説明

レーザー彫刻用レリーフ印刷版原版、レリーフ印刷版の製版方法、及び、レリーフ印刷版

【課題】レーザー彫刻時に発生する彫刻カスのリンス性に優れるレーザー彫刻用レリーフ印刷版原版、それを用いたレリーフ印刷版の製版方法、及び、前記製版方法により得られたレリーフ印刷版を提供すること。
【解決手段】(成分A)加水分解性シリル基及び/又はシラノール基を有する化合物を含有し、且つ、(成分B)バインダーポリマーを含有しないか、又は、全質量に対して2質量%未満含有するレーザー彫刻用樹脂組成物の熱架橋層を架橋レリーフ形成層として支持体上に有するレーザー彫刻用レリーフ印刷版原版。前記レーザー彫刻用レリーフ印刷版原版を用意する工程、及び、前記架橋レリーフ形成層をレーザー彫刻してレリーフ層を形成する工程、を含むレリーフ印刷版の製版方法。前記レリーフ印刷版の製版方法により形成されたレリーフ層を有するレリーフ印刷版。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザー彫刻用レリーフ印刷版原版、レリーフ印刷版の製版方法、及び、レリーフ印刷版に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、天然ゴム、合成ゴム、熱可塑性エラストマー等を使用した疎水性のレーザー彫刻型印刷版が用いられている(特許文献1)。レーザー彫刻により発生する彫刻カスのリンス性を向上させる技術としては、レリーフ形成層に多孔質無機微粒子を含有させ、該粒子に液状カスを吸着させ、除去性を向上させる技術が提案されている(特許文献2)。また、レーザー彫刻可能な感光性樹脂組成物中に、有機ケイ素化合物を含有させることで彫刻後のカス残率が減り(カスが付きにくくなり)、有機溶剤を含浸させた布で彫刻カスを拭き取りやすくなることが示されている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−338139号公報
【特許文献2】特開2004−174758号公報
【特許文献3】国際公開第2005/070691号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、レーザー彫刻時に発生する彫刻カスのリンス性に優れるレーザー彫刻用レリーフ印刷版原版、それを用いたレリーフ印刷版の製版方法、及び、前記製版方法により得られたレリーフ印刷版を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の上記課題は以下の<1>、<14>及び<16>に記載の手段により解決された。好ましい実施態様である<2>〜<13>、<15>、<17>及び<18>と共に以下に記載する。
<1>(成分A)加水分解性シリル基及び/又はシラノール基を有する化合物を含有し、且つ、(成分B)バインダーポリマーを含有しないか、又は、全質量に対して2質量%未満含有するレーザー彫刻用樹脂組成物の熱架橋層を架橋レリーフ形成層として支持体上に有することを特徴とするレーザー彫刻用レリーフ印刷版原版、
<2>成分Aが、加水分解性シリル基及びシラノール基を2〜6個有する化合物である、<1>に記載のレーザー彫刻用レリーフ印刷版原版、
<3>成分Aが、成分Aに含まれるケイ素原子同士を結ぶ最短の原子数が10以上である化合物である、<2>に記載のレーザー彫刻用レリーフ印刷版原版、
<4>成分Aが、アルコキシ基及びヒドロキシ基を合わせて同一のケイ素原子上に2つ有する化合物である、<1>〜<3>のいずれか1つに記載のレーザー彫刻用レリーフ印刷版原版、
<5>成分Aが、重合性基を含有しない、<1>〜<4>のいずれか1つに記載のレーザー彫刻用レリーフ印刷版原版、
<6>前記レーザー彫刻用樹脂組成物が、成分Bを含有しない、<1>〜<5>のいずれか1つに記載のレーザー彫刻用レリーフ印刷版原版、
<7>前記レーザー彫刻用樹脂組成物が、成分Aの架橋構造形成を促進する(成分C)架橋触媒を更に含有する、<1>〜<6>のいずれか1つに記載のレーザー彫刻用レリーフ印刷版原版、
<8>前記レーザー彫刻用樹脂組成物が、(成分D)可塑剤を更に含有する、<1>〜<7>のいずれか1つに記載のレーザー彫刻用レリーフ印刷版原版、
<9>前記レーザー彫刻用樹脂組成物が、(成分E)重合性化合物を更に含有する、<1>〜<8>のいずれか1つに記載のレーザー彫刻用レリーフ印刷版原版、
<10>前記レーザー彫刻用樹脂組成物が、(成分F)重合開始剤を更に含有する、<1>〜<9>のいずれか1つに記載のレーザー彫刻用レリーフ印刷版原版、
<11>前記レーザー彫刻用樹脂組成物が、(成分G)無機粒子を更に含有する、<1>〜<10>のいずれか1つに記載のレーザー彫刻用レリーフ印刷版原版、
<12>前記レーザー彫刻用樹脂組成物が、(成分H)光熱変換剤を更に含有する、<1>〜<11>のいずれか1つに記載のレーザー彫刻用レリーフ印刷版原版、
<13>前記レーザー彫刻用樹脂組成物が、(成分I)香料を更に含有する、<1>〜<12>のいずれか1つに記載のレーザー彫刻用レリーフ印刷版原版、
<14><1>〜<13>のいずれか1つに記載のレーザー彫刻用レリーフ印刷版原版を用意する工程、及び、前記架橋レリーフ形成層をレーザー彫刻してレリーフ層を形成する工程、を含むことを特徴とするレリーフ印刷版の製版方法、
<15>彫刻後のレリーフ層表面を水系リンス液によりリンスするリンス工程を更に含む、<14>に記載のレリーフ印刷版の製版方法、
<16><14>又は<15>に記載のレリーフ印刷版の製版方法により形成されたレリーフ層を有することを特徴とするレリーフ印刷版、
<17>前記レリーフ層の厚みが、0.05mm以上10mm以下である、<16>に記載のレリーフ印刷版、
<18>前記レリーフ層のショアA硬度が、50°以上90°以下である、<16>又は<17>に記載のレリーフ印刷版。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、レーザー彫刻時に発生する彫刻カスのリンス性に優れるレーザー彫刻用レリーフ印刷版原版、それを用いたレリーフ印刷版の製版方法、及び、前記製版方法により得られたレリーフ印刷版を提供することができた。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明のレーザー彫刻用レリーフ印刷版原版は、(成分A)加水分解性シリル基及び/又はシラノール基を有する化合物を含有し、且つ、(成分B)バインダーポリマーを含有しないか、又は、全質量に対して2質量%未満含有するレーザー彫刻用樹脂組成物(以下、「本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物」ともいう。)の熱架橋層を架橋レリーフ形成層として支持体上に有することを特徴とする。
なお、本発明において、数値範囲を表す「下限〜上限」の記載は、「下限以上、上限以下」を表す。すなわち、上限及び下限を含む数値範囲を表す。
【0008】
(レーザー彫刻用樹脂組成物)
本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物は、彫刻カスのリンス性に優れる。従って、レリーフ層を形成し製版する時間を短縮できる。
本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物は、レーザー彫刻が施されるレリーフ印刷版原版のレリーフ形成層用途以外にも、特に限定なく、他の用途にも広範囲に適用することができる。例えば、表面に凹凸や開口部を形成する他の材形、例えば、凹版、孔版、スタンプ等、レーザー彫刻により画像形成される各種印刷版や各種成形体の形成に適用できる。中でも、適切な支持体上に設けられるレリーフ形成層の形成に適用することが好ましい態様である。
【0009】
本発明において、未架橋のレーザー彫刻用樹脂組成物よりなる表面が平坦な層を、レリーフ形成層と称する。前記レリーフ形成層を熱架橋した熱架橋層を架橋レリーフ形成層と称する。架橋レリーフ形成層をレーザー彫刻して表面に凹凸を形成した層をレリーフ層と称する。
以下、レーザー彫刻用樹脂組成物に含まれる各成分について説明する。
【0010】
<(成分A)加水分解性シリル基及び/又はシラノール基を有する化合物>
本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物は、(成分A)加水分解性シリル基及び/又はシラノール基を有する化合物を含有する。
「加水分解性シリル基」とは、加水分解性を有するシリル基である。加水分解性基としては、アルコキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子、アミド基、アセトキシ基、アミノ基、イソプロペノキシ基等が挙げられる。シリル基は加水分解してシラノール基となる。シラノール基は脱水縮合してシロキサン結合が生成する。
【0011】
成分Aは、加水分解性シリル基及びシラノール基を合計で2〜6個有する化合物であることが好ましく、2又は3個有する化合物であることがより好ましく、2個有する化合物であることが更に好ましい。この範囲であると、架橋レリーフ形成層中におけるバインダーポリマーの含有量が2質量%未満であっても、印刷版として必要なゴム弾性を発現させることができる。
このような加水分解性シリル基又はシラノール基は式(A−1)で表されるものが好ましい。
【0012】
【化1】

