説明

レーザー彫刻用レリーフ印刷版原版、および、レリーフ印刷版の製造方法

【課題】耐刷性に優れ、レーザー彫刻に供した際の彫刻感度が高いレーザー彫刻用レリーフ印刷版原版を提供し、レリーフ印刷版の製造方法、並びに該製造方法により得られたレリーフ印刷版を用いた印刷方法を提供する。
【解決手段】(A)アクリル樹脂、またはポリビニルアセタールであって、側鎖にエチレン性不飽和結合を有するポリマー、(B)カーボンブラック、及び、(C)熱重合開始剤、を含有する樹脂組成物を、熱によって架橋させてなるレリーフ形成層を備えるレーザー彫刻用レリーフ印刷版原版。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザー彫刻用レリーフ印刷版原版、およびレリーフ印刷版の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
支持体表面に積層された感光性樹脂層に凹凸を形成して印刷版を形成する方法としては、感光性組成物を用いて形成したレリーフ形成層に、原画フィルムを介して紫外光により露光し、画像部分を選択的に硬化させて、未硬化部を現像液により除去する方法、いわゆる「アナログ製版」がよく知られている。
【0003】
レリーフ印刷版は、凹凸を有するレリーフ層を有する凸版印刷版であり、このような凹凸を有するレリーフ層は、主成分として、例えば、合成ゴムのようなエラストマー性ポリマー、熱可塑性樹脂などの樹脂、或いは、樹脂と可塑剤との混合物を含有する感光性組成物を含有するレリーフ形成層をパターニングし、凹凸を形成することにより得られる。このようなレリーフ印刷版うち、軟質なレリーフ層を有するものをフレキソ版と称することがある。
【0004】
近年は、アナログ製版の如く原画フィルムを必要とせず、走査露光によりレリーフ形成層の製版を行う方法が検討されている。
原画フィルムを必要としない手法として、レリーフ形成層上に画像マスクを形成可能なレーザー感応式のマスク層要素を設けたレリーフ印刷版原版が提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。これらの原版の製版方法によれば、画像データに基づいたレーザー照射によりマスク層要素から原画フィルムと同様の機能を有する画像マスクが形成されるため、「マスクCTP方式」と称されており、原画フィルムは必要ではないが、その後の製版処理は、画像マスクを介して紫外光で露光し、未硬化部を現像除去する工程であり、現像処理を必要とする点でなお改良の余地がある。
【0005】
現像工程を必要としない製版方法として、レリーフ形成層をレーザーにより直接彫刻し製版する、いわゆる「直彫りCTP方式」が多く提案されている。直彫りCTP方式は、文字通りレーザーで彫刻することにより、レリーフとなる凹凸を形成する方法で、原画フィルムを用いたレリーフ形成と異なり、自由にレリーフ形状を制御することができるという利点がある。このため、抜き文字の如き画像を形成する場合、その領域を他の領域よりも深く彫刻する、或いは、微細網点画像では、印圧に対する抵抗を考慮し、ショルダーをつけた彫刻をする、なども可能である。
これまで直彫りCTP方式で用いられた版材は、版材の特性を決定するバインダーとして、疎水性のエラストマー(ゴム)を用いたもの(例えば、特許文献1〜5参照。)、親水性のポリビニルアルコール誘導体を用いたもの(例えば、特許文献6参照。)、架橋構造を有するエラストマーを用いたもの(例えば、特許文献7参照。)、などが多数提案されている。
【0006】
また、重合性不飽和基を有する樹脂を含む感光性樹脂組成物を用いて、光硬化することで膜強度を上げ、耐刷性の向上したフレキソ印刷版原版を製造する方法が提案されている(例えば、特許文献8参照。)。
しかしながら前記した技術は低感度であるため、レリーフ形成層に印圧に耐えるレリーフとなるような彫刻深さの凹凸を形成するには高エネルギーを要し、またレーザー彫刻の速度が遅いため、マスクを介して画像形成するタイプに比較し、生産性が低いという問題がある。
【0007】
以上のように、レーザー彫刻用レリーフ印刷版原版のレリーフ形成層に好適に用いうる樹脂組成物に関しては、種々の技術が提案されているが、該樹脂組成物を製膜したときの膜強度が良好であるため、該樹脂組成物をレリーフ形成層に適用した場合の形成された印刷版の耐刷性が優れ、さらにレーザー彫刻に供した際の彫刻感度が高いものは、未だ提供されていないのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第5798202号明細書
【特許文献2】特開2002−3665公報
【特許文献3】特許第3438404号公報
【特許文献4】特開2004−262135公報
【特許文献5】特開2001−121833公報
【特許文献6】特開2006−2061公報
【特許文献7】特許第2846954号公報
【特許文献8】特開2005−221655号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は以下の目的を達成することを課題とする。
即ち、本発明の目的は、耐刷性に優れ、レーザー彫刻に供した際の彫刻感度が高いレーザー彫刻用レリーフ印刷版原版を提供することにある。
また、本発明の目的は、該レリーフ印刷版原版を用いたレリーフ印刷版の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するための手段は以下の通りである。
<1> (A)アクリル樹脂、またはポリビニルアセタールであって、側鎖にエチレン性不飽和結合を有するポリマー、(B)カーボンブラック、及び、(C)熱重合開始剤、を含有する樹脂組成物を、熱によって架橋させてなるレリーフ形成層を備えるレーザー彫刻用レリーフ印刷版原版。
【0011】
<2> 前記(A)側鎖にエチレン性不飽和結合を有するポリマーが、ポリビニルアセタールである<1>に記載のレーザー彫刻用レリーフ印刷版原版。
<3> 前記(A)側鎖にエチレン性不飽和結合を有するポリマーが、主鎖と、側鎖のエチレン性不飽和結合との間に炭素−ヘテロ原子結合を有するポリマーである<1>または<2>に記載のレーザー彫刻レリーフ印刷版原版。
【0012】
<4> 前記(A)側鎖にエチレン性不飽和結合を有するポリマーが、主鎖と、側鎖のエチレン性不飽和結合との間に炭素−硫黄結合を有するポリマーである<3>に記載のレーザー彫刻レリーフ印刷版原版。
<5> 前記(A)側鎖にエチレン性不飽和結合を有するポリマーのガラス転移温度が、20℃以上200℃以下である<1>〜<4>のいずれか1項に記載のレーザー彫刻用レリーフ印刷版原版。
【0013】
<6> 前記レーザー彫刻用樹脂組成物に、さらに(D)架橋剤を含有する<1>から<5>のいずれか1項に記載のレーザー彫刻レリーフ印刷版原版。
<7> 前記(D)架橋剤が、エチレン性不飽和結合を有する化合物である<6>に記載のレーザー彫刻レリーフ印刷版原版。
【0014】
<8> <1>から<7>のいずれか1項に記載のレーザー彫刻用レリーフ印刷版原版におけるレリーフ形成層に、レーザーによる彫刻を施すことによりレリーフ層を形成する工程を含むレリーフ印刷版の製造方法。
<9> <8>に記載のレーザーによる彫刻が、波長700nm〜1200nmの複数のファイバー付き半導体レーザーを光源とするレーザーによる彫刻であるレリーフ層を形成する工程であるレリーフ印刷版の製造方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、耐刷性に優れ、さらにレーザー彫刻に供した際の彫刻感度が高いレーザー彫刻用レリーフ印刷版原版を提供することができる。
さらに、該レリーフ印刷版原版を用いたレリーフ印刷版の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明において、レリーフ形成層の形成に用いる樹脂組成物、該樹脂組成物により形成されたレリーフ形成層、レーザー彫刻用レリーフ印刷版原版、およびレリーフ印刷版の製造方法について詳細に説明する。
【0017】
<樹脂組成物>
本発明に用いる樹脂組成物は、(A)アクリル樹脂、またはポリビニルアセタールであって、側鎖にエチレン性不飽和結合を有するポリマー、(B)カーボンブラック、及び、(C)熱重合開始剤、を含有することを特徴とし、該樹脂組成物を熱によって架橋させてレリーフ形成層を形成する。
以下、本発明においてレリーフ形成層の形成に用いる樹脂組成物を「組成物1」、該組成物1を熱によって架橋させてなるレリーフ形成層を構成する組成物を「組成物2」と称することがある。
従って、本発明における組成物2は、(A)アクリル樹脂、またはポリビニルアセタールであって、側鎖にエチレン性不飽和結合を有するポリマー、(B)カーボンブラック、(C)熱重合開始剤、および(A)アクリル樹脂、またはポリビニルアセタールであって、側鎖にエチレン性不飽和結合を有するポリマーが架橋した構造の化合物〔(D)架橋剤を使用する場合には、(A)アクリル樹脂、またはポリビニルアセタールであって、側鎖にエチレン性不飽和結合を有するポリマーと(D)架橋剤とが架橋した構造の化合物〕を含むものである。
【0018】
本発明のレリーフ印刷版原版におけるレリーフ形成層を構成する組成物2は、レーザー彫刻に供した際の彫刻感度が高いことから、高速でレーザー彫刻を行うことができるので、彫刻時間についても短縮することができる。このような特徴を有する組成物2は、レーザー彫刻が施されるレリーフ形成層を有する樹脂造形物の形成用途に、特に限定なく広範囲に適用することができる。例えば、本発明に用いる組成物2の適用態様として、具体的には、レーザー彫刻により画像形成を行う画像形成材料のレリーフ画像形成層、凸状或いは凹状のレリーフ形成をレーザー彫刻により行う印刷版原版のレリーフ形成層等が挙げられるが、レリーフ層を有する樹脂造形物の形成用途であれば、これらに限定されるものではない。
【0019】
<(A)アクリル樹脂、またはポリビニルアセタールであって、側鎖にエチレン性不飽和結合を有するポリマー>
本発明に用いる樹脂組成物(組成物1)は、(A)アクリル樹脂、またはポリビニルアセタールであって、側鎖にエチレン性不飽和結合を有するポリマー(以下、「特定ポリマー」とも称する。)を含む。(A)アクリル樹脂、またはポリビニルアセタールであって、側鎖にエチレン性不飽和結合を有するポリマーとしては、主鎖構造が、アクリル樹脂、ポリビニルアセタールであり、側鎖にエチレン性の不飽和結合として、アリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、スチリル基、ビニルエーテル基のような炭素−炭素不飽和結合を側鎖に導入することで得られる。
主鎖構造が、ポリビニルアセタールであるポリマーが彫刻感度の点で好ましい。
さらに、レリーフ形成層としたときのリンス性および耐刷性の観点で、ポリビニルブチラールが更に好ましい。
【0020】
(A)特定ポリマー側鎖に炭素−炭素不飽和結合を導入する方法は、(i)重合性基に保護基を結合させてなる重合性基前駆体を有する構造単位をポリマーに共重合させ、保護基を脱離させて重合性基とする方法、(ii)水酸基、アミノ基、エポキシ基、カルボキシ基などの反応性基を複数有する高分子化合物を作製し、これらの反応性基と反応する基及び炭素−炭素不飽和結合を有する化合物を高分子反応させて導入する方法など、公知の方法をとることができる。これらの方法によれば、高分子化合物中への不飽和結合、重合性基の導入量を制御することができる。
【0021】
(A)特定ポリマーとしてガラス転移温度が、20℃(室温)超のポリマーを用いる場合、(A)特定ポリマーは常温ではガラス状態をとるが、このためゴム状態をとる場合に比較して、熱的な分子運動はかなり抑制された状態にある。レーザー彫刻においては、レーザー照射時に、レーザーが付与する熱に加え、(B)カーボンブラックの光熱変換剤としての機能により発生した熱が、周囲に存在する(A)特定ポリマーに伝達され、これが熱分解、消散して、結果的に彫刻されて凹部が形成される。
(A)特定ポリマーのガラス転移温度の上限には制限はないが、200℃以下であることが取り扱い性の観点から好ましい。
本発明の好ましい態様では、(A)特定ポリマーの熱的な分子運動が抑制された状態の中に(B)カーボンブラックが存在すると(A)特定ポリマーへの熱伝達と熱分解が効果的に起こるものと考えられ、このような効果によって彫刻感度がさらに増大したものと推定される。
【0022】
なお、本発明におけるガラス転移温度(Tg)は、走査型示差熱量計(DSC)で測定し、測定パンにサンプルを10mg入れ、窒素気流中で10℃/分で30℃から250℃まで昇温した後(1st-run)、0℃まで10℃/分で降温させ、この後再び0℃から10℃/分で250℃まで昇温(2nd-run)し、2nd-runでベースラインが低温側から変位し始める温度をもってガラス転移温度(Tg)とする。
【0023】
(アクリル樹脂)
本発明において(A)特定ポリマーとして用いうるアクリル樹脂としては、公知のアクリル単量体を用いて得るアクリル樹脂であって、側鎖にエチレン性不飽和結合を有するものであれば用いることができる。
側鎖にエチレン性不飽和結合を有するアクリル樹脂を得る方法としては、分子内にヒドロキシ基を有するアクリル樹脂に、エチレン性不飽和結合と、ヒドロキシ基と反応する基とを有する化合物(例えば、グリシジルアクリレートのようなエチレン性不飽和結合とエポキシ環を有する化合物、あるいはアリルイソシアネートのようなエチレン性不飽和結合とイソシアネート基を有する化合物など)とを反応させる方法などが挙げられる。
【0024】
ヒドロキシ基を有するアクリル樹脂は、ヒドロキシ基を有するアクリル単量体と他の構造のアクリル単量体とを共重合するなどして得られる。
ヒドロキシ基を有するアクリル単量体として、例えば(メタ)アクリル酸エステル類、クロトン酸エステル類(メタ)アクリルアミド類であって分子内にヒドロキシ基を有する単量体が好適で、具体例としては例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0025】
また、他の構造のアクリル単量体としては、上記ヒドロキシ基を有するアクリル単量体以外のアクリル単量体であり、このようなアクリル単量体としては、(メタ)アクリル酸エステル類としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、アセトキシエチル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、2−(2−メトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールモノエチルエーテル(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、エチレングリコールとプロピレングリコールとの共重合体のモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0026】
側鎖にエチレン性不飽和結合を有するアクリル樹脂の重量平均分子量(GPC測定によるポリスチレン換算)は、0.5万〜50万が好ましく、より好ましくは1万〜40万、更に好ましくは1.5万〜30万である。重量平均分子量が0.5万以上であれば、単体樹脂としての形態保持性に優れ、50万以下であれば、溶媒に溶解しやすくレーザー彫刻用樹脂組成物を調製するのに好都合である。
【0027】
(ポリビニルアセタール)
ポリビニルアセタールは、ポリビニルアルコール(ポリ酢酸ビニルを鹸化して得られる)を環状アセタール化することにより得られる化合物であり、ヒドロキシ基を側鎖に含むポリマーである。
この側鎖のヒドロキシ基にアクリル樹脂の項で述べたのと同様にして、エチレン性不飽和結合と、ヒドロキシ基と反応する基とを有する化合物を反応させる等の方法により、側鎖にエチレン性不飽和結合を有したポリビニルアセタールを得ることができる。
【0028】
ポリビニルアセタール中のアセタール含量(原料の酢酸ビニルモノマーの総モル数を100%とし、アセタール化されるビニルアルコール単位のモル%)は、30%〜90%が好ましく、50%〜85%がより好ましく、55%〜78%が特に好ましい。
ポリビニルアセタール中のビニルアルコール単位としては、原料の酢酸ビニルモノマーの総モル数に対して、10モル%〜70モル%が好ましく、15モル%〜50モル%がより好ましく、22モル%〜45モル%が特に好ましい。
また、ポリビニルアセタールは、その他の成分として、酢酸ビニル単位を有していてもよく、その含量としては0.01〜20モル%が好ましく、0.1〜10モル%がさらに好ましい。ポリビニルアセタールは、さらに、その他の共重合単位を有していてもよい。
ポリビニルアセタールとしては、ポリビニルブチラール、ポリビニルプロピラール、ポリビニルエチラール、ポリビニルメチラールなどが挙げられる。なかでもポリビニルブチラールは好ましく用いられる。
アセタール処理に用いるアルデヒド類としては、アセトアルデヒド、ブチルアルデヒドは、取り扱いが容易であるため好ましく用いられる。
側鎖にエチレン性不飽和結合を有するポリアセタールの重量平均分子量(GPC測定によるポリスチレン換算)は、0.5万〜50万が好ましく、より好ましくは1万〜40万、更に好ましくは1.5万〜30万である。重量平均分子量が0.5万以上であれば、単体樹脂としての形態保持性に優れ、50万以下であれば、溶媒に溶解しやすくレーザー彫刻用樹脂組成物を調製するのに好都合である。
【0029】
ポリビニルブチラール誘導体としては、電気化学工業社(株)のデンカブチラールシリーズを好ましく用いることができる。
またポリビニルブチラール誘導体としては、他の市販品としても入手可能であり、その好ましい具体例としては、アルコール溶解性(特にエタノール)の観点で、積水化学製の「エスレックB」シリーズ、「エスレックK(KS)」シリーズも好ましい。さらに好ましくは、アルコール溶解性(特にエタノール)の観点で積水化学製の「エスレックB」シリーズとデンカ製の「デンカブチラール」であり、特に好ましくは「エスレックB」シリーズでは、「BL−1」、「BL−1H」、「BL−2」、「BL−5」、「BL−S」、「BX−L」、「BM−S」、「BH−S」、デンカ製の「デンカブチラール」では「#3000−1」、「#3000−2」、「#3000−4」、「#4000−2」、「#6000−C」、「#6000−EP」、「#6000−CS」、「#6000−AS」である。
【0030】
本発明に用いる(A)特定ポリマーは、彫刻感度の観点から、主鎖と、側鎖のエチレン性不飽和結合との間に炭素−ヘテロ原子結合を有することが好ましく、前記炭素−ヘテロ原子結合としては炭素−硫黄結合であることが特に好ましい。
主鎖と側鎖のエチレン性不飽和結合との間に炭素−ヘテロ原子結合(特に炭素−硫黄ヘテロ原子結合)を特定ポリマーへ導入する方法としては、分子内にヒドロキシ基を有するアクリル樹脂あるいはポリビニルアセタールに、エチレン性不飽和結合と、ヒドロキシ基と反応する基とを有し、エチレン性不飽和結合と、ヒドロキシ基と反応する基との間にヘテロ原子(特に硫黄原子)を有する化合物などを反応させる等の方法により、合成することができる。
本発明における(A)特定ポリマーに含まれる側鎖のエチレン性不飽和結合の含有量は、前記いずれの態様のポリマーにおいても、0.1〜15mmol/gであることが好ましく、0.5〜7mmol/gであることが膜物性の点でより好ましい。
【0031】
以下に本発明に用いる特定ポリマーの具体例を示すが、本発明はこれらの化合物に限定されるものではない。
本発明の例示化合物のうちP−1からP−12は、ポリビニルアセタールの水酸基のうち、50モル%を下記P−1からP−12で示される置換基で修飾することで合成して得られるポリマーを表す。
またP−13からP−17には下記構造単位を下記重合モル比で含むアクリル樹脂系の特定ポリマーを表す。なお、下記構造の*は、この位置で酸素原子に結合していることを示している。
P−1〜P−17の重量平均分子量、ガラス転移温度(Tg)を表1に示す。ガラス転移温度が20℃〜200℃の範囲にあるものは、「○」で示し、20℃未満、および200℃を超えるものは「×」で示した。
【0032】
【化1】

