説明

ロック装置、およびこのロック装置を備えた開閉窓

【課題】簡単な構造で作動が確実なロック装置を提供するとともに、このロック装置を備えることで障子の全開放および半開放状態の切り換え操作を可能とし、障子を適切な位置に開放固定でき、操作性、防犯性、および安全性のいずれにも優れた開閉窓を提供する。
【解決手段】本発明のロック装置1は、スライダ4にケース2の外部から操作可能なスライド操作部5が接続されて、トリガー3がスプリング31を押圧して後退しているとき、このスライド操作部5をスライダ4のスライド方向に操作することによりスライダ4が退避面を通過してスライドしてスライダ4のスライド動作を規制しうる一方で、係止ピン42のケース2の他側面からの突出長さが少なくとも伸張状態と後退状態の2段階に操作可能となされて、ロック保持またはロック解除が行われる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロック装置、およびこのロック装置を備えて開閉状態を操作できる開閉窓に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の開閉窓としては、外開き式窓、あるいはすべり出し窓など多種提案されており、室内側から操作可能なステーを備えて窓の開放範囲を規制するように構成された窓が知られている。かかる窓には、開口部枠との間の接合隙間を利用して窓用のステーが配設されている。
【0003】
例えば、特許文献1、2に記載されているステーは、開口部枠と窓との間にアームを設け、室内側に設けた切り換えノブでアームの姿勢を待機位置と換気位置とに切り換えることにより、窓を全開放できる状態と、半開放等の換気開放位置に開放規制する状態とに選択できるようにしている。これらのステーにおいては、窓が閉じられているとき、切り換えノブを待機位置と換気位置とに切り換えて操作されるようになっている。
【特許文献1】特開平11−210303号公報
【特許文献2】特開2000−38866号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のようなステーを備えた窓で内開き式の開閉方式を採用するとすれば、障子を室内側へ開放したとき、室内にいる人が障子にぶつかってけがをするおそれがあるため、換気や通風目的の場合には障子を半開放状態にして、その開放状態を固定できるようにしておくことが好ましい。特に、浴室等で使用される窓である場合、衣服を着用していないため、開放された障子等が身体に触れると、より一層けがをしやすく、窓の開放時における安全性は十分に考慮しておかなければならないものであった。
【0005】
また、窓を半開放状態にして通風等を行っている際、それ以上窓を開放できないようにロック固定することによって、防犯性能を高めるとともに、誤って操作して幼児が転落しないようにすることも必要とされている。
【0006】
また、この種のステーを備えた窓では、開口部枠と窓枠との間に気密材を配設して両者を密着させ、内外の気密性を保つようにするのが一般的である。しかし、前記特許文献に開示されているようなステーの場合、戸先側の開口部枠と窓枠の当接部分に、ベースおよび牽制アームが介装され、操作ツマミの腕が気密材の上を横切って配置されているため、この部分における気密性を確保することができない構造となっている。
【0007】
そこで本発明は、上記のような問題点にかんがみてなされたものであり、簡単な構造で作動が確実なロック装置を提供するとともに、このロック装置を備えて障子の全開放および半開放状態の容易な切り換え操作を可能として、窓を適切な位置に開放固定でき、操作性、気密性、防犯性、および安全性等のいずれにも優れた開閉窓を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した目的を達成するため、本発明のロック装置は、ケース内に納められ、ケースの側面から外方に突出する方向に付勢されてケース側面に対して進退動するトリガーと、このトリガーの進退状態に応じてトリガーの突出方向と直交する方向にスライド可能とされたスライダとを備え、トリガーの後退時にのみスライダのスライド動作が可能となされており、このスライダに接続されるとともにケースの他側面に突出して配設された係止ピンが、スライダのスライド動作によってケースの他側面から進退動することによって、所定のロック動作をなし得ることを特徴としている。
【0009】