【0013】
式(A−1)中、R1〜R3の少なくともいずれか1つは、アルコキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子、アミド基、アセトキシ基、アミノ基、及び、イソプロペノキシ基よりなる群から選択される加水分解性基、又は、ヒドロキシ基を表す。
残りのR1〜R3はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、又は、1価の有機置換基(例えば、アルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基、アラルキル基を挙げることができる。)を表す。
前記式(A−1)中、ケイ素原子に結合する加水分解性基としては、特にアルコキシ基、ハロゲン原子が好ましく、アルコキシ基がより好ましい。
アルコキシ基としては、リンス性と耐刷性の観点から、炭素数1〜30のアルコキシ基が好ましい。より好ましくは炭素数1〜15のアルコキシ基、更に好ましくは炭素数1〜5のアルコキシ基、特に好ましくは炭素数1〜3のアルコキシ基、最も好ましくはメトキシ基又はエトキシ基である。
また、ハロゲン原子としては、F原子、Cl原子、Br原子、I原子が挙げられ、合成のしやすさ及び安定性の観点で、好ましくはCl原子及びBr原子であり、より好ましくはCl原子である。
【0014】
前記加水分解性基は1個のケイ素原子に1〜4個の範囲で結合することができ、式(A−1)中における加水分解性基の総個数は2又は3の範囲であることが好ましい。加水分解性基がケイ素原子に2個以上結合するときは、それらは互いに同一であっても、異なっていてもよい。本発明においては、成分Aが、炭素数1〜4のアルコキシ基及びヒドロキシ基を合計で同一のケイ素原子上に2〜4個有する化合物であることが好ましく、2又は3個有する化合物であることがより好ましく、2個有する化合物であることが更に好ましい。この範囲であると、架橋レリーフ形成層中におけるバインダーポリマーの含有量が2質量%未満であっても、印刷版として必要なゴム弾性を発現させることができる。
【0015】
好ましい前記アルコキシ基として、具体的には、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、tert−ブトキシ基、フェノキシ基、ベンジルオキシ基などを挙げることができる。これらの各アルコキシ基を複数個組み合わせて用いてもよいし、異なるアルコキシ基を複数個組み合わせて用いてもよい。
アルコキシ基の結合したアルコキシシリル基としては、例えば、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、トリイソプロポキシシリル基、トリフェノキシシリル基などのトリアルコキシシリル基;ジメトキシメチルシリル基、ジエトキシメチルシリル基などのジアルコキシモノアルキルシリル基;メトキシジメチルシリル基、エトキシジメチルシリル基などのモノアルコキシジアルキルシリル基を挙げることができる。
【0016】
バインダーポリマーの含有量が2質量%未満であっても、印刷版として必要なゴム弾性を発現させることができることから、成分Aは、成分Aに含まれるケイ素原子同士を結ぶ最短の原子数が10以上である化合物であることが好ましい。ケイ素原子同士を結ぶ最短の原子数は、10〜200がより好ましく、20〜100が更に好ましい。
【0017】
成分Aは、硫黄原子、エステル結合(−OCO−又は−COO−)、ウレタン結合(−OCON(R)−又は−N(R)COO−)、エーテル結合、ウレア結合(−NHCONH−)、又は、イミノ基(−N(R)−)を少なくとも有することが好ましい。なお、Rは水素原子又は置換基を表す。Rにおける置換基としては、アルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基、又は、アラルキル基が例示できる。
中でも、成分Aは、架橋性の観点から、硫黄原子を含有することが好ましく、また、彫刻カスの除去性(リンス性)の観点から、アルカリ水で分解しやすいエステル結合、ウレタン結合、又は、エーテル結合(特にオキシアルキレン基に含まれるエーテル結合)を含有することが好ましい。中でも、エステル結合、及び、オキシアルキレン基に含まれるエーテル結合がより好ましい。
オキシアルキレン基としては、オキシアルキレン基が2〜40個連結したポリオキシアルキレン基が好ましく、4〜20個連結したポリオキシアルキレン基がより好ましい。オキシアルキレン基としては、炭素数2〜10のオキシアルキレン基が好ましく、炭素数2〜4のオキシアルキレン基がより好ましく、オキシエチレン基が更に好ましい。
硫黄原子を含有する成分Aは、加硫処理をする場合には、加硫剤や加硫促進剤として機能する。(成分B)バインダーポリマーが、例えば、共役ジエン単量体単位を含有する重合体である場合には、重合体の反応(架橋)を促進する。その結果、印刷版として必要なゴム弾性を発現させる。また、架橋レリーフ形成層及びレリーフ層の強度を向上させる。
【0018】
また、本発明における成分Aは、エチレン性不飽和結合等の重合性基を有していない化合物であることが好ましい。
【0019】
成分Aの合成方法としては、特に制限はなく、公知の方法により合成することができる。上記特定構造を有する連結基を含む成分Aの代表的な合成方法を以下に示す。
【0020】
<連結基としてスルフィド基を有する成分Aの合成法>
連結基としてスルフィド基を有する成分A(以下、適宜、「スルフィド連結基含有成分A」と称する。)の合成法は特には限定されないが、具体的には、例えば、ハロゲン化炭化水素基を有する成分Aと硫化アルカリの反応、メルカプト基を有する成分Aとハロゲン化炭化水素の反応、メルカプト基を有する成分Aとハロゲン化炭化水素基を有する成分Aの反応、ハロゲン化炭化水素基を有する成分Aとメルカプタン類の反応、エチレン性不飽和二重結合を有する成分Aとメルカプタン類の反応、エチレン性不飽和二重結合を有する成分Aとメルカプト基を有する成分Aの反応、エチレン性不飽和二重結合を有する化合物とメルカプト基を有する成分Aの反応、ケトン類とメルカプト基を有する成分Aの反応、ジアゾニウム塩とメルカプト基を有する成分Aの反応、メルカプト基を有する成分Aとオキシラン類との反応、メルカプト基を有する成分Aとオキシラン基を有する成分Aの反応、及び、メルカプタン類とオキシラン基を有する成分Aの反応、メルカプト基を有する成分Aとアジリジン類との反応等の合成方法が例示できる。
【0021】
<連結基としてイミノ基を有する成分Aの合成法>
連結基としてイミノ基を有する成分A(以下、適宜、「イミノ連結基含有成分A」と称する。)の合成法は特には限定されないが、具体的には、例えば、アミノ基を有する成分Aとハロゲン化炭化水素の反応、アミノ基を有する成分Aとハロゲン化炭化水素基を有する成分Aの反応、ハロゲン化炭化水素基を有する成分Aとアミン類の反応、アミノ基を有する成分Aとオキシラン類との反応、アミノ基を有する成分Aとオキシラン基を有する成分Aの反応、アミン類とオキシラン基を有する成分Aの反応、アミノ基を有する成分Aとアジリジン類との反応、エチレン性不飽和二重結合を有する成分Aとアミン類の反応、エチレン性不飽和二重結合を有する成分Aとアミノ基を有する成分Aの反応、エチレン性不飽和二重結合を有する化合物とアミノ基を有する成分Aの反応、アセチレン性不飽和三重結合を有する化合物とアミノ基を有する成分Aの反応、イミン性不飽和二重結合を有する成分Aと有機アルカリ金属化合物の反応、イミン性不飽和二重結合を有する成分Aと有機アルカリ土類金属化合物の反応、及び、カルボニル化合物とアミノ基を有する成分Aの反応等の合成方法が例示できる。
【0022】
<連結基としてウレタン結合(ウレイレン基)を有する成分Aの合成法>
連結基としてウレイレン基を有する成分A(以下、適宜、「ウレイレン連結基含有成分A」と称する。)の合成法は特には限定されないが、具体的には、例えば、アミノ基を有する成分Aとイソシアン酸エステル類の反応、アミノ基を有する成分Aとイソシアン酸エステルを有する成分Aの反応、及び、アミン類とイソシアン酸エステルを有する成分Aの反応等の合成方法が例示できる。
【0023】
成分Aとしては、下記式(A−2)又は式(A−3)で表される化合物であることが好ましい。
【0024】
【化2】

(式(A−2)及び式(A−3)中、RBはエステル結合、アミド結合、ウレタン結合、ウレア結合、又は、イミノ基を表し、L1はn価の連結基を表し、L2は二価の連結基を表し、Ls1はm価の連結基を表し、L3は二価の連結基を表し、n及びmはそれぞれ独立に1以上の整数を表し、R1〜R3はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、又は、一価の有機置換基を表す。ただし、R1〜R3の少なくともいずれか1つは、アルコキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子、アミド基、アセトキシ基、アミノ基、及び、イソプロペノキシ基よりなる群から選択される加水分解性基、又は、ヒドロキシ基を表す。)
【0025】
前記式(A−2)及び式(A−3)におけるR1〜R3は、前記式(A−1)におけるR1〜R3と同義であり、好ましい範囲も同様である。
前記RBは、リンス性及び膜強度の観点から、エステル結合又はウレタン結合であることが好ましく、エステル結合であることがより好ましい。
前記L1〜L3における二価又はn価の連結基は、炭素原子、水素原子、酸素原子、窒素原子及び硫黄原子よりなる群から選ばれた少なくとも1種の原子から構成された基であることが好ましく、炭素原子、水素原子、酸素原子及び硫黄原子よりなる群から選ばれた少なくとも1種の原子から構成された基であることがより好ましい。前記L1〜L3の炭素数は、2〜60であることが好ましく、2〜30であることがより好ましい。また、L3は、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合、ウレア結合、及び、イミノ基を含まないことが好ましい。
前記Ls1におけるm価の連結基は、硫黄原子と、炭素原子、水素原子、酸素原子、窒素原子及び硫黄原子よりなる群から選ばれた少なくとも1種の原子とから構成された基であることが好ましく、アルキレン基、又は、アルキレン基、スルフィド基及びイミノ基を2以上組み合わせた基であることがより好ましい。前記Ls1の炭素数は、2〜60であることが好ましく、6〜30であることがより好ましい。
前記n及びmはそれぞれ独立に、1〜10の整数であることが好ましく、2〜10の整数であることがより好ましく、2〜6の整数であることが更に好ましく、2であることが特に好ましい。
1のn価の連結基及び/若しくはL2の二価の連結基、又は、L3の二価の連結基は、彫刻カスの除去性(リンス性)の観点から、エーテル結合を有することが好ましく、オキシアルキレン基に含まれるエーテル結合を有することがより好ましく、ポリオキシアルキレン基に含まれるエーテル結合を有することが更に好ましい。
式(A−2)又は式(A−3)で表される化合物の中でも、式(A−2)において、L1のn価の連結基及び/又はL2の二価の連結基が硫黄原子を有する基であることが好ましい。
【0026】
本発明に適用しうる成分Aの具体例を以下に示す。例えば、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、メルカプトメチルトリメトキシシラン、ジメトキシ−3−メルカプトプロピルメチルシラン、2−(2−アミノエチルチオエチル)ジエトキシメチルシラン、3−(2−アセトキシエチルチオプロピル)ジメトキシメチルシラン、2−(2−アミノエチルチオエチル)トリエトキシシラン、ジメトキシメチル−3−(3−フェノキシプロピルチオプロピル)シラン、ビス(トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、1,4−ビス(トリエトキシシリル)ベンゼン、ビス(トリエトキシシリル)エタン、1,6−ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン、1,8−ビス(トリエトキシシリル)オクタン、1,2−ビス(トリメトキシシリル)デカン、ビス(トリエトキシシリルプロピル)アミン、ビス(トリメトキシシリルプロピル)ウレア、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、トリメチルシラノール、ジフェニルシランジオール、トリフェニルシラノール等を挙げることができる。その他にも、以下に示す化合物が好ましいものとして挙げられるが、本発明はこれらの化合物に制限されるものではない。
【0027】
【化3】

【0028】
【化4】

【0029】
【化5】

【0030】
【化6】

【0031】
前記各式中、Rは以下の構造から選択される部分構造を表す。分子内に複数のR及びR1が存在する場合、これらは互いに同じでも異なっていてもよく、合成適性上は、同一であることが好ましい。
【0032】
【化7】

【0033】
【化8】

【0034】
前記各式中、Rは以下に示す部分構造を表す。R1は前記したものと同義である。分子内に複数のR及びR1が存在する場合、これらは互いに同じでも異なっていてもよく、合成適性上は、同一であることが好ましい。
【0035】
【化9】

【0036】
成分Aは、適宜合成して得ることも可能であるが、市販品を用いることがコストの面から好ましい。成分Aとしては、例えば、信越化学工業(株)、東レ・ダウコーニング(株)、モメンティブパフォーマンスマテリアルズ(株)、チッソ(株)等から市販されているシラン製品、シランカップリング剤などの市販品がこれに相当する。本発明の樹脂組成物に、これら市販品を、目的に応じて適宜選択して使用してもよい。
【0037】
本発明における成分Aとして、加水分解性シリル基及び/又はシラノール基を有する化合物を1種用いて得られた部分加水分解縮合物、又は、2種以上用いて得られた部分共加水分解縮合物を用いることができる。以下、これらの化合物を「部分(共)加水分解縮合物」と称することがある。
部分(共)加水分解縮合物前駆体としてのシラン化合物の中でも、汎用性、コスト面、膜の相溶性の観点から、ケイ素上の置換基としてメチル基及びフェニル基から選択される置換基を有するシラン化合物であることが好ましい。具体的には、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシランが好ましい前駆体として例示される。
この場合、部分(共)加水分解縮合物としては、上記したようなシラン化合物の2量体(シラン化合物2モルに水1モルを作用させてアルコール2モルを脱離させ、ジシロキサン単位としたもの)〜100量体、好ましくは2〜50量体、更に好ましくは2〜30量体としたものが好適に使用できるし、2種以上のシラン化合物を原料とする部分共加水分解縮合物を使用することも可能である。
【0038】
なお、このような部分(共)加水分解縮合物は、シリコーンアルコキシオリゴマーとして市販されているものを使用してもよく(例えば、信越化学工業(株)などから市販されている。)、また、常法に基づき、加水分解性シラン化合物に対し当量未満の加水分解水を反応させた後に、アルコール、塩酸等の副生物を除去することによって製造したものを使用してもよい。製造に際しては、前駆体となる原料の加水分解性シラン化合物として、例えば、上記したようなアルコキシシラン類やアシロキシシラン類を使用する場合は、塩酸、硫酸等の酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物、トリエチルアミン等のアルカリ性有機物質等を反応触媒として部分加水分解縮合すればよく、クロロシラン類から直接製造する場合には、副生する塩酸を触媒として水及びアルコールを反応させればよい。
【0039】
成分Aは、1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物中に含まれる成分Aの含有量は、不揮発成分換算で、50〜100質量%の範囲であることが好ましく、より好ましくは52〜95質量%の範囲であり、最も好ましくは54〜90質量%の範囲である。成分Aを50質量%以上含有することにより、バインダーポリマーを5質量%以上含有する従来のレリーフ印刷版と比較して、レーザー彫刻時に発生するカスのリンス性が高くなる。
【0040】
<(成分B)バインダーポリマー>
本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物は、(成分B)バインダーポリマーを含有しないか、又は、全質量に対して2質量%未満含有する。
成分Bを含有する場合には、成分Bは非エラストマーであることが好ましい。エラストマーとは、ガラス転移温度が常温以下のポリマーである(科学大辞典 第2版、編者 国際科学振興財団、発行 丸善株式会社、P154参照)。従って、非エラストマーとはガラス転移温度が常温(20℃)を超える温度であるポリマーを指す。非エラストマーのガラス転移温度としては、彫刻感度と皮膜性のバランスの観点から、20〜200℃が好ましく、20〜170℃がより好ましく、25〜150℃が更に好ましい。
【0041】
皮膜性の観点から、成分Bとしては、ポリビニルブチラール(PVB)及びその誘導体、アルコール可溶性ポリアミド、水不溶性セルロース誘導体、側鎖に極性基を有するアクリル樹脂が挙げられる。成分Bとしては、特開2009−262526号公報の段落0017〜0139に記載された、ポリビニルブチラール及びその誘導体、アルコール可溶性ポリアミド、セルロース誘導体、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂等を好ましく用いることができ、中でも、ポリビニルブチラール及びその誘導体が好ましい。
ポリビニルブチラールは式(B−1)により表され、誘導体とは式(B−1)で表される繰返し単位を含んで構成されるものである。
【0042】
【化10】

