説明

レース艇用ピット

【課題】部品点数の最少化並びに部品の再利用を図ることで、設置作業性及びメンテナンス性の向上に資するとともに、新設費用及び維持管理費用のコストダウンを実現するレース艇用ピットの提供を図る。
【解決手段】所要長さ、幅及び高さを有するメイン・ハル部11と、該メイン・ハル部11の正面略中央部に突設された所要長さ、幅及び高さを有するセンター・ハル部12と、から構成され、浮力体が充填された気密性を備える中空部を有し且つ上面に浮力調整タンク13が設けられて成るハル部10の上方に、所要高さを有し下面が開口された中空構造であって、前記メイン・ハル部11の正面所定領域と前記センター・ハル部12とを被覆する略T字型の前部デッキ21と、前記メイン・ハル部11の正面所定領域を除く所定領域を被覆する後部デッキ22と、から成るデッキ部20が、着脱自在に被覆・固定されている構成となっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レース艇用ピットに関し、詳しくは、競艇場のスタンド側でスタートライン後方隅部に設けられるレース艇用ピットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
競艇場においてレース艇を並列して係留するため、競艇場のスタンド側でスタートライン後方隅部にレース艇用ピットが設けられている。かかるレース艇用ピットでは、競走前の選手によって、水質や水流、風速等に応じてエンジン(レース艇のモータ)やスクリューを点検・調節する大事な作業が行われる。
【0003】
従来提案されているレース艇用ピットは、大型プラスチック成型品と鋼材とを組み合わせた製品であるため、耐用年数経過後の入替工事が煩雑で、かつ、その際に発生する産業廃棄物の廃棄処分にかかる費用負担が高コストであるとともに処分場所に対応できず、環境問題にも対応できなくなっている。
【0004】
したがって、これら装置全体として維持管理の方法が煩雑かつ高コストであるため、レース艇用ピットのメンテナンスが定期的に実施されずに浮沈化した状態で継続使用がなされており、結果として耐用年数経過後の使用期間が非科学的に延長されているため、極めて危険である。
【0005】
さらに、現行のレース艇用ピットは、市場投入から既に28年も経過しており、理論、技術、設計、市場等が時代の要請に対応した製品とは考えられなくなっている。
【0006】
そしてまた、近年の原材料(石油製品や鉄等)の市場全体が非常に厳しい状況にあり、現状のマーケットに適したコストによる商品開発をする必要がある。
【0007】
(追加)
さらにまた、従来のレース艇用ピットは、その外周にデッキ部とハル部とを固定するためのフランジが突出しており、該突出したフランジの下方にレース艇の外周が収まる状態となっているため、波による水面の上下運動によってレース艇の外周が該フランジに接触してレース艇及びピットの両方にキズや破損が起こり、さらには、レース艇外周とフランジとの間に作業者の手が挟まれて怪我をする危険もあった。
【0008】
【特許文献1】特開平4−354965号公報
【特許文献2】特開平9−239163号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、部品点数の最少化並びに部品の再利用を図ることで、設置作業性及びメンテナンス性の向上に資するとともに、新設費用及び維持管理費用のコストダウンを実現するレース艇用ピットを提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
このような課題を解決するために、本発明は、ハル部とデッキ部とから構成されるレース艇用ピットであって、ハル部は、所要長さ、幅及び高さを有するメイン・ハル部と、該メイン・ハル部の正面略中央部に突設された所要長さ、幅及び高さを有するセンター・ハル部と、から構成され、浮力体が充填された気密性を備える中空部を有し、かつ、上面には浮力調整タンクが設けられて成り、前記メイン・ハル部の上面には、所定間隔を置いて隣接した複数の前記ハル部同士を連結するための連結縦通鋼材を固着するための連結縦通鋼材固着機構が備えられて成り、デッキ部は、前記浮力調整タンクを内包しつつ前記ハル部の上方を被覆すべく所要高さを有し下面が開口された中空構造であって、前記メイン・ハル部の正面所定領域と前記センター・ハル部とを被覆する略T字型の前部デッキと、前記メイン・ハル部の正面所定領域を除く所定領域を被覆する後部デッキと、から成り、緩衝用前面カバーは、前記デッキ部の前端部所定箇所に取り付けられて成り、前記ハル部と前記デッキ部とが着脱自在に構成されている構成となっている。
【0011】
