆動装置の背面側を示す斜視図である。
【図3】レンズ駆動装置の内面側を示す斜視図である。
【図4】レンズ駆動装置の内部の構成を示す分解斜視図である。
【図5】配線用コードを支持する開口を示すシート部材の縁部を示す斜視図である。
【図6】レンズ鏡胴、レンズ駆動装置、及びテレビカメラの構成の概略を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0052】
10 レンズ駆動装置
11 レンズ鏡胴
21 ケース
31〜33 ギア開口
34〜36 連結ギア
38 駆動機構部
43 回路基板
44 シート部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学系を保持するレンズ鏡胴の側方に取り付けられ、レンズ鏡胴の外周に設けた回動自在な操作リングを回転して前記光学系を調節するレンズ駆動装置において、
前記操作リングと係合する連結ギアとこの連結ギアを回転するモータを含む駆動機構部と、
前記駆動機構部を制御する回路部が形成された回路基板と、
レンズ鏡胴側のケース側面に前記連結ギアを露呈するギア開口が設けられ、レンズ鏡胴側から順番に前記駆動機構部と前記回路基板とが内部に配されるケースと、
前記ケース内で前記駆動機構部と前記回路基板との間に配されるシート部材と、
を備えたことを特徴とするレンズ駆動装置。
【請求項2】
前記シート部材は、前記駆動機構部の前記回路基板側の凹凸に沿う凹凸部が形成され、前記駆動機構部と前記回路基板とによって狭持されることを特徴とする請求項1記載のレンズ駆動装置。
【請求項3】
前記シート部材は、前記回路基板に接続された配線コードを通して支持する配線用開口と、シート部材の縁と前記配線用開口との間に形成され、前記配線用開口に対して配線コードの挿脱を行うための切込部とを縁部に有することを特徴とする請求項1または2記載のレンズ駆動装置。
【請求項4】
前記シート部材は、前記連結ギアが回転した時に、前記駆動機構部側から前記回路基板への水の飛散を防止することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載のレンズ駆動装置。
【請求項5】
前記シート部材は、表面が絶縁性を有することを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載のレンズ駆動装置。
【請求項6】
前記シート部材は、導電性を有し電気的ノイズのシールド機能を有するシールド層と、このシールド層の表面を覆う絶縁層を有することを特徴とする請求項5記載のレンズ駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−139587(P2010−139587A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−313971(P2008−313971)
【出願日】平成20年12月10日(2008.12.10)
【出願人】(000005430)フジノン株式会社 (2,231)
【Fターム(参考)】