説明

レーザー彫刻用樹脂組成物、レーザー彫刻用レリーフ印刷版原版、レーザー彫刻用レリーフ印刷版原版の製造方法、レリーフ印刷版の製版方法、及び、レリーフ印刷版

【課題】彫刻カスのリンス性及びインキ転移性に優れたレーザー彫刻用レリーフ印刷版原版及びその製造方法を提供すること。該印刷版原版に好適に使用される、レーザー彫刻用樹脂組成物を提供すること。更に、レリーフ印刷版の製版方法、及び、レリーフ印刷版を提供すること。
【解決手段】(成分A)20℃においてプラストマーであり、かつ、エチレン性不飽和基を有しない樹脂、及び、(成分B)架橋剤、を含有することを特徴とするレーザー彫刻用樹脂組成物。成分Aがポリカーボネートポリオール、ポリシロキサンポリオール、アクリル樹脂、分子末端に水酸基を有するポリエステル樹脂及び分子末端に水酸基を有するポリウレタン樹脂よりなる群から選択され、成分Bが(メタ)アクリレート化合物、多官能イソシアネート化合物及びシランカップリング剤よりなる群から選択されることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザー彫刻用樹脂組成物、レーザー彫刻用レリーフ印刷版原版、レーザー彫刻用レリーフ印刷版原版の製造方法、レリーフ印刷版の製版方法、及び、レリーフ印刷版に関する。
【背景技術】
【0002】
レリーフ形成層をレーザーにより直接彫刻し製版する、いわゆる「直彫りCTP方式」が多く提案されている。この方式では、フレキソ原版に直接レーザーを照射し、光熱変換によりレリーフ形成層に熱分解及び揮発を生じさせ、凹部を形成する。直彫りCTP方式は、原画フィルムを用いたレリーフ形成と異なり、自由にレリーフ形状を制御することができる。このため、抜き文字の如き画像を形成する場合、その領域を他の領域よりも深く彫刻する、又は、微細網点画像では、印圧に対する抵抗を考慮し、ショルダーをつけた彫刻をすることなども可能である。この方式に用いられるレーザーは高出力の炭酸ガスレーザーが用いられることが一般的である。炭酸ガスレーザーの場合、全ての有機化合物が照射エネルギーを吸収して熱に変換できる。一方、安価で小型の半導体レーザーが開発されてきているが、これらは可視及び近赤外光であるため、該レーザー光を吸収して熱に変換することが必要となる。
従来のレーザー彫刻用樹脂組成物としては、例えば、特許文献1〜3に記載のものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第2846954号公報
【特許文献2】特開2004−262136号公報
【特許文献3】特表2011−510839号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする1つの課題は、彫刻カスのリンス性及びインキ転移性に優れたレーザー彫刻用レリーフ印刷版原版及びその製造方法を提供することである。また、本発明が解決しようとする他の1つの課題は、このような印刷版原版に好適に使用される、レーザー彫刻用樹脂組成物を提供することである。本発明が解決しようとする更に他の1つの課題は、レリーフ印刷版の製版方法、及び、レリーフ印刷版を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の上記課題は、以下の解決手段<1>、<15>、<16>、<17>、<19>及び<20>により解決された。好ましい実施形態である<2>〜<14>、<18>、<21>及び<22>と共に以下に記載する。
<1> (成分A)20℃においてプラストマーであり、かつ、エチレン性不飽和基を有しない樹脂、及び、(成分B)架橋剤、を含有することを特徴とするレーザー彫刻用樹脂組成物、
<2> 成分Aがポリカーボネートポリオール、ポリシロキサンポリオール、アクリル樹脂、分子末端に水酸基を有するポリエステル樹脂及び分子末端に水酸基を有するポリウレタン樹脂よりなる群から選択され、成分Bが(メタ)アクリレート化合物、多官能イソシアネート化合物及びシランカップリング剤よりなる群から選択される、<1>に記載のレーザー彫刻用樹脂組成物、
<3> 成分Aとしてポリカーボネートポリオールを含有し、成分Bとして(メタ)アクリレート化合物を含有する、<1>又は<2>に記載のレーザー彫刻用樹脂組成物、
<4> 成分Aとしてポリシロキサンポリオールを含有し、成分Bとして(メタ)アクリレート化合物を含有する、<1>又は<2>に記載のレーザー彫刻用樹脂組成物、
<5> 成分Aとしてアクリル樹脂を含有し、成分Bとして(メタ)アクリレート化合物を含有する、<1>又は<2>に記載のレーザー彫刻用樹脂組成物、
<6> 成分Aとして分子末端に水酸基を有するポリエステル樹脂を含有し、成分Bとして(メタ)アクリレート化合物を含有する、<1>又は<2>に記載のレーザー彫刻用樹脂組成物、
<7> 成分Aとして分子末端に水酸基を有するポリウレタン樹脂を含有し、成分Bとして(メタ)アクリレート化合物を含有する、<1>又は<2>に記載のレーザー彫刻用樹脂組成物、
<8> 成分Aとしてアクリル樹脂を含有し、成分Bとして多官能イソシアネート化合物を含有する、<1>又は<2>に記載のレーザー彫刻用樹脂組成物、
<9> 成分Aとして分子末端に水酸基を有するポリエステル樹脂を含有し、成分Bとして多官能イソシアネート化合物を含有する、<1>又は<2>に記載のレーザー彫刻用樹脂組成物、
<10> 成分Aとして分子末端に水酸基を有するポリウレタン樹脂を含有し、成分Bとして多官能イソシアネート化合物を含有する、<1>又は<2>に記載のレーザー彫刻用樹脂組成物、
<11> 成分Aとしてポリシロキサンポリオールを含有し、成分Bとしてシランカップリング剤を含有する、<1>又は<2>に記載のレーザー彫刻用樹脂組成物、
<12> 成分Aとしてアクリル樹脂を含有し、成分Bとしてシランカップリング剤を含有する、<1>又は<2>に記載のレーザー彫刻用樹脂組成物、
<13> 成分Aとして分子末端に水酸基を有するポリエステル樹脂を含有し、成分Bとしてシランカップリング剤を含有する、<1>又は<2>に記載のレーザー彫刻用樹脂組成物、
<14> 成分Aとして分子末端に水酸基を有するポリウレタン樹脂を含有し、成分Bとしてシランカップリング剤を含有する、<1>又は<2>に記載のレーザー彫刻用樹脂組成物、
<15> <1>〜<14>のいずれか1つに記載のレーザー彫刻用樹脂組成物からなるレリーフ形成層を有するレーザー彫刻用レリーフ印刷版原版、
<16> <1>〜<14>のいずれか1つに記載のレーザー彫刻用樹脂組成物からなるレリーフ形成層を光及び/又は熱により架橋した架橋レリーフ形成層を有するレーザー彫刻用レリーフ印刷版原版、
<17> <1>〜<14>のいずれか1つに記載のレーザー彫刻用樹脂組成物からなるレリーフ形成層を形成する層形成工程、並びに、上記レリーフ形成層を光及び/又は熱により架橋し、架橋レリーフ形成層を有するレリーフ印刷版原版を得る架橋工程、を含むレーザー彫刻用レリーフ印刷版原版の製造方法、
<18> 上記架橋工程が、上記レーザー彫刻用樹脂組成物層を熱により架橋し、レリーフ形成層を有するレリーフ印刷版原版を得る工程である、<17>に記載のレーザー彫刻用レリーフ印刷版原版の製造方法、
<19> <1>〜<14>のいずれか1つに記載のレーザー彫刻用樹脂組成物からなるレリーフ形成層を形成する層形成工程、上記レリーフ形成層を光及び/又は熱により架橋し、架橋レリーフ形成層を有するレリーフ印刷版原版を得る架橋工程、並びに、上記架橋レリーフ形成層を有するレリーフ印刷版原版をレーザー彫刻し、レリーフ層を形成する彫刻工程、を含むレリーフ印刷版の製版方法、
<20> <19>に記載のレリーフ印刷版の製版方法により製版されたレリーフ層を有するレリーフ印刷版、
<21> 上記レリーフ層の厚さが、0.05mm以上10mm以下である、<20>に記載のレリーフ印刷版、
<22> 上記レリーフ層のショアA硬度が、50°以上90°以下である、<20>又は<21>に記載のレリーフ印刷版。
【発明の効果】
【0006】
本発明のレリーフ印刷版原版の製造方法により、レーザー彫刻による彫刻カスのリンス性及び製版後のインキ転移性に優れたレリーフ印刷版原版が提供された。
更に、本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物により、レーザー彫刻に適したレリーフ印刷版原版の製造に好適に使用されるレーザー彫刻用樹脂組成物が提供された。
更にまた、本発明のレリーフ印刷版の製版方法により、彫刻カスのリンス性及びインキ転移性に優れたレリーフ印刷版が提供された。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明について詳細に説明する。
なお、本発明において、数値範囲を表す「下限〜上限」の記載は、「下限以上、上限以下」を表し、「上限〜下限」の記載は、「上限以下、下限以上」を表す。すなわち、上限及び下限を含む数値範囲を表す。また、「(成分A)20℃においてプラストマーであり、かつ、エチレン性不飽和基を有しない樹脂」等を単に「成分A」等ともいう。
【0008】
(レーザー彫刻用樹脂組成物)
本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物(以下、単に「樹脂組成物」ともいう。)は、(成分A)20℃においてプラストマーであり、かつ、エチレン性不飽和基を有しない樹脂、及び、(成分B)架橋剤、を含有することを特徴とする。本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物は、成分A及び成分Bを含有することにより、彫刻カスのリンス性及び製版後のインキ転移性に優れたレーザー彫刻用印刷版原版を提供することができる。
本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物は、レーザー彫刻が施されるレリーフ印刷版原版のレリーフ形成層用途以外にも、特に限定なく、他の用途にも広範囲に適用することができる。例えば、以下に詳述する凸状のレリーフ形成をレーザー彫刻により行う印刷版原版のレリーフ形成層のみならず、表面に凹凸や開口部を形成する他の材形、例えば、凹版、孔版、スタンプ等、レーザー彫刻により画像形成される各種印刷版や各種成形体の形成に適用することができる。
中でも、適切な支持体上に設けられるレリーフ形成層の形成に適用することが好ましい態様である。
【0009】
なお、本明細書では、レリーフ印刷版原版の説明に関し、成分A及び成分Bを含有し、レーザー彫刻に供する画像形成層としての、表面が平坦な層であり、かつ未架橋の架橋性層をレリーフ形成層と称し、上記レリーフ形成層を架橋した層を架橋レリーフ形成層と称し、これをレーザー彫刻して表面に凹凸を形成した層をレリーフ層と称する。
以下、レーザー彫刻用樹脂組成物の構成成分について説明する。
【0010】
(成分A)20℃においてプラストマーであり、かつ、エチレン性不飽和基を有しない樹脂
本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物は、(成分A)20℃においてプラストマーであり、かつ、エチレン性不飽和基を有しない樹脂(以下、単にプラストマーともいう。)を含有する。
本発明において「プラストマー」とは、高分子学会編「新版高分子辞典」(日本国、朝倉書店、1988年発行)に記載されているように、加熱により容易に流動変形し、かつ冷却により変形された形状に固化できるという性質を有する高分子体を意味する。プラストマーは、エラストマー(外力を加えたときに、その外力に応じて瞬時に変形し、かつ外力を除いたときには、短時間に元の形状を回復する性質を有するもの)に対する言葉であり、エラストマーのような弾性変形を示さず、容易に塑性変形するものである。
本発明において、プラストマーは、元の大きさを100%としたときに、室温(20℃)において小さな外力で200%まで変形させることができ、該外力を除いても、130%以下に戻らないものを意味する。より詳細には、JIS K 6262−1997の引張永久ひずみ試験に基づき、20℃において引張試験でI字状試験片の引張前の標線間距離の2倍に伸ばすことが可能であり、かつ、引張前の標線間距離の2倍に伸ばしたところで5分間保持した後、引張外力を除いて5分後に引張永久ひずみが30%以上であるポリマーを意味する。
なお、上記の測定ができないポリマーの場合、外力を加えなくとも変形して元の形状に戻らないポリマーはプラストマーに該当し、例えば、水あめ状、オイル状、液体状の樹脂が該当する。
更に、本願のプラストマーは、ポリマーのガラス転移温度(Tg)が20℃未満である。Tgを2つ以上有するポリマーの場合は、全てのTgが20℃未満である。
本発明の成分Aの20℃における粘度は、好ましくは10Pa・s〜10kPa・sであり、より好ましくは50Pa・s〜5kPa・sである。粘度がこの範囲内の場合には、シート状あるいは円筒状の印刷版原版に樹脂組成物を成形し易く、プロセスも簡便である。本発明において、成分Aがプラストマーであることにより、これから得られるレーザー彫刻用印刷版原版をシート状、もしくは円筒状に成形する際に、良好な厚み精度や寸法精度を達成することができる。
【0011】
成分Aの数平均分子量は1,000〜200,000であることが好ましく、より好ましくは2,000〜150,000、更に好ましくは3,000〜100,000、特に好ましくは5,000〜100,000である。この範囲内の数平均分子量を有する成分Aを用いて製造した樹脂組成物は加工が容易であり、しかも、後に架橋して作製する原版が強度を保ち、この原版から作製したレリーフ画像は強く、繰り返しの使用にも耐えられる。なお、成分Aの数平均分子量は、GPC(ゲル浸透クロマトグラフ)法を用いて測定し、標準ポリスチレンの検量線を用いて求めることができる。
【0012】
成分Aは、エチレン性不飽和基を含有しない。エチレン性不飽和基を含有しない方がレリーフ層の柔軟性が良好である。
【0013】
成分Aとしては、(成分A−1)ポリカーボネートポリオール、(成分A−2)ポリシロキサンポリオール、(成分A−3)アクリル樹脂、(成分A−4)分子末端に水酸基を有するポリエステル樹脂、(成分A−5)分子末端に水酸基を有するポリウレタン樹脂が好ましく例示できる。
以下、それぞれについて詳述する。
【0014】
(成分A−1)ポリカーボネートポリオール
本発明において、成分Aとして、(成分A−1)ポリカーボネートポリオールを使用することができ、ポリカーボネートジオールが好ましい。
ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、ポリオール成分とジアルキルカーボネート、アルキレンカーボネート、ジアリールカーボネート等のカーボネート化合物との反応によって得られるものを挙げることができる。
ポリカーボネートポリオールを構成するポリオール成分としては、ポリカーボネートポリオールの製造において一般的に使用されているもの、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2−メチル−1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、2,7−ジメチル−1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、2−メチル−1,9−ノナンジオール、2,8−ジメチル−1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール等の炭素数2〜15の脂肪族ジオール;1,4−シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、シクロオクタンジメタノール等の脂環式ジオール;1,4−ビス(β−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン等の芳香族ジオール;トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、グリセリン、1,2,6−ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、ジグリセリン等の1分子当たりの水酸基数が3以上である多価アルコールなどが挙げられる。ポリカーボネートポリオールの製造に当たっては、これらのポリオール成分は、1種類を使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらのうちでも、ポリカーボネートポリオールの製造に当たっては、2−メチル−1,4−ブタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、2,7−ジメチル−1,8−オクタンジオール、2−メチル−1,9−ノナンジオール、2,8−ジメチル−1,9−ノナンジオールなどのメチル基を側鎖として有する炭素数5〜12の脂肪族ジオールをポリオール成分として使用することが好ましい。特にこれらのメチル基を側鎖として有する炭素数5〜12の脂肪族ジオールをポリカーボネートポリオールの製造に用いる全ポリオール成分の30モル%以上の割合で使用することが好ましく、全ポリオール成分の50モル%以上の割合で使用することがより好ましい。
また、ジアルキルカーボネートとしては、例えば、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートなどを挙げることができ、アルキレンカーボネートとしては、例えば、エチレンカーボネート、1,2−プロピレンカーボネート、1,2−ブチレンカーボネートなどを挙げることができ、ジアリールカーボネートとしては、例えば、ジフェニルカーボネートなどを挙げることができる。
【0015】
ポリカーボネートポリオールとしては、ポリエステルポリカーボネートポリオールも好ましく、ポリエステルポリカーボネートポリオールとしては、例えば、ポリオール成分、ポリカルボン酸成分及びカーボネート化合物を同時に反応させて得られたもの、あるいは予め合成したポリエステルポリオール及びポリカーボネートポリオールをカーボネート化合物と反応させて得られたもの、又は予め合成したポリエステルポリオール及びポリカーボネートポリオールをポリオール成分及びポリカルボン酸成分と反応させて得られたものなどを挙げることができる。
【0016】
ポリカーボネートポリオールは、下記式(1)で表されるポリカーボネートジオールであることが好ましい。
【0017】
【化1】

