説明

ロック装置

【課題】 移動体を確実に停止位置でロックする。
【解決手段】 ドアパネルが停止位置に向かって移動する際、スチールプレート8が移動する。停止位置にドアパネルが到達したとき、スチールプレート8に接近してマグネットロック18が位置する。ドアパネルが停止位置に到達したとき、スチールプレート8がドア閉めバネ16を圧縮しながら、マグネットロック18に吸引され、圧縮されたドア閉めバネ16がドアパネルをマグネットロック18側に押圧する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動してきた移動体が停止した状態で、停止状態を固定維持するロック装置に関し、例えば、開閉装置の開閉体が閉じている状態で、開閉体を固定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
上述したようなロック装置は、例えば駆動装置によって開閉体が開閉される自動ドア装置や手動で開閉体が開閉される手動ドア装置を含むドア装置や、駅のプラットホームに設けられ列車や車両がプラットホームに到達して列車や車両のドアが開くまで開閉体を閉じておくプラットホームの安全柵やプラットホームドア装置において、使用されることがある。ドア装置、例えば自動ドア装置は、ドアパネルのような開閉体が、ドア開口のような開口を閉じている閉状態を採る。この閉状態でドアパネルを固定するために、ロック装置を使用することがある。ロック装置としては、例えば特許文献1に開示されているものがある。
【0003】
このロック装置では、ドアパネルと共に移動するように強磁性体製の可動吸引部がドアパネルに設けられ、ドアパネルが閉位置に到達したときに前記可動吸引部が到達する位置の近傍に、永久磁石を備えた定置吸引部が配置されている。ドアパネルが閉位置に到達したとき、定置吸引部の永久磁石がドアパネルを閉じる方向に可動吸引部を吸引保持する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4147104号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の技術によれば、例えばドア装置等の経年劣化により、移動体の停止位置がずれた場合には、確実にドアパネルを停止位置でロックすることができない。
【0006】
本発明は、移動体を停止位置で確実にロックすることができるロック装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様のロック装置は、移動体が予め定めた停止位置に向かって移動するのに伴って移動する第1磁力保持手段と、前記停止位置に前記移動体が到達したとき、前記第1磁力保持手段に接近して位置するように固定された第2磁力保持手段とを、具備している。移動体としては、例えば上述したようなドア装置のドアパネルや、駅のプラットホームの安全柵の移動柵やプラットホームドア装置のドアパネルや、シリンダ装置のロッド等がある。前記第1及び第2磁力保持手段の一方が磁力発生手段で構成され、他方が磁力によって吸引保持される磁力被吸引手段によって構成されている。即ち、第1磁力保持手段が磁力発生手段で構成され、第2磁力保持手段が磁力被吸引手段で構成される場合と、第1磁力保持手段が磁力被吸引手段で構成され、第2磁力保持手段が磁力発生手段で構成される場合とがある。磁力発生手段としては、非持続的に第1の極性の電流が供給されたとき磁力発生手段の表面が持続的に着磁状態にされ、この着磁状態において非持続的に第2の極性の電流が供給されたとき、持続的に脱磁状態にされるように構成されているものや、所定の電流が供給されているとき着磁され、電流の供給が停止されると脱磁する電磁石を使用することもできるし、永久磁石の周囲にコイルを配置し、電流の供給が停止されているときに磁石による吸引力が発生し、電流を供給することで、脱磁する中和式の磁気装置を使用することもできる。磁力被吸引手段としては、磁力によって磁化される強磁性体製のものを使用することができる。また、前記移動体を前記第1磁力保持手段側に弾性的に押圧する押圧手段が設けられている。
【0008】
このように構成すると、例えば移動体の繰り替えしの停止精度が低く、第1及び第2磁力保持手段の接近停止距離が安定しない場合や、移動体が取り付けられている装置、例えば建物やドア装置等の経年劣化により、停止位置よりも若干手前の位置で移動体が停止するような場合でも、第1及び第2磁力保持手段が互いに磁力によって吸引・吸着されると、押圧手段が移動体を第1磁力保持手段側に押圧して、移動体を停止位置に停止させる。
【0009】