【0033】
【化2】

【0034】
【表1】

【0035】
本発明に係る(A)特定ポリマーの含有量は、樹脂組成物(組成物1)の固形分全質量に対し、5質量%〜80質量%が好ましく、15質量%〜75質量%が好ましく、20質量%〜65質量%がより好ましい。
例えば、本発明の樹脂組成物をレリーフ印刷版原版のレリーフ形成層に適用した場合、特定ポリマーの含有量を15質量%以上とすることで、得られたレリーフ印刷版を印刷版として使用するに足る耐刷性が得られ、また、75質量%以下とすることで、他成分が不足することがなく、レリーフ印刷版をフレキソ印刷版とした際においても印刷版として使用するに足る柔軟性を得ることができる
【0036】
<(B)カーボンブラック>
本発明に用いる組成物1は、(B)カーボンブラックを含有する。
ここで、カーボンブラックは、光熱変換剤として機能するものであって、この成分がレーザーの光を吸収し発熱することで、レリーフ形成層の硬化物(架橋後のレリーフ形成層)の熱分解を促進すると考えられる。
【0037】
カーボンブラックは、組成物1中における分散性などが安定である限り、ASTMによる分類のほか、用途(例えば、カラー用、ゴム用、乾電池用など)の如何に拘らずいずれも使用可能である。カーボンブラックには、例えば、ファーネスブラック、サーマルブラック、チャンネルブラック、ランプブラック、アセチレンブラックなどが含まれる。なお、カーボンブラックなどの黒色材料は、分散を容易にするため、必要に応じて分散剤を用い、予めニトロセルロースやバインダーなどに分散させたカラーチップやカラーペーストとして使用することができ、このようなチップやペーストは市販品として容易に入手できる。
【0038】
本発明においては、比較的小さい比表面積及び比較的小さいDBP吸油量を有するカーボンブラックや比表面積の大きい微細化されたカーボンブラックまでを使用することも可能である。好適なカーボンブラックの例は、Printex(登録商標)U、Printex(登録商標)A、又はSpezialschwarz(登録商標)4(以上、Degussa社製)を含む。
【0039】
本発明に適用しうるカーボンブラックとしては、光熱変換により発生した熱を周囲のポリマー等に効率よく伝えることで彫刻感度が向上するという観点で伝導性カーボンブラックが好ましく、比表面積としては150m/g以上であり、好ましくは、250m/g以上、特に好ましくは500m/g以上である。また、DBP吸油量としては150ml/100g以上であり、好ましくは200ml/100g以上であり、特に好ましくは250ml/100g以上である。
上述したカーボンブラックは酸性又は塩基性であってもよいが、好ましくは塩基性のカーボンブラックである。
【0040】
約1500m/gにまで及ぶ比表面積及び約550ml/100gにまで及ぶDBP吸油量を有する適当な伝導性カーボンブラックが、例えば、Ketjenblack(登録商標)EC300J、Ketjenblack(登録商標)EC600J(Akzoより)、Printex(登録商標)XE(Degussaより)又はBlack Pearls(登録商標)2000(Cabotより)、ケッチェンブラック(ライオン(株)製)の名称で、商業的に入手可能である。
【0041】
組成物1において、(B)カーボンブラックの含有量は組成物1の固形分に対し、0.01質量%〜20質量%であり、好ましくは0.1質量%〜5質量%である。この範囲にあると彫刻感度が良好である。
【0042】
<(C)熱重合開始剤>
本発明に用いる組成物1には、さらに(C)熱重合開始剤を含有する。
熱重合開始剤は当業者間で公知のものを制限なく使用することができる。以下、好ましい熱重合開始剤であるラジカル重合開始剤について詳述するが、本発明はこれらの記述により制限を受けるものではない。
【0043】
本発明において、好ましい熱重合開始剤であるラジカル重合開始剤としては、有機過酸化物、およびアゾ系化合物等が挙げられる。
有機過酸化物、およびアゾ系化合物等を用いることによって、彫刻感度と、レリーフ印刷版原版のレリーフ形成層に適用した際にはレリーフエッジ形状を良好とすることができる。
これらのうちでも有機過酸化物が特に好ましい。
有機過酸化物、およびアゾ系化合物としては、以下に示す化合物が好ましい。本発明はこれらに限定されるものではない。
【0044】
(有機過酸化物)
本発明に用いうる熱重合開始剤であるラジカル重合開始剤として好ましい有機過酸化物としては、3,3’4,4’−テトラ−(tert−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’4,4’−テトラ−(tert−アミルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’4,4’−テトラ−(tert−ヘキシルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’4,4’−テトラ−(tert−オクチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’4,4’−テトラ−(クミルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’4,4’−テトラ−(p−イソプロピルクミルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、ジ−tert−ブチルジパーオキシイソフタレートなどの過酸化エステル系が好ましい。
【0045】
(アゾ系化合物)
本発明に用いうる熱重合開始剤であるラジカル重合開始剤として好ましいアゾ系化合物としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビスプロピオニトリル、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)、2,2’−アゾビスイソ酪酸ジメチル、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミドオキシム)、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2’−アゾビス(N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2’−アゾビス(N−シクロヘキシル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2’−アゾビス[N−(2−プロペニル)−2−メチルプロピオンアミド]、2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)等を挙げることができる。
【0046】
本発明における(C)熱重合開始剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用することも可能である。
(C)熱重合開始剤は、組成物1の全固形分に対し、好ましくは0.01〜10質量%、より好ましくは0.1〜3質量%の割合で添加することができる。
【0047】
<(D)架橋剤>
本発明においては、レリーフ形成層中に架橋構造を形成する観点から、組成物1には、必要に応じて(D)架橋剤を含むことが好ましい。
本発明に用いる架橋剤は、熱に起因した化学反応により高分子化してレリーフ形成層を硬化可能であるものであれば特に限定されず用いることができる。特に、エチレン性不飽和二重結合を有する重合性化合物(以下、「重合性化合物」ともいう)、シランカップリング剤等が好ましく用いられる。これらの化合物は、特定ポリマーと反応することによりレリーフ形成層中に架橋構造を形成してもよく、またはこれらの化合物同士で反応することにより架橋構造を形成してもよく、これら両方の反応により架橋構造を形成してもよい。
ここで用いうる重合性化合物としては、エチレン性不飽和二重結合を少なくとも1個、好ましくは2個以上、より好ましくは2〜6個有する化合物の中から任意に選択することができる。
【0048】
以下、重合性化合物として用いられる、エチレン性不飽和二重結合を分子内に1つ有する単官能モノマー、及び、同結合を分子内に2個以上有する多官能モノマーについて説明する。
本発明に係るレリーフ形成層は、膜中に架橋構造を有することが必要であることから、多官能モノマーが好ましく使用される。これらの多官能モノマーの分子量は、200〜2,000であることが好ましい。
【0049】
単官能モノマーとしては、不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸等)と一価アルコール化合物とのエステル、不飽和カルボン酸と一価アミン化合物とのアミド等が挙げられる。
また、多官能モノマーとしては、不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸等)と多価アルコール化合物とのエステル、不飽和カルボン酸と多価アミン化合物とのアミド等が挙げられる。
また、ヒドロキシ基やアミノ基、メルカプト基等の求核性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル或いはアミド類と単官能若しくは多官能イソシアネート類或いはエポキシ類との付加反応物、及び単官能若しくは、多官能のカルボン酸との脱水縮合反応物等も好適に使用される。
【0050】
さらに、イソシアネート基や、エポキシ基等の親電子性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル或いはアミド類と単官能若しくは多官能のアルコール類、アミン類、チオール類との付加反応物、更にハロゲン基や、トシルオキシ基等の脱離性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル或いはアミド類と単官能若しくは多官能のアルコール類、アミン類、チオール類との置換反応物も好適である。
また、別の例として、上記の不飽和カルボン酸の代わりに、不飽和ホスホン酸、スチレン、ビニルエーテル等に置換えた化合物群を使用することも可能である。
重合性化合物としては、特に制限はなく、前記例示した化合物の他、公知の種々の化合物を用いることができ、例えば、特開2009−204962号公報の段落〔0098〕〜〔0124〕に記載の化合物などを使用してもよい。
【0051】
本発明においては、重合性化合物として、彫刻感度向上の観点から、分子内に硫黄原子を有する化合物を用いることが好ましい。
このように分子内に硫黄原子を有する重合性化合物としては、彫刻感度向上の観点から、特に、2つ以上のエチレン性不飽和結合を有し、そのうち2つのエチレン性不飽和結合間を連結する部位に炭素−硫黄結合を有する重合性化合物(以下、適宜、「含硫黄多官能モノマー」と称する。)を用いることが好ましい。
【0052】
本発明における含硫黄多官能モノマー中の炭素−硫黄結合を含んだ官能基としては、スルフィド、ジスルフィド、スルホキシド、スルホニル、スルホンアミド、チオカルボニル、チオカルボン酸、ジチオカルボン酸、スルファミン酸、チオアミド、チオカルバメート、ジチオカルバメート、又はチオ尿素を含む官能基が挙げられる。
また、含硫黄多官能モノマーにおける2つのエチレン性不飽和結合間を連結する炭素−硫黄結合を含有する連結基としては、−C−S−、−C−SS−、−NH(C=S)O−、−NH(C=O)S−、−NH(C=S)S−、及び−C−SO−から選択される少なくとも1つのユニットであることが好ましい。
【0053】
また、含硫黄多官能モノマーの分子内に含まれる硫黄原子の数は1つ以上であれば特に制限は無く、目的に応じて、適宜選択することができるが、彫刻感度と塗布溶剤に対する溶解性のバランスの観点から、1個〜10個が好ましく、1個〜5個がより好ましく、1個〜2個が更に好ましい。
一方、分子内に含まれるエチレン性不飽和部位の数は2つ以上であれば特に制限は無く、目的に応じて、適宜選択することができるが、架橋膜の柔軟性の観点で、2個〜10個が好ましく、2個〜6個がより好ましく、2個〜4個が更に好ましい。
【0054】
本発明における含硫黄多官能モノマーの分子量としては、形成される膜の柔軟性の観点から、好ましくは120〜3000であり、より好ましくは120〜1500である。
また、本発明における含硫黄多官能モノマーは単独で用いてもよいが、分子内に硫黄原子を持たない多官能重合性化合物や単官能重合性化合物との混合物として用いてもよい。
分子内に硫黄原子を有する重合性化合物の具体例としては、例えば、特開2009-255510公報の段落〔0032〕〜〔0037〕に記載のものを例示でき、ここに記載の化合物を本発明に使用してもよい。
彫刻感度の観点からは、含硫黄多官能モノマー単独で用いる、若しくは、含硫黄多官能モノマーと単官能エチレン性モノマーとの混合物として用いる態様が好ましく、より好ましくは、含硫黄多官能モノマーと単官能エチレン性モノマーとの混合物として用いる態様である。
【0055】
本発明に係るレリーフ形成層においては、含硫黄多官能モノマーをはじめとする重合性化合物を用いることにより、膜物性、例えば、脆性、柔軟性などを調整することもできる。
また、レリーフ形成層中の含硫黄多官能モノマーをはじめとする重合性化合物の総含有量は、架橋膜の柔軟性や脆性の観点から、不揮発性成分に対して、10質量%〜60質量%が好ましく、15質量%〜45質量%の範囲がより好ましい。
なお、含硫黄多官能モノマーと他の重合性化合物とを併用する場合、全重合性化合物中の含硫黄多官能モノマーの量は、5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましい。
重合性化合物を用いて架橋構造を形成する場合には、熱重合開始剤を用いることが好ましい。特に、熱重合開始剤との組み合わせで用いることが、架橋度向上の観点から好ましい。架橋度を向上させることにより、彫刻画質を向上させることができる。
【0056】
また、本発明においては(D)架橋剤としてシランカップリング剤を用いることも好ましい。
本発明においては、Si原子に、アルコキシ基またはハロゲン基が少なくとも1つ直接結合した官能基をシランカップリング基と呼び、このシランカップリング基を分子中に1つ以上有している化合物をシランカップリング剤と称する。シランカップリング基は、Si原子にアルコキシ基またはハロゲン原子が2つ以上直接結合したものが好ましく、3つ以上直接結合したものが特に好ましい。
【0057】
本発明におけるシランカップリング剤においては、Si原子に直接結合している官能基として、アルコキシ基及びハロゲン原子の少なくとも1つ以上の官能基を有することが必須であり、化合物の取り扱いやすさの観点からは、アルコキシ基を有するものが好ましい。
ここで、アルコキシ基としては、リンス性と耐刷性の観点から炭素数1〜30のアルコキシ基が好ましい。より好ましくは炭素数1〜15のアルコキシ基、特に好ましくは炭素数1〜5のアルコキシ基である。
また、ハロゲン原子として、F原子、Cl原子、Br原子、I原子が挙げられ、合成のしやすさ及び安定性の観点で、好ましくはCl原子及びBr原子が挙げられ、より好ましくはCl原子である。
【0058】
本発明におけるシランカップリング剤は、膜の架橋度と柔軟性のバランスを良好に保つ観点で、上記シランカップリング基を分子内に1個以上10個以下含むことが好ましく、より好ましくは1個以上5個以下であり、特に好ましくは2個以上4個以下である。
シランカップリング基が2つ以上ある場合には、シランカップリング基同士が連結基で連結されていることが好ましい。連結基としては、ヘテロ原子や炭化水素などの置換基を有してもよい2価以上の有機基が挙げられ、彫刻感度が高い点ではヘテロ原子(N、S、O)を含む態様が好ましく、特に好ましくはS原子を含む連結基である。
このような観点からは、本発明におけるシランカップリング剤として、アルコキシ基としてメトキシ基またはエトキシ基、なかでも、メトキシ基がSi原子に結合したシランカップリング基を分子内に2個有し、且つ、これらシランカップリング基が、ヘテロ原子、特に好ましくはS原子を含む、アルキレン基を介して結合している化合物が好適である。
より具体的には、スルフィド基を含む連結基を有するものが好ましい。
【0059】
また、シランカップリング基同士を連結する連結基の他の好ましい態様として、オキシアルキレン基を有する連結基が挙げられる。連結基がオキシアルキレン基を含むことで、レーザ彫刻後の彫刻カスのリンス性が向上する。オキシアルキレン基としては、好ましくはオキシエチレン基であり、より好ましくは、オキシエチレン基が複数連結されたポリオキシエチレン鎖である。ポリオキシエチレン鎖におけるオキシエチレン基の総数としては、2〜50が好ましく、3〜30がより好ましく、4〜15が特に好ましい。
【0060】
以下、本発明に適用しうるシランカップリング剤の具体例としては、例えば、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、β−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、ビス(トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、1,4−ビス(トリエトキシシリル)ベンゼン、ビス(トリエトキシシリル)エタン、1,6−ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン、1,8−ビス(トリエトキシシリル)オクタン、1,2−ビス(トリメトキシシリル)デカン、ビス(トリエトキシシリルプロピル)アミン、ビス(トリメトキシシリルプロピル)ウレア等を挙げることができる。そのほかにも、以下の一般式で示す化合物が好ましいものとして挙げられるが、本発明はこれらの化合物に制限されるものではない。
【0061】
【化3】

