説明

ロジウムの精製方法

【課題】 ロジウムおよび他の不純物金属を含有する水溶液から、ロジウムを白金族と白金族以外の不純物から確実に分離し、その際の分離効率を改善するロジウムの精製方法を提供する。
【解決手段】
水溶液中のロジウムを選択的に結晶化分離する方法であって、下記の(1)〜(6)の工程からなる。(1)炭酸アンモニウムおよび塩化アンモニウムを添加する。(2)二酸化炭素の発生が終了するまで、塩酸を添加後、生成した結晶を分離する。(3)前記結晶を水酸化ナトリウム水溶液に溶解し、加熱する。(4)前記浸出に炭酸水素ナトリウムを添加し、pHを9.9〜10.7に調整後、発生した沈殿と母液とを分離する。(5)前記母液にpHが1以下になるまで塩酸を加え、(1)〜(2)の工程の処理を行い、ロジウムを含む結晶を回収する。(6)前記工程で得られたロジウムを含む結晶を、水中で加熱、冷却を行い再結晶させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、白金族鉱石、非鉄金属製錬副産物、白金族元素のリサイクル品等から分離回収されるロジウムの最終精製プロセスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
白金族元素は、資源的に希少な元素で、白金族元素を高濃度で含有する白金鉱石のような天然鉱物での産出は少なく、工業的に生産される白金族元素の原料は、銅、ニッケル、コバルトなどの非鉄金属製錬からの副産物、自動車排ガス処理触媒など各種の使用済み廃触媒などから回収されるものが大部分を占めている。
非鉄金属製錬からの副産物は、製錬原料の中にごく微量含有されている白金、パラジウム、イリジウム、ロジウム、ルテニウム、及びオスミウムなどの白金族元素が、その化学的性質から主金属である銅、ニッケルなどの硫化濃縮物及び粗金属の中に濃縮され、さらに電解精製など主金属回収工程で残滓等として、白金族元素を含む貴金属濃縮物の形で分離されるものである。
【0003】
この貴金属濃縮物には、主金属である銅、ニッケルなどと共に、他の構成元素である金、銀等の貴金属、セレン、テルル等のVI族元素、ヒ素などV族元素が、白金族元素に比べて高含有量で共存するのが通常である。その後、金、銀の回収を経て、不純物元素を含む白金族元素含有物が得られ、白金族元素含有物から白金族元素を分離する。
白金族元素含有物から白金族元素を工業的に分離する方法では、通常は一旦液中に浸出させてから溶媒抽出、吸着剤などの分離技術を用いて相互分離及び精製して回収される。
【0004】
本発明で回収対象とするロジウムは、自動車排ガス触媒、化学反応用触媒あるいは熱電対等に利用される高価で貴重な金属である。このような用途と特性を有するロジウムは、銅の電解精錬過程の副産物として製造されたり、あるいは大量に廃棄される自動車排ガス触媒等の廃棄物からも回収されている。
ロジウムの各利用分野においては、いずれも高純度のロジウムが要求されるが、そのロジウムは、前述の副産物として製造される際には、電解槽中にできる各種白金属化合物が共存する沈殿物から分離されるものであり、また廃棄物から回収される過程においても、各種白金属化合物が共存しており、その中から分離して白金族元素の回収が行われる。
【0005】
とりわけロジウムと他の白金属元素との分離は、一般的に還元する前に行われている。すなわち、ロジウムと他の白金属元素化合物とが共存する溶液から、他の白金属元素化合物を分離し、高純度のロジウム化合物溶液とした後に金属ロジウムへの還元が行われる。
そのための分離法としては、結晶化法(沈殿分離法)、イオン交換法あるいは溶媒抽出法等が一般的に知られており、またそれらを組み合わせて使用することも知られている。
従来高純度のロジウム化合物から金属ロジウムへの還元は、ロジウム化合物を王水で溶解して塩化物とした後、塩化アンモニウムと化合させて析出させた塩化ロジウム酸アンモニウムを焙焼し、この焙焼過程で副生した酸化ロジウムを含有する焙焼物を管状電気炉に挿入し、水素ガスを流しながら加熱して副生した酸化ロジウムを水素ガスで還元するのが一般的な方法である(例えば、非特許文献1参照。)。
【0006】
