レールの防音構造
【課題】簡単な構造で着脱が容易な支持部材によって防音材を簡単に敷設することができるレールの防音構造を提供する。
【解決手段】支持部材7は、防音材6を支持する部材であり、スラブ版2上に非固定状態で設置され、該支持部材7は、レール底部4bの底部下面とスラブ版2のスラブ面2aとの間の隙間に挿入されて該スラブ版2の該スラブ面2aに設置されており、該支持部材7は、レール4の側面と防音材6との間に隙間が形成されるように該防音材6を支持し、かつ左右の該レール4の外側に該防音材6が配置されるように支持しており、該支持部材7は、ボルト又は接着剤などの固定部材によって該スラブ版2の該スラブ面2aに固定されておらず、固定部材を使用せずに該スラブ面2a上に搭載のみされているため、該スラブ版2などの地上敷設物に孔などを開けずに防音材6を簡単に固定することができるようにレールの防音構造を構成する。
【解決手段】支持部材7は、防音材6を支持する部材であり、スラブ版2上に非固定状態で設置され、該支持部材7は、レール底部4bの底部下面とスラブ版2のスラブ面2aとの間の隙間に挿入されて該スラブ版2の該スラブ面2aに設置されており、該支持部材7は、レール4の側面と防音材6との間に隙間が形成されるように該防音材6を支持し、かつ左右の該レール4の外側に該防音材6が配置されるように支持しており、該支持部材7は、ボルト又は接着剤などの固定部材によって該スラブ版2の該スラブ面2aに固定されておらず、固定部材を使用せずに該スラブ面2a上に搭載のみされているため、該スラブ版2などの地上敷設物に孔などを開けずに防音材6を簡単に固定することができるようにレールの防音構造を構成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、レールの振動によって発生する騒音を低減するためのレールの防音構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のレールの防音構造(従来技術1)は、ゴム又は合成樹脂とモルタルとの混合物からなるモルタル系制振材をレール腹部に接着している(例えば、特許文献1参照)。この従来技術1では、レール上を車両が通過するときにこのレールから発生する振動をモルタル系制振材によって抑制し、レールからの騒音を低減している。
【0003】
従来のレールの防音構造(従来技術2)は、鉛などの制振性を有する一対の防音材と、この一対の防音材をそれぞれ保持する一対の金物と、この一対の金物をそれぞれ締め付ける一対の締め付けねじなどを備えている(例えば、特許文献2参照)。この従来技術2では、レール腹部の両側面にそれぞれ防音材を配置し、締め付けねじを締め付けることによって金物を防音材に押し付けて、レール腹部の両側面にそれぞれ防音材を固定している。
【0004】
従来のレールの防音構造(従来技術3)は、磁性粉を含有する高分子粘弾性体層と、この高分子粘弾性体層を拘束する拘束板とが積層された分割構造の磁性複合型制振材によってレールを被覆している(例えば、特許文献3参照)。この従来技術3では、高分子粘弾性体層がレールに密着するように、レールの左右から磁性複合型制振材をそれぞれ装着しており、この磁性複合型制振材によってレールを被覆してレールの振動によって発生する騒音を低減させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭52-109206号公報
【特許文献2】特開平10-152801号公報
【特許文献3】特開平10-159896号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来技術1では、制振材を固定するためにモルタルの接着力を利用するが、この施工を行ううえで、施工前にレールを洗浄する下地処理などが必要になるとともに、施工後モルタルが硬化するまで現場を保持するために一定期間列車が走行できないなど施工が大変である問題点があった。また、従来技術1では、制振効果を高めるためにはモルタル系制振材を厚くする必要があり、厚みが増すと重量も増加するため、モルタル系制振材をレールに接着剤によって強固に固定することができない問題点があった。また、従来技術1では、長期間敷設に伴いモルタルが劣化したり、良好な施工がなされなかった場合などにモルタルが剥離し、離脱したりする危険性も考えられ耐久性と信頼性に欠ける問題点がある。さらに、従来技術1では、一度施工すると容易には離脱することが困難であるとともに、レールに制振材が密着しているためレールを目視で点検することが不可能であり、レールのメンテナンスが困難になるという問題点があった。
【0007】
従来技術2では、一対の防音材をそれぞれ一対の締め付けねじによって締め付けてレールに固定する構造である。このため、防音効果を高めるために防音材を厚くすると重量が増加するため、防音材をレールに締め付けねじによって強固に固定することができない問題点があった。また、この従来技術2では、一定の安全性や信頼性を確保するためには構造が全般的に大掛かりになり、施工が困難になってしまう問題点がある。さらに、従来技術2では、レールに防音材が密着しているためレールを目視で点検することが不可能であり、防音材を外してレールをメンテナンスするための工程が複雑になってしまう問題点があった。
【0008】
従来技術3では、磁性ゴムの磁力吸着力を用いてレールに固定するが、この処置のみでは車両走行に伴い励起されるレールの大きな振動のために、一部又は全部が脱落する危険が想定される。このため、従来技術3では、防音材の外側から治具などを用いて固定する措置を併用すると、磁性ゴムの磁力吸着力を利用して簡便に施工できる利点が著しく損なわれてしまう問題点がある。また、従来技術3では、レールに磁性ゴムが密着しているためレールを目視で点検することが不可能であるとともに、磁性ゴムを外してレールをメンテナンスする際にも煩雑な作業が必要となり、磁性ゴムの易メンテナンス性の利点も損なわれてしまう問題点がある。
【0009】
この発明の課題は、簡単な構造で着脱が容易な支持部材によって防音材を簡単に敷設することができるレールの防音構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明は、以下に記載するような解決手段により、前記課題を解決する。
なお、この発明の実施形態に対応する符号を付して説明するが、この実施形態に限定するものではない。
請求項1の発明は、図1、図7及び図16に示すように、レール(4)の振動によって発生する騒音を低減するレールの防音構造であって、前記騒音を低減する防音材(6;6A,6B)を支持する支持部材(7)を備え、前記支持部材は、前記レールを支持する支持体(2;15)上に非固定状態で設置されることを特徴とするレールの防音構造(5)である。
【0011】
請求項2の発明は、請求項1に記載のレールの防音構造において、前記支持部材は、前記レールの底部下面(4f)と前記支持体の上面(2a;15a)との間の隙間に挿入されてこの支持体の上面に設置されることを特徴とするレールの防音構造である。
【0012】
請求項3の発明は、請求項1又は請求項2に記載のレールの防音構造において、前記防音材は、前記支持体との間の隙間を塞ぐ塞ぎ部(6g;6k)を備えることを特徴とするレールの防音構造である。
【0013】
請求項4の発明は、請求項1又は請求項2に記載のレールの防音構造において、図7に示すように、前記防音材は、前記支持体(15)を支持する道床(16)との間の隙間を塞ぐ塞ぎ部(6j)を備えることを特徴とするレールの防音構造である。
【0014】
請求項5の発明は、図11に示すように、レール(4)の振動によって発生する騒音を低減するレールの防音構造であって、前記騒音を低減する防音材(6)を支持する支持部材(7)を備え、前記支持部材は、前記レールを支持する支持体(15)を支持する道床(16)上に非固定状態で設置されることを特徴とするレールの防音構造(5)である。
【0015】
請求項6の発明は、請求項5に記載のレールの防音構造において、前記支持部材は、前記レールの底部下面(4f)と前記道床の上面との間の隙間に挿入されてこの道床の上面に設置されることを特徴とするレールの防音構造である。
【0016】
請求項7の発明は、請求項5又は請求項6に記載のレールの防音構造において、前記防音材は、前記道床との間の隙間を塞ぐ塞ぎ部(6j)を備えることを特徴とするレールの防音構造である。
【0017】
請求項8の発明は、請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載のレールの防音構造において、図1、図7及び図16に示すように、前記支持体(2)上に前記支持部材を位置決めする位置決め部材(8)を備えることを特徴とするレールの防音構造である。
【0018】
請求項9の発明は、請求項5から請求項7までのいずれか1項に記載のレールの防音構造において、図11に示すように、前記道床(16)上に前記支持部材を位置決めする位置決め部材(8)を備えることを特徴とするレールの防音構造である。
【0019】
請求項10の発明は、請求項8又は請求項9に記載のレールの防音構造において、図1、図7、図11及び図16に示すように、前記支持部材は、前記レールの長さ方向への前記防音材の移動を阻止し、前記位置決め部材は、前記レールの幅方向への前記防音材及び前記支持部材の移動を阻止することを特徴とするレールの防音構造である。
【0020】
請求項11の発明は、請求項8から請求項10までのいずれか1項に記載のレールの防音構造において、図5、図15、図20及び図22〜図26に示すように、前記位置決め部材は、レール底部(4b)の両側側面(4g)を挟み込むことによって前記支持部材を位置決めすることを特徴とするレールの防音構造である。
【0021】
請求項12の発明は、請求項8から請求項11までのいずれか1項に記載のレールの防音構造において、図5、図15、図20及び図22〜図25に示すように、前記位置決め部材は、前記レール底部の一方の側面を押圧する第1の押圧部材(9)と、前記レール底部を前記第1の押圧部材との間で挟み込むように、このレール底部の他方の側面を押圧する第2の押圧部材(10)とを備えることを特徴とするレールの防音構造である。
【0022】
請求項13の発明は、請求項12に記載のレールの防音構造において、前記位置決め部材は、前記第1及び/又は前記第2の押圧部材を前記支持部材に着脱自在に固定する固定部材(11,12)を備えることを特徴とするレールの防音構造である。
【0023】
請求項14の発明は、請求項12又は請求項13に記載のレールの防音構造において、前記押圧部材は、前記レールと前記支持部材との間を電気的に絶縁するとともにこれらの間に伝わる振動を低減することを特徴とするレールの防音構造である。
【0024】
請求項15の発明は、請求項8から請求項14までのいずれか1項に記載のレールの防音構造において、図26に示すように、前記位置決め部材は、前記レール底部の一方の側面を押圧する押圧部材(9)と、前記レール底部を前記押圧部材との間で挟み込むように、このレール底部の他方の側面と前記支持部材の上面との間に差し込まれる楔部材(20)とを備えることを特徴とするレールの防音構造である。
【0025】
請求項16の発明は、請求項15に記載のレールの防音構造において、前記位置決め部材は、前記押圧部材を前記支持部材に着脱自在に固定する固定部材(12)を備えることを特徴とするレールの防音構造である。
【0026】
請求項17の発明は、請求項15又は請求項16に記載のレールの防音構造において、前記押圧部材及び前記楔部材は、前記レールと前記支持部材との間を電気的に絶縁するとともにこれらの間に伝わる振動を低減することを特徴とするレールの防音構造である。
【0027】
請求項18の発明は、請求項1から請求項17までのいずれか1項に記載のレールの防音構造において、図1、図7及び図11に示すように、前記支持部材は、前記レールの継目部分以外の部分の側面と前記防音材(6)との間に隙間(Δ1)が形成されるようにこの防音材を支持することを特徴とするレールの防音構造である。
【0028】
請求項19の発明は、請求項1から請求項18までのいずれか1項に記載のレールの防音構造において、図16に示すように、前記支持部材は、前記レールの継目部分の側面と前記防音材(6A,6B)との間に隙間(Δ2)が形成されるようにこの防音材を支持することを特徴とするレールの防音構造である。
【0029】
請求項20の発明は、請求項1から請求項19までのいずれか1項に記載のレールの防音構造において、図2、図8及び図12に示すように、前記支持部材は、前記レールの長さ方向に沿って前記防音材(6)がレール締結装置(3)間に断続して配置されるようにこの防音材を支持することを特徴とするレールの防音構造である。
【0030】
請求項21の発明は、請求項1から請求項19までのいずれか1項に記載のレールの防音構造において、図17に示すように、前記支持部材は、前記レールの長さ方向に沿って前記防音材(6A,6B)がレール締結装置(3)よりも外側に連続して配置されるようにこの防音材を支持することを特徴とするレールの防音構造である。
【0031】
請求項22の発明は、請求項1から請求項21までのいずれか1項に記載のレールの防音構造において、図1、図7、図11及び図16に示すように、前記支持部材は、前記レールの外側及び/又は内側に前記防音材が配置されるようにこの防音材を支持することを特徴とするレールの防音構造である。
【0032】
請求項23の発明は、請求項1から請求項22までのいずれか1項に記載のレールの防音構造において、図5、図15、図20及び図22〜図26に示すように、前記支持部材と前記防音材との間に伝わる振動を低減する防振部材(13,14)を備えることを特徴とするレールの防音構造である。
【0033】
請求項24の発明は、請求項1から請求項23までのいずれか1項に記載のレールの防音構造において、図5、図15、図20及び図22〜図26に示すように、前記防音材は、内側に前記騒音を吸収する吸音材(6a)を有し、外側に前記振動を低減する制振材(6b)を有することを特徴とするレールの防音構造である。
【0034】
請求項25の発明は、請求項24に記載のレールの防音構造において、図20及び図22〜図25に示すように、前記吸音材は、レール頭部(4a)と対向する部分の厚さがレール底部(4b)と対向する部分の厚さよりも厚いことを特徴とするレールの防音構造である。
【0035】
請求項26の発明は、請求項24又は請求項25に記載のレールの防音構造において、図25に示すように、前記吸音材は、前記レールとの間の隙間から外部に放射する騒音を吸収することを特徴とするレールの防音構造である。
【発明の効果】
【0036】
この発明によると、簡単な構造で着脱が容易な支持部材によって防音材を簡単に敷設することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】この発明の第1実施形態に係るレールの防音構造の斜視図である。
【図2】この発明の第1実施形態に係るレールの防音構造の平面図である。
【図3】この発明の第1実施形態に係るレールの防音構造の側面図である。
【図4】図2のIV方向から見た側面図であり、(A)は吸音材が切欠部を有する場合の側面図であり、(B)は吸音材が切欠部を有さない場合の側面図である。
【図5】図2のV-V線で切断した状態を示す断面図である。
【図6】図2のVI-VI線で切断した状態を示す断面図である。
【図7】この発明の第2実施形態に係るレールの防音構造の斜視図である。
【図8】この発明の第2実施形態に係るレールの防音構造の平面図である。
【図9】この発明の第2実施形態に係るレールの防音構造の側面図である。
【図10】図8のX方向から見た側面図であり、(A)は吸音材が切欠部を有する場合の側面図であり、(B)は吸音材が切欠部を有さない場合の側面図である。
【図11】この発明の第3実施形態に係るレールの防音構造の斜視図である。
【図12】この発明の第3実施形態に係るレールの防音構造の平面図である。
【図13】この発明の第3実施形態に係るレールの防音構造の側面図であり、(A)は吸音材が切欠部を有する場合の側面図であり、(B)は吸音材が切欠部を有さない場合の側面図である。
【図14】図12のXIV方向から見た側面図である。
【図15】図12のXV-XV線で切断した状態を示す断面図である。
【図16】この発明の第4実施形態に係るレールの防音構造の斜視図である。
【図17】この発明の第4実施形態に係るレールの防音構造の平面図である。
【図18】この発明の第4実施形態に係るレールの防音構造の側面図である。
【図19】図17のXIX方向から見た側面図であり、(A)は吸音材が切欠部を有する場合の側面図であり、(B)は吸音材が切欠部を有さない場合の側面図である。
【図20】図17のXX-XX線で切断した状態を示す断面図である。
【図21】図17のXXI-XXI線で切断した状態を示す断面図である。
【図22】この発明の第5実施形態に係るレールの防音構造の断面図である。
【図23】この発明の第6実施形態に係るレールの防音構造の断面図である。
【図24】この発明の第7実施形態に係るレールの防音構造の断面図である。
【図25】この発明の第8実施形態に係るレールの防音構造の断面図である。
【図26】この発明の第9実施形態に係るレールの防音構造の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
(第1実施形態)
以下、図面を参照して、この発明の第1実施形態について詳しく説明する。
図1は、この発明の第1実施形態に係るレールの防音構造の斜視図である。図2は、この発明の第1実施形態に係るレールの防音構造の平面図である。図3は、この発明の第1実施形態に係るレールの防音構造の側面図である。図4は、図2のIV方向から見た側面図であり、図4(A)は吸音材が切欠部を有する場合の側面図であり、図4(B)は吸音材が切欠部を有さない場合の側面図である。図5は、図2のV-V線で切断した状態を示す断面図である。図6は、図2のVI-VI線で切断した状態を示す断面図である。
【0039】
図2に示す車輪1は、左右一対のレール4とそれぞれ回転接触する部材である。車輪1は、図2、図5及び図6に示すように、レール頭部4aの頭頂面4dと接触して摩擦抵抗を受ける踏面1aと、脱輪を防止するために車輪1の外周部に連続して形成されたフランジ面1bなどを備えている。
【0040】
図1〜図6に示すスラブ版2は、レール4を支持する支持体(支承体)である。スラブ版2は、矩形平板状のプレキャストのコンクリート版からなる軌道スラブであり、有道床軌道の保守作業を軽減するために道床とまくらぎとを一体化させた省力化軌道の一種であるスラブ軌道区間において、路盤コンクリートとレール4との間に設置されている。スラブ版2は、レール締結装置3のタイプレート3aが取り付けられるスラブ面2aなどを備えている。
【0041】
図1〜図3及び図6に示すレール締結装置3は、レール4をスラブ版2に締結する装置である。レール締結装置3は、図6に示すように、タイプレート3aと、締結ばね3bと、締結ボルト3c,3eと、締結ナット3d,3fと、軌道パッド3gと、調節パッキン3hと、調整鋼板3iと、絶縁板3jと、座金3kと、ばね座金3mと、平座金3n,3pと、絶縁カラー3qと、カバープレート3rなどを備えている。タイプレート3aは、レール4とスラブ版2との間に挿入されてレール4の横方向の移動を規制する部材であり、締結ばね3bはレール4のレール底部4bの底部上面4eを押さえ付けて締結する部材である。締結ボルト3cは、締結ばね3bを締め付ける部材であり、締結ナット3dはこの締結ボルト3cに締結される部材である。締結ボルト3eは、スラブ版2に埋め込まれた埋込栓の雌ねじ部と噛み合ってタイプレート3aをスラブ版2に固定する部材であり、締結ナット3fはこの締結ボルト3eに締結される部材である。軌道パッド3gは、レール4とスラブ版2との間に挿入する絶縁性の弾性体であり、調節パッキン3hはレール4とスラブ版2との間に挿入してレール4の上下位置を調節する部材である。調整鋼板3iは、スラブ版2とタイプレート3aとの間に挿入されてレール4の上下位置を調整する部材であり、絶縁板3jはスラブ版2と調整鋼板3iとの間に挿入されてこれらの間を電気的に絶縁する部材であり、座金3kは締結ばね3bと締結ナット3dとの間に挟み込まれる部材である。ばね座金3mは、締結ナット3fの緩みを防止する部材であり、平座金3nは締結ナット3fとばね座金3mとの間に挟み込まれる部材であり、平座金3pはばね座金3mと絶縁カラー3qとの間に挟み込まれる部材である。絶縁カラー3qは、レール4とスラブ版2とを電気的に絶縁する部材であり、平座金3pとカバープレート3rとの間に挿入されており、カバープレート3rはタイプレート3aと絶縁カラー3qとの間に挿入される部材である。レール締結装置3は、レール底部4bとタイプレート3aとの間に軌道パッド3gを挟み込み、締結ばね3bによってレール4をスラブ版2に締結して、鉄道車両が通過する際に発生する振動を吸収する。
【0042】
図2に示すレール4は、鉄道車両の車輪1を支持し案内してこの鉄道車両を走行させる部材である。レール4は、列車が200km/h以上の高速度で走行する新幹線又は新幹線以外の列車が走行する在来線の線路の一部を構成しており、所定の間隔をあけて継目部分で端部を突き合わせた状態で長さ方向に連続して敷設されている。レール4は、図4及び図5に示すように、レール頭部4aと、レール底部(フランジ部)4bと、レール腹部(ウェブ部)4cなどを備えている。レール頭部4aは、鉄道車両の車輪1と接触する部分であり、車輪1を直接支持する頭頂面(頭部上面)4dなどを備えている。レール底部4bは、レール締結装置3によってスラブ版2上に設置されて取り付けられる部分であり、レール締結装置3の締結ばね3bによって押さえ付けられる底部上面4eと、スラブ版2上に設置される底部下面4fと、レール底部4bの左右の側面部分を構成する底部側面4gなどを備えている。レール腹部4cは、レール頭部4aとレール底部4bとを繋ぐ部分であり、レール頭部4aに作用する輪重及び押圧をレール底部4bに伝達する。
【0043】