【0018】
式(1)中、R1は、各々独立して、炭素骨格中に酸素原子など(窒素、硫黄、及び酸素からなる群より選ばれる少なくとも1種の原子)を含んでいてもよい、炭素数3〜50の直鎖、分岐鎖、及び/又は環式の炭化水素基を表し、R1は単一成分であっても複数の成分からなってもよい。nは、1〜500の整数であることが好ましい。
【0019】
1において、「炭化水素基」は飽和の炭化水素基である。
1において、「炭素骨格」とは、炭化水素基を構成する炭素数3〜50の構造部分を意味し、「炭素骨格中に酸素原子などを含んでいてもよい」とは、主鎖又は側鎖の炭素−炭素結合間に酸素原子などが挿入された構造であることを意味する。また、主鎖又は側鎖の炭素原子に結合する酸素原子などを有する置換基であってもよい。
【0020】
1としての直鎖の炭化水素基としては、例えば、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−ドデカンジオール、1,16−ヘキサデカンジオール、1,20−エイコサンジオールなどの炭素数3〜50の直鎖脂肪族ジオールに由来する炭化水素基などが挙げられる。
【0021】
1としての分岐鎖の炭化水素基としては、例えば、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジブチル−1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、2−エチル−1,4−ブタンジオール、2−イソプロピル−1,4−ブタンジオール、2,3−ジメチル−1,4−ブタンジオール、2,3−ジエチル−1,4−ブタンジオール、3,3−ジメチル−1,2−ブタンジオール、ピナコール、1,2−ペンタンジオール、1,3−ペンタンジオール、2,3−ペンタンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−エチル−1,5−ペンタンジオール、3−エチル−1,5−ペンタンジオール、2−イソプロピル−1,5−ペンタンジオール、3−イソプロピル−1,5−ペンタンジオール、2,4−ジメチル−1,5−ペンタンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、2,3−ジメチル−1,5−ペンタンジオール、2,2,3−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,3−ヘキサンジオール、1,4−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、2−エチル−1,6−ヘキサンジオール、2−エチル−1,3−へキサンジオール、2−イソプロピル−1,6−ヘキサンジオール、2,4−ジエチル−1,6−ヘキサンジオール、2,5−ジメチル−2,5−ヘキサンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、2−エチル−1,8−オクタンジオール、2,6−ジメチル−1,8−オクタンジオール、1,2−デカンジオール、8,13−ジメチル−1,20−エイコサンジオールなどの炭素数3〜30の分岐鎖脂肪族ジオールに由来する炭化水素基などが挙げられる。
【0022】
1としての環式の炭化水素基としては、例えば、1,2−シクロヘキサンジオール、1,3−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、m−キシレン−α,α’−ジオール、p−キシレン−α,α’−ジオール、2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)−プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−プロパン、ダイマージオールなどの炭素数3〜30の環式の脂肪族ジオールに由来する炭化水素基などが挙げられる。
【0023】
炭素数3〜50の直鎖脂肪族ジオールに由来する炭化水素基を例示として説明すると、本実施形態において、「炭素数3〜50の直鎖脂肪族ジオールに由来する炭化水素基」とは、炭素数3〜50の直鎖脂肪族ジオールのジオール水酸基以外の部分構造である基(炭素数3〜50の直鎖脂肪族ジオールから2つの水酸基を除いた二価の基)を意味する。
【0024】
1としての窒素、硫黄、及び酸素からなる群より選ばれる少なくとも1種の原子を含む炭化水素基としては、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、グリセリン、1,2,6−ヘキサントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジヒドロキシアセトン、1,4:3,6−ジアンヒドログルシトール、ジエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、ジヒドロキシエチルアセトアミド、2,2’−ジチオジエタノール、2,5−ジヒドロキシ−1,4−ジチアンなどに由来する炭化水素基などが挙げられ、また、下記式(2)で表される基などが挙げられる。
【0025】
【化2】

【0026】
上記式(2)において、耐溶剤性の観点から、R1がエーテル結合を少なくとも一つ含んでいることが好ましく、耐溶剤性及び耐久性の観点から、R1がジエチレングリコールに由来する基(−(CH22−O−(CH22−で表される基)であることがより好ましい。
【0027】
ポリカーボネートポリオールは、例えば、特公平5−29648号公報に記載されるように従来公知の方法により製造することができるが、具体的には、ポリオールと炭酸エステルとのエステル交換反応により製造することができる。
【0028】
本実施形態において、ポリカーボネートポリオールは、目的に応じて1種又は2種以上を併用して用いることができるが、1種のポリカーボネートポリオールを用いることが好適である。
【0029】
これらのポリカーボネートポリオールの数平均分子量は、1,000〜200,000の範囲内であることが好ましい。ポリカーボネートポリオールの数平均分子量は、1,500〜10,000の範囲内であることがより好ましく、2,000〜8,000の範囲内であることが更に好ましい。数平均分子量とは、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を用いて測定し、分子量既知のポリスチレンで検量し換算した値である。
【0030】
レーザー彫刻用樹脂組成物における成分A−1の含有量は、揮発性成分(溶剤)を除いた固形分に対して5〜90重量%であることが好ましく、15〜85重量%であることがより好ましく、30〜80重量%であることが更に好ましい。
【0031】
(成分A−2)ポリシロキサンポリオール
本発明において、成分Aとして、(成分A−2)ポリシロキサンポリオールを使用することができる。ポリシロキサンポリオールは、水酸基を2つ以上有するものであれば、その上限は特に限定されないが、水酸基の数は2〜6であることが好ましく、2〜4であることがより好ましく、2〜3であることが更に好ましく、2であることが特に好ましい。成分A−2の1分子中の水酸基が2つ未満であると、成分Bと十分に反応することができない。成分A−2の1分子中の水酸基(活性水素)が6以下であると、得られる印刷板原版のリンス性に優れるので好ましい。
【0032】
成分A−2は分子中にシロキサン結合を含む必要がある。
[シロキサン結合]
シロキサン結合について説明する。シロキサン結合とはケイ素(Si)と酸素(O)が交互に結合した分子構造を意味する。
本発明の樹脂組成物を用いて得られたレリーフ印刷版が優れたインキ転移性を有することに関する機構について詳細は明らかではないが、成分A−2中に安定的に結合しているシロキサン結合が存在することにより、添加物として添加するシロキサン結合などよりもインキとの親和性が低いため、インキ転移性が向上するものと推定される。
上記成分A−2は、下記平均組成式(3)で表されるシリコーン化合物から得られたものであることが好ましい。
prsSiO(4-p-r-s)/2 (3)
【0033】
式(3)中、Rは、直鎖状又は分岐状の炭素数が1〜30のアルキル基、炭素数5〜20のシクロアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基若しくは炭素数6〜20のアリール基で置換された炭素数1〜30(置換前の炭素数)のアルキル基、ハロゲン原子で置換されている炭素数6〜20のアリール基、炭素数2〜30のアルコキシカルボニル基、カルボキシル基又はその塩を含む1価の基、スルホ基又はその塩を含む1価の基、及びポリオキシアルキレン基からなる群から選ばれた1種又は2種以上の炭化水素基を表し、Q及びXは、各々、水素原子、直鎖状又は分岐状の炭素数が1〜30のアルキル基、炭素数5〜20のシクロアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基若しくは炭素数6〜20のアリール基で置換された炭素数1〜30のアルキル基、ハロゲン原子で置換されている炭素数6〜20のアリール基、炭素数2〜30のアルコキシカルボニル基、カルボキシル基又はその塩を含む1価の基、スルホ基又はその塩を含む1価の基、及びポリオキシアルキレン基からなる群から選ばれた1種又は2種以上の炭化水素基を表し、p、r及びsは、0<p<4、0≦r<4、0≦s<4、及び(p+r+s)<4を満たす数である。
【0034】
本実施の形態において、成分A−2はシロキサン結合を導入するための、シロキサン結合を有する化合物から得られる。
シロキサン結合を導入するためのシロキサン結合を有する化合物としては、例えばシリコーンオイルが挙げられる。シリコーンオイルとしてはジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、ジメチルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体等の低粘度から高粘度のオルガノポリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、テトラメチルテトラハイドロジェンシクロテトラシロキサン、テトラメチルテトラフェニルシクロテトラシロキサン等の環状シロキサン、高重合度のガム状ジメチルポリシロキサン、ガム状のジメチルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体等のシリコーンゴム、及びシリコーンゴムの環状シロキサン溶液、トリメチルシロキシケイ酸、トリメチルシロキシケイ酸の環状シロキサン溶液、ステアロキシシリコーン等の高級アルコキシ変性シリコーン、高級脂肪酸変性シリコーンなどが挙げられる。
【0035】
本発明において成分A−2は、上記のシロキサン結合を有する化合物を変性することによっても、得ることができる。
例として、カルビノール変性シリコーンオイル、フェノール変性シリコーンオイル、シラノール変性シリコーンオイル、ジオール変性シリコーンオイルが挙げられる。これら2つ以上の水酸基を有するシリコーンオイルを用いることができる。
【0036】
水酸基を分子中に2つ以上有するシリコーンオイルの中でも両末端変性シリコーンオイルが好ましい。例として両末端カルビノール変性シリコーンオイル、両末端フェノール変性シリコーンオイル、両末端シラノール変性シリコーンオイル、が挙げられる。
また、片末端変性シリコーンオイルや側鎖変性シリコーンオイルも使用することができる。例えば、片末端ジオール変性シリコーンオイル、側鎖カルビノール変性シリコーンオイル、などが挙げられる。
【0037】
中でも反応性、臭いや刺激性などの取り扱い性の観点から両末端カルビノール変性シリコーンオイル、片末端ジオール変性シリコーンオイルが好ましく、両末端カルビノール変性シリコーンオイル、片末端ジオール変性シリコーンオイルがより好ましく、両末端カルビノール変性シリコーンオイルが更に好ましい。
【0038】
また、成分A−2の数平均分子量は、好ましくは1,000以上30,000以下、より好ましくは1,000以上20,000以下、更に好ましくは2,000以上20,000以下である。この範囲であれば、シロキサン結合によるインキ転移性が十分に発揮され、また流動性、及び、成分A−2と成分Bとの相溶性が確保できる傾向にあるため取り扱いが容易であり、好ましい。
成分A−2として、両末端変性シリコーンオイルを使用する場合、成分A−2の数平均分子量は、1,000以上10,000以下であることが好ましく、1,000以上5,000以下であることがより好ましく、1,000以上3,000以下であることが更に好ましく、2,000以上3,000以下であることが特に好ましい。
成分A−2として、片末端変性シリコーンオイル及び/又は側鎖変性シリコーンオイルを使用する場合、成分A−2の数平均分子量は1,000以上30,000以下であることが好ましく、10,000以上20,000以下であることがより好ましい。
【0039】
成分A−2として上市されている製品を採用することもでき、両末端カルビノール変性シリコーンオイルとしては、X−22−160AS、KF−6003(以上、信越化学工業(株)製)、BY 16−004(東レ・ダウコーニング(株)製);片末端ジオール変性シリコーンオイルとしては、X−22−176DX、X−22−176F(以上、信越化学工業(株)製)が例示できる。
【0040】
レーザー彫刻用樹脂組成物における成分A−2の含有量は、揮発性成分(溶剤)を除いた固形分に対して5〜90重量%であることが好ましく、15〜85重量%であることがより好ましく、30〜80重量%であることが更に好ましい。
【0041】
(成分A−3)アクリル樹脂
本発明において、成分Aとして(成分A−3)アクリル樹脂を使用することができる。
アクリル樹脂としては、公知の(メタ)アクリル単量体を用いて得られるアクリル樹脂であれば特に限定されないが、分子中に活性水素を有することが好ましい。
ここで、活性水素とは、−OH、−SH、−NH−、−NH2、−COOH等における水素原子を意味し、成分Bが有する反応性基との反応活性を有する水素原子を意味する。これらの中でも、活性水素としては、−OH、−NH−又は−NH2における水素原子であることが好ましく、−OH基(水酸基)における水素原子であることが特に好ましい。
【0042】
水酸基を有するアクリル樹脂の合成に用いられる(メタ)アクリル単量体としては、例えば(メタ)アクリル酸エステル類、クロトン酸エステル類、(メタ)アクリルアミド類であって分子内にヒドロキシル基を有するものが好ましい。この様な単量体の具体例としては例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0043】
上記水酸基を有するアクリル単量体以外のアクリル単量体としては、(メタ)アクリル酸エステル類としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、アセトキシエチル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、2−(2−メトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールモノエチルエーテル(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、エチレングリコールとプロピレングリコールとの共重合体のモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
更に、ウレタン結合やウレア結合を有するアクリル単量体を含んで構成される変性アクリル樹脂も好ましく使用することができる。
これらの中でも、インキ転移性の観点で、ドデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレートや2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートなどのアルキル(メタ)アクリレート類、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレートなどのエーテル結合を側鎖に有する(メタ)アクリレート類、t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレートなど脂肪族環状構造を有する(メタ)アクリレート類が特に好ましい。
【0044】
成分A−3の数平均分子量は、1,000〜100,000の範囲内であることが好ましい。3,000〜80,000であることがより好ましく、5,000〜70,000であることが更に好ましい。成分A−3の数平均分子量が上記範囲内であると、柔軟性に優れるレリーフ形成層及びレリーフ層が得られる。
【0045】
レーザー彫刻用樹脂組成物における成分A−3の含有量は、揮発性成分(溶剤)を除いた固形分に対して5〜90重量%であることが好ましく、15〜85重量%であることがより好ましく、30〜80重量%であることが更に好ましい。
【0046】
(成分A−4)分子末端に水酸基を有するポリエステル樹脂
本発明において、成分Aとして(成分A−4)分子末端に水酸基を有するポリエステル樹脂を使用することができる。なお、成分A−4は主鎖末端に水酸基を有するポリエステル樹脂であることが好ましい。
成分A−4は、多塩基酸成分の少なくとも1種と多価アルコール成分の少なくとも1種とから、エステル化反応又はエステル交換反応によって形成される樹脂であることが好ましい。
【0047】
上記多塩基酸成分の具体例としては、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、コハク酸、フマル酸、アジピン酸、セバシン酸、マレイン酸などの二塩基酸、トリメリット酸、メチルシクロヘキセントリカルボン酸、ピロメリット酸などの3価以上の多塩基酸、及びこれらの酸無水物、例えば、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、無水マレイン酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸などが挙げられる。
【0048】
上記多塩基酸成分としては、上述の二塩基酸から選ばれる1種以上の二塩基酸、これらの酸の低級アルキルエステル化合物、及び酸無水物が主として用いられる。また必要に応じて、安息香酸、クロトン酸、p−t−ブチル安息香酸などの一塩基酸や、無水トリメリット酸、メチルシクロヘキセントリカルボン酸、無水ピロメリット酸などの3価以上の多塩基酸などを更に併用することができる。
本発明において、多塩基酸成分としては、インキ転移性の観点から、少なくともアジピン酸を含むことが好ましい。
【0049】
上記多価アルコール成分の具体例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5−ペンタンジオール、3−メチルペンタンジオール、1,4−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオールなどの2価アルコールや、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどの3価以上の多価アルコールが挙げられる。
上記多価アルコール成分としては、上述の2価アルコールが主に用いられ、必要に応じて、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどの3価以上の多価アルコールを更に併用することができる。これらの多価アルコールは単独で、あるいは2種以上を混合して使用することができる。
本発明における多価アルコール成分としては、保存安定性の観点から、少なくとも3−メチルペンタンジオールを含むことが好ましい。
【0050】
多塩基酸成分及び多価アルコール成分のエステル化反応又はエステル交換反応は、通常用いられる方法を特に制限なく用いて行うことができる。
また、多価アルコール成分中の水酸基が、多塩基酸成分中のカルボキシル基よりも多く存在するように原料比を調整することで、末端に水酸基を有するようにすることが好ましい。
【0051】
成分A−4の数平均分子量は、1,000〜100,000の範囲内であることが好ましい。1,000〜50,000であることがより好ましく、1,000〜20,000であることが更に好ましく、2,000〜20,000であることが特に好ましい。成分A−4の数平均分子量が上記範囲内であると、柔軟性に優れるレリーフ形成層及びレリーフ層が得られる。
【0052】
レーザー彫刻用樹脂組成物における成分A−4の含有量は、揮発性成分(溶剤)を除いた固形分に対して5〜90重量%であることが好ましく、15〜85重量%であることがより好ましく、30〜80重量%であることが更に好ましい。
【0053】
(成分A−5)分子末端に水酸基を有するポリウレタン樹脂
本発明において、成分Aとして(成分A−5)分子末端に水酸基を有するポリウレタン樹脂を使用することができる。なお、成分A−5は、主鎖末端に水酸基を有するポリウレタン樹脂であることが好ましい。
成分A−5は、ポリイソシアネートの少なくとも1種と、多価アルコール成分の少なくとも1種とを反応させることによって形成されることが好ましい。
【0054】
成分A−5は、式(4)で表される繰り返し単位からなるポリカーボネートジオールを含むことが好ましい。
【0055】
【化3】

