説明

ロケット整備システムにおけるロケット起立支援装置

【課題】 ロケット発射台の起立治具を地表面より高い位置に設置した場合にも、ロケット搬送トレーラを起立治具の高さまで走行しなくてもよくする装置を提供して、建設コストを低減させる。特に、既存の打上げ施設を大型ロケット用に改造する場合に、発射台周辺の地盤を大幅に改造することなく対応できるロケット起立支援装置を提供する。
【解決手段】 ロケット下端側に車輪台車が配置されロケット上端側に牽引車が接続されるブームbで構成されるロケット搬送トレーラにロケットaを搭載して搬送し発射台の発射デッキmに設けた起立治具jを利用してロケットaを起立させて整備できるようにするシステムにおいて、発射台の前面部の地表面に車輪台車が進入して搭載できる上床面を備えたリフトデッキeを設置したもので、この上床面が地表面と発射デッキの間を昇降することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大型ロケットを発射台における発射姿勢あるいは組立位置に据えるための装置および起立方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ロケットを打ち上げるためには、ランチデッキ(発射台)上にロケットを据え付け、組み立て整備する必要がある。ロケットをランチデッキに据え付けるには種々の方法があり、たとえば特許文献1には小型のロケットを迅速且つ安全に組み立て発射できるロケット発射装置が開示されている。開示されたロケット発射装置は、ロケットセグメントを順次搭載してロケットを垂直に立った状態に組み立てる組立台と俯仰自在でガイドレールを備えた発射ブームを備えて、組立台上で組み立てたロケットを発射ブームに移し、適宜な発射方向に向けて発射できるようになっている。
【0003】
しかし、大型の宇宙ロケットでは、軽量化が必要なため比較的脆弱な構造体を有することから、傾斜姿勢を保持することが難しく、打ち上げまで垂直姿勢を維持することが必要となる。また、ロケットは、組立てを完了して発射台に据え付ける場合と、セグメント毎にロケットを分割して発射台上で組立整備する場合がある。
【0004】
図4は、組立工場から台車に載せて搬送してきたロケットを発射台に据え付ける従来手法を説明する図面である。
発射台は地表面上に建設され、組立整備等の作業を行うため、発射台の周囲を囲うように、待避可能な整備塔が設けられている。発射台の床gには起立治具dが設けられている。また、発射台のロケット噴射口の下方に当る床に火炎の逃げ道が穿かれている。
【0005】
ロケットは、一端に車輪台車を備え他端を牽引車に載せてトレーラを形成するブームに支持された状態で搬送されてくる。牽引車がブームを発射台の基部に向かって後進させて(工程1)、ロケット底部が起立治具に対して正しい方向と正しい姿勢を持つように調整した後に、ロケット底部を起立治具に係合させる(工程2)。起立治具は、横置されたロケットを鉛直姿勢にするための補助装置で、ロケットの底部を固定し水平軸の回りで転回してロケットを起立させる。
さらに、整備塔の上端に近い位置にワイヤを巻いたりほどいたりする巻上機fが設けられていて、ブーム側部の牽引車に近い位置に設けたフックにワイヤを掛けてワイヤを巻き上げると、ロケットを固定したブームが起立治具の回転軸を軸として引き上げられて、やがて、ロケットを直立状態まで引き立てる(工程3)。
【0006】
ロケットを起立させた後、ブームをロケットから外して、巻上機でワイヤを緩めてブームを引き降ろし、先端を牽引車cの荷台に受けて固定し、車輪台車と牽引車で支持して前進させ、たとえば工場まで待避させる。
その後、ロケットが直立している状態で、観測衛星(フェアリング)を搭載したり、第2段以上のロケットを繋ぎ合わせて組み立てたり、その他各種の整備を行ったりする。
ロケットの整備が終了すると、整備塔を待避し、発射台位置の床の一部を開けて煙道を繋いだ上で、ロケットを発射する。ロケットから噴出する火炎は煙道内に設けられた火炎偏向板で指定した方向に偏向して放出される。
【0007】
なお、発射前にロケットの不備を発見したときは、トレーラを発射台まで移動させてきて、ロケット起立の逆手順でロケットをトレーラに搭載して、工場に持ち帰り再調整する。
【0008】
ロケットが大型になると、発射時にロケットが噴出する燃焼排ガスが大量でそのエネルギーも強大になるため、発射台の下方に火炎を逃がすためのより大きなスペースが必要となるので、建設時の土木工事量が膨大になる。