また、本発明では前記ロック装置において、ケース内にはトリガーを案内するガイド溝が設けられ、このガイド溝内には、トリガーの基部に接続したスプリングが配設されており、スプリングの弾性力によってトリガーの先端部がケース側面に設けられた進退孔から進退動するように構成されている。
【0010】
また、トリガーの基部寄りには、スライダの内側部に設けられた係止凹部と互いに係合しうる係止凸部が突設されており、前記係止凹部が係止凸部を係合捕捉することでスライダのスライド動作を規制可能となされる一方で、スライダのスライド方向の先端部がトリガーの係止凸部に当接することで係止ピンをケースの他側面から伸張させて維持しうるように構成されている。
【0011】
そして、トリガーの中央部近傍にはケース側面の進退孔に内側から係止してトリガーの突出長さを規定する突出段部が形成され、係止凸部から突出段部に連続する面がスライダを通過させることを許容しうる退避面となされており、前記スライダにはケースの外部から操作可能なスライド操作部が接続されて、トリガーがスプリングを押圧して後退しているとき、このスライド操作部をスライダのスライド方向に操作することによりスライダが退避面を通過してスライドし、係止ピンのケース他側面からの突出長さが少なくとも伸張状態と後退状態の2段階に操作可能となされて、ロック保持またはロック解除を行うことで本発明は特徴づけられる。
【0012】
このような発明により、ロック装置はスライダの動作を切り換えることにより係止ピンの突出長さを制御することができ、容易にロック保持およびロック解除を可能としている。また、トリガーが突出しているときは、ロック保持またはロック解除のいずれかの状態にあり、スライダを操作することが不能で、誤操作を回避することが可能となっている。
【0013】
また、本発明は、上記構成のロック装置において、ケース内にはスライダのスライド方向に板バネが配設されており、スライダの側面には前記板バネに対向するクリック面が突設され、このクリック面に対向配置された板バネの凸部が、スライダのスライド動作時にクリック面に当接および押圧されることによってスライダーを所定位置に保持するとともにスライド操作部におけるクリック感をもたらすことを特徴としている。
【0014】
これにより、スライド操作部を操作する使用者が、スライダの操作状態を把握しやすくなり、また、スライド操作時の操作性も高められる。
【0015】
また、上記の目的を達成するため、本発明は前記いずれかの特徴を有するロック装置を備えた開閉窓であって、開口部枠に揺動開閉自在に支持された障子の戸先側に、前記ロック装置が取り付けられるとともに、障子の開放状態を規制しうるアームが配設されており、アームの一端は開口部枠に固定されたベースに軸支され、アームの他端にはロック装置の係止ピンが係止可能なピン係止孔が設けられており、障子の閉止状態のとき、ロック装置のトリガーが開口部枠のトリガー受けに当接して後退するとともに、スライド操作部が操作可能となされ、このスライド操作部をスライドさせることによって係止ピンとアームとの係止状態を切り換え、これによりロック保持またはロック解除を行って障子の開閉状態を操作可能であることを特徴としている。
【0016】
かかる開閉窓においては、スライド操作部の操作によって係止ピンが伸張状態となされたとき、係止ピンの先端部がアームのピン係止孔に係止し、障子の開放動作に連動して引き出されるアームが、障子の最大開放範囲を規制して半開放状態に維持する一方、
スライド操作部の操作によって係止ピンが後退状態となされたとき、係止ピンの先端部はアームのピン係止孔から離間し、障子の開放動作にアームが追従せず、障子を全開放可能となされたことを特徴としている。
【0017】
また、本発明は、前記構成の開閉窓において、アームは、基端部がベースに回動可能に取り付けられた第1アームと、この第1アームの先端に回動可能に取り付けられて他端にピン係止孔が設けられた第2アームとの2連からなり、第1アームと第2アームとの開き角度によって障子の開閉状態が選択されることを特徴としている。
【0018】
また、前記構成の開閉窓は、開口部枠に支持された障子が内開き式であることが好ましい。
【0019】
このような開閉窓の構成により、障子の開閉を容易に操作することができるとともに、障子の開放時にはロック装置を操作できないようにすることができるので、防犯性が高く、安全性も高められる。
【発明の効果】
【0020】
