説明

ロックミシン

【課題】 簡単な構造でルーパ糸に張力を付与すること。
【解決手段】 針19の上昇時に環ルーパ13が前記針19に装架された針糸のループを捕捉し、前記針19の下降時に前記針19が前記環ルーパ13に装架された環ルーパ糸20を捕捉することにより縫い目が形成されるようにしてなるロックミシンにおいて、上軸5を駆動すべく主軸2に装架された上軸リンク4に補助天秤7を設け、前記針19の下降開始から前記針19の前記環ルーパ糸20の捕捉完了までの間、前記補助天秤7をして前記環ルーパ糸20に張力を付与せしめるようにした、ロックミシン。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ロックミシンに関し、特にロックミシンの補助天秤装置に関する。
【0002】
【従来の技術】ロックミシンは、周知のように、針の上昇時に環ルーパが前記針に装架された針糸のループを捕捉し、前記針の下降時に前記針が前記環ルーパに装架された環ルーパ糸を捕捉することにより縫い目が形成されるようになっている。しかして、かようなロックミシンにおいては、針の下降開始から針が環ルーパに装架された環ルーパ糸を捕捉するまでの間、環ルーパ糸にタルミが生じ、下降して来た針に装架された針が環ルーパ糸を捕捉できない危惧があった。そこで、例えば、特開平7−31760号公報に開示されたロックミシンにおいては、前記した時期において、環ルーパ糸がレバーにより掬い上げられることにより張力が付与されるようになっている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところが、この装置においては、レバーを駆動させるために、主軸とレバーを装架する軸との間に別途伝導機構を配設せねばならず、ロックミシンの構造を更に複雑にしていた。
【0004】それ故に、本発明は、かような不具合を除去したロックミシンを提供することを、その技術的課題とするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記技術的課題を解決するために、請求項1において講じた技術的手段(第1の構成)は、針の上昇時に環ルーパが前記針に装架された針糸のループを捕捉し、前記針の下降時に前記針が前記環ルーパに装架された環ルーパ糸を捕捉することにより縫い目が形成されるようにしてなるロックミシンにおいて、上軸を駆動すべく主軸に装架された上軸リンクに補助天秤を設け、前記針の下降開始から前記針の前記環ルーパ糸の捕捉完了までの間、前記補助天秤をして前記環ルーパ糸に張力を付与せしめるようにした、ロックミシンを構成したことである。
【0006】上記技術的課題を解決するために、請求項2において講じた技術的手段(第2の構成)は、針の上昇時に環ルーパが前記針に装架された針糸のループを捕捉し、前記針の下降時に前記針が前記環ルーパに装架された環ルーパ糸を捕捉することにより縫い目が形成されるようにしてなるロックミシンにおいて、前記環ルーパを固定する環ルーパ台に連結された環ルーパ天秤に糸取りバネを設け、前記環ルーパ天秤及び前記糸取りバネを経て前記環ルーパ糸が前記環ルーパに至るようにし、前記針の下降開始から前記針の前記環ルーパ糸の捕捉完了までの間、前記糸取りバネをして前記環ルーパ糸に張力を付与せしめるようにした、ロックミシンを構成したことである。
【0007】
【作用および効果】上記第1の構成による作用・効果は、以下の通りである。即ち、上軸を駆動すべく主軸に装架された上軸リンクはロックミシンに既存の構成要素であるから、この上軸リンクに補助天秤を取り付けるだけで環ルーパ糸に張力を付与できるようになり、従来のような補助天秤たるレバー駆動のための特別な機構を設ける必要がない。
【0008】また、上記第2の構成による作用・効果は、以下の通りである。即ち、環ルーパを固定する環ルーパ台に連結された環ルーパ天秤はロックミシンに既存の構成要素であるので、この環ルーパ台に糸取りバネを設けるだけで環ルーパ糸に張力を付与できるようになり、従来のような補助天秤たるレバー駆動のための特別な機構を設ける必要がない。
【0009】
【実施の態様】以下、本発明の実施の態様を添付図面に基づいて説明する。
【0010】図1ないし図3において、ロックミシンのアーム1には主軸2が回転可能に支持されている。この主軸2上には針棒駆動カム3が偏芯的に固着されている。しかして針棒駆動カム3上には上軸リンク4の下部が装架されている。そして、上軸リンク4の上部が、上軸5と一体回転するバランサ6に枢支されている。かくして、主軸2及び針棒駆動カム3の一体回転に伴う上軸リンク4の往復上下動が、バランサ6及び上軸5を一体回転せしめるようになっている。上軸リンク4の下部には、また、ネジ8により、偏平縫い用の補助天秤7が固着されており、この補助天秤7もまた、主軸2と同期して、揺動するようになっている。
【0011】図示されない糸駒から繰り出される環ルーパ糸20は、アーム1内の糸調子調節装置10、一対の糸案内9、糸案内28及び環ルーパ天秤14を介して環ルーパ13に供給される。環ルーパ13及び環ルーパ天秤14は、夫々、ネジ17及びネジ18を介して、アーム1に回転可能に支持された環ルーパ軸11上に固定された環ルーパ台12に固定されている。しかして、環ルーパ軸11はアーム1内において、主軸2と直角に配置されており、図示されないギャー機構を介して主軸2と連係している。そして、主軸2が一回転する間に、環ルーパ軸11、環ルーパ台12、環ルーパ13及び環ルーパ天秤14が一体的に所定の角度の範囲(A・B間)を揺動するようになっている。
【0012】主軸2を一回転させて偏平縫いを行う場合、環ルーパ13が左死点Aから右死点Bに向かうべく図1において右方向に揺れると同時に偏平縫い用の針19が上位置から下降し始める。そして、図4及び図5に示されるように、偏平縫い用の針19が環ルーパ糸20と環ルーパ13との間を通過た際に針19に装架された針糸が環ルーパ糸20を捕捉して、偏平縫いの縫い目が形成される。
【0013】しかして、環ルーパ13が左死点Aに至り、再度、左死点Aから右死点B方向への揺動が開始されてから偏平縫い用の針19が環ルーパ糸20を通過するまでの間、環ルーパ糸20はタルミが発生する(図6R>6)。このタルミは偏平縫い用の針19の捕捉不良を惹起させる可能性があるが、環ルーパ糸20は補助天秤7及び一対の糸案内9により環ルーパ糸20に張力が付与されるようになっているので、環ルーパ糸20のタルミの発生を防止することが出来る。すなわち、補助天秤7は主軸2と同期して揺動し、環ルーパ13が左死点Aから右死点B方向への揺動が開始されてから偏平縫い用の針19が環ルーパ糸20を通過するまでの間揺動するようになっており、かような運動の下にある補助天秤7により環ルーパ糸20には所定の張力が付与されるので、環ルーパ糸20のタルミの発生を防止することが出来る。
【0014】なお、一対の糸案内9は必ずしも必要ではない。
【0015】図7及び図8に上記したロックミシンの変形例を示す。この変形例に係るロックミシンは、上記したロックミシンの環ルーパ天秤14に環ルーパ糸20に更なる張力を付与する糸取りバネ38を設けたものである。すなわち、環ルーパ13が固定された環ルーパ台12には、環ルーパ天秤14を構成する第1部14a及び第2部14bが段付きピン39により、固定されている。段付きピン39は、大径の第1部39a、中径の第2部39b及び小径の第3部39cから形成されており、段付きピン39の小径部39cが環ルーパ台12に螺合されて環ルーパ天秤14の第1部14a及び第2部14bが環ルーパ台12に固定されたとき、段付きピン39の第2部39b及び第1部39aは、環ルーパ天秤14の第2部14bから突出する形態をなす。
【0016】しかして、段付きピン39の第2部39b上には糸取りバネ38が装架されており、その基端部38aが段付きピン39の第1部39aに形成された孔39dに挿入・係止されている。そして、糸取りバネ38の先端部38bはフック状に形成されており、環ルーパ天秤14の第1部14aに形成されたガイド溝14d及び第2部14bに形成されたガイド溝14eを通過して環状ルーパ13に至る環ルーパ糸19に張力を付与するようになっている。
【0017】この糸取りバネ38による環ルーパ糸20への張力付与は、補助天秤7による環ルーパ糸20への張力付与と同期して行われるようになっている。つまり、補助天秤7は環ルーパ糸20の糸駒からの繰り出し及び環ルーパ糸20への張力付与を担うものであるが、その配置された位置に鑑みれば、後者を全うできないおそれがあり、かような事態が惹起されないように、糸取りバネ38による環ルーパ糸20への張力付与が、補助天秤7による環ルーパ糸20への張力付与の不足を補うようになっている。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係るロックミシンにおける糸供給路を示す正面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る補助天秤装置の斜視図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る補助天秤装置の作動態様を示す図である。
【図4】針による環ルーパ糸の捕捉を説明する図である。
【図5】針による環ルーパ糸の捕捉の完了を説明する図である。
【図6】糸の繰り出し・タルミ量と針の位置との関係を示すグラフである。
【図7】糸取りバネを装架した環ルーパ台近傍を示す正面図である。
【図8】図7に示される環ルーパ天秤の分解斜視図である。
【符号の説明】
2 : 主軸
4 : 上軸リンク
5 : 上軸
7 : 補助天秤
13 : 環ルーパ
14 : 環ルーパ台
19 : 針
20 : 環ルーパ糸
38 : 糸取りバネ
39 : 段付きピン