ロケット噴射口下に大きな煙道スペースを確保する簡単な方法として、ロケットの方を床面から高く持ち上げて、ロケット噴射口と床面の間を煙道スペースとする方法がある。
【0009】
従来技術によりロケット底部が床面より持ち上がった発射台にロケットをセットするためには、ロケット搬送トレーラが走行する床面を発射台の床面の水準に合わせるように造成する必要がある。
ロケット搬送トレーラの走行床面は、牽引車の進入路とロケット発射台の位置関係によっては長大なロケットを転回させる広大なスペースを持つ必要があるので、土木工事量は極めて膨大なものとなるおそれがある。特にロケットの大型化に伴い既存施設を改造して使用しようとする場合には、多額の資金を土木工事に投ずる必要がある。
【特許文献1】特開平07−081700号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、ロケット発射台の起立治具を地表面より高い位置に設置した場合に、ロケット搬送トレーラが地表面を走行することを許すようにして、建設コストを低減させる装置を提供することである。特に、従来から使用されていた打ち上げ施設を大型ロケット用に改造する場合に、発射台周辺の地盤を大幅に改造することなく対応できるようなロケット整備システム用のロケット起立支援装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、ロケット整備システムにおける本発明のロケット起立支援装置は、ロケット下端側に車輪台車が配置されロケット上端側に牽引車が接続されるブームで構成されるロケット搬送トレーラにロケットを搭載して搬送し発射台の発射デッキに設けた起立治具を利用してロケットを起立させて整備できるようにするシステムにおいて、発射台の前面部の地表面にブームの車輪台車が進入して搭載できる上床面を備えたリフトデッキを設置したもので、この上床面が車輪台車を水平動する案内機構を備えて地表面と発射デッキの間を昇降することを特徴とする。
【0012】
なお、ブームが地表面と発射デッキの間を昇降する間、ブームの先端側をリフトデッキ上床面と等高に支持することによりブームの姿勢を水平に維持し、搭載するロケットが破損したり内部機器が異常になったりしないようにする。
【0013】
リフトデッキの上床面が地表面の水準にあるときにブームの車輪台車を上床面上に搭載し、その後、上床面を発射デッキの水準まで上昇させて、ロケットを前進させ発射デッキ上の起立治具にロケット底部を装着し、ブームのフックに掛けたワイヤを発射デッキの上方から引き上げて起立治具の回転軸を軸としてブームを起立させ、ブームに固定されたロケットをブームごと起立させる。
【0014】
ロケットの底部を支持して垂直姿勢を維持させるようにした垂直支持装置に起立したロケットを固定し、ブームからロケットを切り離す。ロケットから切り離したブームは、起立時と逆の手順で地上レベルに戻し、牽引車と結合して待避させる。直立したロケットを整備した後、姿勢維持のために用いた固定用器具を全て外して、ロケットを発射する。
【0015】
リフトデッキには、ウインチによって巻き上げ可能なワイヤが結合されていて、ワイヤをウインチで引張ると、リフトデッキの上床面が発射デッキの床面と同じ高さになるまで立ち上がる。油圧アクチュエータなどの駆動装置により支柱を横臥状態または直立状態に駆動することもできる。
なお、リフトデッキは、前記上床面に4頂点を有し地表面に4頂点を有し対応する頂点同士を等長の可動リンクで連結した平行リンク機構で駆動されるように構成すれば、上床面は水平を保持したまま昇降し、リンク長の長さを選択すればリフトデッキを立ち上げたときに自動的に上床面が発射台面と同じ高さに揃うようになる。
【0016】
地表面と発射デッキの間を昇降する間はロケットの姿勢を水平に維持することが好ましい。このため、ブームの他端付近を別のワイヤで吊って支持し、ワイヤの繰り出し長さを制御して吊り高さを調整することによって、ブームの水平姿勢を維持することができる。なお、発射位置でブームを起立させるため、ブームには起立用ワイヤが結合されているので、これを利用してブームの水平を維持するように支持することができる。
【0017】
また、発射台の前面部近傍に設けられて車輪台車を載せる第1のリフトデッキに加えて、ブームのもう一方の端部近傍に設けられて、ブーム先端近傍部を載せる第2のリフトデッキを用いて、ロケット姿勢を水平に維持するようにしても良い。この場合は、ブームの第2リフトデッキの上床面に対応する位置に出し入れ可能なステーが設けられていて、ブームをリフトデッキに載せるときに、走行中は機台内に収納されているステーを引き出してセットし、上床面上に係合させる。ステーは上床面上に形成されるガイドに沿って水平動ができるようになっている。