上述のように構成される本発明のロック装置によれば、簡単な構造で作動が確実となり、また、本発明の開閉窓においては、当該ロック装置を備えることによって窓の開放状態を全開または半開状態に制御でき、操作性、気密性、防犯性、および安全性のいずれにも優れた開閉窓を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明に係るロック装置および開閉窓を実施するための最良の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0022】
図1〜図3は本発明のロック装置を示し、図1はロック装置の分解斜視図、図2はロック装置のケース内を示す説明図、図3(a)は係止ピンの後退状態を示す説明図、図3(b)は係止ピンの伸張状態を示す説明図である。
【0023】
なお、以下の説明において、ロック装置1の説明中における方向性を図1に表示した前後および上下方向を用いて説明する。
【0024】
ロック装置1は、後述する開閉窓(10)の障子(8)の隅角部に取り付けられる。ロック装置1のケース2は、前面が開口したボックス体で構成されてトリガー(水平突出杆)3等の部品が嵌め込み式に納められる合成樹脂製のケース本体21と、ケース本体21の前面開口部を閉鎖しうるフロントカバー22とを備えている。ケース本体21の一側面には、トリガー3の進退孔211が設けられており、他側面(下面)には係止ピン挿通孔212が設けられている。なお、本発明において、ケース2は合成樹脂製であることに限定されず、どのような材質からなるものであってもよい。
【0025】
フロントカバー22はネジ孔221を有し、このネジ孔221から、ケース本体21に設けられたネジ受け213に小ネジ等の止着具223を螺合させることにより、ケース本体21と一体に固定される。また、ケース本体21の内側面には、ナット保持部214が形成されており、ロック装置1を固定するビスに螺合させるナット215を収容可能となっている。
【0026】
このケース2内には、ケース本体21の側面に対して進退動するトリガー3と、このトリガー3の進退状態に応じてトリガー3の突出方向と直交する方向にスライド可能とされたスライダ4とが納められている。
【0027】
ケース本体21には、トリガー3を案内するガイド溝216が設けられ、このガイド溝216にトリガー3が納められている。また、このガイド溝216内には、トリガー3の内部に接続するスプリング31が配設されており、スプリング31の弾性力によってトリガー3は、ケース本体21の側面の進退孔211から、ケース2の外方に突出する方向に付勢されている。そして、図1に示すように、かかるトリガー3の先端部の斜面32が押圧されていると、トリガー3がスプリング31を押圧しつつガイド溝216に沿って後退する。また、この押圧が解除されるとスプリング31の作用でトリガー3が突出方向(左方向)へ前進して突出し、適宜、進退孔211に対して進退動しうるように構成されている。
【0028】
一方、スライダ4は、ケース2内において、トリガー3と直交する方向(図1におけるケース本体21内の上下方向)にスライドするように構成されている。また、ガイド溝216のスプリング31の下部位置においては、スライダ4はスライド動作時にガイド溝216を回避しうるように、トリガー3の基端側(図1におけるケース本体21内の右側寄り)においては、回避空間が形成されるとともにピン保持部41が設けられて、全体として略L字状に形成されている。
【0029】
スライダ4のピン保持部41には、ケース本体21の係止ピン挿通孔212から突出するように配設された係止ピン42が接続されている。この係止ピン42は、スライダ4のスライド動作によってケース2の下面から進退動することにより、所定のロック動作をなすように構成されている。また、スライダ4の内側部は、凹状に切り欠かれて、係止凹部43が形成されている。
【0030】
次に、トリガー3の細部形状について説明すると、トリガー3の基部寄りには、スライダ4の係止凹部43と互いに係合しうる係止凸部33がケース本体21の開口部の方向に突設されている。この係止凸部33を、スライダ4の係止凹部43が係合捕捉するとき、スライダ4のスライド動作が規制可能となされる仕組みである。
【0031】
また、スライダ4をケース2内の下部に位置させたときは、スライダ4のスライド方向の先端部、すなわち係止凹部43の上部が、トリガー3の係止凸部33の下側面に当接することで上方へは移動できず、スライダ4に接続する係止ピン42をケース本体21の下面から伸張させた状態を保持するように構成されている。
【0032】