【0056】
上記式(4)の繰り返し単位においては直鎖及び/又は分岐した分子鎖を含んでも構わない。上記ポリカーボネートジオールは、対応するジオールより、公知の方法(例えば、特公平5−29648号公報)により製造することが可能である。
【0057】
成分A−5は、分子内に更にウレタン結合を含有し、更に、エステル結合を有していることが好ましい。成分A−5が上記結合を有する場合、印刷で用いられるエステル系溶剤を含有するインキ洗浄剤や炭化水素系溶剤を含有するインキ洗浄剤に対する印刷版の耐性が向上する傾向にあるため好ましい。
成分A−5を製造する方法は特に限定されず、例えば、カーボネート結合、エステル結合を有し、かつ、水酸基、イソシアネート基等の反応性基を複数有する数千程度の分子量の化合物と、上記反応性基と結合し得る官能基を複数有する化合物(例えば、水酸基やアミノ基等を有するポリイソシアネート等)とを反応させ、分子量の調節及び分子末端の結合性基への変換等を行う方法等を用いることができる。
【0058】
成分A−5の製造に用いられるカーボネート結合を有するジオール化合物としては、例えば、4,6−ポリアルキレンカーボネートジオール、8,9−ポリアルキレンカーボネートジオール、5,6−ポリアルキレンカーボネートジオール等の脂肪族ポリカーボネートジオール等を挙げることができる。また、芳香族系分子構造を分子内に有する脂肪族ポリカーボネートジオールを用いてもよい。
また、成分A−5の合成において、多価アルコール成分として、上述したカーボネート結合を有するジオール化合物に限定されず、その他の多価アルコールを使用してもよい。その他の多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオール及び1,20−エイコサンジオール等の直鎖状の末端ジオール類、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール及びポリテトラメチレングリコールなどのエーテル基を有するジオール類、ビスヒドロキシエチルチオエーテルなどのチオエーテルジオール類、2−エチル−1,6−ヘキサンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール及び2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール等の分岐鎖を有するジオール類、1,3−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、4,4−ジシクロヘキシルジメチルメタンジオール、2,2’−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン、1,4−ジヒドロキシエチルシクロヘキサン、イソソルビド、2,5−ビス(ヒドロキシメチル)テトラヒドロフラン、4,4’−イソプロピリデンジシクロヘキサノールおよび4,4’−イソプロピリデンビス(2,2’−ヒドロキシエトキシシクロヘキサン)等の環状基が分子内にあるジオール類、ジエタノールアミンおよびN−メチルージエタノールアミン等の含窒素ジオール類並びにビス(ヒドロキシエチル)スルヒド等の含硫黄ジオール類等を挙げることができる。これらのジオールは単独で使用してもよく、また、複数組み合わせて用いてもよい。
これらの化合物の末端の水酸基に、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソフォロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、シクロヘキシレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、トリフェニルメタンジイソシアネート等のジイソシアネート化合物、トリフェニルメタントリイソシアネート、1−メチルベンゼン−2,4,6−トリイソシアネート、ナフタリン−1,3,7−トリイソシアネート、ビフェニル−2,4,4’−トリイソシアネート等のトリイソシアネート化合物を縮合反応させることにより、ウレタン結合を導入することができる。
【0059】
成分A−5は、数平均分子量が1,000以上50,000以下であることが好ましく、より好ましくは1,000以上45,000以下、更に好ましくは1,000以上40,000以下、特に好ましくは2,000以上40,000以下の樹脂である。印刷版の強度が向上し、繰り返しの使用にも耐え得る傾向にあるため、成分A−5の数平均分子量は1,000以上であることが好ましい。一方、樹脂組成物の成形加工時の粘度が過度に上昇することがないため印刷版をより容易に作製し得る傾向にあるため、成分A−5の数平均分子量は50,000以下であることが好ましい。
【0060】
レーザー彫刻用樹脂組成物における成分A−5の含有量は、揮発性成分(溶剤)を除いた固形分に対して5〜90重量%であることが好ましく、15〜85重量%であることがより好ましく、30〜80重量%であることが更に好ましい。
【0061】
本発明の樹脂組成物における成分Aは、1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
成分Aの樹脂組成物中の含有量は、全固形分に対して、5〜90重量%であることが好ましく、15〜85重量%であることがより好ましく、30〜80重量%であることが更に好ましい。成分Aの含有量が上記範囲内であると、彫刻カスのリンス性に優れ、柔軟なレリーフ層が得られるので好ましい。
【0062】
本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物は、成分A以外のバインダーポリマーを含有してもよい。成分A以外のバインダーポリマーとしては、特開2011−136455号公報に記載されている非エラストマーや、特開2010−208326号公報に記載されている不飽和基含有ポリマー等が例示される。
本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物は、成分Aをバインダーポリマー(樹脂成分)の主成分として含有することが好ましく、他のバインダーポリマーを含有する場合、成分Aのバインダーポリマー全体に対する含有量は、60重量%以上であることが好ましく、70重量%以上であることがより好ましく、80重量%以上であることが更に好ましく、95重量%以上であることが特に好ましい。なお、上限は特に限定されない。
【0063】
(成分B)架橋剤
本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物は、(成分B)架橋剤を含有する。
本発明において、架橋剤は、成分A同士を架橋するものでもよく、また、成分B同士が架橋するものでもよく、特に限定されない。
【0064】
成分Bは、低分子量化合物であることが好ましく、分子量が100〜5,000であることが好ましく、200〜4,000であることがより好ましく、300以上3,000未満であることが更に好ましく、300以上2,000未満であることが特に好ましい。分子量が上記範囲内であると、得られるレリーフ層が耐刷性に優れる。
レーザー彫刻用樹脂組成物の設計においては、分子量の比較的大きい化合物(成分A)と分子量の比較的小さい化合物(成分B)を組み合わせることは、硬化後に優れた機械的物性を示す組成物を製造するのに効果的である。低分子化合物のみで樹脂組成物を設計すると、硬化物の収縮が大きくなり、硬化に時間がかかるなどの問題が発生する。また、高分子化合物のみで樹脂組成物を設計すると、硬化が進まず、優れた物性を示す硬化物を得ることができない。従って、本発明においては、分子量の大きな成分Aと分子量の小さな成分Bとを組み合わせて用いることが好ましい。
【0065】
成分Bとしては、(成分B−1)(メタ)アクリレート化合物、(成分B−2)多官能イソシアネート化合物、(成分B−3)シランカップリング剤が例示される。
以下、それぞれについて説明する。
【0066】
(成分B−1)(メタ)アクリレート化合物
本発明において、成分Bとして(成分B−1)(メタ)アクリレート化合物を使用することができる。なお、(メタ)アクリレート化合物とは、アクリレート化合物又はメタクリレート化合物を意味する。
成分B−1は数平均分子量が1,000未満であることが好ましく、1分子に少なくとも1つの(メタ)アクリロイル基を有する有機化合物である。成分B−1と成分Aとの混合の容易さを考慮すると、成分B−1の数平均分子量は1,000未満であることが好ましい。
【0067】
成分B−1は、分子内に(メタ)アクリロイル基を1つ以上有する化合物であれば特に限定されないが、反応速度と硬化均一性の観点から分子内の(メタ)アクリロイル基は10以下であることが好ましい。分子中の(メタ)アクリロイル基は、1〜8であることが好ましく、1〜6であることがより好ましく、2〜4であることが更に好ましい。
【0068】
成分B−1の具体例としては例えば(メタ)アクリル酸及びその誘導体が挙げられる。
上記化合物の誘導体の例としては、シクロアルキル−、ビシクロアルキル−、シクロアルケン−、ビシクロアルケン−などの脂環式の骨格を有する化合物;ベンジル−、フェニル−、フェノキシ−、フルオレン−などの芳香族の骨格を有する化合物;アルキル−、ハロゲン化アルキル−、アルコキシアルキル−、ヒドロキシアルキル−、アミノアルキル−、テトラヒドロフルフリル−、アリル−、グリシジル−、アルキレングリコール−、ポリオキシアルキレングリコール−、(アルキル/アリルオキシ)ポリアルキレングリコール−やトリメチロールプロパン等の多価アルコールのエステルなどが挙げられる。また、窒素、硫黄等をヘテロ原子として含有した複素芳香族化合物であっても構わない。例えば、印刷インキの溶剤であるアルコールやエステル等の有機溶剤による膨潤を押さえるために、成分B−1が長鎖脂肪族、脂環式又は芳香族の骨格を有する化合物を含むことが好ましい。なお、上記長鎖脂肪族骨格や、脂環式骨格は、ヘテロ元素を含んでいてもよく、例えば酸素原子、硫黄原子、窒素原子が例示できる。
【0069】
更に印刷版の反撥弾性を高めるためには、印刷版用感光性樹脂に関する公知の技術知見(例えば、日本国特開平7−239548号に記載されているメタクリルモノマーなど)を利用して成分B−1を適宜選択することができる。
本発明の樹脂組成物における成分B−1は1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0070】
(成分B−2)多官能イソシアネート化合物
本発明において、成分Bとして(成分B−2)多官能イソシアネート化合物を用いることができる。
多官能イソシアネート化合物としては、イソシアナト基を2つ有するジイソシアネート化合物及びイソシアナト基平均数fnが2より大きい化合物が例示できる。
【0071】
ジイソシアネート化合物としては、下記式(5)で表される化合物が好ましい。
OCN−L1−NCO(5)
【0072】
上記式(5)中、L1は、置換基を有していてもよい2価の脂肪族又は芳香族炭化水素基を表す。必要に応じ、L1は、イソシアネート基と反応しない他の官能基、例えば、エステル、ウレタン、アミド、ウレイド基を有していてもよい。
【0073】
成分B−2としては、脂肪族ジイソシアネート化合物、脂環式ジイソシアネート化合物、芳香脂肪族ジイソシアネート化合物、芳香族ジイソシアネート化合物が例示できる。
脂肪族ジイソシアネート化合物としては、1,3−トリメチレンジイソシアネート、1,4−テトラメチレンジイソシアネ−ト、1,3−ペンタメチレンジイソシアネート、1,5−ペンタメチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネ−ト、1,2−プロピレンジイソシアネート、1,2−ブチレンジイソシアネート、2,3−ブチレンジイソシアネート、1,3−ブチレンジイソシアネート、2−メチル−1,5−ペンタメチレンジイソシアネート、3−メチル−1,5−ペンタメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチル−1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、2,6−ジイソシアネートメチルカプロエート、リジンジイソシアネ−ト等を挙げることができる。
【0074】
脂環式ジイソシアネート化合物としては、1,3−シクロペンタンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、1,3−シクロヘキサンジイソシアネート、3−イソシアネートメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、メチル−2,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2,6−シクロヘキサンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、イソホロンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート等を挙げることができる。
芳香脂肪族ジイソシアネート化合物としては、1,3−キシリレンジイソシアネ−ト、1,4−キシリレンジイソシアネ−ト、ω,ω’−ジイソシアネート−1,4−ジエチルベンゼン、1,3−ビス(1−イソシアネート−1−メチルエチル)ベンゼン、1,4−ビス(1−イソシアネート−1−メチルエチル)ベンゼン、1,3−ビス(α,α−ジメチルイソシアネートメチル)ベンゼン等を挙げることができる。
【0075】
芳香族ジイソシアネート化合物としては特に制限されないが、m−フェニレンジイソシアネ−ト、p−フェニレンジイソシアネ−ト、2,4−トリレンジイソシアネ−ト、2,6−トリレンジイソシアネ−ト、ナフチレン−1,4−ジイソシアネ−ト、1,5−ナフタレンジイソシアネ−ト、4,4’−ジフェニルジイソシアネ−ト、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネ−ト、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネ−ト、4,4’−ジフェニルエ−テルジイソシアネ−ト、2−ニトロジフェニル−4,4’−ジイソシアネ−ト、2,2’−ジフェニルプロパン−4,4’−ジイソシアネ−ト、3,3’−ジメチルジフェニルメタン−4,4’−ジイソシネ−ト、4,4’−ジフェニルプロパンジイソシアネ−ト、3,3’−ジメトキシジフェニル−4,4’−ジイソシアネ−トなどを挙げることができる。
【0076】
成分B−2としては、トリレンジイソシアネート(以下TDIと略す)、ジフェニルメタンジイソシアネート(以下MDIと略す)、ヘキサメチレンジイソシアネート(以下HDIと略す)、イソホロンジイソシアネート(以下IPDIと略す)、ジフェニルメタンジイソシアネートダイマー化合物を含有するジフェニルメタンジイソシアネート、カルボジイミド変性ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートのウレトジオン環及びイソシアヌレート環含有変性体が挙げられ、これらを単独、又は組み合わせて使用することができる。
【0077】
成分B−2として、イソシアナト基平均数fnが2より大きい化合物も例示できる。イソシアナト平均数は、2より大きければ特に制限されないが、好ましくは2より大きく4以下であり、より好ましくは2.2以上3.8以下、更に好ましくは2.4以上3.6以下である。平均イソシアナト基平均数fnが2より大きいと、高い架橋密度が得られるので好ましい。イソシアナト基平均数fnが上記範囲内であれば、単一のイソシアネート化合物であってもよく、また、イソシアネート化合物の製造時に副生する未反応のイソシアネート化合物などを含んでいてもよい。イソシアナト基平均数fnは以下の式により求められる。
【0078】
【数1】

【0079】
イソシアナト基平均数fnが2より大きい化合物は、イソシアヌレート、ウレトジオン、アロハネート、ビウレットからなる群より選択される少なくとも1種の化学構造を含むことが好ましい。
イソシアヌレート構造を有する化合物としては例えばイソシアヌレート3量体、イソシアヌレート5量体が挙げられ、また、イソシアヌレート7量体、9量体以上の多量体も存在する。
イソシアヌレート3量体とは、ジイソシアネートモノマー3分子からなる、イソシアヌレート基を有するポリイソシアネートであり、下記式(5)で示される。
【0080】
【化4】

【0081】
式(5)中、Rはジイソシアネートモノマー残基を表す。
【0082】
また、イソシアヌレート5量体とは、ジイソシアネートモノマー6分子からなる、イソシアヌレート構造を有するポリイソシアネートであり、下記式(6)で示される。
【0083】
【化5】

【0084】
式(6)中、Rはジイソシアネートモノマー残基を表す。
【0085】
アロファネート構造を有する化合物とはモノアルコールの水酸基とイソシアナト基から形成され、下記式(7)で示される。
【0086】
【化6】

【0087】
ウレトジオン構造を有する化合物としてはたとえばウレトジオン2量体があげられる。ウレトジオン2量体とは、ジイソシアネートモノマー2分子からなる、ウレトジオン基を有する化合物であり、下記式(8)で示される。
【0088】
【化7】

【0089】
式(8)中、Rはジイソシアネートモノマー残基を表す。
【0090】
ビウレット構造を有する化合物とはウレアとイソシアナト基から形成され、下記式(9)で示される。
【0091】
【化8】

【0092】
式(9)中、Rはジイソシアネートモノマー残基を表す。
【0093】
イソシアナト基平均数fnが2より大きい化合物として上市されている製品を採用することもでき、デュラネートTPA−100、デュラネートTKA−100、デュラネートTLA−100、デュラネートTSA−100、デュラネートTSE−100、デュラネートTSS−100、デュラネートTSR−100、デュラネート24A−100(以上、旭化成(株)製)、が例示できる。
本発明の樹脂組成物における成分B−2は1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0094】
(成分B−3)シランカップリング剤
本発明における成分Bとしては、(B−3)シランカップリング剤を用いることができる。
本発明においては、Si原子に、水酸基、アルコキシ基又はハロゲン基が少なくとも1つ直接結合した官能基をシランカップリング基と呼び、このシランカップリング基を分子中に1つ以上有している化合物をシランカップリング剤と称する。シランカップリング基は、Si原子に水酸基、アルコキシ基又はハロゲン原子(以下、シラノール基又は加水分解性シリル基ともいう。)が2つ以上直接結合したものが好ましく、3つ以上直接結合したものが特に好ましい。
本発明の樹脂組成物においては、成分B−3の有するシランカップリング基が、成分A中の反応性官能基、例えば、水酸基(−OH)であれば、この水酸基とアルコール交換反応を起こし、架橋構造を形成する。その結果、成分Aの分子同士がシランカップリング剤を介して3次元的に架橋される。また、成分B−3同士が架橋構造を形成してもよい。
成分B−3においては、Si原子に直接結合している官能基として、水酸基、アルコキシ基及びハロゲン原子の少なくとも1つ以上の官能基を有することが必須であり、化合物の取り扱いやすさの観点からは、アルコキシ基を有するものが好ましい。
ここで、アルコキシ基としては、リンス性と耐刷性の観点から炭素数1〜30のアルコキシ基が好ましい。より好ましくは炭素数1〜15のアルコキシ基、特に好ましくは炭素数1〜5のアルコキシ基である。
また、ハロゲン原子として、F原子、Cl原子、Br原子、I原子が挙げられ、合成のしやすさ及び安定性の観点で、好ましくはCl原子及びBr原子が挙げられ、より好ましくはCl原子である。
【0095】
本発明におけるシランカップリング剤は、膜の架橋度と柔軟性のバランスを良好に保つ観点で、上記シランカップリング基を分子内に2個以上有することが好ましく、2個以上10個以下含むことがより好ましく、更に好ましくは2個以上5個以下であり、特に好ましくは2個以上4個以下である。
なお、シランカップリング剤が、シランカップリング基を分子内に1個のみ有している場合には、シランカップリング剤は、シラノール基又は加水分解性シリル基を2つ以上有していることが特に好ましい。すなわち、該シランカップリング基は、Si原子に水酸基、アルコキシ基又はハロゲン原子が2つ以上直接結合したものが好ましい。
また、シランカップリング基が2つ以上ある場合には、シランカップリング基同士が連結基で連結されていることが好ましい。連結基としては、ヘテロ原子や炭化水素などの置換基を有してもよい2価以上の有機基が挙げられ、彫刻感度が高い点ではヘテロ原子(N、S、O)を含む態様が好ましく、特に好ましくはS原子を含む連結基である。
このような観点からは、本発明におけるシランカップリング剤として、アルコキシ基としてメトキシ基又はエトキシ基、中でも、メトキシ基がSi原子に結合したシランカップリング基を分子内に2個有し、かつ、これらシランカップリング基が、ヘテロ原子(特に好ましくはS原子)を含むアルキレン基を介して結合している化合物が好適である。より具体的には、スルフィド基を含む連結基を有するものが好ましい。
また、シランカップリング基同士を連結する連結基の他の好ましい態様として、オキシアルキレン基を有する連結基が挙げられる。連結基がオキシアルキレン基を含むことで、レーザー彫刻後の彫刻カスのリンス性が向上する。オキシアルキレン基としては、好ましくはオキシエチレン基であり、より好ましくは、オキシエチレン基が複数連結されたポリオキシエチレン鎖である。ポリオキシエチレン鎖におけるオキシエチレン基の総数としては、2〜50が好ましく、3〜30がより好ましく、4〜15が特に好ましい。
【0096】
本発明に適用しうるシランカップリング剤の具体例を以下に示す。本発明におけるシランカップリング剤としては、例えば、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、ビス(トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、1,4−ビス(トリエトキシシリル)ベンゼン、ビス(トリエトキシシリル)エタン、1,6−ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン、1,8−ビス(トリエトキシシリル)オクタン、1,2−ビス(トリメトキシシリル)デカン、ビス(トリエトキシシリルプロピル)アミン、ビス(トリメトキシシリルプロピル)ウレア、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン等を挙げることができる。そのほかにも、以下の一般式で示す化合物が好ましいものとして挙げられるが、本発明はこれらの化合物に制限されるものではない。
【0097】
【化9】

