説明

レーザー墨だし装置及び該装置に用いられるレーザー墨だし器用補助具

【課題】 明るい場所でも、レーザー光線を用いた墨だし作業を容易に行うことができるようにする。
【解決手段】建築現場などにおいて床面などに設置されるレーザー墨だし器と、該レーザー墨だし器から照射されるレーザー光を離れた場所で反射し、該レーザー光を反射面上に投影する、任意の場所に持ち運び可能なレーザー墨だし器用補助具とで墨だしを行う。補助具は、基体と、該基体に保持されたレーザー光線反射鏡本体とで構成され、レーザー光線反射鏡本体のレーザー光反射領域の中心部に凸面鏡が設けられている。この凸面鏡の隣接して一方向又は周囲にエッジングプリズムからなる乱反射鏡が延びている。レーザー光反射領域には凸面鏡を通る直線の少なくとも2点を示す基準表示がある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザー墨だし装置及び該装置に用いられるレーザー墨だし器用の補助具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建築現場などにおいて床面などに設置し、床面、天井面、壁面にレーザー光を照射して墨だしラインを形成し、正確に墨だしを行えるようにしたレーザー墨だし器が知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−195831号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
レーザー光線による災害防止対策要綱の規定で、光線のエネルギー量を5段階に分けて災害の大きさを指導している。レーザー光線墨だし器は一般作業従事者が使用するもので、レーザー光線を直視しても網膜の損傷が起きないレベルの出力の光源を使用している。この光源はレーザー光線を投影した場合、蛍光灯の光でも6,7メートル離れると見えなくなり、昼の屋外では使用できないのが現状である。
本発明は上記問題点を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明は、建築現場などにおいて床面などに設置されるレーザー墨だし器と、該レーザー墨だし器から照射されるレーザー光を離れた場所で反射し、該レーザー光を反射面上に投影する、任意の場所に持ち運び可能なレーザー墨だし器用補助具とからなり、該補助具を、基体と、該基体に保持されたレーザー光線反射鏡本体とで構成し、該レーザー光線反射鏡本体のレーザー光反射領域の中心部に凸面鏡を設け、該凸面鏡に隣接して一方向又は周囲に延びるエッジングプリズムからなる乱反射鏡を設け、前記レーザー光反射領域に前記凸面鏡を通る直線の少なくとも2点を示す基準表示を設けたものである。
また本発明は、レーザー墨だし器から照射されるレーザー光を離れた場所で反射し、該レーザー光を反射面状に投影するための、任意の場所に持ち運び可能なレーザー墨だし器用補助具であって、基体と、該基体に保持されたレーザー光線反射鏡本体とから成り、レーザー光線反射鏡本体のレーザー光反射領域の中心部に凸面鏡を設け、該凸面鏡に隣接して一方向又は周囲に延びるエッジングプリズムからなる乱反射鏡を設け、前記レーザー光反射領域に前記凸面鏡を通る直線の少なくとも2点を示す基準表示を設けたことを特徴とする。
また本発明は、前記基準表示を前記直線に沿って前記レーザー光反射領域に基準線を描いて構成したことを特徴とする。
また本発明は、前記基準表示を、水平方向と垂直方向を示す少なくとも2つ設けたことを特徴とする。
また本発明は、前記基体の縁部に前記基準表示の延長線上に位置して、筆記具用の墨だし溝を設けたことを特徴とする。
また本発明は、前記基体がスケールで構成されることを特徴とする。
また本発明は、前記基体が、巻き取り型スケール具のスケールカバーで構成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、直射日光の当たる明るい場所でも凸面鏡により光源映像を鮮明に確認でき、レーザー光線を用いた墨だし作業を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の説明図である。
【図2】本発明の説明図である。
【図3】本発明の他の実施形態を示す正面図である。
【図4】本発明の他の実施形態を示す正面図である。
【図5】本発明の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に本発明の構成を添付した図面を参照して詳細に説明する。
図2は、工事用レーザー墨出し装置の説明的外観図を示している。本装置は、レーザー光線発信機(レーザー墨だし器)1と、レーザー光線発信機1から照射されるレーザー光線を、該レーザー光線発信機1から離れた場所で、反射し光源映像を投影する墨だし器用補助具2とから構成されている。
【0009】
