説明

ロックアウトシステム

【課題】 ロックアウト管理ができる作業者数を多数確保せしめ、かつ、施錠及び開錠の時間が短縮された作業効率の高いロックアウトシステムを提供する。
【解決手段】 動力遮断制御要素310に取り付けるメインのロックアウト器具200とは別にサブのロックアウト器具100を設ける。サブのロックアウト器具100は、開閉可能な第1の基部110および第2の基部120と、それらが閉鎖状態において施錠可能となるようにサブロック用施錠部位111、121が形成され、各作業者が入場の際にサブロック錠130を取り付け、退場の際に開錠して取り外す。また、動力遮断制御要素310をロックアウトするメインのロックアウト器具200を開錠するメイン鍵221を収納するメイン鍵収納部140を第1の基部110と第2の基部120が閉鎖状態において外部からアクセス不能な位置に配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業従事者の機械設備内等での作業中における不意の機械設備等の動力源への接続を防止し、不慮の事故を防ぐロックアウトシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
日本国内では、労働安全衛生規則において、機械・設備の清掃時あるいは改造・修理時などの作業中での労働安全衛生を確保するために細かい規則が設けられている。また、日本工業規格「機械類の安全性−基本概念、設計のための一般原則−第二部:技術原則(JISB9700−2:2004)では、「機械設備の保全及び修理に関して、機械設備は動力供給の遮断及び蓄積されたエネルギーを消散させる技術的手段を装備しなければならない。」と規定されている。例えば、機械類の安全性−機械類の電機装置−第1部:一般要求事項(JISB9960−1:2008)では、「電源断路機器は、それが開閉器式断路器、開閉機器と組み合わせて使う断路器、または回路断路器のいずれかである場合、OFF(断路)位置でロックできる手段(例えば南京錠やシリンダ錠によるロック手段)を備えなければならない。」とされている。
【0003】
このように、製造現場において作業者の安全を確保するために災害件数の低減努力の重要な方策としてロックアウトシステムの導入が推進されている。つまり、機械類の安全性において安全防護および付加保護方策として、保全及び修理時に動力供給を遮断する際に、すべての遮断装置を遮断の位置に施錠するロックアウトのニーズが高まっている。
【0004】
ロックアウトは、機械、設備、ロボット等の動力設備装置に供給されるエネルギー(動力)源を施錠することによって遮断もしくは遮断し続ける方法をいい、単に、動力源のスイッチを遮断してエネルギーの供給を停止するだけでなく、遮断したスイッチ等の操作ができないようにロックアウトする装置で遮断状態を固定するものである。例えば、上記の動力設備装置の停止ボタンを物理的に解除できないように取り付けるカバー、掛け金などとともに、そのカバーや掛け金の解除ができないように南京錠やシリンダ錠などで施錠することで、作業者の安全を確保する。
【0005】
ここで、機械設備等の内部の作業を複数人で行う場合もある。複数人の作業者の安全を確保するため、従来のロックアウトシステムにおいて、複数の錠前を用いて施錠する多重ロックアウトシステムが開示されている。
たとえば、特許文献1に示されている構成例では、機械設備の保守点検作業を複数人で行う場合に用いるロックアウトシステムとして、図16に示すような棒状のロックバーを用いたものが開示されている。機器装置の回路遮断機に対して棒状のロックバーを通し入れ、そのロックバーに対して各々の作業員が管理する錠前を各々取り付けておき、すべての錠前が外されない限りロックバーが外せない構造となっている。すなわち、一人の作業者が作業を終わったために自分が管理する一つの南京錠を開錠しても、他の作業者が管理する錠前が施錠されたままであり、機器装置の回路遮断機に取り付けられたロックバーを外すことができない。つまり、他の作業者が引き続き回路遮断機と連動する機器装置の保守点検作業を行っている場合は、保守点検作業中の作業員全員が保守作業を終え、各自の南京錠を開錠しなければ回路遮断機を開放することができないので、個々の作業者の安全が確実に確保されるものである。
【0006】
また、特許文献2に示されている構成例では、機械設備の保守点検作業を複数人で行う場合に用いるロックアウト用多重ロック器具として、図17に示すような、開閉可能な開閉部(第1のジョー31、第2のジョー35)と、開閉部の開閉に合わせて摺動する2片の板状の基部29、33を備えたロックアウト用多重ロック器具17が開示されている。第1基部29の先端に設けた湾曲形状の第1ジョー31と第2基部33の先端に設けた湾曲形状の第2ジョー35が支軸37で開閉可能に軸支されており、第1基部29と第2基部33が摺動することで先端の開閉部の第1ジョー31と第2ジョーが開閉可能となっている。開閉部が閉鎖状態にある場合には第1基部29と第2基部33が正しく重なり合っており、複数設けられている一つ一つのロック用孔部29が貫通状態であり、南京錠などの錠前を施錠することができる。つまり、ロック用孔部29に南京錠などの錠前が1個以上施錠された状態では2片の板状部材33が正しく重なり合っており、開閉部の閉鎖状態が確保され、ロックアウト状態が確保される。逆に、ロック用孔部29に南京錠などの錠前がすべて開錠された状態では第1基部29と第2基部33が自由に摺動することができ、開閉部を開放状態とすることもでき、ロックアウト状態を解除することができるようになっている。図17の構成例ではロック用孔部29が6個設けられており、6人の作業者の6個の南京錠19を掛けることができるものとなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−347163号公報
【特許文献2】特開2009−077984号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、従来の複数の作業者が従事する機械設備のロックアウトに用いるロックアウト用多重ロック器具には以下の問題があった。
