説明

レール小返り整正器

【課題】レール基部に対するレール頭部、腹部の傾斜を整正することができるレール小返り整正器を提供する。
【解決手段】レールRの下方に配置される基台1上に取り付けられる固定治具2と、固定治具2に水平方向に移動自在に螺合されて先端部の押圧部6によってレール頭部R3を側方から押圧する押出部材4とを有し、押出部材4と対向する側に位置する固定治具2の内側に、レール基部R1の一方側の側縁部R2に係合される係合溝3を設ける。レールRを上方から跨ぐように固定治具2を配置し、固定治具2の内側の係合溝3に、レール基部R1の一方側の側縁部R2に係合させ、押出部材4の押圧部6を水平移動させた場合に、レール頭部R3を側方に押圧することができ、レール頭部R3、腹部R4のレール小返りが整正される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は現場においてレールを接続する二次溶接、三次溶接時に用いられて、レール基部に対するレール頭部、腹部の傾斜を整正するレール小返り整正器に関する。
【背景技術】
【0002】
レールの傾きを整正する技術として、特開平8−302604号公報に示されるレール転倒防止装置が知られている。このレール転倒防止装置は、枕木に固定される本体部と、この本体部上の支持台に水平方向に移動自在に設けられた芯軸と、この芯軸の先端に設けられたローラとを具備するものであって、芯軸の先端のローラで、レールの腹部を側方から押圧することにより、レールの小返りを防止する。
【特許文献1】特開平8−302604号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、現場では、長尺の175Mレールを載置する仮設受け台の載置状態(高低、通り(軌間線)のずれ)によっては、受け台上にあるレールの基部に対してレール頭部、腹部が傾斜してしまう場合があり、レール芯出し時においてこれを整正する必要がある。しかしながら、芯出し時においてこのような整正作業を行うことで、芯出し作業時間が長くなり、作業能率の低下を招くという問題が生じる。一方、背景技術で述べたレール転倒防止装置は、不良レール交換時においてレール腹部を側方から支持して、レール曲線部に加わるレールの傾き、転倒を防止するものであって、上述したレール基部に対して傾斜したレール頭部、腹部を整正することはできず、この点において新しい技術の提供が求められていた。
【0004】
本発明は、従来の有していた問題を解決しようとするものであって、レール基部に対するレール頭部、腹部の傾斜を整正することができるレール小返り整正器の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そして、上記目的を達成するために本発明の課題解決手段では、レールの下方に配置される基台上に取り付けられかつ該レールを上方から跨ぐように配置される固定治具と、この固定治具に水平方向に移動可能に設けられてその先端部の押圧部によってレール頭部を側方から押圧する押出部材とを具備し、前記レールを挟んで押出部材と対向する側に位置する固定治具の内側に、レール基部の一方側の側縁部に係合される係合溝を設ける。また、本発明の課題解決手段では、前記固定治具を、レール下方に配置される基台上に脱着自在に取り付ける。
【0006】
また、前記押出部材は、レール幅方向へ移動可能に固定治具に螺合し、その先端には、前記レールに接することにより回転が規制される押圧部が押出部材に対して回転自在に設けられたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
以上説明したように本発明のレール小返り整正器では、レールを上方から跨ぐように固定治具を配置し、かつ該固定治具の内側の係合溝に、レール基部の一方側の側縁部を係合させた状態で、レールを挟んで係合溝と対向する側に位置する押出部材を、水平方向に沿って内側に移動させた場合に、この押出部材の先端部に位置する押圧部により、レール頭部を側方から押圧することができ、これによりレール基部に対して傾斜しているレール頭部、腹部のレール小返りを容易に整正することができる。また、本発明のレール小返り整正器は、レール基部の一方側の側縁部が係合される係合溝を作用点、レール腹部の下端部を支点として、押出部材先端の押圧部がレール頭部を側方に向けて押圧する、てこの原理を利用するものであるので、レール基部に対してレール頭部、腹部が傾斜するレール小返りを小さい力で整正することができ、そのレール小返り整正作業を能率良く行うことができる。
【0008】
また、本発明のレール小返り整正器は、レールの下方に配置される基台上に固定治具を脱着自在に取り付けられるものであるので、その取り付け、取り外しによって固定治具の移動を容易に行うことができ、この点においても作業の効率化が図られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下に本発明の実施の形態を図1〜図3に基づいて説明する。図1は本発明に係わるレール小返り整正器をレールRにセットした状態を示す図であって、この図において符号1で示すものはレールRの下方に配置される基台である。この基台1には、正面視コ字状の固定治具2が脱着自在に取り付けられている。
【0010】