(式(B−1)中、l、m、nは式(B−1)中のそれぞれの繰返し単位のポリビニルブチラール中における含有量(モル%)を表し、l+m+n=100の関係を満たす。)
【0043】
ポリビニルブチラール及びその誘導体中のブチラール含量(式(B−1)中におけるlの値)は、30〜90モル%が好ましく、40〜85モル%がより好ましく、45〜78モル%が特に好ましい。
【0044】
彫刻感度と皮膜性とのバランスの観点から、ポリビニルブチラール及びその誘導体の重量平均分子量は、2,000〜800,000が好ましく、5,000〜500,000がより好ましく、彫刻カスのリンス性向上の観点からは、10,000〜300,000が特に好ましい。
【0045】
成分Bは、1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物中に含まれる成分Bの含有量は、リンス性と柔軟性の観点から、不揮発成分換算で、5質量%未満が好ましく、2質量%未満がより好ましい。膜強度の観点から、下限としては、0.5質量%以上が好ましく、1.0質量%以上がより好ましく、1.5質量%以上が更に好ましい。
【0046】
<(成分C)架橋触媒>
本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物は、成分Aの架橋構造形成を促進するため、架橋触媒(アルコール交換反応触媒)を含有することが好ましい。架橋触媒としては、シランカップリング反応において一般に用いられる反応触媒であれば、限定なく適用できる。
【0047】
架橋触媒としては、酸又は塩基性化合物をそのまま用いるか、又は水若しくは有機溶剤などの溶媒に溶解させた状態のもの(以下、それぞれ酸性触媒、塩基性触媒とも称する。)を用いる。溶媒に溶解させる際の濃度については特に限定はなく、用いる酸又は塩基性化合物の特性、架橋触媒の所望の含有量などに応じて適宜選択すればよい。
酸性触媒としては、塩酸などのハロゲン化水素、硝酸、硫酸、亜硫酸、硫化水素、過塩素酸、過酸化水素、炭酸、蟻酸や酢酸などのカルボン酸、そのRCOOHで表される構造式のRを他元素又は置換基によって置換した置換カルボン酸、ベンゼンスルホン酸などのスルホン酸、リン酸、ヘテロポリ酸、無機固体酸などが挙げられる。中でも、塗布液安定性と硬化性の両立の観点から、リン酸が好ましい。
塩基性触媒としては、アンモニア水などのアンモニア性塩基、アミン類、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属アルコキシド、アルカリ土類酸化物、四級アンモニウム塩化合物、四級ホスホニウム塩化合物などが挙げられる。
【0048】
アミン類としては、(a)ヒドラジン等の水素化窒素化合物;(b)脂肪族アミン、脂環式アミン又は芳香族アミン;(c)縮合環を含む環状アミン;(d)アミノ酸類、アミド類、アルコールアミン類、エーテルアミン類、イミド類又はラクタム類等の含酸素アミン;(e)S、Se等のヘテロ原子を有する含ヘテロ元素アミン;が挙げられる。
(b)の脂肪族アミンとしては、式(C−1)で表されるアミン化合物が好ましい。
N(Rd1)(Rd2)(Rd3) (C−1)
式(C−1)中、Rd1〜Rd3はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜10の直鎖又は分岐を有するアルキル基、炭素数5〜10のシクロアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、環の員数が3〜10である硫黄原子又は酸素原子を含む複素環を表し、前記アルキル基、シクロアルキル基は少なくとも1つの不飽和結合を有していてもよい。
式(C−1)で表されるアミン化合物は置換基を有していてもよく、該置換基としては、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、アミノ基、炭素数1〜6のアルキル基を有する(ジ)アルキルアミノ基、ヒドロキシ基が挙げられる。
前記Rd1〜Rd3のうちの2以上の基が結合してC=N結合を形成してもよい。C=N結合を有するアミン化合物として、グアニジン、1,1,3,3−テトラメチルグアニジンが挙げられる。
(b)の脂環式アミンとしては、前記式(C−1)で表される化合物中のRd1〜Rd3のうちの2以上の基が結合した環骨格に窒素原子を含む脂環式アミンが挙げられる。脂環式アミンとしては、例えば、ピロリジン、ピペリジン、ピペラジン、キヌクリジンが挙げられる。
(b)の芳香族アミンとしては、イミダゾール、ピロール、ピリジン、ピリダジン、ピラジン、プリン、キノリン、キナゾリンが挙げられる。芳香族アミンは置換基を有していてもよく、該置換基としては、式(C−1)における置換基が挙げられる。
また、同一又は異なる2個以上の脂肪族アミン、脂環式アミン、芳香族アミンが結合して、ジアミン、トリアミン等のポリアミンを形成してもよい。ポリアミンとしては、脂肪族アミン同士が結合したポリアミンが好ましく、例えば、ヘキサメチレンテトラミン、ポリエチレンイミン(エポミン、日本触媒(株)製)が挙げられる。
【0049】
前記(c)縮合環を含む環状アミンとは、少なくとも1つの窒素原子が縮合環を形成する環骨格に含まれる環状アミンであり、例えば、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ−5−エン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンが挙げられる。
前記(d)アミノ酸類、アミド類、アルコールアミン類、エーテルアミン類、イミド類又はラクタム類等の含酸素アミンとしては、フタルイミド、2,5−ピペラジンジオン、マレイミド、カプロラクタム、ピロリドン、モルホリン、グリシン、アラニン、フェニルアラニンが挙げられる。
なお、(c)及び(d)は式(C−1)で表される化合物における前記置換基を有していてもよく、置換基としては、炭素数1〜6のアルキル基が好ましい。
本発明において、アミン化合物は、(b)、(c)が好ましい。(b)としては、脂肪族アミンが好ましく、脂肪族アミンのポリアミンがより好ましく、ポリエチレンイミンが更に好ましい。(c)としては、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エンが好ましい。
【0050】
熱架橋後の膜強度の観点から、アミンとして好ましいpKaH(共役酸の酸解離定数)の範囲としては7以上が好ましく、より好ましくは10以上である。
前記酸又は塩基性触媒の中でも、膜中でのアルコール交換反応を速やかに進行させる観点で、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ピリジニウムp−トルエンスルホネート、ドデシルベンゼンスルホン酸、リン酸、ホスホン酸、酢酸、ポリエチレンイミン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ−5−エン、1,1,3,3−テトラメチルグアニジンが好ましく、特に好ましくは、リン酸、ポリエチレンイミン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エンである。
【0051】
架橋触媒は、1種のみ用いてもよく、2種以上併用してもよい。レーザー彫刻用樹脂組成物における架橋触媒の含有量は、全不揮発成分中、0.01〜20質量%であることが好ましく、0.1〜10質量%であることがより好ましく、0.5〜3質量%であることが更に好ましい。
【0052】
<(成分D)可塑剤>
本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物は、レリーフ層に柔軟性を付与するという観点から、(成分D)可塑剤を更に含有するものが好ましい。
可塑剤としては、高分子の可塑剤として公知のものを用いることができ、限定されないが、例えば高分子大辞典(初版、1994年、丸善(株)発行)の第211〜220頁に記載のアジピン酸誘導体、アゼライン酸誘導体、ベンゾイル酸誘導体、クエン酸誘導体、エポキシ誘導体、グリコール誘導体、炭化水素及び誘導体、オレイン酸誘導体、リン酸誘導体、フタル酸誘導体、ポリエステル系、リシノール酸誘導体、セバシン酸誘導体、ステアリン酸誘導体、スルホン酸誘導体、テルペン及び誘導体、トリメリット酸誘導体が挙げられ、中でも相溶性という観点から、クエン酸誘導体、炭化水素及び誘導体、並びに、フタル酸誘導体が好ましい。
クエン酸誘導体としては、クエン酸トリブチル、クエン酸トリ−n−ブチルアセチルが好ましい。
炭化水素及び誘導体としては、常温(20℃)において液体のものが好ましい。また、塗布・乾燥工程での揮発を防ぐという観点、経時での揮発を防ぐ観点から、沸点が200℃以上のものが好ましい。具体的には、常温(20℃)において液体のパラフィンが挙げられ、シェルオンジナオイル15、32、68(昭和シェル石油(株)製)等が好ましく例示される。
フタル酸誘導体としては、フタル酸ジアルキルエステルが好ましい。該アルキル基としては、炭素数15以下の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基が好ましく、炭素数10以下のアルキル基がより好ましい。
成分Dは、1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。レーザー彫刻用樹脂組成物中に含まれる成分Dの含有量は、相溶性の観点から、全不揮発成分中、50質量%以下が好ましく、5〜40質量%がより好ましく、10〜20質量%が更に好ましい。
【0053】
<(成分E)重合性化合物>
本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物は、レリーフ形成層中に架橋構造を形成する観点から、(成分E)重合性化合物を更に含有するものが好ましい。
重合性化合物は、エチレン性不飽和結合を少なくとも1個、好ましくは2個以上、より好ましくは2〜12個、更に好ましくは2〜6個有する化合物の中から任意に選択することができる。また、前記重合性化合物は、成分Bとは異なる化合物であり、分子の末端にエチレン性不飽和基を有する化合物であることが好ましい。
また、前記重合性化合物は分子量(重量平均分子量)が2,000未満の化合物であることが好ましく、1,500以下の化合物であることがより好ましく、1,000以下の化合物であることが更に好ましい。
前記重合性化合物としては、特に制限はなく、公知のものを用いることができるが、特開2009−204962号公報の段落0098〜0124、特開2009−255510号公報に記載のものを例示できる。
【0054】
重合性化合物は、モノマー、プレポリマー、すなわち2量体、3量体及びオリゴマー、又はそれらの共重合体、並びにそれらの混合物などの化学的形態をもつ。
モノマーの例としては、不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸など)や、そのエステル類、アミド類が挙げられる。好ましくは、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アルコール化合物とのエステル、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アミン化合物とのアミド類が用いられる。
また、ヒドロキシ基や、アミノ基等の求核性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル、アミド類と、単官能若しくは多官能イソシアネート類、エポキシ類との付加反応物、単官能若しくは、多官能のカルボン酸との脱水縮合反応物等も好適に使用される。
また、イソシアナト基や、エポキシ基、等の親電子性置換基を有する、不飽和カルボン酸エステル、アミド類と、単官能若しくは多官能のアルコール類、アミン類との付加反応物、ハロゲン原子や、トシルオキシ基、等の脱離性置換基を有する、不飽和カルボン酸エステル、アミド類と、単官能若しくは多官能のアルコール類、アミン類との置換反応物も好適である。また、別の例として、上記の不飽和カルボン酸の代わりに、不飽和ホスホン酸、スチレン、ビニルエーテル等に置き換えた化合物群を使用することも可能である。
【0055】
脂肪族多価アルコール化合物と不飽和カルボン酸とのエステルのモノマーの具体例としては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1、3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、テトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ((メタ)アクリロイルオキシプロピル)エーテル、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1、4−シクロヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ソルビトールトリ(メタ)アクリレート、ソルビトールテトラ(メタ)アクリレート、ソルビトールペンタ(メタ)アクリレート、ソルビトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリ((メタ)アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマー等がある。中でも、置換基としてヒドロキシ基を有するものが好ましく、グリセロールジ(メタ)アクリレートがより好ましい。
【0056】