第1の問題は、従来のロックアウト用多重ロック器具では、ロックアウト管理ができる作業者の数が少数に限られていることである。特許文献1の構成例では4人用、特許文献2の構成例では6人用のものである。もっとも、従来のロックアウト用多重ロック器具においても、ロックバーの長さや基部29,33の面積を大きくし、ロック用孔部29等を増やせば、管理できる作業者の数を増やすことはできる。しかし、単にロックバーの長さや基部29,33の面積を大きくし、ロック用孔部29等を増やした場合、機械設備の回路遮断機等に取り付けるロックアウト用多重ロック器具のスペースには限りがあるため物理的にロックアウト用多重ロック器具を大きくできないという制限や、ロックアウト用多重ロック器具に取り付ける錠前の数を増やすと錠前の総重量が大きくなってしまい、機械設備の回路遮断機等にかかる重量負荷が大きくなってしまうという問題が生じる。
【0009】
第2の問題は、従来のロックアウト用多重ロック器具では、ロックアウト管理ができる作業者の数を増やすと、作業効率が低下する問題が発生する。例えば、各作業者が機械設備に入場する際の施錠について、限られたスペースに取り付けたロックアウト用多重ロック器具のロック用孔部29等は近接せざるを得ず、ロックアウト用多重ロック器具に直接取り付けられる錠前の数が多くなり、いわゆる“鈴なり状態”に錠前が取り付けられてゆくため、施錠に時間がかかる。また、各作業者が機械設備から退場する際の開錠について、ロックアウト用多重ロック器具に直接取り付けられる錠前の数が多くいわゆる“鈴なり状態”に錠前が取り付けられているため、各作業者が管理する錠前を発見しづらく、開錠に時間がかかってしまう。
【0010】
このように、従来のロックアウト用多重ロック器具では、ロックアウト管理ができる作業者の数が少数に限られる上、無理にロック用孔部を多数設けてロックアウト管理する作業者の数を増やすと却って作業効率が低下するという問題を有している。
【0011】
本発明は、上記従来のロックアウト用多重ロック器具の問題点を解決し、ロックアウト用多重ロック器具において、ロックアウト管理ができる作業者数を多数確保せしめやすく、かつ、施錠時および開錠時の時間が短縮された作業効率の高い構造を実現したロックアウトシステムを提供することを目的とする。
また、機械設備に入場する作業者によるロックアウトの管理のみではなく、外部の人にも機械設備内で行っている作業の内容を容易に把握でき、また、付近にいる人のうち、どの人がどの作業に従事する者であるか、無許可の部外者の立ち入り者が存在しないか一目で分かるように管理できるロックアウトシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、本発明のロックアウトシステムは、制御盤や操作盤などに組み込まれた動力遮断制御要素をロックアウトし、作業安全を確保せしめるロックアウトシステムであって、前記動力遮断制御要素に取り付けるメインのロックアウト器具とは別に設けたサブのロックアウト器具において、開閉可能な第1の基部および第2の基部と、前記第1の基部と前記第2の基部が閉鎖状態において施錠可能となるように形成されるサブロック用施錠部位と、各作業者が管理し、各作業者が入場の際に前記サブロック用施錠部位に対して取り付け、退場の際に開錠して取り外す複数個のサブロック錠と、前記動力遮断制御要素をロックアウトする前記メインのロックアウト器具を開錠するメイン鍵を収納するメイン鍵収納部を備え、前記メイン鍵収納部を、前記第1の基部と前記第2の基部が閉鎖状態において外部からアクセス不能で、前記第1の基部と前記第2の基部が開放状態において外部からアクセス可能な位置に配置したことを特徴とするロックアウトシステムである。
【0013】
上記構成により、機械設備の回路遮断機等に取り付けるメインのロックアウト器具には施錠はメイン錠のみであり、作業者の数に応じたサブロック錠は、メインのロックアウト器具とは別に設けたサブのロックアウト器具に取り付けるものであるので、ロックアウト管理ができる作業者の数を多くすることが可能である。従来は問題となっていた機械設備の回路遮断機等のスペースの制限や機械設備の回路遮断機等にかかる重量負荷の制限の問題が発生せず、機械設備の回路遮断機に対していわゆる“鈴なり”状態にサブロック錠を取り付ける必要もなく、サブロック錠の取り付け・取り外しも容易となり、作業効率も向上する。
【0014】
例えば、上記構成において、前記第1の基部および前記第2の基部が矩形の板材であり、前記サブロック用施錠部位が、前記第1の基部と前記第2の基部の周辺縁に配置された複数個の孔とする構成が可能である。シンプルな形であり、かつ、第1の基部と第2の基部の周辺縁として、右辺、左辺、下辺の3辺などを用いて多数のサブロック用施錠部位の孔を効率的に設けることができる。
【0015】
また、例えば、上記構成において、前記第1の基部および前記第2の基部が少なくとも一部に斜辺を持つ板材であり、前記サブロック用施錠部位が少なくとも前記第1の基部と前記第2の基部の斜辺縁に配置された複数個の孔とする構成が可能である。例えば、第1の基部と第2の基部をいわゆる三角形の基部とすれば、第1の基部と第2の基部の周辺縁として左辺と右辺の2辺を用いて多数のサブロック用施錠部位の孔を効率的に設けることができる上、さらに、第1の基部と第2の基部の周辺縁は傾いているため、サブロック用施錠部位同士が上下方向に重なり合うことがなく、施錠により多数のサブロック錠を懸垂しても相互に上下方向に重なることがないので、比較的サブロック用施錠部位の孔を密に設けることができる。
【0016】
また、例えば、上記構成において、前記第1の基部および前記第2の基部が円形などの曲線を持つ板材であり、前記サブロック用施錠部位が少なくとも前記第1の基部と前記第2の基部の円周縁に配置された複数個の孔とする構成が可能である。第1の基部と第2の基部の円周縁に設けたサブロック用施錠部位同士は上下方向に重なり合うことがなく、施錠により多数のサブロック錠を懸垂しても相互に上下方向に重なることがなく、特に円周縁の下方において、比較的サブロック用施錠部位の孔を密に設けることができる。
【0017】