【0062】
【化4】

【0063】
【化5】

【0064】
【化6】

【0065】
【化7】

【0066】
前記各式中、Rは以下の構造から選択される部分構造を表す。分子内に複数のR及びRが存在する場合、これらは互いに同じでも異なっていてもよく、合成適性上は、同一であることが好ましい。
【0067】
【化8】

【0068】
【化9】

【0069】
前記各式中、Rは以下に示す部分構造を表す。Rは前記したのと同義である。分子内に複数のR及びRが存在する場合、これらは互いに同じでも異なっていてもよく、合成適性上は、同一であることが好ましい。
【0070】
【化10】

【0071】
これらのシランカプリング剤は、適宜合成して得ることも可能であるが、市販品を用いることがコストの面から好ましい。これらのシランカプリング剤としては、例えば、信越化学工業(株)、東レ・ダウコーニング(株)、モメンティブパフォーマンスマテリアルズ(株)、チッソ(株)等から市販されているシラン製品、シランカップリング剤などの市販品がこれに相当するため、本発明に用いる樹脂組成物に、これら市販品を、目的に応じて適宜選択して使用してもよい。
【0072】
本発明におけるシランカップリング剤として、前記化合物の他、1種のシランを用いて得られた部分加水分解縮合物、および2種以上のシランを用いて得られた部分共加水分解縮合物を用いることができる。以下、これらの化合物を「部分(共)加水分解縮合物」と称することがある。
【0073】
このような部分(共)加水分解縮合物の具体例としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、メチルトリアセトキシシラン、メチルトリス(メトキシエトキシ)シラン、メチルトリス(メトキシプロポキシ)シラン、エチルトリメトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、へキシルトリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、トリルトリメトキシシラン、クロロメチルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、シアノエチルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、メチルエチルジメトキシシラン、メチルプロピルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン、γ−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン等のアルコキシシラン又はアセチルオキシシラン、エトキサリルオキシシラン等のアシロキシシランからなるシラン化合物から選択される1種以上を前駆体として用いて得られた部分(共)加水分解縮合物を挙げることができる。
【0074】
これらの部分(共)加水分解縮合物前駆体としてのシラン化合物の中でも、汎用性、コスト面、膜の相溶性の観点から、ケイ素上の置換基としてメチル基及びフェニル基から選択される置換基を有するシラン化合物であることが好ましく、具体的には、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシランが好ましい前駆体として例示される。
【0075】
この場合、部分(共)加水分解縮合物としては、上記したようなシラン化合物の2量体(シラン化合物2モルに水1モルを作用させてアルコール2モルを脱離させ、ジシロキサン単位としたもの)〜100量体、好ましくは2量体〜50量体、更に好ましくは2量体〜30量体としたものが好適に使用できるし、2種以上のシラン化合物を原料とする部分(共)加水分解縮合物を使用することも可能である。
【0076】
なお、このような部分(共)加水分解縮合物はシリコーンアルコキシオリゴマーとして市販されているものを使用してもよく(例えば、信越化学工業(株)などから市販されている)、また、常法に基づき、加水分解性シラン化合物に対し当量未満の加水分解水を反応させた後に、アルコール、塩酸等の副生物を除去することによって製造したものを使用してもよい。製造に際しては、前駆体となる原料の加水分解性シラン化合物として、例えば、上記したようなアルコキシシラン類やアシロキシシラン類を使用する場合は、塩酸、硫酸等の酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物、トリエチルアミン等のアルカリ性有機物質等を反応触媒として部分加水分解縮合すればよく、クロロシラン類から直接製造する場合には、副生する塩酸を触媒として水及びアルコールを反応させればよい。
【0077】
本発明の樹脂組成物におけるシランカップリング剤は1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明に用いる組成物1中に含まれるシランカップリング剤の含有量(前記の部分(共)加水分解縮合物を含む。)は、固形分換算で、0.1質量%〜80質量%の範囲であることが好ましく、より好ましくは1質量%〜40質量%の範囲であり、最も好ましくは5質量%〜30質量%である。
【0078】
本発明の組成物1においては、ポリマーとして水酸基を有するバインダーポリマーを用いた場合、シランカップリング剤のシランカップリング基が、ポリマー中の水酸基(−OH)とアルコール交換反応を起こし、架橋構造を形成することも可能である。その結果、ポリマーの分子同士がシランカップリング剤を介して3次元的に架橋される。
本発明の組成物1には、シランカップリング剤と水酸基を有するポリマーとの架橋構造形成を促進するため、アルコール交換反応触媒を含有することが好ましい。
アルコール交換反応触媒は、シランカップリング反応において一般に用いられる反応触媒であれば、限定なく適用できる。代表的なアルコール交換反応触媒である酸あるいは塩基性触媒、及び、金属錯体触媒について順次説明する。
【0079】
(酸あるいは塩基性触媒)
触媒としては、酸、あるいは塩基性化合物をそのまま用いるか、あるいは水または有機溶剤などの溶媒に溶解させた状態のもの(以下、それぞれ酸性触媒、塩基性触媒と称する)を用いる。溶媒に溶解させる際の濃度については特に限定はなく、用いる酸、或いは塩基性化合物の特性、触媒の所望の含有量などに応じて適宜選択すればよい。
酸性触媒あるいは塩基性触媒の種類は特に限定されないが、具体的には、酸性触媒としては、塩酸などのハロゲン化水素、硝酸、硫酸、亜硫酸、硫化水素、過塩素酸、過酸化水素、炭酸、蟻酸や酢酸などのカルボン酸、そのRCOOHで表される構造式のRを他元素または置換基によって置換した置換カルボン酸、ベンゼンスルホン酸などのスルホン酸、リン酸などが挙げられ、塩基性触媒としては、アンモニア水などのアンモニア性塩基、エチルアミンやアニリンなどのアミン類などが挙げられる。膜中でのアルコール交換反応を速やかに進行させる観点で、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ピリジニウム
p−トルエンスルホネート、リン酸、ホスホン酸、酢酸が好ましく、特に好ましくは、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、リン酸である。
【0080】
(金属錯体触媒)
本発明においてアルコール交換反応触媒として用いられる金属錯体触媒は、好ましくは、周期律表の2A、3B、4Aおよび5A族から選ばれる金属元素とβ−ジケトン(アセチルアセトンなどが好ましい)、ケトエステル、ヒドロキシカルボン酸またはそのエステル、アミノアルコール、エノール性活性水素化合物の中から選ばれるオキソまたはヒドロキシ酸素化合物から構成されるものである。
更に、構成金属元素の中では、Mg,Ca,St,Baなどの2A族元素、Al,Gaなどの3B族元素,Ti,Zrなどの4A族元素およびV,NbおよびTaなどの5A族元素が好ましく、それぞれ触媒効果の優れた錯体を形成する。その中でもZr、AlおよびTiから得られる錯体が優れており、好ましい(オルトチタン酸エチルなど)。
これらは水系塗布液での安定性および、加熱乾燥時のゾルゲル反応でのゲル化促進効果に優れているが、中でも、特にエチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピオネート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、ジ(アセチルアセトナト)チタニウム錯塩、ジルコニウムトリス(エチルアセトアセテート)が好ましい。
【0081】
本発明の組成物1には、アルコール交換反応触媒を1種のみ用いてもよく、2種以上併用してもよい。樹脂組成物におけるアルコール交換反応触媒の含有量は、水酸基を有するバインダーポリマーに対して、0.01〜20質量%であることが好ましく、0.1〜10質量%であることがより好ましい。
【0082】
組成物1中の含硫黄多官能モノマーをはじめとする(D)架橋剤の総含有量は、架橋膜の柔軟性や脆性の観点から、組成物1の全固形分に対して、10質量%〜60質量%が好ましく、15質量%〜45質量%の範囲がより好ましい。
なお、含硫黄多官能モノマーと他の重合性化合物とを併用する場合、組成物1中の全重合性化合物中の含硫黄多官能モノマーの量は、5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましい。
【0083】
<溶剤>
本発明の組成物1を調製する際に用いる溶媒に特に指定はないが、例えば、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、トルエン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、メチルエチルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,3−プロパンジオールである。
【0084】
以上のようにして得られた組成物1を、熱により架橋させることによって、レリーフ形成層形成用組成物=組成物2を得ることができる。ここで熱による架橋を施す方法としては、組成物1をレリーフ形成層として支持体上に塗設して、そのまま、または架橋温度より低温で乾燥後、50℃〜150℃の範囲で、0.5時間〜24時間の範囲で加熱し、架橋させることによって組成物2を得ることができる。
【0085】
(A)特定ポリマーが、架橋されることで、組成物2に含まれる特定ポリマーが(重合性化合物を使用した時は重合性化合物を含めて)、三次元架橋構造が形成されるのでレリーフ形成層を作製した場合、それにより得られるレリーフ層の膜物性が向上し、長期間にわたる印刷において繰り返し印圧がかかった状態にでも、耐刷性が良化したものと推定される。
さらに、この(A)特定ポリマーが、分子内に炭素と結合する硫黄原子を有する連結基を持つ場合、その結合エネルギーが低いことから、レーザー彫刻で熱分解されやすくなり、彫刻感度がさらに向上するものと考えられる。
【0086】
このように、(A)特定ポリマー同士(架橋剤を使用した時は架橋剤を含めて)が、組成物の調整及び製膜時に、架橋構造を形成することで種々の優れた物性を発現する。
本発明に用いる組成物2において、架橋構造が形成されたことの確認は、通常、膜物性の変化から容易に確認可能であるが、詳細は以下の方法で行うことができる。
架橋後の膜について“固体13C−NMR”を用いて同定可能である。
(A)特定ポリマー中の不飽和基に直接結合した炭素原子は、熱による重合反応の前後で電子的な環境が変化するので、これに伴いピークの位置が変化する。不飽和基の炭素ピークの強度を、架橋前後で比較することで、架橋反応である重合反応が進行していること及びおおよその反応率を知ることができる。なお、ピークの位置の変化の程度は、用いる(A)特定ポリマーの構造により異なるため、この変化は相対的な指標である。
【0087】
また、他の方法として、架橋前後の膜を溶剤に浸漬して膜の外観の変化を目視観察する方法が挙げられ、この方法によっても架橋の進行を知ることが可能である。
