説明

レーザ墨出し装置

【課題】レーザ墨出し装置において、内部に備えられた精密な光学系部品を、落下などによる衝撃から確実に保護する。
【解決手段】レーザ墨出し装置1は、レーザ光を発する光学部4と、光学部4を内部に収容し、レーザ光を通過させるための開口窓6を有する筐体3とを備える。また、レーザ墨出し装置1は、筐体3を着脱可能に覆い、かつ、開口窓6に対応する位置にレーザ光を通過させるための開口部51〜53を有する緩衝部材5を備える。この緩衝部材5により、筐体3の内部に備えられた精密な光学部を、落下などによる衝撃から確実に保護する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、壁面や天井面に線状、もしくは点状のレーザ光を照射して墨出し作業に用いられるレーザ墨出し装置に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザ墨出し装置は、例えば、建築業者が施工現場で、水平レベルや鉛直点などの基準出しのための作業道具として一般的に用いられている。レーザ墨出し装置は、ライン状のレーザ光線を天井などの壁面上に照射して、その指示したポイントやライン上を基準に建具(壁、棚、照明)等が設置される。このため、レーザ墨出し装置は、高い位置精度が必要とされ、内部の光学系部品の組立にも高精密が要求される。
【0003】
レーザ墨出し装置は精密機械であるため、ユーザは取り扱い時や持ち運び時に落下や転倒等によりレーザ墨出し装置に衝撃を与えないよう注意する必要がある。しかし、レーザ墨出し装置が使用される作業現場は、建設現場などの苛酷な環境であるため、レーザ墨出し装置が落下や転倒などの衝撃を受ける可能性が高く、内部の光学系部品の破損や精度悪化につながりやすい。従って、レーザ墨出し装置に、衝撃による光学系部品の精度悪化を防ぐ手段が備えられる場合がある。
【0004】
例えば、図7に示すレーザ墨出し装置70の例では、外郭71の上部外周に沿って緩衝部材72を付設している(例えば、特許文献1参照)。レーザ墨出し装置70は、緩衝部材72を用いて転倒・落下時の衝撃力が印加されたときの衝撃を和らげて内部に収容された光学系部品の精度を保持する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−236744号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記のレーザ墨出し装置70では、緩衝部材72が上部の一部にのみ設置されるため、この緩衝部材72の部分でのみしか緩衝効果がない。従って、緩衝部材72で覆われていないレーザ墨出し装置70の胴体部が先に接地するような落下の場合には、衝撃が直接、レーザ墨出し装置7の外郭を通じて内部機構に作用し、内部の光学系機器を破損させてしまうという欠点がある。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、内部に収容された精密な光学系部品を、落下や転倒などの衝撃から確実に保護できるレーザ墨出し装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために本発明は、レーザ光を発する光学部と、前記光学部を内部に収容し、前記レーザ光を通過させるための開口窓を有する筐体とを備えるレーザ墨出し装置において、前記筐体を着脱可能に覆い、かつ、前記開口窓に対応する位置にレーザ光を通過させるための開口部を有する緩衝部材を備えることを特徴とするものである。
【0009】
このレーザ墨出し装置において、前記緩衝部材は、その内側面に突出した複数のリブを有することが好ましい。
【0010】
このレーザ墨出し装置において、前記リブは、その水平断面が台形形状であり、かつ当該リブの底部は前記緩衝部材の内側面と鈍角となる形状であることが好ましい。
【0011】
このレーザ墨出し装置において、前記開口部の周縁部は、前記緩衝部材の外面より盛り上がった構造を有することが好ましい。
【0012】
このレーザ墨出し装置において、前記筐体は、外面に凸部を有し、前記緩衝部材は、その内面に、前記凸部と嵌合される凹部を有していることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、レーザ墨出し装置の筐体を着脱可能に覆い、かつ、レーザ光を通過させるための開口部を有する緩衝部材を用いて、落下や転倒時における衝撃から光学部を保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施の形態に係るレーザ墨出し装置の使用状態における斜視図である。