また、各白金族元素はイオンの構造が類似しているため化学的性質も類似しており、単純な方法では相互分離することが困難である。
しかし、各白金族元素はイオンの錯形成能力、および錯塩の性質についての差異が認められるため、この性質の差異による各元素の分離が行われており、溶媒抽出法による分離精製が主流となった今日においても、溶媒から分離された粗精製液の最終精製は結晶化法に依存している状況である。
最も代表的な結晶化精製プロセスとしては、亜硝酸ナトリウムによりヘキサニトロロジウム(III)酸イオンを形成し、カリウムイオンあるいはアンモニウムイオンを添加する事によりヘキサニトロロジウム(III)酸塩の結晶として、ロジウムを分離、精製する方法がある。このプロセスでは、安定なニトロ錯体を形成し、かつカリウムイオン、アンモニウムイオンと難溶性の結晶を形成する元素が事実上ロジウムとイリジウムしかないため、今日まで最も多く使用されてきた精製法である(例えば、非特許文献2参照。)。
【0007】
また、通常水溶液中に存在するロジウムはクロロ錯体であるが、その配位子の一部をアンモニアに置換した錯体である塩化クロロペンタアンミンロジウム(III)二塩化物、通称claus'塩に転換し、その塩化物が水に難溶性であるため、他のイオンから分離する方法がある(例えば、非特許文献3参照。)。
【0008】
さらに、前記のプロセスの改善方法が考案されている。すなわち、分離されたclaus'塩は水に難溶性であるが、これを一旦アルカリで処理して水溶性のヒドロキソペンタアンミンロジウム(III)イオンに転換し、さらに炭酸水素ナトリウムでpHを低下させることにより、残留した白金族以外の不純物元素を水酸化物の沈殿として分離し、さらに亜硝酸ナトリウムを添加して、ニトロペンタアンミンロジウム(III)硝酸塩の難溶性結晶に転換することにより、白金族以外の不純物元素を分離して、最終的にこの塩を塩酸分解することによりclaus'塩に戻す方法が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【非特許文献1】実験化学講座10「稀有金属の製造」、丸善(株)発行、第356〜358頁
【非特許文献2】M.E.Leidie, Compt.Rend., 111, 106 (1890)
【非特許文献3】Susan A. Johnson, Fred Basolo, Inorg.Chem., 1,4,925-932 (1962)
【特許文献1】米国特許第4155750号公報(1979年)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、上記の3つの方法はいずれについても問題点があり、工業的に十分なものではなかった。
まず、第1のニトロ錯体の形成を経由するプロセスにおいては、イリジウムも同様の難溶性塩を形成するため、相互分離性が不十分であり、さらにニトロ錯体を分解する際に窒素酸化物の発生が不可避であり、また湿式還元あるいは還元焙焼により直接金属ロジウムを回収できないという問題点があった。
第2のclaus'塩法においては、前記問題は解決されているものの、アンモニアでpHを上昇させる必要があることから、白金族以外の元素が水酸化物としてロジウムの錯塩と共に沈殿し、ロジウムを主成分とする錯塩との分離が不完全になるという問題点があった。
第3のclaus'塩法の改善法においては、白金族以外の不純物元素の分離は改善されているが、亜硝酸塩を使用するので、それに伴う前記問題点が再び顕在化していた。また、pH調整を炭酸水素ナトリウムで行う際に、pH緩衝領域以下に到達させるため、大過剰の炭酸水素ナトリウムを使用する必要もあった。さらに、種々の改善を加えた結果、精製1サイクルの工程が非常に長く複雑であった。また、改善法であっても、精製効率、特にイリジウムとの分離は十分ではなかった。
【0010】
claus'塩法の基本法、改善法に共通する問題点としては、アンモニア水によりclaus'塩が生成する際に、アンモニア、塩化物イオンの配位数が異なる種々の副生成物が生成し易く、副生成物はしばしば溶解度が高いため母液中へのロジウムの損失につながっていた。