また、本発明は、前記ハル部をガラス繊維強化プラスチック(FRP)とした構成となっている。
【0012】
さらに、本発明は、前記前部デッキに、点検ステップが一体的に備えられている構成を採ることも可能である。
【0013】
またさらに、本発明は、前記緩衝用前面カバーが、緩衝作用と潤滑性を兼ね備えたプラスチック成型品とした構成を採用することもできる。
【0014】
さらにまた、本発明は、競艇場内に設置された支柱にレース艇用ピットを係留するための係留金具を備え、該係留金具は、前記支柱に対し遊動可能に嵌合されるメインフレームから延伸された係留アームの先端に、前記連結縦通鋼材若しくは連結縦通鋼材固着機構に対し着脱自在な着脱機構が備えられた構成を採用し得る。
【0015】
そしてまた、本発明は、屋根材と該屋根材を支持する4本の支持フレームとが一体成型されて成る上屋を備え、レース艇用ピットの先端部及び後端部の所定箇所に設けられた取付機構に該支持フレームが取り付けられることで、所定間隔を置いて隣接したレース艇用ピットの上方を跨るように該上屋が取り付けられて成る構成を採ることも考え得る。
【0016】
そしてさらに、本発明は、前記上屋をガラス繊維強化プラスチック(FRP)とした構成とすることもできる。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係るレース艇用ピットによれば、ハル部とデッキ部とを着脱自在の分離構造とすることにより、ハル部の再利用を可能にするとともに、デッキ部の部品交換を容易にして、全体として耐用年数の延命を図ることが可能であるとともに、産業廃棄物の大幅減少に資する。
【0018】
また、かかるハル部とデッキ部とを分離構造とすることにより、レース艇用ピットの構造上の骨材となる連結縦通鋼材について、2列乃至3列以上の配設が可能となり、大幅な強度向上が可能となる。
【0019】
さらに、現行のレース艇用ピットは、ハル部の浮力調整について、該ハル部内に水を直接入れて行う方式を採用することで、浮力調整の迅速な対応ができないものであったが、本発明に係るレース艇用ピットによれば、ハル部の上面に独立した浮力調整タンクを設けた構造を採用することで、迅速な浮力調整が可能となるとともに前後バランス調整も容易であり、また、夫々独立した浮力調整タンク間をパイプ配管することで、一ヶ所からの水供給による全浮力調整タンクへの水の充填が可能となる。
【0020】
またさらに、現行のレース艇用ピットは、緩衝用前面カバーについて、ゴムローラとセンターピン式を採用することで、損耗が激しく頻繁に交換を要するものであったが、本発明に係るレース艇用ピットによれば、緩衝作用と潤滑性を兼ね備えたプラスチック成型品とした構成を採用することで、損耗の軽減を図り、部品交換の回数を大幅に減らすことが可能となる。
【0021】
さらにまた、現行のレース艇用ピットは、係留金具について、連結縦通鋼材の任意の場所に現場溶接する方式を採用することで、溶接作業が煩雑且つ水上作業となるため困難であるとともに、レース艇用ピットの移設や配置換え等が容易ならず困難であったが、本発明に係るレース艇用ピットの係留金具によれば、連結縦通鋼材に対し着脱自在な着脱機構が備えられているため、該連結縦通鋼材の任意の箇所に自在に固定可能であるとともに取り外しも容易にでき、現場作業の簡素化・スピード化・コストダウンが図れ、移設や配置換え等係留位置の変更も簡単に行うことが可能である。
【0022】
そしてまた、現行のレース艇用ピットは、上屋について、帆布式を採用することで、支柱鋼材の腐食による劣化や帆布の紫外線や風雨による劣化は避けられないものであったが、本発明に係るレース艇用ピットの上屋によれば、屋根材と支持フレームとをFRPにより一体成型することで、かかる劣化の解消に資するとともに、該上屋の色彩を自在に成型することができ、美観向上に資することとなる。
【0023】
さらにまた、前部デッキと点検ステップとの一体化、屋根材と支持フレームとをFRPにより一体成型することによる上屋の一体化等、機能ごとに対応している部品を一体化して全体構造の中に組み込むことで、全体としての部品点数の最少化が実現され、よって組立の簡素化により工事日数が短縮されて、新設費用の低廉化に資することとなる。
【0024】
なお、上記した一連の設置・取付作業やデッキ部上の部品交換等について、ハル部の浮沈化と構造の強化を一体的に図ることで、一々レース艇用ピットを陸上へ引き上げることなく、水面に浮かべたまま水上での作業を可能にする。
【0025】
