説明

ロックスイッチ

【課題】ハートカム機構を採用したロックスイッチにおいて、アクチュエータを、ハートカム機構を作用させるための外力の入力方向と異なる方向に動かす。
【解決手段】アクチュエータ111は、回動軸121を中心に旋回自在で、第1旋回方向R1の先端側に作用部122を有し、プランジャ装置113のプランジャスプリング133によって第1旋回方向R1に向けて付勢される。アクチュエータ111には、ハートカム溝124が設けられる。ハートカム溝124のハート形状の上下方向は、第1旋回方向R1に沿って延びている。ロックピン112は、その第1端部112Aが回動自在に保持され、第2端部112Bがハートカム溝124の底部124Eに圧力を持って摺接し所定方向にのみ周回できる。プランジャ132がアクチュエータ111に対し第2旋回方向R2への力を加えることにより、作用部122は、二位置の間で変位する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハートカム機構を採用したロックスイッチに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、キャビネット等の扉に対して、扉を閉じた状態および扉を開いた状態を交互に切り替えるプッシュラッチ1の技術が開示されている。このプッシュラッチ1は、所定の対象物100に取り付けられるもので、対象物100に直接固定される第一ケース部材10と、第一ケース部材10に収納される第二ケース部材20と、第二ケース部材20に収納される摺動部材30及びバネ90とを有する。摺動部材30を構成する本体40は、頭部41と、この頭部41から延びる胴体部42とを有する。本体40の左側面後部には、ハートカム溝46が形成される。ハートカム溝46は、左側面視で略ハート状であり、その底部に複数の段差部が形成される。ロックピン70は、その一端(係止端部71)を第二ケース部材20の突出部26に拘束され、その他端(摺動端部72)は、ハートカム溝46に摺動可能に係合し、摺動部材30の摺動範囲を規制する。バネ90は、その後端部を第二ケース部材20のバネ係止部28に係止され、その前端部で本体40を前方向に付勢する。特許文献1によれば、摺動部材30が後方向に向かう方向に押し付けられると、ロックピン70の摺動端部72がハートカム溝46の底部を摺動しつつ摺動部材30が後方向に向かう方向に摺動し、摺動部材30が第二収容孔21に引き込まれる状態(特許文献1の図2)と第二収容孔21より突出する状態(特許文献1の図6)とを交互に切り替える、とされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−270484号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の各図を見ると、摺動部材30は、第二ケース部材20の内周面によって移動方向を規制されつつ、バネ90が伸縮する方向に動くことがわかる。しかしながら、特許文献1に記載のプッシュラッチ1を各種の製品に搭載する際に、取付箇所によっては、バネ90の動きとは異なる方向に摺動部材30の動かすことが求められる。
【0005】
発明者は、特許文献1に記載のプッシュラッチ1に用いられるハートカムロック機構を応用したロックスイッチ901の仮想例を考えた。図12は、仮想例のロックスイッチ901の初期状態を示す模式図である。図13は、図12に続いてアクチュエータ904が押し込まれた状態にある仮想例のロックスイッチ901の模式図である。図14は、図13に続いてロックされた状態にある仮想例のロックスイッチ901の模式図である。図15は、図14に続いてアクチュエータ904が押し込まれた状態にある仮想例のロックスイッチ901の模式図である。図16は、図15に続いて初期状態に戻った仮想例のロックスイッチ901の模式図である。
【0006】
仮想例のロックスイッチ901は、基準面902に直交して延びるガイドレール903に摺動自在のアクチュエータ904と、ガイドレール903に直交する方向に延びハートカム機構905が設けられたプランジャ906と、プランジャ906の延びる方向にプランジャ906を押すスプリング907と、一端が固定され他端がハートカム機構905の底面に摺動するロックピン908と、を有する。アクチュエータ904には、ガイドレール903の延びる方向とプランジャ906の延びる方向とにより特定される面内でこれら二方向のいずれにも傾斜する方向に延びる直線状の係合溝909が形成される。この係合溝909には、プランジャ906から突出するピン部910が入り込む。また、プランジャ906は、ガイド筒911に収納され、このガイド筒911によって動く方向が規制されている。
【0007】