具体的には、組成物2を製膜して、該組成物膜をアセトン中に室温で24時間浸漬し外観を目視観察すると、架橋構造が形成されてない場合や、架橋構造が形成されてもわずかな場合は膜がアセトンに溶解し、外観を留めない程度に変形するか、又は、溶解して目視で固形物が確認できない状態になるが、架橋構造を有する場合には、膜が不溶化して膜の外観がアセトン浸漬前の状態を留めたままとなる。
【0088】
本発明に用いる組成物1、および組成物2には、上述した(A)特定ポリマー、(B)カーボンブラック、および(C)熱重合開始剤である必須成分以外に、本発明の効果を損なわない限りにおいて、目的に応じて(D)架橋剤、(A−2)併用可能なその他のポリマー、(B−2)その他の熱変換剤、可塑剤等の任意成分を含む。以下、これらの各成分について詳述する。
【0089】
<(A−2)併用可能なその他のポリマー>
本発明に用いる組成物1、および組成物2には、上記(A)特定ポリマーの他に(A)特定ポリマーに包含されない公知のポリマーを併用することができる。以下、このようなポリマーを(A−2)併用可能なその他のポリマーと称する。
(A−2)併用可能なその他のポリマーは、前記(A)特定ポリマーとともに、レリーフ形成層用組成物に含有される主成分を構成するものであり、(A)特定ポリマーに包含されない一般的な高分子化合物を適宜選択し、1種又は2種以上を併用して用いることができる。特に、レーザー彫刻用樹脂組成物を印刷版原版に用いる際は、レーザー彫刻性、インキ受与性、彫刻カス分散性などの種々の性能を考慮して選択することが必要である。
【0090】
併用可能なその他のポリマーとしては、ポリスチレン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、アセタール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ゴム、熱可塑性エラストマーなどから選択して用いることができる。
【0091】
例えば、レーザー彫刻感度の観点からは、露光或いは加熱により熱分解する部分構造を含むポリマーが好ましい。このようなポリマーは、特開2008−163081号公報〔0038〕に記載されているものが好ましく挙げられる。また、例えば、柔軟で可撓性を有する膜形成が目的とされる場合には、軟質樹脂や熱可塑性エラストマーが選択される。特開2008−163081号公報〔0039〕〜〔0040〕に詳述されている。更に、レーザー彫刻用樹脂組成物を、レーザー彫刻用レリーフ印刷版原版におけるレリーフ形成層に適用する場合であれば、レリーフ形成層用組成物の調製の容易性、得られたレリーフ印刷版における油性インクに対する耐性向上の観点から、親水性又は親アルコール性ポリマーを使用することが好ましい。親水性ポリマーとしては、特開2008−163081号公報〔0041〕に詳述されているものを使用することができる。
【0092】
また、ポリ乳酸などのヒドロキシカルボン酸ユニットからなるポリエステルを好ましく用いることができる。このようなポリエステルとしては、具体的には、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)、乳酸系ポリマー、ポリグリコール酸(PGA)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリ(ブチレンコハク酸)、これらの誘導体又は混合物から成る群から選択されるものが好ましい。
【0093】
加えて、加熱により硬化させ、強度を向上させる目的に使用する場合には、主鎖に炭素−炭素不飽和結合をもつポリマーも好ましく用いられる。
主鎖に炭素−炭素不飽和結合を含むポリマーとしては、例えば、SB(ポリスチレン−ポリブタジエン)、SBS(ポリスチレン−ポリブタジエン−ポリスチレン)、SIS(ポリスチレン−ポリイソプレン−ポリスチレン)、SEBS(ポリスチレン−ポリエチレン/ポリブチレン−ポリスチレン)等が挙げられる。
このように、レリーフ印刷版の適用用途に応じた物性を考慮し、目的に応じたバインダーポリマーを選択し、当該バインダーポリマーの1種を、或いは、2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0094】
ポリマーの総含有量〔(A)特定ポリマーと(A−2)併用可能なその他のポリマーとの合計含有量〕は、レリーフ形成層用組成物の固形分全質量に対し、5質量%〜95質量%が好ましく、15質量%〜80質量%が好ましく、20質量%〜65質量%がより好ましい。
例えば、本発明に用いるレリーフ形成層用組成物をレリーフ印刷版原版のレリーフ形成層に適用した場合、ポリマーの総含有量を5質量%以上とすることで、得られたレリーフ印刷版を印刷版として使用するに足る耐刷性が得られ、また、80質量%以下とすることで、他成分が不足することがなく、レリーフ印刷版をフレキソ印刷版とした際においても印刷版として使用するに足る柔軟性を得ることができる。
【0095】
<(B−2)カーボンブラック以外の光熱変換剤>
本発明に係るレリーフ形成層は、さらに(B−2)カーボンブラック以外の光熱変換剤を含有してもよい。
本発明に係るレーザー彫刻用レリーフ形成層を、波長700nm〜1300nmの赤外線を発するレーザー(YAGレーザー、半導体レーザー、ファイバーレーザー、面発光レーザー等)を光源としてレーザー彫刻に用いる場合に、光熱変換剤としては、700nm〜1300nmに極大吸収波長を有する化合物を用いることが好ましい。
本発明における光熱変換剤としては、種々の染料又は顔料が用いられる。
【0096】
(B−2)カーボンブラック以外の光熱変換剤のうち、染料としては、市販の染料及び例えば「染料便覧」(有機合成化学協会編集、昭和45年刊)等の文献に記載されている公知のものが利用できる。具体的には、700nm〜1300nmに極大吸収波長を有するものが挙げられ、アゾ染料、金属錯塩アゾ染料、ピラゾロンアゾ染料、ナフトキノン染料、アントラキノン染料、フタロシアニン染料、カルボニウム染料、ジインモニウム化合物、キノンイミン染料、メチン染料、シアニン染料、スクワリリウム色素、ピリリウム塩、金属チオレート錯体等の染料が挙げられる。特に、ヘプタメチンシアニン色素等のシアニン系色素、ペンタメチンオキソノール色素等のオキソノール系色素、フタロシアニン系色素が好ましく用いられ、例えば、特開2008−63554号公報の段落〔0124〕〜〔0137〕に記載の染料を挙げることができる。
【0097】
本発明において使用される光熱変換剤のうち、顔料としては、市販の顔料及びカラーインデックス(C.I.)便覧、「最新顔料便覧」(日本顔料技術協会編、1977年刊)、「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)、「印刷インキ技術」CMC出版、1984年刊)に記載されている顔料が利用できる。
【0098】
顔料の種類としては、黒色顔料、黄色顔料、オレンジ色顔料、褐色顔料、赤色顔料、紫色顔料、青色顔料、緑色顔料、蛍光顔料、金属粉顔料、その他、ポリマー結合色素が挙げられる。具体的には、不溶性アゾ顔料、アゾレーキ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料、フタロシアニン系顔料、アントラキノン系顔料、ペリレン及びペリノン系顔料、チオインジゴ系顔料、キナクリドン系顔料、ジオキサジン系顔料、イソインドリノン系顔料、キノフタロン系顔料、染付けレーキ顔料、アジン顔料、ニトロソ顔料、ニトロ顔料、天然顔料、蛍光顔料、無機顔料、等が使用できる。
【0099】
レリーフ形成層全固形分における(B−2)カーボンブラック以外の光熱変換剤の含有量は、その分子固有の分子吸光係数の大きさにより大きく異なるが、0.01質量%〜20質量%の範囲が好ましく、より好ましくは0.05質量%〜10質量%、特に好ましくは0.1質量%〜5質量%の範囲である。
【0100】
<その他添加剤>
本発明に用いるレリーフ形成層用組成物(組成物2)は、可塑剤を含有することが好ましい。可塑剤は、レリーフ形成層用組成物により形成された膜を柔軟化する作用を有するものであり、ポリマーに対して相溶性のよいものである必要がある。
可塑剤としては、例えばジオクチルフタレート、ジドデシルフタレート等や、ポリエチレングリコール類、ポリプロピレングリコール(モノオール型やジオール型)、ポリプロピレングリコール(モノオール型やジオール型)好ましく用いられる。
本発明のレリーフ形成層用組成物は、彫刻感度向上のための添加剤として、ニトロセルロースや高熱伝導性物質、を加えることがより好ましい。ニトロセルロースは自己反応性化合物であるため、レーザー彫刻時、自身が発熱し、共存する親水性ポリマー等のバインダーポリマーの熱分解をアシストする。その結果、彫刻感度が向上すると推定される。
高熱伝導性物質は、熱伝達を補助する目的で添加され、熱伝導性物質としては、金属粒子等の無機化合物、導電性ポリマー等の有機化合物が挙げられる。金属粒子としては、粒径がマイクロメートルオーダーから数ナノメートルオーダーの、金微粒子、銀微粒子、銅微粒子が好ましい導電性ポリマーとしては、特に共役ポリマーが好ましく、具体的には、ポリアニリン、ポリチオフェンが挙げられる。
また、共増感剤を用いることで、レリーフ形成層用組成物を光硬化させる際の感度を更に向上させることができる。
更に、組成物の製造中或いは保存中において重合性化合物の不要な熱重合を阻止するために少量の熱重合禁止剤を添加することが望ましい。
レリーフ形成層用組成物の着色を目的として染料若しくは顔料等の着色剤を添加してもよい。これにより、画像部の視認性や、画像濃度測定機適性といった性質を向上させることができる。
更に、レリーフ形成層用組成物の硬化皮膜の物性を改良するために充填剤等の公知の添加剤を加えてもよい。
【0101】
本発明のレーザー彫刻用レリーフ印刷版原版は、前記のような成分を含有するレリーフ形成層用樹脂組成物からなるレリーフ形成層を有する。レリーフ形成層は、支持体上に設けられることが好ましい。
本発明において「レーザー彫刻用レリーフ印刷版原版」とは、レーザー彫刻用樹脂組成物からなる架橋性を有するレリーフ形成層が、熱により硬化された状態のものをいう。該印刷版原版をレーザー彫刻することにより「レリーフ印刷版」が作製される。
【0102】
レーザー彫刻用レリーフ印刷版原版は、必要により更に、支持体とレリーフ形成層との間に接着層を、また、レリーフ形成層上にスリップコート層、保護フィルムを有していてもよい。
【0103】
<レリーフ形成層>
レリーフ形成層は、本発明のレーザー彫刻用組成物からなる層である。レーザー彫刻用組成物として架橋性組成物を用いると、架橋性のレリーフ形成層が得られる。本発明のレーザー彫刻用レリーフ印刷版原版としては、(A)側鎖にエチレン性不飽和結合を有するポリマー、(B)カーボンブラック、及び、(C)熱重合開始剤、を含有する樹脂組成物に、さらに(D)架橋剤を含有することでさらなる架橋性の機能を付与した組成物1を、熱によって架橋させてなるレリーフ形成層を有するものが好ましい。
【0104】
レーザー彫刻用レリーフ印刷版原版によるレリーフ印刷版の作製態様としては、レリーフ形成層を、熱架橋させて硬化されたレリーフ形成層を有するレリーフ印刷版原版とした後、該硬化されたレリーフ形成層(硬質のレリーフ形成層)をレーザー彫刻することによりレリーフ層を形成してレリーフ印刷版を作製する態様であることが好ましい。レリーフ形成層を架橋することにより、印刷時におけるレリーフ層の摩耗を防ぐことができ、また、レーザー彫刻後にシャープな形状のレリーフ層を有するレリーフ印刷版を得ることができる。
【0105】
なお、レリーフ形成層は、レリーフ形成層用の前記の如き成分を有するレーザー彫刻用樹脂組成物をシート状或いはスリーブ状に成形することで形成することができる。
【0106】
<支持体>
レーザー彫刻用レリーフ印刷版原版に使用しうる支持体について説明する。