そして、本発明に係るレース艇用ピットによれば、デッキ部の外周辺がハル部の外周辺と合致する構造であって、両者を固定するためのフランジを有していない構造となっているため、レース艇の外周がフランジに接触してキズや破損が起こったり、作業者の手が挟まれて怪我をする危険もなく、レース艇及びピット両者の延命を図ることができるとともに、作業者の安全を確保することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明に係るレース艇用ピットの実施形態を示す平面図である。
【図2】本発明に係るレース艇用ピットの構成を示す分解側面図である。
【図3】本発明に係る係留金具の実施形態を示す平面図である。
【図4】本発明に係る係留金具の実施形態を示す側面図である。
【図5】本発明に係る上屋の実施形態を示す平面図である。
【図6】本発明に係る上屋の実施形態を示す側面図である。
【図7】本発明に係る上屋の実施形態を示す正面図である。
【図8】従来の点検ステップを示す平面図である。
【図9】従来の係留金具を示す平面図である。
【図10】従来の係留金具を示す側面図である。
【図11】従来の上屋を示す平面図である。
【図12】従来の上屋を示す側面図である。
【図13】従来の上屋を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明に係るレース艇用ピット1の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
なお、本発明は、下記の実施形態に特に限定されることなく、本発明の要旨に逸脱しない範囲で任意に変更することができる。
【実施例1】
【0028】
本発明に係るレース艇用ピット1は、図1乃至図3に示すように、ハル部10と、デッキ部20と、緩衝用前面カバーと、から構成されている。
【0029】
ハル部10は、図1及び図2に示すように、所要長さ、幅及び高さを有するメイン・ハル部11と、該メイン・ハル部11の正面略中央部に突設された所要長さ、幅及び高さを有するセンター・ハル部12と、から構成されている。
該メイン・ハル部11とセンター・ハル部12は、気密性を備えた中空部を有する構造となっており、該中空部内にはウレタンフォームその他発泡樹脂等の浮力体が充填されている。
また、メイン・ハル部11及びセンター・ハル部12からなるハル部10の上面における所定箇所には、少なくとも一以上の浮力調整タンク13がハル部10本体と独立して設けられている。なお図面では、メイン・ハル部11の上面に2つ、センター・ハル部12の上面に1つ、計3つの該浮力調整タンク13を設けた構成について示している。
【0030】
該浮力調整タンク13は、中空構造であって水供給口を備え、該水供給口から水を充填することで、本発明に係るレース艇用ピット1の浮力を自在に調整可能となっている。このとき、図示されたように複数の浮力調整タンク13を設けた場合に、各浮力調整タンク13ごとに夫々水供給口を備える構成も考え得るが、各浮力調整タンク13間をパイプ配管し、いずれか一の浮力調整タンク13にのみ水供給口を備える構成を採用することで、一の水供給口で全浮力調整タンク13内の水供給量を調整する態様も可能である。
なお、該浮力調整タンク13には、水供給口とは別に水排出口を設ける態様も考え得る。
【0031】
また、メイン・ハル部11の上面所定箇所には、連結縦通鋼材32を固着するための連結縦通鋼材固着機構31が備えられている。該連結縦通鋼材32は、所定間隔を置いて隣接した複数のハル部10同士を連結するためのものであって、ボルト・ナットによる螺着等の固定手段により連結縦通鋼材固着機構31上に装着・固定される。
該連結縦通鋼材32は、レース艇用ピット1の構造上の骨材に該当し、配列数によって強度に影響を及ぼすこととなる。本発明に係るレース艇用ピット1は、前記ハル部10と後述するデッキ部20とを分離構造としたことで、図2に示すように、該連結縦通鋼材32を固着するための連結縦通鋼材固着機構31をメイン・ハル部11上面に2列乃至3列以上配列することが可能であって、荒波競争水面を抱えるレース場において、強度の大幅向上に資することとなる。
【0032】
ハル部10の材質については、特に限定するものではないが、従来レース艇用ピット101のように鋼材を使用せず、ガラス繊維強化プラスチック(FRP)のみで成型することが望ましく、耐用年数の延命を図ることができる。このとき、ハル部10本体のみFRP製とする態様も考えられ、あるいは、ハル部10本体及び浮力調整タンク13ともにFRP製とする態様も可能である。
【0033】
デッキ部20は、前記ハル部10の上方を被覆するものであって、図1及び図2に示すように、所要高さを有し且つ下面が開口された中空構造から成り、該中空構造内に前述した浮力調整タンク13を内包しつつハル部10上方を被覆する前部デッキ21と後部デッキ22とで構成されている。