【0018】
第2リフトデッキの上床面は、第1リフトデッキの上床面と同期して昇降するように構成され、搭載されたブームは水平を保ったまま地表面と発射デッキ面の間を昇降する。
なお、上床面の駆動装置をそれぞれ設置して同期運転する方法や、1基の駆動装置を使って一緒に駆動するようにする方法を用いることができる。
また、2つの上床面同士を連結棒などで機械的に結合して一体化することにより、同時昇降させるようにしても良い。
さらに、連結棒などを用いずに、ブームの車輪台車と第1リフトデッキの上床面を固定し、ブームの他端近傍のステーと第2リフトデッキの上床面を固定することにより、ブーム自体を利用して2つの上床面同士を結合してもよい。
なお、リフトデッキは、油圧アクチュエータなどの駆動装置により支柱を横臥状態または直立状態に駆動することにより、上床面を昇降させるようにしても良い。また、ねじ棒、パンタグラフなどによりリフトデッキを水平のまま昇降させる構造であっても良い。
【0019】
また、リフトデッキは、地表面から撤去できるように構成してもよい。リフトデッキ、特に第1リフトデッキが据えられる位置は、ロケットから噴出する火炎の及ぶ範囲に入る場合があるので、ロケット発射時には取り外して待避させておくことが好ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明のリフトデッキを用いることにより、地表面より高い位置に発射デッキを有する発射台を使用するときにも、ロケット搬送トレーラは床面と同じ水準面上を走行して、同水準面上のリフトデッキ上床面上に車輪台車が来るようにブームを載置すればよく、発射台周囲のロケット搬送トレーラ走行面を発射デッキの水準に合わせるための盛土または搬入路橋を必要とせず、ロケット発射基地の建設コストを節減し、工期を短縮することができる。
また、従来はロケット搬送トレーラを牽引車で運転しながら前進後進を繰り返してロケット底部を起立治具に係合させるため、高度な運転技術をもっても長時間かかっていたが、リフトデッキに取り付けた案内機構を利用することにより、運用時間が短縮される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明について実施例に基づき図面を参照して詳細に説明する。
図1は本発明に係るロケット整備システムの第1実施例の運用手順を説明する図面、図2は第2実施例の運用手順を説明する図面、図3は第3実施例の運用手順を説明する図面である。
【実施例1】
【0022】
本実施例のロケット整備システムは、発射台の近くに設けた第1リフトデッキeとブームbの先端近傍に設けた第2リフトデッキfをロケットaを支持するブームbで結合して運用するものである。
図1を用いて、ロケット整備システムの構成を説明する。
ロケット発射台の発射デッキmは地表面より高い位置にあり、発射デッキmには起立治具jが設置されている。起立治具jは、ロケットaを鉛直姿勢にするための補助装置で、横置されたロケットの底部あるいはロケットを取り付けたブームbの底部を治具に固定して、水平軸の回りを転回することによりロケットaを起立させるものである。
【0023】
車輪を有する整備塔nが設けられ、起立したロケットaの整備を行うときには発射台を囲うように配置され、整備が終了したら発射台から待避する。整備塔nの上部には巻上機kが設けられ、ワイヤhを繰り出したり巻上げたりすることができる。
発射デッキmの下には煙道pが設けられ、ロケットaの噴射口に対向する位置に設けられた開口から噴入する噴射火炎を所定の方向に誘導するようになっている。
【0024】
発射台前の地表面に第1リフトデッキeが設けられている。第1リフトデッキeは上床面を水平に保持しながら昇降させる平行リンク構造を有し、上床面には地上に設置されたウインチgによって巻き上げ可能なワイヤqが結合されていて、ワイヤqをウインチgで引張ると、第1リフトデッキeの上床面が発射デッキmの床面と同じ高さになるまで立ち上がる。上床面が所定の高さになったところで、支柱を固定してリフトデッキの姿勢を保持する。平行リンク機構を用いるときは、第1リフトデッキeを立ち上げると発射デッキ面と上床面が自動的に同一平面を形成するようになり、特別の調整機構を必要としない。
第1リフトデッキeの上床面上には、ブームbの車輪台車が載って固定される固定治具と、起立治具jに係合させるときに水平方向に移動させる案内機構iが設けられている。
【0025】