その他のエステルの例として、例えば、特公昭46−27926号、特公昭51−47334号、特開昭57−196231号各公報記載の脂肪族アルコール系エステル類や、特開昭59−5240号、特開昭59−5241号、特開平2−226149号各公報記載の芳香族系骨格を有するもの、特開平1−165613号公報記載のアミノ基を含有するもの等も好適に用いられる。上記エステルのモノマーは混合物としても使用することができる。
【0057】
また、イソシアネートと水酸基の付加反応を用いて製造されるウレタン系付加重合性化合物も好適であり、そのような具体例としては、例えば、特公昭48−41708号公報中に記載されている1分子に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物に、下記式(i)で示される水酸基を含有するビニルモノマーを付加させた1分子中に2個以上の重合性ビニル基を含有するビニルウレタン化合物等が挙げられる。
CH2=C(R)COOCH2CH(R’)OH (i)
(ただし、R及びR’は、それぞれ、H又はCH3を示す。)
【0058】
また、特開昭51−37193号、特公平2−32293号、特公平2−16765号各公報に記載されているようなウレタンアクリレート類や、特公昭58−49860号、特公昭56−17654号、特公昭62−39417号、特公昭62−39418号各公報記載のエチレンオキサイド系骨格を有するウレタン化合物類も好適である。
【0059】
更に、特開昭63−277653号、特開昭63−260909号、特開平1−105238号各公報に記載される、分子内にアミノ構造を有する付加重合性化合物類を用いることによって、短時間で硬化組成物を得ることができる。
【0060】
その他の例としては、特開昭48−64183号、特公昭49−43191号、特公昭52−30490号各公報に記載されているようなポリエステルアクリレート類、エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸を反応させたエポキシアクリレート類等の多官能のアクリレートやメタクリレートを挙げることができる。また、特公昭46−43946号、特公平1−40337号、特公平1−40336号各公報記載の特定の不飽和化合物や、特開平2−25493号公報記載のビニルホスホン酸系化合物等も挙げることができる。また、ある場合には、特開昭61−22048号公報記載のペルフルオロアルキル基を含有する構造が好適に使用される。更に、日本接着協会誌vol.20、No.7、300〜308ページ(1984年)に光硬化性モノマー及びオリゴマーとして紹介されているものも使用することができる。
【0061】
本発明におけるオリゴマーとしては、いかなるオリゴマーでもかまわないが、例えば、オレフィン系(エチレンオリゴマー、プロピレンオリゴマー、ブテンオリゴマー等)、ビニル系(スチレンオリゴマー、ビニルアルコールオリゴマー、ビニルピロリドンオリゴマーアクリレートオリゴマー、メタクリレートオリゴマー等)、ジエン系(ブタジエンオリゴマー、クロロプレンゴム、ペンタジエンオリゴマー等)、開環重合系(ジ−,トリ−,テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリエチルイミン等)、重付加系(オリゴエステルアクリレート、ポリアミドオリゴマー、ポリイソシアネートオリゴマー)、付加縮合オリゴマー(フェノール樹脂、アミノ樹脂、キシレン樹脂、ケトン樹脂等)等を挙げることができる。この中で、オリゴエステルアクリレートが好ましく、その中では、ウレタンアクリル系、ポリエステルアクリレート系、エポキシアクリレート系が更に好ましく、ウレタンアクリレート系が特に好ましい。
ウレタンアクリレート系としては、脂肪族系ウレタンアクリレート、芳香族系ウレタンアクリレートなどが挙げられる。詳しくは、オリゴマーハンドブック(吉川淳二監修、化学工業日報社)を参照することができる。
【0062】
また、オリゴマーの市販品としては、ウレタンアクリレート系として、例えば、第一工業製薬(株)製のR1204、R1211、R1213、R1217、R1218、R1301、R1302、R1303、R1304、R1306、R1308、R1901、R1150等や、ダイセル・サイテック(株)製のEbecrylシリーズ(例えば、Ebecryl 230、270、4858、8402、8804、8807、8803、9260、1290、1290K、5129、4842、8210、210、4827、6700、4450、220)、新中村化学工業(株)製のNKオリゴU−4HA、U−6HA、U−15HA、U−108A、U−200AX等、東亞合成(株)製のアロニックスM−1100、M−1200、M−1210、M−1310、M−1600、M−1960等が挙げられる。ポリエステルアクリレート系として、例えば、ダイセル・サイテック(株)製のEbecrylシリーズ(例えば、Ebecryl770、IRR467、81、84、83、80、675、800、810、812、1657、1810、IRR302、450、670、830、870、1830、1870、2870、IRR267、813、IRR483、811等)、東亞合成(株)製のアロニックスM−6100、M−6200、M−6250、M−6500、M−7100、M−8030、M−8060、M−8100、M−8530、M−8560、M−9050等が挙げられる。また、エポキシアクリレート系として、例えば、ダイセル・サイテック(株)製のEbecrylシリーズ(例えば、Ebecry600、860、2958、3105、3411、3600、3605、3700、3701、3703、3702、3708、RDX63182,6040等)等が挙げられる。
【0063】
本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物中の成分Eの含有量は、架橋レリーフ形成層の柔軟性や脆性の観点から、全不揮発成分中、0.5〜50質量%が好ましく、2〜40質量%がより好ましく、5〜30質量%が更に好ましい。
【0064】
<(成分F)重合開始剤>
本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物は、(成分F)重合開始剤を更に含有するものが好ましい。重合開始剤としては、ラジカル重合開始剤が好ましく、特開2008−63554号公報の段落0074〜0118に記載されている化合物を好ましく例示できる。
ラジカル重合開始剤としては、芳香族ケトン類、オニウム塩化合物、有機過酸化物、チオ化合物、ヘキサアリールビイミダゾール化合物、ケトオキシムエステル化合物、ボレート化合物、アジニウム化合物、メタロセン化合物、活性エステル化合物、炭素ハロゲン結合を有する化合物、アゾ系化合物等が挙げられる。中でも彫刻感度と、レリーフ印刷版原版のレリーフ形成層に適用した際にはレリーフエッジ形状を良好とするといった観点から、有機過酸化物又はアゾ系化合物がより好ましく、有機過酸化物が特に好ましい。
【0065】
また、好ましい併用成分として、有機過酸化物と光熱変換剤とを組み合わせて用いることで、彫刻感度が極めて高くなるのでより好ましく、有機過酸化物と光熱変換剤であるカーボンブラックとを組み合わせて用いた態様が最も好ましい。
これは、重合性化合物と有機過酸化物とを用いてレリーフ形成層を熱架橋により硬化させる際、ラジカル発生に関与しない未反応の有機過酸化物が残存するが、残存した有機過酸化物は、自己反応性の添加剤として働き、レーザー彫刻時に発熱的に分解する。その結果、照射されたレーザーエネルギーに発熱分が加算されるので彫刻感度が高くなると推定される。
この効果は、光熱変換剤としてカーボンブラックを用いる場合に著しい。これは、カーボンブラックから発生した熱が有機過酸化物にも伝達される結果、カーボンブラックだけでなく有機過酸化物からも発熱し、分解に使用されるべき熱エネルギーの発生が相乗的に生じるためと考えられる。
【0066】
重合開始剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用することも可能である。
本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物中の重合開始剤の含有量は、全不揮発成分中、0.01〜10質量%が好ましく、0.1〜3質量%がより好ましい。重合開始剤の含有量を0.01質量%以上とすることで、これを添加した効果が得られ、レリーフ形成層の架橋が速やかに行われる。また、含有量を10質量%以下とすることで他成分が不足することがなく、レリーフ印刷版として使用するに足る耐刷性が得られる。
【0067】
<(成分G)無機粒子>
本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物は、(成分G)無機粒子を更に含有するものが好ましい。
無機粒子を添加することにより、レーザー彫刻用樹脂組成物の粘度、レリーフ形成層の濡れ性、粘弾性特性等の機械的特性が調整される。レーザー彫刻用樹脂組成物に、無機粒子を添加することにより、レリーフ形成層表面のタックの低減、彫刻カスのリンス性の向上、及び、レリーフ印刷版による印刷品質の向上が実現される。更に、無機粒子を使用することにより、レリーフ形成層の破断強度を向上すると共に、インキ転移性に優れるレリーフ印刷版を得ることができる。また、得られたレリーフ形成層の耐溶剤特性を向上させる目的で、無機粒子を添加することもできる。
【0068】
レーザー彫刻法によりレリーフ形成層表面又はレリーフ形成層を貫通したパターンを形成するためには、レーザー彫刻時に発生する粘着性の液状カスの吸着除去特性に優れる数平均粒子径が5nm以上10μm以下の多孔質無機粒子又は1次粒子の数平均粒子径が5nm以上100nm以下の無孔質無機粒子を添加することが好ましい。
【0069】
「多孔質無機粒子」とは、細孔容積が0.1ml/g以上の無機粒子を意味する。細孔容積は、窒素吸着法を用いて、−196℃における窒素の吸着等温線から求められる。
多孔質無機粒子の細孔容積の好ましい範囲は、0.1〜10ml/gであり、より好ましくは、0.2〜5ml/gである。細孔容積が0.1ml/g以上である多孔質無機粒子を用いることにより、レーザー彫刻時に発生する粘着性の液状カスの吸収量が十分なものとなる。また、細孔容積が10ml/g以下であることにより、多孔質無機粒子の機械的強度を確保することができる。
多孔質無機粒子の数平均粒径は、100nm以上10μm以下であることが好ましく、300nm以上5μm以下であることがより好ましい。
【0070】
多孔質無機粒子としては、特に限定されるものではないが、例えば、多孔質シリカ、メソポーラスシリカ、シリカ−ジルコニア多孔質ゲル、ポーラスアルミナ、多孔質ガラス、ゼオライトなどが挙げられる。
多孔質無機粒子は1種類又は2種類以上のものを併用することができる。
【0071】
「無孔質無機粒子」とは、細孔容積が0.1ml/g未満の微粒子を意味する。
無孔質無機粒子の数平均粒子径は、10〜100nmであることが好ましく、10〜50nmであることがより好ましい。
無孔質無機粒子の材質としては、例えば、アルミナ、シリカ、酸化ジルコニウム、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、酸化チタン、窒化ケイ素、窒化ホウ素、炭化ケイ素、酸化クロム、酸化バナジウム、酸化錫、酸化ビスマス、酸化ゲルマニウム、ホウ素酸アルミニウム、酸化ニッケル、酸化モリブデン、酸化タングステン、酸化鉄、及び酸化セリウムから選択される少なくとも1種類を主成分とすることが好ましい。
無孔質無機粒子は、上記材質を用い、火炎加水分解法、アーク法、プラズマ法、沈降法、ゲル化法、溶融固体法のいずれかの方法で製造される無孔質無機粒子であることが好ましい。火炎加水分解法、アーク法、プラズマ法は、熱分解法又は高熱法(乾式法)とも呼ばれている。また、沈降法、ゲル化法は湿式法とも呼ばれる方法である。これらのうち、乾式法、特に火炎加水分解法によるものが好ましい。
無孔質無機粒子は1種類又は2種類以上のものを併用することができ、また、多孔質無機粒子と併用することもできる。
【0072】
数平均粒子径が上述した範囲内にある多孔質又は無孔質無機粒子を用いた場合、粘度の上昇、気泡の巻き込み、粉塵の大量発生などの不都合を生じることなく、レリーフ形成層表面に凹凸が発生することもない。
なお、無機粒子の数平均粒子径は、レーザー散乱式粒子径分布測定装置を用いて測定することができる。
【0073】
無機粒子の粒子形状は特に限定されるものではなく、球状、扁平状、針状、無定形、又は表面に突起のある粒子などを使用することができる。特に耐磨耗性の観点からは、球状粒子が好ましい。
また、無機粒子の表面をシランカップリング剤、チタンカップリング剤、その他の有機化合物で被覆し表面改質処理を行い、より親水性化又は疎水性化した粒子を用いることもできる。これらの無機粒子は1種類又は2種類以上のものを選択できる。
【0074】
本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物に無機粒子を用いる場合、カスの除去性と膜の柔軟性の両立の観点から、無機粒子の含有量は、レーザー彫刻用樹脂組成物の全不揮発成分中、0.01〜30質量%以下が好ましく、0.05〜15質量%がより好ましく、0.1〜5質量%が更に好ましい。
【0075】
<(成分H)光熱変換剤>
本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物は、(成分H)光熱変換剤を更に含有するものが好ましい。すなわち、本発明における光熱変換剤は、レーザーの光を吸収し発熱することで、レーザー彫刻時の硬化物の熱分解を促進すると考えられる。このため、彫刻に用いるレーザー波長の光を吸収する光熱変換剤を選択することが好ましい。