本発明の目的は、上記の従来技術の問題点に鑑み、確実に難溶性のクロロペンタアンミンロジウム(III)二塩化物を形成させ、かつ、pH調整時の炭酸水素ナトリウム量を低減させ、亜硝酸ナトリウムを使用せずに、白金族および白金族以外の不純物の分離効率を改善する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、ロジウムを含有する水溶液に炭酸アンモニウム、塩化アンモニウム、およびアルコールを添加して加熱し、さらに塩酸を添加した後生成した結晶を分離し、次いで前記結晶を水酸化ナトリウム水溶液に溶解して加熱し、炭酸水素ナトリウムを加えて発生した沈殿と母液とを分離した後再度塩酸を添加し、しかる後、該母液に炭酸アンモニウム、塩化アンモニウム、およびアルコールを添加して加熱し、さらに少量の水を添加して塩化アンモニウムの粗大結晶を溶解除去し、得られたロジウムを含む結晶を水中で加熱した後冷却し、ロジウムを再結晶させるロジウムの精製方法を採用した。
本発明においては、塩酸を添加した後の溶液のpHは0(零)以下にすることが好ましい。
また、炭酸水素ナトリウムを加えた後の溶液のpHは9.9〜10.7にすることが好ましい。
さらに本発明においては、前記ロジウムを含む結晶を水中で加熱した後冷却しロジウムを再結晶させる際に、母液に塩化アンモニウムを添加することが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明のロジウムの精製方法によれば、確実に難溶性のクロロペンタアンミンロジウム(III)二塩化物を形成させ、ロジウムの損失を最少とし、かつ、pH調整時の炭酸水素ナトリウム量を低減し、危険性および環境負荷の高い亜硝酸ナトリウムを使用せずに、白金族および白金族以外の不純物の分離効率を従来よりも改善することができ、工業的な価値は大きい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明は、
ロジウムを含有する水溶液にアルコール触媒共存下で、炭酸アンモニウムおよび塩化アンモニウムを添加し、加熱することによりロジウムイオンを確実にクロロペンタアンミンロジウム(III)二塩化物に転換すると同時に、水溶性のアンモニア錯塩を形成する他の水溶性の元素からロジウムを結晶として分離する第一の工程、
クロロペンタアンミンロジウム(III)二塩化物の結晶と共沈した水酸化物とロジウムを分離するため、一旦塩酸で不純物元素を溶解分離する第二の工程、
さらに、残渣中に含有するクロロペンタアンミンロジウム(III)二塩化物と水酸化物を分離するため、残渣を水酸化ナトリウム水溶液と混合しロジウムをヒドロキソペンタアンミンロジウム(III)として浸出する第三の工程、
溶出した不純物を炭酸水素ナトリウムによりpHを9.9〜10.7に調整することにより、水酸化物あるいは炭酸塩として沈殿させ、不純物の沈殿とロジウムを含む母液とを分離する第四の工程、
分離されたロジウムを含む溶液のpHを0(零)以下となるまで塩酸で中和し、ヒドロキソペンタアンミンロジウム(III)イオンをクロロアンミンロジウム(III)イオンに戻し、さらに一部分解している可能性があるため、炭酸アンモニウム、塩化アンモニウム及びアルコールを加えて加熱し、再度結晶を回収する第五の工程、
さらに、上記工程では品質が不十分であるため、第五の工程で得られたクロロペンタアンミンロジウム(III)二塩化物を温水中から再結晶させる第六の工程により成る。
【0014】
第一の工程では、アルコール共存化でアンモニアを作用させる方法が最も一般的であるが、配位子置換エネルギーが高いため加熱が必要となる関係上、アンモニアでは配位子として必要な量を維持することが困難で結果的に目的の錯塩の形成が定量的に達成されず、また、炭酸アンモニウムを塩化アンモニウムと加熱する方法では、加熱時のアンモニアの急激な揮発は防止可能であるものの、種々のアンモニア錯体が生成し、相互分離が必要となることから、後者のプロセスをベースにクロロペンタアンミンロジウム(III)イオンの形成を促進するエタノールを添加する方法を採用した。
炭酸アンモニウム、塩化アンモニウムの添加量としては共通イオン効果を最大限に活用するため、濃度が高いほど好ましく、それぞれが共存可能な飽和濃度付近である、150〜250g/lが最も好ましい。飽和濃度付近より低くてはロジウムの損失が増加し、過剰になると溶解しないため、無駄に消費されるだけである。