【特許請求の範囲】
【請求項1】 針の上昇時に環ルーパが前記針に装架された針糸のループを捕捉し、前記針の下降時に前記針が前記環ルーパに装架された環ルーパ糸を捕捉することにより縫い目が形成されるようにしてなるロックミシンにおいて、上軸を駆動すべく主軸に装架された上軸リンクに補助天秤を設け、前記針の下降開始から前記針の前記環ルーパ糸の捕捉完了までの間、前記補助天秤をして前記環ルーパ糸に張力を付与せしめるようにした、ロックミシン。
【請求項2】 針の上昇時に環ルーパが前記針に装架された針糸のループを捕捉し、前記針の下降時に前記針が前記環ルーパに装架された環ルーパ糸を捕捉することにより縫い目が形成されるようにしてなるロックミシンにおいて、前記環ルーパを固定する環ルーパ台に連結された環ルーパ天秤に糸取りバネを設け、前記環ルーパ天秤及び前記糸取りバネを経て前記環ルーパ糸が前記環ルーパに至るようにし、前記針の下降開始から前記針の前記環ルーパ糸の捕捉完了までの間、前記糸取りバネをして前記環ルーパ糸に張力を付与せしめるようにした、ロックミシン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開平11−216286
【公開日】平成11年(1999)8月10日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平10−178709
【出願日】平成10年(1998)6月25日
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)