【0076】
本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物を用いて製造したレーザー彫刻用レリーフ印刷版原版を、700〜1,300nmの赤外線を発するレーザー(YAGレーザー、半導体レーザー、ファイバーレーザー、面発光レーザー等)を光源としてレーザー彫刻に用いる場合に、光熱変換剤としては、700〜1,300nmに極大吸収波長を有する化合物を用いることが好ましい。
本発明における光熱変換剤としては、種々の染料又は顔料が用いられる。
【0077】
光熱変換剤のうち、染料としては、市販の染料及び例えば「染料便覧」(有機合成化学協会編集、昭和45年刊)等の文献に記載されている公知のものが利用できる。具体的には、700〜1,300nmに極大吸収波長を有するものが挙げられ、アゾ染料、金属錯塩アゾ染料、ピラゾロンアゾ染料、ナフトキノン染料、アントラキノン染料、フタロシアニン染料、カルボニウム染料、ジインモニウム化合物、キノンイミン染料、メチン染料、シアニン染料、スクワリリウム色素、ピリリウム塩、金属チオレート錯体等の染料が好ましく挙げられる。本発明において好ましく用いられる染料としては、ヘプタメチンシアニン色素等のシアニン系色素、ペンタメチンオキソノール色素等のオキソノール系色素、フタロシアニン系色素及び特開2008−63554号公報の段落0124〜0137に記載の染料を挙げることができる。
【0078】
本発明において使用される光熱変換剤のうち、顔料としては、市販の顔料及びカラーインデックス(C.I.)便覧、「最新顔料便覧」(日本顔料技術協会編、1977年刊)、「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)、「印刷インキ技術」CMC出版、1984年刊)に記載されている顔料が利用できる。また、顔料としては、特開2009−178869号公報の段落0122〜0125に記載の顔料が例示できる。
これらの顔料のうち、好ましいものはカーボンブラックである。
【0079】
カーボンブラックは、レーザー彫刻用樹脂組成物中における分散性などが安定である限り、ASTMによる分類のほか、用途(例えば、カラー用、ゴム用、乾電池用など)の如何に拘らずいずれも使用可能である。カーボンブラックには、例えば、ファーネスブラック、サーマルブラック、チャンネルブラック、ランプブラック、アセチレンブラックなどが含まれる。なお、カーボンブラックなどの黒色着色剤は、分散を容易にするため、必要に応じて分散剤を用い、予めニトロセルロースやバインダーなどに分散させたカラーチップやカラーペーストとして使用することができる。このようなチップやペーストは市販品として容易に入手できる。また、カーボンブラックとしては、特開2009−178869号公報の段落0130〜0134に記載されたものが例示できる。
【0080】
レーザー彫刻用樹脂組成物中における光熱変換剤の含有量は、その分子固有の分子吸光係数の大きさにより大きく異なるが、該樹脂組成物の全不揮発成分中、0.01〜30質量%の範囲が好ましく、0.05〜20質量%がより好ましく、0.1〜10質量%が特に好ましい。
【0081】
<(成分I)香料>
本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物は、臭気を低減させるために、(成分I)香料を含有することが好ましい。香料は、レリーフ印刷版原版の製造時やレーザー彫刻時の臭気を低減させるのに有効である。
本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物は、(成分I)香料を含有することにより、製造中に塗布した液状樹脂組成物を乾燥する際、揮発する溶剤臭をマスクすることができる。また、レーザー彫刻する際に発生するアミン臭やケトン臭、アルデヒド臭、樹脂の鼻につく焦げ臭さなどの不快臭をマスクすることができる。
また、香料は、硫黄の臭気を低減することにも効果的であるため、硫黄原子を有する化合物を含む場合には、本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物において有用である。
【0082】
香料としては、公知の香料を適宜選択して用いることができ、香料を1種単独で用いることもできるし、複数の香料を組み合わせて使用することもできる。
香料は、樹脂組成物に使用する前記成分Aのシラン化合物によって、適宜選択することが好ましく、公知の香料を組み合わせて最適化することが好ましい。香料としては、「合成香料−化学と商品知識−」(印藤元一著、(株)化学工業日報社発行)、「香料化学入門」(渡辺昭次著、(株)培風館出版)、「香りの百科」(日本香料協会編、(株)朝倉書店出版)、「香料化学総覧II 単離香料・合成香料・香料の応用」((株)廣川書店発行)に記載されている香料が挙げられる。
また、本発明に用いることができる香料としては、特開2009−203310号公報の段落0012〜0025に記載された香料が例示できる。
【0083】
中でも、香料として、テルペン系炭化水素、テルペン系アルコール、テルペン類のオキサイド、テルペン系アルデヒド、テルペン系ケトン、テルペン系カルボン酸、テルペン系ラクトン、テルペン系カルボン酸エステル等のテルペン化合物及び/又は脂肪族エステル、フラン系カルボン酸族エステル、脂肪族環状カルボン酸エステル、シクロヘキシルカルボン酸族エステル、芳香族カルボン酸エステル等のエステル化合物を使用することが好ましい。
【0084】
また、本発明における香料として、耐熱性香料を用いることが好ましい。耐熱性香料を用いることにより、レーザー彫刻時において芳香を発散することにより樹脂の分解による悪臭をマスキングし、しかも、常温(20℃)においてはほとんど芳香を発散せず長期保存の可能な(架橋)レリーフ形成層及びレリーフ層とすることができる。
ここで、耐熱性香料とは、レーザー彫刻作業時において芳香を発散することにより樹脂の分解等による悪臭をマスキングし、かつ、常温においてはほとんど芳香を発散せず長期保存が可能である香料のことをいう。
【0085】
耐熱性香料として、具体的には、以下に示すような、ヘリオトロープ系、ジャスミン系、ローズ系、オレンジフラワー系、アンバー系、及び、ムスク系よりなる群から選ばれた1種以上の香料成分が好ましく使用される。
また、更に具体的な香料として、下記のパチュリ油を主体とするオリエンタルベースに、下記のローズ系、アンバー系、ムスク系、及び、ジャスミン系よりなる群から選ばれる香料成分を、溶剤のジオクチルフタレート(DOP)と共に上乗せしたタブ(TABU)タイプの香料がある。
オリエンタルベースとしては、パチュリ油、ハーコリン(メチルアビエテート・methylabietate)、バニリン、エチルバニリン、クマリン等が挙げられる。
ローズ系香料成分としては、フェニルエチルアルコール、ゲラニオール、イソ−ボルニルメトキシシクロヘキサノール(iso−Bornyl methoxycyclohexanol)等が挙げられ、アンバー系香料成分としては、テトラハイドロパラメチルキノリン等が挙げられ、ムスク系香料成分としては、ガラクソリッド、ムスクケトン等が挙げられ、ジャスミン系香料成分としては、α−アミルシンナムアルデヒド、メチルジヒドロジャスモネートが挙げられる。
【0086】
また、下記のヘリオトロープ系の香料成分を主香調とし、ジャスミン系の香料成分、更に、高調性、拡散性を付与するため、ローズ系の香料成分やオレンジフラワー系の香料成分を、溶媒のDOPと一緒に加えたアメシスト(AMETHYST)タイプの香料も好ましいものとして挙げられる。
ヘリオトロープ系香料成分としては、ヘリオトロピン、ムスクケトン、クマリン、エチルバニリン、アセチルセドレン、ハーコリン(メチルアビエテート)、オイゲノール、メチルヨノン等が挙げられる。
ローズ系香料成分としては、ダマスコン−β、ダマスコン−α、イソ−ボルニルメトキシシクロヘキサノール等が挙げられ、オレンジフラワー系香料成分としては、メチルアンスラニレート、γ−ウンデカラクトン、γ−ノナラクトン等が挙げられ、ジャスミン系香料成分としては、メチルジヒドロジャスモネート等が挙げられる。
【0087】
更に、その他の耐熱性香料として、6−ヒドロキシアルカン酸や、6−(5−及び/又は6−アルケノイロキシ)アルカン酸を用いることも好ましい。
【0088】
香料としては、バニリン系香料、ジャスミン系香料、又は、ミント系香料を少なくとも含むことが好ましく、バニリン系香料、又は、ジャスミン系香料を含むことがより好ましく、バニリン系香料を含むことが更に好ましい。
また、本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物における香料は、バニリン系香料、ジャスミン系香料、又は、ミント系香料であることが好ましい。
バニリン系香料として、具体的には、バニリン、バニリン酸、バニリルアルコール、バニリンプロピレングリコールアセタール、メチルバニリン、エチルバニリン、パラヒドロキシ安息香酸、パラヒドロキシベンズアルデヒド等が好ましく例示できる。
ジャスミン系香料として、具体的には、メチルジヒドロジャスモネート、メチルエピ−ジヒドロジャスモネート、メチルジャスモネート、メチルエピ−ジャスモネート、シスジャスモン、ジャスモナン、シスジャスモンラクトン、ジヒドロジャスモンラクトン、ジャスミンラクトン、γ−ジャスモラクトン、シスジャスモンラクトン、メチルγ−デカラクトン、ジャスモラクトン、γ−ヘキサラクトン、γ−オクタラクトン、γ−ノナラクトン、4−メチル−5−ヘキセノライド−1:4、2−n−ヘキシルシクロペンタノン、アルキル−シクロヘプチルメチルカーボネート等が好ましく例示できる。
ミント系香料として、具体的にはメントール、メントン、シネオール、l−メントール、d−メントール、dl−メントール、d−ネオメントール、d−イソメントール、d−ネオメントール、ペパーミント油、スペアミント油、ハッカ油等が好ましく例示できる。
【0089】
香料の含有量は、レーザー彫刻用樹脂組成物の全不揮発成分中、0.003〜1.5質量%が好ましく、0.005〜1.0質量%がより好ましい。上記範囲であると、マスキング効果を充分に発揮でき、香料の香りが適度であり、作業環境が改善され、また彫刻感度に優れる。
【0090】
<その他の添加剤>
本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物には、ゴムの分野で通常用いられる各種添加剤を、本発明の効果を阻害しない範囲で適宜配合できる。例えば、充填剤、ワックス、プロセス油、有機酸、金属酸化物、オゾン分解防止剤、老化防止剤、熱重合防止剤、着色剤等が挙げられ、これらは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0091】
(レーザー彫刻用レリーフ印刷版原版)
本発明のレーザー彫刻用レリーフ印刷版原版は、(成分A)加水分解性シリル基及び/又はシラノール基を有する化合物を含有し、且つ、(成分B)バインダーポリマーを含有しないか、又は、全質量に対して2質量%未満含有するレーザー彫刻用樹脂組成物の熱架橋層を架橋レリーフ形成層として支持体上に有することを特徴とする。
本発明において「レリーフ形成層」とは、架橋される前の状態の層をいう。すなわち、本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物からなる層であり、必要に応じ、乾燥が行われていてもよい。本発明において「架橋レリーフ形成層」とは、前記レリーフ形成層を架橋した層をいう。前記架橋は熱により行われる。また、前記架橋はレーザー彫刻用樹脂組成物が硬化される反応であれば特に限定されず、成分A同士や成分E同士の反応による架橋構造を含む概念であるが、成分A及び/又は成分Eとが反応して架橋構造を形成することが好ましい。架橋レリーフ形成層を有するレーザー彫刻用レリーフ印刷版原版をレーザー彫刻することにより「レリーフ印刷版」が作製される。また、本発明において「レリーフ層」とは、レーザー彫刻後の前記架橋レリーフ形成層をいう。
【0092】
本発明のレーザー彫刻用レリーフ印刷版原版は、レーザー彫刻用樹脂組成物からなるレリーフ形成層を有する。(架橋)レリーフ形成層は、支持体上に設けられることが好ましい。
レーザー彫刻用レリーフ印刷版原版は、必要により更に、支持体と(架橋)レリーフ形成層との間に接着層を、また、(架橋)レリーフ形成層上にスリップコート層、保護フィルムを有していてもよい。
【0093】
<レリーフ形成層>
レリーフ形成層は、前記レーザー彫刻用樹脂組成物からなる層であり、熱架橋性の層である。本発明のレーザー彫刻用レリーフ印刷版原版としては、成分A同士による架橋構造に加えて、更に(成分E)重合性化合物、及び、(成分F)重合開始剤を含有することで、さらなる架橋性の機能を付与したレリーフ形成層を有するものが好ましい。
【0094】
レリーフ印刷版の作製態様としては、まず、レリーフ形成層を架橋させて架橋レリーフ形成層を有するレリーフ印刷版原版とする。次に、架橋レリーフ形成層(硬質のレリーフ形成層)をレーザー彫刻することによりレリーフ層を形成してレリーフ印刷版を作製する態様であることが好ましい。
レリーフ形成層を架橋することにより、印刷時におけるレリーフ層の摩耗を防ぐことができる。また、レーザー彫刻後に、シャープな形状のレリーフ層を得ることができる。
【0095】
レリーフ形成層は、レーザー彫刻用樹脂組成物を、シート状又はスリーブ状に成形して形成される。レリーフ形成層は、通常、後述する支持体上に設けられるが、製版、印刷用の装置に備えられたシリンダーなどの部材表面に直接形成したり、そこに配置して固定化したりすることもでき、必ずしも支持体を必要としない。