【0098】
【化10】

【0099】
【化11】

【0100】
【化12】

【0101】
【化13】

【0102】
上記各式中、Rは以下の構造から選択される部分構造を表す。分子内に複数のR及びR1が存在する場合、これらは互いに同じでも異なっていてもよく、合成適性上は、同一であることが好ましい。
【0103】
【化14】

【0104】
【化15】

【0105】
上記各式中、Rは以下に示す部分構造を表す。R1は上記したものと同義である。分子内に複数のR及びR1が存在する場合、これらは互いに同じでも異なっていてもよく、合成適性上は、同一であることが好ましい。
【0106】
【化16】

【0107】
成分B−3は、適宜合成して得ることも可能であるが、市販品を用いることがコストの面から好ましい。成分B−3としては、例えば、信越化学工業(株)、東レ・ダウコーニング(株)、モメンティブパフォーマンスマテリアルズ(株)、チッソ(株)等から市販されているシラン製品、シランカップリング剤などの市販品がこれに相当するため、本発明の組成物に、これら市販品を、目的に応じて適宜選択して使用してもよい。
【0108】
本発明における成分B−3として、上記化合物の他、1種のシランを用いて得られた部分加水分解縮合物、及び2種以上のシランを用いて得られた部分共加水分解縮合物を用いることができる。以下、これらの化合物を「部分(共)加水分解縮合物」と称することがある。
【0109】
このような部分(共)加水分解縮合物の具体例としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、メチルトリアセトキシシラン、メチルトリス(メトキシエトキシ)シラン、メチルトリス(メトキシプロポキシ)シラン、エチルトリメトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、へキシルトリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、トリルトリメトキシシラン、クロロメチルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、シアノエチルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、メチルエチルジメトキシシラン、メチルプロピルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン、γ−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン等のアルコキシシラン又はアセチルオキシシラン、エトキサリルオキシシラン等のアシロキシシランからなるシラン化合物から選択される1種以上を前駆体として用いて得られた部分(共)加水分解縮合物を挙げることができる。
【0110】
これらの部分(共)加水分解縮合物前駆体としてのシラン化合物の中でも、汎用性、コスト面、膜の相溶性の観点から、ケイ素上の置換基としてメチル基及びフェニル基から選択される置換基を有するシラン化合物であることが好ましく、具体的には、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシランが好ましい前駆体として例示される。
【0111】
この場合、部分(共)加水分解縮合物としては、上記したようなシラン化合物の2量体(シラン化合物2モルに水1モルを作用させてアルコール2モルを脱離させ、ジシロキサン単位としたもの)〜100量体、好ましくは2量体〜50量体、更に好ましくは2量体〜30量体としたものが好適に使用できるし、2種以上のシラン化合物を原料とする部分(共)加水分解縮合物を使用することも可能である。
【0112】
なお、このような部分(共)加水分解縮合物はシリコーンアルコキシオリゴマーとして市販されているものを使用してもよく(例えば、信越化学工業(株)などから市販されている。)、また、常法に基づき、加水分解性シラン化合物に対し当量未満の加水分解水を反応させた後に、アルコール、塩酸等の副生物を除去することによって製造したものを使用してもよい。製造に際しては、前駆体となる原料の加水分解性シラン化合物として、例えば、上記したようなアルコキシシラン類やアシロキシシラン類を使用する場合は、塩酸、硫酸等の酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物、トリエチルアミン等のアルカリ性有機物質等を反応触媒として部分加水分解縮合すればよく、クロロシラン類から直接製造する場合には、副生する塩酸を触媒として水及びアルコールを反応させればよい。
【0113】
また、その他のシランカップリング剤として、シランカップリング基を1つのみ有する化合物を使用してもよい。
シランカップリング基を1つのみ有する化合物として、具体的には、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、メルカプトメチルトリメトキシシラン、ジメトキシ−3−メルカプトプロピルメチルシラン、2−(2−アミノエチルチオエチル)ジエトキシメチルシラン、3−(2−アセトキシエチルチオプロピル)ジメトキシメチルシラン、2−(2−アミノエチルチオエチル)トリエトキシシラン、ジメトキシメチル−3−(3−フェノキシプロピルチオプロピル)シラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、ジフェニルシランジオール、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン等が例示できる。
【0114】
本発明の樹脂組成物における成分B−3は1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0115】
本発明において、成分Bは1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
成分Bの樹脂組成物中の含有量は、全固形分に対し、0.1〜80重量%であることが好ましく、1〜60重量%であることがより好ましく、5〜40重量%であることが更に好ましい。成分Bの含有量が上記範囲内であると、彫刻カスのリンス性と耐刷性に優れたレリーフ形成層が得られる。
【0116】
本発明において、成分Aと成分Bとの好ましい組み合わせとしては、以下の(成分A、成分B)の組み合わせが例示できる。
1.(ポリカーボネートポリオール、(メタ)アクリレート化合物)
2.(ポリシロキサンポリオール、(メタ)アクリレート化合物)
3.(アクリル樹脂、(メタ)アクリレート化合物)
4.(分子末端に水酸基を有するポリエステル樹脂、(メタ)アクリレート化合物)
5.(分子末端に水酸基を有するポリウレタン樹脂、(メタ)アクリレート化合物)
6.(アクリル樹脂、多官能イソシアネート化合物)
7.(分子末端に水酸基を有するポリエステル樹脂、多官能イソシアネート化合物)
8.(分子末端に水酸基を有するポリウレタン樹脂、多官能イソシアネート化合物)
9.(ポリシロキサンポリオール、シランカップリング剤)
10.(アクリル樹脂、シランカップリング剤)
11.(分子末端に水酸基を有するポリエステル樹脂、シランカップリング剤)
12.(分子末端に水酸基を有するポリウレタン樹脂、シランカップリング剤)
【0117】
本発明において、上記の成分Aと成分Bとの組み合わせの中で、架橋剤がシランカップリング剤である上記9.〜12.の組み合わせが特に好ましい。架橋剤としてシランカップリング剤を使用することにより、架橋性に優れた樹脂組成物が得られる。
【0118】
(メタ)アクリレート化合物及びシランカップリング剤は、架橋剤同士による架橋反応により、レリーフ形成層を硬化させることができる。従って、成分Bが(メタ)アクリレート化合物又はシランカップリング剤である場合には、成分Aと成分Bとの反応性は必ずしも必要ではない。一方、成分Bが多官能イソシアネート化合物である場合、成分Aにイソシアナト基との反応性基が必要となる。上記の7.及び8.の態様では、成分Aの水酸基がイソシアナト基と反応して架橋構造を形成する。また、上記6.の態様では、アクリル樹脂が活性水素基を有していることが好ましく、アクリル樹脂が一分子中に2以上の活性水素基を有していることが更に好ましい。
【0119】
成分Aと成分Bの樹脂組成物における添加量の比は、成分A:成分B(重量比)が90:10〜10:90であることが好ましく、80:20〜20:80であることがより好ましく、60:40〜40:80であることが更に好ましい。
以下、成分A及び成分B以外に、本発明の樹脂組成物が含有しうる各種成分について説明する。
【0120】
(成分C)アルコール交換反応触媒
本発明の樹脂組成物には、成分Aと成分Bとの架橋構造形成を促進するため、(成分C)アルコール交換反応触媒を含有することが好ましい。特に、成分Bとして(成分B−2)多官能イソシアネート化合物、及び/又は、(成分B−3)シランカップリング剤を含有する場合には、(成分C)アルコール交換反応触媒を含有することが好ましく、架橋剤として(成分B−3)シランカップリング剤を含有する場合には、成分Cを含有することが特に好ましい。
(成分C)アルコール交換反応触媒は、シランカップリング反応において一般に用いられる反応触媒であれば、限定なく適用できる。
以下、代表的なアルコール交換反応触媒である(成分C−1)酸あるいは塩基性触媒、及び、(成分C−2)金属錯体触媒について順次説明する。
【0121】
(成分C−1)酸あるいは塩基性触媒
触媒としては、酸、あるいは塩基性化合物をそのまま用いるか、あるいは水又は有機溶剤などの溶媒に溶解させた状態のもの(以下、それぞれ酸性触媒、塩基性触媒と称する)を用いる。溶媒に溶解させる際の濃度については特に限定はなく、用いる酸、あるいは塩基性化合物の特性、触媒の所望の含有量などに応じて適宜選択すればよい。
酸性触媒あるいは塩基性触媒の種類は特に限定されないが、具体的には、酸性触媒としては、塩酸などのハロゲン化水素、硝酸、硫酸、亜硫酸、硫化水素、過塩素酸、過酸化水素、炭酸、蟻酸や酢酸などのカルボン酸、そのRCOOHで表される構造式のRを他元素又は置換基によって置換した置換カルボン酸、ベンゼンスルホン酸などのスルホン酸、リン酸、ヘテロポリ酸、無機固体酸などが挙げられ、塩基性触媒としては、アンモニア水などのアンモニア性塩基、エチルアミンやアニリンなどのアミン類、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属アルコキシド、アルカリ土類酸化物、四級アンモニウム塩化合物、四級ホスホニウム塩化合物などが挙げられる。
【0122】
上記本発明に用いうる塩基性触媒としてのアミン類の例を以下に示す。
アミン類としては、以下に示す(a)〜(e)の化合物が挙げられる。
(a)ヒドラジン等の水素化窒素化合物;
(b)脂肪族、芳香族又は脂環式の第1級、第2級又は第3級のモノアミン又はジアミン、トリアミン等のポリアミン;
(c)縮合環を含む環状アミンであり少なくとも1つの窒素原子が環骨格に含まれるモノアミン又はポリアミン;
(d)アミノ酸類、アミド類、アルコールアミン類、エーテルアミン類、イミド類又はラクタム類等の含酸素アミン;
(e)O、S、Se等のヘテロ原子を有する含ヘテロ元素アミン;
【0123】
ここで、第2級又は第3級アミンの場合には、窒素原子(N)に対する各々の置換基は、互いに同一であっても、各々異なってもよく、また、これらの置換基のうち、1以上が異なり、その他が同一であってもよい。
アミン類としては、具体的には、ヒドラジン、
第1級アミンとしては;モノメチルアミン、モノエチルアミン、モノプロピルアミン類、モノブチルアミン類、モノペンチルアミン類、モノヘキシルアミン類、モノヘプチルアミン類、ビニルアミン、アリルアミン、ブテニルアミン類、ペンテニルアミン類、ヘキセニルアミン類、ペンタジエニルアミン類、ヘキサジエニルアミン類、シクロペンチルアミン、シクロヘキシルアミン、シクロオクチルアミン、p−メンチルアミン、シクロペンテニルアミン類、シクロヘキセニルアミン類、シクロヘキサジエニルアミン類、アニリン、ベンジルアミン、ナフチルアミン、ナフチルメチルアミン、トルイジン、トリレンジアミン類、アニゾール、エチレンジアミン、エチレントリアミン、モノエタノールアミン、アミノチオフェン、グリシン、アラニン、フェニルアラニン、アミノアセトンなどが挙げられる。
【0124】
また、第2級アミンとしては;ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン類、ジブチルアミン類、ジペンチルアミン類、ジヘキシルアミン類、メチルエチルアミン、メチルプロピルアミン類、メチルブチルアミン類、メチルペンチルアミン類、メチルヘキシルアミン類、エチルプロピルアミン類、エチルブチルアミン類、エチルペンチルアミン類、プロピルブチルアミン類、プロピルペンチルアミン類、プロピルヘキシルアミン類、ブチルペンチルアミン類、ペンチルヘキシルアミン類、ジビニルアミン、ジアリルアミン、ジブテニルアミン類、ジペンテニルアミン類、ジヘキセニルアミン類、メチルビニルアミン、メチルアリルアミン、メチルブテニルアミン類、メチルペンテニルアミン類、メチルヘキセニルアミン類、エチルビニルアミン、エチルアリルアミン、エチルブテニルアミン、エチルペンテニルアミン類、エチルヘキセニルアミン類、プロピルビニルアミン類、プロピルアリルアミン類、プロピルブテニルアミン類、プロピルペンテニルアミン類、プロピルヘキセニルアミン類、ブチルビニルアミン類、ブチルアリルアミン類、ブチルブテニルアミン類、ブチルペンテニルアミン類、ブチルヘキセニルアミン類、ビニルアリルアミン、ビニルブテニルアミン類、ビニルペンテニルアミン類、ビニルヘキセニルアミン類、アリルブテニルアミン類、アリルペンテニルアミン類、アリルヘキセニルアミン類、ブテニルペンテニルアミン類、ブテニルヘキセニルアミン類、ジシクロペンチルアミン、ジシクロヘキシル、メチルシクロペンチルアミン、メチルシクロヘキシルアミン、メチルシクロオクチルアミン、エチルシクロペンチルアミン、エチルシクロヘキシルアミン、エチルシクロオクチルアミン、プロピルシクロペンチルアミン類、プロピルシクロヘキシルアミン類、ブチルシクロペンチルアミン類、ブチルシクロヘキシルアミン類、ヘキシルシクロペンチルアミン類、ヘキシルシクロヘキシルアミン類、ヘキシルシクロオクチルアミン類、ビニルシクロペンチルアミン、ビニルシクロヘキシルアミン、ビニルシクロオクチルアミン、アリルシクロペンチルアミン、アリルシクロヘキシルアミン、アリルシクロオクチルアミン、ブテニルシクロペンチルアミン類、ブテニルシクロヘキシルアミン類、ブテニルシクロオクチルアミン類、ジシクロペンテニルアミン類、ジシクロヘキセニルアミン類、ジシクロオクテニルアミン類、メチルシクロペンテニルアミン類、メチルシクロヘキセニルアミン類、メチルシクロオクテニルアミン類、エチルシクロペンテニルアミン類、
【0125】
エチルシクロヘキセニルアミン類、エチルシクロオクテニルアミン類、プロピルシクロペンテニルアミン類、プロピルシクロヘキセニルアミン類、ブチルシクロペンテニルアミン類、ブチルシクロヘキセニルアミン類、ビニルシクロペンテニルアミン類、ビニルシクロヘキセニルアミン類、ビニルシクロオクテニルアミン類、アリルシクロペンテニルアミン類、アリルシクロヘキセニルアミン類、ブテニルシクロペンテニルアミン類、ブテニルシクロヘキセニルアミン類、ジシクロペンタジエニルアミン、ジシクロヘキサジエニルアミン類、ジシクロオクタジエニルアミン類、メチルシクロペンタジエニルアミン、メチルシクロヘキサジエニルアミン類、エチルシクロペンタジエニルアミン、エチルシクロヘキサジエニルアミン類、プロピルシクロペンタジエニルアミン類、プロピルシクロヘキサジエニルアミン類、ジシクロオクタトリエニルアミン類、メチルシクロオクタトリエニルアミン類、エチルシクロオクタトリエニルアミン類、ビニルシクロペンタジエニルアミン、ビニルシクロヘキサジエニルアミン類、アリルシクロペンタジエニルアミン、アリルシクロヘキサジエニルアミン類、ジフェニルアミン、ジトリルアミン類、ジベンジルアミン、ジナフチルアミン類、N−メチルアニリン、N−エチルアニリン、N−プロピルアニリン類、N−ブチルアニリン類、N−メチルトルイジン、N−エチルトルイジン、N−プロピルトルイジン類、N−ブチルトルイジン類、N−メチルベンジルアミン、N−エチルベンジルアミン類、N−プロピルベンジルアミン類、N−ブチルベンジルアミン類、N−メチルナフチルアミン類、N−エチルナフチルアミン類、N−プロピルナフチルアミン類、N−ビニルアニリン、N−アリルアニリン、N−ビニルベンジルアミン、N−アリルベンジルアミン、N−ビニルトルイジン、N−アリルトルイジン、フェニルシクロペンチルアミン、フェニルシクロヘキシルアミン、フェニルシクロオクチルアミン、フェニルシクロペンテニルアミン、フェニルシクロヘキセニルアミン、フェニルシクロペンタジエニルアミン、N−メチルアニゾール、N−エチルアニソール、N−ビニルアニソール、N−アリルアニソール、N−メチルエチレンジアミン、N,N’−ジメチルエチレンジアミン、N−エチルエチレンジアミン、N,N’−ジエチルエチレンジアミン、N,N’−ジメチルトリレンジアミン類、N,N’−ジエチルトリレンジアミン類、N−メチルエチレントリアミン、N,N’−ジメチルエチレントリアミン、ピロール、ピロリジン、イミダゾール、ピペリジン、ピペラジン、メチルピロール類、メチルピロリジン類、メチルイミダゾール類、メチルピペリジン類、メチルピペラジン類、エチルピロール類、エチルピロリジン類、エチルイミダゾール類、エチルピペリジン類、エチルピペラジン類、フタルイミド、マレインイミド、カプロラクタム、ピロリドン、モルホリン、N−メチルグリシン、N−エチルグリシン、N−メチルアラニン、N−エチルアラニン、N−メチル−アミノチオフェン、N−エチルアミノチオフェン、2,5−ピペラジンジオン、N−メチルエタノールアミン、N−エチルエタノールアミン、プリンなどが挙げられる。
【0126】
また、第3級アミンとしては;トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン類、トリブチルアミン類、トリペンチルアミン類、トリヘキシルアミン類、ジメチルエチルアミン、ジメチルプロピルアミン類、ジメチルブチルアミン類、ジメチルペンチルアミン類、ジメチルヘキシルアミン類、ジエチルプロピルアミン類、ジエチルブチルアミン類、ジエチルペンチルアミン類、ジエチルヘキシルアミン類、ジプロピルブチルアミン類、ジプロピルペンチルアミン類、ジプロピルヘキシルアミン類、ジブチルペンチルアミン類、ジブチルヘキシルアミン類、ジペンチルヘキシルアミン類、メチルジエチルアミン、メチルジプロピルアミン類、メチルジブチルアミン類、メチルジペンチルアミン類、メチルジヘキシルアミン類、エチルジプロピルアミン類、エチルジブチルアミン類、エチルジペンチルアミン類、エチルジヘキシルアミン類、プロピルジブチルアミン類、プロピルジペンチルアミン類、プロピルジヘキシルアミン類、ブチルジペンチルアミン類、ブチルジヘキシルアミン類、ペンチルジヘキシルアミン類、メチルエチルプロピルアミン類、メチルエチルブチルアミン類、メチルエチルヘキシルアミン類、メチルプロピルブチルアミン類、メチルプロピルヘキシルアミン類、エチルプロピルブチルアミン、エチルブチルペンチルアミン類、エチルブチルヘキシルアミン類、プロピルブチルペンチルアミン類、プロピルブチルヘキシルアミン類、ブチルペンチルヘキシルアミン類、トリビニルアミン、トリアリルアミン、トリブテニルアミン類、トリペンテニルアミン類、トリヘキセニルアミン類、ジメチルビニルアミン、ジメチルアリルアミン、ジメチルブテニルアミン類、ジメチルペンテニルアミン類、ジエチルビニルアミン、ジエチルアリルアミン、ジエチルブテニルアミン類、ジエチルペンテニルアミン類、ジエチルヘキセニルアミン類、ジプロピルビニルアミン類、ジプロピルアリルアミン類、ジプロピルブテニルアミン類、メチルジビニルアミン、メチルジアリルアミン、メチルジブテニルアミン類、エチルジビニルアミン、エチルジアリルアミン、トリシクロペンチルアミン、トリシクロヘキシルアミン、トリシクロオクチルアミン、トリシクロペンテニルアミン、トリシクロヘキセニルアミン、トリシクロペンタジエニルアミン、トリシクロヘキサジエニルアミン類、ジメチルシクロペンチルアミン、ジエチルシクロペンチルアミン、ジプロピルシクロペンチルアミン類、
【0127】
ジブチルシクロペンチルアミン類、ジメチルシクロヘキシルアミン、ジエチルシクロヘキシルアミン、ジプロピルシクロヘキシルアミン類、ジメチルシクロペンテニルアミン類、ジエチルシクロペンテニルアミン類、ジプロピルシクロペンテニルアミン類、ジメチルシクロヘキセニルアミン類、ジエチルシクロヘキセニルアミン類、ジプロピルシクロヘキセニルアミン類、メチルジシクロペンチルアミン、エチルジシクロペンチルアミン、プロピルシクロペンチルアミン類、メチルジシクロヘキシルアミン、エチルジシクロヘキシルアミン、プロピルシクロヘキシルアミン類、メチルジシクロペンテニルアミン類、エチルジシクロペンテニルアミン類、プロピルジシクロペンテニルアミン類、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジメチルベンジルアミン、N,N−ジメチルトルイジン類、N,N−ジメチルナフチルアミン類、N,N−ジエチルアニリン、N,N−ジエチルベンジルアミン、N,N−ジエチルトルイジン類、N,N−ジエチルナフチルアミン類、N,N−ジプロピルアニリン類、N,N−ジプロピルベンジルアミン類、N,N−ジプロピルトルイジン類、N,N−ジプロピルナフチルアミン類、N,N−ジビニルアニリン、N,N−ジアリルアニリン、N,N−ジビニルトルイジン類、N,N−ジアリルアニリン、ジフェニルメチルアミン、ジフェニルエチルアミン、ジフェニルプロピルアミン類、ジベンジルメチルアミン、ジベンジルエチルアミン、ジベンジルシクロヘキシルアミン、ジベンジルビニルアミン、ジベンジルアリルアミン、ジトリルメチルアミン類、ジトリルエチルアミン類、ジトリルシクロヘキシルアミン類、ジトリルビニルアミン類、トリフェニルアミン、トリベンジルアミン、トリ(トリル)アミン類、トリナフチルアミン類、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラエチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルトリレンジアミン類、N,N,N’,N’−テトラエチルトリレンジアミン類、N−メチルピロール、N−メチルピロリジン、N−メチルイミダゾール、N,N′−ジメチルピペラジン、N−メチルピペリジン、N−エチルピロール、N−メチルピロリジン、N−エチルイミダゾール、N,N′−ジエチルピペラジン、N−エチルピペリジン、ピリジン、ピリダジン、ピラジン、キノリン、キナゾリン、キヌクリジン、N−メチルピロリドン、N−メチルモルホリン、N−エチルピロリドン、N−エチルモルホリン、N,N−ジメチルアニソール、N,N−ジエチルアニソール、N,N−ジメチルグリシン、N,N−ジエチルグリシン、N,N−ジメチルアラニン、N,N−ジエチルアラニン、N,N−ジメチルエタノールアミン、N,N−ジメチルアミノチオフェン、1,1,3,3−テトラメチルグアニジン、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデカ−7−エン、1,5−ジアザビシクロ[4,3,0]ノナ−5−エン、1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン、ヘキサメチレンテトラミンなどが挙げられる。