例示の形態においては、かかる係止ピン42のケース2下面からの突出長さは、スライダ4とトリガー3との係合関係により、少なくとも伸張状態と後退状態の2通りあり、これら伸張状態と後退状態の2段階に操作可能となされている。
【0033】
さらに、トリガー3の突出方向における中央部近傍には、ケース本体21の進退孔211に内側から係止してトリガー3に作用するスプリング31の弾性力を受ける突出段部34が形成されている。この突出段部34は、進退孔211の内側に当接することにより、トリガー3の突出長さを規定するように機能する。
【0034】
また、トリガー3の突出方向に連続する、係止凸部33から突出段部34に繋がる平面は、スライダ4を通過させることを許容するための退避面35となされている。すなわち、スライダ4がスライド動作する際には、トリガー3の退避面35を通過してスライドするように構成されている。
【0035】
ロック装置1において、スライダ4にはケース2の外部から操作可能なスライド操作部5が接続されている。スライド操作部5は、前面にツマミ部51、背面に嵌合脚部52をそれぞれ有し、フロントカバー22およびフロントカバー22に添設される化粧プレート23にそれぞれ設けられたガイドスリット224,231を介してケース2内のスライダ4に接続されるようになっている。
【0036】
スライド操作部5とスライダ4とは、スライダ4に設けられた嵌合用孔44に、スライド操作部5の嵌合脚部52を嵌め込むことで接続されている。また、嵌合脚部52の側面には、爪部521が突設されており、スライダ4の嵌合用孔44に嵌め込まれると両者を固定し、抜けを防止するようになっている。これにより、ツマミ部51を保持してガイドスリット224,231に沿ってスライド操作部5をスライドさせることにより、ケース2内のスライダ4を操作することが可能となっている。
【0037】
ここで、トリガー3がスプリング31を押圧して後退しているとき(すなわち図2の状態のとき)、このスライド操作部5をスライダ4のスライド方向の上方へスライドさせることによって、スライダ4が退避面35を通過して上方へスライドする。そして、トリガー3の押圧を解除するとトリガー3が突出し、係止凹部43にトリガー3の係止凸部33が係合捕捉される。これにより、スライダ4のスライド動作が規制されて、スライダ4に接続する係止ピン42が後退状態で固定され、図3(a)の状態となる。
【0038】
また、図3(a)の状態から、図3(b)の状態にするには、トリガー3がスプリング31を押圧して後退しているとき、スライド操作部5をスライダ4のスライド方向の下方へスライドさせる。これにより、スライダ4が退避面35を通過して下方へスライドする。続いて、トリガー3の押圧を解除するとトリガー3が突出し、スライダ4の先端部(上部)がトリガーの係止凸部33の下側面に当接するので、係止ピン42が伸張状態に固定される。
【0039】
さらに、ケース2内には、スライダ4の側部に、スライダ4のスライド方向に沿って板バネ6が配設されている。例示の形態では、この板バネ6は、細長い矩形状に枠組みされた樹脂製の板バネであり、側部が弾性反発しうるように構成されているが、樹脂製であることに限定されない。また、板バネ6の側部中央には凸部61が突設されている。
【0040】
これに対し、板バネ6に対向するスライダ4の側面には、スライダ4のスライド距離に対応させたクリック面45が突設されている。これにより、スライダ4をスライド方向の上方へスライドさせるとき、クリック面45が、これに対向配置された板バネ6の凸部61を押圧しつつ乗り越え、凸部61の上方に移動するようになっている。そして、図3(a)に示したように、板バネ6の凸部61がクリック面45の段部を乗り越え、スライダ4の係止凹部43にトリガー3の係止凸部33が係合捕捉する位置に達したところで、スライダ4を停止させたまま維持しうるものとなっている。
【0041】
加えて、スライダ4のスライド操作時には、クリック面45が板バネ6の凸部61を押圧しつつ乗り越えて、凸部61の上方または下方に移動することでクリック感を生じ、これがスライダ4を介してスライド操作部5に伝達されるため、使用者にクリック感をもたらして操作性を高めることができるようになっている。
【0042】
このように構成されるロック装置1は、係止ピン42が後退状態のとき(図3(a)参照)と伸張状態のとき(図3(b)参照)とで、それぞれロック解除またはロック保持を行うものとなる。
【0043】