初期状態(図12)にあるプランジャ906に対してこのプランジャ906を押し込む力Fが加えられると(図13)、アクチュエータ904は、ピン部910に引っ張られ、ガイドレール903に沿って左方向に動く。力Fが解除されると(図14)、スプリング907はプランジャ906を押し戻し、アクチュエータ904はピン部910の動きによってガイドレール903に沿って右方に動き、ロックピン908がハートカム機構905のロック箇所905aに引っかかり、ピン部910は基準面902よりも左方に位置付けられたアクチュエータ904を保持する位置で停止する。再びプランジャ906に対して力Fが加えられることにより(図15)、ロック箇所905aによるロックピン908の引っかかりは解除され、その後に力Fが解除されると(図16)、スプリング907はプランジャ906を押し戻し、アクチュエータ904はピン部910の動きによってガイドレール903に沿って右方に動いて基準面902まで戻される。
【0008】
ここで、上記の仮想例のロックスイッチ901は、スプリング907の動きとは異なる方向に力を作用させるために、ガイドレール903やアクチュエータ904という更なる機械要素を設けており、部品点数が増加して取付のためのスペースが増大するという問題が生じる。
【0009】
本発明は、上記の点を鑑みてなされたものであり、ハートカム機構を採用したロックスイッチにおいて、アクチュエータを、ハートカム機構を作用させるための外力の入力方向と異なる方向に動かすことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のロックスイッチは、回動軸を中心に旋回自在で、第1旋回方向の先端側に作用部を有し、弾性体によって前記第1旋回方向及びこの第1旋回方向とは反対向きの第2旋回方向のいずれか一方に向かうよう付勢されているアクチュエータと、前記アクチュエータに設けられ、前記アクチュエータが旋回する旋回面に沿うハート形状をなし、前記第1旋回方向に沿うように前記ハート形状の上下方向が延びているハートカム溝と、位置固定かつ回動自在に保持される第1端部と、前記ハートカム溝の底部に圧力を持って摺接し前記ハートカム溝に沿って所定の方向に周回する第2端部とを有し、前記第1端部を中心に回動自在のロックピンと、を備え、前記弾性体による付勢力に抗うように前記アクチュエータに対して力が加えられることで、前記作用部が、前記ハートカム溝による第1のロック状態に対応する初期位置と、前記ハートカム溝による第2のロック状態に対応する作用位置との間で変位する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、弾性体による引っ張りに抗うようにアクチュエータに対して力を加えることで、アクチュエータが回動軸を中心に回動し、アクチュエータに設けられた作用部が変位する。したがって、ハートカム機構を採用したロックスイッチにおいて、アクチュエータを、ハートカム機構を作用させるための外力の入力方向と異なる方向に動かすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】ロックスイッチの斜視図である。
【図2】図1とは反対側から見たロックスイッチの斜視図である。
【図3】プッシャの係合孔部に係合突起を挿入する前の状態を模式的に示す、図2のP矢視での断面図である。
【図4】プッシャの係合孔部に係合突起を挿入している途中の状態を模式的に示す、図2のP矢視での断面図である。
【図5】プッシャの係合孔部に係合突起を挿入した後の状態を模式的に示す、図2のP矢視での断面図である。
【図6】図3に示す状態に対応するロックスイッチの平面図である。
【図7】アクチュエータの平面図である。
【図8】図6に示す状態からプッシャが右方に動いた状態でのロックスイッチの平面図である。
【図9】図8に示す状態からプランジャがロックスイッチの正面側に動いた状態でのロックスイッチの平面図である。
【図10】図9に示す状態からプランジャがロックスイッチの背面側に動いた状態でのロックスイッチの平面図である。
【図11】図10に示す状態からプランジャがロックスイッチの正面側に動いた状態でのロックスイッチの平面図である。
【図12】仮想例のロックスイッチの初期状態を示す模式図である。
【図13】図12に続いてアクチュエータが押し込まれた状態にある仮想例のロックスイッチの模式図である。
【図14】図13に続いてロックされた状態にある仮想例のロックスイッチの模式図である。
【図15】図14に続いてアクチュエータが押し込まれた状態にある仮想例のロックスイッチの模式図である。
【図16】図15に続いて初期状態に戻った仮想例のロックスイッチの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