前部デッキ21は、略T字型であって、前記メイン・ハル部11の正面所定領域と前記センター・ハル部12とを被覆する。また、後部デッキ22は、前記前部デッキ21が被覆するメイン・ハル部11の正面所定領域を除いたメイン・ハル部11の所定領域を被覆する。このとき、該デッキ部20の外周辺は、前記ハル部10の外周辺と合致する構造となっている。
なお、デッキ部20には、前記浮力調整タンク13の水供給口に対応する箇所に、連絡口を設けることが好ましく、これによりデッキ部20をハル部10上に被覆した状態のまま、外部から該浮力調整タンク13へ水を供給することができる。
【0034】
前記前部デッキ21には、点検ステップ23が一体的に備えられている態様を採用し得る。すなわち、レース艇用ピット1では、競走前の選手によって、水質や水流、風速等に応じてエンジン(レース艇Rのモータ)やスクリューを点検・調節する大事な作業が行われるが、その際点検ステップ23にエンジンを載置した状態で行われることとなる。従来は、図8に示すような別体の点検ステップ123を、デッキ部20所定箇所に後付けでボルト・ナットによる螺着等により固定する態様を用いていたが、本発明では、前部デッキ21と点検ステップ23を一体成型する態様を採用する。かかる態様を採用することにより、部品点数の減少に資することとなる。
該点検ステップ23は、図1に示すように、前部デッキ21におけるメイン・ハル部11の正面所定領域を被覆する部分とセンター・ハル部12を被覆する部分とでできる左右いずれか一方の角部において、正面に張り出すように備えられる。
なお、該点検ステップ23の上面には、載置されたエンジンを保護すべく、必要に応じてゴム等からなる緩衝用シートが貼着される。
【0035】
緩衝用前面カバーは、レース艇Rの帰還時における衝撃を緩衝するためのものであって、前記デッキ部20の前端部における所定箇所に取り付けられる。かかる緩衝用前面カバーについて、従来はゴムローラとセンターピン式が採用されており、損耗が激しく頻繁に交換を要するものであったが、本発明においては緩衝作用と潤滑性を兼ね備えたプラスチック成型品から成る態様を採用する。これにより、損耗の軽減を図り、部品交換の回数を大幅に減らすことが可能となる。
【0036】
以上の構成要素から成る本発明に係るレース艇用ピット1において、ハル部10とデッキ部20とが着脱自在に構成されている。すなわち、従来は、かかるハル部10とデッキ部20とをフランジを介して接着により固定していたが、本発明では、図1に示すように、ボルト・ナット24による螺着等により着脱自在に固定する態様を採用する。かかる態様を採用することにより、ハル部10からデッキ部20を取り外して交換することが可能となって、上述した通り耐用年数の向上したハル部10のリサイクルを実現することができる。
【実施例2】
【0037】
レース艇用ピット1は、競艇場内に設置された支柱Fに係留される。かかる係留手段として、本発明に係るレース艇用ピット1には係留金具40が備えられている。図3及び図4は、かかる係留金具40の実施形態を示している。
すなわち、該係留金具40は、支柱Fに嵌合されるメインフレーム41と、該メインフレーム41から延伸された係留アーム45と、該係留アーム45の先端に備えられる着脱機構47と、から構成されている。
【0038】
メインフレーム41は、複数のプレート42を組合わせて成り、支柱Fに対し該支柱Fを四方から保持するように嵌合されている。なお、該メインフレーム41を構成する複数のプレート42のうち一のプレート42は、該メインフレーム41を支柱Fに嵌合すべく、脱着プレート43として他のプレート42に対し脱着可能となっている。
このとき、荒波競争水面の波動に合わせて上下動するレース艇用ピット1を係留すべく、支柱Fと接触回転する複数のローラ44がメインフレーム41における任意箇所に備えられており、これによりメインフレーム41は支柱Fに嵌合しつつ遊動可能となっている。
【0039】
係留アーム45は、前記メインフレーム41からハル部10及びデッキ部20方向に延伸され、該メインフレーム41と後述する着脱機構47とを繋ぐものである。該係留アーム45は、前記メインフレーム41を構成するプレート42と一体構造とする態様も考えられ、あるいは、図面に示すように、プレート42とは別体であって該プレート42とボルト・ナット46による螺着等により固定する態様も考え得る。
【0040】
着脱機構47は、前記係留アーム45の先端に備えられており、前記ハル部10に固着された連結縦通鋼材32若しくは該ハル部10に備えられている連結縦通鋼材固着機構31の任意の箇所に固定することができる構造となっている。かかる固定方式は、図示されているようにボルト・ナット48による螺着等の着脱可能な固定方式を採用し、これにより着脱機構47は、連結縦通鋼材32若しくは連結縦通鋼材固着機構31に対して着脱自在となっている。