図1〜図6に示す防音構造5は、レール4の振動によって発生する騒音を低減する構造である。防音構造5は、防音材6と、支持部材7と、位置決め部材8と、防振部材13,14などを備えている。防音構造5は、レール4上を車両が通過するときに発生する振動によってこのレール4から放射する転動騒音を低減する。防音構造5は、図1及び図2に示すように、左右の防音材6を前後の支持部材7によって支持しており、左右の防音材6の一端部を前側の支持部材7が両端部で支持し、左右の防音材6の他端部を後側の支持部材7が両端部で支持している。
【0044】
図1〜図6に示す防音材6は、レール4の振動によって発生する騒音を低減する部材である。防音材6は、レール4からの騒音を遮る遮音板として機能し、図2に示すようにレール4の外側側面との間に隙間Δ1をあけて、レール4の外側に配置されており、レール4の長さ方向に沿ってレール4と平行に配置されている。ここで、隙間Δ1は、2mm未満であるとレール点検時などにレール4の側面を目視で検査することが困難になり、5mmを超えると外部に放射する騒音が増加して防音効果が低減するため、2mm以上5mm以下に設定することが好ましい。防音材6は、図5及び図6に示すように、レール4及びレール締結装置3から離間して電気的に絶縁されている。防音材6は、鉄道車両が安全に走行するために建築物などが入ってはならない軌道上に確保された空間である建築限界Lを超えない範囲内に配置されており、防音材6の上面6dはレール頭部4aの頭頂面4dと同じ高さである。防音材6は、図1〜図6に示すように、内側(レール4と対向する側)に吸音材6aを有し、外側(レール4と対向する側とは反対側(吸音材6aの外側側面))に制振材6bを有する。防音材6は、吸音材6aと制振材6bとを一体成形又は接着して形成されており、短時間に安価で製造が容易である一体成形が好ましい。防音材6は、図1〜図4に示すように、隣り合うレール締結装置3間の間隔と略同じ長さで形成されている。防音材6は、図4に示す端面6cと、図4〜図6に示す上面6dと、図4に示す下面6eと、図4〜図6に示す長孔6fと、塞ぎ部6gなどを備えている。
【0045】
図1〜図6に示す吸音材6aは、騒音を吸収する部材であり、制振材6bよりも剛性の低い弾性体である。吸音材6aは、剛体よりも相対的に軟質の軟質弾性材であり、例えば常温でヤング率が1.0×103MPa以下であり、望ましくは粘性も兼ね備え、損失係数が0.05以上であり、厚みが1〜500mm程度(粘弾性材の場合には10〜30mm程度)である。このような材料としては、天然ゴム、スチレンブタジエンゴム、ブチルゴム、エチレンプロピレンゴム(EPDM)、クロロプレンゴム、フッ素ゴム、シリコンゴム、ウレタンゴム、ポリノルボルネンゴム、アクリルゴムなどの加硫ゴム、スチレン系、オレフィンゴム系、塩化ビニル系のTPE(熱可塑エラストマ)、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、塩化ビニル、エチレン酢酸ビニル共重合(EVA)樹脂などの熱可塑性樹脂、シリコンなどのゲル、酢酸ビニル系、EVA系、アクリル樹脂系などのエマルジョン、ゴムラテックス、セラミックス、発泡石膏などの多孔質材、金属繊維などを適用することができる。吸音材6aは、レール4からの騒音を吸収する吸音機能を有する材料であり、このような吸音材6aとしては柔軟な弾性材又は柔軟な粘弾性材などである。柔軟な弾性材としては、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの熱可塑性樹脂による有機質繊維体、ロックウール、グラスウールなどが好ましい。柔軟な粘弾性材としては、ウレタン、EPDM、クロロプレンなどの発泡体が好ましく、このような発泡体は吸音制振機能を有する粘弾性体であるため、吸音効果とともに制振効果も期待することができる。
【0046】
吸音材6aは、内側吸音材とこの内側吸音材の表面を被覆する外側吸音材とによっても形成可能であり、内側吸音材は外側吸音材よりも軽い軽量吸音材であり、外側吸音材の内部に充填されている。内側吸音材は、外側吸音材によって完全に吸収されずにこの外側吸音材を通過する騒音を吸収する。このような内側吸音材としては、例えば、吸音性に優れた高性能の無機質繊維系、金属繊維系、有機発泡系又はこれらの任意の組み合わせからなる軽量吸音材である。このような無機質繊維系の吸音材としては、グラスウール、グラスファイバ又はロックウールなどであり、金属繊維系の吸音材としてはアルミニウム繊維、ステンレス繊維又は鉄系合金繊維などであり、有機発泡系の吸音材としてはゴムスポンジ、プラスチックフォーム、ウレタン、エチレンプロピレンゴム(EPDM)、クロロプレン、ポリウレタンフォーム、発泡ポリスチロール又は天然高分子多孔質体などである。内側吸音材としては、グラスウール、グラスファイバ又はロックウールなどの無機質繊維をフェノール樹脂などで結合し成形した軽量で吸音性能に優れた軽量吸音材が特に好ましい。外側吸音材は、内側吸音材よりも硬く耐候性及び電気絶縁性を有する多孔質吸音材である。外側吸音材は、内側吸音材よりも重い吸音材であり、列車の走行に伴って舞い上がった小石やこの列車から落下した着氷雪などが衝突しても破損しないような硬度を有する多孔質吸音材である。外側吸音材は、無機質粒子を樹脂結合剤によって結合して成形された無機質粒子結合材である。このような無機質粒子としては、例えば、パーライト、珪石粉砕物、珪砂、石灰石粉砕物、砂利、鉱物繊維製造時に発生する粒状物(ショット)、陶磁器粉砕物、ガラスの粉砕物又はこれらの任意の組み合わせからなる混合物などである。無機質粒子は、平均粒径が0.5よりも小さいと微細な気孔を有する成型体しか得られず、吸音特性が好ましくなく、保水性が大きくなって雨水を浴びると長時間吸音性能が低下するため、平均粒径が0.5〜3mm程度のものが好ましい。樹脂結合剤としては、例えば、遮光性無機顔料及びシランカップリング剤を含有する有機結合剤などである。このような樹脂結合剤としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、キシレン樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂又はこれらの任意の組み合わせからなる反応性樹脂又は熱硬化性樹脂などの樹脂バインダである。
【0047】
吸音材6aの厚さは、10mmを下回ると固有振動数が高くなり、100mmを超えるとレール4との間に十分な間隔を確保することが困難になるため、10〜100mmに設定することが好ましく、50mmに設定することが特に好ましい。吸音材6aは、図4に示すように、制振材6bと略同じ長さ及び略同じ幅で形成された板状部材であり、図5及び図6に示すように断面が長方形に形成されている。吸音材6aは、図4(A)に示すように、支持部材7及び位置決め部材8との干渉を防ぐ切欠部6hを備えており、この切欠部6hはこれらの支持部材7及び位置決め部材8を避けるように防音材6の下縁部寄りの両端部に形成されている。吸音材6aは、図4(B)に示すように、図4(A)に示す切欠部6hを省略して、支持部材7及び位置決め部材8を避けるように制振材6bの長さよりも短く両端部を直線状に形成可能である。
【0048】
図1〜図6に示す制振材6bは、振動を低減する部材であり、吸音材6aよりも剛性の高い弾性体である。制振材6bは、例えば、金属又はヤング率が3.0×103MPa以上の剛体などからなる剛弾性体(高剛性弾性体)によって形成されている。制振材6bは、レール4の振動を抑制する制振機能を有する硬質弾性材によって形成されている。このような制振材6bとしては、ゴム層と金属板とからなる薄板状の樹脂積層型の制振鋼板(ニチアス株式会社製のメタラミネ(表品名))、株式会社神戸製鋼所製のダンプレ(表品名))、クロム、鉛などが配合された鋼系の制振合金、亜鉛などが配合されたアルミ系の制振合金、又はアスファルト系若しくはアクリル系、クロロプレン系などの制振塗料が塗布された金属板などが好ましい。制振材6bには、レール4と対向する側の表面に吸音材6aを接着剤などによって貼り付け固定するときには、吸音材6aとの間に接着材層が形成されている。この接着材層としては、エポキシ樹脂系、シアノアクリレート系、アクリル樹脂系、ウレタン樹脂系などの反応型接着剤、酢酸ビニル樹脂系接着剤、変性アクリル樹脂系などのエマルジョン型接着剤、クロロプレンやシリコンなどの合成ゴム型接着剤、エラストマー系、エチレン酢酸ビニル共重合(EVA)系などのホットメルト型接着剤などによって形成することが好ましい。制振材6bは、吸音材6aが直射日光に曝されるのを防ぎ紫外線による劣化を抑制する。制振材6bの厚さは、0.5mmを下回ると遮音性能が低下し、10mmを超えると曲げ剛性や施工性が低下するとともに重量が増し、レール4との間に十分な間隔を確保することが困難になるため、0.5〜10mmに設定することが好ましく、0.8〜0.9mmに設定することが特に好ましい。制振材6bは、図5及び図6に示すように、外観が略L字状の部材であり、制振材6bの先端面はレール頭部4aの側面との間に隙間Δ1をあけて対向している。制振材6bは、図4(A)(B)に示すように、支持部材7との干渉を防ぐ切欠部6iを備えており、この切欠部6iはこの支持部材7を避けるように防音材6の下縁部寄りの両端部に形成されている。切欠部6iは、図3及び図4に示すように、レール4の側面方向から見たときに外観が凹状に形成されており、図3に示すように支持部材7の上面及び側面と接触している。切欠部6iは、隣り合う支持部材7の間隔と略同じ間隔で形成されており、切欠部6iの長さは支持部材7の幅よりも僅かに長く形成されており、切欠部6iの高さは支持部材7の厚さよりも僅かに短く形成されている。
【0049】
図4に示す端面6cは、防音材6の長さ方向の両端分であり平面状に形成されている。図1〜図6に示す上面6dは、防音材6の長さ方向と直交する方向の上部であり、図5及び図6に示すように制振材6bの上部を略90°折り曲げて形成された平面状の部分である。図4に示す下面6eは、防音材6の長さ方向と直交する方向の下部であり平面状に形成されている。図4に示す長孔6fは、制振材6bを貫通する貫通孔であり、制振材6bの下縁部寄りの両端部に形成されている。
【0050】
図1及び図3〜図5に示す塞ぎ部6gは、スラブ版2の間の隙間を塞ぐ部分である。塞ぎ部6gは、スラブ版2のスラブ面2aと防音材6の下面6eとの間の隙間から騒音が放射するのを防止する防音部として機能するとともに、スラブ版2と防音材6との間を電気的に絶縁しこれらの間に伝わる振動を低減する絶縁防振部としても機能する。塞ぎ部6gは、図3及び図4に示すように、外観が帯状の部材であり、図5に示すように防音材6の制振材6bの厚さと略同じ厚さで形成されているとともに、図4に示すように隣り合う切欠部6h間の距離と略同じ長さで形成されており、制振材6bの下縁部に接着剤などによって固定されている。塞ぎ部6gは、スラブ版2のスラブ面2aに凹凸(不陸)があるときにこの凹凸を吸収可能な電気絶縁性及び弾性を有する軟質ゴム又は発泡ゴムなどの不陸調整用パッキンであり、スラブ面2aに押圧されることによって弾性変形してこのスラブ面2aと密着する。
【0051】
図1〜図6に示す支持部材7は、防音材6を支持する部材であり、スラブ版2上に非固定状態で設置されている。支持部材7は、図5に示すように、レール底部4bの底部下面4fとスラブ版2のスラブ面2aとの間の隙間に挿入されてこのスラブ版2のスラブ面2aに設置されている。支持部材7は、図2に示すように、レール4の継目部分(継目区間)以外の部分(一般区間)の側面と防音材6との間に隙間Δ1が形成されるようにこの防音材6を支持しており、左右のレール4の外側に防音材6が配置されるように支持している。支持部材7は、図1及び図2に示すように、レール4の長さ方向に沿って防音材6がレール締結装置3間に断続して配置されるようにこの防音材6を支持している。支持部材7は、スラブ版2のスラブ面2a上に設置されたときに、左右のレール4の長さ方向において隣り合うレール締結装置3のタイプレート3aの互に対向する側の側面と接触するように間隔をあけて平行に配置されている。図2に示すように、支持部材7の長さは左右のレール4の間隔よりも長く形成されており、図5に示すように支持部材7の厚さはレール底部4bの底部下面4fとスラブ版2のスラブ面2aとの間の隙間よりも薄く形成されている。支持部材7は、列車通過時に発生するレール4の振動を遮断するように、スラブ版2上に設置されたときにはレール底部4bの底部下面4fとこの支持部材7の上面との間に隙間を形成している。支持部材7は、例えば、絶縁性を有する金属又は合成樹脂であり、外観が長方形状(長板状)の固定用板である。支持部材7は、ボルト又は接着剤などの固定部材によってスラブ版2のスラブ面2aに固定されておらず、固定部材を使用せずにスラブ面2a上に搭載のみされている。支持部材7は、図5に示す設置部7aと、図1〜図3に示す移動阻止部7bなどを備えている。
【0052】
図5に示す設置部7aは、スラブ版2のスラブ面2a上に支持部材7を設置するための部分である。設置部7aは、支持部材7の下面に形成された平坦面である。図1〜図3に示す移動阻止部7bは、レール4の長さ方向に支持部材7が移動するのを阻止するための部分である。移動阻止部7bは、レール締結装置3のタイプレート3aの側面と接触するように、支持部材7の側面に形成された平坦面である。移動阻止部7bは、図1及び図2に示すように、レール4の長さ方向において隣り合うタイプレート3aの側面と接触することによってレール4の長さ方向への支持部材7の移動を阻止するストッパ部として機能している。
【0053】
図1、図2及び図5に示す位置決め部材8は、スラブ版2上に支持部材7を位置決めする部材であり、このレール4の幅方向(長さ方向と交差する方向)への防音材6及び支持部材7の移動を阻止している。位置決め部材8は、図5に示すように、レール底部4bの両側の底部側面4gを挟み込むことによって支持部材7を位置決めする。位置決め部材8は、防音材6とレール4の側面との間の隙間Δ1が所定値になるように支持部材7をレール4に位置調整可能に位置決めする。位置決め部材8は、レール4の長さ方向と交差する方向への防音材6及び支持部材7の移動を阻止するストッパ部としても機能している。位置決め部材8は、図5に示すように、押圧部材9,10と固定部材11,12などを備えている。
【0054】
押圧部材9は、レール底部4bの一方の底部側面(外側底部側面)4gを押圧する部分である。押圧部材10は、レール底部4bを押圧部材9との間で挟み込むように、このレール底部4bの他方の底部側面(内側底部側面)4gを押圧する部分である。押圧部材9,10は、レール4と支持部材7との間を電気的に絶縁するとともにこれらの間に伝わる振動を低減する。押圧部材9,10は、図5に示すように、いずれも同一構造であり、支持部材7と略同じ幅に形成されており外観が板状に形成されている。押圧部材9,10は、例えば、レール4と防音材6との間の隙間Δ1を調整するための隙間調整部材(スペーサ)として機能し、厚さの異なるものが予め複数存在し、隙間Δ1の設定値に応じて任意のものを選択し固定部材11,12の押圧面11d,12dとレール底部4bの底部側面4gとの間に装着される。押圧部材9,10は、例えば、電気絶縁性及び弾性を有するとともに列車通過時にレール4から伝わる衝撃を緩和する緩衝ゴム(防振ゴム)などの弾性体であり、レール底部4bの底部側面4gに押圧されることによって弾性変形してこの底部側面4gと密着する。
【0055】
固定部材11は、押圧部材9を支持部材7に着脱自在に固定するとともに防音材6を支持部材7に着脱自在に固定する部分である。固定部材11は、受け部材11aと、締結部材11e,11jなどを備えている。受け部材11aは、制振材6b及び押圧部材9を受ける部分であり、断面がU字状の溝形鋼などを支持部材7と略同じ幅に切断して形成した止め金具である。受け部材11aは、長孔11b,11cと押圧面11dなどを備えている。長孔11bは、防音材6を上下方向に位置調整可能にするためにレール4の高さ方向に長く形成された貫通孔であり、受け部材11aの一対の側板部のうちレール4から遠い側の側板部に形成されている。長孔11cは、防音材6を水平方向に位置調整可能にするためにレール4の幅方向に長く形成された貫通孔であり、受け部材11aの底板部に形成されている。押圧面11dは、レール底部4bの底部側面4gに向けて押圧部材9を押圧する部分であり、受け部材11aの一対の側板部のうちレール4に近い側の側板部の表面に形成されており、押圧面11dには押圧部材9の背面が密着している。締結部材11eは、制振材6bと受け部材11aとを締結する部分である。締結部材11eは、長孔6f,11bを貫通する締結ボルト11fと、この締結ボルト11fに装着される締結ナット11gと、締結ボルト11fと制振材6bとの間に挟み込まれる座金11hと、締結ナット11gと受け部材11aとの間に挟み込まれる座金11iなどを備えている。締結部材11jは、支持部材7と受け部材11aとを締結する部分である。締結部材11jは、支持部材7の端部に形成された雌ねじ部11kと、長孔11c,13aを貫通し雌ねじ部11kと噛み合う雄ねじ部を有する締結ボルト11mと、この締結ボルト11mと受け部材11aとの間に挟み込まれる座金11nなどを備えている。
【0056】
固定部材12は、押圧部材10を支持部材7に着脱自在に固定する部分である。固定部材12は、受け部材12aと、締結部材12jなどを備えている。受け部材12aは、押圧部材10を受ける部分であり、断面がL字状の山形鋼などを支持部材7と略同じ幅に切断して形成した止め金具である。受け部材12aは、長孔12cと押圧部12dなどを備えている。長孔12cは、受け部材12aの側板部に形成されている。長孔12cは、防音材6を水平方向に位置調整可能にするためにレール4の幅方向に長く形成された貫通孔であり、受け部材12aの底板部に形成されている。押圧面12dは、レール底部4bの底部側面4gに向けて押圧部材10を押圧する部分であり、受け部材12aの側板部の表面に形成されており、押圧面12dには押圧部材10の背面が密着している。締結部材12jは、支持部材7と受け部材12aとを締結する部分である。締結部材12jは、支持部材7の雌ねじ部11kが形成されている側とは反対側の端部に形成された雌ねじ部12kと、長孔12c,14aを貫通し雌ねじ部12kと噛み合う雄ねじ部を有する締結ボルト12mと、この締結ボルト12mと受け部材12aとの間に挟み込まれる座金12nなどを備えている。
【0057】
図5に示す防振部材13,14は、防音材6と支持部材7との間に伝わる振動を低減する部材であり、防振部材13は受け部材11aと支持部材7との間に挟み込まれており、防振部材14は受け部材12aと支持部材7との間に挟み込まれている。防振部材13,14は、防音材6と支持部材7との間を電気的に絶縁するとともにこれらの間に伝わる振動を低減する絶縁防振部として機能する。防振部材13,14は、例えば、電気絶縁性及び弾性を有する外観が板状の防振ゴムなどであり、受け部材11a,12aと支持部材7との間で押圧されることによって弾性変形してこの受け部材11a,12aと支持部材7とに密着する。防振部材13,14は、長孔13a,14aなどを備えており、長孔13a,14aは防音材6を水平方向に位置調整可能にするためにレール4の幅方向に長く形成された貫通孔であり、受け部材11a,12a側の長孔11c,12cと同じ長さで形成されている。
【0058】
次に、この発明の第1実施形態に係るレールの防音構造の装着方法を説明する。
図1及び図2に示す左右一対のレール4のレール底部4bとスラブ版2のスラブ面2aとの間の隙間に、レール4の外側から内側に向かって支持部材7を挿入する。このとき、レール4の長さ方向で隣り合うレール締結装置3のタイプレート3aの側面に支持部材7の移動阻止部7bを接触させて、レール4の長さ方向と直交する方向に支持部材7を配置し、スラブ版2のスラブ面2a上に支持部材7を設置する。次に、図5に示すように、支持部材7の一端部に防振部材13を設置してこの防振部材13上に受け部材11aを設置するとともに、支持部材7の他端部に防振部材14を設置してこの防振部材14上に受け部材12aを設置する。その後に、受け部材11aの長孔11c及び防振部材13の長孔13aに締結ボルト11mを挿入するとともに、受け部材12aの長孔12c及び防振部材14の長孔14aに締結ボルト12mを挿入する。防音材6とレール頭部4aとの間の隙間Δ1が設定値になるように、レール底部4bの底部側面4gと受け部材11aの押圧面11dとの間に最適な厚さの押圧部材9を差し込むとともに、レール底部4bの底部側面4gと受け部材12aの押圧面12dとの間にも最適な厚さの押圧部材10を差し込む。底部側面4gに押圧部材10が密着するように、受け部材12a及び防振部材14を支持部材7上でスライドさせて位置調整した後に、締結ボルト12mの雄ねじ部を雌ねじ部12kにねじ込み、受け部材12aを支持部材7に固定する。同様に、底部側面4gに押圧部材9が密着するように、受け部材11a及び防振部材13を支持部材7上でスライドさせて位置調整した後に、締結ボルト11mの雄ねじ部を雌ねじ部11kにねじ込み、受け部材11aを支持部材7に固定する。
【0059】
次に、防音材6の制振材6bと受け部材11aとを接合させた状態で、締結ボルト11fに座金11hを装着して制振材6bの長孔6f及び受け部材11aの長孔11bにこの締結ボルト11fを挿入し、この締結ボルト11fに座金11iを装着して締結ナット11gを仮締めする。この状態で、防音材6の高さとレール頭部4aの高さとが略同じになるように受け部材11aに沿って防音材6を上下方向にスライドさせて位置調整する。位置調整後に締結ナット11gを本締めして、防音材6と受け部材11aとを連結する。その結果、位置決め部材8の押圧部材9,10がレール底部4bの底部側面4gと密着して、押圧部材9,10がレール底部4bを挟み込みレール4に対して防音材6及び支持部材7がスラブ版2上に位置決めされる。
【0060】
次に、この発明の第1実施形態に係るレールの防音構造の作用を説明する。