【図2】同上レーザ墨出し装置の不使用状態における斜視図である。
【図3】同上レーザ墨出し装置の緩衝部材及び筐体の断面図である。
【図4】(a)同上緩衝部材の水平断面図、(b)同上緩衝部材の水平断面の一部拡大図である。
【図5】同上実施の形態の変形例に係るレーザ墨出し装置の水平断面の一部拡大図である。
【図6】同上レーザ墨出し装置の水平断面図である。
【図7】従来のレーザ墨出し装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(実施の形態)
本発明の実施の形態に係るレーザ墨出し装置について図面を参照して説明する。図1はレーザ墨出し装置1の構成を示す。レーザ墨出し装置1は、垂直や水平なレーザ光を出射し、設置面に支持するための支持体2と、支持体2に支持される筐体3と、筐体3の内部でジンバル機構(図示せず)によって垂直に取り付けられる光学部4と、筐体3を覆う緩衝部材5とを備える。
【0016】
支持体2は、例えば回転軸によって回動自在に筐体3の底部に取り付けられる。レーザ墨出し装置1が使用されるときには、図1に示すように支持体2が開かれて設置面に設置され、使用されないときには、図2に示すように支持体2が閉じられて収納される。筐体3は、光学部4を内部に収容し、レーザ光を通過させるための開口窓6を有し、3本の支持体2によって支持されている。
【0017】
光学部4は、その使用状態において、例えば正面及び天井面を照射する垂直な正面垂直ライン光L1と、正面を照射する水平な水平ライン光L2と、側面及び天井面を照射する垂直な側面垂直ライン光L3とを、それぞれの開口窓6を通して出射する。正面垂直ライン光L1を含む平面と側面垂直ライン光L3を含む平面とは、互いに直交する。なお、レーザ墨出し装置1の光学部4の詳細に関しては図示を省略している。
【0018】
緩衝部材5は、光学部4からXYZの3方向に照射される各レーザ光軸を遮光しない大きさの開口部51〜53が3方向に設けられる。これら開口部51〜53は、筐体3の開口窓6に対応する位置に形成される。緩衝部材5は、図3に示すように、例えばゴムやエラストマー等の弾性を持つ樹脂材料を用いて、筐体3から上下方向に着脱可能となる略円筒形状で構成される。
【0019】
また、緩衝部材5は、図4に示すように、その内側面に、所定のピッチ幅で、緩衝部材5の長手方向に沿って伸延し、内側に突出した複数のリブ(リブ状構造)5aが形成される。落下などによりレーザ墨出し装置1が外部からの衝撃を受けたとき、リブ5aがつぶれて座屈することで効率的に衝撃を緩和することができる。なお、緩衝部材5がリブ5aを有せずに例えば一枚の分厚い板状のゴム構造などで形成される場合、外部からの衝撃時に緩衝部材5の「逃げしろ(縮みしろ)」のための座屈空間が少なくなり、リブ5aがある構造に比べて緩衝効果が低くなる。
【0020】
リブ5aは、その水平断面が緩衝部材5の外周側に向かって肉厚が厚くなる台形形状で形成される。図4(b)に示す例では、緩衝部材5の半径方向外側に位置する下底の長さが3.3mm、緩衝部材5の半径方向内側に位置する上底の長さが1.7mm、ピッチが円周方向に18°で各リブ5aが形成されている。
【0021】
上記台形形状のリブ5aの斜辺は、緩衝部材5の内側面と鈍角(図4では99°)で交わる構造である。この構成により、緩衝部材5は、製造時の金型からの離型性が良くなり生産しやすい。なお、リブ5aの形状は上記台形形状に限定されるものではない。例えばリブ5aの斜辺と緩衝部材5の内側面とのなす角度が鈍角であれば、リブ5aの斜辺を直線形状でなく、曲面形状(例えば、膨れる方向である凸状の曲線、若しくは窪む方向である凹状の曲線)としても同様の効果が得られる。また、リブ5aの水平断面の形状は、略台形形状でもよいし、図4に示す等脚台形ではある必要はなく、底角の一方が直角となる台形形状や緩衝部材5の半径方向内側に向かって突出するノコギリ歯形状などでもよい。
【0022】