【0041】
以上の通り構成される係留金具40を採用することにより、現場作業の簡素化・スピード化を図ることが可能となる。すなわち、従来の係留方法は、図9及び図10に示すように、係留金具140を連結縦通鋼材32若しくは連結縦通鋼材固着機構31の任意の箇所に現場溶接して固定する方法であり、溶接作業が煩雑であるとともに当該溶接作業が水上での作業となるため困難であり、さらには、従来レース艇用ピット101の移設や配置換え等が容易ではなかった。これに対し、本発明に係る係留金具40によれば、着脱機構47を連結縦通鋼材32若しくは連結縦通鋼材固着機構31に沿わせつつ任意の箇所に自在に固定可能であるとともに取り外しも容易であって、移設や配置換え等係留位置の変更も簡単に行うことが可能となる。
【実施例3】
【0042】
レース艇用ピット1の上方には、必要に応じて上屋50が設置される。本発明に係る上屋50は、図5乃至図7に示すように、屋根材51と、支持フレーム52と、から構成されている。
【0043】
屋根材51は、レース艇用ピット1の上方を覆うもので、該レース艇用ピット1の前後端を覆えるだけの長さを有し、平板状やアーチ状等任意の形状に成型されて成る。
支持フレーム52は、前記屋根材51を支持するためのものであって、その上端は屋根材51の四隅に夫々位置する。
かかる屋根材51とその四隅に位置する4本の支持フレーム52とは、一体成型されて成る。このとき、該屋根材51と支持フレーム52の材質について、特に限定はないが、FRPにより一体成型されることが望ましい。FRP製とすることにより、腐食や紫外線による劣化を解消するとともに、色彩の自由度が増し美観向上に資する。
【0044】
以上の構成からなる上屋50は、前記支持フレーム52の下端が、レース艇用ピット1の先端部及び後端部の所定箇所に設けられた取付機構に取り付けられる。すなわち、図面に示すように、所定間隔を置いて隣接したレース艇用ピット1の上方を跨るように、該上屋50が取り付けられることとなる。
【0045】
以上の通り構成される上屋50を採用することにより、前方支持フレーム52と後方支持フレーム52との間の空間領域Sが広く確保することが可能となる。すなわち、従来の上屋150は帆布式といって、図11乃至図13に示すように、屋根材151が前側支持フレーム152の前方へ迫り出した構造であって、前方支持フレーム152と後方支持フレーム152との間の空間領域sが狭くなっているとともに、その迫り出した屋根材151を支えるべく補強梁153が必要であり、また、屋根材151が天幕開閉方式であったり、紫外線による帆布の劣化もあり、さらには、支持フレーム152その他フレーム構造体に鋼材が使用されているため腐食による劣化が生じ、上屋150全体として部品点数が非常に多いものであった。これに対し、本発明に係る上屋50によれば、上記従来の問題点を全て解消でき、特に部品点数の最少化が実現され、組立の簡素化を図ることが可能となる。
【実施例4】
【0046】
本発明に係るレース艇用ピット1の現場設置例について、図1に示すように、レース場水面Wにハル部10を複数並べた状態で、メイン・ハル部11上面の連結縦通鋼材固着機構31に連結縦通鋼材32を固着することで、隣接するハル部10同士を連結する。なお、固着すべき連結縦通鋼材32の数については、該当レース場におけるレース艇用ピット1の必要強度に応じて任意に決定される。このとき、隣接ハル部10間に所定間隔を設けて連結され、かかる間隔幅はレース艇Rの幅によって適宜決定される。このとき、センター・ハル部12間の間隔領域h1はレース艇Rの停泊スペースとして機能し、また、メイン・ハル部11間の間隔領域h2はレース艇Rのスクリューが引き起こす高速度水流を逃がすための水流通路として機能する。
ハル部10の連結が完了すると、係留金具40を介して支柱Fとハル部10とを連結することで、レース場における係留が完了する。また、ハル部10にデッキ部20を被覆し、螺着等により両者を固定する。
そして、必要に応じてレース艇用ピット1に上屋50を取り付けることで、最終的に設置は全て完了する。
【0047】
なお、上記現場設置例において、必要であれば連結縦通鋼材32の上方を蓋体で被覆することも可能である。また、隣接するレース艇用ピット1間に設けられている間隔の上方においても、同様に蓋体で被覆することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、レース艇用ピット1の分野において、耐用年数の延命を図ることができるとともに、大幅な強度向上が可能であって、さらには、部品点数の最少化と現場作業の簡素化を実現するという、従来にない優れたレース艇用ピット1を提供するものであり、本発明の産業上の利用可能性は極めて高いものと解する。