次に、前記ロック装置の具体的用法として、図4〜図6に示す本発明の開閉窓について説明する。図4は開閉窓の全開放時を示す断面図、図5は開閉窓の半開放時を示す断面図、図6は開閉窓の閉止時を示す断面図である。なお、これらの各図においては図面を見やすくするために、開口部枠7や障子8等の構成部材には断面を示すハッチングを省略して記載している。
【0044】
図示する開閉窓10は、内開き式のすべり出し窓を例示しており、開口部枠7に揺動開閉自在に支持された障子8の戸先側下端にロック装置1が取り付けられている。また、開口部枠7には、障子8の開放状態を規制するためのアーム9が配設されている。
【0045】
アーム9は、開口部枠7に固定されたベース91と、ベース91に軸支された第1アーム92、第2アーム93を備えている。
【0046】
このアーム9は、基端部がベース91に回動可能に取り付けられた第1アーム92と、この第1アーム92の先端部に、その基端部が回動可能に取り付けられて先端部にピン係止孔932が設けられてロック装置1の係止ピン42が係止可能となされた第2アーム93との2連で構成されている。
【0047】
そして、第1アーム92と第2アーム93とがベース91から伸張したときの開き角度によって、障子8の開口部枠7に対する角度が選択されるようになっている。
【0048】
ここで、第2アーム93の基端部にはストッパ部931が延設されており、このストッパ部931が第1アーム92の先端に設けられた爪部921に当接すると、アーム9の伸張が固定される。したがって、アーム9の開き角度は、第2アーム93のストッパ部931の形状によって決定され、例示の開き角度には限定されるものではない。
【0049】
さらに、開閉窓10の開口部枠7には、障子8との間にリンク機構からなるすべり出し用ステー71が取り付けられている。すべり出し用ステー71は、複数のリンクをピン連結したリンク機構からなり、すべり出し窓用に一般に用いられている構造のものを適用することができる。例示のすべり出し用ステー71は、図4,5に示すように、開口部枠7の上下枠に沿って摺動するスライダ73、および障子8の最大揺動角度を規制するアーム74を備えた構成とされている。これにより、障子8の吊元側は所定の距離だけ開口部枠7に沿って摺動しながら開放位置まで回動し、開口部枠7に対してほぼ直角になる全開放状態まで開放できるようになっている。
【0050】
次に、このような開閉窓10の動作、および開閉動作に伴うロック装置1の動作について説明する。
【0051】
例示の形態では、ロック装置1は、開閉窓10の半開放状態と全開放状態の2通りを選択できるように構成されている。すなわち、ロック装置1のスライド操作部5を上方(全開)と下方(半開)とのいずれか一方にスライド操作することによって、係止ピン42をケース2の下面から進退動させて障子8の開放角度を選択することができるものである。
【0052】
例えば、係止ピン42を伸張状態とするとき、開閉窓10を半開放状態とすることができ、係止ピン42を後退状態とするとき、開閉窓10を全開放状態とすることができるように構成されている。
【0053】
図6に示す開閉窓10の障子8が閉止状態のときには、ロック装置1は図2に示す状態となっており、トリガー3の先端部は開口部枠7のトリガー受け72に当接して、トリガー3がケース2内に後退している。また、かかるロック装置1のケース2内においては、トリガー3が後退していることによってトリガー3とスライダ4とが干渉せず、スライダ4はスライド可能な状態となっている。この状態においては、スライド操作部5は操作可能であり、スライド操作部5のツマミ部51を保持して上下方向のいずれかにスライドさせることによってアーム9の状態を切り換えることが可能となっている。
【0054】
ここで、スライド操作部5を図中上方へスライドさせると、ツマミ部51を保持した手にクリック感が得られ、これとともに、図3(a)に示したように、係止ピン42が後退状態となる。これにより、係止ピン42の先端部は第2アーム93のピン係止孔932から離間して、障子8の開放動作とアーム9との連動性が解除され、開閉窓10が全開放可能となる。このとき、図4に示すように、アーム9は開口部枠7に納まったままの状態であり、すべり出し用ステー71によって全開放状態まで開放される。
【0055】
また、フロントカバー22に添設された化粧プレート23おいては、スライド操作部5が上方に位置することにより上方の表示「半開」が隠されて「全開」の表示だけが視認でき、当該操作により開閉窓10を全開放可能となったことが使用者に示されている。さらに、障子8が開放されているときには、スライド操作部5を操作することはできないため、幼児などによる誤った操作を防止することもできる。