実施の一形態を、図1ないし図11に基づいて説明する。図1は、ロックスイッチ101の斜視図である。図2は、図1とは反対側から見たロックスイッチ101の斜視図である。ロックスイッチ101は、上面開口で平坦な箱状をなすハウジング102を有する。ハウジング102は、以降に説明する各部を収納し、蓋部(図示せず)で閉じられて構成される。ハウジング102内に収納される各部とは、アクチュエータ111、ロックピン112、プランジャ装置113、プッシャ114、スプリング114B、第1接点部115、第2接点部116等である。これらの構造及び作用の詳細については、図1、図6及び図7に基づいて後述する。
【0014】
ハウジング102の正面側の端面の左側には、緊急用ノッチ103が配置される。緊急用ノッチ103は、ロックスイッチ101の正面側に引き出し自在となっている。また、ハウジング102の正面側の端面の略中央には、レセプタクル嵌合部104が配置される。レセプタクル嵌合部104は、正面側に開口する孔部105内に、正面側に突出して延びる三つのコンセント刃(図1において左から順に、第1コンセント刃105A、第2コンセント刃105B、第3コンセント刃105C)を設けて構成される。
【0015】
ハウジング102の底部102Aは、蓋部(図示せず)と平行な板状をなす。底部102Aにおけるプッシャ114の近傍には、孔部102Bが開口する。ここで、プッシャ114は、ハウジング102内で図1における右側の領域に収納される部材である。プッシャ114は、図1における左右方向にスライド自在になっている。プッシャ114において孔部102Bと対面する箇所には、係合孔部114A(図3〜図5参照)が設けられる。プッシャ114は、ハウジング102内に配置されるスプリング114Bにより、図1における左側に押されている。
【0016】
図3は、プッシャ114の係合孔部114Aに係合突起501を挿入する前の状態を模式的に示す、図2のP矢視での断面図である。図4は、プッシャ114の係合孔部114Aに係合突起501を挿入している途中の状態を模式的に示す、図2のP矢視での断面図である。図5は、プッシャ114の係合孔部114Aに係合突起501を挿入した後の状態を模式的に示す、図2のP矢視での断面図である。なお、図3〜図5での下方は、図1における上方に対応する。底部102Aに設けられた孔部102Bには、係合突起501が、ロックスイッチ101の底部側から導入される。係合突起501には、係合爪502が設けられている。係合爪502の先端は、スプリング114Bに向かう方向(図3〜図5における右方向)に向いている。係合突起501は、他の付勢部材(図示せず)によってスプリング114Bの付勢力に抗う方向(図3〜図5における右方向)に力が加えられて全体的にスプリング114Bに向かう方向(図3〜図5における右方向)に押されている。底部102Aと係合爪502とが係合していない限りにおいて、使用者は、係合突起501を上下方向に動かし、係合突起501の全体を孔部102Bから離脱させたり、係合爪502を係合孔部114A内に位置付けたりすることができる。
【0017】
係合突起501が孔部102Bに挿入されると(図3)、係合爪502の先端が孔部102Bの内周面に接触して係合突起501が僅かに撓む。その後、係合突起501の係合爪502が係合孔部114A内に収納されると(図4)、係合突起501自身の復帰力によって撓みが解除されるとともに付勢部材による付勢力によって、係合突起501がプッシャ114をスプリング114Bに向かう方向(図3〜図5における右方向)に押す。これにより、プッシャ114は、右側に動き(図5)、係合爪502がハウジング102に引っ掛かって孔部102Bから抜けなくなる。なお、係合突起501の下面はテーパ形状501Aをなしていて、係合突起501が孔部102Bに導入されやすくなっている。
【0018】
図6は、図3に示す状態に対応するロックスイッチ101の平面図である。図7は、アクチュエータ111の平面図である。図1、図6及び図7に基づいて、ロックスイッチ101の内部構造の詳細を説明する。
【0019】
[アクチュエータ] アクチュエータ111は、ハウジング102の底部102Aに配置され、底部102Aに対して直交し上下方向に延びている回動軸121の周回り方向に旋回自在となっている。アクチュエータ111は、プランジャ装置113内に配置される弾性体としてのプランジャスプリング133(後述)によって、回動軸121を中心とする図6での時計回り方向(第1旋回方向R1)に向かうよう付勢されている。
【0020】