加熱温度は高温ほど望ましいが、100℃以上では蒸発が激しいため、80℃以上90℃以下が好ましく、反応時間は2時間以上必要であり4時間以上では差異がなくなるため、2時間から4時間の範囲が望ましい。
【0015】
第二の工程では、共沈した水酸化物を溶解するため、二酸化炭素の発生が終了するまで塩酸を添加する。塩酸添加後の溶液のpHは、0(零)以下であれば元素を問わず概ね分離が可能である。酸としては、クロロアンミン錯体以外の錯体元素の形成を防止するため、塩酸を使用する必要がある。
【0016】
第三の工程では、クロロペンタアンミンロジウム(III)イオンの塩化物イオンのみを水酸化物イオンに転換するが、反応速度が遅いため1mol/l以上の水酸化ナトリウムを用いることが望ましく、また、6mol/lを超えると錯体からアンモニアが遊離する恐れがあるためそれ以下の濃度が望ましい。スラリー濃度は300g/lを超えると結晶中の塩化アンモニウムによりアルカリ不足になる恐れがあり、50g/l以下のスラリー濃度では処理量から非効率であるため、50g/l以上300g/l以下が好ましい。
【0017】
第四の工程では、第三の工程で得られたスラリー中に存在する、不純物のヒドロキシル錯体をpHを低下させる事により分解する必要があるが、酸を使用すると局部的にヒドロキソペンタアンミンロジウム(III)イオンが分解し、結晶として沈殿する恐れがあるため、緩衝剤でpH調整を行う。緩衝剤としては最も安価でCOD負荷が低く、後工程に問題が少ない炭酸水素ナトリウムを使用する。pH調整値としては炭酸の酸解離定数pKa2が10.3であることから、この値付近に緩衝域があり、これを大きく下回ることは困難であることから緩衝範囲内の9.9〜10.7を目標とする。安定した時点で水酸化物とロジウムを含む水溶液を固液分離する。
【0018】
第五の工程では、ヒドロキソペンタアンミンロジウム(III)イオンに二酸化炭素の発生が終了するまで塩酸を添加し、クロロペンタアンミンロジウム(III)イオンに戻す工程である。原理的には、塩酸のみで元に戻るはずであるが、実際には反応速度が遅く、共通イオン効果により溶解度を下げる過剰の塩化物、アンモニウム塩も不足していることから、アンモニウム塩を分解する過剰の水酸化ナトリウムを塩酸で中和後、塩化アンモニウムと炭酸アンモニウム及びアルコールを添加する。条件等は第一の工程と同じである。
【0019】
第六の工程は物理的な再結晶精製である。溶解温度は結晶が溶解する温度であればよく、特に限定はされない。原理的には第一の工程の後直ちに再結晶も可能な場合もあるが、実際には不純物の種類、量が多く、化学的な分離が必要である。再結晶時に母液に塩化アンモニウムを添加すると共通イオン効果により収率を改善することが可能である。
【実施例1】
【0020】
表1に示すロジウム含有液を原液として、下記の操作に従い精製を行った。
【0021】
【表1】

【0022】
先ず原液100mlに18%水酸化ナトリウム水溶液79mlを添加し、pH=−0.3まで中和した。
この液179mlに対し、エチルアルコール5ml、さらに44.8gの塩化アンモニウム、33.6gの炭酸アンモニウムを添加し、90℃にて3時間加熱した。
反応後の液には、塩酸15mlを添加してpH=−0.5に調整して固液分離し、ロジウムを含む残渣を得た。
残渣は水100mlに懸濁させた後、18%水酸化ナトリウム水溶液22.7mを添加し、90℃にて1時間加熱した。
スラリーは25℃まで冷却後、さらに炭酸水素ナトリウムをpH=9.9になるまで添加した。添加量は17.5gであった。スラリーは固液分離し、ロジウムを含む濾液を回収した。
【0023】
濾液は塩酸にてpH=−0.3まで中和し、炭酸アンモニウム33.6g、塩化アンモニウム22.4g、エタノール5mlを添加し、90℃にて3時間加熱した。
塩酸を添加し、pH=−0.3に調整後、得られた結晶中の塩化アンモニウムの粗大結晶を少量の水で溶解除去後、微細なロジウムを含む沈殿を50mlの水に懸濁させ85℃に加熱して完全に溶解した。