また、例えば、前記第1の基部が表面側、前記第2の基部が裏面側に位置するように組み合わされる構成において、前記第2の基部が立設したループ状の部材を備え、前記第1の基部が、前記第1の基部と前記第2の基部の閉鎖状態において前記第2の基部の前記ループ状の部材を通し入れ、前記第1の基部の表面上に前記第2の基部の前記ループ状の部材の少なくとも一部が突出するように設けた孔部を備え、前記サブロック用施錠部位が、前記第1の基部と前記第2の基部の閉鎖状態において前記第1の基部の表面上に突出する前記ループ状の部材の一部のループ部分であり、各作業者が入場の際に前記第1の基部の表面上に突出している前記ループ状の部材に対して前記サブロック錠を取り付け、退場の際に前記サブロック錠を開錠して取り外すものとする構成も可能である。
【0018】
なお、前記ループ状の部材において、前記第1の基部の表面上に突出している前記ループ部分の少なくとも一部が略水平に設けられ、前記略水平部分において前記サブロック錠を懸垂させて保持する構成とすることが好ましい。
このように、ループ部材を突出させ、当該ループ部材にサブロック錠を取り付けることにより、第1の基部および第2の基部が分離できなくなり、ロックアウトが確保できる上、サブロック用施錠部位を設けて当該サブロック用施錠部位に一対一にサブロック錠を取り付ける構成よりも、ループ部材であれば多数のサブロック錠を取り付けやすく、効率的に複数人のロックアウト管理が可能となる。
【0019】
なお、作業者が機械設備に入場する際におけるサブロック錠の施錠処理を効率的に時間短縮する工夫を施すことができる。例えば、上記構成において、前記第1の基部の表面上に突出している前記ループ部分において、外部から前記ループ内方向へは通過でき、前記ループ内から外部へは通過できないように一方通行に開閉する通過制御部を備え、前記各作業者は入場の際に前記サブロック錠を施錠状態のまま前記通過制御部を介して前記第1の基部の表面上に突出している前記ループ部分に対して通し入れることができるものとする。つまり、ループ部材にサブロック錠を開錠状態から取り付けて施錠する必要はなく、サブロック錠を当初から施錠した状態のまま、単に通過制御部から通し入れてループ部材に取り付けるだけでよく、極めて短時間に入場のためのロックアウト管理が可能となる。
【0020】
次に、本発明にかかるロックアウトシステムを適用することにより、外部からの作業内容の把握、外部から部外者の立ち入りの管理、作業の安全の確保に関する工夫について述べる。
第1に、機械設備などの作業の前後において、当該機械設備の中で行う作業内容、作業時間、作業人数などの諸情報が外部から簡単に把握できることが作業の円滑な進行、不慮の事故の防止には重要である。
そこで、前記第1の基部または前記第2の基部の前記サブロック用施錠部位以外の部分の一部に、前記動力遮断制御要素をロックアウトする作業内容および作業者人数を含む作業情報を表示する作業情報表示部を設ける構成が好ましい。
上記構成により、ロックアウトシステムを適用している機械設備における作業内容が容易に把握できる。例えば、サブロック用施錠部位は第1の基部と第2の基部のそれぞれ周縁に設けられている場合、表示部は第2の基部の中央付近に大きく設けることができる。
【0021】
次に、第2に、機械設備などの作業において、作業に関係する作業者のみが入場し、その他の外部のものが勝手に入場しないように管理することが、作業の円滑な進行、不慮の事故の防止には重要である。
そこで、本発明の工夫として、上記したロックアウトシステムの構成において、さらに、各作業者が体の一部に取り付ける作業者標章と、前記作業者標章の一部に設けた、前記作業者標章と前記ロックアウトシステムを適用している作業との関連性を示す識別情報とを備える構成が好ましい。
【0022】
作業者標章の例としては、腕章、安全チョッキなどがあるが、外部から判別できるものであれば特に限定されない。
上記構成により、ロックアウトシステムを適用している作業に従事している作業者と、作業者以外の外部の人との区別が作業者標章の有無で容易に把握できる。なお、作業者標章がいわゆる「腕章」であれば腕章着用の有無で容易に作業者か否かを判別できる。また、作業者標章に色、模様、字などの識別情報が付与されておれば、作業者の属性などが把握しやすく、特に大規模な作業場であれば、セクションごと、作業内容ごとに作業者の属性を把握しやすくなる。
【発明の効果】
【0023】
本発明のロックアウトシステムによれば、従来に比べてロックアウト管理ができる作業者の数を多くすることが可能である。つまり、機械設備の回路遮断機等に取り付けるメインのロックアウト器具には施錠はメイン錠のみであり、作業者の数に応じたサブロック錠は、メインのロックアウト器具とは別に設けたサブのロックアウト器具に取り付けるものであるので、ロックアウト管理ができる作業者の数を多くすることが可能である。従来は問題となっていた機械設備の回路遮断機等のスペースの制限や機械設備の回路遮断機等にかかる重量負荷の制限の問題が発生せず、機械設備の回路遮断機に対していわゆる“鈴なり”状態にサブロック錠を取り付ける必要もなく、サブロック錠の取り付け・取り外しも容易となり、作業効率も向上する。
【0024】
また、サブロック用施錠部位に代えてループ部材を突出させ、当該ループ部材にサブロック錠を取り付ける構成とした場合でも、第1の基部および第2の基部が分離できなくなりロックアウトが確保できる上、サブロック用施錠部位を設けて当該サブロック用施錠部位に一対一にサブロック錠を取り付ける構成よりも、ループ部材であれば多数のサブロック錠を取り付けやすく、効率的に複数人のロックアウト管理が可能となる。特に、ループ部分において、外部から前記ループ内方向へは通過でき、前記ループ内から外部へは通過できないように一方通行に開閉する通過制御部を備えた構成とすれば、サブロック錠を当初から施錠状態のままループ部材に通し入れることができ、各作業者の入場時のロックアウトを極めて効率的に短時間で行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明のロックアウトシステムの実施例を説明する。なお、本発明はこれらの構成例に限定されるものではない。