図2に示すレール4上を車輪1が通過するとこのレール4から騒音が発生し、防音材6がこの騒音を遮るとともに防音材6の吸音材6aが振動しようとする。吸音材6aが柔軟な弾性材によって形成されている場合には、力学モデルとしてばね定数が小さい柔軟なばねを構成する。その結果、ばね定数の低下によって振動伝達率が低下し、レール4からの騒音が制振材6bに伝播し難くなる。一方、吸音材6aが柔軟な粘弾性材によって形成されている場合には、力学モデルとして柔軟なばねと減衰器(ダッシュポット)とを構成する。このため、ばね定数の低下によって振動伝達率が低下するとともに、粘性による振動減衰によってレール4からの騒音エネルギーの一部が熱エネルギーに変換されて、レール4からの騒音が吸収され減衰する。その結果、レール4から外層の制振材6bに伝播する振動が低減するため、制振材6bの振動が低減し制振材6bからの放射音が低減する。特に、柔軟な粘弾性材が制振材6bによって拘束されている場合には、吸音材6aのせん断変形の程度が振動時に高められるため、粘弾性材の内部損失が増大し制振能力が増幅させられる。レール4の側面と間隔をあけて防音材6を配置しているため、防音材6の制振材6bからの放射音の音響インピーダンスが低減し、レール4自体の放射音パワーが減少し防音効果が向上する。吸音材6aが外側吸音材に内側吸音材を充填した二重構造である場合には、外側吸音材が多孔質吸音材であるため、この外側吸音材の内部では粒子間の隙間が連通しており多孔質の気孔構造が形成されている。このため、レール4から外部に放射する騒音が外側吸音材の気孔内に進入すると、外側吸音材内を騒音が伝播する過程で空気粘性抵抗によって音の振動エネルギーの一部が熱エネルギーとして損失する。また、外側吸音材から内側吸音材に進入する騒音がこの内側吸音材によって吸収されて、レール4から外部に放射される騒音が吸収され減衰する。
【0061】
この発明の第1実施形態に係るレールの防音構造には、以下に記載するような効果がある。
(1) この第1実施形態では、騒音を低減する防音材6を支持する支持部材7がスラブ版2に非固定状態で設置されている。このため、スラブ版2などの地上敷設物に孔などを開けずに防音材6を簡単に固定することができる。また、レール4の点検時などに支持部材7を簡単にスラブ版2から着脱可能であり、作業負担を軽減することができるとともに点検作業を短時間で実施することができる。さらに、防音材6及び支持部材7の重量をスラブ版2によって負担する構造であるため、大規模で強固な固定装置を使用せずに防音材6を簡単に設置することができる。
【0062】
(2) この第1実施形態では、レール底部4bの底部下面4fとスラブ版2のスラブ面2aとの間の隙間に支持部材7が挿入されてこのスラブ面2aにこの支持部材7が設置されている。このため、既存の軌道構造を大規模に改変することなく、既存のレール4とスラブ版2との間の隙間を有効に利用して支持部材7をスラブ版2上に簡単に設置することができる。
【0063】
(3) この第1実施形態では、防音材6とスラブ版2との間の隙間を塞ぐ塞ぎ部6gを防音材6が備えている。このため、防音材6とスラブ版2との間の隙間から騒音が外部に漏れ出すのを防止することができるとともに、スラブ版2、防音材6及びレール4によって囲まれる空間内に騒音を閉じ込めてこの騒音が外部に放射されるのを可能な限り防ぐことができる。
【0064】
(4) この第1実施形態では、スラブ版2上に支持部材7を位置決め部材8が位置決めする。このため、防音材6とレール4との位置関係が一定となり、最適な防音効果を発揮する位置にこの防音材6を正確に配置することができる。
【0065】
(5) この第1実施形態では、レール4の長さ方向への防音材6の移動を支持部材7が阻止し、レール4の幅方向への防音材6及び支持部材7の移動を位置決め部材8が阻止する。このため、列車が走行するときに発生する振動によって、防音材6の位置が変動するのを抑えることができる。その結果、レール4と防音材6との位置関係がずれて防音効果が低下してしまうのを防ぐことができる。
【0066】
(6) この第1実施形態では、レール底部4bの両側の底部側面4gを位置決め部材8が挟み込むことによってこの位置決め部材8が支持部材7を位置決めする。このため、簡単な構造によってレール底部4bを基準として支持部材7を正確に位置決めすることによって、防音材6を最適な位置に配置することができる。
【0067】
(7) この第1実施形態では、レール底部4bの一方の底部側面4gを位置決め部材8の押圧部材9が押圧し、このレール底部4bをこの押圧部材9との間で挟み込むように、このレール底部4bの他方の底部側面4gをこの位置決め部材8の押圧部材10が押圧する。このため、レール底部4bの左右の底部側面4gと押圧部材9,10とを密着させて、レール4に対して防音材6及び支持部材7を位置決めすることができる。また、防音材6及び支持部材7を撤去時には押圧部材9,10の押圧を解除し、防音材6及び支持部材7の装着時には押圧部材9,10によって押圧するだけで足りるため、防音材6及び支持部材7の着脱作業を短時間で簡単に実施することができる。
【0068】
(8) この第1実施形態では、押圧部材9,10を支持部材7に固定部材11,12が着脱自在に固定する。このため、支持部材7を現場に搬送するときに押圧部材9,10が邪魔にならず設置作業時に短時間で簡単に押圧部材9,10を支持部材7に固定することができる。また、支持部材7を積み重ねた状態で多量の支持部材7を一度に現場に搬入することができる。さらに、レール底部4bの底部下面4fとスラブ版2のスラブ面2aとの間の隙間に支持部材7を挿入してスラブ面2a上に支持部材7を設置するときに、レール底部4bと押圧部材9,10とが干渉するのを防ぐことができる。
【0069】
(9) この第1実施形態では、レール4と支持部材7との間を押圧部材9,10が電気的に絶縁するとともにこれらの間に伝わる振動を押圧部材9,10が低減する。このため、レール4と支持部材7とが電気的に短絡するのを防ぐことができるとともに、列車の通過によって発生する振動がレール4から支持部材7を通じて防音材6に伝播してこの防音材6が振動し、この防音材6から外部に騒音が放射されるのを押圧部材9,10によって防ぐことができる。
【0070】
(10) この第1実施形態では、レール4の継目部分以外の部分の側面と防音材6との間に隙間が形成されるように支持部材7がこの防音材6を支持する。このため、レール4から発生する騒音をこのレール4と防音材6との間の空間に閉じ込めて騒音を低減することができる。また、レール4と防音材6との間の隙間Δ1からレール点検時に作業員がレール4の状態を目視で確認することができる。
【0071】
(11) この第1実施形態では、レール4の長さ方向に沿って防音材6がレール締結装置3間に断続して配置されるようにこの防音材6を支持部材7が支持する。その結果、防音材6間の隙間にレール締結装置3が位置するため、レール点検時に作業員がレール締結装置3の状態を確実に目視で確認することができる。
【0072】
(12) この第1実施形態では、レール4の外側に防音材6が配置されるようにこの防音材6を支持部材7が支持する。このため、列車が通過したときにレール4の外側に放射する騒音を防音材6によって低減し、レール4に近い側の沿線の騒音を重点的に低減することができる。
【0073】
(13) この第1実施形態では、防音材6と支持部材7との間に伝わる振動を防振部材13,14が低減する。このため、列車の通過によって発生する振動がスラブ版2から支持部材7を通じて防音材6に伝播してこの防音材6が振動してこの防音材6から外部に騒音が放射されるのを防振部材13,14によって防ぐことができる。
【0074】
(14) この第1実施形態では、防音材6の内側に騒音を吸収する吸音材6aを有し、防音材6の外側に振動を低減する制振材6bを有する。このため、レール4から放射される転動騒音を吸音材6aによって吸収し、この吸音材6aの振動を制振材6bが抑えるため、制振材6bから外部に放射する騒音を低減することができる。
【0075】
(第2実施形態)
図7は、この発明の第2実施形態に係るレールの防音構造の斜視図である。図8は、この発明の第2実施形態に係るレールの防音構造の平面図である。図9は、この発明の第2実施形態に係るレールの防音構造の側面図である。図10は、図8のX方向から見た側面図であり、図10(A)は吸音材が切欠部を有する場合の側面図であり、図10(B)は吸音材が切欠部を有さない場合の側面図である。以下では、図1〜図6に示す部分と同一の部分については同一の番号を付して詳細な説明を省略する。
【0076】
図7〜図10に示す防音材6は、図9及び図10に示すように、道床16との間の隙間を塞ぐ塞ぎ部6jと、まくらぎ15との間の隙間を塞ぐ塞ぎ部6kなどを備えている。塞ぎ部6jは、道床16と防音材6の下面6eとの間の隙間から騒音が放射するのを防止する防音部として機能する。塞ぎ部6jは、外観が平板状の部材であり、防音材6の制振材6bの厚さと略同じ厚さで形成されており、隣り合うまくらぎ15間の距離と略同じ長さで形成されている。塞ぎ部6jは、制振材6bと同じ材質でこの制振材6bと一体形成されており、図7に示すように防音効果を向上させるために下縁部側が道床16内に埋設されている。
【0077】
図9及び図10に示す塞ぎ部6kは、まくらぎ15のまくらぎ上面15a及びまくらぎ側面15bと防音材6の下面6eとの間の隙間から騒音が放射するのを防止する防音部として機能するとともに、道床16と防音材6との間を電気的に絶縁しこれらの間に伝わる振動を低減する絶縁防振部としても機能する。塞ぎ部6kは、外観が帯状の部材であり、防音材6の制振材6bの厚さと略同じ厚さで形成されている。塞ぎ部6kは、まくらぎ上面15a及びまくらぎ側面15bに沿って所定の長さで形成されており、制振材6bの下縁部に接着剤などによって固定されている。塞ぎ部6kは、まくらぎ上面15a及びまくらぎ側面15bに凹凸(不陸)があるときにこの凹凸を吸収可能な電気絶縁性及び弾性を有する軟質ゴム又は発泡ゴムなどの不陸調整用パッキンであり、まくらぎ上面15a及びまくらぎ側面15bに押圧されることによって弾性変形してこれらのまくらぎ上面15a及びまくらぎ側面15bと密着する。
【0078】
図7〜図9に示す支持部材7は、まくらぎ15上に非固定状態で設置されており、位置決め部材8によってこのまくらぎ15上に位置決めされている。支持部材7は、図7及び図8に示すように、レール底部4bの底部下面4fとまくらぎ15のまくらぎ上面15aとの間の隙間に挿入されてこのまくらぎ上面15aに設置されている。支持部材7は、まくらぎ15上に設置されたときに、左右のレール4の長さ方向において隣り合うレール締結装置3のタイプレート3aの互に対向する側の側面と接触するように間隔をあけて平行に配置されている。支持部材7の厚さは、レール底部4bの底部下面4fとまくらぎ15のまくらぎ上面15aとの間の隙間よりも薄く形成されている。支持部材7は、ボルト又は接着剤などの固定部材によってまくらぎ上面15aに固定されておらず、固定部材を使用せずにこのまくらぎ上面15aに搭載のみされている。支持部材7は、図7に示すように、まくらぎ15のまくらぎ凹部15cとの間の隙間を塞ぐ塞ぎ部7cなどを備えており、この塞ぎ部7cはまくらぎ15上に支持部材7が安定して設置可能なように、支持部材7とまくらぎ15との間に挟み込まれるゴム又は合成樹脂などの隙間埋め部材(スペーサ)である。
【0079】
図7〜図9に示すまくらぎ15は、レール4を支持する支持体(支承体)である。まくらぎ15は、左右のレール4を固定して軌間を正確に保持し、レール4から伝達される列車荷重を道床16に分散させるために、図7に示すようにレール4と道床16との間に設置されている。図7〜図9に示すまくらぎ15は、レール4に対して直角に並べて敷設される横まくらぎ(一般区間で使用される並まくらぎ)であり、緊張材として使用される鋼材(Prestressing Steel(PC))によってプレストレスが与えられたプレストレスコンクリート製まくらぎ(PCまくらぎ)などである。まくらぎ15は、図7及び図8に示すように、レール4の長さ方向に所定の間隔をあけて配置されており、レール4を離散的に支持している。まくらぎ15は、図7に示すように、レール底部4bの底部下面4fを支持するレール座面と同じ高さのまくらぎ上面15aと、このまくらぎ上面15aの両縁部から下方に向かって傾斜するまくらぎ側面15bと、まくらぎ15の長さ方向の中間部に形成されたまくらぎ凹部15cなどを備えている。
【0080】
図7に示す道床16は、まくらぎ15を支持し路盤に荷重を分散し伝達する構造体である。道床16は、バラスト16aによって構成されたバラスト道床であり、バラスト16aはまくらぎ15と路盤との間に敷き詰められる砂利又は砕石などの粒状体である。
【0081】
この発明の第2実施形態に係るレールの防音構造には、第1実施形態の効果に加えて、以下に記載するような効果がある。
(1) この第2実施形態では、騒音を低減する防音材6を支持する支持部材7がまくらぎ15に非固定状態で設置されている。このため、まくらぎ15などの地上敷設物に孔などを開けずに防音材6を簡単に固定することができるとともに、レール4の点検時などに支持部材7を簡単にまくらぎ15から着脱することができる。
【0082】
(2) この第2実施形態では、レール底部4bの底部下面4fとまくらぎ15のまくらぎ上面15aとの間の隙間に支持部材7が挿入されてこのまくらぎ上面15aにこの支持部材7が設置されている。このため、既存の軌道構造を大規模に改変することなく、既存のレール4とまくらぎ15との間の隙間を有効に利用して支持部材7をまくらぎ15上に簡単に設置することができる。
【0083】
(3) この第2実施形態では、防音材6と道床16との間の隙間を塞ぐ塞ぎ部6jを防音材6が備えている。また、この第2実施形態では、防音材6とまくらぎ15との間の隙間を塞ぐ塞ぎ部6kを防音材6が備えている。このため、防音材6とまくらぎ15との間の隙間や防音材6と道床16との間の隙間から騒音が外部に漏れ出すのを防止することができるとともに、レール4、防音材6、まくらぎ15及び道床16によって囲まれる空間内に騒音を閉じ込めてこの騒音が外部に放射されるのを可能な限り防ぐことができる。
【0084】
(第3実施形態)
図11は、この発明の第3実施形態に係るレールの防音構造の斜視図である。図12は、この発明の第3実施形態に係るレールの防音構造の平面図である。図13は、この発明の第3実施形態に係るレールの防音構造の側面図であり、図13(A)は吸音材が切欠部を有する場合の側面図であり、図13(B)は吸音材が切欠部を有さない場合の側面図である。図14は、図12のXIV方向から見た側面図である。図15は、図12のXV-XV線で切断した状態を示す断面図である。
【0085】
図11〜図15に示す支持部材7は、図15に示すように、レール底部4bの底部下面4fと道床16のバラスト16aとの間の隙間に挿入されてこのバラスト16a上に設置されており、位置決め部材8によって道床16上に位置決めされている。支持部材7は、図11及び図12に示すように、道床16上に設置されたときに、左右のレール4の長さ方向において隣り合うまくらぎ15の互に対向する側のまくらぎ側面15bと接触するように間隔をあけて平行に配置されている。図15に示すように、支持部材7の厚さはレール底部4bの底部下面4fと道床16との間の隙間よりも薄く形成されている。支持部材7は、固定部材によって道床16上に固定されておらず、固定部材を使用せずにこの道床16上に搭載のみされている。支持部材7は、列車通過時に発生するレール4の振動を遮断するように、道床16上に設置されたときにはレール底部4bの底部下面4fとこの支持部材7の上面との間に隙間を形成している。支持部材7は、図11〜図14に示す移動阻止部7bなどを備えており、図13に示すようにこの移動阻止部7bはまくらぎ側面15bの傾斜角度と同じ傾斜面に形成されている。
【0086】
この発明の第3実施形態に係るレールの防音構造には、第1実施形態及び第2実施形態の効果に加えて、以下に記載するような効果がある。
(1) この第3実施形態では、騒音を低減する防音材6を支持する支持部材7が道床16上に非固定状態で設置されている。このため、まくらぎ15などの地上敷設物に孔などを開けずに防音材6を簡単に固定することができるとともに、レール4の点検時などに支持部材7を簡単に道床16から着脱することができる。また、防音材6及び支持部材7の重量を道床16によって負担する構造であるため、大規模で強固な固定装置を使用せずに防音材6を設置することができる。
【0087】
(2) この第3実施形態では、レール底部4bの底部下面4fと道床16の上面との間の隙間に支持部材7が挿入されてこの道床16の上面にこの支持部材7が設置される。このため、既存の軌道構造を大規模に改変することなく、既存のレール4と道床16との間の隙間を有効に利用して支持部材7を道床16上に簡単に設置することができる。
【0088】
(3) この第3実施形態では、道床16との間の隙間を塞ぐ塞ぎ部6jを防音材6が備えている。このため、防音材6と道床16との間の隙間から騒音が外部に漏れ出すのを防止することができるとともに、レール4、防音材6、まくらぎ15及び道床16によって囲まれる空間内に騒音を閉じ込めてこの騒音が外部に放射されるのを可能な限り防ぐことができる。
【0089】
(4) この第3実施形態では、道床16上に支持部材7を位置決め部材8が位置決めする。このため、防音材6とレール4との位置関係が一定となり、最適な防音効果を発揮する位置にこの防音材6を正確に配置することができる。
【0090】
(第4実施形態)
図16は、この発明の第4実施形態に係るレールの防音構造の斜視図である。図17は、この発明の第4実施形態に係るレールの防音構造の平面図である。図18は、この発明の第4実施形態に係るレールの防音構造の側面図である。図19は、図17のXIX方向から見た側面図であり、図19(A)は吸音材が切欠部を有する場合の側面図であり、図19(B)は吸音材が切欠部を有さない場合の側面図である。図20は、図17のXX-XX線で切断した状態を示す断面図である。図21は、図17のXXI-XXI線で切断した状態を示す断面図である。
【0091】
図16〜図21に示す防音構造5は、防音材6A,6Bなどを備えている。防音構造5は、図16及び図17に示すように、右側のレール4の左右の防音材6A,6Bと左側のレール4の左右の防音材6A,6Bとを、レール4の長さ方向に間隔をあけて複数の支持部材7によって支持している。図16〜図21に示す防音材6A,6Bは、図1〜図15に示す防音材6と略同一構造であるが、図20及び図21に示すように防音材6Bは防音材6Aよりも高さが低く形成されている。図20及び図21に示すように、防音材6Aはレール4の外側側面と防音材6Aの内側側面との間に所定の隙間Δ2をあけており、防音材6Bはレール4の内側側面と防音材6Bの内側側面との間に所定の隙間Δ2をあけている。ここで、隙間Δ2は、5mm未満であるとレール点検時などにレール4の側面を目視で検査することが困難になり、100mmを超えると外部に放射する騒音が増加して防音効果が低減するため、5mm以上100mm以下に設定することが好ましい。防音材6Aは、図20及び図21に示すように、吸音材6aと継目板18Aとの干渉を防ぐために、レール頭部4aと対向する吸音材6aの先端面から後方に向かって下方に傾斜する傾斜面がこの吸音材6aに形成されている。一方、防音材6Bは、吸音材6aと継目板18Bとの干渉を防ぐために、レール頭部4aと対向する吸音材6aの先端面が制振材6bの先端部よりも後方に位置するように形成されている。防音材6A,6Bは、図16及び図17に示すように、レール4の長さ方向に沿ってレール4と平行に配置されており、レール4の継目部分を跨ぐように取り付けられた軟銅線からなる図示しないレールボンドから離間して電気的に絶縁されているとともに、レール4及びレール締結装置3からも離間して電気的に絶縁されている。防音材6A,6Bは、図20及び図21に示すように、建築限界Lを超えないように、防音材6Aは上面6dがレール頭部4aの頭頂面4dと同じ高さであるが、防音材6Bは上面6dがレール頭部4aの頭頂面4dよりも低い。防音材6A,6Bは、図21に示すように、レール締結装置3の外側からレール頭部4aに向かって伸びているため、図5に示す防音材6に比べて上面6dの幅が広く形成されている。防音材6A,6Bは、図16〜図19に示すように、所定の長さで形成されており、図16〜図18に示すように端面6c同士を突き合せて連続して配置されている。
【0092】
図20及び図21に示す吸音材6aは、図1〜図15に示す吸音材6aとは異なり、外観が略L字状の板状部材であり、図19に示すように切欠部6h,6iなどを備えている。図19(A)に示す切欠部6hは、レール締結装置3、支持部材7及び位置決め部材8との干渉を防ぐ部分であり、これらのレール締結装置3、支持部材7及び位置決め部材8を避ける逃げ部である。切欠部6hは、図19(B)に示すように、省略可能であり制振材6bの幅方向に直線状に形成可能である。図19(A)(B)に示す切欠部6iは、防音材6A,6Bと支持部材7との干渉を防ぐ部分であり、防音材6A,6Bの制振材6bの下縁部に形成された逃げ部である。
【0093】
図16〜図21に示す支持部材7は、図17に示すように、レール4の継目部分(継目区間)の側面と防音材6A,6Bとの間に隙間Δ2が形成されるようにこの防音材6A,6Bを支持している。支持部材7は、この継目部分(継目区間)の前後の継目部分以外の部分(一般区間)のレール4の側面と防音材6A,6Bとの間にも隙間Δ2が形成されるようにこの防音材6A,6Bを支持している。支持部材7は、左右のレール4の外側に防音材6Aが配置され、左右のレール4の内側に防音材6Bが配置されるように支持している。支持部材7は、図17に示すように、レール4の長さ方向に沿って防音材6A,6Bがレール締結装置3よりも外側に連続して配置されるようにこれらの防音材6A,6Bを支持している。支持部材7は、スラブ版2のスラブ面2a上に設置されたときに、左右のレール締結装置3のタイプレート3aの側面と接触するように、レール4の長さ方向に間隔をあけて平行に配置されている。位置決め部材8は、図20に示すように、図5及び図15に示す位置決め部材8とは異なり、固定部材11の受け部材11aと同一構造の断面U字状の受け部材12aを固定部材12が備えている。図20に示す固定部材11,12は、いずれも同一構造であり、以下では固定部材12側の部分と対応する固定部材11側の部分については対応する符号を付して詳細な説明を省略する。
【0094】