第1リフトデッキeにブームbの車輪台車が載ったときにブームbの先端部のステーdが来る位置に第2リフトデッキfが設けられている。第2リフトデッキfは第1リフトデッキeと同様の平行リンク機構を形成し、上床面上にステーdを固定する治具とブームbが移動するときに正確に案内する機構を備えている。また、上床面が所定の高さになったところで、支柱を固定してリフトデッキの姿勢を保持する。
なお、第2リフトデッキfはウインチで制御するワイヤと結合される代りに、上床面が昇降する間はブームbの車輪台車が第1リフトデッキeと固定され、ステーdが第2リフトデッキfに固定されるため、2つの上床面が一体に運動するので、搭載されたブームbの水平姿勢を保つことができる。
【0026】
第1リフトデッキeと第2リフトデッキfの中間の床面は、上床面が地表にあるときの高さに造成されて段差を無くし、ロケット搬送トレーラがスムーズに走行できるようになっている。
【0027】
実施例1の運用方法を図1を用いて説明する。
図1(1)はロケットをリフトデッキに移すところ、図1(2)はロケットをリフトデッキで持ち上げるところ、図1(3)はロケットを起立治具に連結するところ、図1(4)はロケットを起立治具を使って直立させるところを表示している。
【0028】
図1(1)に示すように、ロケットaを固定したブームbは、車輪台車と牽引車cにより水平に支持されたトレーラとなって牽引車cに牽引されて発射台まで搬送されてくる。発射台に近づくと切り返して向きを変え発射台に向かって後進し、車輪台車を第1リフトデッキeの上床面の手前部分に載せ、ブームbのステーdの位置が第2リフトデッキfの上床面の手前部分に位置するようにして停止する。
ブームbのステーdを引き出して垂直にセットして第2リフトデッキfの上床面に固定し、車輪台車を第1リフトデッキeの上床面に固定する。
ロケット起立装置用のワイヤhをブームbの牽引車cに近い先端部に結合してワイヤhを緊張させる。
また、ブームbを牽引車cから切り離し、牽引車cを待避させる。
【0029】
次に、図1(2)に示すように、ウインチgを駆動してワイヤqを引張り第1リフトデッキeを起立させる。第1リフトデッキeの上床面と第2リフトデッキfの上床面はブームbで結合されているため、一緒に第2リフトデッキfも起立する。両デッキの上床面は同時に上昇するのでブームbは水平姿勢を保持しながら持ち上がり、最終的に上床面が発射デッキmの床面レベルにセットされる。
2つのリフトデッキe,fを固定する。
【0030】
ついで、図1(3)に示すように、上床面に固定されたステーdと車輪台車を緩めてそれぞれの上床面上の案内機構iに係合させ、巻上機kを駆動してワイヤhを巻上げてブームbを後進させ、ブームbの底部が発射デッキmの起立治具jの位置に来るようにして、底部を起立治具jに装着する。
なお、起立治具jは、ロケットa自体の底部を固定するようにしてもよい。
【0031】
さらに、図1(4)に示すように、巻上機kによりワイヤhを巻上げて、ブームbを引き上げる。ブームbは起立治具jの回転軸を中心にして回動して鉛直に起立する。
ブームbが鉛直に起立した後、垂直支持装置を取り付けてロケットを独立に起立させ、ブームbとロケットaの結合を解除する。そして、ブームbを起立と逆の手順で、リフトデッキe,f上に水平に戻し、地上レベルに取り下ろし、牽引車cと結合して、待避させる。
その後、ロケットを整備して打ち上げる。
【0032】
なお、整備中に異常が発見されるなどして、ロケットaを戻す必要ができたときには、ブームbに結合した状態で逆の手順で地上に戻し牽引車cと結合して搬出することができる。
また、リフトデッキe,fは、ロケットから噴出される火炎に曝されて損傷を受けることを防止するため、ロケット発射時や不要の時には撤去できるようにすることが好ましい。
【0033】
本実施例のロケット整備システムによれば、簡単なリフトデッキを付与するだけで構成できる上、ロケット搬送トレーラがロケット発射台の基礎面と同じレベルを走行すればよいため、発射台近傍の整地作業において盛土や掘削、搬入路橋建設などの土木工事量を軽減して、より簡便に且つ低廉に施設の構築ができる。また、従来、長大なトレーラを操縦して起立治具に係合させるため高度な熟練が必要であったが、適切な案内機構を利用してロケットあるいはブームを簡単に係合位置まで案内できるようになったので、作業の困難性が緩和し作業時間も短縮できるようになった。
【実施例2】
【0034】
本実施例のロケット整備システムは、第1リフトデッキeと第2リフトデッキfを連結棒lで結合して運用するものである。構成上実施例1と異なるところは連結棒lが追加され、これに伴いリフトデッキ上床面上の車両台車とステーの固定機構が不要になったことだけで、他の構成に差異はない。