以下、主としてレリーフ形成層をシート状にした場合を例に挙げて説明する。
【0096】
<支持体>
レーザー彫刻用レリーフ印刷版原版の支持体に使用する素材は特に限定されないが、寸法安定性の高いものが好ましく使用される。素材としては、スチール、ステンレス、アルミニウムなどの金属、ポリエステル(例えばPET(ポリエチレンテレフタレート)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、PAN(ポリアクリロニトリル))やポリ塩化ビニルなどのプラスチック樹脂、スチレン−ブタジエンゴムなどの合成ゴム、ガラスファイバーで補強されたプラスチック樹脂(エポキシ樹脂やフェノール樹脂など)が挙げられる。支持体としては、PETフィルムやスチール基板が好ましく用いられる。支持体の形態は、レリーフ形成層がシート状であるかスリーブ状であるかによって決定される。
【0097】
<接着層>
レリーフ形成層を支持体上に形成する場合、両者の間には、層間の接着力を強化する目的で接着層を設けてもよい。
接着層に使用しうる材料(接着剤)としては、例えば、I.Skeist編、「Handbook of Adhesives」、第2版(1977)に記載のものを用いることができる。
【0098】
<保護フィルム、スリップコート層>
レリーフ形成層表面又は架橋レリーフ形成層表面への傷や凹み防止の目的で、レリーフ形成層表面又は架橋レリーフ形成層表面に保護フィルムを設けてもよい。保護フィルムの厚さは、25〜500μmが好ましく、50〜200μmがより好ましい。保護フィルムとしては、例えば、PETのようなポリエステル系フィルム、PE(ポリエチレン)やPP(ポリプロピレン)のようなポリオレフィン系フィルムが挙げられる。また、フィルムの表面はマット化されていてもよい。保護フィルムは、剥離可能であることが好ましい。
【0099】
保護フィルムが剥離不可能な場合や、逆にレリーフ形成層に接着しにくい場合には、両層間にスリップコート層を設けてもよい。スリップコート層に使用される材料は、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、部分鹸化ポリビニルアルコール、ヒドロキシアルキルセルロース、アルキルセルロース、ポリアミド樹脂など、水に溶解又は分散可能で、粘着性の少ない樹脂を主成分とすることが好ましい。
【0100】
(レーザー彫刻用レリーフ印刷版原版の製造方法)
レーザー彫刻用レリーフ印刷版原版におけるレリーフ形成層の形成は、特に限定されるものではないが、例えば、レーザー彫刻用樹脂組成物を調製し、必要に応じて、このレーザー彫刻用樹脂組成物から溶媒を除去した後に、支持体上に溶融押し出しする方法が挙げられる。あるいは、レーザー彫刻用樹脂組成物を、支持体上に流延し、これをオーブン中で乾燥して樹脂組成物から溶媒を除去する方法でもよい。
中でも、本発明のレーザー彫刻用レリーフ印刷版原版の製造方法は、本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物からなるレリーフ形成層を形成する層形成工程、並びに、前記レリーフ形成層を熱架橋し架橋レリーフ形成層を有するレリーフ印刷版原版を得る架橋工程、を含む製造方法であることが好ましい。
【0101】
その後、必要に応じてレリーフ形成層の上に保護フィルムをラミネートしてもよい。ラミネートは、加熱したカレンダーロールなどで保護フィルムとレリーフ形成層を圧着することや、表面に少量の溶媒を含浸させたレリーフ形成層に保護フィルムを密着させることによって行うことができる。
保護フィルムを用いる場合には、先ず保護フィルム上にレリーフ形成層を積層し、次いで支持体をラミネートする方法を採ってもよい。
接着層を設ける場合は、接着層を塗布した支持体を用いることで対応できる。スリップコート層を設ける場合は、スリップコート層を塗布した保護フィルムを用いることで対応できる。
【0102】
<層形成工程>
本発明のレーザー彫刻用レリーフ印刷版原版の製版方法は、本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物からなるレリーフ形成層を形成する層形成工程を含むことが好ましい。
レリーフ形成層の形成方法としては、本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物を調製し、必要に応じて、このレーザー彫刻用樹脂組成物から溶媒を除去した後に、支持体上に溶融押し出しする方法や、本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物を調製し、レーザー彫刻用樹脂組成物を支持体上に流延し、これをオーブン中で乾燥して溶媒を除去する方法が好ましく例示できる。
レーザー彫刻用樹脂組成物は、例えば、成分A、及び、成分B、並びに、任意成分として、成分C〜成分Iを適当な溶媒に溶解させることによって製造できる。溶媒成分のほとんどは、レーザー彫刻用レリーフ印刷版原版を製造する段階で除去する必要があるので、溶媒としては、揮発しやすい低分子アルコール(例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、プロピレングリコ−ルモノメチルエーテル)等を用い、かつ温度を調整するなどして溶媒の全添加量をできるだけ少なく抑えることが好ましい。なお、本発明においては、(成分B)バインダーポリマーの使用量が少ないため、低温でも溶媒を用いずに製膜することが可能である。溶媒の使用量としては、レーザー彫刻用樹脂組成物の不揮発成分100質量部に対して、30質量部以下が好ましく、20質量部以下がより好ましい。
【0103】
レーザー彫刻用レリーフ印刷版原版における(架橋)レリーフ形成層の厚さは、架橋の前後において、0.05mm以上10mm以下が好ましく、0.05mm以上7mm以下がより好ましく、0.05mm以上3mm以下が更に好ましい。
【0104】
<架橋工程>
本発明のレーザー彫刻用レリーフ印刷版原版の製造方法は、前記レリーフ形成層を熱架橋する架橋工程を含む製造方法であることが好ましい。レーザー彫刻用レリーフ印刷版原版を加熱することで、レリーフ形成層を架橋することができる(熱により架橋する工程)。熱により架橋を行うための加熱手段としては、印刷版原版を熱風オーブンや遠赤外オーブン内で所定時間加熱する方法や、加熱したロールに所定時間接する方法が挙げられる。
レリーフ形成層を熱架橋することで、第1にレーザー彫刻後形成されるレリーフがシャープになり、第2にレーザー彫刻の際に発生する彫刻カスの粘着性が抑制されるという利点がある。
【0105】
(レリーフ印刷版及びその製版方法)
本発明のレリーフ印刷版の製版方法は、前記レーザー彫刻用レリーフ印刷版原版を用意する工程、及び、前記架橋レリーフ形成層をレーザー彫刻してレリーフ層を形成する工程(彫刻工程)、を含むことを特徴とする。
また、本発明のレリーフ印刷版は、本発明のレリーフ印刷版の製版方法により製版されたことを特徴とする。
本発明のレリーフ印刷版の製版方法は、本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物からなるレリーフ形成層を形成する層形成工程、前記レリーフ形成層を熱で架橋し架橋レリーフ形成層を有するレリーフ印刷版原版を得る架橋工程、及び、前記架橋レリーフ形成層を有するレリーフ印刷版原版をレーザー彫刻する彫刻工程、を含むことが好ましい。
本発明のレリーフ印刷版は、水性インキを印刷時に好適に使用することができる。
本発明のレリーフ印刷版の製版方法における層形成工程及び架橋工程は、前記レーザー彫刻用レリーフ印刷版原版の製造方法における層形成工程及び架橋工程と同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0106】
<彫刻工程>
本発明のレリーフ印刷版の製版方法は、前記架橋レリーフ形成層を有するレリーフ印刷版原版をレーザー彫刻する彫刻工程を含むことが好ましい。
彫刻工程は、前記架橋工程で架橋された架橋レリーフ形成層をレーザー彫刻してレリーフ層を形成する工程である。具体的には、架橋された架橋レリーフ形成層に対して、所望の画像に対応したレーザー光を照射して彫刻を行うことによりレリーフ層を形成することが好ましい。また、所望の画像のデジタルデータを元にコンピューターでレーザーヘッドを制御し、架橋レリーフ形成層に対して走査照射する工程が好ましく挙げられる。
この彫刻工程には、赤外線レーザーが好ましく用いられる。赤外線レーザーが照射されると、架橋レリーフ形成層中の分子が分子振動し、熱が発生する。赤外線レーザーとして炭酸ガスレーザーやYAGレーザーのような高出力のレーザーを用いると、レーザー照射部分に大量の熱が発生し、架橋レリーフ形成層中の分子は分子切断又はイオン化されて選択的な除去、すなわち、彫刻がなされる。レーザー彫刻の利点は、彫刻深さを任意に設定できるため、構造を3次元的に制御することができる点である。例えば、微細な網点を印刷する部分は、浅く又はショルダーをつけて彫刻することで、印圧でレリーフが転倒しないようにすることができ、細かい抜き文字を印刷する溝の部分は深く彫刻することで、溝にインキが埋まりにくくなり、抜き文字つぶれを抑制することが可能となる。
中でも、光熱変換剤の吸収波長に対応した赤外線レーザーで彫刻する場合には、より高感度で架橋レリーフ形成層の選択的な除去が可能となり、シャープな画像を有するレリーフ層が得られる。
【0107】
彫刻工程に用いられる赤外レーザーとしては、生産性、コスト等の面から、炭酸ガスレーザー(CO2レーザー)又は半導体レーザーが好ましい。特に、ファイバー付き半導体赤外線レーザー(FC−LD)が好ましく用いられる。一般に、半導体レーザーは、CO2レーザーに比べレーザー発振が高効率且つ安価で小型化が可能である。また、小型であるためアレイ化が容易である。更に、ファイバーの処理によりビーム形状を制御できる。
半導体レーザーとしては、波長が700〜1,300nmのものが好ましく、800〜1,200nmのものがより好ましく、860〜1,200nmのものが更に好ましく、900〜1,100nmのものが特に好ましい。
【0108】
また、ファイバー付き半導体レーザーは、更に光ファイバーを取り付けることで効率よくレーザー光を出力できるため、本発明における彫刻工程には有効である。更に、ファイバーの処理によりビーム形状を制御できる。例えば、ビームプロファイルはトップハット形状とすることができ、安定に版面にエネルギーを与えることができる。半導体レーザーの詳細は、「レーザーハンドブック第2版」レーザー学会編、実用レーザー技術 電子通信学会 等に記載されている。
また、本発明のレリーフ印刷版の製版方法に好適に使用しうるファイバー付き半導体レーザーを備えた製版装置は、特開2009−172658号公報及び特開2009−214334号公報に詳細に記載され、これを本発明に係るレリーフ印刷版の製版方法に使用することができる。
【0109】
本発明のレリーフ印刷版の製版方法では、彫刻工程に次いで、更に、必要に応じて下記リンス工程、乾燥工程、及び/又は、後架橋工程を含んでもよい。
リンス工程:彫刻後のレリーフ層表面を水系リンス液によりリンスする工程。
乾燥工程:彫刻されたレリーフ層を乾燥する工程。
後架橋工程:彫刻後のレリーフ層にエネルギーを付与し、レリーフ層を更に架橋する工程。
前記彫刻工程を経た後、彫刻表面に彫刻カスが付着しているため、水又は水を主成分とする液体(リンス液)で彫刻表面をリンスして、彫刻カスを洗い流すリンス工程を追加してもよい。リンスの手段として、水道水で水洗する方法、高圧水をスプレー噴射する方法、感光性樹脂凸版の現像機として公知のバッチ式又は搬送式のブラシ式洗い出し機で、彫刻表面を主に水の存在下でブラシ擦りする方法などが挙げられ、彫刻カスのヌメリがとれない場合は、石鹸や界面活性剤を添加したリンス液を用いてもよい。
彫刻表面をリンスするリンス工程を行った場合、彫刻されたレリーフ形成層を乾燥してリンス液を揮発させる乾燥工程を追加することが好ましい。
更に、必要に応じてレリーフ形成層を更に架橋させる後架橋工程を追加してもよい。追加の架橋工程である後架橋工程を行うことにより、彫刻によって形成されたレリーフをより強固にすることができる。
【0110】
本発明に用いることができるリンス液のpHは9以上であることが好ましく、10以上であることがより好ましく、11以上であることが更に好ましい。また、リンス液のpHは14以下であることが好ましく、13.3以下であることがより好ましく、13以下であることが更に好ましく、12.5以下であることが特に好ましい。上記範囲であると、取り扱いが容易である。
リンス液を上記のpH範囲とするために、適宜、酸及び/又は塩基を用いてpHを調整すればよく、使用する酸及び塩基は特に限定されない。
本発明に用いることができるリンス液は、主成分として水を含有することが好ましい。
また、リンス液は、水以外の溶媒として、アルコール類、アセトン、テトラヒドロフラン等などの水混和性溶媒を含有していてもよい。
【0111】
リンス液は、界面活性剤を含有することが好ましい。界面活性剤としては、彫刻カスの除去性、及び、レリーフ印刷版への影響を少なくする観点から、カルボキシベタイン化合物、スルホベタイン化合物、ホスホベタイン化合物、アミンオキシド化合物、又は、ホスフィンオキシド化合物等のベタイン化合物(両性界面活性剤)が好ましく挙げられる。
前記ベタイン化合物としては、式(1)で表される化合物及び/又は式(2)で表される化合物であることが好ましい。
【0112】
【化11】