アクチュエータ111における第1旋回方向R1の先端側には、作用部122が設けられる。作用部122は、第1作用部122Aと、第2作用部122Bと、第3作用部122Cとを含む。第1作用部122Aは、第2作用部122Bや第3作用部122Cに対して第1旋回方向R1の先端側に位置し、第2作用部122Bや第3作用部122Cよりも底部102Aから離れている。第1作用部122Aは、第2接触片136(後述)を第1旋回方向R1に押す。また、第2作用部122Bは、第1作用部122Aよりも回動軸121を中心とする図6での反時計回り方向(第2旋回方向R2)側に位置し、第1作用部122Aより底部102Aに近い。第2作用部122Bは、第1旋回方向R1に動いて阻止部144(後述)に接触する。また、第3作用部122Cは、第2作用部122Bよりも第2旋回方向R2側に位置する。第3作用部122Cは、第1旋回方向R1や第2旋回方向R2に動いて、可動接触片147(後述)を動かし、第2接点部116を開閉する。
【0021】
アクチュエータ111における第2旋回方向R2の先端側には、ピン孔111Aが設けられる。ピン孔111Aには、プランジャ装置113に備わるプランジャ132のピン132A(後述)が挿入される。
【0022】
アクチュエータ111の上面には、ハートカム溝124が設けられる。ハートカム溝124は、アクチュエータ111の旋回面(図6における紙面と平行な面)に沿うハート形状をなす。ハートカム溝124の底部124Eは、ロックピン112の第2端部112B(後述)が図6における反時計回り方向(周回方向R3)にのみ摺接移動できるよう段状をなしている。
【0023】
ハートカム溝124のハート形状の上下方向は、第1旋回方向R1に沿うように延びている。詳細に述べると、ハートカム溝124のハート形状の下方突部124Aは、第2旋回方向R2の先端側に向けられる。そして、ハートカム溝124のハート形状の二つの上方突部は、第1旋回方向R1の先端側に向けられる。以下、説明のためにハートカム溝124のハート形状の二つの上方突部のうち、回動軸121に近い方を「第1上方突部124B」と呼び、回動軸121から遠い方を「第2上方突部124C」と呼ぶ。そして、ハートカム溝124に沿って第1上方突部124Bと第2上方突部124Cとの間に位置し第2旋回方向R2に凸となっている突部を「ロック用突部124D」と呼ぶ。
【0024】
アクチュエータ111には、緊急用ノッチ103が引っ掛かる引掛部122Dが設けられる。緊急用ノッチ103は、正面−背面方向に延びる長尺の部材で、ハウジング102の内部で図6における左側の領域に配置され、ハウジング102から正面側に突出している。緊急用ノッチ103の背面側の端部には、引掛爪103Aが設けられる。緊急用ノッチ103は、ハウジング102の正面側の内壁面102Cから延びるノッチ用スプリング103Bによって、ロックスイッチ101の背面側に押されている。緊急用ノッチ103がロックスイッチ101の正面側に引っ張られると、引掛爪103Aがアクチュエータ111の引掛部122Dに引っかかり、アクチュエータ111を強制的に第2旋回方向R2に旋回させる。
【0025】
[ロックピン] ロックピン112は、ハウジング102に対するアクチュエータ111の動く領域を制限する。詳細には、ロックピン112の一方の端部(第1端部112A)は、ハウジング102の背面側の内壁から正面側に突出する保持壁102Dに保持される。保持壁102Dは、ロックピン112の第1端部112Aを位置固定し、且つ、回動自在とする。これにより、ロックピン112は、第1端部を中心に回動自在となる。
【0026】
ロックピン112の他方の端部(第2端部112B)の端面は、ハートカム溝124の底部124Eに圧力を持って接している。ここで、ハートカム溝124の底部124Eから立ち上がりロックピン112の第2端部112Bの周回り部分が接する内側面の一部には、円弧状部124Fが形成されている。円弧状部124Fは、平面視において、回動軸121を中心とする円弧状をなし、ロックピン112の第2端部112Bの周回り部分が接し滑らかに摺動できる。
【0027】
[プランジャ装置] プランジャ装置113は、プランジャケース131と、プランジャ132と、プランジャスプリング133とを有する。プランジャケース131は、ハウジング102の正面側の内壁面102Cに取付けられる。プランジャ132は、プランジャケース131に保持され、ロックスイッチ101の正面−背面方向(図6にて矢印R4で示す方向)にスライド自在となっている。プランジャ132の先端側(ロックスイッチ101の背面側)の端部の外周面からは、ピン132Aが上方に突出している。ピン132Aは、ピン孔111Aに入り込んでいる。プランジャ132がスライド移動すると、アクチュエータ111は第1旋回方向R1や第2旋回方向R2に旋回する。プランジャスプリング133は、プランジャ132をロックスイッチ101の背面方向に突出させる向きに押し出している。
【0028】