【0035】
実施例2の運用方法を図2を用いて説明する。
なお、実施例2の運用方法は、実施例1と異なる部分を詳しく説明し、また、図2では図1における部材と同じ機能を有する部材に同じ参照符号を付すことにより説明の重複を避けた。
図2(1)はロケットをリフトデッキに移すところ、図2(2)はロケットをリフトデッキで持ち上げるところ、図2(3)はロケットを起立治具に連結するところ、図2(4)はロケットを起立治具を使って直立させるところを表示している。
【0036】
図2(1)に示すように、ロケットaを固定したブームbを牽引車cで発射台まで搬送し、車輪台車を第1リフトデッキeの上床面に載せ、第1リフトデッキeと連結棒lで結合された第2リフトデッキfの上床面にブームbのステーdが位置するようにして停止する。
ステーdを引き出してセットし第2リフトデッキfの上床面の案内機構に係合させる。また、車輪台車を第1リフトデッキeの上床面の案内機構iに係合させる。
ワイヤhをブームbの先端部に結合してワイヤhを緊張させる。
また、ブームbを牽引車cから切り離し、牽引車cを待避させる。
【0037】
次に、図2(2)に示すように、ウインチgを駆動してワイヤqを引張り第1リフトデッキeを起立させると、第1リフトデッキeの上床面と第2リフトデッキfの上床面は連結棒lで結合されているため、一緒に第2リフトデッキも起立し、ブームbの水平姿勢を保持したまま移動して、上床面が発射デッキmの床面レベルにセットされる。
2つのリフトデッキe,fを固定する。
【0038】
ついで、図2(3)に示すように、巻上機kを駆動してワイヤhを巻上げるとブームbが案内機構に従って真っ直ぐに後進してブームbの底部が発射デッキmの起立治具jの位置に来るので、その底部を起立治具jに装着する。
【0039】
さらに、図2(4)に示すように、ワイヤhをさらに巻上げてブームbを引き上げると、起立治具jの働きでブームbが鉛直に起立する。
本実施例のロケット整備システムでは、さらにリフトデッキの構成が単純化されるので、運用がより簡単化される。
【実施例3】
【0040】
本実施例のロケット整備システムは、第2リフトデッキを使わずに、ロケット起立装置のワイヤhを使ってブームbを持ち上げるようにしたものである。構成上実施例1と異なるところは第2リフトデッキが不要になったことだけで、これに伴い巻上機kとウインチgを同調させる以外に差異はない。
【0041】
実施例3の運用方法を図3を用いて説明する。
なお、実施例3の運用方法は、実施例1と異なる部分を詳しく説明し、また、図3では図1における部材と同じ機能を有する部材に同じ参照符号を付すことにより説明の重複を避けた。
図3(1)はロケットをリフトデッキに移すところ、図3(2)はロケットをリフトデッキで持ち上げるところ、図3(3)はロケットを起立治具に連結するところ、図3(4)はロケットを起立治具を使って直立させるところを表示している。
【0042】
図3(1)に示すように、ロケットaを固定したブームbを牽引車cで発射台まで搬送し、車輪台車を第1リフトデッキeの上床面に載せて停止する。
車輪台車を上床面に固定し、ワイヤhをブームbの先端部に結合して巻上機kによりワイヤhを緊張させてブームbを水平に支持し、ブームbを牽引車cから切り離して、牽引車cを待避させる。
【0043】
次に、図3(2)に示すように、ウインチgを駆動してワイヤqを引張り第1リフトデッキeを起立させて上床面が発射デッキmの床面レベルに達するようにする。この間、巻上機kを駆動してワイヤhを適当なペースで巻上げてブームbが水平姿勢を保持しながら上昇するようにする。
第1リフトデッキeを固定する。
【0044】
ついで、図3(3)に示すように、車輪台車を上床面上の案内機構iに係合させて、さらにワイヤhを巻上げるとブームbが案内機構に従って真っ直ぐに後進してブームbの底部が発射デッキmの起立治具jの位置に来るので、その底部を起立治具jに装着する。
【0045】
さらに、図3(4)に示すように、ワイヤhをさらに巻上げてブームbを引き上げると、起立治具jの働きでブームbが鉛直に起立する。
本実施例のロケット整備システムでは、リフトデッキが1基で済む上、リフトデッキの構成が単純化されるので、施設の製作コストが軽減する上運用がより簡単化される。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明に係るロケット整備システムの第1実施例の運用手順を説明する図面である。