(式(1)中、R1〜R3はそれぞれ独立に、一価の有機基を表し、R4は単結合、又は、二価の連結基を表し、AはPO(OR5)O-、OPO(OR5)O-、O-、COO-、又は、SO3-を表し、R5は、水素原子、又は、一価の有機基を表し、R1〜R3のうち2つ以上の基が互いに結合し環を形成してもよい。)
【0113】
【化12】

(式(2)中、R6〜R8はそれぞれ独立に、一価の有機基を表し、R9は単結合、又は、二価の連結基を表し、BはPO(OR10)O-、OPO(OR10)O-、O-、COO-、又は、SO3-を表し、R10は、水素原子、又は、一価の有機基を表し、R6〜R8のうち2つ以上の基が互いに結合し環を形成してもよい。)
【0114】
式(1)で表される化合物又は式(2)で表される化合物は、カルボキシベタイン化合物、スルホベタイン化合物、ホスホベタイン化合物、アミンオキシド化合物、又は、ホスフィンオキシド化合物であることが好ましい。なお、本発明において、アミンオキシド化合物のN=O、及び、ホスフィンオキシド化合物のP=Oの構造はそれぞれ、N+−O-、P+−O-と見なすものとする。
式(1)におけるR1〜R3はそれぞれ独立に、一価の有機基を表す。また、R1〜R3のうち2つ以上の基が互いに結合し環を形成してもよいが、環を形成していないことが好ましい。
1〜R3における一価の有機基としては、特に制限はないが、アルキル基、ヒドロキシ基を有するアルキル基、アルキル鎖中にアミド結合を有するアルキル基、又は、アルキル鎖中にエーテル結合を有するアルキル基であることが好ましく、アルキル基、ヒドロキシ基を有するアルキル基、又は、アルキル鎖中にアミド結合を有するアルキル基であることがより好ましい。
また、前記一価の有機基におけるアルキル基は、直鎖状であっても、分岐を有していても、環構造を有していてもよい。
また、R1〜R3のうちの2つがメチル基である、すなわち、式(1)で表される化合物がN,N−ジメチル構造を有することが特に好ましい。上記構造であると、特に良好なリンス性を示す。
【0115】
前記式(1)におけるR4は、単結合、又は、二価の連結基を表し、式(1)で表される化合物がアミンオキシド化合物である場合は単結合である。
4における二価の連結基としては、特に制限はないが、アルキレン基、又は、ヒドロキシ基を有するアルキレン基であることが好ましく、炭素数1〜8のアルキレン基、又は、ヒドロキシ基を有する炭素数1〜8のアルキレン基であることがより好ましく、炭素数1〜3のアルキレン基、又は、ヒドロキシ基を有する炭素数1〜3のアルキレン基であることが更に好ましい。
前記式(1)におけるAは、PO(OR5)O-、OPO(OR5)O-、O-、COO-、又は、SO3-を表し、O-、COO-、又は、SO3-であることが好ましく、COO-であることがより好ましい。
-がO-である場合、R4は単結合であることが好ましい。
PO(OR5)O-及びOPO(OR5)O-におけるR5は、水素原子、又は、一価の有機基を表し、水素原子、又は、1以上の不飽和脂肪酸エステル構造を有するアルキル基であることが好ましい。
また、R4は、PO(OR5)O-、OPO(OR5)O-、O-、COO-、及び、SO3-を有していない基であることが好ましい。
【0116】
前記式(2)におけるR6〜R8はそれぞれ独立に、一価の有機基を表す。また、R6〜R8のうち2つ以上の基が互いに結合し環を形成してもよいが、環を形成していないことが好ましい。
6〜R8における一価の有機基としては、特に制限はないが、アルキル基、アルケニル基、アリール基、又は、ヒドロキシ基であることが好ましく、アルケニル基、アリール基、又は、ヒドロキシ基であることがより好ましい。
また、前記一価の有機基におけるアルキル基は、直鎖状であっても、分岐を有していても、環構造を有していてもよい。
また、R6〜R8のうちの2つがアリール基であることが特に好ましい。
【0117】
前記式(2)におけるR9は、単結合、又は、二価の連結基を表し、式(2)で表される化合物がホスフィンオキシド化合物である場合は単結合である。
9における二価の連結基としては、特に制限はないが、アルキレン基、又は、ヒドロキシ基を有するアルキレン基であることが好ましく、炭素数1〜8のアルキレン基、又は、ヒドロキシ基を有する炭素数1〜8のアルキレン基であることがより好ましく、炭素数1〜3のアルキレン基、又は、ヒドロキシ基を有する炭素数1〜3のアルキレン基であることが更に好ましい。
前記式(2)におけるBは、PO(OR10)O-、OPO(OR10)O-、O-、COO-、又は、SO3-を表し、O-であることが好ましい。
-がO-である場合、R9は単結合であることが好ましい。
PO(OR10)O-及びOPO(OR10)O-おけるR10は、水素原子、又は、一価の有機基を表し、水素原子、又は、1以上の不飽和脂肪酸エステル構造を有するアルキル基であることが好ましい。
また、R9は、PO(OR10)O-、OPO(OR10)O-、O-、COO-、及び、SO3-を有していない基であることが好ましい。
【0118】
式(1)で表される化合物としては、下記式(3)で表される化合物であることが好ましい。
【0119】
【化13】

