説明

レーザ焼結装置用の支持プレート及び改良型焼結方法

本発明は、焼結装置であって、連続して位置する金属粉末層を選択的に溶解させることができるレーザビームを有するレーザ源と、第1の金属粉末層が被着されると共に物品を製作するためのベースとして用いられる基準プレート(4)とを有する、焼結装置において、基準プレート(4)は、1つ又は2つ以上の凹部(41,42)を有し、これら凹部は、所与の形状のインサートを受け入れることができるよう定められた形状を有することを特徴とする焼結装置に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属粉末のレーザ焼結によるモールド部品の製造という技術分野に関し、このような製造において、物品、特にモールド部品の粉末の選択的溶解により製作し、層の重ね合わせによって構成する。この焼結技術は、レーザ焼結又はSLM(選択的レーザ溶解)とも呼ばれている。
【背景技術】
【0002】
部品を製造するこの技術の利点は、部品の形状をコンピュータモデル化し、このモデルに基づいて焼結を行うことにより部品を容易に製造できるということにある。具体的に説明すると、部品のモデルを有するコンピュータによってレーザを駆動し、重ね合わされた粉末層を連続的に焼結することにより部品を製造することができる。
【0003】
この技術は、複雑なモールド部品の製作に特に適している。というのは、このような技術により、小さな寸法の成形要素、例えば薄板(lamella )又はビーディングを同一作業で製造することができるからである。
【0004】
これら部品の製作は、第1の金属粉末層が被着されると共にレーザ源から来たレーザビームにより選択的に溶解する水平基準プレートに基づいて実施される。次に、第2の金属粉末層を導入し、次に選択的溶解を続行してついには最終部品が得られるようにする。
【0005】
したがって表面が平坦である基準プレートは、物品を連続した層の状態で構成するためのベースとしての役目を果たす。したがって、第1の層を溶解させることが、金属粉末及び基準プレートを形成する金属の融点が十分に近い場合に基準プレートを製作されるべき物品に溶接するという作用効果をもたらすのが分かるということは、驚くべきことではない。次に、作業の終わりに基準プレートを最終部品から取り外す必要があり、最終部品は、そのままの状態で用いられ又は仕上げ作業が施される場合がある。この作業は、例えば、ワイヤにより迅速な切断を行うことにより実施される場合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、この特徴を利用し、基準プレート及び製造方法の改良を提供することにある。
【0007】
具体的に説明すると、タイヤ用の硬化モールドを製作するようになった或る特定の部品を2つの別々の部分に分割するのが良いことが判明した。部品の第1の部分は、従来型機械加工手段を用いることにより、成形又は金属の除去によって、例えば、フライス加工、旋削又は研削による迅速且つ経済的な製造を行うことができ、このような第1の部品は、これら手段によって製作することが特に困難な形状を備えていない。
【0008】
しかしながら、部品の第2の部分は、上述の形式のレーザ焼結装置により製作することが都合の良い特定の形状を有する。ただし、そのサイクル時間は、一般に長く、しかも、従来型機械加工装置よりも実施するのに費用が高くつく。このため、部品が別の仕方で製造することが可能ではない部分を有する場合、別の仕方で製作するのが可能ではないのは、レーザ焼結により製作される部品全体である場合が極めて多い。
【0009】
したがって、問題の部品を2つの別々のステップで製作し、部品を各々が最も適当な手段で製作される2つの部分に分割することが有利であると考えられる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の焼結装置は、光出力が連続して位置する金属粉末層を選択的に溶解させることができるレーザ源及び第1の金属粉末層が被着されると共に物品の構成のためのベースとしての役目を果たす基準プレートを有する。
【0011】
この焼結装置は、基準プレートが1つ又は2つ以上の凹部を有し、凹部の形状が所与の形状のインサートを受け入れることができるよう定められていることを特徴としている。
【0012】
本発明の装置を用いて連続して位置する金属粉末層を連続的に溶解させることにより焼結により金属物体を製造する本発明の方法は、次のステップ、即ち
A‐断面形状が基準プレートの凹部の断面形状に一致した平坦なヘッドを備えた金属インサートを基準プレートの凹部内に配置してインサートのヘッドが基準プレートにより形成された平面と同一平面内に位置するようにするステップと、
B‐所与の厚さの第1の金属粉末層を基準プレートに被着させるステップと、