ロック状態において、押圧手段による押圧力以上の力で前記移動体を前記移動方向と反対方向に移動させたとき、前記第1磁力保持手段の前記移動方向と反対方向への移動を阻止する移動阻止手段を設けることもできる。例えば第1磁力保持手段が、磁力によって磁化される強磁性体製の板状体である磁力被吸引手段によって構成されている場合、移動阻止手段は、その一端が磁力被吸引手段に固定され、移動体に設けた板状部を貫通し、この移動体に設けた板状部に接触可能な膨大部を移動阻止手段の他端に有するものとすることができる。この場合、押圧手段は、移動体の板状部と移動阻止手段の膨大部との間に配置され、移動体の板状部と第1磁力保持手段とが離れることによって圧縮される弾性体を使用することができる。
【0010】
このように構成すると、移動体が停止位置で例えば移動体の移動方向と反対方向に移動体を移動させるように外力が加えられ、その外力が押圧手段の押圧力よりも大きくても、移動阻止手段によってそれ以上の移動が阻止される。そして、その外力が除かれると、押圧手段の押圧力によって、移動体が停止位置に再び戻る。これによって、移動体が停止位置に停止したときに、何か物を挟んでいても、その物を取り除いた後、再び自動的に停止位置に移動体を停止させることができる。
【発明の効果】
【0011】
以上のように、本発明によれば、移動体の停止精度が低い場合でも、移動体を停止位置に確実に停止させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の1実施形態のロック装置の部分破断平面図である。
【図2】図1のロック装置のマグネットロックの動作説明図である。
【図3】図1のA−A線に沿う断面図である。
【図4】図1のロック装置の右側面図である。
【図5】図3のB−B線に沿う断面図である。
【図6】ドアパネルが停止位置に近づいて図1のロック装置によってロックされる過程の一部を示す図である。
【図7】ドアパネルが停止位置に近づいて図1のロック装置によってロックされる過程の残りの部分を示す図である。
【図8】図1のロック装置の解除レバーの動作説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の1実施形態のロック装置は、自動ドア装置に本発明を実施したものである。この自動ドア装置は、例えば両開きまたは片引きのスライドドア方式のもので、開口、例えばドア開口の両側または片側に配置した移動体、例えばドアパネルがスライドしてドア開口を開閉する。このドアパネルが停止位置、例えばドアパネルがドア開口を閉じている閉位置に到達したときに、ドアパネルをロックするために、この実施形態のロック装置が設けられている。
【0014】
例えば、ドアパネルは、図1に示すように、ドアパネルと共に自動ドア装置の無目内をスライドするドアローラ2を有している。ドアローラ2は、その中心軸が無目の奥行き方向に配置され、ドアローラ2の外周面が無目内のガイドレール(図示せず)に接触している。このドアパネルは、開位置から閉位置に移動するとき矢印方向、図1では左側方向に移動し、閉位置から開位置にスライドするときには矢印と反対方向、図1では右側に移動する。このドアローラ2は、取付金具4に取り付けられている。これらは、ドアパネルが閉位置に向かってスライドしたとき、図1に矢印で示すように、図1においては左側に自動ドア装置の無目内をスライドし、閉位置から開位置にドアパネルがスライドするときには、矢印と反対方向図1では右側にスライドする。この取付金具4に取付金具6が取り付けられている。この取付金具6は、取付金具4に取り付けられた水平部6aを有し、ドアパネルのスライド方向側の先端に、水平部6aに対して鋭角、例えば90度よりも若干小さい角度をなすように形成された鋭角部6bを有している。この取付金具6は、例えば金属製である。
【0015】
この鋭角部6bのドアローラ2と反対側の面に、第1磁力保持手段、例えば磁力被吸引手段、具体的には強磁性体板、より具体的にはスチールプレート8が取り付けられている。このスチールプレート8は、平板状に形成され、その一端、例えば図1の下端よりも他端、例えば図1の上端がドアローラ2側に傾斜した状態に、例えば鋭角部6bとほぼ平行に鋭角部6bに取り付けられている。この取り付けは、Oリング10、10を介してガイドピン12及び移動阻止手段、例えばロックピン14によって行われている。
【0016】