図16及び図17に示す継目構造17は、レール4の継目部分の両側に継目板18A,18Bを固定して、この継目部分を継目板18A,18Bによって連結する構造である。継目構造17は、例えば、一対の継目板18A,18Bをレール腹部4cに当てて継目板ボルト19aによって組み立て、レール端部を突き合せて接続した普通継目である。継目構造17は、図17に示すように、継目部分の直下にレール締結装置3を配置する支え継ぎ法によってこの継目部分を支持する支え継目である。継目構造17には、レール4の温度伸縮をある程度吸収するために、図16及び図17に示すようにレール4の継目部分の接続部に所定の適正値で隙間(継目遊間)が設定されている。継目構造17は、図21に示すように、継目板18A,18Bと締結部材19などを備えている。
【0095】
図21に示す継目板18A,18Bは、レール4の継目部分におけるレール腹部4cの両側面に継目板ボルト19aによって固定されてレール4を接続する部材である。継目板18A,18Bは、レール頭部4aの顎部と対向する頭部18aと、レール底部4bの上部と対向する底部18bと、頭部18aと底部18bとを繋ぐ腹部18cなどを備えている。
【0096】
締結部材19は、レール4の継目部分の両側に継目板18A,18Bを締結する部材である。締結部材19は、継目板ボルト19aとナット19bなどを備えている。継目板ボルト19aは、レール4と継目板18A,18Bとを締結するためのボルトであり、レール4及び継目板18A,18Bの長さ方向に所定の間隔をあけて形成された貫通孔に挿入される。ナット19bは、継目板ボルト19aに装着される部材であり、継目板ボルト19aの雄ねじ部と噛み合う雌ねじ部を備えている。
【0097】
次に、この発明の第4実施形態に係るレールの防音構造の装着方法を説明する。
図16及び図17に示す左右一対のレール4のレール底部4bとスラブ版2のスラブ面2aとの間に支持部材7を挿入し、レール締結装置3のタイプレート3aの側面に支持部材7の移動阻止部7bを接触させて、スラブ版2のスラブ面2a上に支持部材7を設置する。次に、図20に示すように、支持部材7に防振部材13,14及び受け部材11a,12aを設置した後に、受け部材11aの長孔11c及び防振部材13の長孔13aに締結ボルト11mを挿入するとともに、受け部材12aの長孔12c及び防振部材14の長孔14aに締結ボルト12mを挿入する。防音材6A,6Bとレール頭部4aとの間の隙間Δ2が設定値になるように、レール底部4bの底部側面4gと受け部材11a,12aの押圧面11d,12dとの間にそれぞれ最適な厚さの押圧部材9,10を差し込む。底部側面4gに押圧部材9,10が密着するように、受け部材11a,12a及び防振部材13,14を支持部材7上でそれぞれスライドさせて位置調整した後に、締結ボルト11m,12mの雄ねじ部を雌ねじ部11k,12kにねじ込み、受け部材11a,12aを支持部材7に固定する。
【0098】
次に、防音材6A,6Bの制振材6bと受け部材11a,12aとを接合させた状態で、締結ボルト11f,12fに座金11h,12hを装着して、防音材6A,6Bの制振材6bの長孔6f及び受け部材11a,12aの長孔11b,12bに締結ボルト11f,12fを挿入し、この締結ボルト11f,12fに座金11i,12iを装着して締結ナット11g,12gを仮締めする。この状態で、防音材6Aの高さがレール頭部4aの高さと略同じになるように、受け部材11aに沿って防音材6Aを上下方向にスライドさせて位置調整するとともに、防音材6Bの高さがレール頭部4aの高さよりも僅かに低くなるように、受け部材12aに沿って防音材6Bを上下方向にスライドさせて位置調整する。位置調整後に締結ナット11g,12gを本締めして、防音材6A,6Bと受け部材11a,12aとを連結する。その結果、位置決め部材8の押圧部材9,10がレール底部4bを挟み込み、レール4に対して防音材6A,6B及び支持部材7がスラブ版2上に位置決めされる。
【0099】
この発明の第4実施形態に係るレールの防音構造には、第1実施形態〜第3実施形態の効果に加えて、以下に記載するような効果がある。
(1) この第4実施形態では、レール4の継目部分の側面と防音材6A,6Bとの間に隙間Δ2が形成されるようにこの防音材6A,6Bを支持部材7が支持する。このため、レール4の継目部分から発生する騒音をこのレール4と防音材6A,6Bとの間の空間に閉じ込めて騒音を低減することができる。また、レール4と防音材6A,6Bとの間の隙間Δ2からレール点検時に作業員がレール4の状態を目視で確認することができる。
【0100】
(2) この第4実施形態では、レール4の長さ方向に沿って防音材6A,6Bがレール締結装置3よりも外側に連続して配置されるようにこの防音材6A,6Bを 支持部材7が支持する。その結果、図1〜図15に示す防音構造5とは異なり、レール締結装置3の外側を塞ぐようにこのレール締結装置3の外側にも防音材6A,6Bが連続して位置するため、レール4から発生する騒音をより一層低減することができる。また、図1〜図15に示す防音構造5に比べて長尺の防音材6A,6Bを連続して設置するため、設置作業が容易になり設置作業を短時間で実施することができる。
【0101】
(3) この第4実施形態では、レール4の外側及び内側に防音材6A,6Bが配置されるようにこの防音材6A,6Bを支持部材7が支持する。その結果、図1〜図15に示す防音構造5とは異なり、レール4の内側及び外側に放射する騒音を防音材6A,6Bによって低減するため、防音効果をより一層向上させることができる。
【0102】
(第5実施形態)
図22は、この発明の第5実施形態に係るレールの防音構造の断面図である。
図22に示す防音材6は、図5及び図15に示す吸音材6aとは断面形状が異なり、吸音材6aの断面が制振材6bと同じ略L字状に形成されている。この第5実施形態では、第1実施形態〜第4実施形態の効果に加えて、レール頭部4aと対向する部分の吸音材6aの厚さがレール底部4bと対向する部分の吸音材6aの厚さよりも厚いため、レール頭部4aから発生する騒音を吸音材6aによって吸収し騒音をより一層低減することができる。
【0103】
(第6実施形態)
図23は、この発明の第6実施形態に係るレールの防音構造の断面図である。
図23に示す防音材6は、図22に示す吸音材6aとは断面形状が異なり、吸音材6aの断面が上部から下部に向かって徐々に厚さが薄くなるように、吸音材6aの表面が平坦な傾斜面に形成されている。この第6実施形態では、第1実施形態〜第5実施形態の効果に加えて、列車通過時に大きく振動するレール頭部4aから放射する騒音を低減することができるとともに、吸音材6aの厚さが厚くなるため吸音効果をより一層向上させることができる。
【0104】
(第7実施形態)
図24は、この発明の第7実施形態に係るレールの防音構造の断面図である。
図24に示す防音材6は、図22及び図23に示す吸音材6aとは断面形状が異なり、吸音材6aの断面が上部から徐々に厚さが薄くなり途中から下部までは厚さが一定になるように、吸音材6aの表面が平坦な傾斜面と垂直面に形成されている。この第7実施形態では、第1実施形態〜第6実施形態の効果に加えて、レール頭部4aから放射する騒音を重点的に低減しつつ、吸音材6aの厚さを可能な限り薄くして材料費を低減することができる。
【0105】
(第8実施形態)
図25は、この発明の第8実施形態に係るレールの防音構造の断面図である。
図25に示す防音材6は、図22〜図24に示す制振材6bとは断面形状が異なり、制振材6bが平板状に形成されており、上面6dには制振材6bがなく吸音材6aが上面6dから露出し、吸音材6aの断面が略L字状に形成されている。この第8実施形態では、第1実施形態〜第7実施形態の効果に加えて、レール4と防音材6との間の隙間Δ1から外部に放射する騒音を吸音材6aによって吸収し騒音をより一層低減することができる。
【0106】
(第9実施形態)
図26は、この発明の第9実施形態に係るレールの防音構造の断面図である。
図26に示す位置決め部材8は、図5、図15及び図22〜図24に示す位置決め部材8とは異なり、固定部材12の受け部材12aと同一構造の断面L字状の受け部材11aを固定部材11が備えており、図5、図15及び図22〜図24に示す位置決め部材8の押圧部材9とは異なり楔部材20を備えている。受け部材11aは、制振材6b及び楔部材20を受ける部分であり、図5に示す受け部材12aと同様の山形鋼などを支持部材7と略同じ幅に切断して形成した止め金具である。受け部材11aは、押圧面11dを備えており、この押圧面11dはレール底部4bの底部側面4gに向けて楔部材20を押圧する部分である。押圧面11dは、受け部材11aの側板部の表面に形成されており、押圧面11dには楔部材20の後端面が密着している。
【0107】
楔部材20は、レール底部4bを押圧部材10との間で挟み込むように、このレール底部4bの一方の底部側面(外側底部側面)4gと支持部材7の上面との間に差し込まれる部分である。楔部材20は、レール4と支持部材7との間を電気的に絶縁するとともにこれらの間に伝わる振動を低減する。楔部材20は、支持部材7と略同じ幅に形成されており垂直面で切断したときの断面が三角形状に形成されている。楔部材20は、例えば、レール4と防音材6との間の隙間Δ1を調整するための隙間調整部材(スペーサ)として機能し、長さ又は傾斜角度の異なるものが予め複数存在し、隙間Δ1の設定値に応じて任意のものを選択し固定部材11の押圧面11dとレール底部4bの底部側面4gとの間に装着される。楔部材20は、例えば、電気絶縁性及び弾性を有するとともに列車通過時にレール4から伝わる衝撃を緩和する緩衝ゴム(防振ゴム)などの弾性体であり、レール底部4bの底部側面4gに押圧されることによって傾斜面が弾性変形してこの底部側面4gと密着する。
【0108】
この発明の第9実施形態に係るレールの防音構造には、第1実施形態〜第8実施形態の効果に加えて、以下に記載するような効果がある。
(1) この第9実施形態では、レール底部4bの一方の底部側面4gを位置決め部材8の押圧部材10が押圧し、このレール底部4bをこの押圧部材10との間で挟み込むように、このレール底部4bの他方の底部側面4gと支持部材7の上面との間に楔部材20が差し込まれる。このため、図5に示す位置決め部材8のような押圧部材9を固定するための固定部材11が不要になって、楔部材20を差し込む簡単な作業でレール4に対して防音材6及び支持部材7を正確に位置決めすることができるとともに、防音材6及び支持部材7の着脱作業を短時間で簡単に実施することができる。
【0109】
(2) この第9実施形態では、レール4と支持部材7との間を電気的に絶縁するとともにこれらの間に伝わる振動を押圧部材10及び楔部材20が低減する。このため、レール4と支持部材7とが電気的に短絡するのを防ぎ、レール4から支持部材7を通じて防音材6に伝播する振動を抑えることができる。
【0110】
(他の実施形態)
この発明は、以上説明した実施形態に限定するものではなく、以下に記載するように種々の変形又は変更が可能であり、これらもこの発明の範囲内である。
(1) この実施形態では、スラブ版2によって構成された省力化軌道や、バラスト16aによって構成された有道床軌道を例に挙げて説明したが、橋梁上に敷設された軌道などについてもこの発明を適用することができる。また、この実施形態では、支持体がスラブ版2又はまくらぎ15である場合を例に挙げて説明したが他の支持体についてもこの発明を適用することができる。例えば、左右一対のレール4をそれぞれ支持するプレストレスコンクリート構造(PRC構造)の縦梁を鋼管製の継材によって連結する梯子状のラダーまくらぎなどの支持体についても、この発明を適用することができる。この場合には、支持部材7を縦梁上に非固定状態で設置することができる。
【0111】
(2) この実施形態では、レール締結装置3がタイプレート式のレール締結装置である場合を例に挙げて説明したが、タイプレート3aを使用しない直結方式のレール締結装置についてもこの発明を適用することができる。また、この実施形態では、固定部材11,12によって押圧部材9,10を支持部材7に着脱自在に固定する場合を例に挙げて説明したが、押圧部材9,10のいずれか一方を着脱不可能なように支持部材7に固定することもできる。さらに、この実施形態では、受け部材11a,12aが略U字状又は略L字状の止め金具である場合を例に挙げて説明したが、中空角型の止め金具などを受け部材11a,12aに使用することもできる。
【0112】
(3) この実施形態では、左右のレール4の底部下面4fに1本の支持部材7を交差させて防音材6,6A,6Bを支持する場合を例に挙げて説明したが、左右のレール4の底部下面4fにそれぞれ1本の支持部材7を交差させて各支持部材7によって防音材6,6A,6Bを支持することもできる。また、この実施形態では、締結部材11j,12jの雌ねじ部11k,12kに締結ボルト11m,12mをねじ込み受け部材11a,12aを固定する場合を例に挙げて説明したが、締結ボルトを支持部材7に溶接などによって固定し、この締結ボルトに締結ナットを締結して受け部材11a,12aを固定することもできる。
【0113】
(4) この第1実施形態〜第3実施形態では、図2、図8及び図12に示すように、レール4の外側に防音材6を配置する場合を例に挙げて説明したが、図17に示すようにレール4の内側及び外側に防音材6A,6Bを配置したり、レール4の内側のみに防音材6を配置したりすることもできる。また、この第1実施形態〜第3実施形態では、図2、図8及び図12に示すように、レール締結装置3間に防音材6をレール4の長さ方向に断続して配置する場合を例に挙げて説明したが、図17に示すように、レール締結装置3よりも外側に防音材6をレール4の長さ方向に連続して配置することもできる。
【0114】
(5) この第4実施形態では、継目構造17が普通継目である場合を例に挙げて説明したが普通継目以外の継目構造についてもこの発明を適用することができる。例えば、継目部分の両側と継目板との間に絶縁材を挟み込みこの継目部分を電気的に絶縁して接続する絶縁継目、継目部分の両側に継目板を絶縁性の接着材によって接着してこの継目部分を電気的に絶縁して接続する接着絶縁継目、又は継目部分を伸縮自在に接続する伸縮継目などについてもこの発明を適用することができる。また、この第4実施形態では、継目部分の直下にレール締結装置3を配置する支え継目を例に挙げて説明したが、継目部分の直下にレール締結装置3を配置させずに、隣り合うレール締結装置3の中間に継目を設ける掛け継目についてもこの発明を適用することができる。
【0115】
(6) この第4実施形態では、図17に示すように、レール4の内側及び外側に防音材6A,6Bを配置する場合を例に挙げて説明したが、図2、図8及び図12に示すようにレール4の外側のみに防音材6を配置したり、レール4の内側のみに防音材6を配置したりすることもできる。また、この第4実施形態では、図17に示すように、レール締結装置3よりも外側に防音材6をレール4の長さ方向に連続して配置する場合を例に挙げて説明したが、図2、図8及び図12に示すようにレール締結装置3間に防音材6をレール4の長さ方向に断続して配置することもできる。さらに、この第5実施形態〜第8実施形態では、図22〜図25に示すように、レール4の外側に防音材6を配置する場合を例に挙げて説明したが、図20に示すようにレール4の外側及び内側に防音材6を配置したり、レール4の内側のみに防音材6を配置したりすることもできる。
【符号の説明】
【0116】
1 車輪
2 スラブ版(支持体)
2a スラブ面
3 レール締結装置
3a タイプレート
4 レール
4a レール頭部
4b レール底部
4f 底部下面
4g 底部側面
5 防音構造
6,6A,6B 防音材
6a 吸音材
6b 制振材
6g,6j,6k 塞ぎ部
7 支持部材
7a 設置部
7b 移動阻止部
8 位置決め部材
9,10 押圧部材
11,12 固定部材
11a,12a 受け部材
11e,11j,12e,12j 締結部材
13,14 防振部材
15 まくらぎ(支持体)
15a まくらぎ上面
15b まくらぎ側面
16 道床
16a バラスト
17 継目構造
18A,18B 継目板
19 締結部材
Δ1,Δ2 隙間
L 建築限界
【技術分野】
【0001】
この発明は、レールの振動によって発生する騒音を低減するためのレールの防音構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のレールの防音構造(従来技術1)は、ゴム又は合成樹脂とモルタルとの混合物からなるモルタル系制振材をレール腹部に接着している(例えば、特許文献1参照)。この従来技術1では、レール上を車両が通過するときにこのレールから発生する振動をモルタル系制振材によって抑制し、レールからの騒音を低減している。
【0003】
従来のレールの防音構造(従来技術2)は、鉛などの制振性を有する一対の防音材と、この一対の防音材をそれぞれ保持する一対の金物と、この一対の金物をそれぞれ締め付ける一対の締め付けねじなどを備えている(例えば、特許文献2参照)。この従来技術2では、レール腹部の両側面にそれぞれ防音材を配置し、締め付けねじを締め付けることによって金物を防音材に押し付けて、レール腹部の両側面にそれぞれ防音材を固定している。
【0004】
従来のレールの防音構造(従来技術3)は、磁性粉を含有する高分子粘弾性体層と、この高分子粘弾性体層を拘束する拘束板とが積層された分割構造の磁性複合型制振材によってレールを被覆している(例えば、特許文献3参照)。この従来技術3では、高分子粘弾性体層がレールに密着するように、レールの左右から磁性複合型制振材をそれぞれ装着しており、この磁性複合型制振材によってレールを被覆してレールの振動によって発生する騒音を低減させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭52-109206号公報
【特許文献2】特開平10-152801号公報
【特許文献3】特開平10-159896号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来技術1では、制振材を固定するためにモルタルの接着力を利用するが、この施工を行ううえで、施工前にレールを洗浄する下地処理などが必要になるとともに、施工後モルタルが硬化するまで現場を保持するために一定期間列車が走行できないなど施工が大変である問題点があった。また、従来技術1では、制振効果を高めるためにはモルタル系制振材を厚くする必要があり、厚みが増すと重量も増加するため、モルタル系制振材をレールに接着剤によって強固に固定することができない問題点があった。また、従来技術1では、長期間敷設に伴いモルタルが劣化したり、良好な施工がなされなかった場合などにモルタルが剥離し、離脱したりする危険性も考えられ耐久性と信頼性に欠ける問題点がある。さらに、従来技術1では、一度施工すると容易には離脱することが困難であるとともに、レールに制振材が密着しているためレールを目視で点検することが不可能であり、レールのメンテナンスが困難になるという問題点があった。
【0007】
従来技術2では、一対の防音材をそれぞれ一対の締め付けねじによって締め付けてレールに固定する構造である。このため、防音効果を高めるために防音材を厚くすると重量が増加するため、防音材をレールに締め付けねじによって強固に固定することができない問題点があった。また、この従来技術2では、一定の安全性や信頼性を確保するためには構造が全般的に大掛かりになり、施工が困難になってしまう問題点がある。さらに、従来技術2では、レールに防音材が密着しているためレールを目視で点検することが不可能であり、防音材を外してレールをメンテナンスするための工程が複雑になってしまう問題点があった。
【0008】
従来技術3では、磁性ゴムの磁力吸着力を用いてレールに固定するが、この処置のみでは車両走行に伴い励起されるレールの大きな振動のために、一部又は全部が脱落する危険が想定される。このため、従来技術3では、防音材の外側から治具などを用いて固定する措置を併用すると、磁性ゴムの磁力吸着力を利用して簡便に施工できる利点が著しく損なわれてしまう問題点がある。また、従来技術3では、レールに磁性ゴムが密着しているためレールを目視で点検することが不可能であるとともに、磁性ゴムを外してレールをメンテナンスする際にも煩雑な作業が必要となり、磁性ゴムの易メンテナンス性の利点も損なわれてしまう問題点がある。
【0009】
この発明の課題は、簡単な構造で着脱が容易な支持部材によって防音材を簡単に敷設することができるレールの防音構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明は、以下に記載するような解決手段により、前記課題を解決する。
なお、この発明の実施形態に対応する符号を付して説明するが、この実施形態に限定するものではない。
請求項1の発明は、図1、図7及び図16に示すように、レール(4)の振動によって発生する騒音を低減するレールの防音構造であって、前記騒音を低減する防音材(6;6A,6B)を支持する支持部材(7)を備え、前記支持部材は、前記レールを支持する支持体(2;15)上に非固定状態で設置されることを特徴とするレールの防音構造(5)である。
【0011】
請求項2の発明は、請求項1に記載のレールの防音構造において、前記支持部材は、前記レールの底部下面(4f)と前記支持体の上面(2a;15a)との間の隙間に挿入されてこの支持体の上面に設置されることを特徴とするレールの防音構造である。
【0012】
請求項3の発明は、請求項1又は請求項2に記載のレールの防音構造において、前記防音材は、前記支持体との間の隙間を塞ぐ塞ぎ部(6g;6k)を備えることを特徴とするレールの防音構造である。
【0013】
請求項4の発明は、請求項1又は請求項2に記載のレールの防音構造において、図7に示すように、前記防音材は、前記支持体(15)を支持する道床(16)との間の隙間を塞ぐ塞ぎ部(6j)を備えることを特徴とするレールの防音構造である。
【0014】
請求項5の発明は、図11に示すように、レール(4)の振動によって発生する騒音を低減するレールの防音構造であって、前記騒音を低減する防音材(6)を支持する支持部材(7)を備え、前記支持部材は、前記レールを支持する支持体(15)を支持する道床(16)上に非固定状態で設置されることを特徴とするレールの防音構造(5)である。
【0015】
請求項6の発明は、請求項5に記載のレールの防音構造において、前記支持部材は、前記レールの底部下面(4f)と前記道床の上面との間の隙間に挿入されてこの道床の上面に設置されることを特徴とするレールの防音構造である。
【0016】