プランジャ装置113からは、金属片134と第1接触片135とが延びている。金属片134は、第1コンセント刃105Aに繋がっている。第1接触片135は、バネ性を有し、第2コンセント刃105Bから延びる第2接触片136に接触する向き(図6にて矢印R5で示す方向)に動こうとする。図1及び図6では、プッシャ114から延びる干渉部145(後述)が第1接触片135を図6における左方に押しており、第1接触片135が第2接触片136に接触していない。プッシャ114が図6における右方に動いて干渉部145が第1接触片135から退避すると、第1接触片135が第2接触片136に接触する。ここに、第1接触片135と第2接触片136と干渉部145とによって、第1接点部115が構成される。
【0029】
第1コンセント刃105A、金属片134、第1接触片135、第2接触片136及び第2コンセント刃105Bは、プランジャ装置113に駆動パルスを入力するための信号経路を形成する。プランジャ装置113に駆動パルスが入力されると、プランジャ装置113では、プランジャ132がロックスイッチ101の正面方向に動く。これにより、アクチュエータ111は第2旋回方向R2に動く。駆動パルスの入力によるプランジャ装置113でのプランジャ132の動きの後、プランジャスプリング133は、プランジャ132をロックスイッチ101の背面方向に突出させる。これにより、アクチュエータ111は第1旋回方向R1に動く。
【0030】
[プッシャ] プッシャ114は、基部142と操作部143とを有する。基部142は、略直方体形状をなしていて、係合孔部114A(図3〜図5参照)が形成されている。基部142は、ハウジング102内に配置される阻止板141より図6における右方にある。この阻止板141は、第3コンセント刃105Cに接続されており、ロックスイッチ101の正面−背面方向に延びる金属板である。
【0031】
基部142からは、スプリング受部142Aが、ロックスイッチ101の背面側に突出している。スプリング受部142Aは、スプリング114Bから、図6における左方に押される部分である。基部142は、スプリング受部142Aをスプリング114Bに押されて図6における左方に動き、阻止板141に突き当たる。
【0032】
操作部143は、基部142から図6における左方に突出し、阻止部144と干渉部145とを含み、阻止板141に設けられた孔部(図示せず)に挿通されて阻止板141よりも左方に位置する。阻止部144は、干渉部145よりも底部102Aに近い箇所に位置する。阻止部144におけるロックスイッチ101の背面側の側面には、第1旋回方向R1に動こうとする第2作用部122Bが突き当たる。また、干渉部145は、阻止部144よりもロックスイッチ101の正面側に位置して図6における左方に突出している。干渉部145は、第1接触片135を図6における左方に動かす。なお、干渉部145は、第2接触片136に設けられた孔部に挿通されていて第2接触片136と接触しておらず、このために第2接触片136を動かさない。
【0033】
阻止板141におけるロックスイッチ101の背面側の端部からは、固定接触片146が、図6における左方に突出する。また、ハウジング102内には、可動接触片147が、固定接触片146よりも図6における左方且つロックスイッチ101の正面側に配置される。可動接触片147は、第2コンセント刃105Bに接続されている金属片148に揺動自在に保持される。可動接触片147と金属片148との間には、接点スプリング149が配置される。接点スプリング149は、可動接触片147を固定接触片146に接しさせるよう、可動接触片147を押している。図1及び図6では、可動接触片147が、アクチュエータ111の第3作用部122Cによって接点スプリング149の付勢力に抗うよう動かされて、固定接触片146から離反している。アクチュエータ111が第1旋回方向R1に動いて第3作用部122Cが可動接触片147から退避すると、可動接触片147は接点スプリング149に押されて固定接触片146に接触する。ここに、固定接触片146と可動接触片147と金属片148と接点スプリング149と第3作用部122Cとによって、第2接点部116が構成される。
【0034】
上記のように構成されるロックスイッチ101での動きを、図6、図8〜図11に基づいて説明する。まず、図6を参照する。ロックスイッチ101は、第1コンセント刃105A、第2コンセント刃105B及び第3コンセント刃105Cを受け入れるレセプタクル503をレセプタクル嵌合部104に嵌合させて用いられる。レセプタクル503は、外部回路(図示せず)と繋がっていて、外部回路の駆動によって第1コンセント刃105Aや第2コンセント刃105Bを伝わってプランジャ装置113に入力されるプランジャ装置113を駆動制御するための駆動パルスや、第2コンセント刃105Bと第3コンセント刃105Cとを伝って流れる電流を伝達する。