ガイドピン12、ロックピン14は、図1における上下方向に間隔をおいて配置されている。ガイドピン12は、その一端がスチールプレート8に固定され、他端が鋭角部6bを直交してガイド孔13を貫通し、ドアローラ2側に突出している。従って、スチールプレート8は、ガイドピン12の長さ方向に沿って移動可能である。ロックピン14も、その一端がスチールプレート8に固定され、鋭角部6bを直交して貫通し、ドアローラ2側に突出している。この突出部分は、スチールプレート8を貫通している部分よりも膨大な膨大部14aに形成されている。ロックピン14の膨大部14aと鋭角部6bのドアローラ2側の面との間には、押圧手段、例えばコイルバネからなるドア閉めバネ16が取り付けられている。例えばドアパネルが閉位置にあって、後述するようにスチールプレート8が磁力によってロックされているとき、ドアパネルを開く方向に外力がドアパネルに加えられ、ドアパネルが図1における矢印と反対方向に移動させられ、その外力がドア閉めバネ16の押圧力よりも大きいと、ドアローラ2及び取付金具4は矢印と反対方向に若干移動するが、ロックピン14の膨大部に鋭角部6bが接触し、それ以上の移動が阻止され、即ちロックされる。
【0017】
ドアパネルが、閉位置付近で停止したときに、スチールプレート8が配置される位置付近に、第2磁力保持手段、例えば磁力発生手段、具体的にはマグネットロック18が取り付けられている。
【0018】
図2(a)に示すように、マグネットロック18は、本体部20を有している。本体部20は、強磁性体、例えばスチール製で、縦断面形状がコ字状のコ字状部材20a、20bを互いに90度の角度をなすように設けたものである。この本体部20は第2接触面、例えば吸引面22を有している。吸引面22は、図1に示すようにスチールプレート8の第1接触面、例えばドアローラ2と反対側に位置している被吸引面24と対向し、吸引面22に対して被吸引面24が傾斜している。本体部20は収容部26を有している。収容部26は、コ字状部材20a、20bによって囲われた空間であって、吸引面22で開口し、吸引面22から本体部20の内部に向けて伸びている。本体部20は、ボルト(図示せず)を介して図1に示すように無目内に設けた固定部28に固定されている。
【0019】
この収容部26の内奥に、図2(a)、(b)に示すように極性切換可能な磁石、例えばアルニコ磁石30が配置されている。このアルニコ磁石30は、例えば直方体状に形成され、その吸引面22側にある面は、吸引面22よりも奥に位置している。アルニコ磁石30の外周囲には、極性切換用コイル32が設けられている。極性切換用コイル32は、アルニコ磁石30に、その外周面を包囲するように取り付けられている。極性切換用コイル32に第1の極性の電流、例えば正の電流を非持続的に流すと、アルニコ磁石30の極性が変換されて、その変換された状態を維持する。また、極性が変換された状態で、極性切換用コイル32に第1の極性と逆の第2の極性の電流、例えば負の電流を非持続的に流すと、アルニコ磁石30の極性が元の極性に戻り、その戻った極性の状態を維持する。
【0020】
正の電流が供給される前には、例えば図2(a)に示すようにS極が吸引面22側を向き、N極が収容部26の内奥を向くようにアルニコ磁石30は配置されている。正の電流が非持続的に供給された後には、同図(b)に示すようにアルニコ磁石30のN極が吸引面22側を向き、S極が収容部26の内奥を向く。
【0021】
アルニコ磁石30の吸引面22側の面と吸引面22との間の空間の中央を埋めるように強磁性体製、例えばスチール製のマグネットブロック34がアルニコ磁石30と接触して配置されている。マグネットブロック34も直方体状で、アルニコ磁石30と共に図示していないボルトによって本体部20に固定されている。
【0022】
マグネットブロック34と収容部26の内壁面との間の隙間には、複数、この実施形態では図3に示すように6個の永久磁石、例えばネオジム磁石36が、マグネットブロック34の外周囲を囲うように配置されている。これらネオジム磁石36も直方体状のもので、切換コイル32に正の電流が供給される前の状態において、アルニコ磁石30の吸引面22側の磁極Sと逆の極性Nがマグネットブロック34側に面するように、全てのネオジム磁石36が配置されている。
【0023】
このように構成しているので、正の電流の供給前には、図2(a)に示すようにアルニコ磁石30、マグネットブロック34、ネオジム磁石36、本体部20によって磁気閉ループが構成されて、磁力はマグネットブロックの外部に出ず、マグネットブロック34の吸着面22側の表面にスチールプレート8があっても吸着しない。この状態を脱磁状態という。
【0024】