請求項7の発明は、請求項5又は請求項6に記載のレールの防音構造において、前記防音材は、前記道床との間の隙間を塞ぐ塞ぎ部(6j)を備えることを特徴とするレールの防音構造である。
【0017】
請求項8の発明は、請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載のレールの防音構造において、図1、図7及び図16に示すように、前記支持体(2)上に前記支持部材を位置決めする位置決め部材(8)を備えることを特徴とするレールの防音構造である。
【0018】
請求項9の発明は、請求項5から請求項7までのいずれか1項に記載のレールの防音構造において、図11に示すように、前記道床(16)上に前記支持部材を位置決めする位置決め部材(8)を備えることを特徴とするレールの防音構造である。
【0019】
請求項10の発明は、請求項8又は請求項9に記載のレールの防音構造において、図1、図7、図11及び図16に示すように、前記支持部材は、前記レールの長さ方向への前記防音材の移動を阻止し、前記位置決め部材は、前記レールの幅方向への前記防音材及び前記支持部材の移動を阻止することを特徴とするレールの防音構造である。
【0020】
請求項11の発明は、請求項8から請求項10までのいずれか1項に記載のレールの防音構造において、図5、図15、図20及び図22〜図26に示すように、前記位置決め部材は、レール底部(4b)の両側側面(4g)を挟み込むことによって前記支持部材を位置決めすることを特徴とするレールの防音構造である。
【0021】
請求項12の発明は、請求項8から請求項11までのいずれか1項に記載のレールの防音構造において、図5、図15、図20及び図22〜図25に示すように、前記位置決め部材は、前記レール底部の一方の側面を押圧する第1の押圧部材(9)と、前記レール底部を前記第1の押圧部材との間で挟み込むように、このレール底部の他方の側面を押圧する第2の押圧部材(10)とを備えることを特徴とするレールの防音構造である。
【0022】
請求項13の発明は、請求項12に記載のレールの防音構造において、前記位置決め部材は、前記第1及び/又は前記第2の押圧部材を前記支持部材に着脱自在に固定する固定部材(11,12)を備えることを特徴とするレールの防音構造である。
【0023】
請求項14の発明は、請求項12又は請求項13に記載のレールの防音構造において、前記押圧部材は、前記レールと前記支持部材との間を電気的に絶縁するとともにこれらの間に伝わる振動を低減することを特徴とするレールの防音構造である。
【0024】
請求項15の発明は、請求項8から請求項14までのいずれか1項に記載のレールの防音構造において、図26に示すように、前記位置決め部材は、前記レール底部の一方の側面を押圧する押圧部材(9)と、前記レール底部を前記押圧部材との間で挟み込むように、このレール底部の他方の側面と前記支持部材の上面との間に差し込まれる楔部材(20)とを備えることを特徴とするレールの防音構造である。
【0025】
請求項16の発明は、請求項15に記載のレールの防音構造において、前記位置決め部材は、前記押圧部材を前記支持部材に着脱自在に固定する固定部材(12)を備えることを特徴とするレールの防音構造である。
【0026】
請求項17の発明は、請求項15又は請求項16に記載のレールの防音構造において、前記押圧部材及び前記楔部材は、前記レールと前記支持部材との間を電気的に絶縁するとともにこれらの間に伝わる振動を低減することを特徴とするレールの防音構造である。
【0027】
請求項18の発明は、請求項1から請求項17までのいずれか1項に記載のレールの防音構造において、図1、図7及び図11に示すように、前記支持部材は、前記レールの継目部分以外の部分の側面と前記防音材(6)との間に隙間(Δ1)が形成されるようにこの防音材を支持することを特徴とするレールの防音構造である。
【0028】
請求項19の発明は、請求項1から請求項18までのいずれか1項に記載のレールの防音構造において、図16に示すように、前記支持部材は、前記レールの継目部分の側面と前記防音材(6A,6B)との間に隙間(Δ2)が形成されるようにこの防音材を支持することを特徴とするレールの防音構造である。
【0029】
請求項20の発明は、請求項1から請求項19までのいずれか1項に記載のレールの防音構造において、図2、図8及び図12に示すように、前記支持部材は、前記レールの長さ方向に沿って前記防音材(6)がレール締結装置(3)間に断続して配置されるようにこの防音材を支持することを特徴とするレールの防音構造である。
【0030】
請求項21の発明は、請求項1から請求項19までのいずれか1項に記載のレールの防音構造において、図17に示すように、前記支持部材は、前記レールの長さ方向に沿って前記防音材(6A,6B)がレール締結装置(3)よりも外側に連続して配置されるようにこの防音材を支持することを特徴とするレールの防音構造である。
【0031】
請求項22の発明は、請求項1から請求項21までのいずれか1項に記載のレールの防音構造において、図1、図7、図11及び図16に示すように、前記支持部材は、前記レールの外側及び/又は内側に前記防音材が配置されるようにこの防音材を支持することを特徴とするレールの防音構造である。
【0032】
請求項23の発明は、請求項1から請求項22までのいずれか1項に記載のレールの防音構造において、図5、図15、図20及び図22〜図26に示すように、前記支持部材と前記防音材との間に伝わる振動を低減する防振部材(13,14)を備えることを特徴とするレールの防音構造である。
【0033】
請求項24の発明は、請求項1から請求項23までのいずれか1項に記載のレールの防音構造において、図5、図15、図20及び図22〜図26に示すように、前記防音材は、内側に前記騒音を吸収する吸音材(6a)を有し、外側に前記振動を低減する制振材(6b)を有することを特徴とするレールの防音構造である。
【0034】
請求項25の発明は、請求項24に記載のレールの防音構造において、図20及び図22〜図25に示すように、前記吸音材は、レール頭部(4a)と対向する部分の厚さがレール底部(4b)と対向する部分の厚さよりも厚いことを特徴とするレールの防音構造である。
【0035】
請求項26の発明は、請求項24又は請求項25に記載のレールの防音構造において、図25に示すように、前記吸音材は、前記レールとの間の隙間から外部に放射する騒音を吸収することを特徴とするレールの防音構造である。
【発明の効果】
【0036】
この発明によると、簡単な構造で着脱が容易な支持部材によって防音材を簡単に敷設することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】この発明の第1実施形態に係るレールの防音構造の斜視図である。
【図2】この発明の第1実施形態に係るレールの防音構造の平面図である。
【図3】この発明の第1実施形態に係るレールの防音構造の側面図である。
【図4】図2のIV方向から見た側面図であり、(A)は吸音材が切欠部を有する場合の側面図であり、(B)は吸音材が切欠部を有さない場合の側面図である。
【図5】図2のV-V線で切断した状態を示す断面図である。
【図6】図2のVI-VI線で切断した状態を示す断面図である。
【図7】この発明の第2実施形態に係るレールの防音構造の斜視図である。
【図8】この発明の第2実施形態に係るレールの防音構造の平面図である。
【図9】この発明の第2実施形態に係るレールの防音構造の側面図である。
【図10】図8のX方向から見た側面図であり、(A)は吸音材が切欠部を有する場合の側面図であり、(B)は吸音材が切欠部を有さない場合の側面図である。
【図11】この発明の第3実施形態に係るレールの防音構造の斜視図である。
【図12】この発明の第3実施形態に係るレールの防音構造の平面図である。
【図13】この発明の第3実施形態に係るレールの防音構造の側面図であり、(A)は吸音材が切欠部を有する場合の側面図であり、(B)は吸音材が切欠部を有さない場合の側面図である。
【図14】図12のXIV方向から見た側面図である。
【図15】図12のXV-XV線で切断した状態を示す断面図である。
【図16】この発明の第4実施形態に係るレールの防音構造の斜視図である。
【図17】この発明の第4実施形態に係るレールの防音構造の平面図である。
【図18】この発明の第4実施形態に係るレールの防音構造の側面図である。
【図19】図17のXIX方向から見た側面図であり、(A)は吸音材が切欠部を有する場合の側面図であり、(B)は吸音材が切欠部を有さない場合の側面図である。
【図20】図17のXX-XX線で切断した状態を示す断面図である。
【図21】図17のXXI-XXI線で切断した状態を示す断面図である。
【図22】この発明の第5実施形態に係るレールの防音構造の断面図である。
【図23】この発明の第6実施形態に係るレールの防音構造の断面図である。
【図24】この発明の第7実施形態に係るレールの防音構造の断面図である。
【図25】この発明の第8実施形態に係るレールの防音構造の断面図である。
【図26】この発明の第9実施形態に係るレールの防音構造の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
(第1実施形態)
以下、図面を参照して、この発明の第1実施形態について詳しく説明する。
図1は、この発明の第1実施形態に係るレールの防音構造の斜視図である。図2は、この発明の第1実施形態に係るレールの防音構造の平面図である。図3は、この発明の第1実施形態に係るレールの防音構造の側面図である。図4は、図2のIV方向から見た側面図であり、図4(A)は吸音材が切欠部を有する場合の側面図であり、図4(B)は吸音材が切欠部を有さない場合の側面図である。図5は、図2のV-V線で切断した状態を示す断面図である。図6は、図2のVI-VI線で切断した状態を示す断面図である。
【0039】
図2に示す車輪1は、左右一対のレール4とそれぞれ回転接触する部材である。車輪1は、図2、図5及び図6に示すように、レール頭部4aの頭頂面4dと接触して摩擦抵抗を受ける踏面1aと、脱輪を防止するために車輪1の外周部に連続して形成されたフランジ面1bなどを備えている。
【0040】
図1〜図6に示すスラブ版2は、レール4を支持する支持体(支承体)である。スラブ版2は、矩形平板状のプレキャストのコンクリート版からなる軌道スラブであり、有道床軌道の保守作業を軽減するために道床とまくらぎとを一体化させた省力化軌道の一種であるスラブ軌道区間において、路盤コンクリートとレール4との間に設置されている。スラブ版2は、レール締結装置3のタイプレート3aが取り付けられるスラブ面2aなどを備えている。
【0041】
図1〜図3及び図6に示すレール締結装置3は、レール4をスラブ版2に締結する装置である。レール締結装置3は、図6に示すように、タイプレート3aと、締結ばね3bと、締結ボルト3c,3eと、締結ナット3d,3fと、軌道パッド3gと、調節パッキン3hと、調整鋼板3iと、絶縁板3jと、座金3kと、ばね座金3mと、平座金3n,3pと、絶縁カラー3qと、カバープレート3rなどを備えている。タイプレート3aは、レール4とスラブ版2との間に挿入されてレール4の横方向の移動を規制する部材であり、締結ばね3bはレール4のレール底部4bの底部上面4eを押さえ付けて締結する部材である。締結ボルト3cは、締結ばね3bを締め付ける部材であり、締結ナット3dはこの締結ボルト3cに締結される部材である。締結ボルト3eは、スラブ版2に埋め込まれた埋込栓の雌ねじ部と噛み合ってタイプレート3aをスラブ版2に固定する部材であり、締結ナット3fはこの締結ボルト3eに締結される部材である。軌道パッド3gは、レール4とスラブ版2との間に挿入する絶縁性の弾性体であり、調節パッキン3hはレール4とスラブ版2との間に挿入してレール4の上下位置を調節する部材である。調整鋼板3iは、スラブ版2とタイプレート3aとの間に挿入されてレール4の上下位置を調整する部材であり、絶縁板3jはスラブ版2と調整鋼板3iとの間に挿入されてこれらの間を電気的に絶縁する部材であり、座金3kは締結ばね3bと締結ナット3dとの間に挟み込まれる部材である。ばね座金3mは、締結ナット3fの緩みを防止する部材であり、平座金3nは締結ナット3fとばね座金3mとの間に挟み込まれる部材であり、平座金3pはばね座金3mと絶縁カラー3qとの間に挟み込まれる部材である。絶縁カラー3qは、レール4とスラブ版2とを電気的に絶縁する部材であり、平座金3pとカバープレート3rとの間に挿入されており、カバープレート3rはタイプレート3aと絶縁カラー3qとの間に挿入される部材である。レール締結装置3は、レール底部4bとタイプレート3aとの間に軌道パッド3gを挟み込み、締結ばね3bによってレール4をスラブ版2に締結して、鉄道車両が通過する際に発生する振動を吸収する。
【0042】
図2に示すレール4は、鉄道車両の車輪1を支持し案内してこの鉄道車両を走行させる部材である。レール4は、列車が200km/h以上の高速度で走行する新幹線又は新幹線以外の列車が走行する在来線の線路の一部を構成しており、所定の間隔をあけて継目部分で端部を突き合わせた状態で長さ方向に連続して敷設されている。レール4は、図4及び図5に示すように、レール頭部4aと、レール底部(フランジ部)4bと、レール腹部(ウェブ部)4cなどを備えている。レール頭部4aは、鉄道車両の車輪1と接触する部分であり、車輪1を直接支持する頭頂面(頭部上面)4dなどを備えている。レール底部4bは、レール締結装置3によってスラブ版2上に設置されて取り付けられる部分であり、レール締結装置3の締結ばね3bによって押さえ付けられる底部上面4eと、スラブ版2上に設置される底部下面4fと、レール底部4bの左右の側面部分を構成する底部側面4gなどを備えている。レール腹部4cは、レール頭部4aとレール底部4bとを繋ぐ部分であり、レール頭部4aに作用する輪重及び押圧をレール底部4bに伝達する。
【0043】
図1〜図6に示す防音構造5は、レール4の振動によって発生する騒音を低減する構造である。防音構造5は、防音材6と、支持部材7と、位置決め部材8と、防振部材13,14などを備えている。防音構造5は、レール4上を車両が通過するときに発生する振動によってこのレール4から放射する転動騒音を低減する。防音構造5は、図1及び図2に示すように、左右の防音材6を前後の支持部材7によって支持しており、左右の防音材6の一端部を前側の支持部材7が両端部で支持し、左右の防音材6の他端部を後側の支持部材7が両端部で支持している。
【0044】
図1〜図6に示す防音材6は、レール4の振動によって発生する騒音を低減する部材である。防音材6は、レール4からの騒音を遮る遮音板として機能し、図2に示すようにレール4の外側側面との間に隙間Δ1をあけて、レール4の外側に配置されており、レール4の長さ方向に沿ってレール4と平行に配置されている。ここで、隙間Δ1は、2mm未満であるとレール点検時などにレール4の側面を目視で検査することが困難になり、5mmを超えると外部に放射する騒音が増加して防音効果が低減するため、2mm以上5mm以下に設定することが好ましい。防音材6は、図5及び図6に示すように、レール4及びレール締結装置3から離間して電気的に絶縁されている。防音材6は、鉄道車両が安全に走行するために建築物などが入ってはならない軌道上に確保された空間である建築限界Lを超えない範囲内に配置されており、防音材6の上面6dはレール頭部4aの頭頂面4dと同じ高さである。防音材6は、図1〜図6に示すように、内側(レール4と対向する側)に吸音材6aを有し、外側(レール4と対向する側とは反対側(吸音材6aの外側側面))に制振材6bを有する。防音材6は、吸音材6aと制振材6bとを一体成形又は接着して形成されており、短時間に安価で製造が容易である一体成形が好ましい。防音材6は、図1〜図4に示すように、隣り合うレール締結装置3間の間隔と略同じ長さで形成されている。防音材6は、図4に示す端面6cと、図4〜図6に示す上面6dと、図4に示す下面6eと、図4〜図6に示す長孔6fと、塞ぎ部6gなどを備えている。
【0045】
図1〜図6に示す吸音材6aは、騒音を吸収する部材であり、制振材6bよりも剛性の低い弾性体である。吸音材6aは、剛体よりも相対的に軟質の軟質弾性材であり、例えば常温でヤング率が1.0×103MPa以下であり、望ましくは粘性も兼ね備え、損失係数が0.05以上であり、厚みが1〜500mm程度(粘弾性材の場合には10〜30mm程度)である。このような材料としては、天然ゴム、スチレンブタジエンゴム、ブチルゴム、エチレンプロピレンゴム(EPDM)、クロロプレンゴム、フッ素ゴム、シリコンゴム、ウレタンゴム、ポリノルボルネンゴム、アクリルゴムなどの加硫ゴム、スチレン系、オレフィンゴム系、塩化ビニル系のTPE(熱可塑エラストマ)、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、塩化ビニル、エチレン酢酸ビニル共重合(EVA)樹脂などの熱可塑性樹脂、シリコンなどのゲル、酢酸ビニル系、EVA系、アクリル樹脂系などのエマルジョン、ゴムラテックス、セラミックス、発泡石膏などの多孔質材、金属繊維などを適用することができる。吸音材6aは、レール4からの騒音を吸収する吸音機能を有する材料であり、このような吸音材6aとしては柔軟な弾性材又は柔軟な粘弾性材などである。柔軟な弾性材としては、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの熱可塑性樹脂による有機質繊維体、ロックウール、グラスウールなどが好ましい。柔軟な粘弾性材としては、ウレタン、EPDM、クロロプレンなどの発泡体が好ましく、このような発泡体は吸音制振機能を有する粘弾性体であるため、吸音効果とともに制振効果も期待することができる。
【0046】
吸音材6aは、内側吸音材とこの内側吸音材の表面を被覆する外側吸音材とによっても形成可能であり、内側吸音材は外側吸音材よりも軽い軽量吸音材であり、外側吸音材の内部に充填されている。内側吸音材は、外側吸音材によって完全に吸収されずにこの外側吸音材を通過する騒音を吸収する。このような内側吸音材としては、例えば、吸音性に優れた高性能の無機質繊維系、金属繊維系、有機発泡系又はこれらの任意の組み合わせからなる軽量吸音材である。このような無機質繊維系の吸音材としては、グラスウール、グラスファイバ又はロックウールなどであり、金属繊維系の吸音材としてはアルミニウム繊維、ステンレス繊維又は鉄系合金繊維などであり、有機発泡系の吸音材としてはゴムスポンジ、プラスチックフォーム、ウレタン、エチレンプロピレンゴム(EPDM)、クロロプレン、ポリウレタンフォーム、発泡ポリスチロール又は天然高分子多孔質体などである。内側吸音材としては、グラスウール、グラスファイバ又はロックウールなどの無機質繊維をフェノール樹脂などで結合し成形した軽量で吸音性能に優れた軽量吸音材が特に好ましい。外側吸音材は、内側吸音材よりも硬く耐候性及び電気絶縁性を有する多孔質吸音材である。外側吸音材は、内側吸音材よりも重い吸音材であり、列車の走行に伴って舞い上がった小石やこの列車から落下した着氷雪などが衝突しても破損しないような硬度を有する多孔質吸音材である。外側吸音材は、無機質粒子を樹脂結合剤によって結合して成形された無機質粒子結合材である。このような無機質粒子としては、例えば、パーライト、珪石粉砕物、珪砂、石灰石粉砕物、砂利、鉱物繊維製造時に発生する粒状物(ショット)、陶磁器粉砕物、ガラスの粉砕物又はこれらの任意の組み合わせからなる混合物などである。無機質粒子は、平均粒径が0.5よりも小さいと微細な気孔を有する成型体しか得られず、吸音特性が好ましくなく、保水性が大きくなって雨水を浴びると長時間吸音性能が低下するため、平均粒径が0.5〜3mm程度のものが好ましい。樹脂結合剤としては、例えば、遮光性無機顔料及びシランカップリング剤を含有する有機結合剤などである。このような樹脂結合剤としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、キシレン樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂又はこれらの任意の組み合わせからなる反応性樹脂又は熱硬化性樹脂などの樹脂バインダである。
【0047】
吸音材6aの厚さは、10mmを下回ると固有振動数が高くなり、100mmを超えるとレール4との間に十分な間隔を確保することが困難になるため、10〜100mmに設定することが好ましく、50mmに設定することが特に好ましい。吸音材6aは、図4に示すように、制振材6bと略同じ長さ及び略同じ幅で形成された板状部材であり、図5及び図6に示すように断面が長方形に形成されている。吸音材6aは、図4(A)に示すように、支持部材7及び位置決め部材8との干渉を防ぐ切欠部6hを備えており、この切欠部6hはこれらの支持部材7及び位置決め部材8を避けるように防音材6の下縁部寄りの両端部に形成されている。吸音材6aは、図4(B)に示すように、図4(A)に示す切欠部6hを省略して、支持部材7及び位置決め部材8を避けるように制振材6bの長さよりも短く両端部を直線状に形成可能である。
【0048】
図1〜図6に示す制振材6bは、振動を低減する部材であり、吸音材6aよりも剛性の高い弾性体である。制振材6bは、例えば、金属又はヤング率が3.0×103MPa以上の剛体などからなる剛弾性体(高剛性弾性体)によって形成されている。制振材6bは、レール4の振動を抑制する制振機能を有する硬質弾性材によって形成されている。このような制振材6bとしては、ゴム層と金属板とからなる薄板状の樹脂積層型の制振鋼板(ニチアス株式会社製のメタラミネ(表品名))、株式会社神戸製鋼所製のダンプレ(表品名))、クロム、鉛などが配合された鋼系の制振合金、亜鉛などが配合されたアルミ系の制振合金、又はアスファルト系若しくはアクリル系、クロロプレン系などの制振塗料が塗布された金属板などが好ましい。制振材6bには、レール4と対向する側の表面に吸音材6aを接着剤などによって貼り付け固定するときには、吸音材6aとの間に接着材層が形成されている。この接着材層としては、エポキシ樹脂系、シアノアクリレート系、アクリル樹脂系、ウレタン樹脂系などの反応型接着剤、酢酸ビニル樹脂系接着剤、変性アクリル樹脂系などのエマルジョン型接着剤、クロロプレンやシリコンなどの合成ゴム型接着剤、エラストマー系、エチレン酢酸ビニル共重合(EVA)系などのホットメルト型接着剤などによって形成することが好ましい。制振材6bは、吸音材6aが直射日光に曝されるのを防ぎ紫外線による劣化を抑制する。制振材6bの厚さは、0.5mmを下回ると遮音性能が低下し、10mmを超えると曲げ剛性や施工性が低下するとともに重量が増し、レール4との間に十分な間隔を確保することが困難になるため、0.5〜10mmに設定することが好ましく、0.8〜0.9mmに設定することが特に好ましい。制振材6bは、図5及び図6に示すように、外観が略L字状の部材であり、制振材6bの先端面はレール頭部4aの側面との間に隙間Δ1をあけて対向している。制振材6bは、図4(A)(B)に示すように、支持部材7との干渉を防ぐ切欠部6iを備えており、この切欠部6iはこの支持部材7を避けるように防音材6の下縁部寄りの両端部に形成されている。切欠部6iは、図3及び図4に示すように、レール4の側面方向から見たときに外観が凹状に形成されており、図3に示すように支持部材7の上面及び側面と接触している。切欠部6iは、隣り合う支持部材7の間隔と略同じ間隔で形成されており、切欠部6iの長さは支持部材7の幅よりも僅かに長く形成されており、切欠部6iの高さは支持部材7の厚さよりも僅かに短く形成されている。