【符号の説明】
【0049】
1 レース艇用ピット
10 ハル部
11 メイン・ハル部
12 センター・ハル部
13 浮力調整タンク
20 デッキ部
21 前部デッキ
22 後部デッキ
23 点検ステップ
24 ボルト・ナット
31 連結縦通鋼材固着機構
32 連結縦通鋼材
40 係留金具
41 メインフレーム
42 プレート
43 脱着プレート
44 ローラ
45 係留アーム
46 ボルト・ナット
47 着脱機構
48 ボルト・ナット
50 上屋
51 屋根材
52 支持フレーム
101 レース艇用ピット(従来)
123 点検ステップ(従来)
140 係留金具(従来)
150 上屋(従来)
151 屋根材(従来)
152 支持フレーム(従来)
153 補強梁(従来)
F 支柱
R レース艇
W レース場水面
S 前後支持フレーム間空間領域
s 前後支持フレーム間空間領域(従来)
h1 センター・ハル部間間隔領域
h2 メイン・ハル部間間隔領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハル部と、デッキ部と、緩衝用前面カバーと、から構成されるレース艇用ピットであって、
ハル部は、所要長さ、幅及び高さを有するメイン・ハル部と、該メイン・ハル部の正面略中央部に突設された所要長さ、幅及び高さを有するセンター・ハル部と、から構成され、浮力体が充填された気密性を備える中空部を有し、かつ、上面には浮力調整タンクが設けられて成り、
前記メイン・ハル部の上面には、所定間隔を置いて隣接した複数の前記ハル部同士を連結するための連結縦通鋼材を固着するための連結縦通鋼材固着機構が備えられて成り、
デッキ部は、前記浮力調整タンクを内包しつつ前記ハル部の上方を被覆すべく所要高さを有し下面が開口された中空構造であって、前記メイン・ハル部の正面所定領域と前記センター・ハル部とを被覆する略T字型の前部デッキと、前記メイン・ハル部の正面所定領域を除く所定領域を被覆する後部デッキと、から成り、
緩衝用前面カバーは、前記デッキ部の前端部所定箇所に取り付けられて成り、
前記ハル部と前記デッキ部とが着脱自在に構成されていることを特徴とするレース艇用ピット。
【請求項2】
前記レース艇用ピットにおいて、前記ハル部が、ガラス繊維強化プラスチック製から成ることを特徴とする請求項1に記載のレース艇用ピット。
【請求項3】
前記レース艇用ピットにおいて、前記前部デッキに、点検ステップが一体的に備えられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のレース艇用ピット。
【請求項4】
前記レース艇用ピットにおいて、前記緩衝用前面カバーが、緩衝作用と潤滑性を兼ね備えたプラスチック成型品から成ることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載のレース艇用ピット。
【請求項5】
前記レース艇用ピットにおいて、競艇場内に設置された支柱にレース艇用ピットを係留するための係留金具を備え、該係留金具は、前記支柱に対し遊動可能に嵌合されるメインフレームから延伸された係留アームの先端に、前記連結縦通鋼材若しくは連結縦通鋼材固着機構に対し着脱自在な着脱機構が備えられて成ることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載のレース艇用ピット。
【請求項6】
前記レース艇用ピットにおいて、屋根材と該屋根材を支持する4本の支持フレームとが一体成型されて成る上屋を備え、レース艇用ピットの先端部及び後端部の所定箇所に設けられた取付機構に該支持フレームが取り付けられることで、所定間隔を置いて隣接したレース艇用ピットの上方を跨るように該上屋が取り付けられて成ることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載のレース艇用ピット。
【請求項7】
前記レース艇用ピットにおいて、前記上屋をガラス繊維強化プラスチックとしたことを特徴とする請求項6に記載のレース艇用ピット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−115292(P2012−115292A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−264920(P2010−264920)
【出願日】平成22年11月29日(2010.11.29)
【出願人】(507164249)エンヴァイアンアート株式会社 (3)