極性切換用コイル32に非持続的に正の電流を供給すると、図2(b)に示すようにアルニコ磁石30の極性は、吸引面22側がN、内奥側がSとなり、アルニコ磁石30、マグネットブロック34、本体部20によって磁気閉ループが形成され、その磁気閉ループはマグネットブロック34から吸着面22の外部を通る。従って、この外部にスチールプレート8が位置していると、マグネットロック18に吸着される。この状態において、再度、非持続的に正の電流を供給すると、発生している磁力を大きくすることができる。最初に正の電流を非持続的に供給して磁力を発生させた状態を予備着磁状態といい、2度目に正の電流を非持続的に供給して磁力を大きくした状態を正規着磁状態という。
【0025】
図3に示すようにマグネットブロック34の4隅には、吸音材、例えばゴムクッション部38a、38bが取り付けられている。これらゴムクッション部38a、38bは、図5に示すように円柱状に形成されている。スチールプレート8の図1における上端側のゴムクッション部38aは、図1における下端側のゴムクッション部38bよりも突出量が多くされ、その反発力が下側のゴムクッション38bよりも大きくされている。
【0026】
以下、図6及び図7を参照して、このロック装置の動作を説明する。今、図2(a)に示すように、マグネットロック18が脱磁状態にあり、ドアパネルが開位置にあり、図6(a)に示すようにスチールプレート8やドアローラ2は、マグネットロック18から離れた位置にあるとする。この状態において、同図(a)に示すようにドアパネルが閉位置に向かって移動する。このとき、マグネットロック18は、上述した予備着磁状態とされる。なお、マグネットロック18を予備着磁状態とするのは、このようにドアパネルが閉位置に到達する前に行うこともできるし、閉位置付近に到達した後にすることもできる。
【0027】
やがてドアパネルが閉位置に向かい、同図(b)に示すようにスチールプレート8もマグネットロック18に接近する。このとき、まだマグネットロック18が発生している磁力のうちスチールプレート8内に進入しているものは余り大きくなく、スチールプレート8はまだ吸着されない。
【0028】
ドア停止位置にドアパネルが非常に接近すると、同図(c)に示すように、スチールプレート8の下端がマグネットロック18の磁力によってゴムクッション38bを撓ませて吸着される。このとき、ガイドピン12、ロックピン14もスチールプレート8の下端の吸着につれて、若干マグネットロック18側に移動する。スチールプレート8の上端側は、ゴムクッション38aの反発力が大きい上に、マグネットブロック18と離れているので内部を通過する磁力が小さく、マグネットロック18に吸着されていない。
【0029】
なお、ドアパネルは閉位置に近づいたときに減速するように制御されているので、スチールプレート8の移動速度も遅く、その上、スチールプレート8の下端がマグネットロック18に吸着されるとき、ゴムクッション38bを撓ませており、しかも、このとき(スチールプレート8の下端がマグネットロック18に吸着されるとき)、ドアパネルが閉位置に到達して停止する際に音が発生するので、スチールプレート8の下端が吸着されたことによって発生する音は、気づかれにくい。
【0030】
この状態において、正規着磁状態とされ、磁力が大きくされると、図7(a)に示すようにスチールプレート8の上端がマグネットロック18に吸着される。即ち、完全吸着状態となり、スチールプレート8は吸引保持される。このとき、スチールプレート8は、ドア閉めバネ16を撓ませながら、ガイドピン12と共に吸着される。スチールプレート8の吸着時には、ガイドピン12がガイド孔13を滑るように移動することによって、スチールプレート8の上端側の吸着面24もマグネットロック18の吸引面22を滑るように移動して吸着される。このようにスチールプレート8は、その下端がマグネットロック18に吸着され、その後に上端側の吸着面24がマグネットロック18の吸引面22を滑るようにマグネットブロック18に吸着されるので、上端が吸着されるときにも殆ど音は発生しない。また、撓ませられたドア閉めバネ16が鋭角部6bをマグネットロック18側に押圧するので、ドアパネルがさらに固定される。
【0031】
このようにしてドアパネルを停止位置でロックすることができるので、ドアパネルをモータによってドア開口側に押しつけてドアパネルの閉状態を維持する必要がない。従って、ドアパネルを閉位置付近まで移動させた後には、モータに電流を供給する必要が無く、省電力化を図ることができる。また、マグネットロック18に非持続的に電流を供給することによってドアパネルをロックすることができるので、マグネットロック18に持続して電流を供給してドアロックを維持する必要が無く、やはり省電力化を図ることができる。
【0032】