従って、上記塩基性触媒として用いうるアミン類とは、脂肪族又は脂環式、飽和又は不飽和の炭化水素基;芳香族炭化水素基;含酸素及び/又は含イオウ及び/又は含セレン炭化水素基等が1以上の窒素原子と結合した化合物である。熱架橋後の膜強度の観点から、アミンとして好ましいpKaH(共役酸の酸解離定数)の範囲としては7以上が好ましく、より好ましくは10以上である。
【0128】
上記酸あるいは塩基性触媒の中でも、膜中でのアルコール交換反応を速やかに進行させる観点で、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ピリジニウム p−トルエンスルホネート、ドデシルベンゼンスルホン酸、リン酸、ホスホン酸、酢酸、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデカ−7−エン、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ−5−エン、1,1,3,3−テトラメチルグアニジンが好ましく、特に好ましくは、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、リン酸、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデカ−7−エン、1,5−ジアザビシクロ[4,3,0]ノナ−5−エンである。
【0129】
(成分C−2)金属錯体触媒
本発明においてアルコール交換反応触媒として用いられる(成分C−2)金属錯体触媒は、好ましくは、周期律表の2A、3B、4A及び5A族から選ばれる金属元素とβ−ジケトン、ケトエステル、ヒドロキシカルボン酸又はそのエステル、アミノアルコール、エノール性活性水素化合物の中から選ばれるオキソ又はヒドロキシ酸素化合物から構成されるものである。
更に、構成金属元素の中では、Mg、Ca、Sr、Baなどの2A族元素、Al、Gaなどの3B族元素、Ti、Zrなどの4A族元素及びV、Nb及びTaなどの5A族元素が好ましく、それぞれ触媒効果の優れた錯体を形成する。その中でもZr、Al及びTiから得られる錯体が優れており、好ましい(オルトチタン酸エチルなど)。
上記金属錯体の配位子を構成するオキソ又はヒドロキシ酸素含有化合物としては、アセチルアセトン、アセチルアセトン(2,4−ペンタンジオン)、2,4−ヘプタンジオンなどのβジケトン、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸ブチルなどのケトエステル類、乳酸、乳酸メチル、サリチル酸、サリチル酸エチル、サリチル酸フェニル、リンゴ酸、酒石酸、酒石酸メチルなどのヒドロキシカルボン酸及びそのエステル、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン、4−ヒドロキシ−2−ペンタノン、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン、4−ヒドロキシ−2−ヘプタノンなどのケトアルコール類、モノエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、N−メチル−モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどのアミノアルコール類、メチロールメラミン、メチロール尿素、メチロールアクリルアミド、マロン酸ジエチルエステルなどのエノール性活性化合物、アセチルアセトン(2,4−ペンタンジオン)のメチル基、メチレン基又はカルボニル炭素に置換基を有する化合物が挙げられる。
【0130】
好ましい配位子はアセチルアセトン誘導体であり、本発明においてアセチルアセトン誘導体とは、アセチルアセトンのメチル基、メチレン基又はカルボニル炭素に置換基を有する化合物を指す。アセチルアセトンのメチル基に置換する置換基としては、いずれも炭素数が1〜3の直鎖又は分岐のアルキル基、アシル基、ヒドロキシアルキル基、カルボキシアルキル基、アルコキシ基、アルコキシアルキル基であり、アセチルアセトンのメチレン基に置換する置換基としてはカルボキシル基、いずれも炭素数が1〜3の直鎖又は分岐のカルボキシアルキル基及びヒドロキシアルキル基であり、アセチルアセトンのカルボニル炭素に置換する置換基としては炭素数が1〜3のアルキル基であってこの場合はカルボニル酸素には水素原子が付加して水酸基となる。
【0131】
好ましいアセチルアセトン誘導体の具体例としては、アセチルアセトン、エチルカルボニルアセトン、n−プロピルカルボニルアセトン、i−プロピルカルボニルアセトン、ジアセチルアセトン、1−アセチル−1−プロピオニル−アセチルアセトン、ヒドロキシエチルカルボニルアセトン、ヒドロキシプロピルカルボニルアセトン、アセト酢酸、アセトプロピオン酸、ジアセト酢酸、3,3−ジアセトプロピオン酸、4,4−ジアセト酪酸、カルボキシエチルカルボニルアセトン、カルボキシプロピルカルボニルアセトン、ジアセトンアルコールが挙げられる。中でも、アセチルアセトン及びジアセチルアセトンが特に好ましい。上記のアセチルアセトン誘導体と上記金属元素の錯体は、金属元素1個当たりにアセチルアセトン誘導体が1〜4分子配位する単核錯体であり、金属元素の配位可能の手がアセチルアセトン誘導体の配位可能結合手の数の総和よりも多い場合には、水分子、ハロゲンイオン、ニトロ基、アンモニオ基など通常の錯体に汎用される配位子が配位してもよい。
【0132】
好ましい金属錯体の例としては、トリス(アセチルアセトナト)アルミニウム錯塩、ジ(アセチルアセトナト)アルミニウム・アコ錯塩、モノ(アセチルアセトナト)アルミニウム・クロロ錯塩、ジ(ジアセチルアセトナト)アルミニウム錯塩、エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、環状アルミニウムオキサイドイソプロピレート、トリス(アセチルアセトナト)バリウム錯塩、ジ(アセチルアセトナト)チタニウム錯塩、トリス(アセチルアセトナト)チタニウム錯塩、ジ−i−プロポキシ・ビス(アセチルアセトナト)チタニウム錯塩、ジルコニウムトリス(エチルアセトアセテート)、ジルコニウムトリス(安息香酸)錯塩、等が挙げられる。これらは水系塗布液での安定性及び、加熱乾燥時のゾルゲル反応でのゲル化促進効果に優れているが、中でも、特にエチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、ジ(アセチルアセトナト)チタニウム錯塩、ジルコニウムトリス(エチルアセトアセテート)が好ましい。
【0133】
本発明の樹脂組成物には、(成分C)アルコール交換反応触媒を1種のみ用いてもよく、2種以上併用してもよい。
樹脂組成物における(成分C)アルコール交換反応触媒の含有量は、成分Aに対して、0.01〜20重量%であることが好ましく、0.1〜10重量%であることがより好ましい。
【0134】
(成分D)ラジカル重合開始剤
本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物は、(成分D)ラジカル重合開始剤を含有することが好ましい。特に、成分Bとして(成分B−1)(メタ)アクリレート化合物を含有する場合には、(成分D)ラジカル重合開始剤を含有することが好ましい。
重合開始剤は、当業者の間で公知のものを制限なく使用することができる。以下、好ましい重合開始剤であるラジカル重合開始剤について詳述するが、本発明はこれらの記述により制限を受けるものではない。
また、ラジカル重合開始剤としては、光ラジカル重合開始剤であっても、熱ラジカル重合開始剤であってもよいが、熱ラジカル重合開始剤であることが好ましい。
【0135】
本発明において、好ましいラジカル重合開始剤としては、(a)芳香族ケトン類、(b)オニウム塩化合物、(c)有機過酸化物、(d)チオ化合物、(e)ヘキサアリールビイミダゾール化合物、(f)ケトオキシムエステル化合物、(g)ボレート化合物、(h)アジニウム化合物、(i)メタロセン化合物、(j)活性エステル化合物、(k)炭素ハロゲン結合を有する化合物、(l)アゾ系化合物等が挙げられる。以下に、上記(a)〜(l)の具体例を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0136】
本発明においては、彫刻感度と、レリーフ印刷版原版のレリーフ形成層に適用した際にはレリーフエッジ形状を良好とするといった観点から、(c)有機過酸化物及び(l)アゾ系化合物がより好ましく、(c)有機過酸化物が特に好ましい。
【0137】
上記(a)芳香族ケトン類、(b)オニウム塩化合物、(d)チオ化合物、(e)ヘキサアリールビイミダゾール化合物、(f)ケトオキシムエステル化合物、(g)ボレート化合物、(h)アジニウム化合物、(i)メタロセン化合物、(j)活性エステル化合物、及び(k)炭素ハロゲン結合を有する化合物としては、特開2008−63554号公報の段落0074〜0118に挙げられている化合物を好ましく用いることができる。
また、(c)有機過酸化物及び(l)アゾ系化合物としては、以下に示す化合物が好ましい。
【0138】
(c)有機過酸化物
本発明に用いることができるラジカル重合開始剤として好ましい(c)有機過酸化物としては、3,3’,4,4’−テトラ(ターシャリーブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラ(ターシャリーアミルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラ(ターシャリーヘキシルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラ(ターシャリーオクチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラ(クミルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラ(p−イソプロピルクミルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、ジ−ターシャリーブチルジパーオキシイソフタレート、ジ−ターシャリーブチルパーオキシベンゾエートなどの過酸化エステル系が好ましい。
【0139】
(l)アゾ系化合物
本発明に用いることができるラジカル重合開始剤として好ましい(l)アゾ系化合物としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビスプロピオニトリル、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)、2,2’−アゾビスイソ酪酸ジメチル、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミドオキシム)、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2’−アゾビス(N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2’−アゾビス(N−シクロヘキシル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2’−アゾビス[N−(2−プロペニル)−2−メチルプロピオンアミド]、2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデカ−7−エン等を挙げることができる。
【0140】
なお、本発明においては、上記(c)有機過酸化物が本発明における重合開始剤として、膜(レリーフ形成層)の架橋性及び彫刻感度向上の観点で特に好ましい。
【0141】
彫刻感度の観点からは、この(c)有機過酸化物と、成分A及び成分B−1とを組み合わせた態様が特に好ましい。
これは、有機過酸化物を用いてレリーフ形成層を熱架橋により硬化させる際、ラジカル発生に関与しない未反応の有機過酸化物が残存するが、残存した有機過酸化物は、自己反応性の添加剤として働き、レーザー彫刻時に発熱的に分解する。その結果、照射されたレーザーエネルギーに発熱分が加算されるので彫刻感度が高くなったと推定される。
なお、光熱変換剤の説明において詳述するが、この効果は、光熱変換剤としてカーボンブラックを用いる場合に著しい。これは、カーボンブラックから発生した熱が(c)有機過酸化物にも伝達される結果、カーボンブラックだけでなく有機過酸化物からも発熱するため、成分A等の分解に使用されるべき熱エネルギーの発生が相乗的に生じるためと考えている。
【0142】
本発明の樹脂組成物における成分Dは、1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明の樹脂組成物中に含まれる成分Dの含有量は、全固形分量に対して、0.1〜5重量%が好ましく、0.3〜3重量%がより好ましく、0.5〜1.5重量%が特に好ましい。
【0143】
(成分E)分子中にシロキサン結合を含まず、活性水素を2つ以上有する化合物
本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物は、成分Bとして(成分B−2)多官能イソシアネート化合物を含有する場合、(成分E)分子中にシロキサン結合を含まず、活性水素を2つ以上有する化合物を含有してもよい。また、成分Bとして(成分B−2)多官能イソシアネート化合物を含有し、成分Aとして(成分A−3)アクリル樹脂を使用し、該アクリル樹脂が活性水素を有しない場合に、成分Eを含有することが特に好ましい。この場合、(成分A−3)アクリル樹脂と(成分B−2)多官能イソシアネート化合物が架橋を形成しなくても、成分B−2と成分Eとで架橋構造を構成することが可能となる。
また、樹脂組成物に成分Eを添加する場合には、(成分C)アルコール交換反応触媒を含有することが、(成分B−2)多官能イソシアネートと成分Eとの架橋反応を十分に進行させる観点で好ましい。
【0144】
成分Eは、反応の進行が速く、高強度な膜が得られる点から、第一級アミノ基及び酸無水物基よりなる群から選ばれた官能基を1つ以上有する化合物、又は、第二級アミノ基、メルカプト基、カルボキシル基、フェノール性ヒドロキシル基及びヒドロキシル基よりなる群から選ばれた官能基を2つ以上有する化合物であることが好ましく、第一級アミノ基及び酸無水物基よりなる群から選ばれた官能基を1つ以上有する化合物、又は、第二級アミノ基及びメルカプト基よりなる群から選ばれた官能基を2つ以上有する化合物であることがより好ましく、第一級アミノ基及び酸無水物基よりなる群から選ばれた官能基を1つ以上有する化合物であることが更に好ましい。
【0145】
第一級アミノ基を少なくとも1つ有する化合物としては、特に限定されるものではなく、種々のものを用いることができる。
例えば、ブチルアミン、オクチルアミン、オレイルアミン、2−エチルヘキシルアミン等の第一級アルキルアミン類、アニリン、4−アミノアセトフェノン、p−アニシジン、2−アミノアントラセン、1−ナフチルアミン等の第一級アニリン類、モノエタノールアミン、2−エトキシエタノールアミン、2−ヒドロキシプロパノールアミン等の第一級アルカノールアミン類、ヘキサンジアミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、m−キシレンジアミン、p−キシレンジアミンなどの脂肪族ポリアミン類、1,3−ジアミノシクロヘキサン、イソホロンジアミン等の脂環式ポリアミン類、1,4−フェニレンジアミン、2,3−ジアミノナフタレン、2,6−ジアミノアントラキノン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン等のポリアニリン類、ポリアミン類とアルデヒド化合物と一価又は多価フェノール類との重縮合物からなるマンニッヒ塩基、ポリアミン類とポリカルボン酸やダイマー酸との反応により得られるポリアミドポリアミン類が挙げられる。
これらの中でも、高度な三次元架橋を形勢するのに適していることから、脂肪族ポリアミン類、脂環式ポリアミン類、ポリアニリン類が好ましく、特にヘキサンジアミン、トリエチレンテトラミン、m−キシレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタンがより好ましい。
【0146】
第二級アミノ基を少なくとも2つ有する化合物としては、特に限定されるものではなく、種々のものを用いることができる。
例えば、N,N’−ジメチルエチレンジアミン、N,N’−ジエチルエチレンジアミン、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン、N,N’−ジイソプロピルエチレンジアミン、2,5−ジメチルピペラジン、N,N’−ジメチルシクロヘキサン−1,2−ジアミン、ピペラジン、ホモピペラジン、2−メチルピペラジン等が挙げられる。
【0147】
酸無水物基を少なくとも1つ有する化合物としては、特に限定されるものではなく、種々のものを用いることができる。
例えば、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水メチルヘキサヒドロフタル酸、無水ナジック酸、水素化無水ナジック酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸などの酸無水物化合物を使用することができる。これらの中でも、特に好ましくは無水メチルヘキサヒドロフタル酸を用いることで、硬化収縮が少なく、透明性を有し、高強度な硬化膜が得られる。
【0148】
メルカプト基を少なくとも2つ有する化合物としては、特に限定されるものではなく、種々のものを用いることができる。
例えば、1,2−エタンジチオール、1,3−プロパンジチオール、1,4−ブタンジチオール、1,5−ペンタンジチオール、1,6−ヘキサンジチオール、1,7−ヘプタンジチオール、1,8−オクタンジチオール、1,9−ノナンジチオール、1,10−デカンジチオール、1,12−ドデカンジチオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジチオール、3−メチル−1,5−ペンタンジチオール、2−メチル−1,8−オクタンジチオール等のアルカンジチオールや、1,4−シクロヘキサンジチオール等のシクロアルカンジチオールや、ビス(2−メルカプトエチル)エーテル、ビス(2−メルカプトエチル)スルフィド、ビス(2−メルカプトエチル)ジスルフィド、2,2’−(エチレンジチオ)ジエタンチオール等の炭素鎖中にヘテロ原子を含有するアルカンジチオールや、2,5−ビス(メルカプトメチル)−1,4−ジオキサン、2,5−ビス(メルカプトメチル)−1,4−ジチアン等の炭素鎖中にヘテロ原子及び脂環構造を含有するアルカンジチオールや、1,1,1−トリス(メルカプトメチル)エタン、2−エーテル−2−メルカプトメチル−1,3−プロパンジチオール、1,8−メルカプト−4−メルカプトメチル−3,6−チアオクタン等のアルカントリチオールや、テトラキス(メルカプトメチル)メタン、3,3’−チオビス(プロパン−1,2−ジチオール)、2,2’−チオビス(プロパン−1,3−ジチオール)等のアルカンテトラチオール等が挙げられる。
【0149】
カルボキシル基を少なくとも2つ有する化合物としては、特に限定されるものではなく、種々のものを用いることができる。
例えば、コハク酸、マレイン酸、フタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、メチルヘキサヒドロフタル酸、ナジック酸、水素化ナジック酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、アジピン酸、セバチン酸、ドデカンジカルボン酸、イソフタル酸、2−メチルテレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等が挙げられる。
【0150】
フェノール性ヒドロキシ基を少なくとも2つ有する化合物としては、特に限定されるものではなく、種々のものを用いることができる。
例えば、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ナフトールノボラック樹脂等のノボラック型樹脂;トリフェノールメタン型樹脂等の多官能型フェノール樹脂;ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂、テルペン変性フェノール樹脂等の変性フェノール樹脂;フェニレン骨格を有するフェノールアラルキル樹脂、ビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル樹脂、フェニレン骨格を有するナフトールアラルキル樹脂、ビフェニレン骨格を有するナフトールアラルキル樹脂等のアラルキル型樹脂;ビスフェノールA、ビスフェノールF等のビスフェノール化合物;ビスフェノールS等の硫黄原子含有型フェノール樹脂等が挙げられる。
【0151】
ヒドロキシル基を少なくとも2つ有する化合物としては、特に限定されるものではなく、種々のものを用いることができる。
例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,4−テトラメチレンジオール、1,3−テトラメチレンジオール、2−メチル−1,3−トリメチレンジオール、1,5−ペンタメチレンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサメチレンジオール、3−メチル−1,5−ペンタメチレンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタメチレンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、シクロヘキサンジオール類(1,4−シクロヘキサンジオール等)、ビスフェノール類(ビスフェノールAなど)、糖アルコール類(キシリトールやソルビトールなど)、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のポリアルキレングリコール類などが挙げられる。
【0152】
成分Eの好ましい具体例としては、下記に示す化合物が挙げられるが、本発明はこれらの化合物に制限されるものではない。
【0153】
【化17】