【0056】
一方、スライド操作部5を図中下方へスライドさせると、ツマミ部51を保持した手にクリック感が得られ、これとともに、図3(b)に示したように、係止ピン42が伸張状態となり、係止ピン42の先端部が第2アーム93のピン係止孔932に係止する。これにより、図5に示すように、障子8の開放動作と連動してアーム9が引き出され、障子8の最大開放範囲が規制されて、開閉窓10が半開放状態に維持される。このとき、化粧プレート23においては、スライド操作部5が下方に位置して「半開」の表示が視認でき、当該操作により開閉窓10を半開放可能となったことが使用者に示されている。
【0057】
このとき、ロック装置1のケース2内においては、トリガー3がスプリング31の弾性力によって突出方向に付勢されており、スライダ4の上部がトリガー3の係止凸部33の下側面に当接するようになっているので、スライド操作部5の操作もできない構造となっている。したがって、開閉窓10を半開放状態としているときには、ツマミ部51をスライドさせようとしても動かすことができず、障子8を全開放状態に切り換えることはできないため、誤操作を防止でき、防犯上も有利である。
【0058】
また、図6に示すように、開放された状態の障子8を閉止すると、トリガー3の先端部がトリガー受け72に当接することによって、ケース2内においてはトリガー3とスライダ4との係合捕捉が解除され、スライド操作部5のツマミ部51を操作することによって、障子8の全開放または半開放の選択をすることができる。
【0059】
このように、開閉窓10に設けられたロック装置1は、障子8が閉止状態のときのみ操作でき、障子8が開放されているときには、その構造上、スライド操作部5を操作しようとしても作動しないように構成されているので、防犯性が高まり、また、誤操作を防ぐこともできる。
【0060】
また、図5に示すように、開口部枠7の奥行き方向に幅広の額縁70を設け、この額縁70の奥行きの範囲内で障子8を半開放できるようにアーム9で障子8の開き角度を設定してもよい。これにより、障子8が身体に触れる可能性が低減して、ぶつかったりけがをしたりするのを回避して安全性を高めることが可能になる。
【0061】
なお、上記実施形態の説明においては、本発明に係るロック装置1を開閉窓10の開閉制御に用いた例を説明したが、ロック装置1の用途はこれに限定されず、係止ピン42の伸張・後退によるロック保持またはロック解除を利用できるものであれば、どのようなものにも用いることができる。また、内開き式のすべり出し窓を例にあげて説明したが、本発明に係る開閉窓10はこれに限定されず、開口部枠7に揺動開閉自在に支持された障子8がロック装置1によって開閉状態を操作可能となされた構成のものであれば、どのような開閉窓であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明のロック装置は、扉等の建具の開閉を操作するものとして好適に利用することができ、また、本発明の開閉窓は、住宅の浴室などのように換気を必要としたり、安全性または防犯性を必要としたりする居室の窓に好適に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明に係るロック装置の分解斜視図である。
【図2】本発明に係るロック装置のケース内を示す説明図である。
【図3】(a)は係止ピンの後退状態を示す説明図、(b)は係止ピンの伸張状態を示す説明図である。
【図4】本発明に係る開閉窓の全開放時を示す断面図である。
【図5】本発明に係る開閉窓の半開放時を示す断面図である。
【図6】本発明に係る開閉窓の閉止時を示す断面図である。
【符号の説明】
【0064】
1 ロック装置
2 ケース
21 ケース本体
211 進退孔
212 係止ピン挿通孔
22 フロントカバー
3 トリガー
31 スプリング
33 係止凸部
34 突出段部
4 スライダ
41 ピン保持部
42 係止ピン
43 係止凹部
44 嵌合用孔
45 クリック面
5 スライド操作部
51 ツマミ部
52 嵌合脚部
6 板バネ
61 凸部
7 開口部枠
72 トリガー受け
8 障子
9 アーム
91 ベース
92 第1アーム
93 第2アーム
