説明

ロウ付け接合部品

【課題】柱部の外周側の側面に溝部が形成された部材を用いた接合部品において、溝部内に溶融ロウ材が流れ込むのを防止することができるロウ付け接合部品を提供する。
【解決手段】プレート体の片面に柱部3が立設されており、柱部3の側面に長手方向に沿って溝部6が形成されている第1部材と、プレート体からなる第2部材とからなり、柱部3の先端面3aと第2部材の片面とがロウ材により接合されているロウ付け接合部品。柱部3の先端面3aの周縁のうち、溝部6に望む部分以外の周縁に面取り部10が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はロウ付け接合部品に関する。さらに詳しくは、対になった2つの部品をロウ材により接合させたロウ付け接合部品に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の自動変速機の遊星歯車機構(プラネタリキャリヤ)などの複雑な構造の機械部品は、当該機械部品を構成する各部材ないし部品が焼結材を用いて製造されており、各部材同士の接合は、主にロウ付けにより行われている(例えば、特許文献1〜2参照)。
【0003】
ロウ付けに用いられるロウ材は、接合される一方の部材に形成された縦孔又は横穴内に配設され、加熱により溶融したロウ材が両部材の接合面に均一に行き渡ることで両部材の接合が行なわれる。
【0004】
例えば、図4に示されるように、円形のプレート体20の片面20aの周縁に3本の柱部21が等間隔で立設された部材と、円形のプレート体23からなる部材とが接合される場合、接合面となる前記柱部21の先端面21aに対応する位置に形成されたプレート体23の縦孔24内にロウ材が配設される。
【0005】
前記両部材は、鉄系金属の粉末を金型内に給粉し、パンチで押圧成形することで得られるが、その際、柱部21の先端面21aからバリが出ていると、両部材を接合させるのに先立って柱部21の先端面21aとプレート体23の対応面(図4において下側の面)とを当接させたときに浮き上がりが生じることがある。また、バリが出るような先端面形状(柱部の先端面21aの縁と側面21b〜21dの縁とがなす角度が直角である形状)であると、プレート体20及び柱部21からなる部材を成形するパンチ端面が損傷し易い。そこで、従来、図5に示されるように、前記柱部21の先端面21aの周縁に面取り部25を形成することが行なわれている。この面取り部25は、図6に示されるように、傾斜面26と平坦面27とで構成された段部からなっており、金属粉末を押圧成形する際に用いる金型の対応する部位の形状を段状にすることで形成することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−251457号公報
【特許文献2】特開2008−290105号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、部品挿入のための溝部28が柱部21の外周側の側面21bに形成されている場合、毛細管現象により面取り部25に集まった溶融ロウ材の一部が、前記溝部28の隅部28aからあふれ出し、自重により当該溝部28内を下方に流れることがある。
【0008】
溝部28内でロウ材が固まると、その位置及び量によっては当該溝部28内に所定の部品を挿入する組み付け作業を行うことができないので、得られた接合部品は不良品となり、使用することができない。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、柱部の外周側の側面に溝部が形成された部材を用いた接合部品において、当該溝部内に溶融ロウ材が流れ込むのを防止することができるロウ付け接合部品を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)本発明のロウ付け接合部品は、プレート体の片面に柱部が立設されており、当該柱部の側面に長手方向に沿って溝部が形成されている第1部材と、プレート体からなる第2部材とからなり、前記柱部の先端面と前記第2部材の片面とがロウ材により接合されているロウ付け接合部品であって、
前記柱部の先端面の周縁のうち、前記溝部に望む部分以外の周縁に面取り部が形成されていることを特徴としている。
【0011】
本発明のロウ付け接合部品では、柱部の先端面の周縁のうち、前記溝部に望む部分には面取り部が形成されていないので、溶融したロウ材が当該溝部の縁部に集まるのを抑制することができ、溝部内に溶融ロウ材が流れ込むのを防止することができる。これにより、溝部内に所定の部品を挿入することができ、従来のような不良品の発生をなくし製品の歩留まりを向上させることができる。
また、溝部内に溶融ロウ材が流れ込むのを防止することができるので、溶融ロウ材を、本来行き渡らせるべき接合面に広く供給することができる。これにより、接合部品の接合強度を向上させることができる。
【0012】
(2)前記(1)のロウ付け接合部品において、前記柱部が円形のプレート体の周縁に複数立設されており、前記溝部が、当該柱部の外周側の側面に形成された断面略コの字状の溝であってもよい。
【0013】
(3)前記(1)又は(2)のロウ付け接合部品において、前記面取り部が、前記先端面の周縁に形成された段部であってもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明のロウ材接合部品によれば、柱部の外周側の側面に溝部が形成された部材を用いた接合部品において、当該溝部内に溶融ロウ材が流れ込むのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明のロウ付け接合部品の一実施の形態の接合前の分解斜視図である。
【図2】図1に示されるロウ付け接合部品における柱部の先端面の平面説明図である。
【図3】図1に示されるロウ付け接合部品の側面説明図である。
【図4】従来のロウ付け接合部品の接合前の分解斜視図である。
【図5】図4に示されるロウ付け接合部品における柱部の先端面の平面説明図である。
【図6】図5のI―I線断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照しつつ、本発明のロウ材接合部品の実施の形態を詳細に説明する。図1は、本発明の一実施の形態に係るロウ付け接合部品1の接合前の分解斜視図であり、図2は、図1に示されるロウ付け接合部品1における柱部の先端面の平面説明図であり、図3は、同ロウ付け接合部品1の接合後の側面説明図である。