【0154】
【化18】

【0155】
更に、成分Eとしては、ジメチロールプロピオンサン、ジメチロールブタン酸等の、カルボキシル基を有するジオール化合物が好ましい。
【0156】
本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物は、成分Eを1種のみ用いてもよく、2種以上併用してもよい。
成分Eの含有量としては、樹脂組成物の全固形分量に対し、0.01〜40重量%であることが好ましく、0.05〜30重量%であることがより好ましく、0.1〜20重量%であることが更に好ましい。
【0157】
(成分F)光熱変換剤
本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物は、更に、光熱変換剤を含有することが好ましい。すなわち、本発明における光熱変換剤は、レーザーの光を吸収し発熱することで、レーザー彫刻時の硬化物の熱分解を促進すると考えられる。このため、彫刻に用いるレーザー波長の光を吸収する光熱変換剤を選択することが好ましい。
【0158】
本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物を用いて製造したレーザー彫刻用レリーフ印刷版原版を、700〜1,300nmの赤外線を発するレーザー(YAGレーザー、半導体レーザー、ファイバーレーザー、面発光レーザー等)を光源としてレーザー彫刻に用いる場合に、光熱変換剤としては、700〜1,300nmに極大吸収波長を有する化合物を用いることが好ましい。
本発明における光熱変換剤としては、種々の染料又は顔料が用いられる。
【0159】
光熱変換剤のうち、染料としては、市販の染料及び例えば「染料便覧」(有機合成化学協会編集、昭和45年刊)等の文献に記載されている公知のものが利用できる。具体的には、700〜1,300nmに極大吸収波長を有するものが挙げられ、アゾ染料、金属錯塩アゾ染料、ピラゾロンアゾ染料、ナフトキノン染料、アントラキノン染料、フタロシアニン染料、カルボニウム染料、ジインモニウム化合物、キノンイミン染料、メチン染料、シアニン染料、スクワリリウム色素、ピリリウム塩、金属チオレート錯体等の染料が好ましく挙げられる。本発明において好ましく用いられる染料としては、ヘプタメチンシアニン色素等のシアニン系色素、ペンタメチンオキソノール色素等のオキソノール系色素、フタロシアニン系色素及び特開2008−63554号公報の段落0124〜0137に記載の染料を挙げることができる。
【0160】
本発明において使用される光熱変換剤のうち、顔料としては、市販の顔料及びカラーインデックス(C.I.)便覧、「最新顔料便覧」(日本顔料技術協会編、1977年刊)、「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)、「印刷インキ技術」CMC出版、1984年刊)に記載されている顔料が利用できる。また、顔料としては、特開2009−178869号公報の段落0122〜0125に記載の顔料が例示できる。
これらの顔料のうち、好ましいものはカーボンブラックである。
【0161】
カーボンブラックは、組成物中における分散性などが安定である限り、ASTMによる分類のほか、用途(例えば、カラー用、ゴム用、乾電池用など)の如何に拘らずいずれも使用可能である。カーボンブラックには、例えば、ファーネスブラック、サーマルブラック、チャンネルブラック、ランプブラック、アセチレンブラックなどが含まれる。なお、カーボンブラックなどの黒色着色剤は、分散を容易にするため、必要に応じて分散剤を用い、予めニトロセルロースやバインダーなどに分散させたカラーチップやカラーペーストとして使用することができ、このようなチップやペーストは市販品として容易に入手できる。また、カーボンブラックとしては、特開2009−178869号公報の段落0130〜0134に記載されたものが例示できる。
【0162】
本発明の樹脂組成物における成分Fは、1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
レーザー彫刻用樹脂組成物中おける光熱変換剤の含有量は、その分子固有の分子吸光係数の大きさにより大きく異なるが、該樹脂組成物の固形分全重量の0.01〜30重量%の範囲が好ましく、0.05〜20重量%がより好ましく、0.1〜10重量%が特に好ましい。
【0163】
(成分G)可塑剤
本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物は、(成分G)可塑剤を含有してもよい。なお、本発明において、成分Aを含有することにより、得られるレリーフ層は柔軟性に優れるため、可塑剤を添加しなくてもよい。
可塑剤は、レーザー彫刻用樹脂組成物により形成された膜を柔軟化する作用を有するものであり、バインダーポリマーに対して相溶性のよいものである必要がある。
可塑剤としては、例えばジオクチルフタレート、ジドデシルフタレート、アジピン酸ビスブトキシエチル等や、ポリエチレングリコール類、ポリプロピレングリコール(モノオール型やジオール型)、ポリプロピレングリコール(モノオール型やジオール型)等を好ましく用いられる。
これらの中でも、アジピン酸ビスブトキシエチルが特に好ましい。
本発明の樹脂組成物における成分Gは、1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
柔軟な膜物性を保つ観点から、本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物中に可塑剤の含有量は、全固形分濃度の50重量%以下が好ましく、30重量%以下がより好ましく、10重量%以下が更に好ましく、添加しないことが特に好ましい。
【0164】
(成分H)溶媒
本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物を調製する際に、(成分H)溶媒を用いることが好ましい。
溶媒としては、有機溶媒を用いることが好ましい。
非プロトン性有機溶媒の好ましい具体例は、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、トルエン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、メチルエチルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシドが挙げられる。
プロトン性有機溶媒の好ましい具体例は、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,3−プロパンジオールが挙げられる。
これらの中でも、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートが特に好ましく例示できる。
【0165】
<その他の添加剤>
本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物には、公知の各種添加剤を、本発明の効果を阻害しない範囲で適宜配合することができる。例えば、充填剤、ワックス、プロセス油、金属酸化物、オゾン分解防止剤、老化防止剤、重合禁止剤、着色剤等が挙げられ、これらは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0166】
(レーザー彫刻用レリーフ印刷版原版)
本発明のレーザー彫刻用レリーフ印刷版原版の第1の実施態様は、本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物からなるレリーフ形成層を有する。
また、本発明のレーザー彫刻用レリーフ印刷版原版の第2の実施態様は、本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物からなるレリーフ形成層を架橋した架橋レリーフ形成層を有する。
本発明において「レーザー彫刻用レリーフ印刷版原版」とは、レーザー彫刻用樹脂組成物からなる架橋性を有するレリーフ形成層が、架橋される前の状態、並びに、光及び/若しくは熱により硬化された状態の両方又はいずれか一方のものをいう。
本発明のレーザー彫刻用レリーフ印刷版原版は、熱架橋した架橋レリーフ形成層を有するものであることが好ましい。
本発明において「レリーフ形成層」とは、架橋される前の状態の層をいい、すなわち、本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物からなる層であり、必要に応じ、乾燥が行われていてもよい。
本発明において「架橋レリーフ形成層」とは、上記レリーフ形成層を架橋した層をいう。上記架橋は、光及び/又は熱により行われることが好ましい。また、上記架橋は樹脂組成物が硬化される反応であれば特に限定されず、成分A同士の反応による架橋構造を含む概念であるが、成分Aが他の成分と反応して架橋構造を形成していてもよい。また、重合性化合物を用いる場合には、上記架橋には、重合性化合物の重合による架橋も含まれる。
架橋レリーフ形成層を有する印刷版原版をレーザー彫刻することにより「レリーフ印刷版」が作製される。
また、本発明において「レリーフ層」とは、レリーフ印刷版におけるレーザーにより彫刻された層、すなわち、レーザー彫刻後の上記架橋レリーフ形成層をいう。
【0167】
本発明のレーザー彫刻用レリーフ印刷版原版は、上記のような成分を含有するレーザー彫刻用樹脂組成物からなるレリーフ形成層を有する。(架橋)レリーフ形成層は、支持体上に設けられることが好ましい。
レーザー彫刻用レリーフ印刷版原版は、必要により更に、支持体と(架橋)レリーフ形成層との間に接着層を、また、(架橋)レリーフ形成層上にスリップコート層、保護フィルムを有していてもよい。
【0168】
<レリーフ形成層>
レリーフ形成層は、上記本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物からなる層であり、架橋性の層である。
レーザー彫刻用レリーフ印刷版原版によるレリーフ印刷版の作製態様としては、レリーフ形成層を架橋させて架橋レリーフ形成層を有するレリーフ印刷版原版とした後、架橋レリーフ形成層(硬質のレリーフ形成層)をレーザー彫刻することによりレリーフ層を形成してレリーフ印刷版を作製する態様であることが好ましい。レリーフ形成層を架橋することにより、印刷時におけるレリーフ層の摩耗を防ぐことができ、また、レーザー彫刻後にシャープな形状のレリーフ層を有するレリーフ印刷版を得ることができる。
【0169】
レリーフ形成層は、レリーフ形成層用の上記の如き成分を有するレーザー彫刻用樹脂組成物を、シート状又はスリーブ状に成形することで形成することができる。レリーフ形成層は、通常、後述する支持体上に設けられるが、製版、印刷用の装置に備えられたシリンダーなどの部材表面に直接形成したり、そこに配置して固定化したりすることもでき、必ずしも支持体を必要としない。
以下、主としてレリーフ形成層をシート状にした場合を例に挙げて説明する。
【0170】
<支持体>
レーザー彫刻用レリーフ印刷版原版の支持体に使用する素材は特に限定されないが、寸法安定性の高いものが好ましく使用され、例えば、スチール、ステンレス、アルミニウムなどの金属、ポリエステル(例えばPET(ポリエチレンテレフタレート)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、PAN(ポリアクリロニトリル))やポリ塩化ビニルなどのプラスチック樹脂、スチレン−ブタジエンゴムなどの合成ゴム、ガラスファイバーで補強されたプラスチック樹脂(エポキシ樹脂やフェノール樹脂など)が挙げられる。支持体としては、PETフィルムやスチール基板が好ましく用いられる。支持体の形態は、レリーフ形成層がシート状であるかスリーブ状であるかによって決定される。
【0171】
<接着層>
レリーフ形成層を支持体上に形成する場合、両者の間には、層間の接着力を強化する目的で接着層を設けてもよい。
接着層に用いることができる材料(接着剤)としては、例えば、I.Skeist編、「Handbook of Adhesives」、第2版(1977)に記載のものを用いることができる。
【0172】
<保護フィルム、スリップコート層>
レリーフ形成層表面又は架橋レリーフ形成層表面への傷や凹み防止の目的で、レリーフ形成層表面又は架橋レリーフ形成層表面に保護フィルムを設けてもよい。保護フィルムの厚さは、25〜500μmが好ましく、50〜200μmがより好ましい。保護フィルムは、例えば、PETのようなポリエステル系フィルム、PE(ポリエチレン)やPP(ポリプロピレン)のようなポリオレフィン系フィルムを用いることができる。またフィルムの表面はマット化されていてもよい。保護フィルムは、剥離可能であることが好ましい。
【0173】
保護フィルムが剥離不可能な場合や、逆にレリーフ形成層に接着しにくい場合には、両層間にスリップコート層を設けてもよい。スリップコート層に使用される材料は、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、部分鹸化ポリビニルアルコール、ヒドロシキアルキルセルロース、アルキルセルロース、ポリアミド樹脂など、水に溶解又は分散可能で、粘着性の少ない樹脂を主成分とすることが好ましい。
【0174】
(レーザー彫刻用レリーフ印刷版原版の製造方法)
レーザー彫刻用レリーフ印刷版原版におけるレリーフ形成層の形成は、特に限定されるものではないが、例えば、レーザー彫刻用樹脂組成物を調製し、必要に応じて、このレーザー彫刻用塗布液組成物から溶剤を除去した後に、支持体上に溶融押し出しする方法が挙げられる。あるいは、レーザー彫刻用樹脂組成物を、支持体上に流延し、これをオーブン中で乾燥して樹脂組成物から溶媒を除去する方法でもよい。
中でも、本発明のレーザー彫刻用レリーフ印刷版原版の製造方法は、本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物からなるレリーフ形成層を形成する層形成工程、並びに、上記レリーフ形成層を光及び/又は熱により架橋し、架橋レリーフ形成層を有するレリーフ印刷版原版を得る架橋工程、を含む製造方法であることが好ましく、本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物からなるレリーフ形成層を形成する層形成工程、並びに、上記レリーフ形成層を熱架橋し、架橋レリーフ形成層を有するレリーフ印刷版原版を得る架橋工程、を含む製造方法であることがより好ましい。
【0175】
その後、必要に応じてレリーフ形成層の上に保護フィルムをラミネートしてもよい。ラミネートは、加熱したカレンダーロールなどで保護フィルムとレリーフ形成層を圧着することや、表面に少量の溶媒を含浸させたレリーフ形成層に保護フィルムを密着させることによって行うことができる。
保護フィルムを用いる場合には、先ず保護フィルム上にレリーフ形成層を積層し、次いで支持体をラミネートする方法を採ってもよい。
接着層を設ける場合は、接着層を塗布した支持体を用いることで対応できる。スリップコート層を設ける場合は、スリップコート層を塗布した保護フィルムを用いることで対応できる。
【0176】
<層形成工程>
本発明のレーザー彫刻用レリーフ印刷版原版の製造方法は、本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物からなるレリーフ形成層を形成する層形成工程を含むことが好ましい。
レリーフ形成層の形成方法としては、本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物を調製し、必要に応じて、このレーザー彫刻用樹脂組成物から溶剤を除去した後に、支持体上に溶融押し出しする方法や、本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物を調製し、本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物を支持体上に流延し、これをオーブン中で乾燥して溶剤を除去する方法が好ましく例示できる。
レーザー彫刻用樹脂組成物は、例えば、成分A及び成分B、並びに、任意成分を適当な溶媒に溶解させ、次いで、成分C〜成分E及び成分Fを溶解させることによって製造することができる。
【0177】
レーザー彫刻用レリーフ印刷版原版における(架橋)レリーフ形成層の厚さは、架橋の前後において、0.05mm以上10mm以下が好ましく、0.05mm以上7mm以下がより好ましく、0.05mm以上3mm以下が更に好ましい。
【0178】
<架橋工程>
本発明のレーザー彫刻用レリーフ印刷版原版の製造方法は、上記レリーフ形成層を光及び/又は熱により架橋し、架橋レリーフ形成層を有するレリーフ印刷版原版を得る架橋工程を含む製造方法であることが好ましい。
レリーフ形成層が光重合開始剤を含有する場合には、光重合開始剤のトリガーとなる活性光線をレリーフ形成層に照射することで、レリーフ形成層を架橋することができる。
光照射は、レリーフ形成層全面に行うことが好ましい。光(「活性光線」ともいう。)としては可視光、紫外光、及び電子線が挙げられるが、紫外光が最も好ましい。レリーフ形成層の支持体等、レリーフ形成層を固定化するための基材側を裏面とすれば、表面に光を照射するだけでもよいが、支持体が活性光線を透過する透明なフィルムであれば、更に裏面からも光を照射することが好ましい。表面からの照射は、保護フィルムが存在する場合、これを設けたまま行ってもよいし、保護フィルムを剥離した後に行ってもよい。酸素の存在下では重合阻害が生じる恐れがあるので、レリーフ形成層に塩化ビニルシートを被せて真空引きした上で、活性光線の照射を行ってもよい。
【0179】
レリーフ形成層が熱重合開始剤を含有する場合には(上記の光重合開始剤が熱重合開始剤にもなり得る。)、レーザー彫刻用レリーフ印刷版原版を加熱することで、レリーフ形成層を架橋することができる(熱により架橋する工程)。加熱手段としては、印刷版原版を熱風オーブンや遠赤外オーブン内で所定時間加熱する方法や、加熱したロールに所定時間接する方法が挙げられる。
【0180】