固定治具2はレールRを上方から跨ぐように配置されるものであって、矢印A側に位置する側部2Aの内側下部には、レール基部R1の一方側の側縁部R2に係合される係合溝3が設けられている。また、この係合溝3に対向する固定治具2の側部2B(矢印B側に位置する側部)には押出部材4が設けられている。この押出部材4は、固定治具2の側部に水平方向(矢印A−B方向)に移動自在に螺合されたボルト5と、このボルト5の先端に設けられてその前面でレール頭部R3を矢印A方向に押圧する押圧部6と、この押圧部6の上方に設けられた案内手段7とから構成される。案内手段7は、固定手段2の上部2C内に水平方向(矢印A−B方向)に配置された案内溝8と、案内溝8に係合されかつ案内溝8に沿って同方向にスライド自在な支持棒9とからなるものであって、支持棒9の下部は押圧部6に連結され該押圧部6を上方から懸架する。
【0011】
そして、このような押出部材4では、作業員がレンチによりボルト5の頭部5Aを時計方向に回転させた場合、案内溝8の案内によってボルト5の先端に位置する押圧部6が矢印A方向に移動し、前方に位置するレール頭部R3を同方向に押圧する。このときレールRの反対側に位置するレール基部R1の側縁部R2は係合溝3に係合された状態にあるので、このレール基部R1の側縁部R2と係合溝3との接触部が作用点、レール腹部R4の下端部(符号R5で示す)が支点となって、レール頭部R3に対して矢印(イ)方向の力が加えられ、これによってレール基部R1に対して傾斜しているレール頭部R3、腹部R4のレール小返りを整正することができる。
【0012】
なお、このような小返り整正作業を行うレールRは長尺レールであり、作業時においてレールRが動かないように固定された状態にある。また、レール頭部R3に側方から接する押圧部6の前面(符号6Aで示す)は、レール頭部R3の形状に合わせて下部が矢印A方向に若干突出している。また、上述した固定治具2は基台1に対して脱着自在に設けられており、その取り付け、取り外しは、ボルト・ナットからなる締結手段(図示略)により行われる。
【0013】
以上説明したような本実施形態に示されるレール小返り整正器では、レールRを上方から跨ぐように固定治具2を配置し、かつ固定治具2の内側の係合溝3に、レール基部R1の一方側(矢印A側)の側縁部R2に係合させた状態で、固定治具2に螺合された押出部材4のボルト5を、レールRの他方側(矢印B側)から水平方向に移動させた場合(つまり、矢印A方向に向けて移動させた場合)に、ボルト5の先端に位置する押圧部6により、レール頭部R3を側方から矢印A方向に向けて押圧することができ、これによりレール基部R1に対して傾斜しているレール頭部R3、腹部R4のレール小返りを容易に整正することができる。
【0014】
また、上記のレール小返り整正器は、固定治具2の内側の係合溝3に、レール基部R1の一方側(矢印A側)の側縁部R2に係合させた状態で、固定治具2に螺合された押出部材4のボルト5を矢印A方向に移動させることにより、ボルト5の先端部に位置する押圧部6が、レール頭部R3を同方向に向けて押圧する、すなわち、レール基部R1の一方側の側縁部R2が係合される係合溝3を作用点、レール腹部R4の下端部(符号R5で示す)を支点として、ボルト5先端の押圧部6がレール頭部R3を矢印(イ)方向に向けて押圧する、てこの原理を利用するものであるので、レール基部R1に対してレール頭部R3、腹部R4が傾斜するレール小返りを比較的、小さい力で整正することができ、そのレール小返り整正作業を能率良く行うことができる。
【0015】
また、上記のレール小返り整正器は、締結手段(図示略)によってレールRの下方に配置される基台1上に固定治具2を脱着自在に取り付けられるものであるので、その取り付け、取り外しによって固定治具2の移動を容易に行うことができ、この点においても作業の効率化が図られる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】レール小返り整正器をレールRにセットした状態の正面図
【図2】図1のレール小返り整正器を矢印II方向から見た側面図
【図3】図1のレール小返り整正器を矢印III方向から見た側面図
【符号の説明】
【0017】
1 基台
2 固定治具
3 係合溝
4 押出部材
5 ボルト
6 押圧部
7 案内手段
R レール
R1 レール基部
R2 レール側縁部
R3 レール頭部
R4 レール腹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レールの下方に配置される基台上に取り付けられかつ該レールを上方から跨ぐように配置される固定治具と、この固定治具にレール幅方向に移動可能に設けられてその先端部の押圧部によってレール頭部を側方から押圧する押出部材とを具備し、
前記レールを挟んで押出部材と対向する側に位置する固定治具の内側には、レール基部の一方側の側縁部に係合される係合溝が設けられていることを特徴とするレール小返り整正器。
【請求項2】
前記固定治具は、レール下方に配置される基台上に脱着自在に取り付けられることを特徴とする請求項1記載のレール小返り整正器。
【請求項3】
前記押出部材は、レール幅方向へ移動可能に固定治具に螺合し、その先端には、前記レールに接することにより回転が規制される押圧部が押出部材に対して回転自在に設けられたことを特徴とする請求項1または2に記載のレール小返り整正器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−190210(P2008−190210A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−25509(P2007−25509)
【出願日】平成19年2月5日(2007.2.5)
【出願人】(000221616)東日本旅客鉄道株式会社 (833)
【Fターム(参考)】