【0049】
図4に示す端面6cは、防音材6の長さ方向の両端分であり平面状に形成されている。図1〜図6に示す上面6dは、防音材6の長さ方向と直交する方向の上部であり、図5及び図6に示すように制振材6bの上部を略90°折り曲げて形成された平面状の部分である。図4に示す下面6eは、防音材6の長さ方向と直交する方向の下部であり平面状に形成されている。図4に示す長孔6fは、制振材6bを貫通する貫通孔であり、制振材6bの下縁部寄りの両端部に形成されている。
【0050】
図1及び図3〜図5に示す塞ぎ部6gは、スラブ版2の間の隙間を塞ぐ部分である。塞ぎ部6gは、スラブ版2のスラブ面2aと防音材6の下面6eとの間の隙間から騒音が放射するのを防止する防音部として機能するとともに、スラブ版2と防音材6との間を電気的に絶縁しこれらの間に伝わる振動を低減する絶縁防振部としても機能する。塞ぎ部6gは、図3及び図4に示すように、外観が帯状の部材であり、図5に示すように防音材6の制振材6bの厚さと略同じ厚さで形成されているとともに、図4に示すように隣り合う切欠部6h間の距離と略同じ長さで形成されており、制振材6bの下縁部に接着剤などによって固定されている。塞ぎ部6gは、スラブ版2のスラブ面2aに凹凸(不陸)があるときにこの凹凸を吸収可能な電気絶縁性及び弾性を有する軟質ゴム又は発泡ゴムなどの不陸調整用パッキンであり、スラブ面2aに押圧されることによって弾性変形してこのスラブ面2aと密着する。
【0051】
図1〜図6に示す支持部材7は、防音材6を支持する部材であり、スラブ版2上に非固定状態で設置されている。支持部材7は、図5に示すように、レール底部4bの底部下面4fとスラブ版2のスラブ面2aとの間の隙間に挿入されてこのスラブ版2のスラブ面2aに設置されている。支持部材7は、図2に示すように、レール4の継目部分(継目区間)以外の部分(一般区間)の側面と防音材6との間に隙間Δ1が形成されるようにこの防音材6を支持しており、左右のレール4の外側に防音材6が配置されるように支持している。支持部材7は、図1及び図2に示すように、レール4の長さ方向に沿って防音材6がレール締結装置3間に断続して配置されるようにこの防音材6を支持している。支持部材7は、スラブ版2のスラブ面2a上に設置されたときに、左右のレール4の長さ方向において隣り合うレール締結装置3のタイプレート3aの互に対向する側の側面と接触するように間隔をあけて平行に配置されている。図2に示すように、支持部材7の長さは左右のレール4の間隔よりも長く形成されており、図5に示すように支持部材7の厚さはレール底部4bの底部下面4fとスラブ版2のスラブ面2aとの間の隙間よりも薄く形成されている。支持部材7は、列車通過時に発生するレール4の振動を遮断するように、スラブ版2上に設置されたときにはレール底部4bの底部下面4fとこの支持部材7の上面との間に隙間を形成している。支持部材7は、例えば、絶縁性を有する金属又は合成樹脂であり、外観が長方形状(長板状)の固定用板である。支持部材7は、ボルト又は接着剤などの固定部材によってスラブ版2のスラブ面2aに固定されておらず、固定部材を使用せずにスラブ面2a上に搭載のみされている。支持部材7は、図5に示す設置部7aと、図1〜図3に示す移動阻止部7bなどを備えている。
【0052】
図5に示す設置部7aは、スラブ版2のスラブ面2a上に支持部材7を設置するための部分である。設置部7aは、支持部材7の下面に形成された平坦面である。図1〜図3に示す移動阻止部7bは、レール4の長さ方向に支持部材7が移動するのを阻止するための部分である。移動阻止部7bは、レール締結装置3のタイプレート3aの側面と接触するように、支持部材7の側面に形成された平坦面である。移動阻止部7bは、図1及び図2に示すように、レール4の長さ方向において隣り合うタイプレート3aの側面と接触することによってレール4の長さ方向への支持部材7の移動を阻止するストッパ部として機能している。
【0053】
図1、図2及び図5に示す位置決め部材8は、スラブ版2上に支持部材7を位置決めする部材であり、このレール4の幅方向(長さ方向と交差する方向)への防音材6及び支持部材7の移動を阻止している。位置決め部材8は、図5に示すように、レール底部4bの両側の底部側面4gを挟み込むことによって支持部材7を位置決めする。位置決め部材8は、防音材6とレール4の側面との間の隙間Δ1が所定値になるように支持部材7をレール4に位置調整可能に位置決めする。位置決め部材8は、レール4の長さ方向と交差する方向への防音材6及び支持部材7の移動を阻止するストッパ部としても機能している。位置決め部材8は、図5に示すように、押圧部材9,10と固定部材11,12などを備えている。
【0054】
押圧部材9は、レール底部4bの一方の底部側面(外側底部側面)4gを押圧する部分である。押圧部材10は、レール底部4bを押圧部材9との間で挟み込むように、このレール底部4bの他方の底部側面(内側底部側面)4gを押圧する部分である。押圧部材9,10は、レール4と支持部材7との間を電気的に絶縁するとともにこれらの間に伝わる振動を低減する。押圧部材9,10は、図5に示すように、いずれも同一構造であり、支持部材7と略同じ幅に形成されており外観が板状に形成されている。押圧部材9,10は、例えば、レール4と防音材6との間の隙間Δ1を調整するための隙間調整部材(スペーサ)として機能し、厚さの異なるものが予め複数存在し、隙間Δ1の設定値に応じて任意のものを選択し固定部材11,12の押圧面11d,12dとレール底部4bの底部側面4gとの間に装着される。押圧部材9,10は、例えば、電気絶縁性及び弾性を有するとともに列車通過時にレール4から伝わる衝撃を緩和する緩衝ゴム(防振ゴム)などの弾性体であり、レール底部4bの底部側面4gに押圧されることによって弾性変形してこの底部側面4gと密着する。
【0055】
固定部材11は、押圧部材9を支持部材7に着脱自在に固定するとともに防音材6を支持部材7に着脱自在に固定する部分である。固定部材11は、受け部材11aと、締結部材11e,11jなどを備えている。受け部材11aは、制振材6b及び押圧部材9を受ける部分であり、断面がU字状の溝形鋼などを支持部材7と略同じ幅に切断して形成した止め金具である。受け部材11aは、長孔11b,11cと押圧面11dなどを備えている。長孔11bは、防音材6を上下方向に位置調整可能にするためにレール4の高さ方向に長く形成された貫通孔であり、受け部材11aの一対の側板部のうちレール4から遠い側の側板部に形成されている。長孔11cは、防音材6を水平方向に位置調整可能にするためにレール4の幅方向に長く形成された貫通孔であり、受け部材11aの底板部に形成されている。押圧面11dは、レール底部4bの底部側面4gに向けて押圧部材9を押圧する部分であり、受け部材11aの一対の側板部のうちレール4に近い側の側板部の表面に形成されており、押圧面11dには押圧部材9の背面が密着している。締結部材11eは、制振材6bと受け部材11aとを締結する部分である。締結部材11eは、長孔6f,11bを貫通する締結ボルト11fと、この締結ボルト11fに装着される締結ナット11gと、締結ボルト11fと制振材6bとの間に挟み込まれる座金11hと、締結ナット11gと受け部材11aとの間に挟み込まれる座金11iなどを備えている。締結部材11jは、支持部材7と受け部材11aとを締結する部分である。締結部材11jは、支持部材7の端部に形成された雌ねじ部11kと、長孔11c,13aを貫通し雌ねじ部11kと噛み合う雄ねじ部を有する締結ボルト11mと、この締結ボルト11mと受け部材11aとの間に挟み込まれる座金11nなどを備えている。
【0056】
固定部材12は、押圧部材10を支持部材7に着脱自在に固定する部分である。固定部材12は、受け部材12aと、締結部材12jなどを備えている。受け部材12aは、押圧部材10を受ける部分であり、断面がL字状の山形鋼などを支持部材7と略同じ幅に切断して形成した止め金具である。受け部材12aは、長孔12cと押圧部12dなどを備えている。長孔12cは、受け部材12aの側板部に形成されている。長孔12cは、防音材6を水平方向に位置調整可能にするためにレール4の幅方向に長く形成された貫通孔であり、受け部材12aの底板部に形成されている。押圧面12dは、レール底部4bの底部側面4gに向けて押圧部材10を押圧する部分であり、受け部材12aの側板部の表面に形成されており、押圧面12dには押圧部材10の背面が密着している。締結部材12jは、支持部材7と受け部材12aとを締結する部分である。締結部材12jは、支持部材7の雌ねじ部11kが形成されている側とは反対側の端部に形成された雌ねじ部12kと、長孔12c,14aを貫通し雌ねじ部12kと噛み合う雄ねじ部を有する締結ボルト12mと、この締結ボルト12mと受け部材12aとの間に挟み込まれる座金12nなどを備えている。
【0057】
図5に示す防振部材13,14は、防音材6と支持部材7との間に伝わる振動を低減する部材であり、防振部材13は受け部材11aと支持部材7との間に挟み込まれており、防振部材14は受け部材12aと支持部材7との間に挟み込まれている。防振部材13,14は、防音材6と支持部材7との間を電気的に絶縁するとともにこれらの間に伝わる振動を低減する絶縁防振部として機能する。防振部材13,14は、例えば、電気絶縁性及び弾性を有する外観が板状の防振ゴムなどであり、受け部材11a,12aと支持部材7との間で押圧されることによって弾性変形してこの受け部材11a,12aと支持部材7とに密着する。防振部材13,14は、長孔13a,14aなどを備えており、長孔13a,14aは防音材6を水平方向に位置調整可能にするためにレール4の幅方向に長く形成された貫通孔であり、受け部材11a,12a側の長孔11c,12cと同じ長さで形成されている。
【0058】
次に、この発明の第1実施形態に係るレールの防音構造の装着方法を説明する。
図1及び図2に示す左右一対のレール4のレール底部4bとスラブ版2のスラブ面2aとの間の隙間に、レール4の外側から内側に向かって支持部材7を挿入する。このとき、レール4の長さ方向で隣り合うレール締結装置3のタイプレート3aの側面に支持部材7の移動阻止部7bを接触させて、レール4の長さ方向と直交する方向に支持部材7を配置し、スラブ版2のスラブ面2a上に支持部材7を設置する。次に、図5に示すように、支持部材7の一端部に防振部材13を設置してこの防振部材13上に受け部材11aを設置するとともに、支持部材7の他端部に防振部材14を設置してこの防振部材14上に受け部材12aを設置する。その後に、受け部材11aの長孔11c及び防振部材13の長孔13aに締結ボルト11mを挿入するとともに、受け部材12aの長孔12c及び防振部材14の長孔14aに締結ボルト12mを挿入する。防音材6とレール頭部4aとの間の隙間Δ1が設定値になるように、レール底部4bの底部側面4gと受け部材11aの押圧面11dとの間に最適な厚さの押圧部材9を差し込むとともに、レール底部4bの底部側面4gと受け部材12aの押圧面12dとの間にも最適な厚さの押圧部材10を差し込む。底部側面4gに押圧部材10が密着するように、受け部材12a及び防振部材14を支持部材7上でスライドさせて位置調整した後に、締結ボルト12mの雄ねじ部を雌ねじ部12kにねじ込み、受け部材12aを支持部材7に固定する。同様に、底部側面4gに押圧部材9が密着するように、受け部材11a及び防振部材13を支持部材7上でスライドさせて位置調整した後に、締結ボルト11mの雄ねじ部を雌ねじ部11kにねじ込み、受け部材11aを支持部材7に固定する。
【0059】
次に、防音材6の制振材6bと受け部材11aとを接合させた状態で、締結ボルト11fに座金11hを装着して制振材6bの長孔6f及び受け部材11aの長孔11bにこの締結ボルト11fを挿入し、この締結ボルト11fに座金11iを装着して締結ナット11gを仮締めする。この状態で、防音材6の高さとレール頭部4aの高さとが略同じになるように受け部材11aに沿って防音材6を上下方向にスライドさせて位置調整する。位置調整後に締結ナット11gを本締めして、防音材6と受け部材11aとを連結する。その結果、位置決め部材8の押圧部材9,10がレール底部4bの底部側面4gと密着して、押圧部材9,10がレール底部4bを挟み込みレール4に対して防音材6及び支持部材7がスラブ版2上に位置決めされる。
【0060】
次に、この発明の第1実施形態に係るレールの防音構造の作用を説明する。
図2に示すレール4上を車輪1が通過するとこのレール4から騒音が発生し、防音材6がこの騒音を遮るとともに防音材6の吸音材6aが振動しようとする。吸音材6aが柔軟な弾性材によって形成されている場合には、力学モデルとしてばね定数が小さい柔軟なばねを構成する。その結果、ばね定数の低下によって振動伝達率が低下し、レール4からの騒音が制振材6bに伝播し難くなる。一方、吸音材6aが柔軟な粘弾性材によって形成されている場合には、力学モデルとして柔軟なばねと減衰器(ダッシュポット)とを構成する。このため、ばね定数の低下によって振動伝達率が低下するとともに、粘性による振動減衰によってレール4からの騒音エネルギーの一部が熱エネルギーに変換されて、レール4からの騒音が吸収され減衰する。その結果、レール4から外層の制振材6bに伝播する振動が低減するため、制振材6bの振動が低減し制振材6bからの放射音が低減する。特に、柔軟な粘弾性材が制振材6bによって拘束されている場合には、吸音材6aのせん断変形の程度が振動時に高められるため、粘弾性材の内部損失が増大し制振能力が増幅させられる。レール4の側面と間隔をあけて防音材6を配置しているため、防音材6の制振材6bからの放射音の音響インピーダンスが低減し、レール4自体の放射音パワーが減少し防音効果が向上する。吸音材6aが外側吸音材に内側吸音材を充填した二重構造である場合には、外側吸音材が多孔質吸音材であるため、この外側吸音材の内部では粒子間の隙間が連通しており多孔質の気孔構造が形成されている。このため、レール4から外部に放射する騒音が外側吸音材の気孔内に進入すると、外側吸音材内を騒音が伝播する過程で空気粘性抵抗によって音の振動エネルギーの一部が熱エネルギーとして損失する。また、外側吸音材から内側吸音材に進入する騒音がこの内側吸音材によって吸収されて、レール4から外部に放射される騒音が吸収され減衰する。
【0061】
この発明の第1実施形態に係るレールの防音構造には、以下に記載するような効果がある。
(1) この第1実施形態では、騒音を低減する防音材6を支持する支持部材7がスラブ版2に非固定状態で設置されている。このため、スラブ版2などの地上敷設物に孔などを開けずに防音材6を簡単に固定することができる。また、レール4の点検時などに支持部材7を簡単にスラブ版2から着脱可能であり、作業負担を軽減することができるとともに点検作業を短時間で実施することができる。さらに、防音材6及び支持部材7の重量をスラブ版2によって負担する構造であるため、大規模で強固な固定装置を使用せずに防音材6を簡単に設置することができる。
【0062】
(2) この第1実施形態では、レール底部4bの底部下面4fとスラブ版2のスラブ面2aとの間の隙間に支持部材7が挿入されてこのスラブ面2aにこの支持部材7が設置されている。このため、既存の軌道構造を大規模に改変することなく、既存のレール4とスラブ版2との間の隙間を有効に利用して支持部材7をスラブ版2上に簡単に設置することができる。
【0063】
(3) この第1実施形態では、防音材6とスラブ版2との間の隙間を塞ぐ塞ぎ部6gを防音材6が備えている。このため、防音材6とスラブ版2との間の隙間から騒音が外部に漏れ出すのを防止することができるとともに、スラブ版2、防音材6及びレール4によって囲まれる空間内に騒音を閉じ込めてこの騒音が外部に放射されるのを可能な限り防ぐことができる。
【0064】
(4) この第1実施形態では、スラブ版2上に支持部材7を位置決め部材8が位置決めする。このため、防音材6とレール4との位置関係が一定となり、最適な防音効果を発揮する位置にこの防音材6を正確に配置することができる。
【0065】
(5) この第1実施形態では、レール4の長さ方向への防音材6の移動を支持部材7が阻止し、レール4の幅方向への防音材6及び支持部材7の移動を位置決め部材8が阻止する。このため、列車が走行するときに発生する振動によって、防音材6の位置が変動するのを抑えることができる。その結果、レール4と防音材6との位置関係がずれて防音効果が低下してしまうのを防ぐことができる。
【0066】
(6) この第1実施形態では、レール底部4bの両側の底部側面4gを位置決め部材8が挟み込むことによってこの位置決め部材8が支持部材7を位置決めする。このため、簡単な構造によってレール底部4bを基準として支持部材7を正確に位置決めすることによって、防音材6を最適な位置に配置することができる。
【0067】
(7) この第1実施形態では、レール底部4bの一方の底部側面4gを位置決め部材8の押圧部材9が押圧し、このレール底部4bをこの押圧部材9との間で挟み込むように、このレール底部4bの他方の底部側面4gをこの位置決め部材8の押圧部材10が押圧する。このため、レール底部4bの左右の底部側面4gと押圧部材9,10とを密着させて、レール4に対して防音材6及び支持部材7を位置決めすることができる。また、防音材6及び支持部材7を撤去時には押圧部材9,10の押圧を解除し、防音材6及び支持部材7の装着時には押圧部材9,10によって押圧するだけで足りるため、防音材6及び支持部材7の着脱作業を短時間で簡単に実施することができる。
【0068】
(8) この第1実施形態では、押圧部材9,10を支持部材7に固定部材11,12が着脱自在に固定する。このため、支持部材7を現場に搬送するときに押圧部材9,10が邪魔にならず設置作業時に短時間で簡単に押圧部材9,10を支持部材7に固定することができる。また、支持部材7を積み重ねた状態で多量の支持部材7を一度に現場に搬入することができる。さらに、レール底部4bの底部下面4fとスラブ版2のスラブ面2aとの間の隙間に支持部材7を挿入してスラブ面2a上に支持部材7を設置するときに、レール底部4bと押圧部材9,10とが干渉するのを防ぐことができる。
【0069】
(9) この第1実施形態では、レール4と支持部材7との間を押圧部材9,10が電気的に絶縁するとともにこれらの間に伝わる振動を押圧部材9,10が低減する。このため、レール4と支持部材7とが電気的に短絡するのを防ぐことができるとともに、列車の通過によって発生する振動がレール4から支持部材7を通じて防音材6に伝播してこの防音材6が振動し、この防音材6から外部に騒音が放射されるのを押圧部材9,10によって防ぐことができる。
【0070】
(10) この第1実施形態では、レール4の継目部分以外の部分の側面と防音材6との間に隙間が形成されるように支持部材7がこの防音材6を支持する。このため、レール4から発生する騒音をこのレール4と防音材6との間の空間に閉じ込めて騒音を低減することができる。また、レール4と防音材6との間の隙間Δ1からレール点検時に作業員がレール4の状態を目視で確認することができる。
【0071】
(11) この第1実施形態では、レール4の長さ方向に沿って防音材6がレール締結装置3間に断続して配置されるようにこの防音材6を支持部材7が支持する。その結果、防音材6間の隙間にレール締結装置3が位置するため、レール点検時に作業員がレール締結装置3の状態を確実に目視で確認することができる。
【0072】
(12) この第1実施形態では、レール4の外側に防音材6が配置されるようにこの防音材6を支持部材7が支持する。このため、列車が通過したときにレール4の外側に放射する騒音を防音材6によって低減し、レール4に近い側の沿線の騒音を重点的に低減することができる。
【0073】
(13) この第1実施形態では、防音材6と支持部材7との間に伝わる振動を防振部材13,14が低減する。このため、列車の通過によって発生する振動がスラブ版2から支持部材7を通じて防音材6に伝播してこの防音材6が振動してこの防音材6から外部に騒音が放射されるのを防振部材13,14によって防ぐことができる。
【0074】
(14) この第1実施形態では、防音材6の内側に騒音を吸収する吸音材6aを有し、防音材6の外側に振動を低減する制振材6bを有する。このため、レール4から放射される転動騒音を吸音材6aによって吸収し、この吸音材6aの振動を制振材6bが抑えるため、制振材6bから外部に放射する騒音を低減することができる。
【0075】
(第2実施形態)
図7は、この発明の第2実施形態に係るレールの防音構造の斜視図である。図8は、この発明の第2実施形態に係るレールの防音構造の平面図である。図9は、この発明の第2実施形態に係るレールの防音構造の側面図である。図10は、図8のX方向から見た側面図であり、図10(A)は吸音材が切欠部を有する場合の側面図であり、図10(B)は吸音材が切欠部を有さない場合の側面図である。以下では、図1〜図6に示す部分と同一の部分については同一の番号を付して詳細な説明を省略する。
【0076】