【0035】
図6では、ハウジング102の孔部102B及びプッシャ114の係合孔部114A(図3〜図5参照)に係合突起501(図3〜図5参照)が挿入されておらず、プッシャ114がスプリング114Bによって図6における左方に押されている。このとき、プッシャ114とスプリング114Bと係合突起501とは、図3に示す関係性にある。プッシャ114に設けられる干渉部145は、第1接触片135を図6における左方に押し、第1接触片135と第2接触片136とを離反させて、第1接点部115が開かれた状態にある。この状態では、外部回路(図示せず)が駆動してもプランジャ装置113に駆動パルスが入力されることはない。
【0036】
図6では、プランジャ132がプランジャスプリング133によってロックスイッチ101の背面側に押され、プランジャ132のピン132Aがアクチュエータ111を第1旋回方向R1に動かそうとしている。しかしながら、ロックピン112の第2端部112Bが、ハートカム溝124のロック用突部124D内に位置付けられており、アクチュエータ111が第1旋回方向R1に旋回できない。結果として、アクチュエータ111は、第1旋回方向R1にも第2旋回方向R2にも旋回せず停止する(第1のロック状態)。このとき、作用部122の第3作用部122Cは、接点スプリング149による付勢力に抗うようにして可動接触片147を保持し、可動接触片147を固定接触片146から離反させている。このときの作用部122の位置は、特許請求の範囲で言うところの「初期位置」に対応する。
【0037】
図8は、図6に示す状態からプッシャ114が右方に動いた状態でのロックスイッチ101の平面図である。図8では、緊急用ノッチ103及びノッチ用スプリング103Bは省略されている。ハウジング102の孔部102B及びプッシャ114の係合孔部114A(図3〜図5参照)に係合突起501(図3〜図5参照)が挿入されると、プッシャ114は係合突起501の係合爪502に押されて図6における右方に動く。このときのプッシャ114とスプリング114Bと係合突起501とは、図4に示す状態を経て図5に示す位置関係に至り、係合突起501が孔部102B(図2〜図5参照)から抜けなくなる。これにより、干渉部145が第1接触片135から離反し、第1接触片135がそれ自身のバネ性によって矢印R5の向きに動いて第2接触片136に接触し、第1接点部115が閉じられ、第1コンセント刃105Aからプランジャ装置113を経由して第2コンセント刃105Bまで繋がる駆動パルスの経路が形成される。
【0038】
図9は、図8に示す状態からプランジャ132がロックスイッチ101の正面側に動いた状態でのロックスイッチ101の平面図である。図9では、緊急用ノッチ103及びノッチ用スプリング103Bは省略されている。図8に示す状態で、外部回路(図示せず)の駆動によってプランジャ装置113に駆動パルスが入力されると、プランジャ装置113は、プランジャ132を、プランジャスプリング133(図6参照)による付勢力に抗ってロックスイッチ101の正面側に動かす。このとき、プランジャ132のピン132Aは、アクチュエータ111を第2旋回方向R2に旋回させる。また、ロックピン112の第2端部112Bは、ロック用突部124Dから第2上方突部124Cまで周回方向R3に、ハートカム溝124の底部124Eを摺動する。
【0039】
図10は、図9に示す状態からプランジャ132がロックスイッチ101の背面側に動いた状態でのロックスイッチ101の平面図である。図10では、緊急用ノッチ103及びノッチ用スプリング103Bは省略されている。駆動パルスの入力によってプランジャ132がロックスイッチ101の正面側に動いた後、プランジャスプリング133(図6参照)は、プランジャ132をロックスイッチ101の背面側に押す。このとき、プランジャ132のピン132Aは、アクチュエータ111を、保持壁102Dに突き当たるまで第1旋回方向R1に旋回させる。また、ロックピン112の第2端部112Bは、第2上方突部124Cから下方突部124Aまで周回方向R3に、ハートカム溝124の底部124Eを摺動する。
【0040】
ここで、保持壁102Dは、図10に示す位置からさらに第1旋回方向R1に動こうとするアクチュエータ111を阻止し、ストッパとしての役割を果たす。保持壁102Dは、プランジャ装置113の誤作動等によってプランジャ132がロックスイッチ101の背面側に動きすぎて第2作用部122Bが第2接触片136を押しすぎて第2接触片136を乗り越えてしまう等の事態を防ぐ。
【0041】
また、ロックピン112の第2端部112Bの周回り部分がハートカム溝124内を移動する際にハートカム溝124の底部124Eから立ち上がる内側面に接することがあるが、ハートカム溝124には円弧状部124Fが形成されているので、ロックピン112の第2端部112Bが内側面に引っ掛からない。