その後、25℃まで冷却し、さらに塩化アンモニウムを200g/lになるように添加した。
各工程の産出物の分析値を表2に示す。また、最も分離困難なイリジウムについてはロジウムとの比も示した。
【0024】
【表2】

【0025】
表2より、初回のクロロペンタアンミンロジウム(III)二塩化物の結晶母液中のIr/Rh比は1.0と原液0.21の約5倍であり、選択的にIrが分離されている。また、水溶液中へのロジウムの損失も0.23g/lに留まった。次工程のアルカリ浸出においても、残渣中のIr/Rh比は0.48と選択的にIrが分離された。アルカリ浸出液から回収した結晶母液へのIr/Rh比は0.38と不純物の分離が認められ、この工程でもロジウムの損失は0.29g/lに留まった。
水による再結晶ではIr/Rh比が0.027とIrが原液と較べると87%除去されていた。母液には3.4g/lのロジウムが溶出したが、塩化アンモニウムの添加により0.14g/lまで低下することが出来た。
【0026】
(比較例)
実施例1で使用したロジウム含有液を原液として、特許文献1に開示された方法をトレースした。
まず、原液100mlに18%水酸化ナトリウム水溶液79mlを添加し、pH=−0.3まで中和した。
この液に対し、25%アンモニア水を添加してpH=10.01とし、エチルアルコール5mlを添加し、アンモニア水でpH=10に維持しつつ、90℃にて3時間加熱した。アンモニア水は38ml消費した。反応後の液には、塩酸6mlを添加し、pH=−0.5に調整して固液分離してロジウムを含む残渣を得た。
残渣は水100mlに懸濁させた後、18%水酸化ナトリウム水溶液22.7mlを添加し、90℃にて1時間加熱した。スラリーは25℃まで冷却後、さらに炭酸水素ナトリウムをpH=9.5になるまで炭酸水素ナトリウムを添加した。添加量は134gも必要であった。スラリーは固液分離し、ロジウムを含む濾液を回収した。
濾液には亜硝酸ナトリウム0.88g(ロジウムの2倍モル量)を添加し、62%硝酸24mlにてpH=−0.05まで中和した。この工程において二酸化窒素が発生した。
各工程の産出物の分析値を表3に示す。また、最も分離困難なイリジウムについてはロジウムとの比も示した。
【0027】
【表3】

【0028】
本プロセスにおいては、初期のアンモニア水錯化が困難であり、Ir/Rh比も0.29と原液に近く精製不良であり、母液のロジウムが4.1g/lと高濃度で残留し、原液に対して46%が母液に失われていた。また、亜硝酸錯体を経るプロセスであるが、不純物の除去率は低く、二次晶である[Rh(NHNO−結晶には白金がロジウムよりも大量に混入した。この塩の晶出においてロジウムの方が白金よりも液に溶出しており、精製が行われていない結果によるものである。
以上より、従来のClaus'塩法は精製効率、収率共に低く、炭酸水素アルカリの大量消費、二酸化窒素の発生など問題があることが再確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロジウムを含有する水溶液に炭酸アンモニウム、塩化アンモニウム、およびアルコールを添加して加熱し、さらに塩酸を添加した後生成した結晶を分離し、次いで前記結晶を水酸化ナトリウム水溶液に溶解して加熱し、炭酸水素ナトリウムを加えて発生した沈殿と母液とを分離した後再度塩酸を添加し、しかる後、該母液に炭酸アンモニウム、塩化アンモニウム、およびアルコールを添加して加熱し、さらに少量の水を添加して塩化アンモニウムの粗大結晶を溶解除去し、得られたロジウムを含む結晶を水中で加熱した後冷却し、ロジウムを再結晶させることを特徴とするロジウムの精製方法。
【請求項2】
塩酸を添加した後の溶液のpHを0以下にすることを特徴とする請求項1に記載のロジウムの精製方法。
【請求項3】
炭酸水素ナトリウムを加えた後の溶液のpHを9.9〜10.7にすることを特徴とする請求項1または2に記載のロジウムの精製方法。
【請求項4】
前記ロジウムを含む結晶を水中で加熱した後冷却しロジウムを再結晶させる際に、母液に塩化アンモニウムを添加することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のロジウムの精製方法。