レーザー彫刻用レリーフ印刷版原版に支持体に使用する素材は特に限定されないが、寸法安定性の高いものが好ましく使用され、例えば、スチール、ステンレス、アルミニウムなどの金属、ポリエステル(例えばPET、PBT、PAN)やポリ塩化ビニルなどのプラスチック樹脂、スチレン−ブタジエンゴムなどの合成ゴム、ガラスファイバーで補強されたプラスチック樹脂(エポキシ樹脂やフェノール樹脂など)が挙げられる。支持体としては、PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムやスチール基板が好ましく用いられる。支持体の形態は、レリーフ形成層がシート状であるかスリーブ状であるかによって決定される。また、架橋性のレーザー彫刻用樹脂組成物を塗布し、裏面(レーザー彫刻を行う面と反対面であり、円筒状のものも含む)から光又は熱などで硬化させて作成されたレーザー彫刻用レリーフ印刷版原版においては、硬化したレーザー彫刻用樹脂組成物の裏面側が支持体として機能する為、必ずしも支持体は必須ではない。
【0107】
<接着層>
レリーフ形成層と支持体の間には、両層間の接着力を強化する目的で接着層を設けてもよい。接着層に使用しうる材料(接着剤)としては、例えば、I.Skeist編、「Handbook of Adhesives」、第2版(1977)に記載のものを用いることができる。
【0108】
<保護フィルム、スリップコート層>
レリーフ形成層表面への傷・凹み防止の目的で、レリーフ形成層表面に保護フィルムを設けてもよい。保護フィルムの厚さは25μm〜500μmが好ましく、50μm〜200μmがより好ましい。保護フィルムは、例えばPET(ポリエチレンテレフタレート)のようなポリエステル系フィルム、PE(ポリエチレン)やPP(ポリプロピレン)のようなポリオレフィン系フィルムを用いることができる。またフィルムの表面はマット化されていてもよい。レリーフ形成層上に保護フィルムを設ける場合、保護フィルムは剥離可能でなければならない。
【0109】
保護フィルムが剥離不可能な場合や、逆にレリーフ形成層に接着しにくい場合には、両層間にスリップコート層を設けてもよい。スリップコート層に使用される材料は、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、部分鹸化ポリビニルアルコール、ヒドロシキアルキルセルロース、アルキルセルロース、ポリアミド樹脂など、水に溶解又は分散可能で、粘着性の少ない樹脂を主成分とすることが好ましい。
【0110】
−レーザー彫刻用レリーフ印刷版原版の作製方法−
次に、レーザー彫刻用レリーフ印刷版原版の作製方法について説明する。
レーザー彫刻用レリーフ印刷版原版におけるレリーフ形成層の形成は、特に限定されるものではないが、例えば、レリーフ形成層用組成物(レーザー彫刻用組成物を含有)を調製し、このレリーフ形成層用組成物から溶剤を除去した後に、支持体上に溶融押し出しする方法が挙げられる。或いはレリーフ形成層用組成物を、支持体上に流延し、これをオーブン中で乾燥して組成物から溶媒を除去する方法でもよい。
その後、必要に応じてレリーフ形成層の上に保護フィルムをラミネートしてもよい。ラミネートは、加熱したカレンダーロールなどで保護フィルムとレリーフ形成層を圧着することや、表面に少量の溶媒を含浸させたレリーフ形成層に保護フィルムを密着させることよって行うことができる。
保護フィルムを用いる場合には、先ず保護フィルム上にレリーフ形成層を積層し、次いで支持体をラミネートする方法を採ってもよい。
接着層を設ける場合は、接着層を塗布した支持体を用いることで対応できる。スリップコート層を設ける場合は、スリップコート層を塗布した保護フィルムを用いることで対応できる。
【0111】
レリーフ形成層用組成物(組成物2)は、例えば、(A)特定ポリマー、(B)カーボンブラック等を適当な溶媒に溶解させ、次いで、(C)熱重合開始剤、および任意成分である(D)架橋剤等を溶解させ、前記した温度範囲に加熱することによって製造できる。溶媒成分のほとんどは、レリーフ印刷版原版を製造する段階で除去する必要があるので、溶媒としては揮発しやすい低分子アルコール(例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、プロピレングリコ−ルモノメチルエーテル)等を用い、かつ温度を調整するなどして溶媒の全添加量をできるだけ少なく抑えることが好ましい。
【0112】
ここで、本発明において、レーザー彫刻用レリーフ印刷版原版といった場合、前述のように、レリーフ形成層が架橋された状態までを指す。レリーフ形成層を架橋する方法には、レリーフ形成層を加熱により架橋する工程(後述の本発明のレリーフ印刷版の製造方法における工程(1))を行うことが好ましい。
【0113】
レーザー彫刻用レリーフ印刷版原版におけるレリーフ形成層の厚さは、架橋の前後において、0.05mm以上10mm以下が好ましく、より好ましくは0.05mm以上7mm以下、特に好ましくは0.05mm以上3mm以下である。
【0114】
[レリーフ印刷版及びその製造]
本発明のレリーフ印刷版原版を用いたレリーフ印刷版の製造方法は、(1)本発明のレーザー彫刻用レリーフ印刷版原版におけるレリーフ形成層を加熱し架橋する工程(以下、適宜「工程(1)」と称する。)、及び(2)架橋されたレリーフ形成層をレーザー彫刻してレリーフ層を形成する工程(以下、適宜「工程(2)」と称する。)、を含むことを特徴とする。
本発明のレリーフ印刷版原版を用いたレリーフ印刷版の製造方法により、支持体上にレリーフ層を有する本発明のレリーフ印刷版を製造することができる。
【0115】
<工程(1)>
本発明のレーザー彫刻用レリーフ印刷版原版は、前述のように、架橋により硬化された状態のレリーフ形成層を有する。このようなレリーフ形成層を得るためには、本発明のレーザー彫刻用レリーフ印刷版原版におけるレリーフ形成層を加熱により架橋する工程を用いることが好ましい。
加熱手段としては、印刷版原版を熱風オーブンや遠赤外オーブン内で所定時間加熱する方法や、加熱したロールに所定時間接する方法が挙げられる。
【0116】
レリーフ形成層を架橋することで、第1にレーザー彫刻後形成されるレリーフがシャープになり、第2にレーザー彫刻の際に発生する彫刻カスの粘着性が抑制されるという利点がある。
【0117】
<工程(2)>
本発明のレリーフ印刷版の製造方法では、前記した工程(1)の後、(2)架橋されたレリーフ形成層をレーザー彫刻してレリーフ層を形成する工程を行う。本発明のレリーフ印刷版の製造方法により、支持体上にレリーフ層を有する本発明のレリーフ印刷版を製造することができる。
【0118】
工程(2)は、前記工程(1)で架橋されたレリーフ形成層をレーザー彫刻してレリーフ層を形成する工程である。具体的には、架橋されたレリーフ形成層に対して形成したい画像に対応したレーザー光を照射して彫刻を行うことによりレリーフ層を形成する。好ましくは、形成したい画像のデジタルデータを元にコンピューターでレーザーヘッドを制御し、レリーフ形成層に対して走査照射する工程が挙げられる。
【0119】
この工程(2)には、赤外線レーザーが好ましく用いられる。赤外線レーザーが照射されると、レリーフ形成層中の分子が分子振動し、熱が発生する。赤外線レーザーとして炭酸ガスレーザーやYAGレーザーのような高出力のレーザーを用いると、レーザー照射部分に大量の熱が発生し、レリーフ形成層中の分子は分子切断或いはイオン化されて選択的な除去、すなわち彫刻がなされる。レーザー彫刻の利点は、彫刻深さを任意に設定できるため、構造を3次元的に制御することができる点である。例えば、微細な網点を印刷する部分は、浅く或いはショルダーをつけて彫刻することで、印圧でレリーフが転倒しないようにすることができ、細かい抜き文字を印刷する溝の部分は深く彫刻することで、溝にインキが埋まりにくくなり、抜き文字つぶれを抑制することが可能となる。
【0120】
中でも、光熱変換剤の吸収波長に対応した赤外線レーザーで彫刻する場合には、より高感度でレリーフ形成層の選択的な除去が可能となり、シャープな画像を有するレリーフ層が得られる。このような工程(2)に用いられる赤外レーザーとしては、生産性、コスト等の面から、炭酸ガスレーザー又は半導体レーザーが好ましい。特に、ファイバー付き半導体赤外線レーザーが好ましく用いられる。一般に、半導体レーザーは、COレーザーに比べレーザー発振が高効率且つ安価で小型化が可能である。また、小型であるためアレイ化が容易である。更に、ファイバーの処理によりビーム形状を制御できる。半導体レーザーとしては、吸収極大波長が700nm〜1300nmのものであれば利用可能であるが、800nm〜1200nmのものが好ましく、860nm〜1200nmのものがより好ましく、900nm〜1100nmであるものが特に好ましい。
【0121】
本発明のレリーフ印刷版の製造方法では、工程(2)に次いで、更に、必要に応じて下記工程(3)〜工程(5)を含んでもよい。
工程(3):彫刻後のレリーフ層表面を、水又は水を主成分とする液体で彫刻表面をリンスする工程(リンス工程)。
工程(4):彫刻されたレリーフ層を乾燥する工程(乾燥工程)。
工程(5):彫刻後のレリーフ層にエネルギーを付与し、レリーフ層を更に架橋する工程(後架橋工程)。
【0122】
彫刻表面に彫刻カスが付着している場合は、水又は水を主成分とする液体で彫刻表面をリンスして、彫刻カスを洗い流す上記工程(3)を追加してもよい。リンスの手段として、水道水で水洗する方法、高圧水をスプレー噴射する方法、感光性樹脂凸版の現像機として公知のバッチ式或いは搬送式のブラシ式洗い出し機で、彫刻表面を主に水の存在下でブラシ擦りする方法などが挙げられ、彫刻カスのヌメリがとれない場合は、界面活性剤を添加したリンス液を用いてもよい。
彫刻表面をリンスする工程(3)を行った場合、彫刻されたレリーフ形成層を乾燥してリンス液を揮発させる工程(4)を追加することが好ましい。
更に、必要に応じてレリーフ形成層を更に架橋させる工程(5)を追加してもよい。追加の架橋工程(5)を行うことにより、彫刻によって形成されたレリーフをより強固にすることができる。
【0123】
以上のようにして、支持体上にレリーフ層を有する、本発明のレリーフ印刷版が得られる。
レリーフ印刷版が有するレリーフ層の厚さは、耐磨耗性やインキ転移性のような種々のフレキソ印刷適性を満たす観点からは、0.05mm以上10mm以下が好ましく、より好ましくは0.05mm以上7mm以下、特に好ましくは0.05mm以上3mm以下である。
【0124】
また、レリーフ印刷版が有するレリーフ層のショアA硬度は、50°以上90°以下であることが好ましい。
レリーフ層のショアA硬度が50°以上であると、彫刻により形成された微細な網点が凸版印刷機の強い印圧を受けても倒れてつぶれることがなく、正常な印刷ができる。また、レリーフ層のショアA硬度が90°以下であると、印圧がキスタッチのフレキソ印刷でもベタ部での印刷かすれを防止することができる。
なお、本明細書におけるショアA硬度は、測定対象の表面に圧子(押針又はインデンタと呼ばれる)を押し込み変形させ、その変形量(押込み深さ)を測定して、数値化するデュロメータ(スプリング式ゴム硬度計)により測定した値である。
【0125】
本発明の製造方法で製造されたレリーフ印刷版は、凸版用印刷機による油性インキやUVインキでの印刷が可能であり、また、フレキソ印刷機によるUVインキでの印刷も可能である。
【実施例】
【0126】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。 なお、実施例におけるポリマーの重量平均分子量(Mw)は、特にことわらない限りにおいて、GPC法で測定した値を表示している。
【0127】
(P−1の合成)
撹拌羽及び冷却管をつけた3つ口フラスコ中に、デンカブチラール#3000−2(電気化学工業製、ポリビニルブチラール Mw=9万、100g)、ピリジン(和光純薬製、7.91g)、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピリジン1−オキシル
フリーラジカル(東京化成製、0.20g)を入れ、テトラヒドロフラン(和光純薬製
、1000g)に溶解させた。この溶液を氷浴につけて冷却し、アクリル酸クロリド(東京化成製、9.05g)を1時間かけて滴下した。氷浴を外して室温でさらに3時間撹拌したあと、この溶液を水(10L)に注ぎ込んだ。析出した固体をろ取し、水ですすいだ後、風乾することで、P−1(105g)を得た。得られたP−1の構造はH−NMRにより同定した。