C‐インサートのヘッドと接触状態にある第1の金属粉末層の金属粉末表面をレーザ源から来たビームにより選択的に溶解させてインサートの各々のヘッドを製造されるべき物品の各々の残部に結合するステップとを有する。
【0013】
本発明の装置により、従来型機械加工手段を用いてインサートしての役目を果たす部品の第1の部分を得て本発明のレーザ焼結装置により部品の第2の部分を製作し、他方、一体の最終部品を得るために2つの部品相互間の完全な接合部又は継手を形成可能にすることによって部品全体の製造の最適化が可能である。
【0014】
したがって、製作されるべき部品を平面を介して2つの部分に区分する手段が採用され、その結果、部品の第1の部分を第2の部分との間の接合面をこの平面内に内接させることができるようになっている。
【0015】
この場合、部品の第1の部分を、これを受け入れるようになった基準プレートの凹部内に配置し、インサートのヘッドを形成する部品の第1の部分の接合面をこれが基準プレートの表面と同一平面内に位置するよう配置するだけで十分である。
【0016】
部品の第1の部分及び第2の部分の2つの接合面相互間の溶接は、第1の金属粉末層がレーザビームによって溶解したときに起こり、この溶接は、部品の第1の部分と第2の部分との間の接合面全体にわたって実施される。
【0017】
部品の第2の部分の製作は、レーザ焼結装置により公知の仕方に実施されるのが良い。 一体の最終部品は、全体がレーザ焼結によって製作された部品と同一の特性を有する。しかしながら、その製作費をそれにより著しく減少させることができる。
【0018】
以下の説明は、図1〜図7に基づいて行われる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】先行技術の基準プレートの略図である。
【図2】本発明の基準プレートの略図である。
【図3】本発明のインサートの略図である。
【図4】インサートを嵌め込んだ後の基準プレートの略図である。
【図5】本発明の方法により製作されたモールド部品の略図である。
【図6】本発明の方法により製作されたモールド部品の略図である。
【図7】本発明の基準プレート及びこの基準プレートからの取り出し後における部品の略図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1に示された基準プレートは、公知の先行技術の基準プレートである。このプレートは、レーザ焼結装置の走査手段ができるだけ一定の厚さの第1の金属粉末層を被着させる平らな基準面を有している。この基準面の粗さは、この第1の層の結合を容易にするよう設定される。
【0021】
図2は、本発明の基準プレート4を示しており、この基準プレートには、凹部41,42が形成されている。これら凹部は、図3に示されたインサート11,12の形状に一致した断面を有する。これらインサートは、製作されるべき部品の第1の部分を形成している。さらに、インサート11,12のヘッドは、それぞれ、平面に内接可能な面110,120を有している。
【0022】
一般に、インサート11,12及び凹部41,42の形状は、比較的簡単である。本明細書における説明のための基礎として用いられる本発明の例示の実施形態の場合、例えば、これらインサートは、円柱の母線が表面110又は120に垂直である円筒形の形をしている。しかしながら、より複雑な形状を想定し、凹部をそれに応じて構成することが考えられないわけではない。
【0023】
図4は、インサート11,12を凹部41,42内に配置した後における本発明の方法を目で見て分かることができるようにしている。注目されるように、インサートのヘッドの平面110,120は、この場合、基準プレートの基準面Pと同一平面内に位置する。
【0024】
変形実施形態では、インサートのヘッドは、基準プレートの基準面Pから突き出ても良い。
【0025】
別の変形実施形態では、インサートのヘッドは、基準プレートの基準面Pの下に位置しても良い。
【0026】
別の変形実施形態では、凹部の開口断面とインサートのヘッドの断面は、かなり正確に一致する。これにより、インサートと基準プレートとの間の望ましくない空間中への粉末の漏れが回避される。
【0027】
インサートの材料は、焼結のために用いられる金属粉末と同一種類のものである必要はなく、これにより、特に有利な特性を備えた部品を得ることができる。レーザは、2つの接合面相互間を溶接することにより接合を可能にするために2つの金属を同時に溶解させるのに十分強力であることが必要なだけである。
【0028】
一例を挙げると、融点が1350℃のコバルトを主成分とする金属粉末が融点が1500℃の鉄を主成分とするインサートとの高品質溶接継手を形成する。
【0029】
具体的に説明すると、レーザの侵入深さは、80μm台であることが分かっている。したがって、金属粉末層が或る特定の厚さ、例えば40μmを超えないようにする手段が採用される。この場合、レーザは、500℃を大幅に超える温度まで両方の材料を加熱することにより両方の材料を同時に溶解させるのに十分強力である。