この完全吸着状態において、同図(b)に矢印で示すように、外力をドアパネルの閉じる方向と反対方向に加えられると、その外力がドア閉めバネ16のバネ力よりも小さいと、ドアパネルは矢印方向に移動することはないが、外力がドア閉めバネ16のバネ力よりも大きいと、ドア閉めバネ16を縮めながら、取付金具6、4、ドアローラ2が矢印方向に移動するが、取付金具6の鋭角部6bがロックピン14の膨大部14aに接触し、それ以上の移動が阻止される。なお、スチールプレート8のマグネットロック18への吸着が外れると、ドアパネルは開く方向へ移動するので、最終的なロック力は、マグネットロック18とスチールプレート8との吸着力に依存する。
【0033】
なお、ドア閉めバネ16のバネ力よりも大きい外力でドアパネルを開く方向に移動させると、ドアパネルは、ロックピン14の膨大部14aに鋭角部6bが接触するまで移動可能であるので、両開きスライドドア装置の場合ドアパネル間に、片引きスライドドア装置の場合ドアパネルとドア開口の縁との間に例えば衣類などが挟まれた場合でも、衣類を外すことができる。また、外力が除去されると、ドア閉めバネ16のバネ力によって同図(c)に示すように取付金具4、6、ドアローラ2が元の位置に戻され、ドアパネルは、停止位置に戻り、ロックされる。
【0034】
なお、上記の説明では、ドアパネルが停止位置で停止する場合について説明したが、ドアパネルの繰り返しの停止精度が低く、スチールプレート8及びマグネットロック18の接近停止距離が安定しない場合や、自動ドア装置が取り付けられている建物や自動ドア装置の経年劣化により、ドアパネルが停止位置よりも幾分手前の位置で停止しても、スチールプレート8がマグネットロック18によって吸引保持され、そのとき上述したようにスチールプレート8が、ドア閉めバネ16を撓ませているので、そのバネ力によって鋭角部6bをマグネットロック18側に移動するので、これに連なる水平部6a、取付金具4、ドアローラ2を介してドアパネルもマグネットロック18側に移動させられ、所定の停止位置に移動し、ロックされる。
【0035】
上記のようにスチールプレート8が吸引保持されたことを検知するために、図1に示すように、マグネットロック18の側面には、検出スイッチ40が設けられ、図4に示すように、スチールプレート8の側方には、これと一体にスイッチ操作部42が形成されている。スイッチ操作部42はスチールプレート8が変位して、吸引保持された状態において、検出スイッチ40に接触し、これを操作して、吸引保持されたことを報知する。
【0036】
吸引保持状態において、負の電流を非持続的に極性切換用コイル32に供給すると、その後、図2(a)に示すように、アルニコ磁石30の吸引面22側の磁極がS極に、内奥側の磁極がN極となり、上述したようにスチールプレート8内を磁力が通過することなく、マグネットロック18内で磁気閉ループが構成され、スチールプレート8の吸引保持が解かれる。従って、ドアパネルを移動させる前に、負の電流を非持続的に極性切換用コイル32に供給すると、脱磁状態となり、ドアパネルは移動可能となる。
【0037】
なお、このマグネットロック18を用いてドアパネルを吸引保持している状態で、停電が生じると、ドアパネルが吸引保持されたままとなり、自動ドア装置の外部に人が出ることができなくなる。そこで、図8(a)、(b)に示すように、マグネットロック18の上面には、吸引解除レバー44が設けられている。吸引解除レバー44は、マグネットロック18の図1における上面に設けた回転軸46の回りに回動自在に取り付けられている。吸引解除レバー44は、スチールプレート8側に操作縁48を有し、吸引保持状態において、図8(a)に矢印で示す方向に吸引解除レバー44を回転軸46の回りに回転させると、操作縁48がスチールプレート8に接触し、同図(b)に示すように、スチールプレート8をマグネットロック18から引き離し、吸引保持状態を解除する。なお、吸引解除レバー44は、無目の外部から操作可能とされている。ドアパネルの吸引保持が解除された結果、例えば人が手で操作することによってドアパネルを開位置に移動させることができ、停電時に人が自動ドア装置から外部に出ることができる。
【0038】
なお、吸引解除レバー44の回転角度を所定角度内に規制するためにストッパ50がマグネットロック18の上面に設けられている。同図(b)に示すように、吸引解除レバー44が所定角度回転すると、ストッパ50に吸引解除レバー44の内方縁52が接触し、それ以上の回転を阻止する。また、この状態において、自動的に吸引解除レバー44を元の位置に復帰させるために、回転軸46の回りに復帰用のねじりコイルバネ54が挿通され、その一端がマグネットロック18の上面に設けたピン56に接触し、他端が吸引解除レバー44の下面に設けたピン58に接触している。吸引解除レバー44を同図(a)に矢印で示すように回転させるために、吸引解除レバー44に力を加えると、復帰用のねじりコイルバネ54がねじられ、吸引解除レバー44から力が除去されると、ねじられていたバネ54が元の状態に復帰するときに、吸引解除レバー44を同図(a)に示す元の位置に回転させる。