図7〜図10に示す防音材6は、図9及び図10に示すように、道床16との間の隙間を塞ぐ塞ぎ部6jと、まくらぎ15との間の隙間を塞ぐ塞ぎ部6kなどを備えている。塞ぎ部6jは、道床16と防音材6の下面6eとの間の隙間から騒音が放射するのを防止する防音部として機能する。塞ぎ部6jは、外観が平板状の部材であり、防音材6の制振材6bの厚さと略同じ厚さで形成されており、隣り合うまくらぎ15間の距離と略同じ長さで形成されている。塞ぎ部6jは、制振材6bと同じ材質でこの制振材6bと一体形成されており、図7に示すように防音効果を向上させるために下縁部側が道床16内に埋設されている。
【0077】
図9及び図10に示す塞ぎ部6kは、まくらぎ15のまくらぎ上面15a及びまくらぎ側面15bと防音材6の下面6eとの間の隙間から騒音が放射するのを防止する防音部として機能するとともに、道床16と防音材6との間を電気的に絶縁しこれらの間に伝わる振動を低減する絶縁防振部としても機能する。塞ぎ部6kは、外観が帯状の部材であり、防音材6の制振材6bの厚さと略同じ厚さで形成されている。塞ぎ部6kは、まくらぎ上面15a及びまくらぎ側面15bに沿って所定の長さで形成されており、制振材6bの下縁部に接着剤などによって固定されている。塞ぎ部6kは、まくらぎ上面15a及びまくらぎ側面15bに凹凸(不陸)があるときにこの凹凸を吸収可能な電気絶縁性及び弾性を有する軟質ゴム又は発泡ゴムなどの不陸調整用パッキンであり、まくらぎ上面15a及びまくらぎ側面15bに押圧されることによって弾性変形してこれらのまくらぎ上面15a及びまくらぎ側面15bと密着する。
【0078】
図7〜図9に示す支持部材7は、まくらぎ15上に非固定状態で設置されており、位置決め部材8によってこのまくらぎ15上に位置決めされている。支持部材7は、図7及び図8に示すように、レール底部4bの底部下面4fとまくらぎ15のまくらぎ上面15aとの間の隙間に挿入されてこのまくらぎ上面15aに設置されている。支持部材7は、まくらぎ15上に設置されたときに、左右のレール4の長さ方向において隣り合うレール締結装置3のタイプレート3aの互に対向する側の側面と接触するように間隔をあけて平行に配置されている。支持部材7の厚さは、レール底部4bの底部下面4fとまくらぎ15のまくらぎ上面15aとの間の隙間よりも薄く形成されている。支持部材7は、ボルト又は接着剤などの固定部材によってまくらぎ上面15aに固定されておらず、固定部材を使用せずにこのまくらぎ上面15aに搭載のみされている。支持部材7は、図7に示すように、まくらぎ15のまくらぎ凹部15cとの間の隙間を塞ぐ塞ぎ部7cなどを備えており、この塞ぎ部7cはまくらぎ15上に支持部材7が安定して設置可能なように、支持部材7とまくらぎ15との間に挟み込まれるゴム又は合成樹脂などの隙間埋め部材(スペーサ)である。
【0079】
図7〜図9に示すまくらぎ15は、レール4を支持する支持体(支承体)である。まくらぎ15は、左右のレール4を固定して軌間を正確に保持し、レール4から伝達される列車荷重を道床16に分散させるために、図7に示すようにレール4と道床16との間に設置されている。図7〜図9に示すまくらぎ15は、レール4に対して直角に並べて敷設される横まくらぎ(一般区間で使用される並まくらぎ)であり、緊張材として使用される鋼材(Prestressing Steel(PC))によってプレストレスが与えられたプレストレスコンクリート製まくらぎ(PCまくらぎ)などである。まくらぎ15は、図7及び図8に示すように、レール4の長さ方向に所定の間隔をあけて配置されており、レール4を離散的に支持している。まくらぎ15は、図7に示すように、レール底部4bの底部下面4fを支持するレール座面と同じ高さのまくらぎ上面15aと、このまくらぎ上面15aの両縁部から下方に向かって傾斜するまくらぎ側面15bと、まくらぎ15の長さ方向の中間部に形成されたまくらぎ凹部15cなどを備えている。
【0080】
図7に示す道床16は、まくらぎ15を支持し路盤に荷重を分散し伝達する構造体である。道床16は、バラスト16aによって構成されたバラスト道床であり、バラスト16aはまくらぎ15と路盤との間に敷き詰められる砂利又は砕石などの粒状体である。
【0081】
この発明の第2実施形態に係るレールの防音構造には、第1実施形態の効果に加えて、以下に記載するような効果がある。
(1) この第2実施形態では、騒音を低減する防音材6を支持する支持部材7がまくらぎ15に非固定状態で設置されている。このため、まくらぎ15などの地上敷設物に孔などを開けずに防音材6を簡単に固定することができるとともに、レール4の点検時などに支持部材7を簡単にまくらぎ15から着脱することができる。
【0082】
(2) この第2実施形態では、レール底部4bの底部下面4fとまくらぎ15のまくらぎ上面15aとの間の隙間に支持部材7が挿入されてこのまくらぎ上面15aにこの支持部材7が設置されている。このため、既存の軌道構造を大規模に改変することなく、既存のレール4とまくらぎ15との間の隙間を有効に利用して支持部材7をまくらぎ15上に簡単に設置することができる。
【0083】
(3) この第2実施形態では、防音材6と道床16との間の隙間を塞ぐ塞ぎ部6jを防音材6が備えている。また、この第2実施形態では、防音材6とまくらぎ15との間の隙間を塞ぐ塞ぎ部6kを防音材6が備えている。このため、防音材6とまくらぎ15との間の隙間や防音材6と道床16との間の隙間から騒音が外部に漏れ出すのを防止することができるとともに、レール4、防音材6、まくらぎ15及び道床16によって囲まれる空間内に騒音を閉じ込めてこの騒音が外部に放射されるのを可能な限り防ぐことができる。
【0084】
(第3実施形態)
図11は、この発明の第3実施形態に係るレールの防音構造の斜視図である。図12は、この発明の第3実施形態に係るレールの防音構造の平面図である。図13は、この発明の第3実施形態に係るレールの防音構造の側面図であり、図13(A)は吸音材が切欠部を有する場合の側面図であり、図13(B)は吸音材が切欠部を有さない場合の側面図である。図14は、図12のXIV方向から見た側面図である。図15は、図12のXV-XV線で切断した状態を示す断面図である。
【0085】
図11〜図15に示す支持部材7は、図15に示すように、レール底部4bの底部下面4fと道床16のバラスト16aとの間の隙間に挿入されてこのバラスト16a上に設置されており、位置決め部材8によって道床16上に位置決めされている。支持部材7は、図11及び図12に示すように、道床16上に設置されたときに、左右のレール4の長さ方向において隣り合うまくらぎ15の互に対向する側のまくらぎ側面15bと接触するように間隔をあけて平行に配置されている。図15に示すように、支持部材7の厚さはレール底部4bの底部下面4fと道床16との間の隙間よりも薄く形成されている。支持部材7は、固定部材によって道床16上に固定されておらず、固定部材を使用せずにこの道床16上に搭載のみされている。支持部材7は、列車通過時に発生するレール4の振動を遮断するように、道床16上に設置されたときにはレール底部4bの底部下面4fとこの支持部材7の上面との間に隙間を形成している。支持部材7は、図11〜図14に示す移動阻止部7bなどを備えており、図13に示すようにこの移動阻止部7bはまくらぎ側面15bの傾斜角度と同じ傾斜面に形成されている。
【0086】
この発明の第3実施形態に係るレールの防音構造には、第1実施形態及び第2実施形態の効果に加えて、以下に記載するような効果がある。
(1) この第3実施形態では、騒音を低減する防音材6を支持する支持部材7が道床16上に非固定状態で設置されている。このため、まくらぎ15などの地上敷設物に孔などを開けずに防音材6を簡単に固定することができるとともに、レール4の点検時などに支持部材7を簡単に道床16から着脱することができる。また、防音材6及び支持部材7の重量を道床16によって負担する構造であるため、大規模で強固な固定装置を使用せずに防音材6を設置することができる。
【0087】
(2) この第3実施形態では、レール底部4bの底部下面4fと道床16の上面との間の隙間に支持部材7が挿入されてこの道床16の上面にこの支持部材7が設置される。このため、既存の軌道構造を大規模に改変することなく、既存のレール4と道床16との間の隙間を有効に利用して支持部材7を道床16上に簡単に設置することができる。
【0088】
(3) この第3実施形態では、道床16との間の隙間を塞ぐ塞ぎ部6jを防音材6が備えている。このため、防音材6と道床16との間の隙間から騒音が外部に漏れ出すのを防止することができるとともに、レール4、防音材6、まくらぎ15及び道床16によって囲まれる空間内に騒音を閉じ込めてこの騒音が外部に放射されるのを可能な限り防ぐことができる。
【0089】
(4) この第3実施形態では、道床16上に支持部材7を位置決め部材8が位置決めする。このため、防音材6とレール4との位置関係が一定となり、最適な防音効果を発揮する位置にこの防音材6を正確に配置することができる。
【0090】
(第4実施形態)
図16は、この発明の第4実施形態に係るレールの防音構造の斜視図である。図17は、この発明の第4実施形態に係るレールの防音構造の平面図である。図18は、この発明の第4実施形態に係るレールの防音構造の側面図である。図19は、図17のXIX方向から見た側面図であり、図19(A)は吸音材が切欠部を有する場合の側面図であり、図19(B)は吸音材が切欠部を有さない場合の側面図である。図20は、図17のXX-XX線で切断した状態を示す断面図である。図21は、図17のXXI-XXI線で切断した状態を示す断面図である。
【0091】
図16〜図21に示す防音構造5は、防音材6A,6Bなどを備えている。防音構造5は、図16及び図17に示すように、右側のレール4の左右の防音材6A,6Bと左側のレール4の左右の防音材6A,6Bとを、レール4の長さ方向に間隔をあけて複数の支持部材7によって支持している。図16〜図21に示す防音材6A,6Bは、図1〜図15に示す防音材6と略同一構造であるが、図20及び図21に示すように防音材6Bは防音材6Aよりも高さが低く形成されている。図20及び図21に示すように、防音材6Aはレール4の外側側面と防音材6Aの内側側面との間に所定の隙間Δ2をあけており、防音材6Bはレール4の内側側面と防音材6Bの内側側面との間に所定の隙間Δ2をあけている。ここで、隙間Δ2は、5mm未満であるとレール点検時などにレール4の側面を目視で検査することが困難になり、100mmを超えると外部に放射する騒音が増加して防音効果が低減するため、5mm以上100mm以下に設定することが好ましい。防音材6Aは、図20及び図21に示すように、吸音材6aと継目板18Aとの干渉を防ぐために、レール頭部4aと対向する吸音材6aの先端面から後方に向かって下方に傾斜する傾斜面がこの吸音材6aに形成されている。一方、防音材6Bは、吸音材6aと継目板18Bとの干渉を防ぐために、レール頭部4aと対向する吸音材6aの先端面が制振材6bの先端部よりも後方に位置するように形成されている。防音材6A,6Bは、図16及び図17に示すように、レール4の長さ方向に沿ってレール4と平行に配置されており、レール4の継目部分を跨ぐように取り付けられた軟銅線からなる図示しないレールボンドから離間して電気的に絶縁されているとともに、レール4及びレール締結装置3からも離間して電気的に絶縁されている。防音材6A,6Bは、図20及び図21に示すように、建築限界Lを超えないように、防音材6Aは上面6dがレール頭部4aの頭頂面4dと同じ高さであるが、防音材6Bは上面6dがレール頭部4aの頭頂面4dよりも低い。防音材6A,6Bは、図21に示すように、レール締結装置3の外側からレール頭部4aに向かって伸びているため、図5に示す防音材6に比べて上面6dの幅が広く形成されている。防音材6A,6Bは、図16〜図19に示すように、所定の長さで形成されており、図16〜図18に示すように端面6c同士を突き合せて連続して配置されている。
【0092】
図20及び図21に示す吸音材6aは、図1〜図15に示す吸音材6aとは異なり、外観が略L字状の板状部材であり、図19に示すように切欠部6h,6iなどを備えている。図19(A)に示す切欠部6hは、レール締結装置3、支持部材7及び位置決め部材8との干渉を防ぐ部分であり、これらのレール締結装置3、支持部材7及び位置決め部材8を避ける逃げ部である。切欠部6hは、図19(B)に示すように、省略可能であり制振材6bの幅方向に直線状に形成可能である。図19(A)(B)に示す切欠部6iは、防音材6A,6Bと支持部材7との干渉を防ぐ部分であり、防音材6A,6Bの制振材6bの下縁部に形成された逃げ部である。
【0093】
図16〜図21に示す支持部材7は、図17に示すように、レール4の継目部分(継目区間)の側面と防音材6A,6Bとの間に隙間Δ2が形成されるようにこの防音材6A,6Bを支持している。支持部材7は、この継目部分(継目区間)の前後の継目部分以外の部分(一般区間)のレール4の側面と防音材6A,6Bとの間にも隙間Δ2が形成されるようにこの防音材6A,6Bを支持している。支持部材7は、左右のレール4の外側に防音材6Aが配置され、左右のレール4の内側に防音材6Bが配置されるように支持している。支持部材7は、図17に示すように、レール4の長さ方向に沿って防音材6A,6Bがレール締結装置3よりも外側に連続して配置されるようにこれらの防音材6A,6Bを支持している。支持部材7は、スラブ版2のスラブ面2a上に設置されたときに、左右のレール締結装置3のタイプレート3aの側面と接触するように、レール4の長さ方向に間隔をあけて平行に配置されている。位置決め部材8は、図20に示すように、図5及び図15に示す位置決め部材8とは異なり、固定部材11の受け部材11aと同一構造の断面U字状の受け部材12aを固定部材12が備えている。図20に示す固定部材11,12は、いずれも同一構造であり、以下では固定部材12側の部分と対応する固定部材11側の部分については対応する符号を付して詳細な説明を省略する。
【0094】
図16及び図17に示す継目構造17は、レール4の継目部分の両側に継目板18A,18Bを固定して、この継目部分を継目板18A,18Bによって連結する構造である。継目構造17は、例えば、一対の継目板18A,18Bをレール腹部4cに当てて継目板ボルト19aによって組み立て、レール端部を突き合せて接続した普通継目である。継目構造17は、図17に示すように、継目部分の直下にレール締結装置3を配置する支え継ぎ法によってこの継目部分を支持する支え継目である。継目構造17には、レール4の温度伸縮をある程度吸収するために、図16及び図17に示すようにレール4の継目部分の接続部に所定の適正値で隙間(継目遊間)が設定されている。継目構造17は、図21に示すように、継目板18A,18Bと締結部材19などを備えている。
【0095】
図21に示す継目板18A,18Bは、レール4の継目部分におけるレール腹部4cの両側面に継目板ボルト19aによって固定されてレール4を接続する部材である。継目板18A,18Bは、レール頭部4aの顎部と対向する頭部18aと、レール底部4bの上部と対向する底部18bと、頭部18aと底部18bとを繋ぐ腹部18cなどを備えている。
【0096】
締結部材19は、レール4の継目部分の両側に継目板18A,18Bを締結する部材である。締結部材19は、継目板ボルト19aとナット19bなどを備えている。継目板ボルト19aは、レール4と継目板18A,18Bとを締結するためのボルトであり、レール4及び継目板18A,18Bの長さ方向に所定の間隔をあけて形成された貫通孔に挿入される。ナット19bは、継目板ボルト19aに装着される部材であり、継目板ボルト19aの雄ねじ部と噛み合う雌ねじ部を備えている。
【0097】
次に、この発明の第4実施形態に係るレールの防音構造の装着方法を説明する。
図16及び図17に示す左右一対のレール4のレール底部4bとスラブ版2のスラブ面2aとの間に支持部材7を挿入し、レール締結装置3のタイプレート3aの側面に支持部材7の移動阻止部7bを接触させて、スラブ版2のスラブ面2a上に支持部材7を設置する。次に、図20に示すように、支持部材7に防振部材13,14及び受け部材11a,12aを設置した後に、受け部材11aの長孔11c及び防振部材13の長孔13aに締結ボルト11mを挿入するとともに、受け部材12aの長孔12c及び防振部材14の長孔14aに締結ボルト12mを挿入する。防音材6A,6Bとレール頭部4aとの間の隙間Δ2が設定値になるように、レール底部4bの底部側面4gと受け部材11a,12aの押圧面11d,12dとの間にそれぞれ最適な厚さの押圧部材9,10を差し込む。底部側面4gに押圧部材9,10が密着するように、受け部材11a,12a及び防振部材13,14を支持部材7上でそれぞれスライドさせて位置調整した後に、締結ボルト11m,12mの雄ねじ部を雌ねじ部11k,12kにねじ込み、受け部材11a,12aを支持部材7に固定する。
【0098】
次に、防音材6A,6Bの制振材6bと受け部材11a,12aとを接合させた状態で、締結ボルト11f,12fに座金11h,12hを装着して、防音材6A,6Bの制振材6bの長孔6f及び受け部材11a,12aの長孔11b,12bに締結ボルト11f,12fを挿入し、この締結ボルト11f,12fに座金11i,12iを装着して締結ナット11g,12gを仮締めする。この状態で、防音材6Aの高さがレール頭部4aの高さと略同じになるように、受け部材11aに沿って防音材6Aを上下方向にスライドさせて位置調整するとともに、防音材6Bの高さがレール頭部4aの高さよりも僅かに低くなるように、受け部材12aに沿って防音材6Bを上下方向にスライドさせて位置調整する。位置調整後に締結ナット11g,12gを本締めして、防音材6A,6Bと受け部材11a,12aとを連結する。その結果、位置決め部材8の押圧部材9,10がレール底部4bを挟み込み、レール4に対して防音材6A,6B及び支持部材7がスラブ版2上に位置決めされる。
【0099】
この発明の第4実施形態に係るレールの防音構造には、第1実施形態〜第3実施形態の効果に加えて、以下に記載するような効果がある。
(1) この第4実施形態では、レール4の継目部分の側面と防音材6A,6Bとの間に隙間Δ2が形成されるようにこの防音材6A,6Bを支持部材7が支持する。このため、レール4の継目部分から発生する騒音をこのレール4と防音材6A,6Bとの間の空間に閉じ込めて騒音を低減することができる。また、レール4と防音材6A,6Bとの間の隙間Δ2からレール点検時に作業員がレール4の状態を目視で確認することができる。
【0100】
(2) この第4実施形態では、レール4の長さ方向に沿って防音材6A,6Bがレール締結装置3よりも外側に連続して配置されるようにこの防音材6A,6Bを 支持部材7が支持する。その結果、図1〜図15に示す防音構造5とは異なり、レール締結装置3の外側を塞ぐようにこのレール締結装置3の外側にも防音材6A,6Bが連続して位置するため、レール4から発生する騒音をより一層低減することができる。また、図1〜図15に示す防音構造5に比べて長尺の防音材6A,6Bを連続して設置するため、設置作業が容易になり設置作業を短時間で実施することができる。
【0101】
(3) この第4実施形態では、レール4の外側及び内側に防音材6A,6Bが配置されるようにこの防音材6A,6Bを支持部材7が支持する。その結果、図1〜図15に示す防音構造5とは異なり、レール4の内側及び外側に放射する騒音を防音材6A,6Bによって低減するため、防音効果をより一層向上させることができる。
【0102】
(第5実施形態)
図22は、この発明の第5実施形態に係るレールの防音構造の断面図である。
図22に示す防音材6は、図5及び図15に示す吸音材6aとは断面形状が異なり、吸音材6aの断面が制振材6bと同じ略L字状に形成されている。この第5実施形態では、第1実施形態〜第4実施形態の効果に加えて、レール頭部4aと対向する部分の吸音材6aの厚さがレール底部4bと対向する部分の吸音材6aの厚さよりも厚いため、レール頭部4aから発生する騒音を吸音材6aによって吸収し騒音をより一層低減することができる。
【0103】
(第6実施形態)
図23は、この発明の第6実施形態に係るレールの防音構造の断面図である。
図23に示す防音材6は、図22に示す吸音材6aとは断面形状が異なり、吸音材6aの断面が上部から下部に向かって徐々に厚さが薄くなるように、吸音材6aの表面が平坦な傾斜面に形成されている。この第6実施形態では、第1実施形態〜第5実施形態の効果に加えて、列車通過時に大きく振動するレール頭部4aから放射する騒音を低減することができるとともに、吸音材6aの厚さが厚くなるため吸音効果をより一層向上させることができる。
【0104】
(第7実施形態)
図24は、この発明の第7実施形態に係るレールの防音構造の断面図である。
図24に示す防音材6は、図22及び図23に示す吸音材6aとは断面形状が異なり、吸音材6aの断面が上部から徐々に厚さが薄くなり途中から下部までは厚さが一定になるように、吸音材6aの表面が平坦な傾斜面と垂直面に形成されている。この第7実施形態では、第1実施形態〜第6実施形態の効果に加えて、レール頭部4aから放射する騒音を重点的に低減しつつ、吸音材6aの厚さを可能な限り薄くして材料費を低減することができる。
【0105】
(第8実施形態)
図25は、この発明の第8実施形態に係るレールの防音構造の断面図である。
図25に示す防音材6は、図22〜図24に示す制振材6bとは断面形状が異なり、制振材6bが平板状に形成されており、上面6dには制振材6bがなく吸音材6aが上面6dから露出し、吸音材6aの断面が略L字状に形成されている。この第8実施形態では、第1実施形態〜第7実施形態の効果に加えて、レール4と防音材6との間の隙間Δ1から外部に放射する騒音を吸音材6aによって吸収し騒音をより一層低減することができる。
【0106】
(第9実施形態)
図26は、この発明の第9実施形態に係るレールの防音構造の断面図である。
図26に示す位置決め部材8は、図5、図15及び図22〜図24に示す位置決め部材8とは異なり、固定部材12の受け部材12aと同一構造の断面L字状の受け部材11aを固定部材11が備えており、図5、図15及び図22〜図24に示す位置決め部材8の押圧部材9とは異なり楔部材20を備えている。受け部材11aは、制振材6b及び楔部材20を受ける部分であり、図5に示す受け部材12aと同様の山形鋼などを支持部材7と略同じ幅に切断して形成した止め金具である。受け部材11aは、押圧面11dを備えており、この押圧面11dはレール底部4bの底部側面4gに向けて楔部材20を押圧する部分である。押圧面11dは、受け部材11aの側板部の表面に形成されており、押圧面11dには楔部材20の後端面が密着している。