以上のように、本実施の形態に係るレーザ墨出し装置1は、筐体3を着脱可能に覆い、光学部4から発せられるライン状光線を通過させる開口部51〜53を有する緩衝部材5を備える。この緩衝部材5は、取り扱い時や持ち運び時における落下や転倒の衝撃から内部の光学部4を保護して、光学部4の照射精度を維持できる。また、緩衝部材5に内側方向に突出する複数のリブ5aを形成することで、衝撃が加えられたときに座屈できる空間が増え、より高い緩衝緩和の効果が得られる。
【0023】
(第1の変形例)
本実施の形態の第1の変形例について、図5及び図6を参照して説明する。本変形例では、緩衝部材5のレーザ光が通過する開口部51の周縁部に、緩衝部材5の外周5bよりも盛り上がった構造5cが形成される。
【0024】
レーザ墨出し装置1の筐体3には、上述のように光学部4からのレーザ光が通過する窓ガラスを備えた開口窓6が設けられている。開口窓6には、図5に示すように、窓ガラスの破壊防止のため、エラストマーなどの保護用樹脂7が外側に突出する突起状で付設されている。この保護用樹脂7は、転倒・落下時などに開口窓6の窓ガラスが直接接地して衝撃が加わることを防止するために設けられている。緩衝部材5に盛り上がり構造5cが形成されていない場合には、開口窓6の近傍の緩衝部材5の肉厚が薄肉形状となり、開口窓6の窓ガラスが受ける衝撃力が大きくなる可能性がある。
【0025】
このため、本変形例に係る緩衝部材5においては、開口部51の周縁部に、緩衝部材5の外周5bより盛り上がった構造5cを形成する。このことで、当該周縁部を厚肉形状として、落下時に開口窓6の箇所に加えられる衝撃を効果的に緩和できる。
【0026】
また、図6に示すように、筐体3の外郭には、凸形状の外郭突出部3aが複数形成される。緩衝部材5は、その内面に、これらの外郭突出部3aに嵌合する形状となる凹部5dを有する。この構成により、緩衝部材5が筐体3に装着される場合、筐体3の外郭突出部3aと緩衝部材5の凹部5dとが嵌合され、装着した緩衝部材5がずれて開口窓6を塞ぐことや緩衝部材5が筐体3から脱落することを適切に防止できる。なお、本発明は、上記実施の形態の構成に限られず、発明の趣旨を変更しない範囲で種々の変形が可能である。例えば、緩衝部材5に形成される開口部は、開口部51〜53の3方向に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0027】
1 レーザ墨出し装置
2 支持体
3 筐体
3a 外郭突出部(凸部)
4 光学部
5 緩衝部材
51,52,53 開口部
5a リブ
5c 盛り上がり構造
5d 凹部
6 開口窓
7 保護用樹脂
L1 正面垂直ライン光
L2 水平ライン光
L3 側面垂直ライン光

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光を発する光学部と、前記光学部を内部に収容し、前記レーザ光を通過させるための開口窓を有する筐体とを備えるレーザ墨出し装置において、
前記筐体を着脱可能に覆い、かつ、前記開口窓に対応する位置にレーザ光を通過させるための開口部を有する緩衝部材を備える、ことを特徴とするレーザ墨出し装置。
【請求項2】
前記緩衝部材は、その内側面に突出した複数のリブを有する、ことを特徴とする請求項1記載のレーザ墨出し装置。
【請求項3】
前記リブは、その水平断面が台形形状であり、かつ当該リブの底部は前記緩衝部材の内側面と鈍角となる形状である、ことを特徴とする請求項2記載のレーザ墨出し装置。
【請求項4】
前記開口部の周縁部は、前記緩衝部材の外面より盛り上がった構造を有する、ことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載のレーザ墨出し装置。
【請求項5】
前記筐体は、外面に凸部を有し、
前記緩衝部材は、その内面に、前記凸部と嵌合される凹部を有している、ことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載のレーザ墨出し装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−247203(P2012−247203A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−116702(P2011−116702)
【出願日】平成23年5月25日(2011.5.25)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)