本発明にかかるロックアウトシステムは、機械設備における制御盤や操作盤などに組み込まれた動力遮断制御要素等の制御要素をロックアウトし、作業安全を確保せしめるものである。
【0026】
ここで、本発明にかかるロックアウトシステムは、制御要素である動力遮断制御要素300に対してメインのロックアウト器具200が固定されることによりロックアウトを確保しつつ、メインのロックアウト器具200のロックを開錠するメイン鍵を保持するサブのロックアウト器具100を備えた構成となっている。
【0027】
以下、実施例1において、サブのロックアウト器具100においてサブロック用施錠部位を設けたロックアウトシステムの実施例を示し、実施例2において、サブのロックアウト器具100においてループ状の部材を設けたロックアウトシステムの実施例を示す。
【実施例1】
【0028】
実施例1は、本発明のサブロック用施錠部位を設けたロックアウトシステムの基本構成例および基本的な作業手順を示している。
図1は、実施例1にかかるロックアウトシステム全体の構成を模式的に示した図である。
実施例1の構成例において、図1に示すように、本発明のロックアウトシステムは、制御盤や操作盤などに組み込まれた回路遮断器などの機械設備300の動力遮断制御要素310、メインのロックアウト器具200、サブのロックアウト器具100を用いる構成となっている。
【0029】
機械設備300の動力遮断制御要素310は、機械設備300のいわゆるオンオフを制御する制御要素であり、電力を駆動源とする装置であれば制御盤や操作盤などに組み込まれた回路遮断器、エンジンやモーターなどの機械的トルクを駆動源とする装置であれば駆動源の起動スイッチや、クラッチなどの動力伝達機構などである。なお、この構成例では動力遮断制御要素310は、一例として電力駆動の機械設備300の制御盤に組み込まれた回路遮断器であるものとする。
【0030】
メインのロックアウト器具200は、機械設備300の動力遮断制御要素310である回路遮断器などに取り付けるメインのロックアウト器具である。メインのロックアウト器具200の構造および機能は、取り付け対象となる機械設備300の動力遮断制御要素310の構造に対応するものであり、様々なものがある。図1の例では、機械設備300の動力遮断制御要素310は機械設備300の電力供給の主スイッチのボタンである。当該ボタンである制御要素310の押下をロックアウトする部材として開閉カバーがついている。つまり、図1の例ではメインのロックアウト器具200は、当該ボタン310に対して取り付けられた開閉カバーおよびこの開閉カバーを閉鎖状態に固定するよう取り付けるメイン錠となる。ここでは開閉カバー210、メイン錠220、メイン鍵221として説明する。
【0031】
図2は、メインのロックアウト器具200とその開閉カバーの開閉の様子が分かりやすいように拡大して示した図である。図2の例は、機械設備300の動力遮断制御要素310にはボタンである制御要素310の押下をロックアウトする部材として開閉カバー210がついている。また、この開閉カバー210の構成例では上開閉カバー210a、下開閉カバー210bがあり、それぞれにメイン錠220が取り付けられる取り付け部位211a、211bがある。この取り付け部位211a、211bにメイン錠220をかけて閉鎖状態に固定することができる。なお、メイン錠220の鍵であるメイン鍵221は、後述するように、サブのロックアウト器具100のメイン錠収納部140に収納される。
【0032】
図2(a)が、機械設備300の主スイッチ310がメインのロックアウト器具200の開閉カバー210がメイン錠220の施錠によりロックアウト状態となっている様子を示しており、図2(b)が、機械設備300の主スイッチ310のメインのロックアウト器具200の開閉カバー210に掛けられていたメイン錠220がメイン鍵221を用いて開錠されて取り外され、ロックアウト解除状態となっている様子を示している。
つまり、図2(a)のロックアウト状態では、機械設備300の動力遮断制御要素310である主スイッチを押下することができないが、図2(b)のロックアウト解除状態では、機械設備300の動力遮断制御要素310である主スイッチを押下できるようになる。
【0033】
次に、サブのロックアウト器具100について詳しく説明する。
サブのロックアウト器具100は、機械設備300の動力遮断制御要素310に取り付けるメインのロックアウト器具200とは別に設けたサブのロックアウト器具である。
サブのロックアウト器具100は、第1の基部110、第2の基部120、サブロック用施錠部位111および121、サブロック錠130、メイン鍵収納部140、作業情報表示部150を備えた構造となっている。
【0034】
図3は、サブのロックアウト器具100を中心に示した図であり、メイン鍵収納部140が第2の基部120の表面に対して設けられている例である。
図4は、サブのロックアウト器具100を中心に示した図であり、メイン鍵収納部140が第1の基部110の裏面に対して設けられている例である。
【0035】
第1の基部110と第2の基部120は、相互に組み合わされて開閉可能な構造となっている。第1の基部110と第2の基部120の構造や形状は多様なものがあり得る。
【0036】
第1の基部110は、図3の例では、矩形型の板材であり、例えば、アクリル素材で形成されている。その中央部分は透明となっている。なお、作業員などに目立ちやすいようにアイキャッチの表示帯の印刷を施しても良い。
第2の基部120は、少なくとも第1の基部120矩形型の板材である。この例では、後述するように、メイン錠収納部140が中央上部にある。また、作業情報表示部150が中央に設けられている。
【0037】
図3(a)は第2の基部120に対して第1の基部110が上面を覆うように合わせた状態が閉鎖状態、図3(b)は第2の基部120に対して第1の基部110を持ち上げた状態が開放状態である。この構成例では上端に蝶番がついており、開閉可能な構造になっている。
図3の例では、両者とも矩形型の板材となっており、両者が対向して重なり合う大きさとなっているが、かならずしも両者は同じ大きさである必要はなく、第1の基部110は少なくとも後述するメイン鍵収納部140を覆う大きさがあれば良い。
【0038】