【0042】
図10では、プランジャ132がプランジャスプリング133によってロックスイッチ101の背面側に押され、プランジャ132のピン132Aがアクチュエータ111を第1旋回方向R1に動かそうとしている。しかしながら、ロックピン112の第2端部112Bが、ハートカム溝124の下方突部124A内に位置付けられており、アクチュエータ111が第1旋回方向R1に旋回できない。結果として、アクチュエータ111は、第1旋回方向R1にも第2旋回方向R2にも旋回せず停止する(第2のロック状態)。このとき、作用部122の第1作用部122Aは、第1旋回方向R1に動いて、矢印R5の方向に動こうとする第1接触片135に第2接触片136を押しつけ、第1接点部115を閉じたままで安定させる。また、このとき、作用部122の第3作用部122Cは、第1旋回方向R1に動いて可動接触片147から離反し、可動接触片147が接点スプリング149に押されて固定接触片146に接触する。即ち、第2接点部116が閉じられる。可動接触片147が接点スプリング149に接触することで、第2コンセント刃105Bから金属片148、可動接触片147、接点スプリング149及び阻止板141を経由して第3コンセント刃105Cまで繋がる電流の経路が形成される。このときの作用部122の位置は、特許請求の範囲で言うところの「作用位置」に対応する。
【0043】
なお、図10に示すように、作用部122の第2作用部122Bが第1旋回方向R1に旋回できるのは、プッシャ114が図10における右方に動いて、第2作用部122Bが阻止部144に阻止されないためである。他方、図6に示すように、プッシャ114が図10における左方に押されている状態では、プランジャ装置113の誤動作等によりアクチュエータ111が第1旋回方向R1に旋回しようとしても、阻止部144が第2作用部122Bの旋回を阻止する。
【0044】
図11は、図10に示す状態からプランジャ132がロックスイッチ101の正面側に動いた状態でのロックスイッチ101の平面図である。図11では、緊急用ノッチ103及びノッチ用スプリング103Bは省略されている。図10に示す状態で、外部回路(図示せず)の駆動によって第1コンセント刃105Aや第2コンセント刃105Bからプランジャ装置113に駆動パルスが入力されると、プランジャ装置113は、プランジャ132を、プランジャスプリング133(図6参照)による付勢力に抗ってロックスイッチ101の正面側に動かす。このとき、プランジャ132のピン132Aは、アクチュエータ111を第2旋回方向R2に旋回させる。そして、ロックピン112の第2端部112Bは、下方突部124Aから第1上方突部124Bまで周回方向R3に、ハートカム溝124の底部124Eを摺動する。また、アクチュエータ111が第2旋回方向R2に旋回すると、作用部122の第1作用部122Aは第2接触片136から離反し、第1接触片135と第2接触片136とは離反しないものの、互いを押し付け合う力が弱まる。また、アクチュエータ111が第2旋回方向R2に旋回することで、作用部122の第3作用部122Cは、可動接触片147を動かして可動接触片147を固定接触片146から離反させ、第2接点部116を開く。
【0045】
図8に戻る。駆動パルスの入力によってプランジャ132がロックスイッチ101の正面側に動いた後、プランジャスプリング133(図6参照)は、プランジャ132をロックスイッチ101の背面側に押す。このとき、プランジャ132のピン132Aは、アクチュエータ111を第1旋回方向R1に旋回させる。また、ロックピン112の第2端部112Bは、第1上方突部124Bからロック用突部124Dまで周回方向R3に、ハートカム溝124の底部124Eを摺動したり、この底部124Eに設けられた段を下降したりする。その結果、アクチュエータ111は、第1旋回方向R1にも第2旋回方向R2にも旋回せず停止する(第1のロック状態)。
【0046】
ここで、ロックスイッチ101が図8に示す状態(第1のロック状態、初期位置)、図9に示す状態、図10に示す状態(第2のロック状態、作用位置)、図11に示す状態を経て図8に示す状態に戻るまでの間、係合突起501が係合孔部114A(図2〜図5参照)から抜けることがないために第1接触片135と第2接触片136とは接触しつづけており、第1接点部115は閉じられたままである。このため、外部回路(図示せず)の駆動により駆動パルスがプランジャ装置113に入力されるたびに、ロックスイッチ101では、図8に示す状態(第1のロック状態、初期位置)から図9に示す状態を経て図10に示す状態(第2のロック状態、作用位置)まで至る状態切替と、図10に示す状態(第2のロック状態、作用位置)から図11に示す状態を経て図8に示す状態(第1のロック状態、初期位置)まで至る状態切替とが交互に繰り返される。