(式(3)中、R1は一価の有機基を表し、R4は単結合、又は、二価の連結基を表し、AはPO(OR5)O-、OPO(OR5)O-、O-、COO-、又は、SO3-を表し、R5は、水素原子、又は、一価の有機基を表す。)
【0120】
式(3)におけるR1、A、R、及び、R5は、前記式(1)におけるR1、A、R、及び、R5と同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0121】
式(2)で表される化合物としては、下記式(4)で表される化合物であることが好ましい。
【0122】
【化14】

(式(4)中、R6〜R8はそれぞれ独立に、アルキル基、アルケニル基、アリール基、又は、ヒドロキシ基を表す。ただし、R6〜R8の全てが同じ基となることはない。)
【0123】
前記式(4)におけるR6〜R8はそれぞれ独立に、アルキル基、アルケニル基、アリール基、又は、ヒドロキシ基を表し、アルケニル基、アリール基、又は、ヒドロキシ基であることが好ましい。
式(1)で表される化合物又は式(2)で表される化合物として具体的には、下記の化合物が好ましく例示できる。
【0124】
【化15】

【0125】
【化16】

【0126】
【化17】

【0127】
また、界面活性剤としては、公知のアニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン界面活性剤等も挙げられる。更に、フッ素系、シリコーン系のノニオン界面活性剤も同様に使用することができる。
界面活性剤は、1種単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
界面活性剤の使用量は、特に限定されないが、リンス液の全質量に対し、0.01〜20質量%であることが好ましく、0.05〜10質量%であることがより好ましい。
【0128】
以上のようにして、支持体等の任意の基材表面にレリーフ層を有するレリーフ印刷版が得られる。
レリーフ印刷版が有するレリーフ層の厚さは、耐磨耗性やインキ転移性のような種々の印刷適性を満たす観点からは、0.05〜10mmが好ましく、より好ましくは0.05〜7mm、特に好ましくは0.05〜3mmである。
【0129】
また、レリーフ印刷版が有するレリーフ層のショアA硬度は、50〜90°であることが好ましい。レリーフ層のショアA硬度が50°以上であると、彫刻により形成された微細な網点が凸版印刷機の強い印圧を受けても倒れてつぶれることがなく、正常な印刷ができる。また、レリーフ層のショアA硬度が90°以下であると、印圧がキスタッチのフレキソ印刷でもベタ部での印刷かすれを防止することができる。
なお、本明細書におけるショアA硬度は、測定対象の表面に圧子(押針又はインデンタと呼ばれる)を押し込み変形させ、その変形量(押込み深さ)を測定して、数値化するデュロメータ(スプリング式ゴム硬度計)により測定した値である。
【0130】
本発明のレリーフ印刷版は、フレキソ印刷機による水性インキでの印刷に特に好適であるが、凸版用印刷機による水性インキ、油性インキ及びUVインキ、いずれのインキを用いた場合でも、印刷が可能であり、また、フレキソ印刷機によるUVインキでの印刷も可能である。本発明のレリーフ印刷版は、リンス性に優れており彫刻カスの残存がなく、かつ、得られたレリーフ層が弾性に優れるため、水性インク転移性及び耐刷性に優れ、長期間にわたりレリーフ層の塑性変形や耐刷性低下の懸念がなく、印刷が実施できる。
【実施例】
【0131】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0132】
(実施例1)
表1に記載した配合内容で、成分A、成分B、成分H、成分I、及び、溶媒を混合し、撹拌羽根及び冷却管をつけた3つ口フラスコ中に入れ、撹拌しながら70℃で120分間加熱し溶解した。PET基板上に3mm厚のスペーサー(枠)を設置し、上記の樹脂組成物を70℃に保持して、スペーサー(枠)から流出しない程度に静かに流延した。硬化方法として、オーブンに塗布物を入れ95℃で1時間保持したのち、85℃で3時間加熱を行った。得られた架橋レリーフ形成層に対し、半導体レーザーにより彫刻した。
半導体レーザー彫刻機として、最大出力8.0Wのファイバー付き半導体レーザー(FC−LD)SDL−6390(JDSU社製、波長:915nm)を装備したレーザー記録装置を用いた。半導体レーザー彫刻機でレーザー出力:7.5W、ヘッド速度:409mm/秒、ピッチ設定:2,400DPIの条件で、1cm四方のベタ部分をラスター彫刻した。レリーフ印刷版が有するレリーフ層の厚さは1.28mmであった。また、レリーフ層のショアA硬度を測定したところ、78°であった。
【0133】
(実施例2〜42、及び、比較例1〜3)
表1に記載の各成分、溶媒、及び、彫刻用レーザーを使用し、実施例1と同様な方法により、レーザー彫刻用樹脂組成物、レーザー彫刻用レリーフ印刷版原版、レリーフ印刷版を、実施例2〜42及び比較例1〜3について、それぞれ得た。
炭酸ガスレーザー(CO2レーザー)彫刻機として、高品位CO2レーザーマーカML−9100シリーズ((株)キーエンス製)を用いた。レーザー彫刻用レリーフ印刷版原版から保護フィルムを剥離後、炭酸ガスレーザー彫刻機で、出力:12W、ヘッド速度:200mm/秒、ピッチ設定:2,400DPIの条件で、1cm四方のベタ部分をラスター彫刻した。
【0134】
(リンス性の評価)
リンス液は、水、水酸化ナトリウム10質量%水溶液、及び、下記ベタイン化合物(1−B)を混合し、pHが12、かつ、ベタイン化合物(1−B)の含有量がリンス液全体の1質量%になるように調製した。
前記方法にて彫刻したレリーフ印刷版上に、上記リンス液を版表面が均一に濡れる様にスポイトで滴下(約100ml/m2)し、直ちにハブラシ(ライオン(株)製、クリニカハブラシ フラット)を用い、荷重100gfで版と平行に10回(15秒)こすった。その後、流水にて版面を洗浄し、版面の水分を除去し、1時間ほど自然乾燥した。
【0135】
【化18】

【0136】
リンス工程後、自然乾燥済みの版の表面を倍率100倍のマイクロスコープ(キーエンス(株)製)で観察し、版上の取れ残りカスを評価した。評価基準は以下の通りである。
◎:カスがないもの、○:殆どないもの、○△少し残存しているもの、△:○△と△×の間、△×:カスが少し除去できているもの、×:カスが殆ど除去できていないもの
×でないものを合格とした。
【0137】
以下に、各実施例及び比較例で使用した各成分の構造式又は化合物名を示す。
<(成分A)シラン化合物(加水分解性シリル基及び/又はシラノール基を有する化合物)>
【0138】
【化19】

【0139】
【化20】

【0140】
<(成分B)バインダーポリマー>
PVB;ポリビニルブチラール(デンカブチラール#3000−2、下記式において、l:m:n=56モル%:43モル%:1モル%、重量平均分子量:90,000、電気化学工業(株)製)
【0141】
【化21】

【0142】
<(成分C)架橋触媒>
C−1:リン酸
C−2:1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(サンアプロ(株)製)
C−3:1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ−5−エン(サンアプロ(株)製)
C−4:1,1,3,3−テトラメチルグアニジン(東京化成工業(株)製)
C−5:エポミンSP−006((株)日本触媒製)
C−6:三フッ化ホウ素モノエチルアミン錯体(和光純薬工業(株)製)
<(成分D)可塑剤>
D−1:フタル酸ビス(2−エチルヘキシル)(東京化成工業(株)製)
D−2:クエン酸トリブチル(東京化成工業(株)製)
D−3:シェルオンジナオイル32(昭和シェル石油(株)製)
<(成分E)重合性化合物>
E−1:グリセロールジメタクリレート(東京化成工業(株)製)
E−2:1,6−ヘキサンジオールジアクリレート(東京化成工業(株)製)
E−3:Ebecryl 5129(ダイセルサイテック(株)製、分子量800)
E−4:Ebecryl 8210(ダイセルサイテック(株)製、分子量600)
E−5:Ebecryl 3105(ダイセルサイテック(株)製、分子量900)
E−6:Ebecryl 270(ダイセルサイテック(株)製、分子量1,500)
<(成分F)重合開始剤>
F−1:tert−ブチルペルオキシベンゾエート(日油(株)製、パーブチルZ)
F−2:2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(和光純薬工業(株)製、V−65)
<(成分G)無機粒子>
G−1:SP#2300(日東粉化工業(株)製)
G−2:200−CF(日本アエロジル(株)製)
G−3:アエロジルR8200(エボニックデグサジャパン(株)製)
<(成分H)光熱変換剤>
H−1:ケッチェンブラック(ライオン(株)製、EC600JD)
H−2:カーボンブラック(東海カーボン(株)製、N330、HAFカーボン)
<(成分I)香料>
I−1:バニリン(和光純薬工業(株)製)
I−2:l−メントール(和光純薬工業(株)製)
<溶媒>
PGMEA:プロピレングリコ−ルモノメチルエーテル
【0143】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(成分A)加水分解性シリル基及び/又はシラノール基を有する化合物を含有し、且つ、(成分B)バインダーポリマーを含有しないか、又は、全質量に対して2質量%未満含有するレーザー彫刻用樹脂組成物の熱架橋層を架橋レリーフ形成層として支持体上に有することを特徴とする
レーザー彫刻用レリーフ印刷版原版。
【請求項2】
成分Aが、加水分解性シリル基及びシラノール基を2〜6個有する化合物である、請求項1に記載のレーザー彫刻用レリーフ印刷版原版。
【請求項3】
成分Aが、成分Aに含まれるケイ素原子同士を結ぶ最短の原子数が10以上である化合物である、請求項2に記載のレーザー彫刻用レリーフ印刷版原版。
【請求項4】
成分Aが、アルコキシ基及びヒドロキシ基を合わせて同一のケイ素原子上に2つ有する化合物である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のレーザー彫刻用レリーフ印刷版原版。
【請求項5】
成分Aが、重合性基を含有しない、請求項1〜4のいずれか1項に記載のレーザー彫刻用レリーフ印刷版原版。
【請求項6】
前記レーザー彫刻用樹脂組成物が、成分Bを含有しない、請求項1〜5のいずれか1項に記載のレーザー彫刻用レリーフ印刷版原版。
【請求項7】
前記レーザー彫刻用樹脂組成物が、成分Aの架橋構造形成を促進する(成分C)架橋触媒を更に含有する、請求項1〜6のいずれか1項に記載のレーザー彫刻用レリーフ印刷版原版。
【請求項8】
前記レーザー彫刻用樹脂組成物が、(成分D)可塑剤を更に含有する、請求項1〜7のいずれか1項に記載のレーザー彫刻用レリーフ印刷版原版。
【請求項9】
前記レーザー彫刻用樹脂組成物が、(成分E)重合性化合物を更に含有する、請求項1〜8のいずれか1項に記載のレーザー彫刻用レリーフ印刷版原版。
【請求項10】
前記レーザー彫刻用樹脂組成物が、(成分F)重合開始剤を更に含有する、請求項1〜9のいずれか1項に記載のレーザー彫刻用レリーフ印刷版原版。
【請求項11】
前記レーザー彫刻用樹脂組成物が、(成分G)無機粒子を更に含有する、請求項1〜10のいずれか1項に記載のレーザー彫刻用レリーフ印刷版原版。
【請求項12】
前記レーザー彫刻用樹脂組成物が、(成分H)光熱変換剤を更に含有する、請求項1〜11のいずれか1項に記載のレーザー彫刻用レリーフ印刷版原版。
【請求項13】
前記レーザー彫刻用樹脂組成物が、(成分I)香料を更に含有する、請求項1〜12のいずれか1項に記載のレーザー彫刻用レリーフ印刷版原版。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか1項に記載のレーザー彫刻用レリーフ印刷版原版を用意する工程、及び、
前記架橋レリーフ形成層をレーザー彫刻してレリーフ層を形成する工程、を含むことを特徴とする
レリーフ印刷版の製版方法。
【請求項15】
彫刻後のレリーフ層表面を水系リンス液によりリンスするリンス工程を更に含む、請求項14に記載のレリーフ印刷版の製版方法。
【請求項16】
請求項14又は15に記載のレリーフ印刷版の製版方法により形成されたレリーフ層を有することを特徴とする
レリーフ印刷版。
【請求項17】
前記レリーフ層の厚みが、0.05mm以上10mm以下である、請求項16に記載のレリーフ印刷版。
【請求項18】
前記レリーフ層のショアA硬度が、50°以上90°以下である、請求項16又は17に記載のレリーフ印刷版。

【公開番号】特開2011−245818(P2011−245818A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−123820(P2010−123820)
【出願日】平成22年5月31日(2010.5.31)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】