なお、サブのロックアウト器具100を外部の管理板などに懸垂できるように、第1の基部110と第2の基部120の両方またはいずれか一方には取り付け部材160が設けられている。
【0039】
サブロック用施錠部位111および121は、サブロック錠130を施錠する部位である。サブロック用施錠部位111および121が組み合わさることによりサブロック錠130が取り付け可能な部位が形成されれば良く、特に構造は限定されない。図3に示す例では、第1の基部110と第2の基部120が閉鎖状態において両者を貫通するように孔が形成された例である。この孔に対して各々のサブロック錠130を施錠する。
【0040】
図3に示す構成例では、第1の基部110の右側縁付近に6つ、左側縁付近に6つ、下縁付近の4つ、サブロック用施錠部位111として円形の孔が穿設されている。また、第2の基部120には、第1の基部110のサブロック用施錠部位111に対応する位置において、右側縁付近に6つ、左側縁付近に6つ、下縁付近の4つ、サブロック用施錠部位121として円形の孔が穿設されている。
【0041】
次に、サブロック錠130は、各作業者が管理し、各作業者が入場の際にサブロック用施錠部位111および121に対して取り付け、退場の際に開錠して取り外す錠前などである。図3(a)に示した第1の基部110と第2の基部120の閉鎖状態においてサブロック錠130を掛けることによりロックアウトする。サブロック錠130の錠前の種類は特に限定されず、南京錠、シリンダ錠、電子錠など多様なものがあり得る。サブロック錠130を開閉する鍵はサブ鍵131とする。
【0042】
このサブロック錠130は、機械設備に入場する作業員が個別に施錠するものであり、入場した作業員の人数分のサブロック錠130が取り付けられることとなる。また、退場の際には各作業員は自分が施錠したサブロック錠130を開錠して除去する。つまり、すべてのサブロック錠130がサブ鍵131で開錠されて除去されない限り、まだ機械設備300内で作業中の作業員が存在することとなる。
【0043】
サブ鍵131は、機械設備に入場する作業員が個別に施錠したサブロック錠130に対応する鍵であり、機械設備に入場する各作業員が管理し、保持したまま機械設備に入場する。つまり、機械設備に入場する作業員が個別に施錠したサブロック錠130は、各作業者が管理・保持しているサブ鍵131によらなければ開錠することができない。そのため、サブのロックアウト器具100のサブロック用施錠部位111、121にサブロック錠130が施錠されたままであれば機械設備300内にそのサブロック錠130を施錠した作業者が残留していることを意味する。
【0044】
作業者標章132は、各作業者が腕などの体の一部に取り付ける作業者を判別する標章である。ここでは作業者標章の例として腕章を挙げているが、安全チョッキなど他の形状のものであっても外部から容易に判別できるものであれば良い。作業者標章132の一部には、作業者標章とロックアウトシステムを適用している作業との関連性を示す識別情報を備えている。例えば、腕章であれば色帯を付すことによって色の違いにより作業グループの違いを判別できる。また例えば、数字を付すことによって数字の違いにより作業グループの違いを判別できる。このように、作業者標章132に色、模様、字などの識別情報が付与されておれば、作業者の属性などが把握しやすく、特に大規模な作業場であれば、セクションごと、作業内容ごとに作業者の属性を把握しやすくなる。
このように腕章などの作業者標章132を装着することにより、ロックアウトシステムを適用している作業に従事している作業者と、外部から部外者とを容易に判別することができ、部外者の立ち入り管理が容易に可能となり、作業の円滑な進行、不慮の事故の防止が可能となる。
【0045】
メイン鍵収納部140は、機械設備300などをロックアウトしたメインのロックアウト器具200のメイン錠220をサブのロックアウト器具100内に収納する部位である。例えば袋状の素材で良い。外部からメイン錠220の有無が分かるように例えば透明のプラスチック素材の袋などで良い。
【0046】
メイン鍵収納部140を設ける位置は、第1の基部110と第2の基部120が閉鎖状態において外部からアクセス不能になるような位置に設ける必要がある。つまり、各作業員が施錠したサブロック錠130によりサブのロックアウト器具100がロックアウトされている限り、外部からメイン鍵収納部140にアクセスできず、メイン錠220が取り出せない仕組みとなっている。そのため、メイン鍵収納部140は、第1の基部110と第2の基部120が閉鎖状態において外部からアクセス不能になるような位置に設けられている。
【0047】
図3の例では、メイン鍵収納部140が第2の基部120表面の中央付近に設けられており、第1の基部110が第2の基部120の全面を覆うように合わさった状態にてサブロック錠130によりサブのロックアウト器具100がロックアウトされるために、すべてのサブロック錠130が各人のサブ鍵131で開錠して除去しない限り、第2の基部120の表面にあるメイン鍵収納部140に対して外部からアクセスできない。
【0048】
図4の例では、メイン鍵収納部140が第1の基部110裏面の中央付近に設けられており、第1の基部110が第2の基部120の全面を覆うように合わさった状態にてサブロック錠130によりサブのロックアウト器具100がロックアウトされるために、すべてのサブロック錠130が開錠されない限り、第1の基部110の裏面にあるメイン鍵収納部140に対して外部からアクセスできない。
【0049】
作業情報表示部150は、第1の基部または第2の基部のサブロック用施錠部位130以外の部分、例えば、中央付近に、動力遮断制御要素310をロックアウトする作業内容および作業者人数を含む作業情報を表示する部分である。
この構成例では、図1に示すように、第2の基部の中央部分に大きく設けられており、外部から諸情報が容易に把握できるようになっている。この例では、「危険、腕章着用厳守」の注意書きとともに、作業内容、作業日時、作業人数などの諸情報を表示するものとなっている。さらに、作業責任者、連絡先電話番号など作業管理にとって必要な情報を表示するようにすれば良い。