レーザー光線発信機1は工事用レーザー墨だし器として、従来公知の市販の製品であり、水平方向にレーザー光線3を面状に照射する水平方向レーザー照射部と、垂直方向にレーザー光線4を面状に照射する垂直方向レーザー照射部とが設けられている。レーザー墨だし器用補助具2は、枠状の基体5に、反射投影用の反射鏡本体6が保持された構成となっている。
【0010】
補助具2は、任意の場所に容易に持ち運び可能な重さと大きさを有し、レーザー光線発信機1とは別体に構成されている。基体5は、円盤状の底部と、その周囲に突設された周壁部とから構成され、底部と周壁部とで形成される浅い円柱状の嵌合凹部に、円盤状の反射鏡本体6が基体5の底部に対して水平に嵌合配置され、接着剤などの適宜な固定手段により、基体5に固定されている。
【0011】
反射鏡本体6の表面側は開放され、該開放面がレーザー光反射投影面7を構成している。レーザー光反射投影面7は、中央部に外形が円形の、反射鏡本体6の主要部を占める大型の凸面鏡8が形成され、その周囲にレーザー光線乱反射鏡9が形成されている。この乱反射鏡9は、図5に示すように、エッジングプリズムを構成している。
【0012】
前記反射鏡本体6の表面には、凸面鏡8の中心(芯)を通る直線上に基準線10が4本適宜な方法により、描画されている。
【0013】
尚、基準線10は、直交する2本とこれに対して45度の角度を有する2本が図示されている。前記基体5の周壁部には筆記具の先端を差し込み、基体5の裏面が接する駆体(図示省略)に印を付けるための墨だし溝11が各基準線10の延長線上に形成されている。
【0014】
上記した構成において、床面上にレーザー光線発信機1を設置し、駆体の壁面の所定の位置に補助具2を手操作で、そのレーザー光反射投影面7をレーザー光線発信機1に向けて配置する。レーザー光線発信機1は、レーザー光線3,4を水平と垂直方向に面状に発射して、駆体に赤色の線を投影する。
以下、水平方向にレーザー光線3を面状に発射したときの動作について説明する。
【0015】
明るい場所で見えない光線を検索する場合、水平のレーザー光線3に対して、反射鏡本体6を図2に示すように約垂直にして上下方向12に移動すると凸面鏡8に光源が光源投影像13として投影され、レーザー光の水平ラインが確認できる。その光源映像13を、凸面鏡8の中央にくるように補助具2を微動させて合わせる。
【0016】
同時に水平方向の基準線10を光源影像14の水平ラインに合わせる。その際水平レーザー光線3は反射鏡本体6のレーザー光線乱反射鏡9の小さな粒子反射により、レーザー光反射投影面7に赤色線15が現れる。その線15に凸面鏡8の中央(芯)と基準線10を合わせることで、水平位置を正確に出すことができる。
【0017】
駆体への墨だしは、基準線10を延長した位置に溝11が有るので、筆記用具の先端を溝11に差し込み、駆体に印を付け基準線を転記する。凸面鏡8の光源影像13は検索角度により焦点が移動して水平位置が変化するため、凸面鏡8の中央に光源の映像を移動させることができる。
【0018】
レーザー光線乱反射鏡9のエッジングプリズムは、平面反射のため、正確にレーザー光線3の位置を投影する。したがって凸面鏡8の光源映像を中央の基準線10に合わせることで、正確に水平基準を出すことができる。仮に反射鏡本体6が傾いても、乱反射鏡9のエッジングプリズムに投影されたレーザー光線3の水平位置は変化しない。
【0019】
直射日光の当たる場所でのエッジングプリズム反射光線は粒子反射のため、光源が小さく確認は難しい。しかし、凸面鏡8の光源映像14は鮮明に確認することができるため、前記の方法で水平基準線を出すことができる。凸面鏡8は光源が小さく反射され鋭い光となるが、目に障害を与えることはない。
【0020】
レーザー光乱反射鏡9のエッジングプリズムは微粒の曲面になっているため広角に反射して、微粒光線の集合体になり濃い線15があらわれる。尚、垂直基準線を出す場合の動作は、上記水平基準線を出す場合の動作と原理的には同一なのでその説明を省略する。
【0021】
図3は、本発明をスケールに応用した実施形態を示している。スケールの本体16は補助具の基体を構成し、その直角屈折部の表面に、該屈折部に沿ってL状にレーザー反射鏡本体17が固設されている。この反射鏡本体17の90度に屈折する部分の略中央部には、凸面鏡18が設けられ、該凸面鏡8の配置領域から、直角二方向には、レーザー光乱反射鏡19が設けられている。
【0022】
この乱反射鏡19は、図5に示すエッジングプリズムにより構成されている。乱反射鏡19の水平方向に延びる乱反射領域19aには、凸面鏡18の表面の芯を通る水平基準線20が描かれ、垂直方向に延びる乱反射領域19bには、垂直基準線21が描かれている。図中、符号22は、凸面鏡18に映った垂直光源映像、23は水平光源映像、24,25は、乱反射鏡19に映った水平レーザー光線映像、26,27は垂直レーザー光線映像である。
【0023】
上記した構成において、レーザー光線発信器1に向けて駆体の壁面にスケール本体16を配置し、このスケール本体16の凸面鏡18にレーザー光を当て、スケール本体16を微調整し、基準線20をレーザー光線映像24に合わせる。次にスケール本体16の目盛を基準表示に用いて、筆記具で駆体に印しを付け、水平を測定する。同じ要領で垂直を測定する。