【0128】
(P−2の合成)
P−1の合成において、アクリル酸クロリドをメタクリル酸クロリド(東京化成製))に変更した以外は、P−1の合成と同様にしてP−2を合成した。得られたP−2の構造はH−NMRにより同定した。
【0129】
(P−3の合成)
撹拌羽及び冷却管をつけた3つ口フラスコ中に、デンカブチラール#3000−2(電気化学工業製、ポリビニルブチラール Mw=9万、100g)、ジラウリル酸ジn−ブチルスズ(和光純薬製、0.10g)、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピリジン1−オキシル フリーラジカル(東京化成製、0.20g)を入れ、テトラヒドロフラン(和光純薬製、1000g)に溶解させた。この溶液にカレンズMOI(昭和電工製、15.51g)を1時間かけて滴下した。室温でさらに6時間撹拌したあと、この溶液を水(10L)に注ぎ込んだ。析出した固体をろ取し、水ですすいだ後、風乾することで、P−3(110g)を得た。得られたP−3の構造はH−NMRにより同定した。
【0130】
(P−4の合成)
P−3の合成において、カレンズMOIをカレンズBEI(昭和電工製)に変更した以外は、P−3の合成と同様にしてP−4を合成した。得られたP−4の構造はH−NMRにより同定した。
【0131】
(P−5の合成)
撹拌羽及び冷却管をつけた3つ口フラスコ中に、デンカブチラール#3000−2(電気化学工業製、ポリビニルブチラール Mw=9万、100g)、メタクリル酸3−(ト
リメトキシシリル)プロピル(東京化成製、24.84g)、4−ヒドロキシ−2,2,
6,6−テトラメチルピリジン1−オキシル フリーラジカル(東京化成製、0.20g)を入れ、メチルエチルケトン(和光純薬製、1000g)に溶解させた。この溶液にトリエチルアミン(関東化学製、0.35g)を加え、70℃で3時間撹拌した。室温まで冷却した後、溶媒を留去することで、P−5(120g)を得た。得られたP−5の構造はH−NMRにより同定した。
【0132】
(P−6の合成)
撹拌羽及び冷却管をつけた3つ口フラスコ中に、デンカブチラール#3000−2(電気化学工業製、ポリビニルブチラール誘導体 Mw=9万、100g)、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(東京化成製、82.43g)を入れ、アセトン1000gに溶解させた。この溶液を氷浴につけて冷却し、チオグリコール酸(東京化成製、39.61g)を1時間かけて滴下した。氷浴を外して室温でさらに3時間撹拌したあと、この溶液を水(10L)に注ぎ込んだ。析出した固体をろ取し、水ですすいだ後、風乾することでP−6’(130g)を得た。
【0133】
撹拌羽及び冷却管をつけた3つ口フラスコにP−6’(100g)、ピリジン(和光純薬製、20.00g)、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピリジン1−オキシル フリーラジカル(東京化成製、0.20g)を加えて、テトラヒドロフラン(和光純薬製、1000g)に溶解させた。この溶液を氷浴につけて冷却し、メタクリル酸クロリド(東京化成製、26.44g)を1時間かけて滴下した。氷浴を外して室温でさらに3時間撹拌したあと、この溶液を水(10L)に注ぎ込んだ。析出した固体をろ取し、水ですすいだ後、風乾することで、P−6(130g)を得た。得られたP−6の構造はH−NMRにより同定した。
【0134】
(P−7の合成)
P−6の合成において、メタクリル酸クロリドをアクリル酸クロリド(東京化成製))に変更した以外は、P−6の合成と同様にしてP−7を合成した。得られたP−7の構造はH−NMRにより同定した。
【0135】
(P−8の合成)
撹拌羽及び冷却管をつけた3つ口フラスコ中に、P−6’(100g)、V−65(和光純薬製、0.25g)、アクリル酸(和光純薬製、7.21g)を入れ、テトラヒドロフラン(和光純薬製、1000g)に溶解させた。この溶液を窒素雰囲気下、70℃で5
時間撹拌した。この溶液に、メタクリル酸グリシジル(和光純薬製、14.21g)、臭化テトラエチルアンモニウム(和光純薬製、0.21g)、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピリジン1−オキシル フリーラジカル(東京化成製、0.20g)
を加えて60℃でさらに5時間撹拌した。室温まで冷却した後、この溶液を水(10L)に注ぎ込んだ。析出した固体をろ取し、水ですすいだ後、風乾することで、P−8(110g)を得た。得られたP−8の構造はH−NMRにより同定した。
【0136】
(P−9の合成)
撹拌羽及び冷却管をつけた3つ口フラスコ中に、P−6’(100g)、V−65(和光純薬製、0.25g)、アクリル酸(2−ヒドロキシエチル)(東京化成製、11.61g)を入れ、テトラヒドロフラン(和光純薬製、1000g)に溶解させた。この溶液を60℃で5時間撹拌したあと、70℃で1時間撹拌した。この溶液に、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(東京化成製、19.16g)を加えた。この溶液を氷浴につけて冷却し、メタクリル酸(和光純薬製、8.61g)を1時間かけて滴下した。氷浴を外して室温でさらに3時間撹拌したあと、この溶液を水(10L)に注ぎ込んだ。析出した固体をろ取し、水ですすいだ後、風乾することでP−9(100g)を得た。得られたP−9の構造はH−NMRにより同定した。
【0137】
(P−10の合成)
撹拌羽及び冷却管をつけた3つ口フラスコ中に、P−6’(100g)、ジラウリル酸ジn−ブチルスズ(和光純薬製、0.16g)、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピリジン1−オキシル フリーラジカル(東京化成製、0.20g)を入れ、テ
トラヒドロフラン(和光純薬製、1000g)に溶解させた。この溶液にカレンズMOI(昭和電工製、15.51g)を1時間かけて滴下した。室温でさらに6時間撹拌したあと、この溶液を水(10L)に注ぎ込んだ。析出した固体をろ取し、水ですすいだ後、風乾することで、P−10(110g)を得た。得られたP−10の構造はH−NMRにより同定した。
【0138】
(P−11の合成)
P−10の合成において、カレンズMOIをカレンズBEI(昭和電工製)に変更した以外は、P−10の合成と同様にしてP−11を合成した。得られたP−11の構造はH−NMRにより同定した。
【0139】
(P−12の合成)
撹拌羽及び冷却管をつけた3つ口フラスコ中に、P−6’(100g)、トリエチルアミン(関東化学製、10.12g)、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピリジン1−オキシル フリーラジカル(東京化成製、0.20g)を入れ、テトラヒドロ
フラン(和光純薬製、1000g)に溶解させた。この溶液にクロロメチルスチレンCMS―14(セイミケミカル製、15.26g)を加え、70℃で6時間撹拌したあと、この溶液を水(10L)に注ぎ込んだ。析出した固体をろ取し、水ですすいだ後、風乾することで、P−12(110g)を得た。得られたP−12の構造はH−NMRにより同定した。
【0140】
(P−13の合成)
撹拌羽及び冷却管をつけた3つ口フラスコ中にテトラヒドロフラン(500g)を入れ、70℃で撹拌した。ここに、メタクリル酸(和光純薬製、20.00g)、メタクリル酸ジシクロペンタニル(東京化成製、204.73g)、V−601(和光純薬製、1.34g)、テトラヒドロフラン(500g)の溶液を3時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに3時間、70℃で撹拌した後、この溶液を水(10L)に注ぎ込んだ。析出した固体をろ取し、水ですすいだ後、風乾することで、P−13’(210g)を得た。
【0141】
撹拌羽及び冷却管をつけた3つ口フラスコ中にP−13’(100g)、臭化テトラエチルアンモニウム(東京化成製、0.21g)、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピリジン1−オキシル フリーラジカル(東京化成製、0.20g)を入れ、テ
トラヒドロフラン(1000g)に溶解させた。この溶液にメタクリル酸グリシジル(和光純薬製、14.21g)を加え、60℃で5時間撹拌した。室温まで冷却した後、この溶液を水(10L)に注ぎ込んだ。析出した固体をろ取し、水ですすいだ後、風乾することで、P−13(110g)を得た。得られたP−13の構造はH−NMRにより同定した。
【0142】
(P−14の合成)
撹拌羽及び冷却管をつけた3つ口フラスコ中にP−13’(100g)、メタクリル酸(2−ヒドロキシエチル)(東京化成製、13.01g)、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピリジン1−オキシル フリーラジカル(東京化成製、0.20g)
を入れ、テトラヒドロフラン(1000g)に溶解させた。この溶液を氷浴につけて冷却し、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(東京化成製、19.16g)、テトラヒドロフラン(100g)の溶液を1時間かけて滴下した。氷浴を外して室温でさらに3時間撹拌したあと、この溶液を水(10L)に注ぎ込んだ。析出した固体をろ取し、水ですすいだ後、風乾することでP−14(110g)を得た。得られたP−14の構造はH−NMRにより同定した。
【0143】
(P−15の合成)
撹拌羽及び冷却管をつけた3つ口フラスコ中にテトラヒドロフラン(500g)を入れ、70℃で撹拌した。ここに、メタクリル酸(2−ヒドロキシエチル)(東京化成製、20.00g)、メタクリル酸ジシクロペンタニル(東京化成製、135.43g)、V−601(和光純薬製、1.34g)、テトラヒドロフラン(500g)の溶液を3時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに3時間、70℃で撹拌した後、氷浴につけて冷却し、ピリジン(和光純薬製、12.26g)、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピリジン1−オキシル フリーラジカル(東京化成製、0.31g)を加えた。この溶
液にメタクリル酸クロリド(東京化成製、16.20g)を1時間かけて滴下した。氷浴を外して室温でさらに3時間撹拌したあと、この溶液を水(10L)に注ぎ込んだ。析出した固体をろ取し、水ですすいだ後、風乾することでP−15(150g)を得た。得られたP−15の構造はH−NMRにより同定した。
【0144】
(P−16の合成)
P−13の合成において、メタクリル酸ジシクロペンタニルをメタクリル酸ヘキシルに変更した以外は、P−13の合成と同様にしてP−16を合成した。得られたP−16の構造はH−NMRにより同定した。
【0145】
(P−17の合成)
P−15の合成において、メタクリル酸ジシクロペンタニルをメタクリル酸ヘキシルに変更した以外は、P−15の合成と同様にしてP−17を合成した。得られたP−17の構造はH−NMRにより同定した。
【0146】
[実施例1]
1.レーザー彫刻用レリーフ形成層用組成物の調製
撹拌羽及び冷却管をつけた3つ口フラスコ中に、ポリマーとしてP−1を50g、溶媒としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート47gを入れ、撹拌しながら40℃で120分間加熱しポリマーを溶解させた。その後、さらに(D)架橋剤としてモノマー(M−1:下記構造)を15g、架橋剤(単官能体)としてブレンマーLMA(日油製)8g、(C)重合開始剤としてパーブチルZ(日油製)を1.6g、(B)カーボンブラックとしてケッチェンブラックEC600JD(ライオン(株)製)を1g、を添加して30分間撹拌した。この操作により、流動性のあるレリーフ形成層用組成物1を得た。
【0147】
【化11】