【図2】本発明に係るロケット整備システムの第2実施例の運用手順を説明する図面である。
【図3】本発明に係るロケット整備システムの第3実施例の運用手順を説明する図面である。
【図4】従来のロケット整備システムの構成と運用を説明する図面である。
【符号の説明】
【0047】
a ロケット
b ブーム
c 牽引車
d ステー
e 第1リフトデッキ
f 第2リフトデッキ
g ウインチ
h ワイヤ
i 案内機構
j 起立治具
k 巻上機
l 連結棒
m 発射デッキ
n 整備塔
p 煙道
q ワイヤ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロケット下端側に車輪台車が配置されロケット上端側に牽引車が接続されるブームにロケットを搭載して搬送しロケット発射台の発射デッキに設けた起立治具に結合して前記ブームを起立用ワイヤで引き上げることにより該ロケットを起立させるシステムにおいて、前記起立治具の前面に当る地表面に前記車輪台車が進入して搭載できる上床面を備えたリフトデッキを設置したもので、該上床面が前記地表面と前記発射デッキの水準の間を昇降すると共に、該ブームのロケット上端側を支持する支持機構を備え前記上床面が前記ブームを搭載して昇降する間該ブームが水平姿勢を維持するように該ブームを支持することを特徴とするロケット起立支援装置。
【請求項2】
前記リフトデッキは、昇降用ワイヤを結合して該昇降用ワイヤを巻上げることにより起立して前記上床面が前記発射デッキ面まで上昇することを特徴とする請求項1記載のロケット起立支援装置。
【請求項3】
前記リフトデッキは、前記上床面に4頂点を有し地表面に4頂点を有し対応する頂点同士を等長の可動リンクで連結した平行リンク機構で駆動されることを特徴とする請求項2記載のロケット起立支援装置。
【請求項4】
前記上床面は、前記車輪台車が水平動できる案内機構を備えることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のロケット起立支援装置。
【請求項5】
前記リフトデッキは、必要なときに地表面から撤去できるように構成したものであることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のロケット起立支援装置。
【請求項6】
前記支持機構は、前記起立用ワイヤで前記上床面と同調するように前記ブームを引いて支持するものであることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のロケット起立支援装置。
【請求項7】
前記支持機構は、前記車輪台車が前記リフトデッキ(以下この項において第1リフトデッキという。)の上に配置されたときに前記ブームを支持する別の支点の位置に備えた第2のリフトデッキと前記ブームに備えたステーにより構成され、該第2リフトデッキの上床面に該ステーを固定する機構と該ステーが水平に動くように案内する案内機構を備え、該ステーを該第2リフトデッキの上床面に固定することにより、前記第1リフトデッキと第2リフトデッキを一体に結合して一緒に昇降するようにし、これらリフトデッキに搭載した前記ブームを水平に維持するものであることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のロケット起立支援装置。
【請求項8】
前記支持機構は、前記車輪台車が前記リフトデッキ(以下この項において第1リフトデッキという。)の上に配置されたときに前記ブームを支持する別の支点の位置に備えた第2のリフトデッキと連結棒により構成され、該第2リフトデッキの上床面に前記ブームに備えたステーを固定する機構と該ステーが水平に動くように案内する案内機構を備え、前記連結棒で前記第1リフトデッキと第2リフトデッキを一体に結合して一緒に昇降するようにして、これらリフトデッキに搭載した前記ブームを水平に維持するものであることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のロケット起立支援装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2007−45191(P2007−45191A)
【公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−228899(P2005−228899)
【出願日】平成17年8月5日(2005.8.5)
【出願人】(000000974)川崎重工業株式会社 (1,710)