932 ピン係止孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケース内に納められ、ケースの側面から外方に突出する方向に付勢されてケース側面に対して進退動するトリガーと、このトリガーの進退状態に応じてトリガーの突出方向と直交する方向にスライド可能とされたスライダとを備え、トリガーの後退時にのみスライダのスライド動作が可能となされており、
このスライダに接続されるとともにケースの他側面に突出して配設された係止ピンが、スライダのスライド動作によってケースの他側面から進退動することによって、所定のロック動作をなし得ることを特徴とするロック装置。
【請求項2】
ケース内にはトリガーを案内するガイド溝が設けられ、このガイド溝内には、トリガーの基部に接続したスプリングが配設されており、スプリングの弾性力によってトリガーの先端部がケース側面に設けられた進退孔から進退動するように構成され、
トリガーの基部寄りには、スライダの内側部に設けられた係止凹部と互いに係合しうる係止凸部が突設されており、前記係止凹部が係止凸部を係合捕捉することでスライダのスライド動作を規制可能となされる一方で、スライダのスライド方向の先端部がトリガーの係止凸部に当接することで係止ピンをケースの他側面から伸張させて維持しうるように構成され、
トリガーの中央部近傍にはケース側面の進退孔に内側から係止してトリガーの突出長さを規定する突出段部が形成され、係止凸部から突出段部に連続する面がスライダを通過させることを許容しうる退避面となされており、
前記スライダにはケースの外部から操作可能なスライド操作部が接続されて、トリガーがスプリングを押圧して後退しているとき、このスライド操作部をスライダのスライド方向に操作することによりスライダが退避面を通過してスライドし、係止ピンのケース他側面からの突出長さが少なくとも伸張状態と後退状態の2段階に操作可能となされて、ロック保持またはロック解除を行うことを特徴とする請求項1に記載のロック装置。
【請求項3】
ケース内にはスライダのスライド方向に板バネが配設されており、スライダの側面には前記板バネに対向するクリック面が突設され、このクリック面に対向配置された板バネの凸部が、スライダのスライド動作時にクリック面に当接および押圧されることによってスライダーを所定位置に保持するとともにスライド操作部におけるクリック感をもたらすことを特徴とする請求項1または2に記載のロック装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載のロック装置を備えた開閉窓であって、
開口部枠に揺動開閉自在に支持された障子の戸先側に、前記ロック装置が取り付けられるとともに、障子の開放状態を規制しうるアームが配設されており、
アームの一端は開口部枠に固定されたベースに軸支され、アームの他端にはロック装置の係止ピンが係止可能なピン係止孔が設けられており、
障子の閉止状態のとき、ロック装置のトリガーが開口部枠のトリガー受けに当接して後退するとともに、スライド操作部が操作可能となされ、
このスライド操作部をスライドさせることによって係止ピンとアームとの係止状態を切り換え、これによりロック保持またはロック解除を行って障子の開閉状態を操作可能であることを特徴とする開閉窓。
【請求項5】
スライド操作部の操作によって係止ピンが伸張状態となされたとき、係止ピンの先端部がアームのピン係止孔に係止し、障子の開放動作に連動して引き出されるアームが、障子の最大開放範囲を規制して半開放状態に維持する一方、
スライド操作部の操作によって係止ピンが後退状態となされたとき、係止ピンの先端部はアームのピン係止孔から離間し、障子の開放動作にアームが追従せず、障子を全開放可能となされたことを特徴とする請求項4に記載の開閉窓。
【請求項6】
アームは、基端部がベースに回動可能に取り付けられた第1アームと、この第1アームの先端に回動可能に取り付けられて他端にピン係止孔が設けられた第2アームとの2連からなり、第1アームと第2アームとの開き角度によって障子の開閉状態が選択されることを特徴とする請求項5に記載の開閉窓。
【請求項7】
開口部枠に支持された障子が内開き式であることを特徴とする請求項4〜6のいずれかに記載の開閉窓。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−82004(P2008−82004A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−262544(P2006−262544)
【出願日】平成18年9月27日(2006.9.27)
【出願人】(000101776)アルメタックス株式会社 (22)