第2の基部120の中央に設けられた作業情報表示部150の位置に対応して、第1の基部110の中央付近も透明であれば、第2の基部120を上から覆う第1の基部110によって視界が遮られることはない。
【0050】
次に、本発明のロックアウトシステムを用いた機械設備のロックアウトの基本的な手順の流れとその解除の手順について図5のフローチャート、図6から図11の図を参照しつつ説明する。
【0051】
本発明のロックアウトシステムを用いた機械設備のロックアウトの手順は、メインのロックアウトの手順と、サブのロックアウトの手順の2段階のロックアウトの手順がある。従来技術では機械設備300のロックアウトしかなく、多数の作業員が各人ごとに機械設備300のロックアウトを直接行わなければならないが、本発明のロックアウトシステムでは、機械設備300のメインのロックアウトはメイン錠220を用いたメインのロックアウト器具200の施錠で良く、多数の作業者の各人のロックアウトはサブのロックアウトとして各人のサブロック錠130を用いたサブのロックアウト器具100のサブのロックアウトとして多段階にすることができる。
【0052】
[手順1]
図6に示すように、作業の主任などの管理者が作業員の機械設備300への入場に先立ち、機械設備300の動力遮断制御要素310である主スイッチに対して、メインのロックアウト器具200の開閉カバー210に対して、メイン錠220を用いて施錠し、メイン鍵221を取り出す。
この手順1により、機械設備300の動力遮断制御要素310である主スイッチが、メインのロックアウト器具200の開閉カバー210に対するメイン錠220の施錠により“ロックアウト”され、主スイッチを押下できない状態となる(図5ステップS1)。
【0053】
[手順2]
図7に示すように、作業の主任などの管理者は、サブのロックアウト器具100を開放状態とし、機械設備300の動力遮断制御要素310を施錠したメイン錠220のメイン鍵221を、サブのロックアウト器具100のメイン鍵収納部140に収納する(図5ステップS2)。
【0054】
[手順3]
図8に示すように、サブのロックアウト器具100を閉鎖状態に戻し、機械設備300内に入場する各作業者は、入場する際に各人が管理するサブロック錠130をサブロック用施錠部位111および121に対して取り付け、各人ごとにサブのロックアウト器具100をサブロック錠130により“ロックアウト”する。施錠したサブ鍵131は各作業者が管理する(図5ステップS3)。
【0055】
上記の手順1から手順3の3つの手順により、機械設備300は二段階のロックアウトが施されている。つまり、メインのロックアウト器具200を開錠するために必要なメイン鍵221はサブのロックアウト器具100内に封止され、そのサブのロックアウト器具100に取り付けられたサブロック錠130を開錠するために必要なサブ鍵131は各作業者が保持することで二段階のロックアウトが施されている。
【0056】
次に、ロックアウトの解除の手順について述べる。
[手順4]
図9に示すように、機械設備300内での作業が終了して退場する作業員は、退場時に、各人が施錠したサブロック錠130を各人が管理しているサブ鍵131により開錠してサブロック用施錠部位111および121から除去する(図5ステップS4)。
【0057】
[手順5]
機械設備300内に入場したすべての作業員が退場すれば、図10に示すように、各人が施錠したすべてのサブロック錠130が開錠されて除去された状態となる(図5ステップS5:Y)。
【0058】
[手順6]
図11に示すように、作業の主任などの管理者は、第1の基部110と第2の基部120を開放状態とし、サブのロックアウト器具100のメイン鍵収納部140からメイン鍵221を取り出す(図5ステップS6)。
【0059】
[手順7]
図12に示すように、機械設備300の動力遮断制御要素310である主スイッチを覆う開閉カバー210に取り付けられたメイン錠220を、メイン鍵221を用いて開錠し “ロックアウト”を解除する(図5ステップS7)。
【0060】
上記の手順4から手順7の4つの手順により、機械設備300に対する二段階のロックアウトを解除することができる。
上記に示した構成により、機械設備300の動力遮断制御要素310である回路遮断機等に取り付けるメインのロックアウト器具200の施錠はメイン錠220のみであり、作業者の数に応じたサブロック錠130は、メインのロックアウト器具200とは別に設けたサブのロックアウト器具100に取り付けるので、ロックアウト管理ができる作業者の数を多くすることが可能である。つまり、従来は作業者の数が多くなると、機械設備の回路遮断機に対していわゆる“鈴なり”状態にサブロック錠を取り付ける必要があり、機械設備300の回路遮断機等の周りのスペースの制限、機械設備300の回路遮断機等にかかる重量負荷の問題が発生するが、メインのロックアウトとサブのロックアウトの二段階のロックアウトとし、各作業者のサブロック錠を取り付けるサブロックアウトは、機械設備300の回路遮断機とは別に行うことができるため、いわゆる“鈴なり状態”を避けることができ、サブロック錠130の取り付け・取り外しも容易となり、作業効率も向上する。
【0061】
次に、上記に示したサブロックアウト器具100とは異なる形状のサブロックアウト器具100を説明する。
上記の構成例では、サブのロックアウト器具100の外形は矩形であったが、第1の基部110および第2の基部120が少なくとも一部に斜辺を持つ板材である例、具体的には三角形である構成も可能である。
【0062】
図13(a)の構成例は、図1と比べて、サブのロックアウト器具100の外形が三角形となっており、斜辺を備えたものとなっている。
図13(a)の構成例では、第1の基部110および第2の基部120ともに外形が三角形となっており、サブロック用施錠部位111および121が第1の基部110と第2の基部120の斜辺縁に配置されている。
【0063】
このように、第1の基部110と第2の基部120の斜辺縁にサブロック用施錠部位111および121を設けることにより、各々のサブロック錠130は第1の基部110と第2の基部120の斜辺縁に対して略垂直に懸垂する形で施錠されるため、上下方向に重なり合うことがなく、サブロック錠130をすっきりと管理することができる。