【0107】
楔部材20は、レール底部4bを押圧部材10との間で挟み込むように、このレール底部4bの一方の底部側面(外側底部側面)4gと支持部材7の上面との間に差し込まれる部分である。楔部材20は、レール4と支持部材7との間を電気的に絶縁するとともにこれらの間に伝わる振動を低減する。楔部材20は、支持部材7と略同じ幅に形成されており垂直面で切断したときの断面が三角形状に形成されている。楔部材20は、例えば、レール4と防音材6との間の隙間Δ1を調整するための隙間調整部材(スペーサ)として機能し、長さ又は傾斜角度の異なるものが予め複数存在し、隙間Δ1の設定値に応じて任意のものを選択し固定部材11の押圧面11dとレール底部4bの底部側面4gとの間に装着される。楔部材20は、例えば、電気絶縁性及び弾性を有するとともに列車通過時にレール4から伝わる衝撃を緩和する緩衝ゴム(防振ゴム)などの弾性体であり、レール底部4bの底部側面4gに押圧されることによって傾斜面が弾性変形してこの底部側面4gと密着する。
【0108】
この発明の第9実施形態に係るレールの防音構造には、第1実施形態〜第8実施形態の効果に加えて、以下に記載するような効果がある。
(1) この第9実施形態では、レール底部4bの一方の底部側面4gを位置決め部材8の押圧部材10が押圧し、このレール底部4bをこの押圧部材10との間で挟み込むように、このレール底部4bの他方の底部側面4gと支持部材7の上面との間に楔部材20が差し込まれる。このため、図5に示す位置決め部材8のような押圧部材9を固定するための固定部材11が不要になって、楔部材20を差し込む簡単な作業でレール4に対して防音材6及び支持部材7を正確に位置決めすることができるとともに、防音材6及び支持部材7の着脱作業を短時間で簡単に実施することができる。
【0109】
(2) この第9実施形態では、レール4と支持部材7との間を電気的に絶縁するとともにこれらの間に伝わる振動を押圧部材10及び楔部材20が低減する。このため、レール4と支持部材7とが電気的に短絡するのを防ぎ、レール4から支持部材7を通じて防音材6に伝播する振動を抑えることができる。
【0110】
(他の実施形態)
この発明は、以上説明した実施形態に限定するものではなく、以下に記載するように種々の変形又は変更が可能であり、これらもこの発明の範囲内である。
(1) この実施形態では、スラブ版2によって構成された省力化軌道や、バラスト16aによって構成された有道床軌道を例に挙げて説明したが、橋梁上に敷設された軌道などについてもこの発明を適用することができる。また、この実施形態では、支持体がスラブ版2又はまくらぎ15である場合を例に挙げて説明したが他の支持体についてもこの発明を適用することができる。例えば、左右一対のレール4をそれぞれ支持するプレストレスコンクリート構造(PRC構造)の縦梁を鋼管製の継材によって連結する梯子状のラダーまくらぎなどの支持体についても、この発明を適用することができる。この場合には、支持部材7を縦梁上に非固定状態で設置することができる。
【0111】
(2) この実施形態では、レール締結装置3がタイプレート式のレール締結装置である場合を例に挙げて説明したが、タイプレート3aを使用しない直結方式のレール締結装置についてもこの発明を適用することができる。また、この実施形態では、固定部材11,12によって押圧部材9,10を支持部材7に着脱自在に固定する場合を例に挙げて説明したが、押圧部材9,10のいずれか一方を着脱不可能なように支持部材7に固定することもできる。さらに、この実施形態では、受け部材11a,12aが略U字状又は略L字状の止め金具である場合を例に挙げて説明したが、中空角型の止め金具などを受け部材11a,12aに使用することもできる。
【0112】
(3) この実施形態では、左右のレール4の底部下面4fに1本の支持部材7を交差させて防音材6,6A,6Bを支持する場合を例に挙げて説明したが、左右のレール4の底部下面4fにそれぞれ1本の支持部材7を交差させて各支持部材7によって防音材6,6A,6Bを支持することもできる。また、この実施形態では、締結部材11j,12jの雌ねじ部11k,12kに締結ボルト11m,12mをねじ込み受け部材11a,12aを固定する場合を例に挙げて説明したが、締結ボルトを支持部材7に溶接などによって固定し、この締結ボルトに締結ナットを締結して受け部材11a,12aを固定することもできる。
【0113】
(4) この第1実施形態〜第3実施形態では、図2、図8及び図12に示すように、レール4の外側に防音材6を配置する場合を例に挙げて説明したが、図17に示すようにレール4の内側及び外側に防音材6A,6Bを配置したり、レール4の内側のみに防音材6を配置したりすることもできる。また、この第1実施形態〜第3実施形態では、図2、図8及び図12に示すように、レール締結装置3間に防音材6をレール4の長さ方向に断続して配置する場合を例に挙げて説明したが、図17に示すように、レール締結装置3よりも外側に防音材6をレール4の長さ方向に連続して配置することもできる。
【0114】
(5) この第4実施形態では、継目構造17が普通継目である場合を例に挙げて説明したが普通継目以外の継目構造についてもこの発明を適用することができる。例えば、継目部分の両側と継目板との間に絶縁材を挟み込みこの継目部分を電気的に絶縁して接続する絶縁継目、継目部分の両側に継目板を絶縁性の接着材によって接着してこの継目部分を電気的に絶縁して接続する接着絶縁継目、又は継目部分を伸縮自在に接続する伸縮継目などについてもこの発明を適用することができる。また、この第4実施形態では、継目部分の直下にレール締結装置3を配置する支え継目を例に挙げて説明したが、継目部分の直下にレール締結装置3を配置させずに、隣り合うレール締結装置3の中間に継目を設ける掛け継目についてもこの発明を適用することができる。
【0115】
(6) この第4実施形態では、図17に示すように、レール4の内側及び外側に防音材6A,6Bを配置する場合を例に挙げて説明したが、図2、図8及び図12に示すようにレール4の外側のみに防音材6を配置したり、レール4の内側のみに防音材6を配置したりすることもできる。また、この第4実施形態では、図17に示すように、レール締結装置3よりも外側に防音材6をレール4の長さ方向に連続して配置する場合を例に挙げて説明したが、図2、図8及び図12に示すようにレール締結装置3間に防音材6をレール4の長さ方向に断続して配置することもできる。さらに、この第5実施形態〜第8実施形態では、図22〜図25に示すように、レール4の外側に防音材6を配置する場合を例に挙げて説明したが、図20に示すようにレール4の外側及び内側に防音材6を配置したり、レール4の内側のみに防音材6を配置したりすることもできる。
【符号の説明】
【0116】
1 車輪
2 スラブ版(支持体)
2a スラブ面
3 レール締結装置
3a タイプレート
4 レール
4a レール頭部
4b レール底部
4f 底部下面
4g 底部側面
5 防音構造
6,6A,6B 防音材
6a 吸音材
6b 制振材
6g,6j,6k 塞ぎ部
7 支持部材
7a 設置部
7b 移動阻止部
8 位置決め部材
9,10 押圧部材
11,12 固定部材
11a,12a 受け部材
11e,11j,12e,12j 締結部材
13,14 防振部材
15 まくらぎ(支持体)
15a まくらぎ上面
15b まくらぎ側面
16 道床
16a バラスト
17 継目構造
18A,18B 継目板
19 締結部材
Δ1,Δ2 隙間
L 建築限界
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レールの振動によって発生する騒音を低減するレールの防音構造であって、
前記騒音を低減する防音材を支持する支持部材を備え、
前記支持部材は、前記レールを支持する支持体上に非固定状態で設置されること、
を特徴とするレールの防音構造。
【請求項2】
請求項1に記載のレールの防音構造において、
前記支持部材は、前記レールの底部下面と前記支持体の上面との間の隙間に挿入されてこの支持体の上面に設置されること、
を特徴とするレールの防音構造。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のレールの防音構造において、
前記防音材は、前記支持体との間の隙間を塞ぐ塞ぎ部を備えること、
を特徴とするレールの防音構造。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載のレールの防音構造において、
前記防音材は、前記支持体を支持する道床との間の隙間を塞ぐ塞ぎ部を備えること、
を特徴とするレールの防音構造。
【請求項5】
レールの振動によって発生する騒音を低減するレールの防音構造であって、
前記騒音を低減する防音材を支持する支持部材を備え、
前記支持部材は、前記レールを支持する支持体を支持する道床上に非固定状態で設置されること、
を特徴とするレールの防音構造。
【請求項6】
請求項5に記載のレールの防音構造において、
前記支持部材は、前記レールの底部下面と前記道床の上面との間の隙間に挿入されてこの道床の上面に設置されること、
を特徴とするレールの防音構造。
【請求項7】
請求項5又は請求項6に記載のレールの防音構造において、
前記防音材は、前記道床との間の隙間を塞ぐ塞ぎ部を備えること、
を特徴とするレールの防音構造。
【請求項8】
請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載のレールの防音構造において、
前記支持体上に前記支持部材を位置決めする位置決め部材を備えること、
を特徴とするレールの防音構造。
【請求項9】
請求項5から請求項7までのいずれか1項に記載のレールの防音構造において、
前記道床上に前記支持部材を位置決めする位置決め部材を備えること、
を特徴とするレールの防音構造。
【請求項10】
請求項8又は請求項9に記載のレールの防音構造において、
前記支持部材は、前記レールの長さ方向への前記防音材の移動を阻止し、
前記位置決め部材は、前記レールの幅方向への前記防音材及び前記支持部材の移動を阻止すること、
を特徴とするレールの防音構造。
【請求項11】
請求項8から請求項10までのいずれか1項に記載のレールの防音構造において、
前記位置決め部材は、レール底部の両側側面を挟み込むことによって前記支持部材を位置決めすること、
を特徴とするレールの防音構造。
【請求項12】
請求項8から請求項11までのいずれか1項に記載のレールの防音構造において、
前記位置決め部材は、
前記レール底部の一方の側面を押圧する第1の押圧部材と、
前記レール底部を前記第1の押圧部材との間で挟み込むように、このレール底部の他方の側面を押圧する第2の押圧部材とを備えること、
を特徴とするレールの防音構造。
【請求項13】
請求項12に記載のレールの防音構造において、
前記位置決め部材は、前記第1及び/又は前記第2の押圧部材を前記支持部材に着脱自在に固定する固定部材を備えること、
を特徴とするレールの防音構造。
【請求項14】
請求項12又は請求項13に記載のレールの防音構造において、
前記押圧部材は、前記レールと前記支持部材との間を電気的に絶縁するとともにこれらの間に伝わる振動を低減すること、
を特徴とするレールの防音構造。
【請求項15】
請求項8から請求項14までのいずれか1項に記載のレールの防音構造において、
前記位置決め部材は、
前記レール底部の一方の側面を押圧する押圧部材と、
前記レール底部を前記押圧部材との間で挟み込むように、このレール底部の他方の側面と前記支持部材の上面との間に差し込まれる楔部材とを備えること、
を特徴とするレールの防音構造。
【請求項16】
請求項15に記載のレールの防音構造において、
前記位置決め部材は、前記押圧部材を前記支持部材に着脱自在に固定する固定部材を備えること、
を特徴とするレールの防音構造。
【請求項17】
請求項15又は請求項16に記載のレールの防音構造において、
前記押圧部材及び前記楔部材は、前記レールと前記支持部材との間を電気的に絶縁するとともにこれらの間に伝わる振動を低減すること、
を特徴とするレールの防音構造。
【請求項18】
請求項1から請求項17までのいずれか1項に記載のレールの防音構造において、
前記支持部材は、前記レールの継目部分以外の部分の側面と前記防音材との間に隙間が形成されるようにこの防音材を支持すること、
を特徴とするレールの防音構造。
【請求項19】
請求項1から請求項18までのいずれか1項に記載のレールの防音構造において、
前記支持部材は、前記レールの継目部分の側面と前記防音材との間に隙間が形成されるようにこの防音材を支持すること、
を特徴とするレールの防音構造。
【請求項20】
請求項1から請求項19までのいずれか1項に記載のレールの防音構造において、
前記支持部材は、前記レールの長さ方向に沿って前記防音材がレール締結装置間に断続して配置されるようにこの防音材を支持すること、
を特徴とするレールの防音構造。
【請求項21】
請求項1から請求項19までのいずれか1項に記載のレールの防音構造において、
前記支持部材は、前記レールの長さ方向に沿って前記防音材がレール締結装置よりも外側に連続して配置されるようにこの防音材を支持すること、
を特徴とするレールの防音構造。
【請求項22】
請求項1から請求項21までのいずれか1項に記載のレールの防音構造において、
前記支持部材は、前記レールの外側及び/又は内側に前記防音材が配置されるようにこの防音材を支持すること、
を特徴とするレールの防音構造。
【請求項23】
請求項1から請求項22までのいずれか1項に記載のレールの防音構造において、
前記支持部材と前記防音材との間に伝わる振動を低減する防振部材を備えること、
を特徴とするレールの防音構造。
【請求項24】
請求項1から請求項23までのいずれか1項に記載のレールの防音構造において、
前記防音材は、内側に前記騒音を吸収する吸音材を有し、外側に前記振動を低減する制振材を有すること、
を特徴とするレールの防音構造。
【請求項25】
請求項24に記載のレールの防音構造において、
前記吸音材は、レール頭部と対向する部分の厚さがレール底部と対向する部分の厚さよりも厚いこと、
を特徴とするレールの防音構造。
【請求項26】
請求項24又は請求項25に記載のレールの防音構造において、
前記吸音材は、前記レールとの間の隙間から外部に放射する騒音を吸収すること、
を特徴とするレールの防音構造。
【請求項1】
レールの振動によって発生する騒音を低減するレールの防音構造であって、
前記騒音を低減する防音材を支持する支持部材を備え、
前記支持部材は、前記レールを支持する支持体上に非固定状態で設置されること、
を特徴とするレールの防音構造。
【請求項2】
請求項1に記載のレールの防音構造において、
前記支持部材は、前記レールの底部下面と前記支持体の上面との間の隙間に挿入されてこの支持体の上面に設置されること、
を特徴とするレールの防音構造。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のレールの防音構造において、
前記防音材は、前記支持体との間の隙間を塞ぐ塞ぎ部を備えること、
を特徴とするレールの防音構造。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載のレールの防音構造において、
前記防音材は、前記支持体を支持する道床との間の隙間を塞ぐ塞ぎ部を備えること、
を特徴とするレールの防音構造。
【請求項5】
レールの振動によって発生する騒音を低減するレールの防音構造であって、
前記騒音を低減する防音材を支持する支持部材を備え、
前記支持部材は、前記レールを支持する支持体を支持する道床上に非固定状態で設置されること、
を特徴とするレールの防音構造。
【請求項6】
請求項5に記載のレールの防音構造において、
前記支持部材は、前記レールの底部下面と前記道床の上面との間の隙間に挿入されてこの道床の上面に設置されること、
を特徴とするレールの防音構造。
【請求項7】
請求項5又は請求項6に記載のレールの防音構造において、
前記防音材は、前記道床との間の隙間を塞ぐ塞ぎ部を備えること、
を特徴とするレールの防音構造。
【請求項8】
請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載のレールの防音構造において、
前記支持体上に前記支持部材を位置決めする位置決め部材を備えること、
を特徴とするレールの防音構造。
【請求項9】
請求項5から請求項7までのいずれか1項に記載のレールの防音構造において、
前記道床上に前記支持部材を位置決めする位置決め部材を備えること、
を特徴とするレールの防音構造。
【請求項10】
請求項8又は請求項9に記載のレールの防音構造において、
前記支持部材は、前記レールの長さ方向への前記防音材の移動を阻止し、
前記位置決め部材は、前記レールの幅方向への前記防音材及び前記支持部材の移動を阻止すること、
を特徴とするレールの防音構造。
【請求項11】
請求項8から請求項10までのいずれか1項に記載のレールの防音構造において、
前記位置決め部材は、レール底部の両側側面を挟み込むことによって前記支持部材を位置決めすること、
を特徴とするレールの防音構造。
【請求項12】
請求項8から請求項11までのいずれか1項に記載のレールの防音構造において、
前記位置決め部材は、
前記レール底部の一方の側面を押圧する第1の押圧部材と、
前記レール底部を前記第1の押圧部材との間で挟み込むように、このレール底部の他方の側面を押圧する第2の押圧部材とを備えること、
を特徴とするレールの防音構造。
【請求項13】
請求項12に記載のレールの防音構造において、
前記位置決め部材は、前記第1及び/又は前記第2の押圧部材を前記支持部材に着脱自在に固定する固定部材を備えること、
を特徴とするレールの防音構造。
【請求項14】
請求項12又は請求項13に記載のレールの防音構造において、
前記押圧部材は、前記レールと前記支持部材との間を電気的に絶縁するとともにこれらの間に伝わる振動を低減すること、
を特徴とするレールの防音構造。
【請求項15】
請求項8から請求項14までのいずれか1項に記載のレールの防音構造において、
前記位置決め部材は、
前記レール底部の一方の側面を押圧する押圧部材と、
前記レール底部を前記押圧部材との間で挟み込むように、このレール底部の他方の側面と前記支持部材の上面との間に差し込まれる楔部材とを備えること、
を特徴とするレールの防音構造。
【請求項16】
請求項15に記載のレールの防音構造において、
前記位置決め部材は、前記押圧部材を前記支持部材に着脱自在に固定する固定部材を備えること、
を特徴とするレールの防音構造。
【請求項17】
請求項15又は請求項16に記載のレールの防音構造において、
前記押圧部材及び前記楔部材は、前記レールと前記支持部材との間を電気的に絶縁するとともにこれらの間に伝わる振動を低減すること、
を特徴とするレールの防音構造。
【請求項18】
請求項1から請求項17までのいずれか1項に記載のレールの防音構造において、
前記支持部材は、前記レールの継目部分以外の部分の側面と前記防音材との間に隙間が形成されるようにこの防音材を支持すること、
を特徴とするレールの防音構造。
【請求項19】
請求項1から請求項18までのいずれか1項に記載のレールの防音構造において、
前記支持部材は、前記レールの継目部分の側面と前記防音材との間に隙間が形成されるようにこの防音材を支持すること、
を特徴とするレールの防音構造。
【請求項20】
請求項1から請求項19までのいずれか1項に記載のレールの防音構造において、
前記支持部材は、前記レールの長さ方向に沿って前記防音材がレール締結装置間に断続して配置されるようにこの防音材を支持すること、
を特徴とするレールの防音構造。
【請求項21】
請求項1から請求項19までのいずれか1項に記載のレールの防音構造において、
前記支持部材は、前記レールの長さ方向に沿って前記防音材がレール締結装置よりも外側に連続して配置されるようにこの防音材を支持すること、
を特徴とするレールの防音構造。
【請求項22】
請求項1から請求項21までのいずれか1項に記載のレールの防音構造において、
前記支持部材は、前記レールの外側及び/又は内側に前記防音材が配置されるようにこの防音材を支持すること、
を特徴とするレールの防音構造。
【請求項23】
請求項1から請求項22までのいずれか1項に記載のレールの防音構造において、
前記支持部材と前記防音材との間に伝わる振動を低減する防振部材を備えること、
を特徴とするレールの防音構造。
【請求項24】
請求項1から請求項23までのいずれか1項に記載のレールの防音構造において、
前記防音材は、内側に前記騒音を吸収する吸音材を有し、外側に前記振動を低減する制振材を有すること、
を特徴とするレールの防音構造。
【請求項25】
請求項24に記載のレールの防音構造において、
前記吸音材は、レール頭部と対向する部分の厚さがレール底部と対向する部分の厚さよりも厚いこと、
を特徴とするレールの防音構造。
【請求項26】
請求項24又は請求項25に記載のレールの防音構造において、
前記吸音材は、前記レールとの間の隙間から外部に放射する騒音を吸収すること、
を特徴とするレールの防音構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【公開番号】特開2011−58205(P2011−58205A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−207129(P2009−207129)
【出願日】平成21年9月8日(2009.9.8)
【出願人】(000173784)財団法人鉄道総合技術研究所 (1,666)
【出願人】(000110804)ニチアス株式会社 (432)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年9月8日(2009.9.8)
【出願人】(000173784)財団法人鉄道総合技術研究所 (1,666)
【出願人】(000110804)ニチアス株式会社 (432)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]