【0039】
上記の実施形態では、アルニコ磁石30及びマグネットブロック34は直方体状のものを使用したが、これに限ったものではなく、例えば円柱状のものを使用することもできる。この場合、ネオジム磁石36は、マグネットブロック34の周囲に環状に配置される。また、上記の実施形態では、ゴムクッション部38a、38bは、円柱状のものをネオジム磁石36の4隅に配置したが、これに限らず、ネオジム磁石36に沿って環状に設けることもできるし、本体部20に専用の穴を開け、この穴に設けることもできるし、同様にスチールプレート8側に設けることもできる。
【0040】
上記の実施形態では、スチールプレート8をドアパネルと共に移動させて、マグネットロック18に固定したが、逆にスチールプレート8を固定し、マグネットロック18をドアパネルと共に移動するように構成することもできる。
【0041】
上記の実施形態では、本発明のロック装置をドアパネルが閉位置に到達したときに、この閉状態を保持するために使用したが、ドアパネルが開位置に到達したときに、この開状態を保持するために本発明を使用することもできる。スライド方式の自動ドア装置を設置しているビルや店舗が深夜等に閉鎖される場合に、ドアパネルを施錠する場合にも使用できる。また、上記実施形態では、自動ドア装置に本発明を実施したが、これに限ったものではなく、手動でドアパネルを開閉するドア装置に、この発明を実施することもできるし、駅のプラットホームに配置される安全柵やプラットホームドア装置に、本発明を実施することもできる。また、エアーシリンダや油圧シリンダのロッドを伸ばした状態で、ロックする場合にも使用できる。
【0042】
上記の実施形態では、ネオジム磁石36は、そのN極がマグネットブロック34側を向くように取り付けたが、そのS極がマグネットブロック34側を向くように取り付けることもできる。但し、その場合、アルニコ磁石30は、正の電流が供給される前の状態で、N極が吸引面22側を向き、S極が収容部26の内奥に位置するように配置する。上記の実施形態では、正の電流を非持続的に供給したときに、スチールプレート8を吸引保持し、負の電流を非持続的に供給したとき、スチールプレート8を吸引保持から開放するように構成したが、極性切換用コイル32の巻線方向を変更することによって、負の電流を非持続的に供給したときに、スチールプレート8を吸引保持し、正の電流を非持続的に供給したとき、スチールプレート8を開放するように構成することもできる。
【0043】
上記の実施形態では、スチールプレート8をその上端がドアローラ2側に傾斜した状態に設けたが、スチールプレート8をその被吸引面24がマグネットロック18の吸引面22と平行になるように配置することもできるし、取付金具6は、鋭角部6bが水平部6aに対して鋭角をなしているものを示したが、鋭角部6bを水平部6aに対して直角または鈍角をなす直角部または鈍角部とすることもできる。
【符号の説明】
【0044】
8 スチールプレート(第1磁力保持手段、磁力被吸引手段)
14 ロックピン(移動阻止手段)
16 ドア閉めバネ(押圧手段)
18 マグネットロック(第2磁力保持手段、磁力発生手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体が予め定めた停止位置に向かって移動するのに伴って移動する第1磁力保持手段と、
前記停止位置に前記移動体が到達したとき、前記第1磁力保持手段に接近して位置するように固定された第2磁力保持手段とを、
具備し、前記第1及び第2磁力保持手段の一方が磁力発生手段で構成され、他方が磁力によって吸引保持される磁力被吸引手段によって構成され、
前記移動体を前記第1磁力保持手段側に弾性的に押圧する押圧手段が設けられているロック装置。
【請求項2】
請求項1記載のロック装置において、前記押圧手段による押圧力以上の力で前記移動体を前記移動方向と反対方向に移動させたとき、前記第1磁力保持手段の前記移動方向と反対方向への移動を阻止する移動阻止手段を、有するロック装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−202167(P2012−202167A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−69738(P2011−69738)
【出願日】平成23年3月28日(2011.3.28)
【出願人】(000102452)エスアールエンジニアリング株式会社 (17)