図4は、本発明の他の実施形態を示し、巻き取り型のスケール具28のスケールカバー29が補助具の基体を構成している。このスケールカバーの表面に反射鏡本体30が設けられ、該本体30の表面にエッジングプリズムから成るレーザー光乱反射鏡31が設けられている。
【0024】
この乱反射鏡31の乱反射領域の中央に位置して、凸面鏡32が配置固定されている。凸面鏡32の表面と乱反射鏡31及びスケールカバー29の表面には、凸面鏡32の表面の芯を通る基準線34,35が2本互いに直交して描かれている。これら基準線34,35の延長線上に位置して、スケールカバー29には、筆記具用の墨だし溝36が設けられ、基準線35,36の位置を、墨だし溝36に筆記具を当てて、駆体表面に記入できるようになっている。スケール37の目盛形成面には、図3に示す実施形態と同様に、エッジングプリズムからなる湾曲自在なレーザー光反射鏡38が固設されている。
【0025】
上記した構成において、レーザー光発機1に向けて駆体の壁面にスケールカバー29を配置し、このスケールカバー29の凸面鏡32にレーザー光を当てる。これにより反射鏡本体30のレーザー光反射投影面に赤色線39,40が現れる。その線39,40に基準線34,35を合わせることで、水平垂直位置を正確に出すことができる。
【符号の説明】
【0026】
1 レーザー光線発信機
2 墨だし器用補助具
3 レーザー光線
4 レーザー光線
5 基体
6 反射鏡本体
7 レーザー光反射投影面
8 凸面鏡
9 レーザー光乱反射鏡
10 基準線
11 墨だし溝
12 方向
13 光源影像
14 光源影像
15 赤色線
16 スケール本体
17 反射鏡本体
18 凸面鏡
19 レーザー乱反射鏡
19a 乱反射領域
19b 乱反射領域
20 水平基準線
21 垂直基準線
22 垂直光源映像
23 水平光源映像
24 水平レーザー光線映像
25 水平レーザー光線映像
26 垂直レーザ光線映像
27 垂直レーザー光線映像
28 スケール具
29 スケールカバー
30 反射鏡本体
31 光乱反射鏡
32 凸面鏡
34 基準線
35 基準線
36 墨だし溝
37 スケール
38 レーザー光乱反射鏡
39 赤色線
40 赤色線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築現場などにおいて床面などに設置されるレーザー墨だし器と、該レーザー墨だし器から照射されるレーザー光を離れた場所で反射し、該レーザー光を反射面上に投影する、任意の場所に持ち運び可能なレーザー墨だし器用補助具とからなり、該補助具を、基体と、該基体に保持されたレーザー光線反射鏡本体とで構成し、該レーザー光線反射鏡本体のレーザー光反射領域の中心部に凸面鏡を設け、該凸面鏡に隣接して一方向又は周囲に延びるエッジングプリズムからなる乱反射鏡を設け、前記レーザー光反射領域に前記凸面鏡を通る直線の少なくとも2点を示す基準表示を設けたことを特徴とするレーザー墨だし装置。
【請求項2】
レーザー墨だし器から照射されるレーザー光を離れた場所で反射し、該レーザー光を反射面状に投影するための、任意の場所に持ち運び可能なレーザー墨だし器用補助具であって、基体と、該基体に保持されたレーザー光線反射鏡本体とから成り、レーザー光線反射鏡本体のレーザー光反射領域の中心部に凸面鏡を設け、該凸面鏡に隣接して一方向又は周囲に延びるエッジングプリズムからなる乱反射鏡を設け、前記レーザー光反射領域に前記凸面鏡を通る直線の少なくとも2点を示す基準表示を設けたことを特徴とするレーザー墨だし器用補助具。
【請求項3】
前記基準表示を前記直線に沿って前記レーザー光反射領域に基準線を描いて構成したことを特徴とする請求項2に記載のレーザー墨だし器用補助具。
【請求項4】
前記基準表示を、水平方向と垂直方向を示す少なくとも2つ設けたことを特徴とする請求項2に記載のレーザー墨だし器用補助具。
【請求項5】
前記基体の縁部に前記基準表示の延長線上に位置して、筆記具用の墨だし溝を設けたことを特徴とする請求項2に記載のレーザー墨だし器用補助具。
【請求項6】
前記基体がスケールで構成されることを特徴とする請求項2に記載のレーザー墨だし器用補助具。
【請求項7】
前記基体が、巻き取り型スケール具のスケールカバーで構成されることを特徴とする請求項2に記載のレーザー墨だし器用補助具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−225653(P2012−225653A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−90510(P2011−90510)
【出願日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【出願人】(501183367)