【0047】
係合突起501を孔部102Bから抜くときは、外力や別の制御手段(図示せず)によって、プッシャ114を、付勢部材(図示せず)による右方向への付勢に抗って図8における左方に動かし、係合爪502とハウジング102との係合を外して、係合突起501を上方に引き上げる。なお、プッシャ114を左方に動かすためには、付勢部材(図示せず)のプッシャ114の右方向への付勢力を弱めれば十分である。係合突起501が係合孔部114A(図3〜図5参照)から外れると、プッシャ114がスプリング114Bによって図6における左方に押されて、ロックスイッチ101は図6に示した状態となる。干渉部145は、第1接触片135を左方に押して第1接触片135と第2接触片136とを離反させ第1接点部115を開かせるので、外部回路(図示せず)が駆動してもプランジャ装置113に駆動パルスが入力されることはない。
【0048】
このように、本実施の形態のロックスイッチ101では、プランジャ132が、プランジャスプリング133による引っ張りに抗うようにアクチュエータ111に対して力を加えると、アクチュエータ111に設けられる作用部122が、ハートカム溝124による第1のロック状態に対応する初期位置と、ハートカム溝124による第2のロック状態に対応する作用位置との間で変位する。このとき、アクチュエータ111は、回動軸121を中心に旋回する。このため、作用部122を、プランジャ132の動く方向(ハートカム機構を作用させるための外力の入力方向)と異なる方向に動かすことができる。
【0049】
また、本実施の形態のロックスイッチ101では、ロックスイッチ101が、図8に示す状態(第1のロック状態、初期位置)及び図10に示す状態(第2のロック状態、作用位置)のいずれにあっても、緊急用ノッチ103をロックスイッチ101の正面側に引っ張ることで、引掛爪103Aを引掛部122Dに引っ掛けてアクチュエータ111を強制的に第2旋回方向R2に旋回し、作用部122の第3作用部122Cによって可動接触片147を固定接触片146から離反させて第2接点部116を開くことができる。これにより、プランジャ装置113に誤動作等が生じてプランジャ132が動かなくなっても、第2接点部116を強制的に開いて第2コンセント刃105Bと第3コンセント刃105Cとの間に流れる電流を止めることができる。
【符号の説明】
【0050】
101 ロックスイッチ
102D 保持壁(ストッパ)
111 アクチュエータ
112 ロックピン
112A 第1端部
112B 第2端部
121 回動軸
122 作用部
124 ハートカム溝
124E ハートカム溝の底部
124F 円弧状部
133 プランジャスプリング(弾性体)
R1 第1旋回方向
R2 第2旋回方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回動軸を中心に旋回自在で、第1旋回方向の先端側に作用部を有し、弾性体によって前記第1旋回方向及びこの第1旋回方向とは反対向きの第2旋回方向のいずれか一方に向かうよう付勢されているアクチュエータと、
前記アクチュエータに設けられ、前記アクチュエータが旋回する旋回面に沿うハート形状をなし、前記第1旋回方向に沿うように前記ハート形状の上下方向が延びているハートカム溝と、
位置固定かつ回動自在に保持される第1端部と、前記ハートカム溝の底部に圧力を持って摺接し前記ハートカム溝に沿って所定の方向に周回する第2端部とを有し、前記第1端部を中心に回動自在のロックピンと、
を備え、
前記弾性体による付勢力に抗うように前記アクチュエータに対して力が加えられることで、前記作用部が、前記ハートカム溝による第1のロック状態に対応する初期位置と、前記ハートカム溝による第2のロック状態に対応する作用位置との間で変位するロックスイッチ。
【請求項2】
前記ロックピンの第1端部を保持し、且つ、前記第1旋回方向に動こうとする前記アクチュエータを阻止するストッパを備える、
請求項1記載のロックスイッチ。
【請求項3】
前記ハートカム溝の底部から立ち上がり前記ロックピンの第2端部が接する前記ハートカム溝の内側面には、前記回動軸を中心とする円弧状部が形成される、
請求項1又は2記載のロックスイッチ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−243530(P2012−243530A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−111789(P2011−111789)
【出願日】平成23年5月18日(2011.5.18)
【出願人】(000102500)SMK株式会社 (528)