【0064】
また、他の例として、第1の基部110および第2の基部120が曲線を備えた板材である例、具体的には円形である例を示す。
図13(b)の構成例は、図1と比べて、サブのロックアウト器具100の外形が半円形となっており、曲線の辺を備えたものとなっている。
図13(b)の構成例では、第1の基部110および第2の基部120ともに外形が半円形の板材となっており、サブロック用施錠部位111および121が第1の基部110と第2の基部120の曲線の周縁に配置されている。
【0065】
このように、第1の基部110と第2の基部120の円周縁にサブロック用施錠部位111および121を設けることにより、各々のサブロック錠130は第1の基部110と第2の基部120の円周縁に対して略垂直に懸垂する形で施錠されるため、上下方向に重なり合うことがなく、サブロック錠130をすっきりと管理することができる。
【実施例2】
【0066】
次に、実施例2として、実施例1のロックアウトシステムで示したサブロックアウト器具100とは異なる構造のサブロックアウト器具100aを用いる例を説明する。
なお、機械設備300およびメインのロックアウト器具200については実施例1と同様で良いのでここでの説明は省略する。
他の構成についても、実施例1と同様の部分に関する説明は省略する。
【0067】
図14は、実施例2のサブロックアウト器具100aの構成を簡単に示す図である。
実施例2のサブロックアウト器具100aは、実施例1と同様、第1の基部110a、第2の基部120a、サブロック用施錠部位111aおよび121a、サブロック錠130、メイン鍵収納部140を備えた構造となっている。
【0068】
第1の基部110aは、表面上に立設したループ状の部材111aを備えている。図14の構成例ではいわゆるコの字型のループ状の部材111aとなっている。
この例では、ループ状部材111aはコの字となっており、下辺が水平なものとなっている。後述するように、この水平部分においてサブロック錠130を懸垂させて保持しやすくなっている。
【0069】
一方、第2の基部120aには、第1の基部110aのループ部材111aに対応した形状の孔121aが穿設されている。図14の構成例では、第2の基部120aには、コの字型の孔121aが設けられている。
【0070】
図15は、実施例2のサブロックアウト器具100aの用い方を側面から簡単に説明する図である。
図15(a)から図15(b)に示すように、第1の基部110aと第2の基部120aを組み合わせて閉鎖状態とすると、第1の基部のループ状部材111aは孔121aを介して第2の基部120aの表面上に突出した状態となる。この突出したループ状部材111aがサブロック用施錠部位となる。
【0071】
ここで、本実施例4では、第1の基部のループ状部材111aに対して、各人のサブロック錠130が取り付けやすいようにする工夫について述べる。
この構成例では、第1の基部のループ状部材111aの一部に通過制御部112が設けられている。この通過制御部112は、図15(c)に示すように、外部からループ内方向へ押し込むことで開いて通過できるが、逆に、ループ内から外部へは通過できないように一方通行に開閉する部材となっている。図15(c)に示すように、通過制御部112を介して外部から部材を簡単にループ内に押し入れることができるため、サブロック錠130を施錠状態のまま押し入れることができる。例えば、サブロック錠130が南京錠であれば南京錠のU字型の施錠バーを施錠したまま施錠バーを通過制御部112部分に押し込めばループ状部材111a内に通し入れることができる。
【0072】
機械設備300に入場する各作業者は、入場する際に次々と自分の管理するサブロック錠130を施錠したまま通過制御部112を介してループ部材111a内に通し入れてゆくことができる。サブロック錠130はループ部材111aの下部に懸垂する形で取り付けられ、サブロックアウト器具100aをロックアウトする。
【0073】
このように通過制御部112を設けることにより、各作業者は入場の際には自分の管理するサブロック錠130を施錠状態のまま通過制御部112を介してループ状部材111aに対して通し入れることができる。
なお、機械設備300から退場する際には、各作業者は自己が保持しているサブ鍵131を用いてサブロック錠130を開錠することでループ部材111aから取り外す。
【0074】
実施例2のロックアウトシステムは、サブロックアウト器具100aのサブロック錠取り付け部位がループ状部材となっている点を除けば、他の基本的な構造や流れは実施例1と同様である。
【0075】
以上、本発明のロックアウトシステムの構成例における好ましい実施例を図示して説明してきたが、本発明の技術的範囲を逸脱することなく種々の変更が可能であることは理解されるであろう。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明のロックアウトシステムは、様々な機械設備の動力遮断制御要素に対するロックアウトシステムに適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】実施例1にかかるロックアウトシステム全体の構成を模式的に示した図である。
【図2】メインのロックアウト器具200とその開閉カバーの開閉の様子が分かりやすいように拡大して示した図である。
【図3】メイン鍵収納部140が第2の基部120の表面に対して設けられている例を示す図である。
【図4】メイン鍵収納部140が第1の基部110の裏面に対して設けられている例を示す図である。
【図5】本発明のロックアウトシステムを用いた機械設備のロックアウトおよびロックアウト解除の基本的な手順の流れを示すフローチャートである。
【図6】本発明のロックアウトシステムを用いた機械設備のロックアウトの手順を簡単に示す図(その1)である。
【図7】本発明のロックアウトシステムを用いた機械設備のロックアウトの手順を簡単に示す図(その2)である。
【図8】本発明のロックアウトシステムを用いた機械設備のロックアウトの手順を簡単に示す図(その3)である。