【0148】
2.レーザー彫刻用レリーフ印刷版原版の作製
PET基板上に所定厚のスペーサー(枠)を設置し、上記より得られた架橋性レリーフ形成層用組成物1をスペーサー(枠)から流出しない程度に静かに流延し、70℃のオーブン中で3時間乾燥させて、厚さが凡そ1mmのレリーフ形成層を設け、レーザー彫刻用レリーフ印刷版原版1を作製した。
【0149】
3.レリーフ印刷版の作製
得られたレーザー彫刻用レリーフ印刷版原版1のレリーフ形成層を80℃で3時間、さらに100℃で3時間加熱してレリーフ形成層を熱架橋した。
架橋後のレリーフ形成層に対し、以下の2種のレーザーにより彫刻した。
炭酸ガスレーザー彫刻機として、レーザー照射による彫刻を、高品位COレーザーマーカML−9100シリーズ(KEYENCE(株)製)を用いた。レーザー彫刻用印刷版原版1から保護フィルムを剥離後、炭酸ガスレーザー彫刻機で、出力:12W、ヘッド速度:200mm/秒、ピッチ設定:2400DPIの条件で、1cm四方のベタ部分をラスター彫刻した。
半導体レーザー彫刻機として、最大出力8.0Wのファイバー付き半導体レーザー(FC−LD)SDL−6390(JDSU社製、波長 915nm)を装備したレーザー記録装置を用いた。半導体レーザー彫刻機でレーザー出力:7.5W、ヘッド速度:409mm/秒、ピッチ設定:2400DPIの条件で、1cm四方のベタ部分をラスター彫刻した。
レリーフ印刷版が有するレリーフ層の厚さは凡そ1mmであった。
【0150】
[実施例2〜19、比較例1〜4]
実施例1で用いた(A)特定ポリマーを、下記表2に記載の(A)特定ポリマー又は比較ポリマーに変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例2〜19、および比較例1〜3のレリーフ形成層用組成物を調製した。また、比較例4では下記表2に記載したように、実施例1においてカーボンブラックを使用せずにレリーフ形成層用組成物を調製した。これを用いて、実施例1と同様にして、実施例2〜19、および比較例1〜4のレリーフ印刷版を得た。これらのレリーフ印刷版が有するレリーフ層の厚さは凡そ1mmであった。
【0151】
表2で用いたP−1〜P−19は前記例示化合物であり、比較例で用いたポリマーを下記に示す。
#3000−2:電気化学工業(株)社製 ブチラール樹脂 重量平均分子量 9万
TR2000:JSR(株)社製 スチレン−ブタジエン共重合体 重量平均分子量10万
ポリウレタン:トリレンジイソシアネート/ポリプロピレングリコール(Mw=2000)の質量比50/50から得られるポリウレタン(Mw=90000)
【0152】
5.レリーフ印刷版の評価
以下の項目でレリーフ印刷版の性能評価を行い、結果を表2に併記した。
5−1.耐刷性
得られたレリーフ印刷版を印刷機(ITM−4型、伊予機械製作所製)にセットし、インクとして、水性インキ アクアSPZ16紅(東洋インキ)を希釈せずに用いて、印刷紙として、フルカラーフォームM 70(日本製紙製、厚さ100μm)を用いて印刷を継続し、ハイライト1〜10%を印刷物で確認した。印刷されない網点が生じたところを刷了とし、刷了時までに印刷した紙の長さ(メートル)を指標とした。数値が大きいほど耐刷性に優れると評価する。
【0153】
5−2.彫刻深さ
得られたレリーフ印刷版をレーザー彫刻して得られたレリーフ層の「彫刻深さ」を、以下のように測定した。ここで、「彫刻深さ」とは、レリーフ層の断面を観察した場合の、彫刻された位置(高さ)と彫刻されていない位置(高さ)との差をいう。本実施例における「彫刻深さ」は、レリーフ層の断面を、超深度カラー3D形状測定顕微鏡VK9510((株)キーエンス製)にて観察することにより測定した。彫刻深さが大きいことは、彫刻感度が高いことを意味する。結果は、彫刻に用いたレーザーの種類毎に表2に示す。
【0154】
【表2】