【0017】
ロウ付け接合部品1は、円形のプレート体2の片面2aの周縁部に柱部3が立設された第1部材と、円形のプレート体4からなる第2部材とで構成されている。
【0018】
第1部材及び第2部材は、いずれも、例えばFe−2%Cu−0.8%Cの鉄系金属の粉末を金型内に給粉し、パンチで押圧成形することで得られる成形体であり、ロウ材を加熱溶融する際に併せて焼結される。なお、第1部材及び第2部材をロウ材による接合前に予め焼結させておいた焼結体とすることもできる。
【0019】
プレート体2は、円形の中央開口部5を有している。柱部3は、プレート体2の上面(図1において上側の面)2aの周縁に沿って等間隔に3本立設されており、それぞれの外周側の側面3bは、プレート体2の外周面2bと面一である。また、各柱部3の外周側の側面3bには、当該柱部3の長手方向に沿って延びる溝部6が形成されている。プレート体2の外周面2bには、前記溝部6と連通する切り欠き7が形成されている。溝部6のサイズは、当該溝部6内に配設される部品のサイズに応じて適宜選定すればよく、本発明において特に限定されるものではないが、通常、幅w及び奥行きdともに数ミリ程度である。
【0020】
本実施の形態における溝部6の断面形状は略コの字状である。溝部6は、図1〜2に示されるように、柱部6の側面3bの周方向中央ではなく、一方の側に偏った位置に形成されている。
【0021】
プレート体4は、前記第1部材のプレート体2と対向して前記柱部3の先端面3a上に配設される。プレート体4も、円形の中央開口部8を有しており、接合時には、この中央開口部8と前記プレート体2の中央開口部5とは同芯となる。また、プレート体4の周縁部には、当該プレート体4を柱部3の先端面3a上に配設した状態において、前記先端面3aの上にロウ材(図示せず)を配設するための縦孔9が形成されている。この縦孔9は、柱部3の先端面3aの位置に対応して、プレート体4の周縁に沿って等間隔で3個形成されている。なお、ロウ材としては、例えばNi−Cu−Mn−Fe系の組成を有する圧粉体からなり、短円柱形状を呈するものを用いることができる。
【0022】
柱部3の先端面3aの周縁には、図6に示されるものと同様の段部からなる面取り部10が形成されているが、本実施の形態では、先端面3aの周縁のうち、溝部6に望む部分以外の周縁にだけ面取り部10が形成されている。溝部6に望む周縁部分11に面取り部が形成されていないので、加熱により溶融したロウ材が当該周縁部分11に集まるのを抑制することができ、その結果、従来のロウ付け接合部品のように溝部内に溶融ロウ材があふれ出るのを防止することができる。これにより、溝部6内に所定の部品を挿入することができ、従来のような不良品の発生をなくし製品の歩留まりを向上させることができる。また、溝部6内に溶融ロウ材が流れ込むのを防止することができるので、溶融ロウ材を、本来行き渡らせるべき接合面に広く供給することができる。その結果、接合部品の接合強度を向上させることができる。
【0023】
前記面取り部10は、金属粉末を押圧成形する際に用いる金型の対応する部位の形状を段状にすることで形成することができる。なお、面取り部を形成しない溝部6に望む周縁部分11には、従来のようなバリが生じるが、かかるバリは、例えば押圧成形後に柱部3の先端面3aをブラッシング処理することで除去することができる。
【0024】
〔その他の変形例〕
なお、今回開示された実施の形態はすべての点において単なる例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、前記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内のすべての変更が含まれることが意図される。
【0025】
例えば、前述した実施の形態では、柱部の外周側の側面に形成される溝部の断面形状が略コの字状であるが、溝部の断面形状は、三角形、半円形など他の形状であってもよい。また、溝部の位置は中央から一方側に偏っているが、中央付近であってもよい。
【0026】
また、前述した実施の形態では、面取り部として傾斜面と平坦面とかなる段部を採用しているが、単なる傾斜面からなる面取り部、又は曲面からなる面取り部とすることもできる。
【0027】
また、前述した実施の形態では、ロウ付け接合部品として、2枚の孔開き円形プレートを3本の柱部で繋いだ形態としたが、これはあくまでも例示であり、特許請求の範囲に記載された第1部材及び第2部材の条件を満たす限り、用途、目的などに応じて適宜の形態のロウ付け接合部品とすることができる。
【0028】
また、前述した実施の形態では、ロウ材を収容するスペースとして縦孔を採用しているが、矩形の凹所など他の形状のスペースとすることもできる。
【符号の説明】
【0029】
1 ロウ付け接合部品
2 プレート体
2a 上面(片面)
3 柱部
3a 先端面
3b 外周側の側面
4 プレート体
6 溝部
10 面取り部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレート体の片面に柱部が立設されており、当該柱部の側面に長手方向に沿って溝部が形成されている第1部材と、プレート体からなる第2部材とからなり、前記柱部の先端面と前記第2部材の片面とがロウ材により接合されているロウ付け接合部品であって、
前記柱部の先端面の周縁のうち、前記溝部に望む部分以外の周縁に面取り部が形成されていることを特徴とする、ロウ付け接合部品。
【請求項2】
前記柱部が円形のプレート体の周縁に複数立設されており、前記溝部が、当該柱部の外周側の側面に形成された断面略コの字状の溝である請求項1に記載のロウ付け接合部品。
【請求項3】
前記面取り部が、前記先端面の周縁に形成された段部からなる請求項1又は2に記載のロウ付け接合部品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−56348(P2013−56348A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−194641(P2011−194641)
【出願日】平成23年9月7日(2011.9.7)
【出願人】(593016411)住友電工焼結合金株式会社 (214)