【0030】
インサートをいったんこれらの凹部内に配置すると、レーザ焼結により部品の残部を構成する作業が連続して位置する層を被着させて連続して溶解させることによって公知の仕方で実施されるのが良い。
【0031】
図5及び図6は、本発明の方法により製作可能な部品の例を示している。最終部品31,32を適当な安上がりな手段により製作されてインサートを形成する第1の部分11,12に分割し、部品21,22の第2の部分をレーザ焼結によって製作する。
【0032】
図7は、本発明の方法の最終段階を示しており、この最終段階中、完成状態の一体部品31,32を基準プレート4から取り出す。
【0033】
上述の装置及び方法によって得られる経済的な利点に加えて、インサートを機械加工により得る場合にインサートの良好な製造精度を利用することによっても本発明から利益を得ることができる。特に、インサートは、高い幾何学的精度を備えて製作された支持体内に最終部品31,32を固定する要素となることができる。
【0034】
また、注目されるように、支持プレートを備えた物品を切り出す追加の作業が本発明によって回避される。具体的に説明すると、物品の第1の部分を覆う第1の層の領域だけをレーザにより溶解させる。支持プレートと直接的接触状態にある第1の層の他の領域は、この支持プレートには結合されず、その結果、物品がいったん製作されるとこれら領域を容易に除去することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属物品(31,32)を製造する方法であって、前記物品は、第1の部分(11,12)及び第2の部分(21,22)を有し、前記物品の前記第1の部分は、前記物品の前記第2の部分よりも前に製造され、前記製造方法は、次のステップ、即ち、
前記物品の前記第1の部分(11,12)を基準プレート(4)の少なくとも1つの凹部(41,42)中に挿入するステップと、
連続して位置する金属粉末層を、次のサブステップ、即ち、
第1の金属粉末層を前記基準プレート(4)上に被着させるサブステップ、前記第1の層は、前記物品の前記第1の部分を前記第1の層の一領域で覆うよう所定の厚さを有し、
前記レーザビームを前記物品の前記第1の部分を覆っている前記第1の層の前記領域上に差し向けることにより前記第1の層を選択的に溶解させ、それにより前記領域の前記金属粉末を前記物品の前記第1の部分に結合するサブステップ、及び
他の金属粉末層を選択的に溶解させることにより前記物品(31,32)の前記第2の部分(21,22)の残部を製作するサブステップの実施に従って選択的に溶解させることによりレーザビームを用いて前記物品の前記第2の部分(21,22)を製造するステップと、を備えている、
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記物品の前記第1の部分は、平坦なヘッド(110,120)を有し、前記ヘッドの断面形状は、前記基準プレート(4)の前記凹部(41,42)の断面形状に一致しており、その結果、前記物品の前記第1の部分の前記ヘッドは、前記基準プレート(4)により形成された平面(P)と同一平面内に位置するように構成されている、
請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
前記レーザの出力を前記レーザビームが前記物品の前記第1の部分(11,12)を形成する金属及び前記第1の金属粉末層を同時に溶解させることができるよう調節する、
請求項1又は2記載の製造方法。
【請求項4】
前記第1の金属粉末層の厚さを前記レーザビームが前記物品の前記第1の部分(11,12)を形成する金属及び前記第1の金属粉末層を同時に溶解させることができるよう調節する、
請求項1ないし3のいずれか1項に記載の製造方法。

【図1】
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【図2−3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2013−510235(P2013−510235A)
【公表日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−537356(P2012−537356)
【出願日】平成22年10月29日(2010.10.29)
【国際出願番号】PCT/EP2010/066536
【国際公開番号】WO2011/054772
【国際公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【出願人】(512068547)コンパニー ゼネラール デ エタブリッスマン ミシュラン (169)
【出願人】(508032479)ミシュラン ルシェルシュ エ テクニーク ソシエテ アノニム (499)
【Fターム(参考)】