レリーフ形成層の架橋方法としては、レリーフ形成層を表面から内部まで均一に硬化(架橋)可能という観点で、熱による架橋の方が好ましい。
レリーフ形成層を架橋することで、第1にレーザー彫刻後形成されるレリーフがシャープになり、第2にレーザー彫刻の際に発生する彫刻カスの粘着性が抑制されるという利点がある。未架橋のレリーフ形成層をレーザー彫刻すると、レーザー照射部の周辺に伝播した余熱により、本来意図していない部分が溶融、変形しやすく、シャープなレリーフ層が得られない場合がある。また、素材の一般的な性質として、低分子なものほど固形ではなく液状になり、すなわち粘着性が強くなる傾向がある。レリーフ形成層を彫刻する際に発生する彫刻カスは、低分子の材料を多く用いるほど粘着性が強くなる傾向がある。低分子である重合性化合物は架橋することで高分子になるため、発生する彫刻カスは粘着性が少なくなる傾向がある。
【0181】
上記架橋工程が、光により架橋する工程である場合は、活性光線を照射する装置が比較的高価であるものの、印刷版原版が高温になることがないので、印刷版原版の原材料の制約がほとんどない。
上記架橋工程が、熱により架橋する工程である場合には、特別高価な装置を必要としない利点があるが、印刷版原版が高温になるので、高温で柔軟になる熱可塑性ポリマーは加熱中に変形する可能性がある等、使用する原材料は慎重に選択する必要がある。
熱架橋の際には、熱重合開始剤を加えることが好ましい。熱重合開始剤としては、遊離基重合(free radical polymerization)用の商業的な熱重合開始剤として使用され得る。このような熱重合開始剤としては、例えば、適当な過酸化物、ヒドロペルオキシド又はアゾ基を含む化合物が挙げられる。代表的な加硫剤も架橋用に使用できる。熱架橋性(heat−curable)の樹脂、例えばエポキシ樹脂、を架橋成分として層に加えることにより熱架橋も実施され得る。
【0182】
(レリーフ印刷版及びその製版方法)
本発明のレリーフ印刷版の製版方法は、本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物からなるレリーフ形成層を形成する層形成工程、上記レリーフ形成層を光及び/又は熱により架橋し、架橋レリーフ形成層を有するレリーフ印刷版原版を得る架橋工程、及び、上記架橋レリーフ形成層を有するレリーフ印刷版原版をレーザー彫刻する彫刻工程、を含むことが好ましく、本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物からなるレリーフ形成層を形成する層形成工程、上記レリーフ形成層を熱架橋し架橋レリーフ形成層を有するレリーフ印刷版原版を得る架橋工程、及び、上記架橋レリーフ形成層を有するレリーフ印刷版原版をレーザー彫刻する彫刻工程、を含むことがより好ましい。
本発明のレリーフ印刷版は、本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物からなる層を架橋及びレーザー彫刻して得られたレリーフ層を有するレリーフ印刷版であり、本発明のレリーフ印刷版の製版方法により製版されたレリーフ印刷版であることが好ましい。
本発明のレリーフ印刷版は、水性インキを印刷時に好適に使用することができる。
本発明のレリーフ印刷版の製版方法における層形成工程及び架橋工程は、上記レーザー彫刻用レリーフ印刷版原版の製造方法における層形成工程及び架橋工程と同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0183】
<彫刻工程>
本発明のレリーフ印刷版の製版方法は、上記架橋レリーフ形成層を有するレリーフ印刷版原版をレーザー彫刻する彫刻工程を含むことが好ましい。
彫刻工程は、上記架橋工程で架橋された架橋レリーフ形成層をレーザー彫刻してレリーフ層を形成する工程である。具体的には、架橋された架橋レリーフ形成層に対して、所望の画像に対応したレーザー光を照射して彫刻を行うことによりレリーフ層を形成することが好ましい。また、所望の画像のデジタルデータを元にコンピューターでレーザーヘッドを制御し、架橋レリーフ形成層に対して走査照射する工程が好ましく挙げられる。
この彫刻工程には、赤外線レーザーが好ましく用いられる。赤外線レーザーが照射されると、架橋レリーフ形成層中の分子が分子振動し、熱が発生する。赤外線レーザーとして炭酸ガスレーザーやYAGレーザーのような高出力のレーザーを用いると、レーザー照射部分に大量の熱が発生し、架橋レリーフ形成層中の分子は分子切断又はイオン化されて選択的な除去、すなわち、彫刻がなされる。レーザー彫刻の利点は、彫刻深さを任意に設定できるため、構造を3次元的に制御することができる点である。例えば、微細な網点を印刷する部分は、浅く又はショルダーをつけて彫刻することで、印圧でレリーフが転倒しないようにすることができ、細かい抜き文字を印刷する溝の部分は深く彫刻することで、溝にインキが埋まりにくくなり、抜き文字つぶれを抑制することが可能となる。
中でも、光熱変換剤の吸収波長に対応した赤外線レーザーで彫刻する場合には、より高感度で架橋レリーフ形成層の選択的な除去が可能となり、シャープな画像を有するレリーフ層が得られる。
【0184】
彫刻工程に用いられる赤外線レーザーとしては、生産性、コスト等の面から、炭酸ガスレーザー(CO2レーザー)又は半導体レーザーが好ましい。特に、ファイバー付き半導体赤外線レーザー(FC−LD)が好ましく用いられる。一般に、半導体レーザーは、CO2レーザーに比べレーザー発振が高効率かつ安価で小型化が可能である。また、小型であるためアレイ化が容易である。更に、ファイバーの処理によりビーム形状を制御できる。
半導体レーザーとしては、波長が700〜1,300nmのものが好ましく、800〜1,200nmのものがより好ましく、860〜1,200nmのものが更に好ましく、900〜1,100nmのものが特に好ましい。
【0185】
また、ファイバー付き半導体レーザーは、更に光ファイバーを取り付けることで効率よくレーザー光を出力できるため、本発明における彫刻工程には有効である。更に、ファイバーの処理によりビーム形状を制御できる。例えば、ビームプロファイルはトップハット形状とすることができ、安定に版面にエネルギーを与えることができる。半導体レーザーの詳細は、「レーザーハンドブック第2版」レーザー学会編、実用レーザー技術 電子通信学会等に記載されている。
また、本発明のレリーフ印刷版原版を用いたレリーフ印刷版の製版方法に好適に用いることができるファイバー付き半導体レーザーを備えた製版装置は、特開2009−172658号公報及び特開2009−214334号公報に詳細に記載され、これを本発明に係るレリーフ印刷版の製版に使用することができる。
【0186】
本発明のレリーフ印刷版の製版方法では、彫刻工程に次いで、更に、必要に応じて下記リンス工程、乾燥工程、及び/又は、後架橋工程を含んでもよい。
リンス工程:彫刻後のレリーフ層表面を、水又は水を主成分とする液体で彫刻表面をリンスする工程。
乾燥工程:彫刻されたレリーフ層を乾燥する工程。
後架橋工程:彫刻後のレリーフ層にエネルギーを付与し、レリーフ層を更に架橋する工程。
上記工程を経た後、彫刻表面に彫刻カスが付着しているため、水又は水を主成分とする液体で彫刻表面をリンスして、彫刻カスを洗い流すリンス工程を追加してもよい。リンスの手段として、水道水で水洗する方法、高圧水をスプレー噴射する方法、感光性樹脂凸版の現像機として公知のバッチ式又は搬送式のブラシ式洗い出し機で、彫刻表面を主に水の存在下でブラシ擦りする方法などが挙げられ、彫刻カスのヌメリがとれない場合は、石鹸や界面活性剤を添加したリンス液を用いてもよい。
彫刻表面をリンスするリンス工程を行った場合、彫刻されたレリーフ形成層を乾燥してリンス液を揮発させる乾燥工程を追加することが好ましい。
更に、必要に応じてレリーフ形成層を更に架橋させる後架橋工程を追加してもよい。追加の架橋工程である後架橋工程を行うことにより、彫刻によって形成されたレリーフをより強固にすることができる。
【0187】
本発明に用いることができるリンス液のpHは、9以上であることが好ましく、10以上であることがより好ましく、11以上であることが更に好ましい。また、リンス液のpHは14以下であることが好ましく、13.5以下であることがより好ましく、13.1以下であることが更に好ましい。上記範囲であると、取り扱いが容易である。
リンス液を上記のpH範囲とするために、適宜、酸及び/又は塩基を用いてpHを調整すればよく、使用する酸及び塩基は特に限定されない。
本発明に用いることができるリンス液は、主成分として水を含有することが好ましい。
また、リンス液は、水以外の溶媒として、アルコール類、アセトン、テトラヒドロフラン等などの水混和性溶媒を含有していてもよい。
【0188】
リンス液は、界面活性剤を含有することが好ましい。
本発明に用いることができる界面活性剤としては、彫刻カスの除去性、及び、レリーフ印刷版への影響を少なくする観点から、カルボキシベタイン化合物、スルホベタイン化合物、ホスホベタイン化合物、アミンオキシド化合物、又は、ホスフィンオキシド化合物等のベタイン化合物(両性界面活性剤)が好ましく挙げられる。
【0189】
また、界面活性剤としては、公知のアニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン界面活性剤等も挙げられる。更に、フッ素系、シリコーン系のノニオン界面活性剤も同様に使用することができる。
界面活性剤は、1種単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
界面活性剤の使用量は特に限定する必要はないが、リンス液の全重量に対し、0.01〜20重量%であることが好ましく、0.05〜10重量%であることがより好ましい。
【0190】
以上のようにして、支持体等の任意の基材表面にレリーフ層を有するレリーフ印刷版が得られる。
レリーフ印刷版が有するレリーフ層の厚さは、耐磨耗性やインキ転移性のような種々の印刷適性を満たす観点からは、0.05mm以上10mm以下が好ましく、より好ましくは0.05mm以上7mm以下、特に好ましくは0.05mm以上3mm以下である。
【0191】
また、レリーフ印刷版が有するレリーフ層のショアA硬度は、50°以上90°以下であることが好ましい。レリーフ層のショアA硬度が50°以上であると、彫刻により形成された微細な網点が凸版印刷機の強い印圧を受けても倒れてつぶれることがなく、正常な印刷ができる。また、レリーフ層のショアA硬度が90°以下であると、印圧がキスタッチのフレキソ印刷でもベタ部での印刷かすれを防止することができる。
なお、本明細書におけるショアA硬度は、25℃において、測定対象の表面に圧子(押針又はインデンタと呼ばれる)を押し込み変形させ、その変形量(押込み深さ)を測定して、数値化するデュロメータ(スプリング式ゴム硬度計)により測定した値である。
【0192】
本発明のレリーフ印刷版は、フレキソ印刷機による水性インキでの印刷に特に好適であるが、凸版用印刷機による水性インキ、油性インキ及びUVインキ、いずれのインキを用いた場合でも、印刷が可能であり、また、フレキソ印刷機によるUVインキでの印刷も可能である。本発明のレリーフ印刷版は、リンス性に優れており彫刻カスの残存がなく、かつ、得られたレリーフ層が弾性に優れるため、水性インキ転移性及び耐刷性に優れ、長期間にわたりレリーフ層の塑性変形や耐刷性低下の懸念がなく、印刷が実施できる。
【実施例】
【0193】
以下に実施例及び比較例を示し、本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。なお、以下の記載における「部」とは、特に断りのない限り「重量部」を示し、「%」は「重量%」を示すものとする。
なお、実施例におけるポリマーの数平均分子量(Mn)は、特に断りのない限りにおいて、GPC法で測定した値を表示している。
【0194】
プラストマーの合成について、以下に説明する。
<アクリル樹脂(P−1)の合成>
撹拌羽根及び冷却管を付けた三ツ口フラスコに、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル(和光純薬工業(株)製)を39部、メタクリル酸ドデシル(東京化成工業(株)製)を170部、及びPMA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、三協化学(株)製)を400部入れ、85℃で20分間撹拌した。その後、V−601(ジメチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、和光純薬工業(株)製)を3部添加して85℃で4時間加熱・撹拌した。その後、V−601を2部追加で添加して、95℃で2時間撹拌した。
合成したポリマー溶液から溶媒であるPMAを除去して得られたアクリル樹脂(P−1)は、室温で液状であった。Mn(GPC)は、11,000であった。
【0195】
<ポリエステル樹脂(P−2)の合成>
プロピレングリコール、ジエチレングリコール、アジピン酸、コハク酸、及びイソフタル酸を、合成されるポリマーの主鎖末端がOH基となるようにジオール成分を僅かに過剰にしたモル比、0.13:0.39:0.24:0.14:0.12の割合で混合した混合物を、窒素雰囲気下において加熱し、真空ポンプで系内の真空度を上げ、水を系外に除去する水縮合反応により液状のポリエステル樹脂(P−2)を得た。得られたポリエステル樹脂(P−2)は、室温で液状であった。Mn(GPC)は、15,000であった。
【0196】
<ポリウレタン樹脂(P−3)の合成>
温度計、撹拌機、還流器を備えたセパラブルフラスコに、クラレポリオールC−2050(カーボネートポリオール、(株)クラレ製)とトリレンジイソシアナートとを、モル比で1:1となるように加え、60℃で加熱しながら約3時間反応させた。Mn(GPC)が20,000であるポリウレタン樹脂(P−3)を得た。この樹脂は20℃では液状であった。
【0197】
[実施例1]
1.レーザー彫刻用樹脂組成物の調製
撹拌羽及び冷却管をつけた3つ口フラスコ中に、(成分A)プラストマーとして「クラレポリオールC−2050」((株)クラレ製)50部、溶媒としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート47部を入れ、撹拌しながら70℃で120分間加熱しポリマーを溶解させた。その後、溶液を40℃にし、更に(成分B)架橋剤としてブレンマーPDE−200(日油(株)製)25部、重合開始剤としてt−ブチルパーオキシベンゾエート(商品名:パーブチルZ、日油(株)製)0.5部、光熱変換剤としてケッチェンブラックEC600JD(カーボンブラック、ライオン(株)製)1部、を添加して30分間撹拌した。この操作により、流動性のある架橋性レリーフ形成層用塗布液1(レーザー彫刻用樹脂組成物1)を得た。
【0198】
2.レーザー彫刻用レリーフ印刷版原版の作製
PET基板上に所定厚のスペーサー(枠)を設置し、上記より得られた架橋性レリーフ形成層用塗布液1をスペーサー(枠)から流出しない程度に静かに流延し、70℃のオーブン中で3時間乾燥させた。その後80℃で3時間、更に100℃で3時間加熱してレリーフ形成層を熱架橋し、厚さが凡そ1mmのレリーフ形成層を設け、レーザー彫刻用レリーフ印刷版原版1を作製した。
【0199】
3.レリーフ印刷版の作製
架橋後のレリーフ形成層(架橋レリーフ形成層)に対し、以下の2種のレーザーにより彫刻した。
炭酸ガスレーザー彫刻機として、レーザー照射による彫刻を、高品位CO2レーザーマーカML−9100シリーズ(KEYENCE(株)製)を用いた。炭酸ガスレーザー彫刻機で、出力:12W、ヘッド速度:200mm/秒、ピッチ設定:2,400DPIの条件で、1cm四方のベタ部分をラスター彫刻した。
半導体レーザー彫刻機として、最大出力8.0Wのファイバー付き半導体レーザー(FC−LD)SDL−6390(JDSU社製、波長 915nm)を装備したレーザー記録装置を用いた。半導体レーザー彫刻機でレーザー出力:7.5W、ヘッド速度:409mm/秒、ピッチ設定:2,400DPIの条件で、1cm四方のベタ部分をラスター彫刻した。
レリーフ印刷版が有するレリーフ層の厚さは凡そ1mmであった。
【0200】
[実施例2〜12、比較例1及び2]
1.レーザー彫刻用架橋性樹脂組成物の調製
実施例1で用いた(A)プラストマー、(B)架橋剤及び添加剤を、下記表1に記載の(A)プラストマー、(B)架橋剤及び添加剤に変更した以外は、実施例1と同様にして、架橋性レリーフ形成層用塗布液(レーザー彫刻用架橋性樹脂組成物)2〜12、比較架橋性レリーフ形成層用塗布液(レーザー彫刻用架橋性樹脂組成物)1及び2を調製した。
【0201】
なお、各実施例及び比較例で使用した(成分A)プラストマー、(成分B)架橋剤、及び、添加剤の詳細は以下の通りである。
(成分A)
・クラレポリオールC−2050:ポリカーボネートポリオール、20℃でオイル状、(株)クラレ製
・KF−6003:両末端カルビノール変性シリコーンオイル(ポリシロキサンジオール)、20℃でオイル状、信越化学工業(株)製
・アクリル樹脂(P−1):上記アクリル樹脂(P−1)合成例を参照
・ポリエステル樹脂(P−2):ポリエステル樹脂(P−2)合成例を参照
・ポリウレタン樹脂(P−3):ポリウレタン樹脂(P−3)合成例を参照
・GI−3000:水素化ポリブタジエンジオール、数平均分子量3,000、日本曹達(株)製、20℃で液状
(以下、比較例)
・エスレックBM−2:ポリビニルブチラール、Tg67℃、積水化学工業(株)製
・TR2000:スチレン/ブタジエンブロック共重合体、熱可塑性エラストマー、JSR(株)製
・G−3000:ポリブタジエンジオール(エチレン性不飽和基含有)、数平均分子量3,000、日本曹達(株)製、20℃で液状
(成分B)
・ブレンマーPDE−200:ポリエチレングリコールジメタクリレート((メタ)アクリレート化合物)、日油(株)製
・デュラネートTKA−100:ヘキサメチレンジイソシアネート無黄変形型ポリイソシアネート(多官能イソシアネート化合物)、旭化成ケミカルズ(株)製
・化合物S−32(シランカップリング剤):下記式
【0202】
【化19】