【0155】
表2に示されるように、本発明を用いた実施例1〜19のレリーフ印刷版は、いずれも架橋が施されていない比較例1、および3のレリーフ印刷版より、耐刷性が良好である。さらに、いずれの実施例も彫刻深さが大きいことから、彫刻感度が良好であり、製版時の生産性が高いことが判る。
なお、実施例6〜12と実施例1〜5との対比、実施例15、17、および19と、実施例13、および実施例14との対比等により、(A)特定ポリマーとして分子内にS原子を含有するものは、彫刻深さがさらに深くなり、感度が向上していることがわかる。
さらに、実施例1と比較例1との対比により、カーボンブラックの添加によって感度が向上していることが判る。
また、同じレリーフ印刷版原版を用いた場合、ファイバー付き半導体レーザーを備え、光源としてFC−LDを用いた製版装置を用いることで、彫刻深さをさらに改良しうることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)アクリル樹脂、またはポリビニルアセタールであって、側鎖にエチレン性不飽和結合を有するポリマー、(B)カーボンブラック、及び、(C)熱重合開始剤、を含有する樹脂組成物を、熱によって架橋させてなるレリーフ形成層を備えるレーザー彫刻用レリーフ印刷版原版。
【請求項2】
前記(A)側鎖にエチレン性不飽和結合を有するポリマーが、ポリビニルアセタールである請求項1に記載のレーザー彫刻用レリーフ印刷版原版。
【請求項3】
前記(A)側鎖にエチレン性不飽和結合を有するポリマーが、主鎖と、側鎖のエチレン性不飽和結合との間に炭素−ヘテロ原子結合を有するポリマーである請求項1または請求項2に記載のレーザー彫刻レリーフ印刷版原版。
【請求項4】
前記(A)側鎖にエチレン性不飽和結合を有するポリマーが、主鎖と、側鎖のエチレン性不飽和結合との間に炭素−硫黄結合を有するポリマーである請求項3に記載のレーザー彫刻レリーフ印刷版原版。
【請求項5】
前記(A)側鎖にエチレン性不飽和結合を有するポリマーのガラス転移温度が、20℃以上200℃以下である請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のレーザー彫刻用レリーフ印刷版原版。
【請求項6】
前記レーザー彫刻用樹脂組成物に、さらに(D)架橋剤を含有する請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のレーザー彫刻レリーフ印刷版原版。
【請求項7】
前記(D)架橋剤が、エチレン性不飽和結合を有する化合物である請求項6に記載のレーザー彫刻レリーフ印刷版原版。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか1項に記載のレーザー彫刻用レリーフ印刷版原版におけるレリーフ形成層に、レーザーによる彫刻を施すことによりレリーフ層を形成する工程を含むレリーフ印刷版の製造方法。
【請求項9】
請求項8に記載のレーザーによる彫刻が、波長700nm〜1200nmの複数のファイバー付き半導体レーザーを光源とするレーザーによる彫刻であるレリーフ層を形成する工程であるレリーフ印刷版の製造方法。

【公開番号】特開2010−253930(P2010−253930A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−44188(P2010−44188)
【出願日】平成22年3月1日(2010.3.1)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】