【図9】本発明のロックアウトシステムを用いた機械設備のロックアウト解除の手順を簡単に示す図(その1)である。
【図10】本発明のロックアウトシステムを用いた機械設備のロックアウト解除の手順を簡単に示す図(その2)である。
【図11】本発明のロックアウトシステムを用いた機械設備のロックアウト解除の手順を簡単に示す図(その3)である。
【図12】本発明のロックアウトシステムを用いた機械設備のロックアウト解除の手順を簡単に示す図(その4)である。
【図13】サブのロックアウト器具100の外形が三角形となり、斜辺を備えた構成例、半円形で曲線の辺を備えたものを示す図である。
【図14】実施例2のサブロックアウト器具100aの構成を簡単に示す図である。
【図15】実施例2のサブロックアウト器具100aの用い方を側面から簡単に説明する図である。
【図16】従来型の特許文献1に示されている構成例を簡単に示す図である。
【図17】従来型の特許文献2に示されている構成例を簡単に示す図である。
【符号の説明】
【0078】
100 ロックアウトシステム
110 第1の基部
111、121 サブロック用施錠部位
111a ループ状部材
112 通過制御部
120 第21の基部
121a 孔
130 サブロック錠
131 サブ鍵
140 メイン錠収納部
160 取付け部材
200 メインのロックアウト器具
210 開閉カバー
220 メイン錠
221 メイン鍵
300 機械設備
310 動力遮断制御要素

【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御盤や操作盤などに組み込まれた動力遮断制御要素をロックアウトし、作業安全を確保せしめるロックアウトシステムであって、
前記動力遮断制御要素に取り付けるメインのロックアウト器具とは別に設けたサブのロックアウト器具において、
開閉可能な第1の基部および第2の基部と、
前記第1の基部と前記第2の基部が閉鎖状態において施錠可能となるように形成されるサブロック用施錠部位と、
各作業者が管理し、各作業者が入場の際に前記サブロック用施錠部位に対して取り付け、退場の際に開錠して取り外す複数個のサブロック錠と、
前記動力遮断制御要素をロックアウトする前記メインのロックアウト器具を開錠するメイン鍵を収納するメイン鍵収納部を備え、
前記メイン鍵収納部を、前記第1の基部と前記第2の基部が閉鎖状態において外部からアクセス不能で、前記第1の基部と前記第2の基部が開放状態において外部からアクセス可能な位置に配置したことを特徴とするロックアウトシステム。
【請求項2】
前記第1の基部および前記第2の基部が矩形の板材であり、前記サブロック用施錠部位が、前記第1の基部と前記第2の基部の周辺縁に配置された複数個の孔である請求項1に記載のロックアウトシステム。
【請求項3】
前記第1の基部および前記第2の基部が少なくとも一部に斜辺を持つ板材であり、前記サブロック用施錠部位が少なくとも前記第1の基部と前記第2の基部の斜辺縁に配置された複数個の孔であることを特徴とする請求項1に記載のロックアウトシステム。
【請求項4】
前記第1の基部および前記第2の基部が曲線を備えた板材であり、前記サブロック用施錠部位が少なくとも前記第1の基部と前記第2の基部の周縁に配置された複数個の孔であることを特徴とする請求項1に記載のロックアウトシステム。
【請求項5】
前記第1の基部が表面側、前記第2の基部が裏面側に位置するように組み合わされる構成において、
前記第2の基部が立設したループ状の部材を備え、
前記第1の基部が、前記第1の基部と前記第2の基部の閉鎖状態において前記第2の基部の前記ループ状の部材を通し入れ、前記第1の基部の表面上に前記第2の基部の前記ループ状の部材の少なくとも一部が突出するように設けた孔部を備え、
前記サブロック用施錠部位が、前記第1の基部と前記第2の基部の閉鎖状態において前記第1の基部の表面上に突出する前記ループ状の部材の一部のループ部分であり、
各作業者が入場の際に前記第1の基部の表面上に突出している前記ループ状の部材に対して前記サブロック錠を取り付け、退場の際に前記サブロック錠を開錠して取り外すものである請求項1に記載のロックアウトシステム。
【請求項6】
前記第1の基部の表面上に突出している前記ループ部分において、外部から前記ループ内方向へは通過でき、前記ループ内から外部へは通過できないように一方通行に開閉する通過制御部を備え、前記各作業者は入場の際に前記サブロック錠を施錠状態のまま前記通過制御部を介して前記第1の基部の表面上に突出している前記ループ部分に対して通し入れることができるものである請求項5に記載のロックアウトシステム。
【請求項7】
前記ループ状の部材において、前記第1の基部の表面上に突出している前記ループ部分の少なくとも一部が略水平に設けられ、前記略水平部分において前記サブロック錠を懸垂させて保持することができるものである請求項5または6に記載のロックアウトシステム。
【請求項8】
各作業者が体の一部に取り付ける作業者標章と、
前記作業者標章の一部に設けた、前記作業者標章と前記ロックアウトシステムを適用している作業との関連性を示す識別情報とを備え、
前記ロックアウトシステムを適用している作業に従事している前記作業者と、前記作業者以外の外部の人との区別が、前記作業者標章の有無で容易に把握できる請求項1から7のいずれか1項に記載のロックアウトシステム。
【請求項9】
前記第1の基部または前記第2の基部の前記サブロック用施錠部位以外の部分の一部に、前記動力遮断制御要素をロックアウトする作業内容および作業者人数を含む作業情報を表示する作業情報表示部を設け、前記ロックアウトシステムを適用している作業に関する諸情報が容易に把握できる請求項1から8のいずれか1項に記載のロックアウトシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2013−85400(P2013−85400A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−224226(P2011−224226)
【出願日】平成23年10月11日(2011.10.11)
【出願人】(511244920)株式会社山陽商会 (1)
【Fターム(参考)】