【0203】
(添加剤)
・パーブチルZ:重合開始剤、t−ブチルパーオキシベンゾエート、日油(株)製
・ネオスタンU−600:ビスマス系触媒、日東化成(株)製
・DBU:1,8−ジアザビシクロ−[5,4,0]−ウンデカ−7−エン
【0204】
2.レーザー彫刻用レリーフ印刷版原版の作製
実施例1における架橋性レリーフ形成層用塗布液1を、架橋性レリーフ形成層用塗布液2〜12、比較架橋性レリーフ形成層用塗布液1及び2に各々変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例のレーザー彫刻用レリーフ印刷版原版2〜12及び比較例のレーザー彫刻用レリーフ印刷版原版1及び2を得た。
【0205】
3.レリーフ印刷版の作製
実施例のレーザー彫刻用レリーフ印刷版原版2〜12、及び比較例のレーザー彫刻用レリーフ印刷版原版1及び2のレリーフ形成層を、実施例1と同様にして、熱架橋した後、彫刻してレリーフ層を形成することにより、実施例のレリーフ印刷版2〜12、比較例のレリーフ印刷版1及び2を得た。
これらのレリーフ印刷版が有するレリーフ層の厚さは凡そ1mmであった。
【0206】
4.レリーフ印刷版の評価
以下の項目でレリーフ印刷版の性能評価を行い、結果を表1に示す。なお、炭酸ガスレーザーで彫刻を行った場合の評価結果と、半導体レーザーで彫刻を行った場合の評価結果は、同じであった。
【0207】
(4−1)リンス性
レーザー彫刻した版を水に浸漬し、彫刻部を歯ブラシ(ライオン(株)製、クリニカハブラシ フラット)で10回こすった。その後、光学顕微鏡でレリーフ層の表面におけるカスの有無を確認した。カスがないものをA、ほとんどないものをB、少し残存しているものをC、カスが残存しているが、実用上問題のないレベルであるものをD、カスが除去できていないものをEとした。
【0208】
(4−2)インキ転移性
得られたレリーフ印刷版を印刷機(ITM−4型、(株)伊予機械製作所製)にセットし、インキとして、水性インキ アクアSPZ16紅(東洋インキ製造(株))を希釈せずに用いて、印刷紙として、フルカラーフォームM 70(日本製紙(株)製、厚さ100μm)を用いて印刷を継続し、印刷開始から1,000mにおける印刷物上のベタ部におけるインキの付着度合いを目視で比較した。
評価基準は、濃度ムラがなく均一なものをA、ムラがあるものをC、わずかにムラはあるが実用上問題ないレベルをBとした。
【0209】
【表1】

【0210】
<実施例13及び比較例3>
実施例13では、成分AをGI−3000(水素化ポリブタジエンジオール、数平均分子量3,000、日本曹達(株)製、20℃で液状)に変更した以外は実施例1と同様にしてレリーフ印刷版原版を作製した。また、比較例3では、成分AをG−3000(ポリブタジエンジオール(エチレン性不飽和基含有)、数平均分子量3,000、日本曹達(株)製、20℃で液状)に変更した以外は実施例1と同様にしてレリーフ印刷版原版を作製した。
作製したレリーフ印刷版原版を使用して、架橋レリーフ形成層(レリーフ層)の柔軟性を評価した。
得られた架橋レリーフ形成層を有するレリーフ印刷版原版から、架橋レリーフ形成層のみを剥離して、サンプルとして使用し、室温(20℃)にて、ヤング率及び破断伸びを測定した。試験条件は以下の通りである。結果を以下の表2に示す。
<試験条件>
・引張試験機:(株)島津製作所製、AGSH5000
・解析ソフト:(株)島津製作所製、TRAPEZIUM
・引張速度:20mm/min
・試験片形状:ダンベル型
【0211】
【表2】

【0212】
成分Aがエチレン性不飽和基を有しない実施例13の方が、架橋レリーフ形成層及びレリーフ層の柔軟性に優れることが確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(成分A)20℃においてプラストマーであり、かつ、エチレン性不飽和基を有しない樹脂、及び、
(成分B)架橋剤、を含有することを特徴とする
レーザー彫刻用樹脂組成物。
【請求項2】
成分Aがポリカーボネートポリオール、ポリシロキサンポリオール、アクリル樹脂、分子末端に水酸基を有するポリエステル樹脂及び分子末端に水酸基を有するポリウレタン樹脂よりなる群から選択され、成分Bが(メタ)アクリレート化合物、多官能イソシアネート化合物及びシランカップリング剤よりなる群から選択される、請求項1に記載のレーザー彫刻用樹脂組成物。
【請求項3】
成分Aとしてポリカーボネートポリオールを含有し、成分Bとして(メタ)アクリレート化合物を含有する、請求項1又は2に記載のレーザー彫刻用樹脂組成物。
【請求項4】
成分Aとしてポリシロキサンポリオールを含有し、成分Bとして(メタ)アクリレート化合物を含有する、請求項1又は2に記載のレーザー彫刻用樹脂組成物。
【請求項5】
成分Aとしてアクリル樹脂を含有し、成分Bとして(メタ)アクリレート化合物を含有する、請求項1又は2に記載のレーザー彫刻用樹脂組成物。
【請求項6】
成分Aとして分子末端に水酸基を有するポリエステル樹脂を含有し、成分Bとして(メタ)アクリレート化合物を含有する、請求項1又は2に記載のレーザー彫刻用樹脂組成物。
【請求項7】
成分Aとして分子末端に水酸基を有するポリウレタン樹脂を含有し、成分Bとして(メタ)アクリレート化合物を含有する、請求項1又は2に記載のレーザー彫刻用樹脂組成物。
【請求項8】
成分Aとしてアクリル樹脂を含有し、成分Bとして多官能イソシアネート化合物を含有する、請求項1又は2に記載のレーザー彫刻用樹脂組成物。
【請求項9】
成分Aとして分子末端に水酸基を有するポリエステル樹脂を含有し、成分Bとして多官能イソシアネート化合物を含有する、請求項1又は2に記載のレーザー彫刻用樹脂組成物。
【請求項10】
成分Aとして分子末端に水酸基を有するポリウレタン樹脂を含有し、成分Bとして多官能イソシアネート化合物を含有する、請求項1又は2に記載のレーザー彫刻用樹脂組成物。
【請求項11】
成分Aとしてポリシロキサンポリオールを含有し、成分Bとしてシランカップリング剤を含有する、請求項1又は2に記載のレーザー彫刻用樹脂組成物。
【請求項12】
成分Aとしてアクリル樹脂を含有し、成分Bとしてシランカップリング剤を含有する、請求項1又は2に記載のレーザー彫刻用樹脂組成物。
【請求項13】
成分Aとして分子末端に水酸基を有するポリエステル樹脂を含有し、成分Bとしてシランカップリング剤を含有する、請求項1又は2に記載のレーザー彫刻用樹脂組成物。
【請求項14】
成分Aとして分子末端に水酸基を有するポリウレタン樹脂を含有し、成分Bとしてシランカップリング剤を含有する、請求項1又は2に記載のレーザー彫刻用樹脂組成物。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれか1項に記載のレーザー彫刻用樹脂組成物からなるレリーフ形成層を有するレーザー彫刻用レリーフ印刷版原版。
【請求項16】
請求項1〜14のいずれか1項に記載のレーザー彫刻用樹脂組成物からなるレリーフ形成層を光及び/又は熱により架橋した架橋レリーフ形成層を有するレーザー彫刻用レリーフ印刷版原版。
【請求項17】
請求項1〜14のいずれか1項に記載のレーザー彫刻用樹脂組成物からなるレリーフ形成層を形成する層形成工程、並びに、
前記レリーフ形成層を光及び/又は熱により架橋し、架橋レリーフ形成層を有するレリーフ印刷版原版を得る架橋工程、を含む
レーザー彫刻用レリーフ印刷版原版の製造方法。
【請求項18】
前記架橋工程が、前記レーザー彫刻用樹脂組成物層を熱により架橋し、レリーフ形成層を有するレリーフ印刷版原版を得る工程である、請求項17に記載のレーザー彫刻用レリーフ印刷版原版の製造方法。
【請求項19】
請求項1〜14のいずれか1項に記載のレーザー彫刻用樹脂組成物からなるレリーフ形成層を形成する層形成工程、
前記レリーフ形成層を光及び/又は熱により架橋し、架橋レリーフ形成層を有するレリーフ印刷版原版を得る架橋工程、並びに、
前記架橋レリーフ形成層を有するレリーフ印刷版原版をレーザー彫刻し、レリーフ層を形成する彫刻工程、を含む
レリーフ印刷版の製版方法。
【請求項20】
請求項19に記載のレリーフ印刷版の製版方法により製版されたレリーフ層を有するレリーフ印刷版。
【請求項21】
前記レリーフ層の厚さが、0.05mm以上10mm以下である、請求項20に記載のレリーフ印刷版。
【請求項22】
前記レリーフ層のショアA硬度が、50°以上90°以下である、請求項20又は21に記載のレリーフ印刷版。

【公開番号】特開2013−46999(P2013−46999A)
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−165626(P2012−165626)
【出願日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】